妊婦の健康保険料は免除されるのか|産前産後の届け出の出し方 2026


この記事のポイント
- ✓妊婦健康保険免除の仕組みを
- ✓会社員・パート・自営業の3つに分けて整理しました
- ✓健康保険と厚生年金がゼロになる期間の数え方
妊娠が分かってから毎月の給与明細を見ると、健康保険料と厚生年金保険料の負担がかなり重く感じられます。妊婦健康保険免除という言葉で検索する人は、たいてい「産休に入ったら保険料の支払いは止まるのか」「自分で申請しないと損をするのか」の2点を知りたがっています。結論から書くと、妊娠していること自体で保険料が免除される仕組みは存在しません。免除されるのは「産前産後休業に入ったとき」または「出産予定日が近づいた自営業の人が届け出をしたとき」で、加入している保険の種類によって手続きの相手も期間の数え方も別物です。
この記事では、会社員とパート、自営業とフリーランス、扶養に入っている人の3通りに分けて、どの保険料がいくらの期間止まるのか、どこへ何を出すのか、いつまでに動けばよいのかを整理します。日本年金機構と全国健康保険協会の現在の記載、および国民健康保険法施行令の条文を確認した内容だけを書いています。
妊娠しただけでは保険料は免除されない
まず誤解をほどいておきます。健康保険料も年金保険料も、「妊婦だから」という理由で減る制度はありません。保険料が変わる引き金になるのは、妊娠ではなく次の3つです。
- 産前産後休業に入って、給与が支払われなくなった
- 自営業や無職で国民年金の第1号被保険者であり、出産予定日が近づいた
- 産休や育休で標準報酬月額が下がり、復帰後に改定の届け出をした
このうち1と2が、いわゆる保険料の免除にあたります。どちらも共通しているのは、放っておいても自動では始まらないという点です。会社員の場合は勤務先が届け出をしますが、勤務先が忘れていれば免除されません。自営業の場合は本人が市区町村の窓口へ届け出をしないと、免除は始まりません。
妊娠の週数が進むと、通院の回数も増え、体調によっては働ける時間も減ります。その時期に、毎月の社会保険料が給与から引かれ続けるかどうかは家計に直結します。免除の対象になる期間を先に押さえて、いつ誰が何を出すのかを決めておくことが、いちばん効きます。
なお、妊婦健診の費用そのものは健康保険の対象外です。妊娠や出産は病気ではないという扱いのため、正常分娩の費用も健康保険の給付の対象になりません。ここは市区町村が配る妊婦健康診査の受診券や補助券でまかなう仕組みになっており、保険料の免除とは別の話として切り分けて考えます。帝王切開など医師の判断で医療行為になった部分だけが健康保険の対象になり、その部分は高額療養費の対象にもなります。
加入している保険の種類で答えが変わる
「健康保険」という言葉は、日常会話では医療保険全体を指して使われます。ただし手続きの話をするときは、次の3つを区別しないと話が噛み合いません。
| 立場 | 医療保険 | 年金 | 産前産後の保険料 |
|---|---|---|---|
| 会社員・パート(本人が加入) | 健康保険(協会けんぽや健康保険組合) | 厚生年金保険 | 産休期間は本人負担と会社負担の両方が免除 |
| 自営業・フリーランス・無職 | 国民健康保険 | 国民年金(第1号被保険者) | 国民年金は4か月間免除、国民健康保険は所得割と均等割を軽減 |
| 配偶者の扶養に入っている人 | 配偶者の健康保険の被扶養者 | 国民年金(第3号被保険者) | もともと本人負担がないため、免除という手続きはない |
第3号被保険者の人は、そもそも自分で保険料を納めていません。日本年金機構はこの点をはっきり書いています。
国民年金の第3号被保険者は、ご自身で保険料を納付する必要がありません。これは、第2号被保険者が全体で負担しているためです。 出典: nenkin.go.jp
つまり、夫の扶養に入っている妻が妊娠しても、免除の届け出をする相手はいません。検索して「免除の申請書が見つからない」と困る人がいますが、それは書類がないのではなく、免除する対象の保険料が最初から発生していないためです。
在宅で業務委託の仕事をしている人は、ここでつまずきやすいところがあります。業務委託で働いていても、収入が配偶者の健康保険の被扶養者の基準に収まっていれば第3号被保険者、基準を超えていれば国民健康保険と国民年金の第1号被保険者になります。自分がどちらなのかは、手元の保険証の種類と、直近で国民年金保険料の納付書が届いているかどうかで判断できます。判断に迷ったら、市区町村の国民年金担当窓口で加入記録を確認するのが確実です。
