LP制作・コーディングの単価を上げる相談|切り出し方と根拠


この記事のポイント
- ✓LP制作・コーディングの単価交渉を
- ✓値上げのお願いではなく作業範囲の再定義として進める手順をまとめました
- ✓断られたときの二の矢まで
LP制作・コーディングの単価交渉について調べる人の多くは、すでに継続で仕事を受けている状態にあります。作業量は増えているのに金額だけが最初の見積もりのまま止まっていて、そろそろ言わないとまずいと感じている。けれど、どう切り出せばいいのか分からない。この記事は、その「切り出し方」と「根拠の作り方」を、受注後の実務として順番に整理したものです。結論を先に書くと、単価交渉で通るのは値上げのお願いではなく、作業範囲の再定義です。金額を動かす前に、何をどこまでやっているかを動かします。
単価交渉は「値上げのお願い」ではなく「作業範囲の再定義」
単価の相談がうまくいかない最大の理由は、話の入口を間違えていることにあります。「そろそろ単価を上げていただけませんか」は、発注側から見ると同じ商品の値札が理由なく書き換わったのと同じに映ります。発注側の担当者は自分の裁量だけで決められないことが多く、上長や経理に説明する材料を必要としています。材料がない値上げは、担当者が社内で戦えないので通りません。
いっぽう、「今の見積もりに入っていない作業がこれだけ発生しているので、次回から範囲を分けて出し直させてください」は、値札の書き換えではなく品目の追加です。担当者は社内に対して「作業が増えているので費目を分ける」と説明できます。同じ結果を求めているのに、通り方がまったく違います。単価交渉という言葉に引きずられて金額の話から入ると、この差で損をします。
同じLP制作でも金額の幅が大きく開く理由
LP制作の費用相場を調べると、幅が広すぎて自分の位置が分からないという感想になりがちです。これは相場が曖昧なのではなく、LP制作という言葉が指す作業範囲が案件ごとに違うからです。デザインデータを支給されてコーディングだけを行う案件と、ヒアリングから構成案を作り、原稿を書き、デザインを起こし、実装し、公開後の改善まで見る案件が、どちらも同じ「LP制作」という名前で流通しています。
つまり、単価が低いと感じているとき、原因は自分の技術評価が低いことではなく、上位の工程をまとめて引き受けているのに下位の工程の値付けのままになっていることが多い。ここを分けずに全体の金額だけを上げようとすると、比較対象が「コーディングだけの相場」になってしまい、高いと判断されます。範囲を分けて初めて、比較対象が変わります。
このような背景があるため、LPコーディングだけではなく、デザインや構成まで依頼したいなら、中小制作会社へ依頼することをおすすめします。LP制作の経験が豊富な制作会社であれば、LPを絡めたプロモーション案の相談にも乗ってもらえるでしょう。 出典: coding-army.jp
発注側の視点で読むと、この文章は「構成まで頼むなら制作会社へ」と言っています。裏を返せば、個人に構成まで頼んでいる発注者は、制作会社に払うはずだった工程を個人価格で受け取っている状態にあります。この非対称を指摘するのが、単価相談の核心です。攻撃的に言う必要はありません。事実として範囲を並べれば、相手も気づいていなかったと分かります。
相談が通る人と通らない人の言葉の違い
現場でよく見るのは、次のような言い換えの差です。通らない側は主観と感情の言葉を使い、通る側は数えられる言葉を使っています。
| 通らない言い方 | 通る言い方 |
|---|---|
| 作業が大変なので上げてほしい | 見積もり時になかった原稿整理が毎回発生しているので費目を分けたい |
| 相場より安いと思う | コーディングのみの単価で構成とライティングも受けている状態なので、範囲を三層に分けたい |
| 他社はもっと出している | 同じ内容を社内で回した場合と外注した場合の工程数を比べると、この部分が抜けている |
| そろそろ値上げしたい | 次の更新から見積もりの出し方を変えたい。金額は範囲を決めてから出す |
右側には感情がひとつも入っていません。この差は性格ではなく準備の差です。準備とは、次章の棚卸しのことを指します。
