シルバー家事代行で働くには|登録できる先と任される作業


この記事のポイント
- ✓シルバー家事代行で働くには
- ✓シルバー人材センターへの入会
- ✓民間の家事代行会社への登録
シルバー家事代行という言葉は、二つの立場から検索されます。ひとつは掃除や洗濯を頼みたい人、もうひとつは自分が働く先を探している人です。この記事は後者に向けて書いています。60歳を過ぎてから家事の仕事で収入を得たい、あるいは体を動かしながら人と関わりたいと考えている人が、どこに登録すれば仕事を受けられるのかを整理します。
結論を先に示すと、登録できる先は大きく三つあります。シルバー人材センター、民間の家事代行会社、家政婦紹介所です。この三つは仕事の受け方が根本的に違い、雇用されるかどうかも、収入の性格も、事故のときの備えも変わります。同じ「家事の仕事」に見えて、制度上は別の枠組みです。この違いを知らずに登録すると、後で「思っていた働き方と違う」ということになります。
以下では、まずシルバー人材センターの仕組みを法律の条文から確認し、入会の条件、任される作業、配分金の水準を見ていきます。そのうえで他の登録先と比べ、年金と税の扱い、続けるための体の使い方まで扱います。
シルバー家事代行の受け皿は3つある
最初に全体の見取り図を示します。
第一はシルバー人材センターです。市区町村ごとに置かれている組織で、地域の家庭や企業から仕事を受け、登録した会員のなかから適任者を選んで仕事を割り当てます。家事サービスはセンターが扱う仕事の一分野です。会員は原則60歳以上で、雇用ではなく請負または委任の形で仕事を引き受けます。
第二は民間の家事代行会社です。シニアの採用に力を入れている会社があり、こちらは雇用されて働く形になります。労働基準法が適用され、時給で計算され、労災保険の対象になります。研修が用意されていることが多く、道具や洗剤を会社が用意する場合もあります。
第三は家政婦紹介所です。紹介所が家庭との契約の成立をあっせんし、働く人は家庭と直接労働契約を結びます。この形は厚生労働省が「家事使用人」と呼んでいる働き方で、労働基準法の適用が除外される点に特徴があります。
三つの違いをひと言で示すと、シルバー人材センターは雇用ではない、民間の家事代行会社は会社に雇われる、家政婦紹介所は家庭に雇われる、ということです。
| 登録先 | 契約の形 | 収入の呼び方 | 労働基準法 |
|---|---|---|---|
| シルバー人材センター | 請負または委任 | 配分金 | 雇用関係がないため対象外 |
| 民間の家事代行会社 | 会社との雇用 | 給与 | 適用される |
| 家政婦紹介所 | 家庭との雇用 | 給与 | 家事使用人として適用除外 |
この記事で最も紙面を割くのはシルバー人材センターです。「シルバー家事代行」という言葉が指しているのは多くの場合この仕組みで、料金が民間より安いことで知られています。
シルバー人材センターの法律上の位置づけ
シルバー人材センターは自治体が任意で作った団体ではなく、法律に根拠を持つ組織です。高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の第37条が、都道府県知事が指定する仕組みを定めています。指定を受けられるのは、定年退職者その他の高年齢退職者の希望に応じた就業で、臨時的かつ短期的なものまたはその他の軽易な業務に係る機会を確保し、組織的に提供することを目的とする一般社団法人または一般財団法人です。指定は市町村の区域ごとに1つに限られます。
続く第38条が業務の中身を定めています。
臨時的かつ短期的な就業(雇用によるものを除く。)又はその他の軽易な業務に係る就業(雇用によるものを除く。)を希望する高年齢退職者のために、これらの就業の機会を確保し、及び組織的に提供すること。 高年齢退職者に対し、臨時的かつ短期的な就業及びその他の軽易な業務に係る就業に必要な知識及び技能の付与を目的とした講習を行うこと。 出典: e-Gov法令検索
条文に「雇用によるものを除く」と書かれている点が、この仕組みの性格を決めています。センターが提供する就業は原則として雇用ではありません。会員はセンターから請負または委任の形で仕事を引き受け、仕事を完成させて配分金を受け取ります。
この構造から、発注者との関係も決まります。全国シルバー人材センター事業協会はこう説明しています。
発注者と就業する会員との間に雇用関係はありません。発注者は、就業する会員に対して指揮命令権はありません。 出典: 全国シルバー人材センター事業協会