会社員とパートの産休:健康保険と厚生年金の両方がゼロになる
本人が健康保険と厚生年金保険に入っている人が産前産後休業を取ると、その期間の保険料は本人負担分も会社負担分もどちらも免除されます。よくある誤解は「立て替えておいて後で戻ってくる」という理解ですが、そうではありません。徴収そのものがなくなります。
対象になる期間は、日本年金機構が次のように定義しています。出産の日(出産の日が出産の予定日より後になったときは出産予定日)以前42日、多胎妊娠の場合は98日から、出産の日後56日までの間で、妊娠または出産を理由として労務に従事しなかった期間です。
ここで見落とされやすいのが「労務に従事しなかった期間」という条件です。産前休業は本人が請求して初めて始まるもので、体調がよいので出産直前まで働いたという場合、その働いた日は免除の対象になりません。一方の産後休業は本人の請求によらず、働かせてはならない期間として定められています。労働基準法の条文はこうなっています。
使用者は、六週間(多胎妊娠の場合にあつては、十四週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。 使用者は、産後八週間を経過しない女性を就業させてはならない。ただし、産後六週間を経過した女性が請求した場合において、その者について医師が支障がないと認めた業務に就かせることは、差し支えない。 出典: laws.e-gov.go.jp
労働基準法が定める産前休業は6週間、多胎は14週間で請求できる期間です。これに対して保険料免除の対象は出産日以前42日、多胎98日という日数で数えます。6週間は42日、14週間は98日なので数字としては同じ幅ですが、条文の書き方が違うため別物として書かれている資料が多く、混乱の元になっています。実務では「産前42日、産後56日」で覚えておけば足ります。
保険料が免除されている間も、健康保険の被保険者としての資格はそのまま続きます。保険証はそのまま使えますし、免除された期間は年金の計算上、保険料を納めた期間として扱われます。将来の老齢厚生年金が減ることはありません。ここは自営業の国民年金の免除(納付猶予や全額免除)と決定的に違う点で、産前産後休業の免除は老後の受け取り額に不利が出ない設計になっています。
免除される期間は日ではなく月で決まる
産前産後休業の保険料免除でいちばん質問が多いのが、「何月分から何月分まで免除されるのか」です。判定は日単位ではなく月単位で行われます。具体的には、休業を開始した月から、休業が終了する日の翌日が属する月の前月までが免除されます。
この数え方を、社会保険の実務解説はこう説明しています。
この期間中に実際に休業を開始した月から休業を終了した日の翌日が属する前月分まで、社会保険料が免除されます。なお、免除は日単位ではなく月単位で判定される点が重要です。 出典: hcm-jinjer.com
言い換えると、月末を休業でまたぐかどうかが分かれ目になります。たとえば産後休業が10月20日に終わり、翌日の10月21日に復帰した場合、終了日の翌日が属する月は10月なので、免除されるのは9月分までです。10月は1日しか働いていなくても、10月分の保険料は発生します。
逆に、産後休業の終了日が10月31日で、翌日の11月1日に復帰した場合は、翌日が属する月が11月になるため10月分まで免除されます。復帰日を1日ずらすだけで、1か月分の保険料負担が変わる計算になります。復帰日を自分で選べる余地があるなら、月初復帰にすると免除の月数が1か月増えます。産後休業から続けて育児休業に入る場合も同じ考え方で数え、育児休業期間の免除に切り替わります。
もうひとつ、復帰後に効いてくる手続きがあります。産前産後休業終了時報酬月額変更届です。時短勤務などで復帰後の給与が下がったとき、通常の随時改定に当てはまらなくても、産前産後休業終了日の翌日が属する月以後3か月間に受けた報酬の平均額をもとに、4か月目の標準報酬月額から改定できます。条件は、改定前後で1等級以上の差が生じること、その3か月のうち少なくとも1か月の支払基礎日数が17日(特定適用事業所に勤務する短時間労働者は11日)以上あることの2つです。産前産後休業終了日の翌日に育児休業を開始している場合は申し出できないため、続けて育休に入る人はこの届け出の対象外になります。
届け出は勤務先が出す:産前産後休業取得者申出書
会社員やパートの場合、免除の届け出を出すのは本人ではなく事業主です。提出する書類は「健康保険・厚生年金保険 産前産後休業取得者申出書/変更(終了)届」で、提出先は事務センターまたは管轄の年金事務所です。電子申請、郵送、窓口持参のいずれでも受け付けられています。添付書類はありません。
