レンタルサロンの開業の進め方|物件の条件と予約の受け方


この記事のポイント
- ✓レンタルサロン開業の進め方を
- ✓物件を決める前に確かめる条件
- ✓施術の種類で変わる法律の枠
レンタルサロン開業を考えて調べ始めると、内装や集客の話が先に出てきます。ただ、実際に開業の相談を受ける側から見ると、つまずくのはもっと前の段階です。借りようとしている物件で本当に人に貸せるのか、貸主の承諾は取れているのか、施術の内容によって届出が必要にならないのか。この三つを確かめないまま契約すると、内装が終わってから使えないと分かります。この記事では、物件を決める前に確かめる条件から、料金の決め方、予約と鍵の受け渡し、利用規約に書いておく項目までを、法律の条文に当たりながら順に整理します。
レンタルサロンという業態が成り立っている仕組み
レンタルサロンは、施術に使える部屋を時間単位で貸す商売です。借りるのは、まつげエクステ、ネイル、エステ、リンパの施術、整体、カウンセリング、写真撮影といった仕事をしている個人です。
この業態が広がった理由は二つあります。一つは、自分の店を構えると初期費用と毎月の固定費が重く、始めたばかりの施術者には負担が大きいこと。もう一つは、自宅で施術をすると住所を公開することになり、防犯や家族の事情で避けたい人が多いことです。時間単位で借りられる部屋があれば、その両方を回避できます。
貸す側から見ると、収入は「1時間あたりの料金 × 稼働した時間」で決まります。部屋が一つなら、営業できる時間の上限がそのまま売上の上限になります。ここが不動産の賃貸と違う点です。月ごとの家賃で回す商売ではなく、時間の埋まり方で収入が決まるので、平日の昼をどう埋めるかが勝負になります。
費用の側は、家賃、光熱費、備品の補充、清掃、予約を受けるための仕組みの費用、そして保険です。売上から費用を引いた残りが利益ですが、開業の初期は稼働が低いので、家賃を回収できるまでの期間を見込んでおく必要があります。
物件を決める前に確かめる四つの条件
内装や備品の前に、ここを確かめます。順番を守らないと、費用が無駄になります。
用途地域と建物の用途
建物の用途は、その場所の用途地域によって制限されます。建築基準法にはこう書かれています。
第一種低層住居専用地域内においては、別表第二(い)項に掲げる建築物以外の建築物は、建築してはならない。ただし、特定行政庁が第一種低層住居専用地域における良好な住居の環境を害するおそれがないと認め、又は公益上やむを得ないと認めて許可した場合においては、この限りでない。 出典: laws.e-gov.go.jp
用途地域ごとに建てられる建物の種類が別表で決まっており、住居専用の地域では店舗として使える範囲が狭くなります。マンションの一室を借りて商売として貸し出す形が、その建物の用途に合っているかは、自分では判断できません。物件の住所を持って、自治体の建築を担当する窓口で用途を伝えて確認してください。
あわせて、マンションの管理規約も見ます。区分所有の建物には「住宅としてのみ使用する」という条項が入っていることが多く、この条項があると管理組合との間で問題になります。不特定の人が出入りすることを嫌がる住民もいるため、後から止めさせられるリスクを避けるには、契約前に管理組合に確認するのが確実です。
借りた部屋を人に貸すには貸主の承諾がいる
これが一番多い落とし穴です。自分が借りている部屋を、他の人に貸すことは、貸主の承諾なしにはできません。
賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。 出典: laws.e-gov.go.jp
承諾を得ずに貸し出すと、契約を解除される可能性があります。内装に費用をかけた後に退去を求められると、その費用はまるごと損失です。物件を探す段階で「レンタルサロンとして時間貸しをする」と伝え、それを了解した貸主と契約してください。口頭ではなく、契約書か覚書に用途を書いてもらいます。
なお、自分が所有している物件なら、この問題は起きません。所有と賃借のどちらで始めるかによって、確認すべき相手が変わります。
消防の設備と届出
人が出入りする施設は、消防法の対象になります。
学校、病院、工場、事業場、興行場、百貨店、旅館、飲食店、地下街、複合用途防火対象物その他の防火対象物で政令で定めるものの関係者は、政令で定める消防の用に供する設備、消防用水及び消火活動上必要な施設について消火、避難その他の消防の活動のために必要とされる性能を有するように、政令で定める技術上の基準に従つて、設置し、及び維持しなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp
