掛け持ちが詰む原因は納期|在宅サイトやアプリの使い勝手テスト


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この記事のポイント
- ✓サイトやアプリの使い勝手テストを在宅で掛け持ちすると
- ✓原因は作業量ではなく納期の重なりです
- ✓秘密保持と競業の線引き
サイトやアプリの使い勝手テストを在宅で掛け持ちしていて、思ったように回らない。結論から言うと、詰まる原因は作業量ではなく納期の重なりです。テスト業務は1件あたり1時間前後の短い作業なので、月に10件あっても総時間としては10時間程度にしかなりません。時間だけ見れば掛け持ちは余裕です。それでも破綻するのは、複数の発注元のリリース日が同じ週に集中するからです。
この記事では、掛け持ちが詰む構造を分解したうえで、契約上の落とし穴、秘密保持と競業避止の線引き、そして実際に納期がぶつかったときの処理手順まで書きます。掛け持ちを勧める記事でも、やめろという記事でもありません。どういう条件なら成立し、どういう条件なら成立しないかを判断できる材料を出します。
掛け持ちが詰む本当の理由は「同期している」こと
在宅の使い勝手テストを複数の発注元から受けている人が破綻するとき、原因の8割は納期の同期です。ここを理解しないまま「もっと効率よくやろう」と考えても解決しません。
開発のリリースサイクルは業界全体で似通っている
Webサービスやスマートフォンアプリの開発現場では、リリースを週次または隔週で回すのが標準になりました。そして厄介なことに、各社のリリース日は独立してばらけているわけではありません。月末、月初、そして大型連休の前後に集中する傾向があります。理由は明快で、月次の締めや広告の出稿サイクル、キャンペーンの開始日に合わせているからです。
つまり、A社とB社とC社のテスト案件を掛け持ちしていると、3社とも同じ週に「明日までに確認をお願いします」と言ってきます。1社ずつなら2時間で終わる作業が、同じ日に3件重なると6時間になります。本業を持っている人にとって、平日夜に6時間は物理的に不可能です。
短納期であることが掛け持ちと相性が悪い
使い勝手テストの納期は短いのが普通です。リリース前の最終確認という位置づけなので、依頼から提出までが24時間から48時間というケースが珍しくありません。ライティングやデザインのように「来週末まで」という余裕のある納期であれば、掛け持ちしていても順番に処理できます。テストにはその余裕がありません。
短納期の仕事を複数持つというのは、常に緊急対応の待機状態にいるということです。これは想像以上に消耗します。私自身、テスト案件を3社並行で受けていた時期に、通知が鳴るたびに緊張するようになりました。件数は多くないのに、常に「今来たらどうしよう」と考えている状態が続く。作業時間より、待機の心理的コストのほうが重かったというのが正直な感想です。
断ると次が来なくなるという構造
さらに事情を複雑にするのが、テスターの立場の弱さです。継続的に案件を回してもらうためには、依頼に応じ続ける必要があると感じてしまいます。1回断ると、次のリリースでは別のテスターに回されるのではないかという不安が働く。だから重なっているとわかっていても引き受け、結果として品質が落ちるか、寝る時間が消えます。
正直なところ、この不安はある程度は事実です。ただし、後述するように断り方の設計次第で、関係を維持したまま調整することは十分に可能です。
契約の観点で見た掛け持ちの可否
ここからは法的な整理に入ります。掛け持ちしていいのかどうかは、感覚ではなく契約書に書いてあります。読まずに始めると、あとで揉めます。
業務委託契約は原則として掛け持ち可能
在宅の使い勝手テストは、多くの場合が業務委託契約です。業務委託は成果や業務の遂行を約束する契約であり、労働時間を拘束する契約ではありません。したがって、他社の仕事を並行して受けることは原則として自由です。ここは大前提として押さえてください。
問題になるのは、契約書に個別の制限が書かれている場合です。次の3種類の条項を必ず確認します。
確認すべき条項1:競業避止義務
「本契約期間中、甲の競合他社に対して同種の業務を提供してはならない」という趣旨の条項です。これがあると、同業他社のテスト案件は受けられません。
