就労移行支援の利用中に単発バイトはできるか、届け出と注意点 2026


この記事のポイント
- ✓就労移行支援を利用しながら単発バイトをしてよいのかを
- ✓厚生労働省の制度の説明とQ&Aをもとに整理しました
- ✓単発バイトの代わりになる選択肢までを解説します
就労移行支援に通いながら、生活費のために単発バイトをしたい。そう考えて調べると、「アルバイトは禁止」「バレたら利用できなくなる」という強い言葉が並び、不安になる人も多いはずです。一方で「単発なら大丈夫」と書いた記事もあり、どれを信じればよいのか分からなくなります。
結論から書くと、就労移行支援の利用中のアルバイトを一律に禁じる法律の条文があるわけではありません。ただし、就労移行支援は「これから企業に雇われることを目指す人」のための訓練の制度なので、働きながら使うことは想定の外にあり、利用を認めるかどうかは支給を決めた市区町村と事業所の判断になります。だからこそ、黙って始めるのではなく、先に相談することが何より大切です。この記事では、厚生労働省の制度の説明と、国が自治体向けに出しているQ&Aをもとに、判断の考え方と相談の順番を整理します。
就労移行支援はどんな制度か
まず、就労移行支援がどんな制度なのかを確かめておきます。ここを押さえると、なぜアルバイトとの併用が難しいと言われるのかが見えてきます。
就労移行支援は、障害のある人が企業などに雇われて働けるよう、訓練や就職活動の支援を行う障害福祉サービスの1つです。厚生労働省は、このサービスの内容を次のように説明しています。
就労を希望する障害者であって、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれるものにつき、生産活動、職場体験その他の活動の機会の提供その他の就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、求職活動に関する支援、その適性に応じた職場の開拓、就職後における職場への定着のために必要な相談その他の必要な支援を行います。 出典: mhlw.go.jp
対象者は、就労を希望する65歳未満の障害のある人で、通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる人です。「通常の事業所」とは、障害のある人に限らず一般の人が働いている企業やお店のことだと考えれば十分です。
この説明から分かるのは、就労移行支援が「いまは雇われて働いていないが、訓練と支援があれば雇われて働けるようになる人」を想定した制度だということです。すでにどこかで雇われて働いている人は、この想定から外れます。アルバイトも雇われて働く形の1つなので、ここに併用の難しさの出発点があります。
もう1つ大事なのは、就労移行支援を使うには、市区町村から「支給決定」を受ける必要があることです。支給決定とは、このサービスをこの人に使ってよいと、自治体が認めることを指します。利用の可否を判断する主体は自治体で、その判断は本人の状況をもとに行われます。
なぜ「アルバイトは禁止」と言われるのか
インターネット上で「就労移行支援はアルバイト禁止」と書かれることが多いのには、いくつかの理由があります。
制度の対象から外れるおそれがある
前の節のとおり、就労移行支援は雇われて働くことを目指す人のための制度です。継続して雇われて働いている状態になると、「もう通常の事業所で働けている」と判断され、就労移行支援を使う必要がないとみなされる可能性があります。単発であっても雇用契約を結んで働くことに変わりはないので、自治体によっては慎重に扱われます。
訓練の時間と重なる
就労移行支援は、週に何日、何時から何時まで通うかを、個別の支援計画で決めて進めます。アルバイトのために通所の日を休んだり、疲れて訓練に集中できなくなったりすると、計画どおりに訓練が進みません。事業所が併用に慎重になるのは、このためでもあります。
事業所ごとのルールがある
事業所は、利用の決まりを利用契約や重要事項の説明書に書いています。アルバイトの扱いについて、事業所独自のルールを設けているところもあります。利用を始めるときに受け取った書類に、アルバイトや副業について何か書かれていないかを確かめてみてください。
自治体ごとに判断が違う