何が必要になるかは、建物の規模と用途、階数によって変わります。消火器の設置だけで足りる場合もあれば、誘導灯や自動火災報知設備を求められる場合もあります。使い方を変えることで届出が必要になる場合もあるため、物件が決まったら管轄の消防署に相談してください。相談は無料で、事前に聞けば工事のやり直しを避けられます。
水回りと電気の容量
施術の種類によって、水回りと電気の条件が変わります。ネイルやまつげエクステなら手を洗える場所があれば足りますが、ヘッドスパやエステでシャワーを使うなら給湯と排水の設備が要ります。後から水道を引く工事は費用が大きく、建物の構造上できない場合もあります。
電気は、ドライヤー、スチーマー、ホットキャビ、照明を同時に使ったときの容量を確認します。ブレーカーが落ちる部屋は、施術中に止まると利用者の信用を失います。契約前に契約容量を確かめ、足りない場合は変更できるかを電力会社に聞いておきます。
施術の種類で変わる法律の枠
借りる人が何をするかによって、届出が必要になる場合があります。ここを曖昧にしたまま貸すと、後で双方が困ります。
美容の施術については、美容師法に定めがあります。同法は「美容」をパーマネントウエーブ、結髪、化粧等の方法により容姿を美しくすることと定義し、美容の業を行うために設けられた施設を「美容所」と呼んでいます。そして、美容所を開設しようとする者には届出の義務があります。
美容所を開設しようとする者は、厚生労働省令の定めるところにより、美容所の位置、構造設備、第十二条の三第一項に規定する管理美容師その他の従業者の氏名その他必要な事項をあらかじめ都道府県知事に届け出なければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp
同法には、開設者が構造設備について検査を受け、確認を受けた後でなければ使用してはならないという定めもあります。つまり、貸した部屋で美容の施術が行われる場合、その部屋が届出の対象になる可能性があります。誰が開設者に当たるのか、部屋を貸す側と借りる側のどちらが届け出るのかは、施設の形と運用によって判断が分かれるため、自分で結論を出さずに管轄の保健所に確認してください。確認せずに貸して、後から使用を止められると、予約が入っている利用者にも損害が及びます。
あん摩、マッサージ、指圧、はり、きゅう、柔道整復といった施術も、それぞれ別の法律の枠があり、施術所としての届出が必要になる場合があります。貸す側としては、利用者に必要な資格と届出を自分で確かめてもらう形にし、その確認を利用の申し込みの条件に入れるのが安全です。
施術に関わる資格を自分でも把握しておくと、利用者の説明を受けたときに判断しやすくなります。小規模で働く人が取る資格の全体像は、在宅ワークに強い資格10選|自宅で稼げるスキルを身につけるで俯瞰できます。
内装と備品。最初にそろえるもの
内装は、凝りすぎないことが正解です。借りる人は自分のお客様を連れてくるので、その人の商売の雰囲気に合う部屋である必要があります。特定の系統に寄せすぎた内装は、合わない施術者を遠ざけます。白を基調にした無地の壁、調整できる照明、音が漏れにくい扉。この三つがそろっていれば、幅広い施術に対応できます。
備品は、次の順でそろえます。
施術用のベッドまたは椅子。これは施術の種類で形が違うため、想定する利用者に合わせます。複数の種類に対応したいなら、折りたためるものを用意して入れ替える形にします。
鏡、手洗い場、ゴミ箱、消毒用の備品。衛生に関わるものは省略できません。
タオルとシーツ。自分で用意して洗濯まで引き受ける形と、利用者が持参する形があります。引き受けるほうが利用者にとって楽ですが、洗濯の手間と費用がかかります。最初は持参してもらい、稼働が安定してから選べるようにするのが無理がありません。
待合の椅子と荷物を保管する棚。利用者のお客様が早く着いたときに立って待たせない形にします。
Wi-Fiと電源。予約の確認や決済を部屋の中で行う人が多いので、通信が安定していることは設備の一部です。回線の選び方は在宅ワークに最適なネット回線|光回線vsホームルーターの選び方で整理されている考え方がそのまま使えます。
料金の決め方
料金は、1時間あたりの単価で出すのが基本です。決め方の手順を示します。
まず、月にかかる固定費を出します。家賃、光熱費、通信費、予約の仕組みの費用、保険料、備品の補充費。この合計が、毎月必ず出ていく金額です。
