高年齢被保険者が離職したときの給付と、受け取りながら副業する前の確認 2026

長谷川 奈津
長谷川 奈津
高年齢被保険者が離職したときの給付と、受け取りながら副業する前の確認 2026

この記事のポイント

  • ✓65歳以上で雇用保険に入っている高年齢被保険者が離職したときに受け取れる高年齢求職者給付金について
  • ✓令和8年8月改定の上限で計算した額
  • ✓年金との関係を整理しました

65歳を過ぎてもパートや契約社員として働き、雇用保険に入っている人は少なくありません。その人が仕事を辞めたとき、雇用保険から何が受け取れるのか。若い頃の「失業保険」と同じように4週間ごとにお金が出ると思っていたら、実際には一時金が1回だけだった、という声はよく聞かれます。逆に、65歳を過ぎたら雇用保険の給付はないと思い込み、手続きをしないまま期限を過ぎてしまう人もいます。

65歳以上で雇用保険に入っている人は「高年齢被保険者」と呼ばれ、離職したときは「高年齢求職者給付金」という一時金を受け取れます。この記事では、高年齢被保険者が離職したときの給付について、受け取る条件、額の計算、手続きの期限、年金との関係を整理します。そのうえで、給付を受け取る前後に副業や在宅の仕事を始めたい人が、何を申告し、何を確かめておけばよいかを説明します。

高年齢被保険者とは誰のことか

高年齢被保険者とは、65歳以上で雇用保険に入っている人のことです。雇用保険法第37条の2は、65歳以上の被保険者のうち、季節的に雇われる短期雇用特例被保険者と、日々雇われる日雇労働被保険者を除いた人を「高年齢被保険者」と定めています。

雇用保険に入る条件は、65歳未満の人と同じです。1週間の所定労働時間が20時間以上で、31日以上の雇用が見込まれることが主な条件です。この条件を満たして働いていれば、65歳を過ぎてから新しく雇われた人も、会社を通じて雇用保険に入ります。本人が自分で手続きをする必要はありません。

65歳になる前から同じ会社で働いている人は、65歳の誕生日を境に、自動的に一般の被保険者から高年齢被保険者に切り替わります。手続きの面で変わることは基本的にありませんが、離職したときに受け取る給付の種類が変わります。

高年齢被保険者の離職について、ハローワークは次のように案内しています。

高年齢被保険者が失業した場合、一般の被保険者の場合と異なり、被保険者であった期間に応じ基本手当日額の30日分又は50日分に相当する高年齢求職者給付が支給されます。 出典: ハローワークインターネットサービス「基本手当について」

ここで大事なのは、65歳以上の人には、一般の被保険者の基本手当(いわゆる失業保険)の仕組みが当てはまらないということです。雇用保険法第37条の2第2項は、高年齢被保険者には基本手当などを定めた節を適用しないとしています。そのかわりに、一時金の高年齢求職者給付金があります。

高年齢求職者給付金を受け取る条件

高年齢求職者給付金を受け取るには、住所地を管轄するハローワークで求職の申込みをし、「高年齢受給資格」の決定を受ける必要があります。ハローワークの案内では、決定を受けられるのは、高年齢被保険者で次の条件を満たす人です。

・離職により、資格の喪失の確認を受けたこと ・働く意思と能力があるのに、仕事に就けない状態にあること ・原則として離職前1年間に、被保険者期間が通算して6か月以上あること

被保険者期間は、一般の被保険者と同じ数え方で、賃金の支払いの基礎となった日数が11日以上、または時間数が80時間以上ある月を1か月として数えます。週20時間以上で半年以上働いていた人なら、多くの場合この条件を満たします。

2つ目の「働く意思と能力がある」という条件も見落とせません。ハローワークの案内では、病気やけがですぐに働けない人、定年などで退職してしばらく休養しようと思っている人は、失業の状態に当たらないとされています。65歳以上で辞めた人が「もう働くつもりはないが、もらえるものはもらっておきたい」という気持ちで手続きをすると、この条件に当たらない場合があります。

ハローワークは不正受給の典型例として、定年後に就職する意思や能力がないのに、しばらく失業給付を受け、受給が終わった直後に年金を受け取ろうとする人が偽りの申告をした場合を挙げています。働くつもりがあるかどうかは、自分の状況に照らして正直に考え、申告してください。

