副業にならない収入はどこまでか|会社への届け出が要る境目

丸山 桃子
丸山 桃子
副業にならない収入はどこまでか|会社への届け出が要る境目

この記事のポイント

  • ✓副業にならない収入という言葉に法律上の定義はありません
  • ✓会社が禁止できる4つの場合
  • ✓届け出が要るかどうかの判断

「副業にならない収入」という言葉で調べる人が知りたいのは、会社に黙っていても問題にならない範囲がどこまでかという一点です。結論から書きます。法律に「副業」の定義はありません。したがって「いくらまでなら副業ではない」という金額の線も、法律上は存在しません。判断の基準になるのは勤め先の就業規則で、税や社会保険の扱いはそれとは別の物差しで動きます。この2つを混ぜて考えると必ず迷います。この記事では、就業規則の側で何が禁止できるのか、税の側で何が申告の対象になるのか、社会保険の側で何が変わるのかを、それぞれ分けて整理します。

「副業にならない収入」に法律上の定義はない

まず大前提です。日本の法律に、会社員の副業を一般的に禁止する規定はありません。禁止の根拠になっているのは、各社の就業規則です。就業規則は会社が作るものなので、内容は会社ごとに違います。同じ収入の形でも、A社では届け出が不要で、B社では許可が必要ということが起こります。

ここで多くの解説が「いくらまでなら副業にならない」という説明を始めますが、これは税の話と混ざっています。所得税の確定申告が必要になる20万円という線は、勤め先への届け出の義務とは無関係です。20万円以下なら会社に知られない、という説明も正確ではありません。理由は後半で説明します。

整理すると、確かめる必要があるのは3つの層です。第1層が勤め先の就業規則(届け出や許可が必要か)。第2層が税の手続き(確定申告と住民税の申告)。第3層が社会保険と雇用保険(加入の要否が変わるか)。この3つは連動していないので、1つずつ確かめる必要があります。

副業禁止と聞くと「会社以外で1円も稼いではいけない」と思いがちですが、実際にはそこまで厳格な意味ではないケースがほとんどです。まずは自社の就業規則を正確に理解することから始めましょう。 出典: ficilcom.jp

出発点はここです。自社の規則を読まずに一般論で判断するのが、いちばん危ない進め方になります。

会社が禁止または制限できるのは、4つの場合だけ

就業規則の中身を判断する材料として、厚生労働省が公開しているモデル就業規則があります。これは会社が就業規則を作るときの雛形で、多くの会社が参照しています。令和7年12月版では、副業・兼業が第70条に置かれています。条文はこうなっています。

第70条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。 2 会社は、労働者からの前項の業務に従事する旨の届出に基づき、当該労働者が当該業務に従事することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、これを禁止又は制限することができる。 ① 労務提供上の支障がある場合 ② 企業秘密が漏洩する場合 ③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合 ④ 競業により、企業の利益を害する場合 出典: mhlw.go.jp

読み方の順番が重要です。第1項が原則で、勤務時間外に他社の業務に従事できるとしています。第2項が例外で、4つの場合に限って禁止または制限できるとしています。つまり雛形の設計は「原則は自由、例外は限定列挙」です。

この4つを具体的に読み替えます。①の労務提供上の支障とは、睡眠不足で本業のミスが増える、遅刻が続く、といった状態です。②の企業秘密の漏洩は、勤め先の顧客名簿や技術情報を使う場合です。③の名誉や信用を損なう行為は、勤め先の名前を出して活動する場合や、業種そのものが問題になる場合です。④の競業は、勤め先と同じ市場で客を取り合う場合です。

逆に言えば、この4つに触れない収入は、雛形の考え方では禁止の理由になりません。解説部分にも、労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的に労働者の自由であることが裁判例で示されていると書かれています。また、副業・兼業に係る相談や自己申告を行ったことで不利益な取扱いをすることはできない、とも明記されています。

ただし注意点が2つあります。第1に、雛形は雛形であって、勤め先の規則がこの形とは限りません。許可制にしている会社、業種を限定している会社があります。第2に、雛形の「副業・兼業」には、雇用される形だけでなく、事業主として行うものや、請負・委託・準委任契約で行うものも含まれます。業務委託だから届け出が不要、という理解は成り立ちません。