次に、営業できる時間を数えます。朝10時から夜20時までを営業とすると、1日10時間、月に30日で300時間です。ただし、全部が埋まることはありません。開業して間もない時期の稼働は、10%から20%の帯に収まるのが普通です。
固定費を、現実的な稼働時間で割ります。仮に固定費が月額15万円で、稼働が月60時間なら、1時間あたり2,500円が損益の分かれ目です。ここに利益を乗せた金額が、提示する単価になります。
実際の相場は、立地と設備で大きく変わります。駅から近く個室で水回りがある部屋は高く、駅から遠く共用部が多い部屋は安くなります。近隣の同じような部屋の料金を並べて、自分の部屋がその中でどの位置かを判断します。
割引の設計も先に決めます。まとめて時間を取る人向けの回数券、平日の昼を埋めるための時間帯割引、初めて使う人向けの体験価格。この三つを用意しておくと、稼働の穴を埋めやすくなります。ただし、安くしすぎると値上げが難しくなるため、最初から下げすぎないことです。
予約の受け方と鍵の渡し方
運用でもっとも手間がかかるのが、この二つです。
予約は、専用の予約システムを使うのが現実的です。空いている時間を表示して、その場で埋まる形にします。メッセージのやり取りで受けると、二重に入る事故が起きます。決済まで同じ仕組みで済むものを選べば、料金の取りはぐれも減ります。
予約の受け方で決めておくことは四つです。最短でいつから予約できるか、キャンセルはいつまで無料か、延長はどう扱うか、そして片付けの時間を予約の枠に含めるか。最後の一つが抜けていると、次の利用者と鉢合わせします。施術が終わってから片付けるための時間を、枠の中に入れておきます。
鍵の渡し方は、三つの方法があります。
一つ目は、暗証番号式の錠を付けて、予約ごとに番号を伝える方法です。人が立ち会う必要がなく、もっとも手間が少ないです。番号は定期的に変え、退去した利用者が入れない状態にします。
二つ目は、鍵の受け渡し箱を設置する方法です。初期費用が安いですが、鍵を戻し忘れる人がいます。
三つ目は、自分が立ち会う方法です。利用者と話せるので関係は作りやすいですが、時間が拘束されます。副業として運営するなら現実的ではありません。
副業で回すなら、一つ目を選んだうえで、何かあったときに駆けつけられる距離に物件を持つのが安全です。片道1時間を超える場所だと、トラブルのたびに1日が消えます。
利用規約に書いておく項目
規約を作らずに貸し始めると、問題が起きたときに話し合いの基準がありません。最低限、次の項目を文面にします。
使える目的の範囲。どんな施術に使えるか、使えないものは何か。宿泊、飲酒を伴う集まり、撮影の可否も書きます。
必要な資格と届出。施術に免許や届出が必要な場合は、利用者が自分で確認して備えることを条件にします。
キャンセルと変更の扱い。何日前まで無料か、それ以降は何割かを、日数と割合で書きます。
延長と超過。予約の終わりを過ぎた場合の料金を、何分単位でいくらかと書きます。
原状回復と清掃。使い終わったときにどの状態で戻すか。ゴミの扱い、シーツの扱い、床の清掃の範囲。
破損と紛失。備品を壊した場合、鍵をなくした場合の負担。
禁止事項。他の利用者や近隣への迷惑行為、無断での再貸し、備品の持ち出し。
連絡先と緊急時の対応。設備が使えないときに誰にどう連絡するか。
免責の範囲。利用者とそのお客様の間で起きたことについて、貸す側がどこまで関わらないか。
この文面は、後で必ず読み返される書類です。主語をはっきりさせて、日付と金額を数字で書く。曖昧な表現を残すと、そこが争点になります。条件を文面にして合意を残す手順を体系的に身につけたいなら、ビジネス文書検定で扱われる内容が実務にそのまま使えます。
清掃と衛生の段取り
施術の場なので、衛生の水準が評判を決めます。利用者が自分のお客様に対して恥ずかしくない状態を保てるかどうかが、継続して使ってもらえるかを左右します。
清掃は、利用者に任せる範囲と自分でやる範囲を分けます。使ったあとのゴミの持ち帰りと床の簡単な清掃は利用者、水回りの清掃と消耗品の補充と定期的な換気設備の清掃は自分。この線引きを規約に書いておきます。
自分で入る頻度は、稼働に合わせて決めます。週に数件なら週1回、毎日使われるなら数日おきです。入るたびに、消耗品の残り、備品の破損、におい、水漏れを確認します。この巡回を省くと、利用者からの指摘で気づくことになり、その時点で評価が下がっています。