受け取れる額の計算

高年齢求職者給付金の額は、基本手当日額に、雇用保険に入っていた期間に応じた日数をかけて計算します。

・雇用保険に入っていた期間が1年以上:基本手当日額の50日分 ・雇用保険に入っていた期間が1年未満:基本手当日額の30日分

基本手当日額は、離職前6か月の賃金の合計を180で割った賃金日額に、決められた率をかけて計算します。賞与は計算に含まれません。たとえば離職前6か月の賃金の合計が120万円なら、賃金日額は約6,666円です。

基本手当日額には上限と下限があります。65歳以上の人の場合、雇用保険法第37条の4により、賃金日額の上限には30歳未満の区分の額が使われます。厚生労働省の令和8年8月1日からの計算式では、30歳未満の区分の基本手当日額の上限は7,450円です。50日分を受け取る場合の最大額は372,500円になります。

下限は、賃金日額3,203円に80%をかけた2,562円です。賃金日額が5,480円未満の人は、賃金日額の80%がそのまま基本手当日額になります。賃金日額が5,480円以上の人は、賃金が高くなるほど率が下がり、最も低い区分では50%になります。

いくつか目安を挙げておきます。率の計算は段階的なので、ここに書く額はおおよその目安です。

・賃金日額が5,000円の人:基本手当日額は4,000円、50日分で20万円 ・賃金日額が14,900円以上の人:基本手当日額は上限の7,450円、50日分で372,500円

正確な額は、受給資格の決定のときに渡される受給資格者証に書かれます。自分の場合を知りたいときは、離職票を持ってハローワークで確かめてください。

具体例で流れを追ってみる

数字だけでは実感がわきにくいので、説明のための例を1つ置きます。67歳で、スーパーのパートとして週24時間、3年間働いてきた人が、体力を考えて自分の都合で辞めることにした場合です。

この人は週20時間以上で働いていたので、高年齢被保険者として雇用保険に入っています。雇用保険に入っていた期間は1年以上なので、受け取れるのは基本手当日額の50日分です。

離職前6か月の賃金の合計が108万円だったとすると、賃金日額は108万円を180で割った6,000円です。賃金日額が5,480円以上13,490円以下の範囲なので、令和8年8月1日からの計算式(30歳未満の区分の式)に当てはめると、基本手当日額は4,683円ほどになります。50日分で約234,000円が目安です。

手続きの流れは次のようになります。離職票が届いたら、すぐに住所地のハローワークで求職の申込みをします。自分の都合で辞めているので、7日間の待期期間のあと、原則1か月の給付制限があります。その期間が過ぎたあとの指定された日に失業の認定を受け、その日に支給が決まります。

この例で注意したいのは、手続きが遅れた場合です。離職から11か月たって手続きに行くと、待期と給付制限を過ぎた時点で、期限の1年までの日数が50日に満たず、受け取れる額が削られるおそれがあります。辞めたらできるだけ早く手続きに行くことが、受け取れる額を守る一番の方法です。

なお、この人がパートを辞めたあと、在宅で業務委託の仕事を始めるつもりなら、失業の認定を受ける前に仕事を始めるかどうかで申告の扱いが変わります。この点は「給付を受け取る前後に副業を始めるときの確認」の節で説明します。

離職票が届かないときと、離職理由の確かめ方

手続きの起点になるのは離職票です。パートやアルバイトで働いていた人の中には、会社から離職票が届かず、手続きに進めない人もいます。

ハローワークの案内では、会社がハローワークに出す「離職証明書」には、離職前に本人が氏名を記載することになっており、その際に離職理由などの記載内容を確かめるよう求めています。離職後、会社から離職票が届きます。会社から離職票が交付されない場合や、事業主と連絡が取れない場合は、住所地のハローワークに問い合わせてください。

離職理由は、給付制限の有無を左右します。自分の都合で辞めた場合は原則1か月の給付制限がありますが、会社の都合で契約が更新されなかった場合や、体調の悪化など正当な理由がある場合は、扱いが変わることがあります。実際には会社から辞めるよう勧められたのに自己都合とされている場合は、受給資格の決定のときにハローワークに相談してください。ハローワークが事実関係を調べたうえで離職理由を判定します。

65歳以上の人は、1年ごとの有期契約で働いていることが多いはずです。契約の更新を希望したのに会社から更新されなかったのか、自分から更新を希望しなかったのかで、離職理由の扱いが変わります。契約が終わる前に更新の意思をどう伝えたかを、メールや書面で残しておくと、あとで確かめるときに役立ちます。

