貸し倉庫の副業で押さえる点|利用者の集め方と荷物を預かる責任

長谷川 奈津
長谷川 奈津
貸し倉庫の副業で押さえる点|利用者の集め方と荷物を預かる責任

この記事のポイント

  • ✓貸し倉庫副業には賃貸借と寄託の2つの形があり
  • ✓どちらを選ぶかで倉庫業法の登録が必要かどうかが変わります
  • ✓税金の扱いまでを条文にもとづいて説明します

先日、ある会社員の方から相談を受けました。「実家の使っていない倉庫を、荷物の預かり場所として貸し出そうと思っています。何か許可は必要ですか」と。

結論から申し上げると、これは「どう貸すか」で答えが真逆になります。区画を貸すだけなら登録は不要です。荷物を預かって保管する形なら、国土交通大臣の登録が必要になり、無登録で営むと罰則があります。

これ、知らない人が本当に多いんです。そして、事業を始めてから指摘されると、看板も広告も契約書も全部やり直しになります。

この記事では、貸し倉庫の副業を始める前に押さえておくべき法律の線と、利用者の集め方、預かった荷物で起きたときの責任の切り分け、そして税金の扱いまでを順番に説明します。法律は、知っていれば必ずあなたの側に立ちます。

貸し倉庫の副業には2つの形がある

まず、ここを分けてください。すべての判断がここから枝分かれします。

1つ目は、区画を貸す形です。利用者に鍵を渡し、何をどう置くかは利用者が決めます。あなたは中身を把握しません。法律上は賃貸借(または施設の利用契約)になります。世の中で「レンタル収納スペース」と呼ばれているものの多くがこの形です。

2つ目は、荷物を預かる形です。利用者から品物を受け取り、あなたが責任を持って保管します。法律上は寄託になります。中身を把握し、出し入れの記録を取り、なくしたり傷めたりしないよう管理します。

この2つは、利用者から見ると似ています。どちらも「荷物を置く場所」です。ですが、あなたが負う責任はまったく違います。

倉庫業法は「倉庫業」をこう定義しています。

この法律で「倉庫業」とは、寄託を受けた物品の倉庫における保管(保護預りその他の他の営業に付随して行われる保管又は携帯品の一時預りその他の比較的短期間に限り行われる保管であつて、保管する物品の種類、保管の態様、保管期間等からみて第六条第一項第四号の基準に適合する施設又は設備を有する倉庫において行うことが必要でないと認められるものとして政令で定めるものを除く。)を行う営業をいう。 出典: laws.e-gov.go.jp

長い条文ですが、読むべきところは冒頭だけです。「寄託を受けた物品の倉庫における保管を行う営業」。つまり、寄託を受けているかどうかが分かれ目です。区画を貸しているだけなら寄託ではないので、倉庫業には当たりません。

同じ条文の第3項では、トランクルームが「その全部又は一部を寄託を受けた個人(事業として又は事業のために寄託契約の当事者となる場合におけるものを除く。以下「消費者」という。)の物品の保管の用に供する倉庫」と定義されています。つまり、法律上のトランクルームは、個人から寄託を受ける倉庫のことです。世の中で「トランクルーム」と呼ばれている区画貸しのサービスは、法律上のトランクルームとは別物です。

副業として始める方は、ほぼ1つ目の形を選びます。理由は単純で、責任が軽く、登録も要らないからです。

倉庫業の登録が必要になる線はどこか

寄託を受ける形で営むなら、登録が必要です。条文は短くはっきりしています。

倉庫業を営もうとする者は、国土交通大臣の行う登録を受けなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp

倉庫業法の第3条です。そして、これに違反して倉庫業を営んだ者は、同法の第28条で1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金、あるいはその両方と定められています。

では、どこまでが寄託に当たらないのか。国土交通省が出している倉庫業の手引きには、寄託でないものとして次の4つが挙げられています。預金のような消費寄託、運送契約にもとづく運送途上での一時保管、修理などの役務のための保管、そして自分の物を自分で保管する自家保管です。

あわせて、政令で除外されているものも挙げられています。銀行の貸金庫のような保護預り、修理などの役務が終わったあとに付随して行われる保管、ロッカーのような外出時の携行品の一時預かり、駐車場と駐輪場です。

同じ手引きには、登録の要件についてこう書かれています。

☆登録しようとお考えになっている物件が、倉庫業を営む倉庫として使用できる施設になるかどうかを事前に地方自治体建築部局と相談することをお勧めします。 (建築基準法・都市計画法をクリアしていない物件で倉庫業を営むことはできません。) 出典: mlit.go.jp

