Web運営支援のポートフォリオの作り方|見る人が知りたいこと

丸山 桃子
丸山 桃子
Web運営支援のポートフォリオの作り方|見る人が知りたいこと

この記事のポイント

  • Web運営支援のポートフォリオは
  • 作品を並べても伝わりません
  • 守秘義務のある運用案件をどう載せるか

Web運営支援のポートフォリオは、デザインやイラストのポートフォリオとまったく別物です。運用支援の仕事は、成果物が他人の名義のサイトの中にあり、見た目に残らず、そのうえ守秘義務がかかっていることが多い。だから「作品を並べる」という発想のままだと、載せるものがないという結論になります。運用支援のポートフォリオで見る人が知りたいのは、きれいな画面ではなく「任せたあと自分の手元で何が減るか」です。ここを軸に組み替えると、公開できる素材が急に増えます。

Web運営支援のポートフォリオが作りにくい3つの構造的な理由

まず、作りにくさの正体をはっきりさせます。原因が分かれば、回避の手順も決まります。

一つ目は、成果物の所有権が自分にない点です。更新したページも、差し替えたバナーも、直した設定も、すべてクライアントの資産です。デザイナーが自分の作品として画像を並べられるのに対し、運用支援は「他人の家を整えた記録」しか手元に残りません。

二つ目は、守秘義務です。運用の仕事は、アクセス数、問い合わせ件数、在庫状況、キャンペーンの結果といった、企業が外に出したがらない情報に触れます。契約書にNDA(エヌディーエー)が含まれているケースも珍しくありません。ここを軽く扱うと、ポートフォリオが信用を落とす道具に変わります。

三つ目は、成果が地味である点です。運用支援の価値は「事故が起きなかった」「更新が滞らなかった」「担当者が別の仕事に集中できた」といった、何も起きていない状態として現れます。派手なビフォーアフターがないので、見せ方を工夫しないと何もしていないように見えてしまいます。

この3つは、努力で消せる問題ではありません。だから、作品を見せる形式そのものをやめて、判断材料を渡す形式に切り替えます。

発注側がポートフォリオで確認している4点

運用支援の依頼を検討している担当者が、ポートフォリオで見ているのは次の4点です。

第一に、業務の範囲がどこまでか。更新作業だけなのか、企画や解析まで含むのか。これが分からないと、そもそも依頼できる仕事が特定できません。

第二に、進め方が言語化できているか。依頼から反映までの流れ、確認のタイミング、緊急時の連絡方法。運用は継続業務なので、進め方が固まっている相手のほうが安心されます。

第三に、判断の基準を持っているか。「言われた通りやります」だけの相手は、担当者が指示を出し続ける必要があるため、実は手間が減りません。何を自分で決め、何を確認するのかが書いてあると、任せたあとの負荷が想像できます。

第四に、扱える環境と道具。使ったことのあるCMS、解析ツール、広告の管理画面、コミュニケーションツール。ここが自社と合っていないと、教育コストが読めません。

正直なところ、この4点に答えていないポートフォリオは、どれだけ画面がきれいでも運用の依頼にはつながりにくい傾向があります。見た目の完成度は、制作案件では判断材料になっても、運用案件では優先度が下がります。

「作品数」より「1件の深さ」が効く理由

運用支援の依頼者は、似たような更新作業の画面を10件見せられても、判断が進みません。むしろ1件について、状況、やったこと、何が変わったかが順に書かれているほうが、自社に置き換えて想像できます。

まずは、これまで関わった案件や制作物をすべて書き出します。そのうえで、数を絞ってでも「課題と解決を語れるもの」を選ぶのがコツです。多くのポートフォリオを見てきた経験からも、似たような作品を10件並べるより、意図がしっかり伝わる1〜2件のほうが評価されると感じます。数が多すぎると、読み手のモチベーションも下がってしまいます。 出典: liginc.co.jp

この指摘は制作系のポートフォリオを前提にしたものですが、運用支援ではさらに強く当てはまります。運用の場合、画面のバリエーションを増やしても伝わる情報が増えないからです。増やすべきは件数ではなく、1件あたりの記述の深さです。