依頼した家庭が会員に細かく指示を出す関係ではないということです。仕事の完成の責任は契約の主体であるセンターが負います。ただし例外もあり、事業所の社員と混ざって働く仕事や、発注者の指揮命令が必要な仕事の場合は、連合本部を通じて労働者派遣事業または職業紹介事業の形で行われます。この場合は雇用されて働くことになります。
「臨時的かつ短期的」という言葉が付いているため、同じ仕事を長く続けられないのかという疑問が出ますが、これには例外があります。介護のように特別な知識や技能を必要とする仕事については、継続して就業することが可能だと協会が示しています。家事のなかでも介護に近い内容は、継続の依頼になり得ます。
入会の条件と手続きの流れ
シルバー人材センターに登録するための条件は、明確に公開されています。
原則60歳以上の健康で働く意欲のある方。シルバー人材センターの趣旨に賛同していただいた方。入会説明を受け、入会申込書を提出した方(理事会の入会承認が必要です)。定められた会費を納入していただける方。 出典: 全国シルバー人材センター事業協会
4つの条件が並んでいます。年齢が原則60歳以上であること、趣旨に賛同していること、入会説明を受けて申込書を出すこと、会費を納めることです。会費の金額はセンターごとに違います。年額で数千円程度のところが多いですが、自分が入る予定のセンターで確認してください。
手続きの順番は、入会説明会への参加から始まります。センターの多くは月に1回から数回の頻度で説明会を開いており、そこで仕組み、仕事の種類、配分金の考え方、保険の内容が説明されます。説明を聞いたうえで申込書を提出し、理事会の承認を経て会員になります。申し込んだ日からすぐ働けるわけではないため、時間の余裕を見て動いてください。
入会したあとは、希望する仕事の種類を登録します。ここで家事サービスを選ぶことになります。センターが仕事を受注したときに、登録内容と照らして適任者が選ばれます。会員が多い地域では、公平に機会が回るようローテーションで就業する運用が取られています。
押さえておきたいのは、入会すれば仕事が保証されるわけではないという点です。協会は「ご希望の仕事が常にあるとは限りません。また、就業日数の保障はありません」と明記しています。家事サービスは依頼が多い分野ですが、地域によって需要の量が違います。入会前に、そのセンターで家事の依頼がどの程度あるのかを窓口で聞いておくとよいです。
技能を付けるための講習も用意されています。第38条が講習の実施を業務として定めているほか、協会も会員の技能を高めるための各種の講習を実施していると説明しています。介護の講習を行っているセンターもあり、資格を持たない人が学ぶ機会になっています。
家事サービスで任される作業
シルバー人材センターが扱う仕事は分野ごとに整理されています。家事に関わるのはサービス分野で、内容はこう示されています。
家事サービス(掃除、洗濯、留守番など)。福祉サービス(身の回りの世話、話相手、介助など)。育児サービス(子守、送迎など)。 出典: 全国シルバー人材センター事業協会
家事サービスとして挙がっているのは掃除、洗濯、留守番です。民間の家事代行が扱う範囲と比べると、料理が前面に出ていない点が違います。センターごとに対応できる仕事が違うため、料理を含む依頼を扱っているかは地域のセンターに確認が必要です。
家事に近い仕事は他の分野にもあります。一般作業分野には屋内清掃、屋外清掃、除草と草刈り、調理作業として皿洗いと配膳、包装と梱包、エアコンと換気扇の清掃が並んでいます。技能分野には障子とふすまと網戸の張替え、衣類のリフォーム、庭木の剪定があります。家事の延長として受けられる仕事の幅は、思われているより広いです。
福祉サービスの身の回りの世話、話相手、介助も、家事と組み合わせて依頼されることがあります。ただし介護保険のサービスに当たる身体の介護とは制度上の位置づけが違うため、どこまでを担うのかはセンターが契約の段階で決めます。会員が現場で判断して範囲を広げる話ではありません。
受けられない仕事もはっきりしています。協会は「高齢者の就業ですので、危険・有害な作業を内容とする仕事は、お引き受けしておりません」と示しています。高所での作業、危険な薬剤を使う作業はセンターが受注の段階で断ります。現場で依頼者から追加で頼まれた場合は、その場で引き受けずにセンターへ連絡してください。