つまり、建物が建築基準法と都市計画法の要件を満たしていないと、そもそも登録の入口に立てません。登録拒否の要件には、施設設備の基準に適合しないこと(検査済証がないなど)も含まれています。また、倉庫管理主任者を確実に選任すると認められない場合も拒否されます。

※ 自分の計画がどちらの形に当たるか判断が付かないときは、契約書を作る前に地方運輸局へ相談してください。契約の形を決めてから直すのは、非常に手間がかかります。

誤認させる表示の禁止。書き方だけで違反になる

ここが、私がいちばん注意していただきたい部分です。区画貸しで登録が不要だとしても、書き方によって違反になります。

倉庫業法の第25条の10は、倉庫業を営む者以外の者が、その行う営業が寄託を受けた物品の倉庫における保管を行うものであると人を誤認させるような表示、広告その他の行為をしてはならないと定めています。

つまり、区画を貸しているだけなのに「預かります」「保管します」と書いてはいけないということです。国土交通省の手引きでは、この禁止を説明したうえで、誤認させる表現の例が具体的に挙げられています。

未登録者による誤認行為の禁止(倉庫業法第25条の10)【罰則:50万円以下の罰金】 ・・・責任を持ってお預かりします。 ・・・確実に保管いたします。 出典: mlit.go.jp

この2つの言い回しは、収納サービスの案内文でほとんど定型のように使われています。だからこそ、区画貸しで始める方は自分の案内文を先に見直してください。手引きの本文は罰則を古い言い方で書いていますが、現行の条文では拘禁刑という言葉に改められています。

国土交通大臣は、誤認させないようにするための措置をとるべきことを命じることができ、この命令に違反した場合は同法の第29条で50万円以下の罰金と定められています。

では、どう書けばよいのか。区画貸しなら、次のように書きます。荷物を預かるのではなく、収納のための区画を貸す。保管の責任を負うのではなく、施設と設備を提供する。鍵の管理は利用者が行う。この3点をそのまま文章にすれば、誤認は生まれません。

広告の文章を書くときは、動詞に気をつけてください。「預かる」「保管する」は寄託の動詞です。「貸す」「利用いただく」に置き換えます。これだけで、違反の危険はほぼなくなります。

契約書や案内文の書き方そのものに不安がある方は、伝わる文書の作法を体系的に押さえておくと安心です。ビジネス文書検定で問われる範囲は、契約書の条項を並べる作業にもそのまま効きます。

認定トランクルームという制度

寄託を受ける形で営む方に向けて、もう1つ制度があります。

倉庫業法の第25条は、トランクルームを営業に使用する倉庫業者が、トランクルームごとに、そのトランクルームが基準に適合して優良である旨の国土交通大臣の認定を受けることができると定めています。

そして、第25条の7では、認定を受けていない倉庫について「認定トランクルーム」「優良トランクルーム」という名称、またはこれらと紛らわしい名称を用いてはならないと定めています。違反した場合は同法の第30条で30万円以下の罰金です。

つまり、認定を受けていないのに「優良トランクルーム」と書くと、それ自体が罰則の対象になります。紛らわしい名称も対象なので、似た言い回しも避けてください。

副業として区画貸しから始める方には、この制度は直接関係しません。ただ、利用者は「認定」という言葉を知っていることがあります。問い合わせで聞かれたときに、自分のサービスがどの形なのかを正しく説明できるようにしておいてください。正直に説明したほうが、信用されます。

需要はどこから来ているのか

制度の話が続いたので、需要の側を整理します。

貸し倉庫や収納スペースの需要は、住まいの広さと持ち物の量のずれから生まれます。ある不動産会社の解説では、住宅の広さの変化がこう説明されています。

平成12年度(2000年度)に平均96.9㎡だった1戸当たりの住宅延べ床面積は、令和元年度(2019年)には82.7㎡と、約15%狭くなっています。 出典: kasegroup.co.jp

数字の出どころは公的な統計ではなく事業者の解説なので、そのまま自分の事業計画の根拠にはしないでください。ただ、傾向として住まいの外に収納を求める人が増えているという見立ては、実務の相談件数の感触とも合います。

