フリーランスの通訳の年収|単価と仕事の取り方


この記事のポイント
- ✓フリーランスの通訳の年収は
- ✓日額の単価と稼働日数でほぼ決まります
- ✓逐次通訳と同時通訳の単価の目安
フリーランスの通訳の年収は、「1日あたりの単価」と「1年に何日仕事が入るか」の掛け算でほぼ決まります。通訳者の養成スクールが示す目安では、駆け出しの逐次通訳で日額25,000円前後、経験を積んで同時通訳まで担えるようになると日額50,000円以上の仕事も出てきます。月に15日の稼働なら、年間の売上は450万円から900万円ほどの幅になります。ただしこれは経費や税金を引く前の売上で、仕事の入り方は季節や景気で大きく揺れます。
この記事では、通訳の仕事の種類と報酬の決まり方、稼働日数ごとの年収の試算、年収を左右する要因、仕事の取り方、源泉徴収や確定申告の扱いまでを順に整理します。語学を活かしてフリーランスの通訳を目指す人が、どのくらいの収入を見込めるのか、そのために何から始めればよいのかが分かる構成にしています。
フリーランスの通訳の仕事にはどんな種類があるか
通訳と一口に言っても、場面や方式によって求められる力も報酬も違います。年収を考える前に、どんな仕事があるのかを整理しておきます。
方式による違い
- 逐次通訳:話し手が区切りながら話し、その区切りごとに訳す方式です。商談、社内会議、工場の視察、記者会見などで使われます。
- 同時通訳:話し手の発言とほぼ同時に訳し続ける方式です。国際会議やシンポジウム、オンラインの大規模な会議などで使われ、通常は2人から3人が交代で担当します。
- ウィスパリング:少人数の聞き手の耳元で、小声で同時に訳す方式です。会議に参加する一部の外国人のために行います。
一般に、同時通訳は高い集中力と訓練が必要なため、逐次通訳より単価が高くなります。逐次通訳で経験を積み、訓練を重ねて同時通訳へ進む人が多いのはこのためです。
場面による違い
- ビジネス通訳:商談、会議、研修、視察、海外からの来客の対応など
- 会議通訳:国際会議、学会、シンポジウム、記者会見など
- 観光の通訳ガイド:訪日外国人の旅行に付き添って案内する仕事
- 医療や司法の通訳:病院での診察や、警察・裁判所の手続きでの通訳
- リモート通訳:オンライン会議やビデオ通話で行う通訳
コロナ禍以降、オンライン会議での通訳が定着し、自宅から仕事を受けられる場面も広がりました。移動の時間が減る分、1日に複数の仕事を組み合わせられることもあり、収入の組み立て方の選択肢が増えています。ただしオンラインの通訳では、音声の途切れや機材の不具合が通訳の質に直結します。安定した回線、雑音を拾いにくいマイク、予備の機材を用意しておくことが、依頼主からの信頼と継続の依頼につながります。会議の前に接続の確認の時間を取ってもらえるかも、引き受けるときに確かめておきたい点です。
雇用か、フリーランスか
通訳者として働く人の中には、企業の社内通訳として雇われている人や、派遣社員として特定の会社で通訳をしている人もいます。雇用されて働く場合は収入が安定する一方、担当する分野や仕事量は勤め先の事情で決まります。フリーランスの通訳者は、通訳会社に登録して仕事の紹介を受けたり、企業から直接依頼を受けたりして、案件ごとに報酬を受け取ります。収入の上下は大きくなりますが、単価や分野を自分で選べるのが特徴です。
フリーランスの通訳の報酬の決まり方
フリーランスの通訳の報酬は、多くの場合、拘束される時間で決まります。1日(8時間程度)、半日(4時間程度)、1時間単位といった区切りで単価が決められ、拘束時間を超えた場合は延長料金が加わる仕組みが一般的です。
通訳者の養成スクールを運営するサイマル・アカデミーは、フリーランスの通訳者の報酬について次のように説明しています。