辞める前に確かめておきたいこと

高年齢求職者給付金を確実に受け取るために、辞める前の段階で確かめておきたいことを並べます。

・自分が雇用保険に入っているか(給与明細で雇用保険料が引かれているかで分かる) ・離職前1年間に、雇用保険に入っていた月が6か月以上あるか ・雇用保険に入っていた期間が1年以上あるか(50日分か30日分かの分かれ目) ・離職理由がどう扱われるか(自己都合か、契約の満了か) ・離職票をいつ、どのように受け取れるか ・辞めたあと、すぐに働く意思があるか、しばらく休むつもりか

最後の点は特に大切です。高年齢求職者給付金には、一般の基本手当にある定年退職者向けの受給期間延長のような仕組みがなく、期限は離職の日の翌日から1年です。しばらく休んでから働くつもりの人は、休む期間と手続きの時期を逆算しておいてください。休んでいる間は失業の状態に当たらないので、働けるようになってから求職の申込みをすることになります。

週の勤務時間を減らして同じ会社で働き続ける場合も、週20時間を下回ると雇用保険の資格を失います。この場合は離職ではないので、高年齢求職者給付金は受け取れません。勤務条件を変える前に、雇用保険がどうなるかを会社に確かめてください。

手続きの流れと、1年の期限

高年齢求職者給付金の手続きは、一般の基本手当とおおむね同じ流れで進みます。違うのは、失業の認定が1回だけという点です。

  1. 離職後、会社から離職票(1と2)を受け取る
  2. 住所地のハローワークで求職の申込みをし、離職票を出す
  3. 高年齢受給資格の決定を受ける
  4. 7日間の待期期間が過ぎたあと、指定された日に失業の認定を受ける
  5. 認定を受けた日に支給が決まり、指定した口座に振り込まれる

ハローワークで持参するよう案内されているのは、離職票、マイナンバーが確認できる書類、本人確認の書類、写真2枚(縦3.0cm×横2.4cm)、本人名義の預金通帳かキャッシュカードです。写真は、手続きのたびにマイナンバーカードを見せることで省略できます。

最も気をつけたいのが期限です。雇用保険法は、高年齢求職者給付金について次のように定めています。

高年齢求職者給付金の支給を受けようとする高年齢受給資格者は、離職の日の翌日から起算して一年を経過する日までに、厚生労働省令で定めるところにより、公共職業安定所に出頭し、求職の申込みをした上、失業していることについての認定を受けなければならない。 出典: e-Gov法令検索「雇用保険法」第37条の4第5項

さらに、同じ条の第1項では、認定を受けた日から期限の最後の日までの日数が30日分または50日分に満たないときは、その日数分しか支給しないとしています。離職から10か月以上たってから手続きに行くと、受け取れる額が削られることがあるということです。辞めたら早めにハローワークへ行くことをおすすめします。

自分の都合で辞めた場合は、給付制限にも注意が必要です。高年齢求職者給付金にも、一般の基本手当の給付制限の規定が準用されます。ハローワークの案内では、正当な理由のない自己都合退職の給付制限は、離職日が令和7年4月1日以降なら原則1か月です。待期期間の7日間に加えてこの期間が過ぎるまで、失業の認定は受けられません。

年金を受け取りながら給付も受け取れる

65歳以上の人にとって大きな特徴は、老齢年金と高年齢求職者給付金を両方受け取れることです。65歳になる前の特別支給の老齢厚生年金は、基本手当を受け取る間は全額止まりますが、65歳からの老齢基礎年金と老齢厚生年金は、高年齢求職者給付金と調整されません。

そのため、年金を受け取りながら働いていた人が65歳以上で辞めた場合、年金はそのまま受け取りつつ、高年齢求職者給付金も受け取れます。手続きの際に年金事務所へ何かを届け出る必要も、基本的にはありません。

働いている間の年金については、在職老齢年金の仕組みがあります。厚生年金に入って働く65歳以上の人は、賃金と老齢厚生年金の合計が一定額を超えると、年金の一部が止まります。この基準は令和8年4月から1か月あたり65万円になりました(それまでは51万円)。辞めて厚生年金から外れれば、この調整もなくなります。