1件を書く型は「状況・依頼内容・打ち手・担当範囲・変化」の5段

運用支援の実績を書くときは、次の5段で固定します。型が決まっていると、案件が終わるたびに機械的に書けるので、後回しになりません。

状況:クライアントがどんな体制で、何に困っていたか。担当者が一人で兼務していた、更新のたびに外部に見積を取っていた、といった背景を書きます。

依頼内容:契約時に何を任されたか。範囲を明示することで、読み手が自社の依頼と重ねられます。

打ち手:実際に何をしたか。ここは作業の羅列ではなく、なぜその順番でやったのかを添えます。「先に更新手順書を作った。理由は、担当者が不在のときに社内で対応できる状態を優先したから」といった形です。

担当範囲:チームで動いた案件では、自分がどこを担当したかを正確に書きます。ここを曖昧にすると、面談で詰められたときに崩れます。

変化:依頼前と後で、クライアント側の何が変わったか。数字が出せない場合は、担当者の作業がどう変わったかを書きます。「毎回発注していた軽微な修正が定例に含まれ、その都度の見積が不要になった」といった記述で十分伝わります。

まずは1件分でいいので、課題と解決を語れる実績を丁寧に作り込むことから始めてみてください。良い型を真似て、自分の思考が伝わるポートフォリオに仕上げていきましょう。 出典: liginc.co.jp

この5段は、そのまま提案書の骨格にもなります。ポートフォリオを整えることは、営業資料を整えることと同じ作業です。

「変化」を書けないときの代替

運用開始から日が浅い、あるいは成果が数字に出ていない案件では、変化の欄が埋まりません。その場合は、運用の設計を代わりに書きます。どういう頻度で何を確認し、どこで判断を分岐させているか。チェック項目の一覧そのものが、仕事の質を示す材料になります。

たとえば月次で確認している項目、異常を見つけたときの初動、クライアントに報告する基準。これらは成果ではありませんが、任せたあとの動き方が具体的に伝わるので、判断材料として機能します。

守秘義務のある案件をどう載せるか

ここが運用支援のポートフォリオで最も事故が起きる部分です。手順を固定しておきます。

掲載許可を取る手順と文面

原則は、載せる前に許可を取ることです。契約終了時にまとめて依頼するより、契約中の関係が良好なうちに聞くほうが通ります。

依頼のメールは、範囲を限定して出します。「実績として掲載してよいですか」だけだと、相手は判断できずに保留します。

件名:実績掲載についてのご相談

〇〇株式会社 △△様

いつもお世話になっております。□□です。

今後の業務実績の紹介にあたり、御社にご対応させていただいている内容の一部を掲載させていただけないかご相談させてください。掲載を希望する範囲は以下の通りです。

・掲載媒体:自身の実績紹介ページ(一般公開) ・掲載内容:業種、依頼いただいた業務の種類、進め方の概要 ・掲載しない内容:御社名、URL、画面の画像、数値データ、担当者名

御社が特定される情報は一切掲載いたしません。掲載前に文面をお送りし、ご確認いただいたうえで公開いたします。ご判断いただけますでしょうか。

よろしくお願いいたします。

この文面の要点は、載せないものを先に書いている点です。相手が心配する項目を先回りして排除すると、判断が早くなります。あわせて「掲載前に文面を確認いただく」と約束しておけば、相手のリスクはほぼゼロになります。

匿名化のレベルを3段階で持っておく

許可の状況に応じて、書き方を切り替えます。

レベル1は実名掲載。クライアント名とURLを出せる状態です。最も説得力がありますが、許可のハードルは高くなります。

レベル2は業種と規模までの記載。「アパレルのEC事業者(オンラインストア1サイト運営、社内Web担当は兼務1名)」のように、特定はできないが状況は想像できる粒度にします。運用支援の実績紹介では、この粒度が最も実用的です。

レベル3は業務内容のみ。クライアントの情報を一切出さず、担当した業務の種類と進め方だけを書きます。守秘義務が厳しい案件はここに置きます。

3段階を用意しておくと、許可が取れなかった案件も無駄になりません。レベル3であっても、業務の範囲と進め方は伝わります。

絶対に載せてはいけないもの

管理画面のスクリーンショットは、たとえ数値を隠していても避けます。画面構成そのものが企業の内部情報であり、加工漏れの事故も起きやすいためです。同じ理由で、解析ツールのグラフ、広告の管理画面、社内チャットの引用も載せません。