社内会議や視察に同行して逐次通訳をするようなケースでは20,000円~50,000円/日程度、国際会議やVIPの挨拶などの同時通訳を行うようなケースでは、70,000円/日を超える報酬となる場合もあります。 フリーランスをスタートしたばかりでレートが25,000円/日、月15日くらい仕事が入るとすると、年収は450万円くらいになります。 出典: サイマル・アカデミー「経験とスキルがポイントとなる『通訳者の収入』」
この数字は、通訳会社を通じて受ける仕事の目安として示されたもので、言語や分野、地域、会社によって違います。公的な統計で通訳の単価を職種別に示したものは見当たらないため、実際の単価は登録する通訳会社や取引先の条件で確かめる必要があります。
報酬の内訳として、単価のほかに次のような項目があるかを確かめておくと、手取りの見通しが立てやすくなります。
- 延長料金:拘束時間を超えたときの追加の報酬
- 交通費と移動時間:現場までの交通費が別に払われるか、遠方への移動時間が拘束時間に含まれるか
- キャンセル料:依頼主の都合で仕事が取り消されたときに払われる額
- 準備の資料:事前に資料が渡されるか、準備の時間が報酬に含まれるか
特にキャンセル料は、通訳の仕事では大切な条件です。数日前に仕事が取り消されると、その日に別の仕事を入れることは難しく、収入がそのまま失われます。取り消しの時期に応じて何割の報酬が払われるかを、契約の前に確かめておきます。
稼働日数ごとの年収の試算
フリーランスの通訳の年収を、日額の単価と稼働日数の組み合わせで試算すると次のようになります。いずれも売上の額で、経費や税金、社会保険料を引く前の数字です。
| 日額の単価 | 月10日の稼働 | 月15日の稼働 |
|---|---|---|
| 25,000円 | 年300万円 | 年450万円 |
| 35,000円 | 年420万円 | 年630万円 |
| 50,000円 | 年600万円 | 年900万円 |
この表の数字は、毎月同じ日数の仕事が入ることを前提にしています。実際には、通訳の仕事は季節による波が大きく、国際会議や展示会、企業の予算の時期に仕事が集中する月と、ほとんど仕事が入らない月があります。年間を通して月に15日の稼働を保てる人は、経験を積んで複数の取引先を持つ一部の人に限られると考えておくのが現実的です。
また、通訳の仕事は1日の拘束時間だけでは終わりません。会議の資料を読み、専門用語を調べ、単語の一覧を作る準備の時間がかかります。専門性の高い会議では、本番の何倍もの時間を準備にかけることも珍しくありません。年収を考えるときは、本番の日数だけでなく、準備にかかる日数を含めた「実際に働いた日数」で割り戻して、1日あたりの収入を見ておくと判断を誤りにくくなります。
売上から差し引かれるものも見ておきます。日額35,000円で月に12日の仕事を1年続けると、売上は504万円です。ここから、資料代や通訳学校の受講料、交通費、通信費などの経費、国民年金と国民健康保険の保険料、所得税と住民税が差し引かれます。経費や保険料は人によって違いますが、売上のすべてが手元に残るわけではないことを前提に、生活に必要な手取りから逆算して、目標とする単価と稼働日数を決めておくと計画が立てやすくなります。
たとえば日額35,000円の仕事を月に12日受け、それぞれに半日の準備が必要だとすると、実際に働いた日数は月18日になり、1日あたりの収入はおよそ23,000円になります。準備の時間を短くする工夫や、準備した知識を次の仕事に活かせる分野に絞ることが、時間あたりの収入を上げる近道になります。
フリーランスの通訳の仕事の流れ
年収の見通しを立てるには、1件の仕事にどれだけの時間がかかるかを知っておく必要があります。通訳会社から紹介を受けて、企業の会議で逐次通訳をする場合の流れを例に整理します。
- 依頼の打診を受ける:通訳会社から、日時、場所、分野、方式、単価の打診が届きます。日程が合えば引き受けの返事をします。人気の高い日程は早い者勝ちになることが多く、返事の早さが仕事の数に影響します。