支給決定をするのは市区町村なので、同じ状況でも自治体によって判断が分かれることがあります。ある地域では認められた働き方が、別の地域では認められない、ということが起こりえます。ネット上の体験談が食い違うのは、この違いが大きな理由です。
このように、「禁止」という言葉の裏には、法律の明文の禁止ではなく、制度の目的、事業所のルール、自治体の判断が重なっている、という事情があります。
国が示している目安
では、国はこの問題についてどんな考え方を示しているのでしょうか。厚生労働省は、障害福祉サービスの報酬改定にあわせて、自治体や事業所からの質問に答えるQ&Aを出しています。令和6年度の報酬改定に関するQ&A(VOL.1、令和6年3月29日)には、一般就労している人が、働かない日や時間に日中活動サービスを使えるかという問いがあります。日中活動サービスとは、日中に事業所に通って受ける障害福祉サービスの総称で、就労移行支援もその仲間です。
企業等での所定労働時間が概ね週 10 時間未満であることを目安として、非常勤のような形態で一般就労している利用者(通常の事業所に雇用されることが困難な障害者)については、以下の条件を満たした場合は、日中活動サービスの支給決定を行うことができる。 ① 一般就労先の企業等が他の事業所等に通うことを認めている場合 ② 当該利用者が日中活動サービスを受ける必要があると市町村が認めた場合 出典: mhlw.go.jp
このQ&Aから読み取れることを整理します。
・働く時間の目安は、週におよそ10時間未満 ・働いている先の企業が、ほかの事業所に通うことを認めていること ・本人がそのサービスを受ける必要があると、市区町村が認めること ・市区町村は、利用者の状態によって必要性を確かめたうえで決めなければならない
目安が週10時間未満とされている理由も、同じQ&Aに書かれています。障害者雇用促進法の改正で、週の所定労働時間が10時間以上20時間未満の精神障害のある人や、重度の身体障害・知的障害のある人を雇った場合に、企業の障害者雇用率の計算に含められるようになったことを踏まえたもの、という説明です。つまり週10時間以上働いている状態は、企業での雇用として数えられる水準に近づいている、という考え方が背景にあります。単発バイトでも、回数が増えて週の合計が10時間に近づくと、判断が厳しくなりうると考えておくとよいでしょう。
また同じ答えの中で、フリーランスや個人事業主のように雇用以外の形で働いている人についても、市区町村が必要と認めれば支給決定ができるとされています。
ただし、注意が必要です。このQ&Aの答えには「通常の事業所に雇用されることが困難な障害者」という言葉が入っています。一方、就労移行支援の対象は「通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる人」です。つまりこの答えは、主に就労継続支援など、別の日中活動サービスを使う人を念頭に置いたものと読むのが自然で、就労移行支援の利用中の単発バイトにそのまま当てはまるとは限りません。
それでも、このQ&Aは考え方の手がかりになります。働く時間が短いこと、働く先とサービスの側の双方が了解していること、自治体が必要と認めること。この3つがそろって初めて併用が成り立つ、という枠組みは、就労移行支援でも判断の材料にされると考えておくのが安全です。最終的には、支給を決めた自治体の判断になります。
休職中の人が利用するときの決まり
単発バイトとは少し違う話ですが、関連して知っておきたいのが、会社に籍を置いたまま休職している人の扱いです。働いている状態と就労移行支援の関係を考えるうえで、国の考え方が分かりやすく表れています。
同じQ&Aでは、一般就労している障害のある人が休職した場合に、休職期間中に就労系の障害福祉サービスを使えるかという問いに、次の3つの要件をすべて満たす場合には支給決定をして差し支えない、と答えています。
・会社、地域の就労支援機関、医療機関などによる復職の支援が見込めない、または難しい ・本人が復職を望み、会社と主治医が、障害福祉サービスによる復職の支援を受けて復職するのが適当と判断している ・そのサービスを使うことで、より効果的かつ確実に復職につなげられると市区町村が判断している
そして、これらを確かめるために、会社、主治医、相談支援事業所がそれぞれ書類を作って出すことになっています。