また、高年齢求職者給付金には税金がかかりません。雇用保険法第12条は、失業等給付として受け取ったお金に租税その他の公課を課すことはできないと定めています。確定申告の収入にも含めません。

64歳で辞めた場合との違い

辞める時期を自分で選べる人の中には、64歳で辞めるか65歳以降に辞めるかで迷う人もいます。どちらがよいかは人によって違うので、違いだけを並べます。

64歳までに辞めた場合は、一般の被保険者として基本手当を受け取ります。日数は雇用保険に入っていた期間などに応じて90日から150日(定年などの一般の離職者の場合)で、4週間ごとに認定を受けながら受け取ります。基本手当日額の上限は60歳以上65歳未満の区分で7,830円です。ただし、特別支給の老齢厚生年金を受け取れる人は、その間は年金が全額止まります。

65歳以上で辞めた場合は、高年齢求職者給付金を一時金で受け取ります。日数は最大50日分で、基本手当よりは少なくなりますが、年金と両方受け取れ、認定も1回で済みます。

比べるときは、受け取れる給付の総額だけでなく、止まる年金の額も差し引いて考えてください。特別支給の老齢厚生年金がない人と、ある人では結論が変わります。また、法律上の年齢は誕生日の前日に1つ加わる扱いになっているため、離職日がどちらの年齢に当たるかは、会社とハローワークで確かめてください。

65歳以上の人が雇用保険に入れる働き方

高年齢求職者給付金は、離職するたびに条件を満たせば受け取れる給付です。65歳以降もいくつかの職場で働く人にとっては、どの働き方なら雇用保険に入れるかを知っておく意味があります。

1つの職場で週20時間以上働き、31日以上の雇用が見込まれれば、雇用保険に入ります。1つの職場では週20時間に届かない人のために、65歳以上を対象としたマルチジョブホルダー制度があります。2つの会社でそれぞれ週5時間以上20時間未満働き、合計が週20時間以上になる人が、ハローワークに申し出ることで雇用保険に入れる制度です。それぞれの会社で31日以上の雇用が見込まれることが条件で、加入できるのは2社までです。

マルチジョブホルダーとして雇用保険に入った人が、どちらか一方の会社を辞めた場合も、条件を満たせば高年齢求職者給付金を受け取れる場合があります。手続きは本人がハローワークで行うので、厚生労働省のマルチジョブホルダー制度の案内で流れを確かめておいてください。

加入の範囲はさらに広がります。令和6年の雇用保険法の改正により、2028年10月1日から、雇用保険に入る条件のうち週の所定労働時間が「20時間以上」から「10時間以上」に変わります。週に2日から3日だけ働く65歳以上の人も、雇用保険に入れる範囲が広がる見込みです。

一方で、業務委託や請負で働く時間は、雇用保険の労働時間には数えません。在宅で業務委託の仕事をしている時間は、雇用保険の加入とも、高年齢求職者給付金とも関係しません。

高年齢求職者給付金についてよくある思い違い

65歳以上の雇用保険の給付については、思い違いから手続きをしないままの人が少なくありません。よく聞かれるものを、条文と案内で確かめた内容と並べておきます。

1つ目は「年金を受け取っていると給付は受け取れない」というものです。「年金を受け取りながら給付も受け取れる」の節で書いたとおり、65歳からの老齢年金と高年齢求職者給付金は調整されません。年金を受け取っていても、条件を満たせば給付を受け取れます。

2つ目は「一生に一度しか受け取れない」というものです。高年齢求職者給付金は、離職のたびに、離職前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あるなどの条件を満たせば受け取れる給付です。65歳以降に職場を変えながら働く人は、そのたびに条件を確かめてください。

3つ目は「70歳を過ぎたら雇用保険に入れない」というものです。雇用保険法の高年齢被保険者の定義は「65歳以上の被保険者」で、上限の年齢は書かれていません。週20時間以上などの条件を満たして雇われていれば、70歳を過ぎても雇用保険に入ります。

4つ目は「給付金を受け取ると年金が減る」というものです。65歳以上の老齢年金は、高年齢求職者給付金を受け取っても減りません。減るのは、65歳になる前の特別支給の老齢厚生年金と基本手当の組み合わせの場合です。