タオルとシーツを自分で用意する場合は、洗濯の段取りを決めます。自宅で洗うなら時間が取られ、業者に頼むなら費用が出ます。どちらにしても、清潔なものの在庫が切れない数を持っておく必要があります。
使い終わった状態を確認する仕組みも用意します。退室のときに簡単な確認の項目を写真で送ってもらう形にすると、次の利用者が入る前に問題を把握できます。項目は三つか四つに絞ります。多いと守られません。
換気は、施術の種類によって重要度が変わります。ネイルの薬剤やパーマの薬剤を使う施術では、においが残ると次の利用者が困ります。換気の能力が足りない部屋では、そうした施術を使える目的から外すのも一つの判断です。
集客の順番
貸す相手を集める順番は、決まっています。
最初にやるのは、施術者が探している場所に情報を出すことです。レンタルスペースを紹介するサイトに登録すると、探している人から見つけてもらえます。複数のサイトに出すと予約の管理が煩雑になるので、まず一つに絞って、埋まり方を見てから登録先を追加します。
次に、写真をそろえます。借りる人が見るのは、部屋の広さ、清潔さ、設備、そして自分のお客様を通せる雰囲気かどうかです。全体が分かる写真、施術台の周りの写真、水回りの写真、建物の入口から部屋までの経路の写真。この四つがあれば判断できます。暗い写真しかない部屋は、それだけで候補から外れます。
三つ目は、近隣の施術者に直接知らせることです。同じ地域で働いている人は、移転や独立のタイミングで場所を探します。地域の集まりや紹介を通じて知らせると、サイト経由より安定した相手が見つかります。
四つ目は、一度使った人に続けて使ってもらうことです。新しい人を探すより、続けてもらうほうが手間が少なく、収入も安定します。使い終わったあとに困ったことがなかったかを聞き、指摘された点を直す。この積み重ねが稼働を上げます。
紹介文の書き方や写真の見せ方は、集客の技術の一部です。届ける側の考え方を広く知っておきたい場合は、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事で扱われる分野の実務が参考になります。
開業の届出と税務の準備
事業として始めるなら、税務の届出があります。国税庁の資料には、個人が新たに事業を開始した場合の届出とその期限が並んでいます。
個人事業の開廃業等届出書 新たに事業を開始したとき、事業用の事務所・事業所を新設、増設、移転、廃止したとき又は事業を廃止したときの手続です。 事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限まで 出典: nta.go.jp
同じ資料には、青色申告の承認申請書の期限として、原則はその年の3月15日まで、その年の1月16日以後に新たに事業を開始した場合は事業開始等の日から2か月以内と書かれています。開業の時期によって期限が変わるので、始める月が決まったら日付を控えておいてください。
青色申告を選ぶと、帳簿の付け方に条件が付く代わりに控除が受けられます。国税庁の資料では、正規の簿記の原則により記帳して貸借対照表と損益計算書を添付し、期限内に申告した場合は原則として最高55万円、電子帳簿保存またはe-Taxによる電子申告を行っている場合は最高65万円の控除とされています。部屋を借りて貸す商売は経費の記録が多くなるので、最初から帳簿を付ける形で始めたほうが結果的に楽です。
なお、家賃収入のように見えますが、時間単位で場所と設備を提供する商売は不動産の賃貸とは扱いが違う場合があります。所得の区分によって使える特例や記録の義務が変わるため、開業のときに税務署か税理士に事業の内容を説明して確認してください。ここで断定できるのは、記録を残しておけば後から選べる余地が広がるという点だけです。
消費税については、基準期間の課税売上高が1,000万円以下であれば原則として納税義務が免除される仕組みがあります。ただし適格請求書発行事業者の登録を受けている場合は免除されません。利用者が事業として経費に入れる立場なので、登録を求められることがあります。求められたときに判断できるよう、仕組みだけは先に理解しておくとよいです。
起きやすいトラブルと備え
実際に起きるものを五つ挙げます。どれも事前の手当てで軽くできます。
一つ目は、時間の超過です。施術が長引いて次の利用者と重なります。片付けの時間を枠に含める、超過の料金を規約に書く、予約の終わり時刻の前に通知が届く仕組みを使う。この三つで減ります。
二つ目は、設備の故障です。エアコンが止まる、給湯が出ない、照明が切れる。予備の電球と扇風機を備えておき、業者の連絡先をすぐ出せる場所に保管します。故障の連絡を受けてから業者を探すと、その日の予約が全部だめになります。