提出のタイミングは産前産後休業期間中です。出産前に出しても出産後に出しても構いませんが、それぞれで注意点が違います。
出産前に提出した場合、出産予定日と実際の出産日がずれると期間が変わるため、変更(終了)届の提出が必要になります。日本年金機構が挙げている、変更届が必要になる主なケースは次の2つです。出産予定日より前に出産した場合と、出産予定日より後に出産した場合です。予定日どおりに出産したときは変更届は不要です。また、出産後の産後休業期間中に申出書を提出した場合は、実際の出産日が確定しているため変更届は不要になります。
このため実務では、出産後の産後休業中にまとめて提出する運用を選ぶ勤務先も少なくありません。ただし免除の開始が遅れるわけではなく、届け出が受理されれば産前休業の開始月にさかのぼって免除されます。保険料が先に引かれていた場合は、勤務先経由で調整されます。
本人側でやっておくと安心なのは次の3つです。第一に、産前休業をいつから取るかを決めて勤務先に伝えることです。産前休業は請求しなければ始まらないため、開始日が確定しないと届け出も出せません。第二に、出産予定日が書かれた母子健康手帳の写しなど、勤務先が期間を確認できる資料を渡しておくことです。第三に、出産後に出産日を速やかに伝えることです。予定日とずれた場合は変更届が必要になるため、連絡が遅れると免除の月数が合わなくなります。
小規模な会社や、産休の取得例が初めての会社では、この届け出そのものを知らないこともあります。給与明細を見て産休中も保険料が引かれているようなら、産前産後休業取得者申出書を出したかどうかを確認するのが早道です。届け出をしていなければ、あとから提出しても免除は受けられます。
自営業とフリーランスの国民年金:出産前後の4か月間が免除
国民年金の第1号被保険者、つまり自営業、フリーランス、農業、学生、無職の人には、産前産後期間の保険料免除制度があります。平成31年4月に始まった制度で、日本年金機構は期間をこう定めています。
出産予定日または出産日が属する月の前月から4カ月間(以下「産前産後期間」といいます。)の国民年金保険料が免除されます。多胎妊娠の場合は、出産予定日または出産日が属する月の3カ月前から6カ月間の国民年金保険料が免除されます。 出典: nenkin.go.jp
この制度の要点を並べます。
・対象は国民年金第1号被保険者で、出産日が平成31年2月1日以降の人。任意加入期間は対象外 ・ここでいう出産とは妊娠85日(4か月)以上の出産で、死産、流産、早産も含まれる ・免除された期間も、保険料を納めたものとして老齢基礎年金の受給額に反映される ・すでに免除や納付猶予、学生納付特例が承認されている期間でも、この届け出はできる ・産前産後期間中も付加保険料(月額400円)を納付できる
3番目が特に重要です。国民年金には所得が少ない人向けの全額免除や納付猶予がありますが、それらは老齢基礎年金の額が満額より減ります。産前産後期間の免除だけは、納めたものとして扱われるため、将来の年金額が減りません。令和8年度の国民年金保険料は1か月あたり17,920円なので、単胎で4か月間なら合計71,680円、多胎で6か月間なら107,520円の負担がなくなる計算になります。しかも年金額は減りません。届け出をしない理由は基本的にありません。
届け出は出産予定日の6か月前から可能で、出産後でも受け付けられます。提出先は住民登録をしている市区町村の国民年金担当窓口で、郵送でも手続きできます。用紙は国民年金被保険者関係届書(申出書)です。添付書類は、出産前に届け出るなら母子健康手帳や医療機関が発行した出産予定日の証明書、出産後に届け出るなら原則不要とされています。ただし添付書類を省略すると、審査から認定までに1か月程度かかることがあるとされているため、急ぐなら戸籍謄本や出生受理証明書などを添えたほうが早く進みます。
口座振替やクレジットカード納付で前納している場合は、産前産後期間の前後で振替の方法が変わることがあります。前納している人は、届け出のときに窓口か年金事務所に振替がどうなるかを確認しておくと、二重払いや戻し処理の手間を避けられます。
令和8年10月から始まる国民年金の育児免除
もう1つ、押さえておきたい新しい制度があります。国民年金の育児免除制度です。子を養育する第1号被保険者について、子が1歳になるまでの期間の国民年金保険料が免除される仕組みで、令和8年10月から始まります。所得の条件はありません。
期間の数え方は、実母と、実父や養父母で分かれます。