この扱いを見ると、国が「働いている状態」と「障害福祉サービスの利用」を重ねるときに、本人の希望、働く先の了解、専門家の意見、自治体の判断という複数の確認を求めていることが分かります。単発バイトについても、同じように関係する人の了解を得てから進めるのが筋だ、という考え方の裏づけになります。
黙って単発バイトをすると何が起きうるか
相談をせずに単発バイトを始めた場合に、どんなことが起きうるのかを整理します。脅かすためではなく、判断の材料として知っておいてください。
事業所との信頼関係が揺らぐ
就労移行支援の支援員は、利用者の体調や生活の様子を見ながら、就職に向けた計画を一緒に立てています。アルバイトのことを知らされていないと、疲れや欠席の理由を正しく理解できず、支援の方向がずれてしまいます。後から分かった場合、「なぜ相談してくれなかったのか」と信頼関係が揺らぐことがあります。
支給決定が見直される可能性がある
支給決定は、本人の状況をもとに行われています。働いている実態が分かると、自治体が支給決定の内容を見直すことがありえます。どう扱われるかは自治体の判断で、一概には言えません。
体調を崩して訓練が止まる
単発バイトは、仕事の内容や現場が毎回変わることが多く、慣れない環境で緊張が続きます。訓練と並行すると、思った以上に疲れがたまり、結果として通所も就職活動も止まってしまうことがあります。
生活保護などを受けている場合の申告
生活保護を受けている人は、働いて得た収入を申告する必要があります。厚生労働省の説明では、生活保護の受給中は、収入の状況を毎月申告することになっています。申告をしないと、後で保護費の返還などの問題になることがあります。単発の仕事でも収入は収入なので、必ず担当のケースワーカーに伝えてください。
単発バイトをしたいときの相談の順番
それでも、生活の事情でどうしても収入が必要なときはあります。その場合は、次の順番で相談するのが確実です。
1. 事業所の支援員に相談する
最初に話すのは、通っている事業所の担当の支援員です。単発バイトをしたい理由、考えている仕事の内容、日数と時間、通所への影響を、正直に伝えます。支援員は、事業所のルールと自治体の運用を知っているので、どう進めればよいかを具体的に教えてくれます。
2. 相談支援専門員に相談する
サービス等利用計画を作っている相談支援専門員がいる場合は、その人にも伝えます。相談支援専門員とは、障害福祉サービスの利用計画を一緒に考え、自治体とのやりとりを支える専門職のことです。計画の見直しが必要かどうかを判断してもらえます。
3. 市区町村の障害福祉の窓口に確認する
最終的な判断は自治体です。支援員や相談支援専門員を通じて、または自分で、市区町村の障害福祉の担当課に確認します。「就労移行支援を利用中だが、週に何時間、こういう仕事をしてよいか」と具体的に聞くと、答えが得やすくなります。
相談のときに伝えたいこと
相談するときは、次の項目をメモにしてから臨むと話が早く進みます。
・単発バイトが必要な理由(生活費、家賃、医療費など) ・仕事の内容と、1回あたりの時間、1か月の回数 ・通所する曜日と重ならないか ・主治医に相談しているか、その意見 ・就職活動の予定への影響
許可が出た場合も、その内容を記録に残しておくと、後で行き違いが起きにくくなります。
支援員に話すときの伝え方の例
「アルバイトをしたい」と切り出すのは、勇気が要ることです。叱られるのではないか、利用をやめさせられるのではないかと心配になるかもしれません。けれども支援員にとって、利用者の生活の困りごとを知ることは、支援を考えるうえで欠かせない情報です。正直に話してもらえたほうが、ずっと支援しやすくなります。
伝えるときは、気持ちと事実を分けて話すと伝わりやすくなります。たとえば次のような流れです。
まず、困っていることを伝えます。「家賃の支払いが厳しくて、来月の生活費が足りなくなりそうです」。次に、考えていることを伝えます。「週に1回、土曜日に4時間くらい、倉庫の軽作業の単発バイトをしようと考えています」。そして、相談したいことをはっきりさせます。「通所に影響が出ないか、市の窓口に確認が必要か、一緒に考えてもらえますか」。
このように話すと、支援員は、生活費の問題とアルバイトの問題を分けて考えられます。もしかすると、アルバイトよりも先に、利用者負担の区分の見直しや、ほかの制度の利用を提案してくれるかもしれません。アルバイトをするにしても、通所の曜日と重ならない日を選ぶ、短い時間から試す、といった具体的な助言がもらえます。