もうひとつの制約が、会員を指名できないという運用です。協会は特定の会員を指定して仕事を依頼することは原則としてできないと説明しています。依頼者から「次もあなたに来てほしい」と言われても、割り当てはセンターが決めます。この点は民間の家事代行で指名を受けられる形と大きく違います。
配分金の水準と、民間の料金との差
収入の水準は、協会が実際の目安を公開しています。
一定した収入(配分金)の保障はありませんが、全国平均で月8~10日就業した場合、月額3~5万円程度です。 出典: 全国シルバー人材センター事業協会
1か月に8日から10日働いて月額3万円から5万円程度という水準です。これは全国の平均で、仕事の種類と地域によって上下します。フルタイムで働いて生活費を得る仕組みではなく、年金に上乗せする収入と、体を動かす機会を得るための仕組みだと理解してください。協会自身が「生きがいを得るための就業」を目的としていると繰り返し述べています。
依頼する側から見た料金の差も知っておく価値があります。家事の外注を検討した人が実際に比べた記録が参考になります。
普通の大手家事代行の平均は1時間約3000円です。しかも最低遂行時間が3時間以上という決まりがあるところも多いので、1回あたり3時間+交通費で計1万円、月4万円程度ということが分かりました。高い。 出典: note.com
民間の家事代行は1時間あたり3,000円前後という水準で、最低の作業時間が3時間以上に設定されている会社が多いという観察です。これに対してシルバー人材センターは1時間あたり1,400円前後という水準が報告されており、依頼する側の負担はおよそ4分の1になります。
働く側から見ると、この料金の差はそのまま配分金の差になります。民間の家事代行会社で雇われて働けば時給はセンターの配分金より高くなる可能性がありますが、その代わりに勤務時間の拘束、シフトの制約、担当地域への移動が付いてきます。センターは自分の体力と予定に合わせて就業日を選べる一方、収入の水準は抑えられます。どちらが良いかではなく、何を優先するかで選ぶ話です。
配分金の計算の仕組みも理解しておいてください。センターは発注者から受け取った契約代金から、仕事の内容と就業の実績に応じて会員に配分金を支払います。つまり配分金は時給ではなく、仕事の完成に対する報酬です。作業に時間がかかったから増えるという計算ではない点に注意してください。
雇用ではないことから来る4つの違い
シルバー人材センターで働くうえで最も重要なのが、雇用ではないという点から派生する違いです。4つに分けて整理します。
第一に、労働基準法が適用されません。労働時間の上限、時間外の割増賃金、年次有給休暇、解雇の規制はいずれも雇用関係を前提にした制度です。請負または委任で仕事を引き受ける形では、これらが及びません。最低賃金の規定も同じで、配分金は最低賃金の計算の対象になりません。
第二に、労災保険が自動では適用されません。労災保険は労働者のための制度なので、雇用関係がなければ対象外です。ただしセンターは別の備えを用意しています。
センターは、受注した仕事の遂行に当たっては、十分な安全対策を講じています。万一、仕事中に会員が傷害を受けたり、発注者等に損害を与えた場合に備えて、民間の損害保険(センター団体傷害保険、総合賠償責任保険)に加入しています。 出典: 全国シルバー人材センター事業協会
センター団体傷害保険と総合賠償責任保険という二つの民間の保険が備えになっています。前者は会員自身がケガをしたときのための保険、後者は発注者などに損害を与えたときのための保険です。補償の内容と金額はセンターが契約している条件で決まるため、入会の説明会で必ず確認してください。労災保険と同じ水準の補償があるとは限りません。
第三に、雇用保険と厚生年金の被保険者になりません。雇用されていないため、これらの制度の対象から外れます。失業したときの基本手当も対象外です。ただし派遣や職業紹介の形で雇用されて働く場合は、勤務時間などの要件によって被保険者になり得ます。
第四に、収入の性格が給与ではありません。この点は次の節で扱います。
雇用ではないことは不利な面だけではありません。働く日を自分で決められる、体調に合わせて断れる、複数の種類の仕事を組み合わせられるという柔軟さは、雇用の枠に入らないからこそ成り立っています。何を得て何を手放すかを理解したうえで選んでください。
年金と税の扱いで押さえる3点
高齢期に働くとき、年金と税の関係を心配する人が多いです。順に確認します。