相談の前にやる棚卸し:実際に何をしているかを全部書き出す
単価交渉の成否は、話し合いの場ではなく事前準備でほぼ決まります。準備の中身は、自分が実際にやっている作業を一つ残らず紙に出すことです。頭の中で「だいたいこれくらいやっている」と思っている量と、書き出した量は必ずずれます。ずれた分が、いま無償で提供している部分です。
受注から公開までの工程をすべて列挙する
まず、直近に納品したLP案件を1本選び、最初の連絡から公開後の確認までを時系列で並べます。粒度は「ひとつの作業として名前が付けられる単位」まで細かくします。たとえば次のような並びになります。
・初回ヒアリング(オンライン打ち合わせと議事録の共有) ・参考LPの収集と方向性のすり合わせ ・構成案の作成とワイヤーフレームの提出 ・支給素材の受け取りと不足分の洗い出し ・提供された文章の校正と見出しの整理 ・写真の切り抜き、サイズ調整、書き出し ・デザインカンプの作成と修正対応 ・HTML/CSSのコーディング ・JavaScriptによる動きの実装 ・スマートフォンとタブレットでの表示確認 ・主要ブラウザでの表示確認 ・フォームの設置と送信テスト ・計測タグの設置と発火確認 ・サーバーへのアップロードと公開作業 ・公開後の表示確認と軽微な修正
書き出してみると、契約書や発注書に書かれているのは真ん中あたりのコーディングとデザインだけで、前半のヒアリングと構成、後半のテストと公開作業は「当然やるもの」として無償に近い扱いになっている場合が多いことに気づきます。
見積もりに入っていない作業を色分けする
列挙した工程に、三色の印を付けます。見積書に明記されている作業に丸、明記されていないが毎回発生している作業に三角、今回たまたま発生した作業に四角を付けます。三角が付いた行が、単価相談で切り出す対象です。四角は今回限りの事情なので、次回の見積もりに反映するかどうかを別途判断します。
この作業をすると、多くの場合は三角が全工程の三分の一から半分近くを占めます。ここで大切なのは、三角の作業を「サービスでやってあげている」と考えないことです。発注側は無償のつもりで頼んでいるわけではなく、見積もりに入っていることを前提に依頼しています。認識のずれを放置したまま関係が続くと、範囲は静かに広がり続けます。
工数の記録を取る
三角の作業について、次の案件から実測の時間を記録します。方法は難しくありません。作業を始めるときと終えるときに時刻をメモするだけで十分です。表計算ソフトに日付、作業名、開始、終了、合計時間の列を作り、案件ごとにシートを分けます。
記録は最低でも案件3本分は取ります。1本だけだと「たまたま手こずった回」と受け取られる余地が残るためです。3本並べて同じ工程に同じくらいの時間がかかっていれば、それは偶然ではなく構造です。相談の場でこの表を見せる必要はありません。見せなくても、数字を持っている人の話し方は変わります。
記録を取ると、思い込みが崩れることもあります。時間を食っていると感じていた実装より、素材の受け取りと不足分のやりとりのほうが長かった、という結果はよく出ます。その場合、交渉すべき対象は実装単価ではなく、素材支給のルールと確認の回数です。手を動かす前の待ち時間こそが利益を削っているケースは珍しくありません。
切り出し方:一式でまとめず、単位に分ける
棚卸しが終わったら、見積もりの形を変えます。ここが実務の中心です。金額を上げるのではなく、金額を出す単位を増やします。
コーディングのみ、構成込み、運用込みの三層に分ける
LP制作の依頼は、おおまかに三つの層に分かれます。第一層は、デザインデータが支給されていて実装だけを行う層。第二層は、構成案の作成や原稿の整理を含む層。第三層は、公開後の数値を見て改善提案や差し替えまで行う層です。
見積書を作るときは、この三層を最初から別の行に置きます。第二層以降を頼まない発注者には第一層だけを提示すればよく、頼む発注者には積み上げた金額が自然に見えます。一式でまとめてしまうと、どの層まで含まれているかが読み取れず、比較のときに一番安い層の相場と並べられます。行を分けることは、比較対象を自分でコントロールする行為です。