需要の中身を分けると、次のようになります。

季節の物です。スキーやサーフィンの道具、扇風機と暖房器具、季節の衣類。年に2回出し入れする形で、長く借りてもらえます。

思い出の物です。捨てられないが家に置く場所がないもの。出し入れがほとんどなく、いちばん長く続く需要です。

事業の物です。在庫、書類、什器。個人事業者や小さな会社が借ります。単価が高い一方で、出し入れが多く、荷物の量も変動します。

引っ越しと建て替えの合間です。数か月だけの需要で、回転が速い代わりに埋まらない月が出ます。

自分の物件の立地が、どの需要に合うかを先に決めてください。住宅地の近くなら季節の物と思い出の物、幹線道路の近くで車を付けられるなら事業の物です。

物件を決める前に確かめる3つのこと

ここを飛ばして契約すると、使えない建物の賃料を払い続けることになります。3つに絞って説明します。

1つ目は用途地域です。都市計画によって、その土地に建てられる建物と使える用途が決まっています。住居専用の地域では、倉庫として使える範囲が限られます。建築基準法の第87条第2項は、建築物の用途を変更する場合に用途の制限の規定を準用すると定めています。つまり、工事をしなくても用途の制限は効きます。市区町村の都市計画の窓口で、住所を伝えて確認してください。

2つ目は確認申請の要否です。建築基準法の第87条第1項は、用途を変更して同法の第6条第1項第1号の特殊建築物にする場合に、確認申請の手続きを準用すると定めています。その第1号は「その用途に供する部分の床面積の合計が二百平方メートルを超えるもの」です。200平方メートルを超える規模で用途を変えるときは、確認申請の対象になります。倉庫を区画に分けて貸す場合は、対象になる部分の面積を自分で計算してください。

3つ目は、借りた物件を転貸するのかどうかです。他人から借りた建物を利用者に貸す形なら、貸主の承諾が必要です。

賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。 出典: laws.e-gov.go.jp

民法の第612条です。同じ条文の第2項では、これに違反して第三者に使わせたときは貸主が契約を解除できると定められています。つまり、承諾のない転貸は、いつ止められてもおかしくない状態です。承諾は必ず書面で取ってください。口頭の了解では、担当者が変わった時点で証明できなくなります。

初期費用と毎月の支出を書き出す

数字を紙に書き出さないまま始める方が、本当に多いです。10分で終わりますから、必ずやってください。

初期にかかるものを並べます。物件を借りる場合の敷金と礼金と仲介手数料。区画を分ける仕切りと棚。鍵と施錠の仕組み。照明。防犯カメラ。湿気と温度の対策。掲載用の写真。案内の看板。合わせて、小規模でも数十万円から数百万円の幅になります。

毎月かかるものも並べます。賃料または固定資産税。電気代。損害保険料。清掃と点検の費用。掲載先に払う手数料。管理の道具。

このうち、見落とされやすいものを3つ挙げます。

1つは湿気の対策です。荷物にかびが生えたという申し立ては、実際にいちばん多いものの1つです。区画貸しであっても、施設として通常求められる状態を保つ責任は残ります。換気と除湿を最初から計算に入れてください。

2つは防犯です。盗難が起きると、区画貸しであっても管理の問題を問われます。施錠の仕組み、カメラ、出入りの記録。ここを削ると、1回の事故で全部を失います。

3つは保険です。施設に起因する損害を対象にした保険に入ってから営業を始めてください。個人で負える金額ではありません。

支出を書き出したら、区画あたりの月額と、埋まらなければ赤字になる区画数を計算します。この数が全区画の半分を超えているなら、その物件は見送ったほうがいいです。

区画の作り方と、埋まりやすい大きさ

物件が決まったら、次は中をどう分けるかです。ここで収益がほぼ決まります。

大きい区画を少なく作るか、小さい区画を多く作るか。相談でよく聞かれる分かれ道です。結論から申し上げると、小さい区画を多く作ったほうが埋まります。理由は3つあります。

1つは、個人の需要が小さいことです。季節の道具と衣類を預ける目的なら、畳1枚ほどの広さで足ります。大きい区画は、必要としている人の数が少ないので、空いたときに次が決まりません。

2つは、金額の壁です。個人が収納に払える月額には上限があります。区画を小さくして単価を下げると、検討してもらえる人の数が増えます。

3つは、空室の影響が分散することです。区画が4つしかない施設で1つ空くと、売上が25%落ちます。20区画あれば5%です。

ただし、小さくしすぎると別の問題が出ます。1区画あたりの管理の手間は大きさに関係なく発生するので、数が増えるほど連絡と集金の作業が増えます。自分が回せる区画数を先に決めてから、大きさを逆算してください。