担当者とのやり取りの文面も、称賛の言葉であっても本人の許可なく載せないでください。推薦の言葉が欲しい場合は、掲載を前提として改めて依頼します。

未公開のキャンペーン情報、価格改定の予定、取引先の名前といった情報は、伏せたつもりでも文脈から推測されることがあります。迷ったら載せない、が唯一の安全な基準です。

実績がまだ少ない段階で何を載せるか

これから運用支援を受けたい段階では、載せる案件がありません。その場合は、実案件の代わりになる素材を自分で作ります。

一つ目は、自分のサイトの運用記録です。自分でドメインを取り、サイトを立ち上げ、更新を続け、解析を見て手を入れる。この一連の記録は、そのまま運用支援の実務そのものです。誰の許可も要らず、画面も自由に見せられます。

二つ目は、仮想の運用計画です。実在するサイトを勝手に取り上げるのは避け、架空の事業者を想定して、月次の運用計画、確認項目、緊急時の対応フローを作ります。実績ではありませんが、判断の基準を持っていることは十分に伝わります。

三つ目は、道具の習熟を示す記録です。使えるCMS、解析ツール、フォーム、決済まわり。それぞれについて、どこまで自分で設定できるかを書きます。技術寄りの領域まで対応できる場合は、開発案件がどの範囲を指すのかを整理したアプリケーション開発のお仕事を参照して、自分がどこまでを担当できるのかを言葉にしておくと、依頼側との認識のずれが減ります。

ポートフォリオサイトに自身が作成したゲームを掲載し、クライアントに実際にみてもらいます。担当箇所、開発時間、開発環境、使用言語なども掲載します。 デザイナーは自身が担当したキャラクターのキャプチャ画像などをポートフォリオにまとめるとよいでしょう。 出典: bindup.jp

ここで挙げられている「担当箇所」「開発環境」「使用言語」という項目は、職種が変わっても共通して求められる情報です。運用支援に置き換えるなら、担当した業務の範囲、扱った管理画面、対応した連絡手段が同じ役割を果たします。

掲載する場所の選び方

媒体によって、読まれ方が変わります。

自前のサイトは、更新の自由度が高く、運用支援の実務能力を示す証拠にもなります。運用支援を名乗るなら、自分のサイトが放置されている状態は避けたいところです。読み込みが遅い、表示が崩れている、更新が数年止まっている。この状態は、それ自体が判断材料になります。

ドキュメントツールを使う方法は、着手が早く、案件ごとにページを追加しやすいのが利点です。ただし共有リンクの権限設定を誤ると、意図しない範囲まで公開されます。公開前に、ログアウトした状態で必ず確認してください。

PDFは、面談前に送る資料として有効です。相手の手元に残り、社内で回覧されます。ページ数を増やしすぎると読まれないので、前半に業務範囲と進め方、後半に個別の実績という順にします。

マッチングサービスのプロフィール欄は、文字数の制限があるため、要点だけを置きます。詳細は自前のサイトへ誘導する構成にすると、両方が生きます。

見る人の読む順番に合わせて並べる

ポートフォリオを開いた人は、上から順に読むわけではありません。運用支援の依頼者は、まず「何をどこまで頼めるのか」を探します。だから最上部に置くのは、対応業務の一覧です。

その次に、進め方の説明。依頼から反映までの流れ、確認の回数、対応できる時間帯、緊急時の連絡手段。ここまでで、依頼可能かどうかの判断は八割方つきます。

個別の実績はその後です。実績を先頭に置くと、相手は自分の依頼と関係のあるものを探す作業から始めることになり、離脱が増えます。

最後に、周辺情報を置きます。使える道具の一覧、資格や学習歴、稼働可能な時間。文書作成の基本を押さえていることを示したい場合はビジネス文書検定、ネットワークやインフラの基礎知識を示したい場合はCCNA(シスコ技術者認定)のように、学習の範囲が明確な資格を挙げると、相手が能力の輪郭を掴みやすくなります。