三つ目は、近隣からの苦情です。話し声、階段の足音、共用部での立ち話。利用者に伝えるべき注意を紙にして部屋に備え、入口から部屋までの経路で静かにしてもらうことを明記します。苦情が管理組合に行く前に、自分のところで受け止められる形にしておきます。
四つ目は、無断での再貸しです。借りた人が別の人に貸す形が起きます。規約で禁止したうえで、暗証番号を予約ごとに変える運用にすれば防ぎやすくなります。
五つ目は、利用者とそのお客様の間のトラブルです。施術の結果についての苦情が、場所を貸した側に来ることがあります。規約で関わる範囲を示しておくとともに、施設の管理に起因する事故に備えた保険に入っておきます。保険は、施設の賠償に対応するものを選び、契約前に対象となる事故の範囲を確かめてください。
開業までの流れを日程に落とす
順番が分かっていても、日程に落とさないと動きません。目安の期間を添えて並べます。
第1週から第2週。想定する利用者と施術の種類を決めます。ここが決まらないと物件の条件が決まりません。近隣のレンタルサロンの料金と設備を調べ、自分がどの位置を狙うかを書き出します。
第3週から第6週。物件を探します。内見のときに、用途地域、管理規約、貸主の承諾の可否、電気の契約容量、水回りの状況を必ず聞きます。聞いた内容はその場で記録します。良さそうな物件が見つかっても、この五つが確かめられるまで申し込みません。
第7週。自治体の建築を担当する窓口、管轄の消防署、管轄の保健所に相談します。物件の住所と、やろうとしていることを伝えます。ここで止まる条件が出たら、その物件は候補から外します。
第8週から第10週。契約と内装、備品の手配をします。契約書には用途を書いてもらいます。内装は最小限にとどめ、稼働が出てから足りないものを追加します。
第11週。予約システムの設定、利用規約の作成、保険の申し込み、写真の撮影をします。写真は明るい時間帯に撮り、全体、施術台、水回り、入口からの経路の四種類をそろえます。
第12週。掲載を始め、体験の受け入れを開始します。開業の届出は、事業を開始した年分の確定申告期限までに出せばよいので、慌てる必要はありません。ただし青色申告を選ぶ場合は期限が別にあるので、開業の日付を記録しておきます。
この流れで3か月ほどです。物件が早く決まれば短縮できますが、相談の工程を飛ばして短縮しないでください。飛ばした場合の損失は、短縮した時間よりはるかに大きくなります。
一つの部屋で始めるか、複数の部屋にするか
規模の判断を先に整理しておきます。結論としては、最初は一つの部屋で始めるのが無理がありません。理由は三つあります。
一つ目は、需要が読めないことです。想定した施術の種類と、実際に申し込んでくる人の施術の種類は、たいていずれます。一つで始めて数か月運用すると、どんな人が使うのか、どの時間帯が埋まるのか、どの設備が足りないのかが分かります。その情報を得てから二つ目を用意すれば、無駄な投資を避けられます。
二つ目は、運用の手間が部屋の数に比例しないことです。予約の重なり、鍵の管理、清掃の巡回、消耗品の在庫。部屋が二つになると手間は二倍を超えます。一つで回し方を固めてから広げるほうが、破綻しません。
三つ目は、撤退の判断がしやすいことです。稼働が上がらなかったときに、契約が一つなら畳むのも早い。複数の契約を抱えていると、損失を確定させる判断が遅れます。
複数に広げる判断の目安は、稼働が安定して50%を超え、断った予約が出始めたときです。断りが出ていないのに部屋を増設すると、両方が半端に埋まる状態になります。
同じ建物の中で二つ目を借りられるなら、それが最も効率的です。巡回が一度で済み、鍵の管理も一括にできます。離れた場所に二つ目を持つと、移動の時間が利益を食います。
副業として回すための時間の設計
本業を持ちながら運営する場合、時間の配分を先に決めておかないと続きません。運営に必要な作業を、頻度で分けて並べます。
毎日発生するのは、問い合わせと予約の確認です。予約システムを使っていれば自動で埋まりますが、問い合わせへの返信は人が対応します。返信が遅いと他の部屋に流れるため、朝と夜の決まった時間に見る習慣にします。即座に返す必要はなく、何時までに返すかを掲載しておけば相手も待てます。
週に一度発生するのは、清掃と巡回、消耗品の補充です。物件までの移動を含めて、2時間から3時間を見込みます。この時間を固定の曜日に入れておくと、忘れません。