この分け方は、職種としての立ち位置を整理するときにも役に立ちます。実装だけでなく画面設計まで担うなら、必要なスキルと案件の傾向が変わります。その周辺はUI/UXデザインのフリーランスになるには?必要スキルと案件相場で、案件の種類と求められる知識の広がりが整理されています。自分がどの層に軸足を置くかを決めてから、見積書の行を作ると迷いません。
追加で発生しやすい作業に名前を付ける
三角が付いた作業には、見積書に書ける短い名前を付けます。名前がない作業は請求できません。よく使われる名前の例を挙げます。
・構成案作成費(ワイヤーフレームの提出を含む) ・原稿整理費(支給文章の校正と見出し設計) ・素材調整費(写真の切り抜き、リサイズ、書き出し) ・実装費(HTML/CSS/JavaScript) ・表示検証費(対応ブラウザと端末の範囲を明記) ・計測設定費(タグの設置と発火確認) ・公開作業費(サーバー反映と公開後の確認) ・保守対応費(公開後の期間と回数を明記)
名前を付けたうえで、それぞれに「含まれるもの」を一行ずつ添えます。含まれるものを書くと、含まれないものが自動的に決まります。これが後々の追加作業を防ぐ最も安い保険です。
修正回数と対応期間を単位に含める
LP制作で利益を削るのは、単価そのものより修正の回数です。回数の上限がない見積もりは、実質的に無期限の労働契約に近くなります。見積書には修正対応を2回まで、公開後の軽微な修正対応は14日以内、というように回数と期間の両方を書きます。
どこまでが軽微でどこからが追加かの線引きも、あらかじめ言葉にしておきます。文言の差し替えや画像の入れ替えは軽微、セクションの追加や構成の組み替えは追加、という基準がよく使われます。この線が引かれていれば、修正のたびに気まずい交渉をする必要がなくなります。交渉の回数を減らすことも、単価を守る方法のひとつです。
見積書や合意事項を文章にする力は、想像以上に成果を左右します。書式や敬語の型を体系的に押さえたい場合はビジネス文書検定の出題範囲が実務の目安になります。資格そのものが仕事を運んでくるわけではありませんが、条件を明文化する型を持っている人は、条件の話を切り出すことに抵抗が薄くなります。
根拠の作り方:値段ではなく事実を並べる
範囲を分けたら、次は根拠です。根拠とは相手を説得する材料ではなく、相手が社内を説得する材料です。この視点を持つと、何を出せばいいかが決まります。
工数の実測値を根拠にする
最も強い根拠は、自分の記録した時間です。「構成案の作成に毎回半日ほどかかっており、見積もりの中では実装費に吸収されています」という説明は、感情を含まないので反論されにくい。発注側は、その半日を自社の人件費に置き換えて考えることができます。
このとき、時給換算の話を持ち出す必要はありません。時給の議論に入ると、相手は「一日にどれだけできるのか」という生産性の話に持ち込みやすくなります。あくまで「この工程が費目に入っていない」という範囲の話に留めます。範囲の話は事実の確認であり、生産性の話は評価です。事実の確認のほうが、双方の消耗が少なく終わります。
職種としての世の中の水準を確認しておきたい場合は、公的統計をもとにしたソフトウェア作成者の年収・単価相場のような資料が参考になります。これは交渉の場に持ち込む材料ではなく、自分の位置を客観的に確かめるための背景情報として使います。
成果の指標を根拠にする
LPは成果が数字で出る種類の制作物です。読み込み速度、フォームの離脱、スマートフォンでの表示崩れの有無など、改善したポイントを記録しておくと、次の見積もりの根拠になります。画像の書き出し設定を見直して表示が速くなった、フォームの入力項目の並びを変えて途中離脱が減った、といった事実は、実装者にしか出せない情報です。
ここで注意したいのは、成果を自分の手柄として強く主張しないことです。LPの成果は広告の出稿設定や商品自体の力にも左右されます。「この施策で数値がこう動きました」と事実だけを共有し、判断は相手に委ねる。この態度のほうが、長い目で見て信用が積み上がります。
計測や改善の話に踏み込むほど、扱う領域はマーケティングに寄っていきます。周辺の仕事の広がりはAI・マーケティング・セキュリティのお仕事にまとまっており、実装の隣にどんな依頼が並んでいるかを知る手がかりになります。隣の領域を知っていること自体が、単価の根拠になります。