案件が終わるたびに素材を回収する運用

ポートフォリオが更新されなくなる最大の理由は、案件終了後に素材を集めようとして、もう手元にないからです。これを防ぐには、運用中に回収を組み込みます。

月次の報告書を作っている場合、その控えを自分側に残しておきます。報告書には状況、実施内容、次月の方針が書かれているので、そのまま実績の下書きになります。個人情報や数値を含む箇所は、控えを作る段階で削っておくと後が楽です。

契約終了時には、掲載許可の確認を作業として入れます。終了の連絡を出すメールに、掲載範囲の相談を一段落だけ添えるのが自然です。関係が良い状態で終わった直後は、最も許可が出やすいタイミングでもあります。

四半期に一度、ポートフォリオ全体を見直す時間を取ります。古い実績を削り、業務範囲の記述を現状に合わせ、リンク切れを直す。この作業を定例に入れておかないと、必要になった日に半日を失います。

運用の現場から見た、選ばれるポートフォリオの共通点

20年この市場を見てきた立場から言えば、継続的に依頼が来る人のポートフォリオには、はっきりした共通点があります。自分ができることより先に、依頼側の手間がどう減るかが書いてある、という点です。

技術の一覧を並べたポートフォリオは、同じ技術を持つ相手と比較されます。一方で「更新依頼を投げてから公開までの流れ」「判断に迷ったときの確認の仕方」まで書いてあるポートフォリオは、比較の土俵が変わります。運用支援は成果物を買う取引ではなく、時間と安心を買う取引だからです。

運営者として見てきた限りでは、単価が安定している人ほど、ポートフォリオを営業資料としてではなく業務の説明書として作っています。この形にしておくと、契約後の認識のずれが減り、追加依頼の相談もしやすくなります。

もう一点、手取りの話も無関係ではありません。仲介を経由する取引では報酬から手数料が差し引かれるため、同じ仕事でも受け取る額が変わります。手数料0%で直接契約に移せる経路を持っている人は、同じ予算で依頼側もより多くを頼めるため、関係が長く続きやすい傾向があります。ポートフォリオを自前のサイトに置いておく価値は、この直接の入口を自分の手元に持てる点にもあります。

業務の重心がどこにあるかによって、見せるべき素材も変わります。設計や助言の比重が増えているならAIコンサル・業務活用支援のお仕事で扱われる支援業務の領域に近づいていますし、画面設計や体験の改善が中心になっているならUI/UXデザインのフリーランスになるには?必要スキルと案件相場で整理されているスキルの範囲が参考になります。自分の実務がどの区分に寄っているのかを定期的に確認し、その区分の言葉でポートフォリオを書き直す。この作業を年に一度でも回している人は、依頼の質が安定していきます。

転職の選考と業務委託の商談では、見られる場所が違う

同じポートフォリオでも、読む人が採用担当なのか事業側の発注担当なのかで、注目される箇所が変わります。土台は共通で構いませんが、冒頭の自己紹介と実績を並べる順番だけは差し替えたほうが通りが良くなります。

採用選考ではチームでの動き方が見られる

転職の選考では、採用担当と現場の責任者が一緒に読みます。この二人が知りたいのは、入社後にどう動く人かです。役割分担のどこを持ったのか、他の職種とどう連携したのか、判断に迷ったときに誰へ相談したのか。運用支援は一人で回す場面が多い仕事ですが、それでも社内の担当者や外部の制作会社とのやりとりは必ず発生しています。そこを書くと、組織の中で働く姿が想像できるようになります。

すべてを自分一人で完結させた、という書き方だけが並ぶと、かえって評価が下がることがあります。読み手は「連携が要る場面でどう振る舞うのか分からない」と受け取るためです。連携の相手、渡した情報、受け取った情報を1行ずつ添えるだけで印象は変わります。

隣接する職種と比べて自分の立ち位置を説明したい場合は、開発寄りの職種の水準をまとめたソフトウェア作成者の年収・単価相場を見ておくと、面談で職種の境界を説明しやすくなります。運用支援は開発と編集の中間に位置するため、どちらの軸で自分を売るのかを先に決めておくと、資料の並べ方も定まります。