第一に、年金を受け取りながら働けます。全国シルバー人材センター事業協会は、センターで収入を得ても年金は受け取れると明記したうえで、収入である配分金は雑所得となるため確定申告が必要となる場合があると注意を添えています。配分金は給与ではなく雑所得として扱われます。勤務先が年末調整をする給与とは違い、自分で申告が必要になる場合があります。年金も所得として扱われるため、年金と配分金を合わせた額で判断することになります。金額や他の所得の状況で扱いが変わるので、自分の場合にどうなるかは税務署または市区町村の窓口で確認してください。
第二に、在職老齢年金の仕組みです。厚生年金を受けながら厚生年金の被保険者として働く場合、年金の一部または全部が止まる仕組みがあります。日本年金機構の説明では、基本月額と総報酬月額相当額の合計が令和8年度の支給停止調整額である65万円を超えると調整が入ります。ここで重要なのは、この計算に使う総報酬月額相当額が厚生年金の標準報酬をもとにした数字だという点です。請負や委任による配分金は厚生年金の被保険者としての報酬ではないため、この計算には入らない扱いになります。ただし派遣や職業紹介で雇用されて厚生年金に加入する場合は話が変わります。自分の働き方がどちらに当たるかを含めて、年金事務所で確認してください。
第三に、健康保険です。雇用されない形で働く場合、国民健康保険または後期高齢者医療制度に加入している状態が続きます。センターで働いたことで保険が切り替わることはありません。民間の家事代行会社に雇用されて働く場合は、勤務時間と事業所の規模によって社会保険の加入が関わってきます。
厚生労働省は高齢者の雇用と就業の対策を3つの柱で整理しており、その3番目に地域における多様な雇用と就業の機会の確保を挙げています。シルバー人材センターはこの柱に位置づけられた仕組みです。制度の全体像を知っておくと、自分がどの枠組みのなかで働いているのかが見えます。
初めての訪問で戸惑わないための準備
家事サービスの依頼を受けて他人の家に入るのは、自分の家の家事とは別の仕事です。初回に戸惑う点を先に整理しておきます。
最初の違いは時間の区切りです。自宅の家事は納得するまで続けられますが、依頼された家事は決められた時間で終えます。2時間の依頼なら、2時間で一定の水準に仕上げて帰ります。完璧に仕上げようとして時間を超えると、次の予定に影響しますし、依頼の条件とも合いません。到着したら何を優先するかを最初に決め、時間を配分してください。
二つ目の違いは、その家のやり方に合わせることです。物の置き場所、掃除の順番、洗剤の指定、洗濯物のたたみ方はどれもその家の習慣です。自分のやり方が効率的だと感じても、初回は教わることに徹してください。取り出した物を戻す前に、どこにあったかを確認する習慣が要ります。長く家事をしてきた人ほど、自分の手順が体に染み付いているため、ここで食い違いが起きやすいです。
三つ目は、判断を自分でしないことです。範囲外の作業を頼まれたとき、危険な作業を求められたとき、物を壊してしまったときは、その場で判断せずセンターに連絡します。センターが契約の主体なので、判断はセンターが行います。会員が独自に引き受けたり、自分で弁償の話をしたりすると、かえって話が複雑になります。
四つ目は記録です。何をどこまでやったか、次回に回した作業、気づいた点を書き残します。センターが記録の様式を用意している場合はそれに従います。留守中の作業で依頼者と顔を合わせない場合は、記録だけがやり取りの手段になります。できなかった作業とその理由を書かずに帰ると、手を抜いたと受け取られる危険があります。
五つ目は持ち物です。エプロン、手袋、履き替える靴、筆記具は自分で用意する場合が多いです。洗剤と道具を依頼者の家のものを使うのか、持ち込むのかはセンターが契約で決めているため、事前に確認してください。
シルバー人材センター以外の選び方
センターの仕組みが自分に合わないと感じた場合、他の道があります。
民間の家事代行会社は、シニアの採用を進めている会社を探すことになります。雇用されるため、時給、勤務時間、休日、労災保険が明確です。研修があり、道具と洗剤を会社が用意する場合もあります。応募するときに確かめたいのは、担当する地域の広さ、移動時間が勤務時間に入るか、1日に何件を回るかです。移動が多い会社は体の負担が重くなります。