ここで難しいのが、競合の範囲です。「同種のサービスを提供する事業者」と書かれている場合、フリマアプリとECサイトは競合なのか、家計簿アプリと銀行アプリは競合なのか、判断がつきません。範囲が曖昧なまま署名すると、あとから「あれは競合だった」と言われるリスクを抱えます。
対処としては、署名前に「具体的にどの事業者が競合に該当するか、社名または業種で示してほしい」と確認することです。これは失礼な質問ではありません。むしろ、範囲を明確にしておかないと発注側も判断できないので、まともな発注元なら答えてくれます。答えを渋る相手は、その時点で警戒すべきです。
なお、業務委託における競業避止条項は、範囲や期間が不合理に広い場合には効力が制限される可能性があります。ただしこれは最終的には個別の事情で判断される話なので、揉めそうな案件では弁護士に相談してください。素人判断で「無効だから無視していい」と考えるのは危険です。
確認すべき条項2:秘密保持の範囲
テスターはリリース前の画面を見ます。当然、秘密保持義務がかかります。掛け持ちで問題になるのは、A社で得た知見をB社の業務で使ってよいかという点です。
原則として、A社の未公開情報そのものをB社に伝えるのは明確な違反です。一方、「テストの進め方」「報告書の書式」といった一般的なノウハウは、あなた自身のスキルとして持ち運べます。この線引きは実務上かなり微妙で、契約書に「本業務を通じて得た一切の情報」と書かれていると、ノウハウまで含むように読めてしまいます。
秘密保持契約の実務的なチェックポイントは、契約書の必須項目を整理したフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストが参考になります。発注書に何が書かれているべきかを知っておくと、危ない契約を初期に見分けられます。
確認すべき条項3:再委託と代行の禁止
「受託者は本業務を第三者に再委託してはならない」という条項です。掛け持ちが増えて手が回らなくなったとき、知人に手伝ってもらう発想が出ますが、これは契約違反になります。テスト業務は秘密情報に触れるため、再委託が厳しく制限されているのが通常です。
手が回らないなら、再委託ではなく件数を減らす。この判断ができるかどうかが分岐点です。
本業の就業規則も確認する
会社員が副業としてテスト案件を受ける場合、勤務先の就業規則が別の制約になります。副業許可制であれば申請が必要ですし、同業他社での業務が禁止されている場合もあります。IT企業に勤めている人が、他社のアプリのテストを受けるケースは、この点で引っかかる可能性があります。
労働時間の通算や社会保険の取り扱いについては厚生労働省が副業や兼業に関する情報を出しています。業務委託であれば労働時間の通算対象にはなりませんが、雇用契約でのアルバイトを掛け持ちする場合は扱いが変わります。自分の契約形態がどちらなのかを、まず確定させてください。
掛け持ちが成立する条件と、成立しない条件
構造と契約を押さえたうえで、実務的な判断基準を示します。
成立する条件1:リリースサイクルがずれている
A社が第1週と第3週、B社が第2週と第4週にリリースするなら、掛け持ちは成立します。逆に両社とも月末なら成立しません。契約前に「リリースはどのくらいの頻度で、いつ頃ですか」と聞くだけで、この判断ができます。この質問をせずに契約する人が多いのですが、テスト案件においては報酬額と同じくらい重要な確認事項です。
成立する条件2:納期が48時間以上ある
依頼から提出まで48時間あれば、他案件と重なっても順番に処理できます。24時間以内が常態化している発注元は、掛け持ちの相手として相性が悪い。単独で受けるなら良い案件でも、複数持つ前提では選択肢から外します。
成立する条件3:作業量が事前に読める
「今回は画面5枚、想定2時間」と事前に提示される案件は掛け持ちできます。「見てもらって気づいたところを全部」という指示の案件は、作業量が青天井なので読めません。読めない案件を複数持つと、必ずどこかで破綻します。
成立しない条件1:同じ発注元グループからの複数案件
同一企業の別部署、または資本関係のあるグループ会社から複数案件を受けている場合、リリース日が完全に同期していることがあります。社内の共通スケジュールで動いているためです。分散のつもりが分散になっていないという状態は、意外と気づきにくい。