発注側の代替手段と比べて置く
発注側には常に代替手段があります。制作会社に頼む、社内のスタッフにやらせる、テンプレートで済ませる、という選択肢です。相談の場では、この代替手段を否定するのではなく、並べて置きます。
「社内で構成案を作っていただければ、実装だけの費用でお受けできます。こちらで構成から作る場合は、その分を別の費目として出させてください」という言い方は、相手に選択肢を返しています。値上げを飲むか断るかの二択ではなく、範囲を選ぶ形になるため、話が硬直しません。実際には、社内に構成を書ける人がいないから外に出しているケースが大半で、選択肢を並べた結果として費目の追加が受け入れられることが多くなります。
相談を切り出すタイミングと順番
同じ内容でも、切り出す時期によって通りやすさが変わります。
継続案件は更新や次の発注の前
継続で受けている場合、最も自然なタイミングは次の案件が始まる前です。進行中の案件の途中で持ち出すと、納品を人質に取っているように見える恐れがあります。逆に、納品直後で相手の満足度が高いときは切り出しやすい。「今回ありがとうございました。次回からの進め方について、一度整理させてください」という入り方が使いやすい形です。
年度や期の区切りがある発注者なら、予算が決まる前の時期を狙います。予算が確定した後に相談しても、担当者は動かせる枠を持っていません。相手の会計年度の区切りを何気なく聞いておくと、次の相談の設計がしやすくなります。
単発案件は見積もり提出時が唯一の機会
単発の依頼では、見積もりを出した後に金額を動かすのはほぼ不可能です。したがって、単発では相談ではなく最初の見積もりの作り方がすべてになります。ヒアリングの段階で範囲を確認し、確認した内容をそのまま費目にして提出する。この手順を守るだけで、後からの交渉が要らなくなります。
切り出す文面の組み立て方
文面は、次の順番で組み立てると読み手が構えません。感謝、事実、提案、選択肢、締め、の五段構成です。
〇〇様
いつもお世話になっております。□□です。
先日公開いたしましたLPの件、無事に進行できてほっとしております。
つきましては、次回以降の進め方について一点ご相談させてください。
これまでの案件では、構成案の作成と支給いただいた文章の整理を私のほうで行っておりました。ただ、現在の見積もりでは実装費のみを頂戴している形になっており、費目と実作業にずれが生じております。
次回から、見積もりを「構成案作成」「原稿整理」「実装」「表示検証」「公開作業」に分けてご提出させていただければと思います。構成案を御社側でご用意いただける場合は、その項目を外した形でお出しできます。
ご都合のよい進め方をお知らせいただけますと幸いです。
この文面には金額が一度も出てきません。金額は範囲が決まってから出します。順番を逆にすると、範囲の話が値上げの言い訳に見えてしまいます。
断られたときの二の矢
相談は必ず通るものではありません。予算の枠が本当に固定されている発注者もいます。断られた瞬間に関係を終わらせる必要はなく、次の手を用意しておきます。
単価据え置きで範囲を削る
金額を動かせないなら、作業を減らします。「ご予算がこの範囲でしたら、構成案は御社でご用意いただき、実装からお受けする形にいたします」という提案です。これは値下げではなく等価交換で、こちらの時間当たりの手取りは改善します。相手にとっても、予算を守れるので飲みやすい提案になります。
単価以外の条件を動かす
金額の枠が固いときでも、他の条件は動くことがあります。支払いサイトを短くしてもらう、修正回数の上限を明記してもらう、素材の支給期限を決めてもらう、複数案件をまとめて発注してもらう。どれも実質的な利益改善につながります。単価という一点だけを見ていると、こうした手が見えなくなります。
引き際の判断基準
続けるか離れるかの判断は、感情ではなく基準で決めます。範囲の相談を2回持ちかけて、どちらも検討すらされずに終わったなら、その発注者の予算構造はこちらの努力では動きません。そのときは、いまの案件を丁寧に納めながら、並行して別の窓口を開くほうが健全です。