思い違いのまま手続きをしないと、1年の期限を過ぎて受け取れなくなります。迷ったら、離職票を持ってハローワークで確かめるのが確実です。

在職中に使える雇用保険の給付

高年齢被保険者は、離職したときだけでなく、働いている間にも雇用保険の給付を使える場合があります。

1つは介護休業給付です。ハローワークの案内では、家族を介護するための休業をした被保険者に支給される給付で、対象の被保険者には一般被保険者と高年齢被保険者の両方が含まれると明記されています。支給額は、原則として休業開始時の賃金日額に支給日数と67%をかけた額です。休業中に休業前の賃金の8割以上が支払われていないこと、就業している日数が各支給単位期間で10日以下であることなどが条件です。65歳を過ぎると、配偶者や兄弟の介護が必要になる場面も出てきます。介護休業は会社に申し出て取る休業なので、まず勤め先に相談してください。

もう1つは教育訓練給付です。教育訓練給付とは、厚生労働大臣が指定した講座を受けて修了した人に、受講費用の一部が雇用保険から支給される制度のことです。新しい仕事に向けて学び直したい人は、受講を申し込む前に、ハローワークで自分が受給資格を満たしているかを確かめてください。制度の概要は厚生労働省の教育訓練給付制度のページで確かめられます。

給付を受け取る前後に副業を始めるときの確認

ここからは、高年齢求職者給付金を受け取る前後に、副業や在宅の仕事を始めたい人が確かめておくことです。

まず、求職の申込みをしてから失業の認定を受けるまでの間に働いた場合は、失業認定申告書に申告する必要があります。パートやアルバイトとして働いた日、内職や手伝いをした日と収入、自営や請負で事業を始めた日は、いずれも申告の対象です。ハローワークは、これらを申告しなかった場合を不正受給の典型例として挙げており、不正受給と判断されると、受け取った額の返還に加えて、その2倍に相当する額以下の納付を命じられます(いわゆる3倍返し)。

待期期間中に働く場合も注意が必要です。ハローワークの再就職手当のリーフレットでは、待期期間中に仕事などをしたことにより失業の状態でなかった日は、待期期間に含まれないとしています。手続きの直後に短期の仕事を入れると、待期期間が延び、認定日が後ろにずれることがあります。

在宅で業務委託の仕事を始めた場合は、その仕事が「事業を始めた」と判断されるかどうかが分かれ目になります。事業を始めたと判断されれば、失業の状態ではなくなるので、高年齢求職者給付金は受け取れません。単発の小さな作業なのか、継続的な事業なのかは、作業の量や契約の内容によって判断が変わります。始める前にハローワークの窓口で、自分の場合がどちらに当たるかを相談してください。

失業の認定は1回だけで、認定日に支給が決まります。副業を本格的に始めるつもりがある人は、認定日までの働き方を慎重に決め、認定日に正確に申告することが何より大切です。作業した日、時間、取引先、報酬の見込み額は、その日のうちにメモしておいてください。

「業務委託」と書かれていても実態が雇用の場合

65歳以上の人が受ける仕事の中には、契約書に「業務委託」と書かれていながら、実際には会社の指示で決まった時間に決まった場所で働く、という形のものがあります。この見分けは、雇用保険に入れるかどうかに直結します。

厚生労働省の副業・兼業の促進に関するガイドラインは、違法な偽装請負の場合や、請負であるかのような契約としているが実態は雇用契約だと認められる場合には、労働基準法などの労働者保護のルールが適用されることに触れています。つまり、契約書の名前ではなく、働き方の実態で判断されるということです。

一般に、次のような点が多く当てはまるほど、雇われて働く形に近いと考えられています。

・仕事を受けるかどうかを自分で断れない ・作業の進め方や時間、場所を会社が細かく指示する ・報酬が成果ではなく働いた時間で決まる ・会社の道具や設備を使い、他の人に作業を代わってもらうことができない

実態が雇用に近いのに業務委託として扱われていると、週20時間以上働いていても雇用保険に入れず、辞めたときに高年齢求職者給付金を受け取れません。働き方に疑問がある場合は、労働基準監督署や労働局の総合労働相談コーナーに相談してください。雇用保険に入るべき人かどうかの確認は、ハローワークでもできます。

逆に、在宅で自分の裁量で作業し、成果物に対して報酬を受け取る形であれば、業務委託として扱われるのが一般的です。その場合は、雇用保険の外で働くことを前提に、収入が途切れたときの備えを考えておく必要があります。