家政婦紹介所は、家庭と直接契約を結ぶ形です。厚生労働省はこの働き方を家事使用人と呼び、労働基準法が適用除外になることを明示しています。適用除外である一方、就業環境を守るための雇用ガイドラインが公開されており、報酬が最低賃金を下回る水準になっていないか確認すること、就業時間は1日8時間と1週40時間を上限とすることが望ましいこと、契約の内容を書面か電子メールで明示することといった考え方が示されています。この形を選ぶなら、ガイドラインの内容を知ったうえで契約に臨んでください。
自治体の生活支援の枠組みもあります。介護保険の総合事業のなかに、住民が担う訪問型のサービスが位置づけられている地域があります。有償のボランティアという形が取られることが多く、収入としては小さいものの、地域のなかで役割を持つという意味を持ちます。制度の運用は市区町村ごとに違うため、地域包括支援センターで聞くのが早道です。
もう一つの選択肢が、地域の団体やNPO法人が運営する有償の家事支援です。買い物の代行、ゴミ出し、電球の交換、話し相手といった細かい支援を担う仕組みが各地にあります。報酬は時間あたりで数百円から千円程度という水準が多く、収入を得る仕組みというより地域に関わる仕組みです。ただし利用者との関係が長く続くため、続けるうちに信頼が積み上がるという性格があります。制度の枠組みは地域によってばらばらなので、社会福祉協議会か地域包括支援センターに問い合わせるのが確実です。
選ぶときの判断の軸を3つ挙げます。収入をどこまで重視するか、拘束される時間をどこまで受け入れられるか、事故のときの備えをどこまで求めるかです。収入を重視するなら民間の会社、柔軟さを重視するならシルバー人材センター、依頼者との関係を長く作りたいなら家政婦紹介所という並びになります。
長く続けるための体の使い方と断る基準
高齢期に家事の仕事を続けるうえで、体の管理は仕事の一部です。
負担が大きいのは、かがむ動作と重い物を持つ動作です。床の拭き掃除、浴室の清掃、布団の上げ下ろしは腰への負担が集中します。作業の順番を工夫して、かがむ作業を連続させないことが一つの工夫になります。膝を床に付ける姿勢を長く続けないよう、膝当てを使う人もいます。
もうひとつの負担が、水と洗剤による手の荷みです。毎日水に触れる仕事なので、手が荒れます。手袋を使い、作業後に手を保護する習慣を持ってください。洗剤の種類によっては皮膚に刺激が強いものがあるため、素手で扱わないことが基本です。
断る基準を自分のなかに持っておくことも大切です。シルバー人材センターは危険で有害な作業を受注しませんが、現場で追加の依頼が出ることはあります。脚立に上がる、屋外の高いところに手を伸ばす、重い家具を動かすといった依頼は、その場で引き受けずにセンターへ連絡してください。断ることが会員の評価を下げる仕組みにはなっていません。むしろ事故が起きたほうが、センターにも依頼者にも負担がかかります。
体調が悪い日に休めるかどうかも確認しておいてください。センターの就業は雇用ではないため、体調に合わせて調整する余地があります。ただし依頼者との約束がある日に急に休むと、センターが代わりの会員を手配することになります。早めに連絡する習慣が信頼につながります。
暑さと寒さへの備えも軽く見ないでください。夏の浴室と台所の清掃は室温が上がり、熱中症の危険があります。作業の途中で水分を取ることを遠慮する人がいますが、体調を崩すほうが依頼者にも迷惑がかかります。冬は水を使う作業で体温が下がります。衣類で調整し、休む時間を自分で取ってください。センターが契約で作業時間を定めていても、その中で水分を取り休むことは妨げられません。
仕事の量を決めるときは、1か月あたりの就業日数から考えるのが現実的です。協会が示す目安は1か月に8日から10日です。この水準なら体の負担が積み上がりにくく、休む日も確保できます。最初から多く入れて体を壊すより、少なく始めて増やすほうが長く続きます。
経験を在宅の仕事につなげる道
家事の仕事は現場に行かないと成り立ちません。それでも、経験を在宅の仕事につなげる道はあります。
ひとつは文章の仕事です。掃除の手順、洗剤の使い分け、収納の考え方、高齢期の家事の工夫は需要が絶えない題材です。長い年月の家事の経験を持っている人は、若い世代が知らない手順を持っています。文章の単価を段階的に上げていく方法はWebライターが文字単価を上げる方法【2026年版】|1円→5円のステップに整理されています。最初の仕事を安く受けすぎないための相場感を持っておくと、後で交渉する手間が省けます。職種として見たときの報酬の分布は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認できます。