話した内容と、支援員から言われたことは、日付を付けてメモに残しておくと安心です。後で市区町村の窓口に確認するときにも、そのメモが役立ちます。
単発バイトと就職活動、どちらを優先するか
生活費の問題と、就職という目標。その2つの間で迷ったときに考えたい点を整理します。
目先の収入と、就職後の収入を比べる
単発バイトで得られるのは、その日の分の収入です。一方、就職できれば、毎月の給与が安定して入るようになります。単発バイトのために訓練や就職活動が遅れると、安定した収入を得られる時期も遅れます。数か月先の生活まで含めて考えると、どちらを優先すべきかが見えてくることがあります。
単発バイトが就職の練習になる場合もある
一方で、働く経験が少ない人にとっては、短い時間の仕事を経験することが、自信や生活のリズムにつながることもあります。決まった時刻に現場に行く、指示を聞いて作業する、という経験は、就職後の働き方の練習にもなりえます。この場合も、支援員と相談したうえで、訓練の一環として位置づけてもらうのが望ましい形です。
体調と生活のリズムを最優先にする
どちらを選ぶにしても、土台になるのは体調と生活のリズムです。眠る時間が不規則になる夜間の仕事や、体力を大きく使う仕事は、訓練との両立が難しくなりがちです。働くかどうか、どんな仕事を選ぶかは、主治医や支援員の意見を聞いて決めてください。
事業所の外にある相談先
就労移行支援の事業所のほかにも、働くことやお金のことを相談できる場所があります。1か所だけで解決しようとせず、必要に応じて使い分けると、選べる道が広がります。
ハローワークには、障害のある人の就職を専門に扱う窓口があります。求人の紹介だけでなく、どんな働き方が合っているかの相談にも乗ってくれます。就労移行支援の事業所と連携して就職活動を進めることも多いので、支援員に「ハローワークの窓口も使いたい」と伝えておくとよいでしょう。
障害者就業・生活支援センターは、働くことと生活することの両方を、地域で一体的に支える相談の拠点です。就職の前から就職した後まで、生活の悩みを含めて相談できます。お金のやりくりや生活のリズムといった、職場の外の困りごとも相談の対象になります。
生活費の問題が大きいときは、福祉事務所や市区町村の生活困窮の相談窓口も頼りになります。どこに相談すればよいか分からないときは、まず市区町村の障害福祉の担当課に聞けば、適切な窓口を案内してもらえます。
お金の不安を減らすために確かめたい制度
単発バイトを考える背景には、多くの場合、生活費の不安があります。アルバイトの前に、使える制度や負担の仕組みを確かめておくと、無理に働かなくて済むこともあります。
利用者負担には上限がある
就労移行支援の利用には、原則として費用の一部を自分で負担しますが、所得に応じて1か月あたりの上限額が決まっています。厚生労働省の説明では、生活保護を受けている世帯と、市町村民税が非課税の世帯は0円です。市町村民税が課税されている世帯のうち所得割16万円未満の世帯は9,300円、それ以外は37,200円が上限です。ここでいう世帯は、18歳以上の障害のある人の場合、本人とその配偶者です。
利用料がかかっているかどうか、自分がどの区分に当たるかは、受給者証や事業所からの請求で確かめられます。思っていたより負担が小さいと分かれば、アルバイトを急がなくて済むかもしれません。
生活保護という選択肢
生活費がどうしても足りないときは、生活保護も選択肢の1つです。厚生労働省の説明では、世帯の収入と、国の基準で計算される最低生活費を比べ、収入が足りない場合に差額が保護費として支給されます。相談の窓口は、住んでいる地域の福祉事務所です。
年金や手当について
障害年金を受け取れる可能性がある人は、年金事務所や市区町村の窓口で相談できます。受け取れるかどうかや金額は、障害の状態や保険料の納付状況で決まるので、個別に確かめてください。
どの制度も、本人の事情によって使えるかどうかが変わります。断定的な情報をネットで探すより、支援員や窓口に「お金に困っている」と率直に伝えるほうが、使える手段を早く見つけられます。
単発バイトの代わりに考えたい選択肢
収入を得ることや、働く経験を積むことが目的なら、単発バイト以外の道もあります。