- 資料を受け取る:会議の議題、参加者の名簿、過去の議事録、製品の資料などを受け取ります。資料が届くのは本番の数日前ということも珍しくありません。
- 準備をする:資料を読み込み、専門用語や固有名詞の訳語を調べて一覧にします。参加する企業のWebサイトや決算資料、業界のニュースも確かめ、話題になりそうな内容を予習します。
- 本番の通訳をする:会場には早めに入り、担当者と進行や用語を確認します。本番では、話し手の発言を区切りごとに訳し、聞き取れなかった部分は確認を求めます。
- 振り返りと報告をする:本番で迷った用語や、訳し方を変えた表現を記録し、次の仕事に備えます。通訳会社に報告を求められることもあります。
- 請求と入金を確かめる:通訳会社を通じた仕事では、月末にまとめて請求し、翌月以降に入金されるのが一般的です。
この流れのうち、報酬の対象になるのは主に4の本番の時間です。2と3の準備、5の振り返りは、報酬に含まれていないことがほとんどです。本番が1日でも、準備に1日から2日かかる仕事は、時間あたりで見ると単価が半分以下になります。年収を考えるときは、本番の日数ではなく、準備を含めた1件あたりの時間で見積もることが欠かせません。
年収を左右する要因
同じフリーランスの通訳でも、年収には大きな差が生まれます。差を生む主な要因を整理します。
言語の組み合わせ
日本語と英語の通訳は、仕事の数が多い一方で、担える人も多いため競争があります。中国語や韓国語、スペイン語などは、地域や業界によって需要が偏ります。担える人が少ない言語は、仕事の数は少なくても単価が高くなることがあります。どの言語でも、母語に近い水準の日本語の表現力が求められる点は変わりません。
専門分野
医薬、金融、法律、IT、製造業の技術など、専門用語が多く、背景の知識が必要な分野は、単価が高くなりやすい傾向があります。分野を絞って経験を積むと、準備にかかる時間も短くなり、同じ取引先から続けて依頼を受けやすくなります。
方式
前に書いたとおり、同時通訳は逐次通訳より単価が高くなります。同時通訳を担えるようになるには、通訳学校での訓練や、現場での経験の積み重ねが必要です。
働く地域と移動への対応
国際会議や外資系企業が集まる都市部は、仕事の数が多くなります。地方に住んでいても、オンラインの通訳や、出張の仕事に応じられると、受けられる仕事の幅が広がります。土日や早朝、夜間の仕事、海外への出張に応じられるかどうかも、仕事の数に影響します。
取引の経路
通訳会社を通じて受ける仕事は、営業の手間がかからない一方で、通訳会社の手数料が差し引かれた額が報酬になります。企業から直接依頼を受ける仕事は、単価を自分で決められますが、営業や請求、条件の交渉を自分で行う必要があります。多くのフリーランスの通訳者は、両方を組み合わせて収入を安定させています。
仕事の取り方
フリーランスの通訳として仕事を得る方法は、大きく分けて4つあります。
- 通訳会社に登録する:通訳会社の登録の試験(トライアル)を受け、合格すると仕事の紹介を受けられます。経験の浅い時期は、まず複数の通訳会社に登録し、実績を積むのが一般的です。
- 企業から直接依頼を受ける:前職の人脈や、通訳会社の仕事で知り合った担当者から、直接依頼が来ることがあります。継続して依頼を受けられると、収入の安定につながります。
- マッチングサイトや求人サイトを使う:オンライン通訳や短時間の通訳の仕事が掲載されることがあります。単価や条件をよく確かめて選びます。
- 観光の通訳ガイドとして登録する:旅行会社やガイドの紹介団体に登録し、訪日外国人の旅行の案内を受けます。
通訳会社の登録の試験では、語学力だけでなく、訳の正確さ、話し方、分野の知識が見られます。履歴書には、これまでに担当した通訳の場面、分野、人数の規模を具体的に書きます。通訳の経験がまだ少ない人は、社内での通訳や、ボランティアでの通訳の経験も、場面と内容を明確にして書くと評価の材料になります。