離れる決断をした後も、態度は変えないほうがいい。この業界の担当者は転職します。前の会社では予算が動かなかった担当者が、次の会社で発注者として戻ってくることは実際に起きています。単価交渉の場での振る舞いは、その後何年も残ります。
なお、値上げの進め方そのものについてはフリーランスの単価交渉術|値上げを成功させる方法【2026年版】に、業種を問わない共通の型がまとまっています。本記事のLP特有の切り出し方と併せて読むと、話の設計が組み立てやすくなります。
相談の場で避けたい言い方
最後に、通る内容を持っているのに言い方で潰してしまう例を挙げます。
・他の案件のほうが条件がいい、と比較で圧をかける。相手は交渉ではなく脅しと受け取ります。 ・生活が苦しいので、と自分の事情を理由にする。相手には関係がなく、判断材料になりません。 ・これ以上は受けられません、と最初から最後通牒にする。選択肢が消えると相手も引けなくなります。 ・過去の未請求分をさかのぼって請求しようとする。合意していない作業は取り戻せません。次から変える、に集中します。 ・相場という言葉だけで押す。範囲の説明がない相場は、相手にとって根拠になりません。
避けたい言い方に共通するのは、相手の判断材料になっていないことです。判断材料を出す人と、感情を出す人。同じ実力でも、後者は単価が上がりません。
単価が上がりやすい人が普段からやっていること
単価交渉は年に数回のイベントではなく、日々の積み重ねの結果として起きます。長く見ていて共通点だと感じるのは、次の三つです。
第一に、記録を残しています。案件ごとの工数、修正の回数、やりとりの本数を軽く記録している人は、相談のときに慌てません。第二に、担当領域の隣を少しだけ知っています。実装だけの人より、計測の設定や広告側の事情を少し知っている人のほうが、相談される内容が増え、結果として費目が増えます。第三に、直接やりとりできる窓口を持っています。間に何社も入っている状態では、そもそも単価の話が届く相手がいません。
実装の仕事がどう募集され、どんな条件が並んでいるかを定点で眺めておくのも有効です。LP制作・HTML/CSSコーディングのお仕事には、この分野の依頼がどのような形で出てくるかがまとまっています。自分の見積書の項目と、世の中の募集に書かれている作業内容を突き合わせると、抜けている費目に気づきます。
合意した内容は必ず文章で残す
相談が通ったあと、口頭やチャットのやりとりだけで終えてしまうと、数か月後に元へ戻ります。担当者が異動する、上長が変わる、前提を覚えている人がいなくなる。よくある話です。合意した範囲は、その日のうちに文章にして送り返します。
残す形式は新しい見積書がいちばん確実
改めて交わす書類は、議事録よりも新しい見積書のほうが実務では機能します。見積書は経理を通り、社内の資料として保管され、次の発注のときに参照されます。議事録は担当者のメールボックスの中で埋もれます。合意の翌日までに、費目を分けた見積書を送り、そこに有効期限と適用開始の案件を書き添えます。
書き添える内容は次の四点です。適用開始がいつの案件からか、修正対応の回数と期間、対応するブラウザと端末の範囲、素材支給の期限です。この四点が書かれていない見積書は、あとから解釈の余地が残ります。解釈の余地は、忙しい時期に必ず不利な方向へ働きます。
発注書と請求書の費目をそろえる
見積書で費目を分けたのに、請求書では一式でまとめてしまう人がいます。これをやると、せっかく分けた範囲が経理の記録に残りません。次の年度に担当者が変わったとき、参照されるのは請求書です。見積書、発注書、納品書、請求書の費目の並びと名称は完全にそろえます。
費目をそろえておくと、副次的な効果もあります。同じ費目が複数の発注者で並ぶようになり、自分のなかで工程ごとの標準的な価格帯が固まっていきます。案件ごとに勘で金額を出している状態から抜けると、新規の見積もりを作る時間そのものが短くなります。見積もりに使っていた時間は、そのまま制作に回せます。
変更が起きたらその都度書き足す
進行の途中で範囲が変わることは普通に起きます。追加のセクションが増えた、公開日が前倒しになった、支給素材が別形式で届いた。そのたびに、短くていいので文章で確認します。「本日ご依頼のセクション追加分は、当初のお見積もりに含まれていないため、別途お見積もりをお送りします」と一行送るだけで、後の請求が滞りません。