事業所の職場体験や実習
就労移行支援の内容には、職場体験の機会の提供が含まれています。実際の企業で一定期間の実習を行う事業所も多く、働く経験を積むという意味では、単発バイトより就職に直結しやすい場合があります。事業所によっては、生産活動に対して工賃が支払われることもあります。
就労継続支援A型
いまの体調や状況では、すぐに一般の企業で働くのが難しい場合、就労継続支援A型という選択肢もあります。厚生労働省の説明では、A型は、通常の事業所に雇用されることが困難な障害のある人のうち、適切な支援により雇用契約などに基づいて働ける人を対象にしたサービスです。雇用契約を結んで働くので、支援を受けながら給与を得られます。就労移行支援から切り替えるかどうかは、支援員や相談支援専門員とよく話し合って決めてください。
早めの就職を目指す
単発バイトで収入をつなぐより、就職活動に力を入れて早く就職したほうが、結果的に生活が安定することもあります。就職した後は、就労定着支援という、職場に定着できるよう相談や連絡調整を行うサービスを使える場合があります。厚生労働省の説明では、就労移行支援などを使った後に通常の事業所に新たに雇用され、働き続けている期間が6か月を過ぎた人が対象です。
単発バイトが認められた場合に気をつけること
相談の結果、単発バイトをしてよいと認められた場合にも、気をつけておきたいことがあります。
働く量を約束の範囲に収める
認められた日数や時間を超えないようにします。単発バイトのアプリは、空いた時間に次々と仕事を入れられるので、気づくと週の働く時間が増えていることがあります。1か月の予定表に、通所の日とアルバイトの日を並べて書き込み、無理がないかを確かめてください。
雇用保険の対象にはならないことが多い
ハローワークの案内では、雇用保険に入る要件は、31日以上の雇用見込みがあり、1週間の所定労働時間が20時間以上であることです。1日だけの単発の仕事は、この要件に当てはまらないことが多いので、辞めたときの給付などの対象にはならないと考えておくのが一般的です。
給与明細と記録を保存する
受け取った給与の明細や、働いた日と時間の記録は保存しておきます。生活保護を受けている人の収入の申告や、税金の手続きで必要になることがあります。税金の扱いで分からないことがあれば、税務署に相談してください。
体調の変化を伝える
働いてみて疲れが強い、眠れない、通所がつらくなったといった変化があれば、すぐに支援員に伝えます。体調のことは主治医にも相談してください。単発バイトは、続けることが目的ではありません。就職という本来の目標から離れてしまうようなら、いったん止める判断も大切です。
これから利用を始める人が確かめておくこと
まだ就労移行支援の利用を始めていない人で、アルバイトを続けながら通えるかを気にしている人もいるはずです。利用を決める前に確かめておくと、後から困ることを減らせます。
見学や体験のときに聞く
多くの事業所は、利用を決める前に見学や体験の機会を設けています。その場で、アルバイトや副業についての事業所の考え方を聞いておきます。「生活費のために、今のアルバイトを少し続けたい」と具体的に伝えれば、事業所としての扱いと、過去に同じ相談があったときにどうしたかを教えてもらえることがあります。
申請のときに市区町村に伝える
就労移行支援の利用を申請するときには、市区町村の窓口や相談支援専門員と、今の生活の状況を話す機会があります。アルバイトをしているなら、その事実と、利用開始後にどうするつもりかを、このときに伝えておきます。最初から伝えておけば、支給決定の段階で判断してもらえるので、利用を始めてから問題になる心配が小さくなります。
今のアルバイトを辞めるかどうかは急がない
利用を始めるためにアルバイトを辞めるべきかどうかは、事業所と自治体の判断を聞いてから決めても遅くありません。先に辞めてしまうと、利用の開始までの期間に収入が途切れることがあります。辞める時期と利用を始める時期を、支援員や窓口と相談しながら合わせると、生活の空白を作らずに済みます。
複数の事業所を比べる
事業所によって、訓練の内容、通所の日数や時間の柔軟さ、就職の実績、得意な分野が違います。アルバイトとの両立のしやすさも、事業所の方針で変わります。1か所で決めず、2か所から3か所を見学して比べると、自分の事情に合う事業所を選びやすくなります。