自社の規則を確かめる3か所

自分の勤め先がどうなっているかを確かめる場所は、3つあります。

ひとつめは就業規則そのものです。常時10人以上の労働者を使用する事業場は就業規則を作り、労働者に周知する義務があります。社内のポータル、共有フォルダ、総務部での閲覧のいずれかで読めます。探すときは「副業」だけでなく「兼業」「二重就職」「他社就業」の語でも検索してください。古い規則では「二重就職の禁止」という見出しになっていることがあります。

ふたつめは、入社時に署名した書類です。誓約書や機密保持に関する取り決めの中に、競業に関する条項が入っていることがあります。就業規則に副業の記載がなくても、こちらで縛られている場合があります。

みっつめは、労働条件通知書と雇用契約書です。ここに「会社の許可なく他に雇用されないこと」という一文が入っているケースがあります。

3つを読んでも判断が付かない場合は、総務や人事に聞くのが正解です。聞くと目を付けられるのではという心配がありますが、モデル就業規則の解説は、相談や自己申告を理由に不利益な取扱いはできないとしています。それでも不安なら、「兼業の届け出の手続きについて知りたい」という形で制度の確認として聞いてください。具体的な活動内容を言わずに手続きだけ確かめられます。

規則が許可制の場合、許可の判断基準が書かれているかを見てください。基準が書かれていない許可制は、実質的に会社の裁量になります。その場合は、前述の4つに触れないことを自分の側から説明できるように準備するのが通しやすい進め方です。

会社の規則に触れにくい収入の形

ここから具体例に入ります。前述の4つに触れにくく、かつ多くの会社で届け出の対象になりにくい収入の形を挙げます。ただし、勤め先の規則次第で扱いは変わるので、最終的な判断は自社の規則に照らしてください。

第1に、資産から生まれる収入です。預貯金の利子、上場株式や投資信託の配当、株式の売却による利益。これらは労務の提供を伴わないので、①の労務提供上の支障が起こりません。多くの会社の規則も、資産運用を副業として扱っていません。ただし、勤め先が金融機関の場合は、インサイダー取引の防止のために売買の届け出が求められることがあります。業種による例外です。

第2に、私物の売却です。着なくなった服、使わなくなった家電、家具を売る行為です。税の扱いも独特で、生活の用に供している資産の売却による所得は非課税とされています。国税庁は生活用動産の譲渡について、家具、じゅう器、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産の譲渡による所得は課税されないと示しています。ただし、貴金属や宝石、書画、骨とうなどで1個または1組の価額が30万円を超えるものは除かれます。詳細は譲渡所得の対象となる資産と課税方法で確認できます。

第3に、単発で反復性のない収入です。懸賞の賞金、原稿を1本だけ頼まれた場合の謝礼、講演を1回だけ引き受けた場合の謝金。反復して行えば事業に近づきますが、単発であれば継続的な労務の提供にはなりません。

第4に、不動産の賃貸です。相続で引き継いだ物件を貸している場合など、自分で営業活動をしていない形です。ただし規模が大きくなると事業として扱われ、会社の規則でも届け出の対象になることがあります。公務員の場合は後述するとおり明確な基準が置かれています。

注意したいのは、これらが「税がかからない」という意味ではないことです。株式の売却益や配当には課税があり、特定口座で源泉徴収を選んでいる場合に申告が不要になるだけです。会社の規則に触れないことと、税の手続きが不要なことは別の話です。

「副業ではない」と思われやすいが、実は届け出が要りやすいもの

逆の方向も挙げます。感覚的に副業ではないと思われやすいのに、届け出の対象になりやすい形です。

第1に、アルバイトやパートでの勤務です。雇用される形なので、労働時間の通算の対象になります。モデル就業規則の解説も、自社と副業先の両方で雇用されている場合には労働基準法第38条を踏まえ、他の使用者の事業場での所定労働日、所定労働時間、始業と終業の時刻、所定外労働の見込み時間数などを確認することが考えられると書いています。会社が把握しなければならない情報が増えるため、届け出は必須と考えてください。

第2に、業務委託で継続的に受ける仕事です。前述のとおり、雛形の「副業・兼業」には請負や委託も含まれます。雇用されていないから届け出が不要、という理解は成り立ちません。