業務委託では導入の手間が見られる

業務委託の商談では、外から入って短期間で戦力になるかが焦点になります。初月に何をするか、既存の担当者とどう分担するか、報告をどの粒度で出すか。ここが決まっている人は、依頼側から見て管理の手間が少ない相手です。契約や請求の進め方まで書いてあると、事務の面でも安心されます。

商談の場で必ず聞かれるのが、稼働の余裕です。受けられる曜日と時間帯、返信までの目安、緊急時の連絡手段。この3点を資料に明記しておくと、その場での確認が減り、話が具体的な内容へ進みます。逆にここが曖昧なままだと、実績がどれだけ良くても検討が止まります。

無料のツールで作るときに確認しておくこと

ポートフォリオを無料の範囲で公開する人は多く、それ自体は何の問題もありません。ただし無料プランには制約があるので、公開前に4点だけ確認しておきます。

第1に、広告や提供元の表示が入るかどうかです。ページの下部にツール名のバッジが出る場合、業務の説明書として渡す資料としては少し弱くなります。気になるなら有料に切り替えるか、面談用のPDFを別に用意します。

第2に、独自ドメインを当てられるかどうかです。当てられない場合、後から移す際にURLが変わり、名刺や過去のメールに書いた案内が切れます。長く使うつもりなら、最初からドメインを取っておくほうが手戻りが少なくなります。

第3に、書いた内容を外へ持ち出せるかどうかです。テキストと画像を後から取り出せない形式で書き溜めると、乗り換えのたびに作り直しになります。原稿は手元のファイルで管理し、公開先には流し込むだけ、という運用にしておくと安全です。

第4に、表示の速さです。運用支援を名乗る人の資料が重い、という状態は矛盾として受け取られます。画像は掲載前に縮小し、動画の自動再生は入れず、スマートフォンで開いて数秒で読み始められるかを必ず確かめてください。

おすすめの選び方としては、更新を続けられるか、相手の環境で崩れないか、無料の範囲で公開を続けられるか、この3つを満たすものであればどれでも構いません。ツールの機能差より、更新が止まるかどうかのほうが結果に効きます。

つまずきやすい失敗と、その直し方

現場でよく見かける失敗は、だいたい5つの型に収まります。どれも直し方は単純です。

第1の失敗は、担当したサイトのURLとキャプチャだけが並んでいる状態です。制作の作品集としては成立しますが、運用支援の依頼にはつながりません。掲載数を減らしてでも、1件あたりの説明を厚くするのが直し方です。

第2の失敗は、使える道具の名前を羅列して終わることです。道具は手段であって、依頼側が知りたいのはその道具で何をどう判断したかです。一覧を残すなら、隣に使用歴と、どの案件で何に使ったかを1行添えます。

第3の失敗は、更新が止まって古い情報が残ることです。終了した案件が継続中のままになっている、稼働状況が半年前のまま、といった状態は判断を狂わせます。月に1度、稼働状況と連絡先だけを見る時間を決めておけば防げます。

第4の失敗は、読み手の環境を考えていないことです。文字が小さい、余白がない、色の対比が弱い。運用支援の担当者は見やすさを整える側の人間なので、自分の資料が読みにくいと説得力を失います。

第5の失敗は、読み終わった人が次に何をすればよいか分からない構成です。相談の窓口、初回に用意してほしい情報、返信までの目安。この3つを末尾に置くだけで、問い合わせの数は変わります。

実績を書く前に、対応できる業務の一覧を作る

運用支援は守備範囲が人によって大きく違います。記事の入稿だけを受ける人、解析まで見る人、広告やメール配信まで持つ人、EC運営で受注処理まで触る人。この幅の広さが、読み手が最初につまずく原因になります。だから実績より先に、対応業務の一覧を1つ置きます。

作り方は簡単です。縦に業務を並べ、横に「主担当として実施する」「指示があれば実施する」「対応しない」の3列を置きます。業務の粒度は、依頼側が言葉として使う単位にそろえます。記事の入稿、画像の差し替え、フォームの設定変更、解析の確認と報告、SNSの投稿、在庫と受注の処理、といった具合です。