寸法を決めるときに押さえる点も挙げます。奥行きが深すぎる区画は、奥の荷物が取り出せなくなるので嫌われます。高さは、棚を入れられる高さがあると価値が上がります。通路は、台車が通れる幅を確保してください。ここを削ると、事業の物を扱う利用者に選ばれなくなります。

そして、区画の表示です。番号を大きく分かりやすく付け、料金と寸法を案内に載せます。利用者が現地で自分の区画を探して迷う施設は、最初の印象で損をします。

利用者の集め方と、書いてよい言葉

集め方は、大きく3つです。

1つ目は、掲載先を使う形です。収納スペースを探す人が見る場所に出します。手数料はかかりますが、最初の入口としては現実的です。契約する前に、手数料が何に対して掛かるのか、入金がいつになるのかを確認してください。

2つ目は、地域での告知です。近隣への投函、地域の掲示、店舗との連携。半径2キロほどの範囲に住んでいる人が主な利用者になるので、狭い範囲に丁寧に届けるほうが効きます。

3つ目は、検索からの流入です。地域名と用途を組み合わせた言葉で探されます。ここは時間がかかりますが、手数料がかかりません。

そして、どの経路でも共通する注意があります。前の章で説明したとおり、区画貸しなら「預かります」「保管します」と書いてはいけません。書いてよいのは、区画を貸す、施設を利用いただく、鍵は利用者が管理する、という表現です。

案内に書いておくと問い合わせが減る項目も挙げておきます。区画の寸法(幅と奥行きと高さ)、出入りできる時間、車を付けられるか、台車があるか、預けられない物の一覧、料金と支払い方法、最短の契約期間。この7つを書くだけで、行き違いによる連絡がかなり減ります。

写真も添えてください。区画の中を空の状態で1枚、通路を1枚、建物の外観を1枚。この3枚があると、来る前に判断してもらえます。外観の写真を出さない施設は、防犯の面で不安を持たれます。

集客や広告の設計そのものを仕事として引き受ける道もあります。企業がどこまで外部に任せているかはAI・マーケティング・セキュリティのお仕事で業務の範囲が整理されています。自分の事業で覚えたことが、そのまま受注できる内容になります。

利用契約に書いておくべきこと

ここを曖昧にしたまま貸すと、必ず揉めます。行政書士として実際に相談を受けた項目から、優先して書くべきものを挙げます。

契約の性質です。これが区画の賃貸借であり、寄託ではないこと。荷物の管理は利用者が行うこと。この一文が、後の責任の切り分けをすべて決めます。

預けられない物の一覧です。危険物、灯油やガソリン、爆発するおそれのある物、腐るおそれのある物、生き物、法律で所持が禁じられている物、現金と貴金属。一覧に入れていない物が持ち込まれたときの扱いも書いておきます。

料金と支払いの時期、滞納したときの扱いです。何か月滞納したらどうするのか。ここを書いていないと、滞納が続いても荷物に手を出せません。

契約が終わったあとの荷物の扱いです。これがもっとも揉めます。期限までに引き取られなかった荷物をどうするのか。勝手に処分すると、後で損害賠償を求められるおそれがあります。※ 処分の条項は個別の事情で有効性の判断が変わるため、金額の大きい荷物を扱う場合は弁護士に相談してください。

損害の負担です。施設に起因する損害と、利用者の持ち込んだ物に起因する損害を分けて書きます。区画貸しであっても、施設の不備による損害は施設側の責任になります。

鍵の扱いです。誰が持つのか、なくしたときの費用、解錠が必要になった場合の手続き。

解約の手続きと予告の期間です。何日前までに知らせるのか、日割りにするのか。

これらを1枚にまとめ、利用者に署名または電子的な同意をもらいます。あとから口で説明する形は、揉めたときに何の役にも立ちません。

条項の数についても一言添えます。長すぎる契約書は読まれません。読まれない条項は、相手が知らなかったと主張したときに効きにくくなります。私が作るときは、利用者に必ず守ってほしい項目を上位に置き、事務的な条項は後ろに回します。そして、預けられない物の一覧と、契約が終わったあとの荷物の扱いだけは、署名欄のすぐ上に置きます。目に入る位置に書いてあるかどうかで、後の話し合いの進み方が変わります。

契約書の様式は、一度作って終わりにしないでください。実際に揉めた項目、質問が多かった項目を、そのつど書き足します。半年から1年で、自分の施設に合った形になります。