字幕の翻訳や動画の通訳など、映像に関わる仕事にも関心がある人は、映像翻訳・字幕・通訳のお仕事で、映像翻訳や通訳の仕事の種類と求められるスキルを確かめられます。通訳と翻訳を組み合わせると、通訳の仕事が少ない月を翻訳で補えるため、年収の波を小さくできます。
通訳会社の登録の試験に向けた準備
フリーランスの通訳として最初の仕事を得る入口になるのが、通訳会社の登録の試験です。試験の形式は会社によって違いますが、語学の筆記に加えて、録音された音声を聞いて訳す試験や、面接での模擬の通訳が行われることが多くあります。準備として次のことに取り組んでおくと、本番で力を出しやすくなります。
- 自己紹介を両方の言語で用意する:通訳の経験、得意な分野、対応できる方式を、日本語と外国語の両方で1分から2分で話せるようにしておきます。
- ニュースを訳す練習をする:経済や国際のニュースを聞いて、区切りごとに訳す練習を続けると、逐次通訳の基礎が身につきます。
- 数字と固有名詞に慣れる:金額、日付、割合、社名、人名は、通訳で誤りが起きやすい部分です。数字を聞き取ってすぐに訳す練習を重ねておきます。
- メモの取り方を決める:逐次通訳では、話の要点を記号で素早く書き留める技術が欠かせません。自分なりの記号を決めておくと、長い発言でも訳し漏れが減ります。
- 得意な分野の用語集を作る:前職の業界や、関心のある分野の用語を両方の言語で整理しておくと、面接で得意な分野を具体的に示せます。
試験に一度で合格できなくても、複数の通訳会社を受けるうちに、求められる水準と自分の課題が見えてきます。不合格だった試験の内容を振り返り、次の試験までに弱い部分を補うことを繰り返すのが、遠回りに見えて確実な方法です。
全国通訳案内士と地域通訳案内士
訪日外国人の旅行を案内する通訳ガイドの仕事には、国家資格の制度があります。観光庁は、全国通訳案内士について次のように説明しています。
全国通訳案内士は国家試験に合格した方であって、高度な外国語能力や日本全国の歴史・地理・文化等の観光に関する質の高い知識を有する者であり、「全国通訳案内士」として都道府県の登録を受けた方々になります。 出典: 観光庁「通訳ガイド制度」
2018年1月4日に改正通訳案内士法が施行され、資格を持たない人も、報酬を得て外国語で観光の案内ができるようになりました。ただし、資格を持たない人は「全国通訳案内士」「地域通訳案内士」やそれに似た名称を使えません。地域通訳案内士は、特定の地域で、自治体が行う研修を受けて登録を受けた人を指します。
資格がなくても仕事はできますが、旅行会社や依頼主にとって、資格は語学力と観光の知識を外から確かめられる材料になります。全国通訳案内士は、5年に1度、観光庁が登録した研修機関の研修を受ける必要があります。試験の内容と難易度は、全国通訳案内士で科目ごとに確かめられます。
韓国語の通訳ガイドやビジネス通訳を目指す人は、語学力を示す材料として検定も役立ちます。ハングル能力検定では、級ごとの水準と試験の内容を紹介しています。
依頼を受ける前に確かめる条件
企業から直接依頼を受ける場合は、条件を自分で確かめ、書面やメールに残す必要があります。2024年11月に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法では、発注する事業者に、業務の内容、報酬の額、支払期日などの取引条件を、書面やメールで明示することを求めています。報酬の支払期日は、役務の提供を受けた日から60日以内のできるだけ短い期間で決めることとされています。
通訳の依頼で確かめておきたい条件は次のとおりです。
- 日時と拘束時間、延長が発生したときの料金
- 通訳の方式(逐次か同時か)と、担当する通訳者の人数
- 分野と、事前に受け取れる資料の内容と時期
- 会場の場所、オンラインの場合は使うツールと接続の確認の時間
- 交通費と、遠方の場合の移動時間や宿泊の扱い
- 依頼主の都合で取り消されたときのキャンセル料