対応しない範囲を書くことをためらう人は多いのですが、ここを明記した資料のほうが信頼されます。運用支援で起きる事故の多くは、できない領域を曖昧にしたまま受けて、後から巻き取れなくなる形で発生します。断る範囲を先に示している人は、書いてある範囲は確実にやる人だと読まれます。

自分でやらない範囲を誰かと組んで埋められるなら、その体制も1行で添えます。組む相手がまだいない場合は、無理に書かずに、判断がついた時点で相談する運びにすると書いておけば十分です。

数字を載せるときの扱い方

実績に数字があると説得力は増しますが、扱いには手順が要ります。まず、契約上そもそも出せない数字があります。事業の内部情報にあたるものは、掲載の前に必ず確認を取ります。次に、出せるが誤解を招く数字があります。季節の要因で動いた値を通年の成果のように見せると、後から説明を求められて困ります。

安全なのは、値そのものではなく方向と根拠を書く方法です。更新が止まっていた状態をなくして月次で回る体制に変えた、確認の往復が減るように承認の手順を整理した、といった書き方であれば、契約上の問題も誤解も起きません。数字を出す場合は、期間と条件をセットにして、何と比べた変化なのかを必ず添えます。

数字を出せない案件では、体制の変化を書きます。依頼の前後で、誰が何をしていたかがどう変わったか。担当者の作業が減ったのか、外部への依頼が減ったのか。運用支援の価値は多くの場合ここに出ます。依頼側がいちばん嬉しいのは自分の作業が減ることなので、この観点で書き切るほうが結果的に伝わります。

ポートフォリオは一度で完成させるものではなく、育てていくものです。最初の版は、対応業務の一覧と、丁寧に書いた実績1件と、連絡先だけで構いません。公開して、反応を見て、直す。運用支援の仕事そのものと同じ進め方を自分の資料にも当てはめるのが、結局のところ最短の道になります。完璧を目指して公開できないまま数か月が過ぎるより、粗くても出して反応を集めたほうが、改善すべき場所がはっきりします。

よくある質問

Q. 守秘義務があってクライアント名を出せない場合、実績は載せられませんか?

載せられます。クライアント名とURLを伏せ、業種と体制の粒度まで匿名化すれば、業務内容と進め方は十分に伝わります。掲載前にクライアントへ文面を確認してもらう手順を入れておくと、後のトラブルを防げます。管理画面のスクリーンショットや解析データは、数値を隠していても掲載を避けてください。

Q. 掲載してよいか、どのタイミングで聞くのが良いですか?

契約中の関係が良好なうちか、契約終了の連絡を出すタイミングです。終了の直後は関係が良い状態で完了しているため、許可が出やすい傾向があります。依頼するときは「載せる範囲」と「載せない範囲」を先に書いて出すと、相手が判断しやすくなります。載せない項目を明示することが承諾率を左右します。

Q. 実績がまだ一件もない場合は何を載せればよいですか?

自分のサイトを立ち上げて運用した記録が最も有効です。更新、解析の確認、改善までを自分で回した過程は、運用支援の実務そのものです。あわせて、架空の事業者を想定した月次運用計画や確認項目の一覧を作ると、判断の基準を持っていることが伝わります。実在サイトを無断で題材にするのは避けてください。

Q. ポートフォリオはどの順番で並べるべきですか?

最上部に対応できる業務の一覧、次に依頼から反映までの進め方、その後に個別の実績、最後に道具や資格などの周辺情報という順が実用的です。運用支援の依頼者は、まず何をどこまで頼めるかを確認します。実績を先頭に置くと、相手が自分の依頼に関係するものを探す作業から始まり、離脱しやすくなります。

Q. 作品数はどのくらい必要ですか?

数を増やすより、1件を深く書くほうが効果的です。運用支援は似た作業の画面を並べても情報が増えません。状況、依頼内容、打ち手、担当範囲、変化の5段で書いた実績が数件あれば十分に判断されます。書ける材料が足りない案件は、運用の設計や確認項目を代わりに載せると、仕事の質を示せます。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月8日最終更新:2026年9月9日
丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子@SOHO編集部

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

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