成立しない条件2:オンラインインタビュー同席型が複数
被験者としてインタビューに参加する形式は、日時が固定されます。2社から同じ時間帯を指定されたら、片方は必ず断ることになります。時間固定型の案件は、掛け持ちの上限を1社と考えるのが安全です。
納期がぶつかったときの具体的な処理手順
理屈がわかっていても、実際にはぶつかります。ぶつかったときにどう動くかで、その後の関係が決まります。
手順1:ぶつかった時点で即座に連絡する
最悪の対応は、ぶつかっているのに黙って両方引き受け、片方が遅れることです。発注側にとって、遅延そのものより「事前に言われなかった」ことのほうがダメージが大きい。テストが上がってこないとリリース判断ができず、開発チーム全体が待たされます。
依頼を受けた瞬間、既に他案件が入っているとわかったら、その日のうちに伝えます。1日置いてから言うのと、即日言うのでは、相手が取れる対策の幅がまったく違います。
手順2:断るのではなく代案を出す
「できません」ではなく、次のいずれかを提示します。
第一に、時間をずらす案です。「明日18時までは別案件が入っているため、提出は翌朝9時でよろしいでしょうか」。ほとんどのケースで、これは通ります。テストの締切は開発側の内部スケジュールから逆算した目安であることが多く、半日程度の調整余地があるからです。
第二に、範囲を絞る案です。「全画面の確認は難しいので、決済フローの3画面に絞って、そこだけは確実に見ます」。優先度の高い箇所だけでも確認できるほうが、発注側にとっては全部やらないよりはるかに価値があります。
第三に、次回への振り替えです。「今回は見送らせてください。次回リリース分は必ず対応します」。この言い方であれば、継続の意思が伝わるので関係が切れにくくなります。
手順3:断った記録を残す
いつ、どの案件を、どういう理由で断ったかをメモしておきます。これは自己防衛のためです。後日「あのときお願いしたのに」と言われたとき、経緯を提示できるかどうかで話が変わります。また、断った回数と発注元ごとの内訳を見ると、どの発注元と相性が悪いかが数字で見えてきます。
手順4:ぶつかりが月2回を超えたら構成を変える
同じ月に2回以上納期がぶつかるなら、掛け持ちの組み合わせが間違っています。1社減らすか、リリース周期の違う発注元に入れ替えます。「頑張れば回る」と考えて続けると、そのうち品質が落ちて両方失います。
報酬と支払いのトラブルを掛け持ちで増やさない
掛け持ちすると、契約数だけ支払いトラブルのリスクも増えます。ここも法的な観点で押さえておきます。
発注書のない依頼を受けない
チャットで「次回もお願いします」と言われただけで作業を始めるのは危険です。報酬額、業務範囲、納期、支払期日が書面またはメールなど記録に残る形で示されていない依頼は、掛け持ちの状態では特に危ない。案件が複数動いていると、どの依頼がどの条件だったか自分でも追えなくなり、揉めたときに立証できません。
取引の適正化を図る法律では、発注者が受注者に対して取引条件を明示する義務が定められています。詳しい規定は公正取引委員会の情報を確認してください。書面がないこと自体が、発注側の問題である場合があります。
支払サイクルの違いを把握する
A社は月末締め翌月末払い、B社は検収後60日、C社はポイント制で最低交換額5,000円から。掛け持ちしていると入金のタイミングがばらばらになり、「働いている感覚はあるのに口座に入ってこない」という状態が生まれます。これが不安を増幅させ、さらに案件を増やす悪循環につながります。
対策は単純で、契約ごとに支払期日を一覧化しておくことです。いつ、いくら入るかが見えていれば、無闇に案件を増やす必要はなくなります。
検収が長引く案件に注意する
テスト報告を出したあと、検収が終わらないと支払いが始まらない契約があります。検収の基準が曖昧だと、発注側の都合でいつまでも確定しません。「報告書提出をもって業務完了とする」と契約で定めておくのが理想です。
報酬未払いや検収遅延の対処については、税務や契約の実務に強い専門家の視点が役に立ちます。税理士の副業ガイド|確定申告代行・記帳代行で稼ぐ方法【2026年版】は税理士側の記事ですが、業務委託における報酬管理の考え方が実務的に整理されています。