- 報酬の額、請求の方法、支払期日
条件を確かめるメールでは、依頼主から伝えられた内容を箇条書きで書き出し、「上記の条件でお引き受けします。相違があればお知らせください」と添えておくと、後から食い違いが起きにくくなります。キャンセル料は、たとえば「本番の7日前以降の取り消しは報酬の50%、前日と当日は100%」のように、時期ごとの割合を自分の側で決めて伝えておく人が多くいます。割合は自分で決める条件なので、取引先と相談して合意しておきます。
報酬の未払いや、一方的な減額、条件の後からの変更で困ったときは、「フリーランス・トラブル110番」で無料の相談を受けられます。法律の内容は厚生労働省のフリーランスの取引に関するページにまとまっています。
源泉徴収と確定申告の扱い
フリーランスの通訳者が受け取る報酬からは、多くの場合、所得税が源泉徴収されています。源泉徴収とは、報酬を払う側が、あらかじめ所得税を差し引いて国に納める仕組みのことです。所得税法施行令では、源泉徴収の対象になる報酬として、脚本や翻訳と並んで「通訳」の報酬を挙げています。
国税庁の案内では、源泉徴収される額は、1回に支払う額が100万円以下なら支払額の10.21%、100万円を超える部分は20.42%です。たとえば日額30,000円の通訳の報酬なら、3,063円が差し引かれ、26,937円が振り込まれます。計算の方法は国税庁 No.2795「原稿料や講演料を支払ったとき」で確かめられます。
源泉徴収された所得税は、確定申告で1年分の所得税と精算されます。経費を差し引いた所得に対する所得税が、源泉徴収された額より少なければ、差額が戻ってきます。通訳の仕事は経費として認められるものが多く、確定申告をすると還付を受けられる人も少なくありません。
通訳の仕事で経費になりやすいものは次のとおりです。
- 辞書や専門書、業界誌などの資料代
- 通訳学校の受講料や研修の費用(仕事に直接必要なもの)
- 現場までの交通費(依頼主から別に払われない分)
- オンライン通訳に使うヘッドセット、マイク、パソコン、通信費
- 名刺やWebサイトの費用
自宅で準備やオンラインの通訳をしている場合、家賃や電気代のうち仕事に使った分も経費にできますが、仕事で使った割合を合理的に説明できる分に限られます。どこまでが経費になるかは事情で変わるので、迷ったときは税務署の相談窓口で確かめてください。
取引先から消費税の適格請求書(インボイス)の発行を求められることもあります。登録するかどうかで、消費税の納め方と取引先の扱いが変わるので、主な取引先の意向と自分の売上の規模を見て判断します。
社会保険と老後の備え
フリーランスの通訳者は、会社員と違って厚生年金や会社の健康保険に入れないため、社会保険と老後の備えを自分で整える必要があります。年収の見通しを立てるときは、売上からこれらの負担を差し引いた手取りで考えます。
国民年金の保険料は、令和8年度で1か月あたり17,920円です。日本年金機構の案内では、これに加えて月額400円の付加保険料を払うと、将来の老齢基礎年金を増額できます。国民健康保険料は、住んでいる市区町村と前の年の所得で決まるため、独立した翌年に大きく上がることがあります。独立する前に、住んでいる市区町村の窓口で見込みの額を確かめておくと安心です。
老後の備えとしては、個人事業主のための退職金の制度である小規模企業共済があります。中小企業基盤整備機構の案内では、掛金は1か月あたり1,000円から70,000円の範囲で500円単位で決められ、払った掛金は全額を所得から差し引けます。通訳の仕事は体が資本で、声や体調を崩すと仕事を受けられなくなります。会社員のような傷病手当金がない分、病気やけがで働けない期間の備えも、民間の保険や蓄えで用意しておく必要があります。
準備の時間を短くして時間あたりの収入を上げる