第3に、無報酬の活動です。報酬が無ければ収入ではないので税の話にはなりませんが、時間を使うことで①の労務提供上の支障が起こり得ます。加えて、勤め先の名前を出して活動すると③に触れる可能性があります。

第4に、家族の事業を手伝う形です。報酬を受け取らなくても、時間を使い、外形的には他の事業に従事しています。規則が「他の事業に従事すること」を対象にしている場合は届け出が必要です。

第5に、SNSや動画での収益化です。広告収入やアフィリエイトの収入は、労務の提供に見えにくいのですが、実態としては継続的な制作活動です。加えて、勤め先の業界について発信していると②や③に触れる危険があります。ここは判断が分かれやすいので、届け出を出しておくほうが安全です。

判断に迷ったときの基準は1つです。「勤め先が知ったときに説明できるか」を考えてください。説明できる内容なら先に届け出を出す。説明しにくいと感じるなら、その違和感が前述の4つに触れている可能性の表れです。

税の線引き:所得税の20万円と、住民税の違い

税の話に移ります。会社員が副収入を得た場合、確定申告が必要になる条件は国税庁が示しています。給与を1か所から受けていて、その給与の全部が源泉徴収の対象である場合、給与所得と退職所得を除いた各種の所得金額の合計額が20万円を超える人は確定申告が必要です。給与を2か所以上から受けている場合は、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与所得と退職所得を除いた所得金額との合計額が20万円を超えると必要になります。条件の全体は給与所得者で確定申告が必要な人にまとまっています。

ここで間違えやすいのが2点あります。

第1に、20万円は収入ではなく所得です。所得は収入から必要経費を引いた後の金額です。売上が30万円あっても経費が15万円なら所得は15万円で、この条件だけなら申告は不要になります。逆に、経費がほとんどかからない形の収入は、収入がそのまま所得に近づきます。

第2に、20万円の線は所得税だけの話です。住民税には、この20万円という規定がありません。所得税の確定申告をした場合は、その内容が市区町村に渡るので住民税の申告は不要になります。しかし確定申告をしない場合は、市区町村への住民税の申告が残ります。申告先は1月1日現在の住所地の市区町村で、期限は3月15日です。「20万円以下だから何もしなくてよい」という説明は、この部分で不正確です。

副収入がどの所得区分になるかも押さえてください。国税庁は、給与所得者の副収入の例として、フリーマーケットアプリなどの個人取引による所得、自家用車などの資産の貸付けによる所得、ベビーシッターや家庭教師などの人的役務の提供による所得、暗号資産の売却等による所得、民泊による所得を挙げ、一般的にはそれぞれ雑所得に該当するとしています。ただし前述のとおり、古着や家財など生活の用に供している資産の売却による所得は非課税で、この所得については確定申告が不要とされています。

個別の判断は金額と事情で変わります。経費に入れられる範囲、事業所得と雑所得のどちらになるか、消費税の扱い。これらは一律では決まらないので、迷う部分は税務署か税理士に確認してください。報酬が支払われない事態に発展した場合の回収の手順は未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】に整理されています。

社会保険と雇用保険は、別の物差しで動く

3つめの層です。社会保険と雇用保険は、税とも就業規則とも別の基準で判定されます。

雇用保険は、1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用見込みがあれば、原則として本人の意思にかかわらず被保険者になります。要件はハローワークインターネットサービスのよくあるご質問(雇用保険について)に示されています。この20時間は勤め先ごとに判定されるので、本業で20時間以上働いていて、副業のアルバイトが週10時間なら、副業側では雇用保険に入りません。業務委託は雇用ではないので対象外です。

健康保険と厚生年金は、勤務先ごとに加入の判定が行われます。パートやアルバイトとして副業する場合、企業規模の要件、週の所定労働時間が20時間以上、学生ではない、所定内賃金が月額8.8万円以上、2か月を超えて雇用される見込みがあること、という要件で判定されます。企業規模は2027年9月までは従業員数51人以上で、2027年10月以降は36人以上に広がります。なお賃金の要件については、厚生労働省の特設サイトが2026年10月に撤廃予定と注記しています。現時点では要件として残っている、という読み方が正しいです。要件の一覧は社会保険加入の要件で確認できます。