掛け持ちで積み上がるスキルと、積み上がらないスキル
掛け持ちには消耗以外の側面もあります。何が積み上がるのかを整理しておくと、続けるかどうかの判断がしやすくなります。
積み上がるもの1:業種横断の比較視点
1社だけを見ていると、そのサービスの作りが業界標準なのか特殊なのかがわかりません。3社を並行で見ていると、「この導線は他社ではこうなっている」という比較ができます。この視点は、単なるバグ報告を超えた提案につながります。
ただし注意点として、比較を報告書に書く際は、他社の未公開情報に触れないことです。「一般的なECサイトでは」という書き方であれば問題ありませんが、「B社のアプリでは」と書いた瞬間に秘密保持違反になり得ます。ここは掛け持ちしている人が最も踏みやすい地雷です。
積み上がるもの2:環境と再現の勘
複数の端末とOSを行き来していると、「この症状はiOS特有だ」「この挙動は通信環境の問題だ」という切り分けが早くなります。切り分けができるテスターは、開発側の工数を大きく減らすので評価されます。
技術的な切り分け精度を上げたいなら、ネットワークの基礎を体系的に学ぶのが近道です。CCNA(シスコ技術者認定)は通信の仕組みを扱う資格で、遅延やタイムアウトが絡む不具合の理解に直結します。開発工程全体の中での位置づけを知りたい場合はアプリケーション開発のお仕事で、テストが誰に渡る作業なのかを確認しておくと報告の宛先が明確になります。
積み上がらないもの:件数だけの実績
100件テストしましたという数字は、それ自体では評価されません。評価されるのは、どういう観点で何を発見し、それがどう改善につながったかです。掛け持ちして件数を増やしても、記録が残っていなければ経験としては消えます。
報告書の書き方そのものを底上げしたいなら、事実と所見を分けて書く訓練が有効です。ビジネス文書検定は報告書や記録文書の構成を扱う検定で、複数の発注元にそれぞれ違う書式で出す場面でも、芯となる型があると迷いません。文章で価値を出す方向に広げる場合の単価水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認できます。
掛け持ちから抜ける先の選択肢
掛け持ちは手段であって目的ではありません。抜ける先を持っておくと、判断が楽になります。テストの経験は、業務プロセスを観察して改善に落とす仕事に接続します。AIコンサル・業務活用支援のお仕事には、現場の使い勝手を見て導入設計に落とす仕事の輪郭がまとまっています。マーケティングやセキュリティの観点から画面を評価する道もあり、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事が参考になります。開発側の単価構造を知りたい場合はソフトウェア作成者の年収・単価相場を見ておくと、テスト工程の位置づけが相対的に把握できます。
市場の実態と、掛け持ちを前提としない働き方
在宅のユーザビリティ関連ポジションは、業務委託だけでなく正社員や高単価の常勤に近い形でも募集が出ています。
1,000万人以上の会員基盤を持つ大規模フィンテックサービスにおいて、UXリサーチャーとしてユーザー理解と体験価値向上を推進するポジションです。Customer Firstの理念に基づき、定性・定量データの統合分析、カスタマージャーニーマップやペルソナ作成、ユーザビリティテストの企画・実施・分析などを担当します。デザインチームと協働し、グローバル展開を見据えた市場調査や分析も行います。キャッシュレス市場のリーディングカンパニーで、先進的なプロジェクトに携わり... 出典: 求人ボックス
こうしたポジションは、テストの実施だけでなく設計と分析を担います。1社に深く入る形なので掛け持ちはできませんが、収入は安定します。「掛け持ちしないと足りない」という状態が続いているなら、掛け持ちを増やす方向ではなく、1社の単価を上げる方向に手を打つべきかどうかを検討する価値があります。
在宅を前提とした求人自体は増えています。
ユーザーインタビューやユーザビリティテストの実務経験・クリエイティブチームのマネジメント経験...在宅促進の影響もあり、強い追い風の中で事業の垂直立ち上げに成功しており、新しいプロダクトのリリースも控えています。 出典: 求人ボックス
税務上の扱いを掛け持ち前提で整理する