フリーランスの通訳の年収を上げる方法は、単価を上げることと、稼働日数を伸ばすことだけではありません。準備の時間を短くして、時間あたりの収入を上げることも大きな効果があります。
- 分野を絞る:同じ分野の仕事を続けると、用語や背景の知識が蓄積され、準備の時間が短くなります。
- 単語の一覧を自分の資産にする:仕事ごとに作った専門用語の一覧を、分野ごとに整理して保存しておくと、次の仕事でそのまま使えます。
- 取引先との継続の関係を作る:同じ取引先の会議を続けて担当すると、社内の用語や参加者の話し方に慣れ、準備の負担が軽くなります。
- 資料を早めに受け取る:依頼を受けるときに、資料を受け取る時期を決めておくと、準備の段取りが立てやすくなります。
準備の時間は、依頼主には見えにくい部分です。見積もりの段階で、準備に必要な時間や資料の重要性を伝えておくと、資料の提供が早まり、通訳の質も上がります。結果として依頼主の満足度が上がり、継続の依頼や単価の見直しにつながります。
機械翻訳とAIの通訳の広がりをどう考えるか
AIによる翻訳や音声の自動通訳の精度が上がり、通訳の仕事が減るのではないかと心配する人は多くいます。実際、簡単な案内や定型的な会話では、機械の通訳が使われる場面が増えています。
一方で、商談や交渉、医療や法律の場面、要人の挨拶のように、言葉の選び方が結果を左右する場面では、人の通訳が求められ続けています。話し手の意図をくみ取り、文化の違いを踏まえて訳し、場の空気に合わせて言葉を選ぶことは、機械が苦手とする部分です。
AIを敵と考えるより、準備の道具として使う人も増えています。資料の下訳、専門用語の確認、会議の録音の書き起こしにAIを使えば、準備の時間を短くできます。AIの活用やデジタルの分野の仕事については、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事で、AIに関わる仕事の種類と求められるスキルがまとまっています。
これから通訳を目指す人は、AIに置き換えられにくい分野と場面を選ぶことが、長く仕事を続けるうえでの判断の軸になります。
年収を上げていく段階の目安
フリーランスの通訳として年収を上げていく道筋は、人によって違いますが、多くの人がたどる段階があります。自分がいまどの段階にいて、次に何をすればよいかを考える材料にしてください。
第1段階:通訳会社の仕事で経験を積む
最初は、通訳会社に登録して、社内会議や視察、研修のような逐次通訳の仕事を受けます。単価はまだ低めでも、さまざまな業界と場面を経験できる時期です。この時期に大切なのは、担当した仕事の分野、規模、方式を記録しておくことです。記録は、次の段階で単価の見直しを求めるときや、新しい通訳会社に登録するときの材料になります。
第2段階:得意な分野を決めて単価を上げる
いくつかの分野を経験したら、自分が準備しやすく、依頼が続く分野を絞ります。医薬、IT、金融、製造業の技術のように専門性の高い分野で実績を積むと、その分野の仕事を指名で受けられるようになり、通訳会社の中での単価の区分も上がっていきます。
第3段階:同時通訳や直接の取引を広げる
通訳学校での訓練や現場での経験を重ねて同時通訳を担えるようになると、国際会議やシンポジウムの仕事を受けられるようになります。並行して、通訳会社の仕事で知り合った担当者から直接依頼を受ける関係が育ってきます。直接の取引は、単価を自分で決められる一方で、条件の確認や請求を自分で行う必要があります。
第4段階:仕事の組み合わせで収入の波をならす
経験を積んだ通訳者の多くは、通訳だけでなく、翻訳、通訳の講師、企業の語学研修、通訳ガイドなどを組み合わせて、通訳の仕事が少ない月の収入を補っています。収入の柱を複数持つことが、年収を安定させる最後の段階です。
運営者として見てきた通訳の仕事の続け方