2か所の勤務先でどちらも社会保険の加入要件を満たした場合は、手続きが発生します。被保険者本人が「二以上事業所勤務届」を提出し、主となる事業所を選びます。保険料は両方の報酬を合わせて計算され、事業所ごとに按分されます。手続きの詳細は日本年金機構の二か所以上の事業所に勤務するようになったときにまとまっています。この届出は本人が出すものなので、勤め先が代わりにやってくれるとは限りません。

この層は勤め先に伝わります。社会保険の手続きは事業所を通して行われるため、2か所での加入は隠せません。副業をアルバイトの形で始めると、勤務時間によっては勤め先に把握される構造になっています。ここを理解しておくと、届け出を出す判断がしやすくなります。

公務員は、民間とまったく別の決まりで動く

公務員の場合、判断の枠組みが違います。国家公務員法と地方公務員法に、営利企業への従事等を制限する規定があり、就業規則の解釈の問題ではありません。承認や許可の手続きが法律で定められています。

人事院は令和8年4月1日から自営兼業に関する制度を見直しています。承認の対象に「知識・技能をいかした事業」と「社会貢献に資する事業」が追加され、不動産の賃貸について基準が緩和されました。賃貸料収入の基準は年額500万円以上から1,000万円以上へ、太陽光電気の販売は出力10kW以上から50kW以上へ変わっています。制度の概要は自営兼業に関する制度の見直しについてで公開されています。

また、他の事業や事務に従事する場合の兼業時間についても目安が示されており、原則として1週間あたり8時間以下、1か月あたり30時間以下、平日は3時間以下とされています。この枠は、民間の会社にはない考え方です。

公務員が調べるべき順番は、民間とは逆になります。まず法律と人事院規則を読み、次に所属官庁や自治体の運用を確かめます。就業規則から入ると、そもそも該当する文書がありません。そして、承認を得ずに始めた場合は制度上の問題になるため、「届け出なくても大丈夫な範囲」を探すという発想自体を採らないほうが安全です。

士業の資格を持つ人が組織に所属したまま活動する場合の考え方については、会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】が具体的な整理をしています。所属先の規則と、資格の側の規律と、税の手続きの3つを同時に見る必要がある点は、公務員の場合とよく似ています。

「住民税で知られる」という話の実際

副業が知られる経路として、住民税がよく挙げられます。ここは正確に押さえてください。

会社員の住民税は、原則として勤め先が給与から差し引いて納める特別徴収の形になっています。市区町村は前年の所得をもとに税額を計算し、勤め先に通知します。副業の所得があると、その分を含んだ税額が通知されるため、給与額に対して住民税が多いという形で気づかれる可能性があります。これが「住民税で知られる」と言われる仕組みです。

副業の分だけを自分で納める普通徴収に切り替えられる場合があります。ただし、ここに重要な限定があります。普通徴収を選べるのは「給与所得以外の所得」に対する住民税だけです。副業がアルバイトやパート、つまり給与で支払われている場合は、この方法を選べません。給与の分は原則として主たる給与の支払者のところで合算されます。この点は非常によく誤解されています。

地方税法の該当する規定は、e-Govの地方税法で条文そのものを読めます。条文の言い方は硬いのですが、要点は「給与以外の所得の分は別に納める選択ができる」という一点です。

そして、普通徴収を選んだとしても、知られない保証にはなりません。市区町村の運用で一括して特別徴収にする場合があり、勤め先が社会保険の手続きや年末調整の過程で把握することもあります。隠す前提で設計するのではなく、届け出を出して堂々と進める形に寄せたほうが、結果として負担が軽くなります。届け出を出していれば、住民税の額が変わっても説明する必要がありません。

届け出を出すときの組み立て方

届け出を出す側の実務を書きます。書く内容は4つです。

第1に、何をするかです。業種と作業の内容を具体的に書きます。「ライティング」ではなく「一般向けの記事の執筆。取材は行わない」のように、範囲を狭く書くのが通りやすいです。範囲が広いと、会社は競業の可能性を消せません。

第2に、いつやるかです。曜日と時間帯を書きます。「平日は21時以降、土日は日中」のように書き、本業の勤務時間と重ならないことを明示します。①の労務提供上の支障を消す材料になります。