複数の発注元から報酬を受けると、確定申告の手間が増えます。ここを最初に設計しておかないと、年明けに苦しみます。
給与所得者が副業として業務委託収入を得ている場合、所得が年20万円を超えると確定申告が必要です。所得は売上から必要経費を引いた額なので、通信費や端末代の按分は経費に計上できます。掛け持ちしていると、どの経費がどの案件に対応するかを按分する必要が出てきますが、テスト業務の場合は「業務全体に対する按分」で処理するのが一般的です。要件の詳細は国税庁の情報を確認してください。
実務上のポイントは、発注元ごとに売上を分けて記録することです。会計ソフトを使うなら取引先を分けて登録します。freeeやマネーフォワードといったサービスでは取引先別の集計ができるので、掛け持ちの人ほど早い段階で導入したほうが結果的に楽になります。
源泉徴収の有無も発注元ごとに違います。徴収されている案件とされていない案件が混在すると、年間の税額計算がややこしくなります。支払調書が届く案件と届かない案件を一覧にしておくと、申告時に照合できます。
掛け持ちを1週間の型に落とし込む
理屈だけでは回りません。実際の運用に落とすと、掛け持ちは週単位の枠取りの問題になります。
曜日で発注元を割り当てる
複数の発注元を抱えるとき、依頼が来てから予定を空けようとすると必ず衝突します。先に枠を決めておき、そこに依頼を流し込む形にします。たとえば、火曜と木曜の夜をA社の週次リリース用、土曜午前をB社の月次リリース用、日曜午後を単発案件と自主的な確認用に割り当てます。
この形にしておくと、依頼が来たときに「その週の枠が空いているか」を見るだけで即答できます。空いていなければ、代案を出す判断も一瞬で済みます。逆に枠を決めていないと、毎回カレンダーを開いて計算することになり、返答が遅れます。返答の遅さは、テスト業務では致命的です。
枠の7割しか埋めない
確保した枠を全部埋めると、突発の依頼に対応できません。緊急の追加確認は必ず発生します。枠の7割までを通常案件で埋め、残りを予備として空けておきます。6時間確保しているなら、通常案件は4時間分までにするということです。
これを守れない人が非常に多い。空いている枠を見ると埋めたくなるからです。しかし予備枠がない状態で緊急依頼を受けると、その週は睡眠時間から引くしかなくなります。2週続けばパフォーマンスが落ち、報告の質が下がり、結果として案件が減ります。
週末に翌週の予定を発注元へ共有する
継続案件を持っている発注元には、翌週の稼働可能な時間帯を先に伝えておきます。「来週は火曜夜と木曜夜が対応可能です」と一行送るだけで、発注側は依頼のタイミングを調整してくれます。
これは相手のためではなく、自分のためです。相手が調整できる情報を持っていない限り、依頼は都合の良いタイミングで飛んできます。情報を先に渡しておけば、衝突そのものが減ります。私がこの運用に変えてから、納期がぶつかる回数は明確に減りました。手間は週5分です。
掛け持ち中に品質を落とさないための確認
案件が複数走っていると、確認の抜けが起きます。抜けを防ぐ仕組みを作ります。
案件ごとにチェックリストを固定する
発注元ごとに、確認すべき固定項目を作ります。ログイン、新規登録、検索、決済、通知といった主要導線のうち、その案件で毎回見る項目を並べます。掛け持ち中は頭の切り替えが追いつかないので、記憶ではなくリストで動きます。
リストがあると、疲れている日でも品質が一定に保てます。逆にリストがないと、体調の良い日と悪い日で報告の質が変わり、発注側から見て信頼できないテスターになります。
提出前に宛先と内容の突き合わせをする
複数案件を並行していると、A社向けの報告をB社に送るという事故が起きます。これは秘密保持違反に直結する重大な事故です。提出前に、報告書の冒頭に書いた対象サービス名と、送信先が一致しているかを必ず確認します。
この確認を怠って情報が流出すると、契約解除だけでなく損害賠償の対象になり得ます。掛け持ちで最も重いリスクはここにあります。作業用のフォルダを発注元ごとに完全に分け、ファイル名の先頭に発注元の識別子を入れるだけでも事故率は下がります。
引き受けた時点で作業時間を見積もる