副業を始めたあとの税と保険

副業を始めたあとに必要になる手続きも確かめておきます。

業務委託の仕事で継続的に収入を得る場合は、税務署に開業届を出し、所得を確定申告します。65歳以上で年金を受け取っている人は、公的年金等の収入が400万円以下で、年金以外の所得が20万円以下なら所得税の確定申告が不要になる場合があります。ただし、住民税の申告は別に必要になることがあるので、住んでいる市区町村に確かめてください。

業務委託で働く間は、雇用保険にも厚生年金にも入りません。会社員のときのように、仕事がなくなったときの給付はありません。収入が途切れたときに備えて、生活費の数か月分は手元に残しておくと安心です。

また、65歳以上で雇われて働き、厚生年金に入っている人は、在職定時改定によって毎年10月に年金額が見直され、それまでに納めた保険料が年金額に反映されます。業務委託だけで働く場合は厚生年金に入らないので、この仕組みは使えません。雇われて働くか業務委託で働くかを選ぶときは、こうした違いも比べてください。

業務委託の取引では、2024年11月に施行されたフリーランス法により、発注者に取引条件の明示や、受け取りから60日以内の報酬の支払いなどが義務づけられています。契約書や発注書で何を確かめればよいかは、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストで整理しています。

65歳以降に在宅で働くという選択

65歳以降の働き方として、雇われる仕事と在宅の業務委託を組み合わせる人が増えています。雇用保険に入れる仕事を1つ持っておけば、辞めたときに高年齢求職者給付金を受け取れる可能性が残り、在宅の仕事で経験を生かした収入を得ることもできます。

在宅で受けやすい仕事の1つが、文章の仕事です。記事の執筆や編集の単価の相場は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で公的統計をもとにまとめています。会社員時代に報告書や社内文書を多く書いてきた人は、ビジネス文書検定で文書の作法を確かめておくと、仕事の幅が広がります。ITの経験がある人なら、アプリケーション開発のお仕事で紹介しているような仕事も選択肢になります。

在宅の仕事を始めるときは、最初から大きな仕事を受けず、短い期間で終わる小さな仕事から始めて、作業の時間配分や納期の感覚をつかむのが安全です。目や肩の疲れ、パソコンの操作の慣れなど、在宅ならではの負担もあります。1日の作業時間の上限を自分で決めておくと、無理なく続けやすくなります。

在宅ワークの市場を長く見てきた運営者の立場から言えば、65歳を過ぎて在宅の仕事を長く続けている人は、たくさんの案件を追いかけるより、少数の取引先と信頼を積み重ねている人が多いという印象があります。仲介の手数料がかからない直接取引であれば、受け手の手取りが厚くなり、発注する側も同じ予算で継続して頼みやすくなります。給付の手続きを正しく済ませたうえで、自分のペースで続けられる取引先を見つけておくことが、65歳以降の働き方を支える土台になります。

よくある質問

Q. 65歳以上で辞めた場合、失業保険は受け取れますか?

65歳以上で雇用保険に入っていた人(高年齢被保険者)は、一般の基本手当ではなく、高年齢求職者給付金を一時金で受け取ります。離職前1年間に被保険者期間が通算6か月以上あることなどが条件です。雇用保険に入っていた期間が1年以上なら基本手当日額の50日分、1年未満なら30日分です。

Q. 高年齢求職者給付金はいくら受け取れますか?

令和8年8月1日からの基本手当日額の上限は、65歳以上の場合7,450円なので、50日分で最大372,500円です。実際の額は離職前6か月の賃金をもとに計算され、賃金日額が5,000円の人なら基本手当日額は4,000円、50日分で20万円が目安です。正確な額は受給資格者証で確かめてください。

Q. 年金を受け取っていても給付は受け取れますか?

65歳からの老齢基礎年金と老齢厚生年金は、高年齢求職者給付金と調整されないので、両方を受け取れます。65歳になる前の特別支給の老齢厚生年金は基本手当と同時に受け取れませんが、65歳以上の給付は扱いが違います。高年齢求職者給付金には税金もかかりません。

Q. 手続きの期限はありますか?

離職の日の翌日から1年を経過する日までに、ハローワークで求職の申込みをし、失業の認定を受ける必要があります。認定日から期限までの日数が30日分または50日分に満たないときは、その日数分しか支給されません。自己都合で辞めた場合は給付制限が原則1か月あるので、その分も見込んで早めに手続きしてください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年9月27日最終更新:2026年10月6日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方