第3に、誰と取引するかです。取引先の業種を書きます。勤め先と同じ業界でないことを示せば、④の競業を消せます。取引先名を書けない場合は業種だけで構いません。

第4に、勤め先の情報を使わないことです。顧客名簿や技術情報を使わない、勤め先の名前を出さない、と明記します。②と③を消す材料です。

この4点を1枚にまとめて出すと、許可制の会社でも判断が早く出ます。逆に「副業をしたいです」だけの申請は、会社が何を確かめればよいか分からないため、保留されがちです。前述の4つの禁止事由を1つずつ消す形で書く、という組み立てが効きます。

契約の形についても押さえておいてください。業務委託で受ける場合、報酬の支払期日や修正の回数が書面で決まっていないと、あとで揉めます。取引の条件をどう詰めるかはフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに必要項目が並んでいるので、最初の1件から使ってください。

規則に反していた場合、実際には何が起こるか

不安の中身を具体化します。届け出をせずに始めていた場合、何が起こるのかという点です。

まず、就業規則に違反したという事実だけで、ただちに重い処分になるとは限りません。懲戒の処分は、違反の内容と、それによって会社が受けた影響の程度に見合ったものでなければならないという考え方が取られています。届け出を忘れていただけで本業に何の支障も出ていない場合と、勤め先の顧客を自分の取引先に移していた場合とでは、扱いがまるで違います。

実際に重く扱われるのは、前述の4つに正面から触れる場合です。勤め先の企業秘密を使った、勤め先と同じ客を取った、勤め先の名前で活動して信用を損なった、睡眠不足で本業に事故を起こした。この4つのどれかが起きていると、処分の話になります。逆に、無関係な業種で勤務時間外に活動していて、本業に影響が出ていない場合は、届け出を出すよう指導されて終わることが多いのが実情です。

ただし、これは一般的な傾向であって、個別の事案では会社の規則の書き方と事情によって結論が変わります。実際に処分を受けた、あるいは受けそうだという段階に来ている場合は、一般論で判断せず弁護士に相談してください。労働に関する相談は、各都道府県の労働局に置かれている総合労働相談コーナーでも受け付けています。

いま届け出をしていない状態で不安がある人には、順番を提案します。まず活動を止めずに、規則を読んでください。次に、前述の4つに触れていないかを自分で確認します。触れていないと判断できたら、届け出の手続きを確かめて出します。過去にさかのぼって責任を問われることを恐れて黙り続けるより、いま届け出を出したほうが、時間が経つほど有利になります。放置した期間が長いほど、説明が難しくなるからです。

会社が副業を認める方向に動いている背景

市場の側の動きも押さえておくと、届け出を出す判断がしやすくなります。

厚生労働省が公開しているモデル就業規則は、以前は副業を原則禁止とする書き方でした。それが改められ、現在は第70条の第1項で「勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」と、できることを先に書く形になっています。国が示す雛形の設計が逆転した、ということです。会社が就業規則を作り直すとき、この雛形を参照するため、認める方向の規則が増えていく構造になっています。

同時に、会社の側にも事情があります。労働時間の通算、社会保険の手続き、健康管理。従業員が副業をすると管理の手間が増えるため、許可制にして把握しておきたいというのが多くの会社の本音です。つまり会社が求めているのは「やめてほしい」ではなく「把握させてほしい」であることが多い。ここを誤解すると、届け出のハードルを実際以上に高く見積もることになります。

副業・兼業の促進に関するガイドラインは、労働時間の通算の考え方や、通算されない働き方の範囲まで具体的に示しています。そこには、労働基準法が適用されない場合として、フリーランス、独立、起業、共同経営、アドバイザー、コンサルタント、顧問、理事、監事といった形が列挙されています。これらは労働時間の通算の対象になりません。ガイドライン本体は副業・兼業の促進に関するガイドラインとして公開されています。

この違いを知っていると、届け出のときに「通算の対象になりません」と説明でき、会社側の手間に対する懸念を先に消せます。ただし同じガイドラインは、通算の対象外であっても、過労等により業務に支障を来さないようにする観点から、申告等により就業時間を把握して長時間にならないよう配慮することが望ましいとしています。つまり通算の対象外だから何時間でも働いてよいという話ではありません。届け出に稼働の時間帯と上限を書いておくのは、この点にも効きます。