依頼を受けたとき、その場で所要時間を見積もってメモします。実績と見積もりの差を毎回記録すると、自分の見積もり精度がわかってきます。精度が上がれば、掛け持ちできる上限も正確に判断できるようになります。
見積もりをせずに「たぶん大丈夫」で受け続けている限り、掛け持ちの適正数は永久にわかりません。感覚ではなく数字で判断するために、この記録は欠かせません。
運営者の立場から見た、掛け持ちの実像
在宅ワークの仲介を長く運営してきた立場から観察すると、掛け持ちで安定している人と消耗している人の差は、件数ではなく組み合わせにあります。
消耗している人は、条件の似た案件を並べています。同じ業界、同じリリース周期、同じ短納期。これでは分散になっておらず、リスクを重ねているだけです。安定している人は、周期の違う案件を意図的に組み合わせています。週次リリースの案件が1件、月次の案件が1件、不定期の単発が1件。この構成なら重なる確率が下がります。
もう一つ、長く続く人に共通するのは、掛け持ちの数を増やすことより、1社との関係を厚くすることに時間を使っている点です。「この人に見てもらうと安心だ」という関係ができると、発注側は無理な納期を押しつけなくなります。関係が薄いうちは条件を飲むしかないので、掛け持ちで数を確保しようとする。順序が逆になっているケースが非常に多いと感じます。
報酬構造の面でも観察があります。仲介手数料が乗る取引では、発注側が支払った額から中間で差し引かれる分が発生します。中間マージンが乗らない直接取引であれば、同じ予算で依頼側はより多くの回数を頼めますし、受け手の手取りは厚くなります。手数料0%の構造が効くのは、金額の多寡そのものより、「同じ収入を得るために必要な件数が減る」という点です。件数が減れば納期の重なりも減り、掛け持ちの必要性そのものが下がります。
登記や許認可のように専門性の高い業務であっても、在宅化と単価の関係は同じ構造で動いています。本店移転・役員変更登記の報酬相場|オンライン申請とプロへの依頼比較【2026年最新】を見ると、オンライン化によって作業単価が下がる一方で、判断を含む部分の価値は維持されていることがわかります。テスターも同じで、手を動かすだけの工程は掛け持ちで数を追う世界に留まりますが、判断を含む工程に移れば数を追う必要がなくなります。
長く見てきた実感として、掛け持ちは入口としては合理的です。1社だけに依存すると、その案件が終わった瞬間に収入がゼロになるからです。ただし、掛け持ちを恒久的な形として設計している人は、ほぼ例外なくどこかで消耗します。掛け持ちは分散のための一時的な構えであって、目指すべきは重ならない構成に整理していくことだという整理をしておくと、判断を誤りにくくなります。
よくある質問
Q. 業務委託でテスト案件を掛け持ちしても契約違反になりませんか?
業務委託は労働時間を拘束する契約ではないため、原則として掛け持ちは自由です。ただし契約書に競業避止義務、秘密保持の範囲、再委託禁止の条項がある場合は制限を受けます。特に競業の範囲が曖昧なまま署名すると後で揉めるので、署名前に該当する事業者を具体的に確認してください。
Q. 納期が重なったときはどう伝えればいいですか?
気づいた当日に連絡し、断るのではなく代案を出します。提出時刻を半日ずらす、確認範囲を優先度の高い画面に絞る、次回リリース分で必ず対応すると振り替える。この3つのいずれかを提示すれば、多くの場合は調整が通り、関係も切れにくくなります。
Q. 何社まで掛け持ちできますか?
件数ではなくリリース周期で判断します。週次リリースの案件を複数持つと必ず重なります。周期の違う組み合わせ、たとえば週次1件、月次1件、不定期の単発1件という構成なら破綻しにくいです。日時が固定されるオンラインインタビュー型は、上限1社と考えるのが安全です。
Q. 掛け持ちすると確定申告は複雑になりますか?
発注元ごとに売上と源泉徴収の有無が異なるため、記録を分けておく必要があります。給与所得者の副業なら所得が年20万円を超えると申告が必要です。会計ソフトで取引先別に登録しておけば集計は自動化できるので、掛け持ちを始める段階で導入しておくと年明けの負担が大きく減ります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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