在宅ワークとフリーランスの仲介を20年続けてきた運営者として見てきた限りでは、語学の仕事を長く続けている人ほど、通訳だけ、翻訳だけと1つに絞らず、仕事の種類を組み合わせて収入の波をならしています。通訳の仕事が少ない月は翻訳や字幕の仕事で補い、繁忙期は通訳に集中する。こうした組み合わせを早いうちから意識している人は、独立して数年たっても仕事が途切れにくい傾向があります。
もう1つ見えてくるのは、取引の経路による手取りの差です。仲介の手数料が差し引かれる仕組みでは、同じ単価でも手元に残る額が減ります。発注者と受注者が直接取引できる場では、発注者は同じ予算でより多く頼め、受け手は手取りが厚くなります。手数料0%で取引できることの価値は、単価の数字よりも、源泉徴収や経費を差し引いた後に残るお金の厚さに表れます。
フリーランスの通訳を目指すなら、いきなり独立するのではなく、まず小さく試すことをおすすめします。会社員のうちに通訳会社の登録の試験を受ける、週末に観光の通訳ガイドを経験する、オンラインの短時間の通訳を受けてみる。実際に報酬を受け取り、準備にかかる時間を測ってみると、自分にとっての時間あたりの収入と、向いている分野が見えてきます。そのうえで、少しずつ仕事の比率を移していくほうが、収入の不安を抱えずに通訳の道に進めます。
通訳と組み合わせやすい仕事を探すときは、語学を使う仕事の全体を見渡しておくと選択肢が広がります。映像翻訳・字幕・通訳のお仕事では、字幕の翻訳、吹き替えの台本の翻訳、動画の通訳など、映像に関わる語学の仕事の種類と、案件を受けるときに求められる力を整理しています。通訳の仕事が少ない月を、こうした仕事でどう埋めるかを考えておくことが、年収の波を小さくする現実的な手段になります。語学の仕事は、1つの技術を磨き続けることと、その技術を使える場面を広げることの両方で収入が育っていきます。焦らずに1件ずつ実績を重ね、準備の時間と報酬の記録を続けていけば、自分に合った単価と働き方の形が見えてきます。
よくある質問
Q. フリーランスの通訳の年収はどのくらいですか?
日額の単価と稼働日数で決まります。通訳者の養成スクールの目安では、駆け出しの逐次通訳で日額25,000円前後、同時通訳まで担えると日額50,000円以上の仕事もあり、月15日の稼働なら年間の売上は450万円から900万円ほどです。経費や税金を引く前の額で、季節による波もあります。
Q. 通訳の報酬から源泉徴収されるのはなぜですか?
所得税法施行令で、通訳の報酬は源泉徴収の対象として定められているためです。1回の支払いが100万円以下なら10.21%が差し引かれます。差し引かれた所得税は確定申告で1年分の所得税と精算され、経費を引いた所得の税額が少なければ差額が還付されます。
Q. 資格がなくても観光の通訳ガイドの仕事はできますか?
2018年1月4日に改正通訳案内士法が施行され、資格がなくても報酬を得て外国語で観光の案内ができるようになりました。ただし「全国通訳案内士」「地域通訳案内士」やそれに似た名称は使えません。資格は語学力と知識を示す材料になるため、仕事を受けるうえで役立ちます。
Q. 未経験からフリーランスの通訳になるには何から始めればよいですか?
会社員のうちに通訳会社の登録の試験を受ける、週末に観光の通訳ガイドを経験する、オンラインの短時間の通訳を受けるなど、小さく試すところから始めるのが現実的です。実際の報酬と準備の時間を測り、向いている分野を見極めてから仕事の比率を移していきます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを運営。生成AIで作成した下書きを、一次情報と照らし合わせて確認したうえで公開しています。

この記事を書いた人
@SOHO編集部
フリーランス・在宅ワークの専門メディア
@SOHOは2004年から続く、日本のフリーランス・在宅ワーク向け案件サイトです。記事は生成AIで下書きを作り、数値・固有名・出典を一次情報と照らし合わせる確認の手順を経て公開しています。
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