この一行を送れるかどうかが、単価交渉の技術そのものです。年に一度の大きな相談よりも、案件のたびに小さく範囲を確認する習慣のほうが、最終的な手取りを大きく動かします。
市場を運営する側から見えている構造
フリーランスと在宅ワークの市場を20年見てきた立場から言えば、単価が上がる人と上がらない人の差は、技術力よりも「関係の設計」にあります。長く続く人ほど、単発の作業をこなすことではなく、この人に任せると自分の手間が減る、と発注者に思わせる状態づくりに時間を使っています。手間が減る相手には、発注者は範囲を広げて頼みたくなり、範囲が広がれば費目が増える。単価はその結果として動きます。
もうひとつ、運営者として見てきた限りでは、額面より手取りの構造を意識している人のほうが安定しています。間に何社も入る流れでは、発注者が出した予算のうち、実際に手を動かす人に届く額が目減りします。中間マージンが乗らない直接取引では、同じ予算で発注者はより多くを頼め、受け手の手取りは厚くなります。手数料0%という条件の価値は、金額そのものよりも、この「同じ仕事で手取りが厚い」という質にあります。単価交渉に苦労している人ほど、交渉の技術を磨く前に、そもそも自分の報酬がどこで削られているかを確かめる価値があります。
そして、単価の相談に自信が持てないという相談を受けたときに毎回伝えているのは、相談は関係を壊す行為ではないということです。範囲のずれを放置したまま我慢を続けるほうが、結果として関係を壊します。作業が増え続け、余裕がなくなり、品質が落ち、最後には自分から離れることになる。範囲を定期的に確認し合う関係のほうが、双方にとって長持ちします。単価交渉という言葉の響きは重いですが、実務としてやっていることは、いま何をどこまでやっているかの確認にすぎません。
よくある質問
Q. LP制作の単価交渉は、何本くらい納品してから切り出すのが適切ですか?
本数そのものより、同じ工程が繰り返し発生している事実を示せるかが重要です。同じ発注者から3本前後を納品し、見積もりに入っていない作業が毎回発生していると確認できた時点が目安になります。1本だけでは偶然と受け取られやすく、根拠として弱くなります。記録を取り始めるのは初回からで構いません。
Q. 相談は打ち合わせで直接伝えるべきですか、メールのほうがよいですか?
最初はメールなど文章で伝えるほうが向いています。範囲の一覧や費目の分け方は口頭では伝わりにくく、相手が社内で共有するときにも文章のほうが扱いやすいためです。文章で論点を共有したうえで、詳細を詰める段階で打ち合わせに移ると、話が感情的になりにくくなります。
Q. 単価を上げると発注が来なくなるのが不安です。どう考えればよいですか?
範囲を分けた提案なら、発注が止まるリスクは大きく下がります。金額を一律で上げる提案は断られたら終わりですが、範囲を分ける提案は「その項目は自社でやる」という着地が用意されているためです。相手に選択肢を残す形にすることが、関係を切らずに条件を変える最も現実的な方法です。
Q. 修正回数の上限を決めると、細かい発注者に嫌がられませんか?
上限を決めることは、修正を拒否する宣言ではありません。何が軽微な修正で何が追加作業かを共有する行為です。基準があると、発注者も遠慮なく必要な修正を依頼でき、こちらも気まずさなく追加分を提示できます。基準がないほうが、双方が探り合いになって関係が消耗します。
Q. 過去に安く受けてしまった案件の単価も、さかのぼって上げられますか?
すでに合意して納品した分をさかのぼって請求するのは現実的ではありません。相談は必ず次回以降の条件に限定します。過去分を持ち出すと、相手は不当な請求と受け取り、これから変えたいという本題まで信用されなくなります。切り替えるのは次の案件から、と割り切るほうが結果的に早く条件が変わります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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