もう1つの背景として、会社が副業を認めるかどうかは採用にも影響しています。副業を認めない会社は、認める会社に人が流れる。この圧力が働いているため、規則の見直しは今後も進む見込みです。いま許可制で運用している会社に勤めている人は、規則が改定されるタイミングを待つのではなく、現行の手続きで出しておいたほうが早い。手続きが緩む方向に変わっても、すでに出している届け出が不利になることはありません。

収入の形を選び直すという考え方と、運営者の観察

最後に、視点を変えます。「副業にならない収入」を探すより、「届け出を出して堂々とやれる収入」を選ぶほうが、長期的な手取りは大きくなります。

理由は単純です。会社の規則に触れないことを最優先にすると、選べるのは資産からの収入と私物の売却に限られます。前者は元手が必要で、後者は続きません。労務の提供を伴う仕事を避ける設計は、そもそも収入の伸びる余地が小さいのです。一方、届け出を出して受託の仕事を始めれば、技能が積み上がり、単価が上がる余地があります。

どの技能を選ぶかは、相場を見て決めるのが合理的です。開発系の水準はソフトウェア作成者の年収・単価相場、書く仕事の水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認できます。時間あたりでいくらになるかを先に知ってから始めると、最初の案件で安く受けすぎることを避けられます。

運営者として在宅と業務委託の市場を長く見てきた立場から、ひとつ観察を書きます。副業で長く続いている人は、例外なく最初に勤め先の規則を読んでいます。読んでいない人は、始めてから数か月後に不安になり、手を止めます。手を止めた期間に取引先が離れ、また探し直すことになる。この繰り返しで消耗していく人を何度も見てきました。規則を読むのに必要なのは30分です。その30分を先に使った人だけが、途中で止まらずに続いています。

もうひとつ。中間の手数料が乗らない直接取引の価値は、単価の数字ではなく手取りの厚みに出ます。同じ予算を用意した発注者は、仲介に差し引かれない分だけ多く頼めます。受け手は同じ作業量で手取りが厚くなります。この差が効いてくるのは1件目ではなく、3件目から先です。そして、届け出を出して堂々と受けている人のほうが、継続の依頼を受けやすい。隠しながら受けている人は、勤務時間中の連絡に出られず、結果として発注側から扱いにくいと見られます。制度を守ることが、そのまま仕事の取りやすさに繋がっています。

在宅で受けられる仕事の種類と条件の見方は、AIコンサル・業務活用支援のお仕事のような職種別のガイドで確認できます。規則を読んで、届け出の形を決めて、それから案件を選ぶ。この順番で進めてください。

よくある質問

Q. 副業にならない収入の上限はいくらですか?

法律に「副業」の定義がないため、金額の上限も存在しません。よく挙がる20万円は、所得税の確定申告が必要になる条件の1つで、勤め先への届け出の義務とは別の話です。届け出が要るかどうかは勤め先の就業規則で決まるので、金額ではなく規則を確かめてください。

Q. 株の配当や私物の売却は会社に届け出が必要ですか?

労務の提供を伴わないため、多くの会社の規則では届け出の対象になりません。ただし金融機関に勤めている場合など、業種によって売買の届け出が求められることがあります。また生活の用に供している資産の売却による所得は非課税ですが、1個または1組が30万円を超える貴金属や宝石などは除かれます。

Q. 住民税を普通徴収にすれば会社に知られませんか?

確実ではありません。普通徴収を選べるのは給与所得以外の所得に対する住民税だけで、副業がアルバイトなど給与の形なら選べません。加えて市区町村の運用で一括して特別徴収になる場合があり、社会保険の手続きから把握されることもあります。届け出を出して進めるほうが負担は軽くなります。

Q. 公務員の場合は民間と同じ考え方でよいですか?

違います。国家公務員法と地方公務員法に営利企業への従事等の制限があり、承認や許可の手続きが法律で定められています。人事院は令和8年4月1日から自営兼業の制度を見直し、不動産の賃貸料収入の基準を年額1,000万円以上に、太陽光の出力基準を50kW以上に緩和しました。所属先の規定を必ず確認してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年9月27日最終更新:2026年9月29日
丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子@SOHO編集部

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

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