・産前産後免除期間を持つ実母の場合。産前産後免除期間に引き続く9か月間が免除されます ・実父または養父母の場合(産前産後免除期間を持たない実母を含む)。子を養育することとなった日の属する月から、1歳になる誕生日の前月までの最大12か月間が免除されます
つまり実母の場合は、産前産後の4か月間と育児免除の9か月間を合わせて、最長13か月間の国民年金保険料が免除される形になります。しかも免除された期間は、産前産後と同じく保険料を納付したものとして老齢基礎年金の受給額に反映されます。第1号被保険者であれば夫婦それぞれが対象になる点も見落としやすいところです。
日本年金機構は、対象者の条件を親子関係の継続と子との同一住所の2つに整理しており、所得要件がないことを明記しています。第2号被保険者(会社員や公務員)は厚生年金の育児休業期間中の保険料免除が使えるため対象外、第3号被保険者と任意加入被保険者も対象外です。
届け出が不要になるケースもあります。産前産後免除に該当した実母で、産前産後免除期間が令和8年9月以降に終了した後も引き続き子を養育していることが日本年金機構で確認できる人は、届け出をしなくても育児免除に切り替わります。この場合、産前産後免除期間の終了後に「国民年金保険料育児免除該当通知書」が送られてきます。反対に「国民年金保険料の産前産後免除期間終了のお知らせ」が届いた人は、育児免除に当てはまるなら自分で届け出が必要です。届いた通知の名前で判断が変わるので、封筒は捨てずに読むことをおすすめします。
国民健康保険は「所得割と均等割の軽減」という形
国民健康保険に入っている人については、令和6年1月から産前産後期間の保険料の軽減が始まりました。国民年金と似ていますが、対象になる保険料の部分と期間の数え方が違います。根拠は国民健康保険法第72条の3の3と地方税法第703条の5第3項で、具体的な期間は国民健康保険法施行令に書かれています。
出産被保険者の出産の予定日(厚生労働省令で定める場合には、出産の日)の属する月(以下この号において「出産予定月」という。)の前月(多胎妊娠の場合には、三月前)から出産予定月の翌々月までの期間に係る額を基準として算定した額であること。 出典: laws.e-gov.go.jp
出産予定月の前月から翌々月まで、つまり単胎なら4か月間、多胎なら出産予定月の3か月前から6か月間です。国民年金の産前産後免除と同じ幅になっています。
軽減されるのは、所得割額と被保険者均等割額、そして18歳以上被保険者均等割額です。世帯全体の保険料が消えるのではなく、出産する本人の分として計算された部分が減る仕組みです。世帯に複数の被保険者がいる場合、他の家族の分はそのまま残ります。所得の条件はないため、収入の多い自営業の人でも対象になります。
実際の呼び方や届け出用紙の名前は市区町村ごとに違い、「産前産後期間の保険料軽減」「産前産後期間相当分の免除」など表記が分かれています。届け出先はお住まいの市区町村の国民健康保険担当窓口です。出産予定日の6か月前から届け出できる自治体が多いものの、受付の開始時期や必要書類は条例と運用で差があるため、実際の金額と期間は窓口で確認するのが確実です。すでに保険料を納めた月が軽減の対象になった場合は、還付か充当のどちらかで調整されます。
国民年金と国民健康保険は窓口が同じ市区町村でも担当課が別になっていることが多く、一方だけ届け出て他方を忘れる取りこぼしがよく起こります。届け出に行くときは、国民年金の産前産後免除と国民健康保険の産前産後軽減の両方を、その場で確認するのが得策です。
保険料が止まっても受け取れるお金は別にある
保険料の免除と、出産にまつわる給付は別の制度です。会社員やパートで健康保険に入っている人は、産休中に給与が出なくても次の2つを受け取れます。
1つ目は出産手当金です。全国健康保険協会は給付範囲をこう説明しています。
被保険者が出産のため会社を休み、その間に給与の支払いを受けなかった場合は、出産の日(実際の出産が予定日後のときは出産予定日)以前42日(多胎妊娠の場合98日)から出産の翌日以後56日目までの範囲内で、会社を休んだ期間を対象として出産手当金が支給されます。 出典: kyoukaikenpo.or.jp
金額は、支給開始日以前の継続した12か月間の標準報酬月額を平均した額の30分の1に相当する額の3分の2です。休んだ期間に給与が出ていても、その日額が出産手当金の日額より少なければ差額が支給されます。出産手当金と傷病手当金を重ねて受け取ることはできません。