荷物で起きるトラブルと責任の切り分け

相談として持ち込まれるものは、種類がそう多くありません。型を知っておけば、ほとんど手前で止められます。

かびと水濡れです。荷物が傷んだと申し立てられます。切り分けは、原因が施設にあるか荷物の性質にあるかです。屋根からの漏水なら施設の責任です。段ボールに入れた衣類が湿気を吸ったのなら、施設が通常求められる換気を行っていたかどうかが問われます。手前の手当ては、湿度の記録を残すことと、契約書で保管に適さない物を明示することです。

盗難です。切り分けは、施錠と防犯の仕組みが通常求められる水準にあったかどうかです。手前の手当ては、カメラと出入りの記録、そして高額な物を預けないよう契約書に書くことです。

滞納です。連絡が取れなくなり、荷物だけが残ります。手前の手当ては、契約時に連絡先を複数取り、緊急時の連絡先も書いてもらうことです。滞納が続いたときの手続きを契約書に順を追って書いておくと、対応が早くなります。

近隣との摩擦です。車の出入り、夜間の音。手前の手当ては、出入りできる時間を決めて掲示することです。

そして、いちばん重いのが荷物の放置です。契約が終わっても引き取られない。処分できないまま区画が埋まります。手前の手当ては、契約書に引き取りの期限と、期限後の扱いを具体的に書くことです。※ ここは相手の財産に関わるので、書き方を誤ると条項そのものが使えなくなります。金額が大きくなりそうなときは、契約書の段階で専門家に見てもらってください。

どの型にも共通しているのは、設備ではなく契約書と記録で守れるということです。法律は、書いてある人の側に立ちます。

収益が出たときの税金と会社への向き合い方

数字が動き始めたら、ここを整えます。

まず、確定申告が必要になる線です。国税庁は、給与を1か所から受けていて源泉徴収の対象になっている人について、給与所得と退職所得を除いた各種の所得金額の合計額が20万円を超える場合に確定申告をしなければならないと案内しています。所得は、売上ではなく売上から必要経費を引いた残りです。

次に、所得の区分です。国税庁は不動産所得を「土地や建物などの不動産の貸付け」による所得(事業所得または譲渡所得に該当するものを除く)と説明しています。区画を貸すだけの形は不動産所得に近く、出し入れの立ち会いや管理といった役務が大きくなると事業所得や雑所得として扱われる場合があります。この線引きは実態で判断されるため、断定はできません。最初の確定申告の前に、自分の形を税務署か税理士に説明して確認してください。

参考として、建物の貸付けが事業として行われているかどうかの判定には目安があります。国税庁は、貸間やアパートについては貸与できる独立した室数がおおむね10室以上、独立家屋の貸付けについてはおおむね5棟以上であれば、原則として事業として行われているものとして取り扱うと案内しています。区画に分けた倉庫がこの目安にどう当たるかは、実態で判断されます。

届出の期限も押さえておきます。国税庁は、個人事業の開廃業等届出書の提出期限を「事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで」と案内しています。よく言われる「1か月以内」は現在の記載と違います。青色申告の承認申請は原則としてその年の3月15日までで、その年の1月16日以後に新たに事業を開始した場合や不動産の貸付けを始めた場合は、その日から2か月以内です。

住民税についても触れておきます。副業の収益が給与以外の所得であれば、住民税の徴収方法として普通徴収を選べる場合があります。選べるのは給与所得以外の所得についてで、副業がアルバイトなどの給与であれば選べません。

会社の就業規則も確認してください。厚生労働省のモデル就業規則の令和7年12月版では、副業と兼業について第70条に定めが置かれています。届出を求める形が基本で、禁止や制限ができる事由として、労務の提供に支障がある場合、企業秘密が漏れる場合、会社の名誉や信用を損なう場合、競業により会社の利益を害する場合の4つが挙げられています。

撤退の線と、契約の縛りを先に確認する

始める前に決めておくべきことがあります。

1つは、何か月続けて赤字なら止めるかです。収納の需要は動きが遅く、埋まるまでに時間がかかります。半年から1年を一つの目安にし、その間に埋まらない区画の割合を見て判断します。

2つは、物件の契約の縛りです。事業用の賃貸借は、解約の予告期間が長く設定されていることがあります。契約書で予告の期間と、中途解約したときの違約金を確認してください。ここを見ずに契約して、止めたいのに1年分の賃料が残った例を実際に見ています。