月に一度発生するのは、売上と費用の集計、稼働の確認、そして料金や割引の見直しです。稼働が上がっていない時間帯があれば、そこに割引を当てるか、掲載の文面を変えます。この作業を飛ばすと、空いている時間が空いたままになります。
年に一度発生するのは、契約の更新、保険の更新、そして確定申告です。申告のための記録は毎月そろえておき、年度末にまとめて作業する形は避けます。
この配分を計算すると、部屋が一つの規模なら月に10時間から15時間ほどの手間になります。この時間を他の仕事に使ったときの収入と比べて、続けるかどうかを判断してください。
市場を長く見てきた運営者の視点で見える構造
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、レンタルサロンを長く続けている人には共通点があります。部屋を貸しているのではなく、施術者の商売が回るための条件を整えている、という向き合い方をしていることです。
具体的には、借りる人が困る場面を先に消しています。お客様が迷わずたどり着けるように建物の入口からの写真を用意する、荷物を保管できる場所を作る、予約の直前でも空きが分かるようにする。こうした細部は料金に反映されにくいのですが、続けて使ってもらえるかどうかを決めます。新しい利用者を探し続ける運営と、同じ人が毎週来る運営では、手間がまったく違います。
もう一つ、運営者として見てきた限りでは、施術者の側が場所の費用に敏感なのは、そこが手取りを直接削るからです。中間に費用が乗らない形で仕事が成り立てば、同じ料金でも施術者の手元に残る額が変わります。手数料0%の仕組みが意味を持つのは金額の大小ではなく、受け取った額のうちどれだけが手元に残るかという質の部分です。場所を貸す側としても、利用者の商売が成り立つ構造を理解しているかどうかで、選ばれ方が変わります。
副業として始める場合は、自分の時間の使い方も設計に入れてください。清掃と巡回、問い合わせへの返信、設備の手配。これらに月何時間使うかを見積もり、その時間を他の仕事に使ったときの収入と比べます。判断の基準を持つために、文章や編集の仕事の相場を並べた著述家,記者,編集者の年収・単価相場のような職種別のデータで、自分の時間の値段を把握しておくと、運営を続けるか形を変えるかの判断が具体的になります。
最後に、一つだけ順番の話を。物件、承諾、消防、保健所。この四つを確かめてから、内装と集客に進んでください。順番を逆にした人が、内装が終わってから使えないと分かって止まる例を何度も見てきました。確認は一つずつ電話をするだけで、費用はかかりません。
よくある質問
Q. 賃貸のマンションの一室でレンタルサロンを始められますか?
貸主の承諾が必要です。民法は、賃借人は賃貸人の承諾を得なければ賃借物を転貸できないと定めており、違反した場合は契約を解除される可能性があります。物件探しの段階で時間貸しをすると伝え、契約書か覚書に用途を書いてもらってください。あわせて管理規約と用途地域も確認します。
Q. 保健所への届出は必要ですか?
貸した部屋で美容の施術が行われる場合、その部屋が美容師法の美容所として届出の対象になる可能性があります。同法は開設者に位置や構造設備の届出を義務づけ、検査と確認を受けた後でなければ使用してはならないと定めています。誰が届け出るかは運用によって判断が分かれるので、管轄の保健所に確認してください。
Q. 料金はどう決めればよいですか?
家賃や光熱費などの月の固定費を出し、現実的な稼働時間で割った金額が損益の分かれ目です。開業して間もない時期の稼働は10%から20%の帯に収まることが多いので、そこを前提に計算します。その金額に利益を乗せ、近隣の同じような部屋の料金と並べて位置を決めます。
Q. 鍵はどう渡すのが現実的ですか?
暗証番号式の錠を付けて、予約ごとに番号を伝える方法が手間が少なく安全です。番号は定期的に変え、使い終わった利用者が入れない状態にします。自分が立ち会う方法は関係を作りやすい反面、時間が拘束されるため副業では続きません。何かあったときに駆けつけられる距離に物件を持つことも条件です。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
上野 琴音@SOHO編集部
オンライン教育コンテンツクリエイター
元小学校教師。オンライン家庭教師や教育コンテンツ制作のフリーランスに転身。教育・講師・オンラインスクール系の記事を執筆しています。
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