退職しても受け取れる場合があります。資格喪失日の前日までに被保険者期間(任意継続被保険者期間を除く)が継続して1年以上あり、資格喪失日の前日に出産手当金を受けているか受けられる状態であれば、退職後も引き続き受け取れます。ただし退職日に出勤した場合は資格喪失後の出産手当金を受けられません。産休に入ってから退職を決める人は、最終出勤日の扱いをよく確認してください。
2つ目は出産育児一時金です。産科医療補償制度に加入している医療機関で在胎週数22週以降に出産した場合、1児につき50万円が支給されます。加入機関で在胎週数22週に達しなかった出産は1児につき48.8万円です。多胎児を出産したときは胎児数分だけ支給されます。直接支払制度を使えば、協会けんぽから医療機関へ直接支払われるため、窓口でまとめて立て替える必要がありません。出産費用が支給額を下回った場合は差額を申請できます。
自営業で国民健康保険に入っている人も、出産育児一時金は市区町村から支給されます。ただし出産手当金は、国民健康保険には原則としてありません。ここが会社員と自営業でいちばん差が出るところで、収入が止まる期間の備えを自分で用意しておく必要があります。
勘違いが多いところを4つ
その1。産休に入れば自動で免除される、ではない。 会社員は勤務先が申出書を出して初めて免除されます。自営業は本人が市区町村へ届け出をして初めて免除されます。手続きなしで始まる免除はありません。
その2。免除されると将来の年金が減る、ではない。 産前産後休業期間中の保険料免除も、国民年金の産前産後期間の免除も、保険料を納めたものとして扱われます。生活が苦しいときに使う全額免除や納付猶予とは性質が違います。
その3。国民健康保険は世帯の保険料が全部消える、ではない。 軽減されるのは出産する本人について計算された所得割と均等割の部分だけです。世帯の他の家族の分は残ります。
その4。育児休業給付金と出産手当金は同じもの、ではない。 出産手当金は健康保険から産前産後の期間に支給されるもので、育児休業給付金は雇用保険から育休の期間に支給されるものです。窓口も財源も別で、申請の順番も違います。産休が終わってから育休に入る人は、2つの手続きが連続することになります。
もうひとつ、在宅で業務委託の仕事を続けている人が迷いやすい点を補足します。産前産後休業の保険料免除は、健康保険と厚生年金保険の被保険者であることが前提です。会社員として雇用されながら副業で業務委託の仕事もしている場合、免除されるのは勤務先で払っている健康保険料と厚生年金保険料だけで、業務委託の収入に対して何かが免除されるわけではありません。逆に完全に業務委託だけで働いている人は国民年金と国民健康保険の話になり、産休という概念そのものが制度上は存在しません。仕事を止める期間は自分で決めることになります。
出産予定日が決まってからの段取り
時期ごとに、何をしておくと詰まらないかを並べます。
妊娠がわかったとき。 自分がどの保険に入っているかを保険証で確認します。勤務先の健康保険なら勤務先の担当者に、国民健康保険なら市区町村の窓口に、扶養なら配偶者の勤務先に、それぞれ相談先が変わります。
出産予定日が確定したとき(予定日の6か月前から)。 自営業の人は、国民年金の産前産後免除の届け出ができるようになります。国民健康保険の軽減の届け出も、多くの自治体で同じ時期から受け付けています。母子健康手帳を持って窓口へ行けば、2つまとめて手続きできることが多いです。
産前休業に入る前(予定日の6週間前、多胎は14週間前)。 会社員は産前休業の開始日を決めて勤務先に請求します。開始日が決まらないと、勤務先は産前産後休業取得者申出書を出せません。出産手当金の申請書の様式も、この時期に確認しておくと後が楽です。
出産したとき。 勤務先へ出産日を連絡します。予定日とずれた場合は変更(終了)届が必要になります。自営業で出産前に届け出をしていない人は、このタイミングで市区町村へ届け出をします。
復帰日を決めるとき。 前の節で書いたとおり、免除の月数は復帰日で変わります。月初復帰にできるなら1か月分多く免除されます。復帰後に給与が下がるなら、産前産後休業終了時報酬月額変更届の対象になるかを勤務先に確認します。
書類の名前が長くて覚えにくいので、勤務先に伝えるときは「産前産後休業取得者申出書」と「産前産後休業終了時報酬月額変更届」の2つだけ言えれば通じます。自営業の人は「産前産後期間の免除の届け出」と「国民健康保険の産前産後の軽減」の2つで通じます。
産休をはさんで働き方を組み替えるときに見ておくこと
在宅ワークやフリーランスの市場を20年見てきた立場から言えば、産前産後は働き方そのものを組み替える節目になっています。出産を境に通勤を前提にした働き方から在宅中心へ移る人が増えていますが、そのときに保険の立場が変わることを見落としたまま動くと、あとで保険料の負担が読めなくなります。会社員として厚生年金に入り続けるのか、業務委託に切り替えて第1号被保険者になるのかで、産前産後の免除の中身も将来の年金額も変わります。