3つは、利用者の荷物をどうするかです。事業を止めるときに区画が埋まっていたら、利用者に移してもらう期間が必要です。契約書に、施設側の都合で契約を終える場合の予告期間を入れておいてください。入れていないと、止めたいのに止められません。

4つは、設備の処分です。仕切り、棚、カメラ。撤去の費用も計算に入れます。

撤退の線を決めてある方は、実際には撤退しません。線があると判断が早くなり、改善の手も早く出るからです。逆に線のない方ほど、迷ったまま赤字を続けます。

もう1つ、判断を助ける見方をお伝えします。埋まらない原因は、料金、寸法、立地、案内の4つのどれかです。料金は下げれば試せます。寸法は仕切りを動かせば試せます。案内は書き直せば試せます。この3つを試し切ったうえで埋まらないなら、原因は立地です。立地は手を入れられません。そこまで来たら止める判断が正しく、それ以上の投資は損を重ねるだけです。試せるものから順に潰していくと、止めるべきときが自分で分かります。

20年この市場を見てきた立場からの観察

最後に、フリーランスと在宅の仕事の市場を長く運営してきた立場から、いくつか書いておきます。

運営者として見てきた限りでは、この種の事業を続けている方には共通点があります。設備でなく書面を先に整えているのです。契約書、案内文、記録の様式。ここが整っていると、トラブルが起きても短時間で終わります。整っていない方は、1件の申し立てに何週間も取られ、そのあいだ集客が止まります。

もう1つの観察は、この事業で身に付く力が別の仕事に移せるということです。契約書を読む力、条件を書き出す力、記録を残す力。これは、業務委託の契約を自分で確認する力とまったく同じものです。実際に、収納の事業から始めて、他の個人事業者の契約や届出を手伝うようになった方を見ています。企業側がどこまで外部に任せているかはAIコンサル・業務活用支援のお仕事で業務の範囲が整理されています。

数字の見方についても一言添えます。収益は額面ではなく手元に残る額で判断してください。仲介の手数料が乗る経路で仕事を受けると、同じ依頼でも受け取る額が変わります。手数料0%の直接取引では、依頼する側は同じ予算でより多く頼めて、受ける側は手元に残る額が厚くなります。この構造は抽象論ではなく、長く見てきた実感です。地域で顔の見える相手と直接契約する収納の事業は、もともとこの形に近いところにあります。

予約と入金の管理を仕組みにしたいと考える方も増えています。自分で作るか外に頼むかを判断するときの目安として、ソフトウェア作成者の年収・単価相場で開発側の単価の水準を見ておくと、見積もりの読み方が分かります。

明日やることを1つ決めるとしたら、物件を見に行くことではありません。自分がやろうとしているのが区画貸しなのか寄託なのかを、紙に1行で書くことです。そこが決まれば、必要な手続き、書いてよい言葉、契約書の形が全部決まります。順番を守れば、法律は必ずあなたの味方になります。

よくある質問

Q. 貸し倉庫の副業に倉庫業法の登録は必要ですか?

区画を貸すだけの形なら不要です。倉庫業法は倉庫業を「寄託を受けた物品の倉庫における保管を行う営業」と定義しているため、荷物を預かって保管する形にすると国土交通大臣の登録が必要になります。無登録で営むと1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金の対象です。

Q. 案内文に「大切な荷物をお預かりします」と書いてもいいですか?

区画を貸すだけの形では書けません。倉庫業法第25条の10は、倉庫業を営む者以外の者が、寄託を受けて保管するものだと人を誤認させる表示や広告をすることを禁じています。国土交通省の手引きでも「責任を持ってお預かりします」が誤認の例に挙げられています。「区画を貸す」「施設を利用いただく」と書いてください。

Q. 借りている倉庫を利用者に貸してもいいですか?

貸主の承諾が必要です。民法第612条は、貸主の承諾を得なければ賃借物を転貸できないと定め、違反した場合は貸主が契約を解除できるとしています。承諾は必ず書面で取ってください。あわせて、用途地域の制限と、200平方メートルを超える用途変更なら確認申請の要否も確認します。

Q. 契約が終わったのに荷物が引き取られないときはどうすればいいですか?

勝手に処分すると損害賠償を求められるおそれがあります。契約書に引き取りの期限と期限後の扱いを具体的に書いておくことが、唯一の予防策です。あわせて契約時に連絡先を複数もらっておきます。金額の大きい荷物が残った場合は、処分する前に弁護士に相談してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年3月13日最終更新:2026年9月30日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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