もうひとつは書類を整える仕事です。家事代行の事業者や地域の団体は、案内文、記録、注意事項の掲示物を日常的に作ります。文書を正確に作れる技能はビジネス文書検定のように出題範囲が公開されている資格で客観的に示せます。長く事務の仕事をしてきた人なら、すでに持っている技能を証明する形になります。
三つ目は、事業者の業務を整える仕事です。訪問の予約管理、問い合わせの一次対応、記録の集計といった業務を外に出す事業者が増えています。こうした業務の設計や運用の相談に関わる仕事の形はAIコンサル・業務活用支援のお仕事に整理されています。現場を知っている人が設計に関わると、実務に合わない仕組みを作らずに済みます。
市場を長く見てきた立場からの観察
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から言えば、高齢期に仕事を探す人が最初に自分を低く見積もりすぎる場面をよく見ます。パソコンの操作に慣れていないこと、新しい道具を覚えるのに時間がかかることを弱みだと考えるからです。しかし在宅の仕事で評価されるかどうかを分けているのは、操作の速さではなく中身を持っているかどうかです。長い年月の経験は、外から調べて埋められるものではありません。
運営者として見てきた限りでは、長く続く人ほど単発の作業を数えるより「この人に任せると楽だ」という関係づくりに時間を使っています。家事の仕事でも同じ構造が働きます。頼まれた作業を正確にこなす人は代わりが見つかりますが、依頼者が言わなかった不便に気づいて次回に整えられる人は代わりが見つかりません。継続の依頼が積み上がるのは後者です。
報酬について、額面だけを比べて判断する人が多いのですが、手元に残る額は間に何が入るかで変わります。中間に手数料が乗らない直接の取引では、依頼する側は同じ予算でより多くを頼めて、受ける側の手取りは厚くなります。手数料0%という条件の値打ちは、金額の大小ではなく手元に残る割合が変わるという質の話です。20年この市場を見てきて、この差が年単位で積み上がったときの違いは想像より大きいと感じています。
在宅の仕事を探し始めるなら、自分の技能がどの職種の枠に当たるのかを先に確かめてください。職種ごとの業務内容と求められる技能はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事のように分野別に整理されているため、家事の経験や事務の経験をどこに接続できるかを考える材料になります。体を使う仕事と机に向かう仕事を組み合わせると、どちらかが減った月にもう一方で補えます。年齢が上がってから収入の柱を二本持つことの安心感は、金額の大小とは別の価値があります。
よくある質問
Q. シルバー家事代行で働くには何歳から登録できますか?
シルバー人材センターの入会の条件は原則60歳以上で、健康で働く意欲があること、入会説明を受けて申込書を提出すること、定められた会費を納めることの4つです。理事会の承認を経て会員になります。申し込んだ日からすぐ働けるわけではないため、説明会の日程を含めて時間の余裕を見て動いてください。
Q. 収入はどのくらいになりますか?
全国シルバー人材センター事業協会は、1か月に8日から10日就業した場合の目安として月額3万円から5万円程度という水準を示しています。仕事の種類と地域で上下し、就業日数の保障はありません。フルタイムで生活費を得る仕組みではなく、年金に上乗せする収入と体を動かす機会を得るための仕組みです。
Q. 仕事中にケガをしたらどうなりますか?
シルバー人材センターでの就業は雇用ではないため、労働者のための労災保険は自動では適用されません。センターは民間の損害保険としてセンター団体傷害保険と総合賠償責任保険に加入しており、会員のケガと発注者への損害の両方に備えています。補償の内容と金額はセンターの契約で決まるので、入会の説明会で必ず確認してください。
Q. 配分金を受け取ると年金は減りますか?
配分金は給与ではなく雑所得として扱われ、厚生年金の被保険者としての報酬ではありません。そのため在職老齢年金の調整に使う総報酬月額相当額には入らない扱いになります。ただし派遣や職業紹介の形で雇用されて厚生年金に加入する場合は話が変わります。自分の働き方がどちらに当たるかを含めて、年金事務所で確認してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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