長く続いている人を見ていて共通するのは、単発の作業を数で追うのではなく、依頼側から「この人に任せると楽だ」と思われる関係をつくるところに時間を使っている点です。産休で数か月間手を止めても、その関係が残っていれば戻ったときに仕事が続きます。逆に、単価だけで選ばれていた仕事は、休んだ間に別の人へ移ります。産休前にやっておくとよいのは、進めている案件の引き継ぎ資料をきちんと残し、復帰の目安を先に伝えておくことです。
もうひとつ、額面ではなく手取りで考える視点も効きます。仲介の手数料が乗らない直接取引は、同じ予算でも依頼側はより多く頼めて、受け手は手取りが厚くなります。この構造は、休みをはさんで稼働時間が減る時期にいちばん効きます。稼働を半分にしても、手数料の差で手取りが大きく減らないという形をつくれるかどうかが、復帰後の続けやすさを左右します。手数料0%の直接取引は、金額の大小ではなく手取りの厚さという質で見たほうが実感に合います。
在宅で続けやすい職種と相場を先に調べておくと、復帰後の計画が立てやすくなります。開発系の相場はソフトウェア作成者の年収・単価相場で職種別に整理しており、文章を書く仕事なら著述家,記者,編集者の年収・単価相場で相場の幅を確認できます。案件の種類そのものを見ておきたい場合は、業務内容と必要なスキルをまとめたアプリケーション開発のお仕事や、企業のAI活用を支援する仕事の中身を解説したAIコンサル・業務活用支援のお仕事が参考になります。
産休の期間を使って資格の勉強に充てる人もいます。文書作成の基礎を固めたいなら、ビジネス文書の書き方と実務を問うビジネス文書検定は在宅の仕事にそのまま効きます。ネットワークの知識を体系的に積むならCCNA(シスコ技術者認定)が定番です。
業務委託で働くなら、契約と支払いの守り方も一度は通しておいたほうがよいところです。発注書と契約書に何を書いておくべきかはフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに整理してあります。産休中に報酬の支払いが止まったときの回収の手順は未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】で確認できます。復帰後の働き方を選ぶときは、案件の中身と必要なスキルを見比べてから絞り込むほうが、復帰直後の負荷を読みやすくなります。
保険料の免除は、届け出をした人だけが受けられます。金額も期間も自分の状況で変わるため、最後の判断は勤務先の担当者、年金事務所、市区町村の窓口で確認してください。
よくある質問
Q. 妊娠が分かった時点で健康保険料の免除を申請できますか?
できません。妊娠していること自体を理由に保険料が免除される制度はありません。会社員は産前産後休業に入ってから勤務先が届け出をし、自営業の人は出産予定日の6か月前から市区町村へ届け出をします。まずは自分がどの保険に入っているかを保険証で確認してください。
Q. 産休中の保険料が免除されると将来の年金は減りますか?
減りません。産前産後休業期間中の保険料免除も、国民年金の産前産後期間の免除も、保険料を納付したものとして年金額に反映されます。生活が苦しいときに使う全額免除や納付猶予とは仕組みが違い、老齢基礎年金や老齢厚生年金の計算で不利になることはありません。
Q. 自営業の場合はどの保険料がいくらの期間免除されますか?
国民年金は出産予定日または出産日が属する月の前月から4か月間、多胎妊娠なら3か月前から6か月間が免除されます。国民健康保険は出産予定月の前月から翌々月までの所得割額と均等割額が軽減されます。令和8年度の国民年金保険料は1か月あたり17,920円です。
Q. 夫の扶養に入っている場合は何か手続きが必要ですか?
国民年金の第3号被保険者は自分で保険料を納めていないため、免除の届け出はありません。ただし出産育児一時金は配偶者の健康保険から家族出産育児一時金として支給されます。手続きの窓口は配偶者の勤務先になるので、出産予定日が決まったら確認してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
前田 壮一@SOHO編集部
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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