単発の仕事を選ぶときに確かめたい点
相談の結果、単発の仕事をしてよいことになったら、仕事の選び方にも気を配ります。訓練と両立させるには、どんな仕事を選ぶかが大きく影響します。
契約の形を確かめる
単発の仕事を紹介するサービスには、雇用契約で働く仕事と、業務委託として仕事を受ける形のものがあります。雇用契約なら、会社は働く時間や賃金などの労働条件を示す義務があります。業務委託の場合は雇われていないので、労働時間の決まりや労災の扱いが雇用とは違います。どちらの形かによって、支援員や自治体に伝える内容も変わるので、申し込む前に確かめておきます。
仕事の内容と現場の環境を見る
仕事の説明をよく読み、体力的に無理のない内容か、立ちっぱなしや重い物を運ぶ作業がどのくらいあるかを確かめます。初めての現場は緊張しやすいので、最初は短い時間で、作業の内容が分かりやすい仕事を選ぶと負担が小さくなります。
時間帯と移動を考える
通所の前の日の夜遅くまで働いたり、遠い現場まで長時間移動したりすると、翌日の訓練に影響します。通所の予定と照らし合わせて、余裕のある日と時間帯を選びます。交通費が支給されるかどうかも、手元に残る額に関わるので確認しておきます。
断ることも選べるようにしておく
単発の仕事は、自分で応募して自分で決めるものです。体調がすぐれない日は、無理に入れないことも大切です。当日の取り消しにはルールがあるサービスが多いので、申し込む前に取り消しの決まりを読んでおくと、体調が変わったときに慌てずに済みます。
就職の先にある働き方を考える
就労移行支援の目的は、自分に合った形で働き続けられるようになることです。その先の働き方には、企業での勤務だけでなく、在宅での仕事や、得意なことを生かした仕事もあります。
たとえば、文章を書くことが得意な人は、事業所の訓練で文書作成やパソコンの操作を身につけ、文章を扱う仕事を目指す道があります。文章の仕事の年収や単価の水準は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で全体の傾向を確かめられます。目標がはっきりすると、訓練の内容も選びやすくなります。
ビジネス文書の書き方を体系的に学んでおくと、事務職でも在宅の仕事でも役立ちます。社内文書や報告書の作法を問うビジネス文書検定のような資格は、訓練の成果を形にして示す材料になります。
将来、業務委託などの形で仕事を受けるようになったときは、契約の条件を書面で確かめることが大切です。発注書や契約書で確認すべき項目は、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストで整理しています。
運営者の視点から見た「無理なく働く」ための順番
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、体調や事情に配慮しながら働き方を作っていく人ほど、最初に「誰に相談しながら進めるか」を決めています。収入を急ぐあまり1人で仕事を増やすと、体調を崩して振り出しに戻ることが少なくありません。支援員や窓口と一緒に順番を決めて進めた人のほうが、結果として長く働き続けています。
在宅の仕事を受けるようになると、手取りの厚さが続けやすさを左右します。仲介の手数料が差し引かれない直接の取引であれば、依頼する側は同じ予算でより多くを頼め、受ける側は手元に残る額が厚くなります。手数料0%の取引は、少ない件数から無理なく始めたい人にとって、負担を小さくする仕組みです。
就職の後に在宅や文章の仕事も視野に入れるなら、どんな業務がどの水準で依頼されているかを先に知っておくと、訓練の目標を立てやすくなります。著述家,記者,編集者の年収・単価相場で相場を確かめ、支援員と相談しながら次の一歩を選んでください。
よくある質問
Q. 就労移行支援の利用中に単発バイトをしてもいいですか?
法律で一律に禁じられているわけではありませんが、就労移行支援は雇われて働くことを目指す人のための制度なので、働きながらの利用は想定の外にあります。認められるかは支給を決めた市区町村と事業所の判断です。始める前に、支援員と市区町村の障害福祉の窓口に相談してください。
Q. 黙って単発バイトをしたらどうなりますか?
事業所との信頼関係が揺らぐほか、自治体が支給決定を見直す可能性もあります。どう扱われるかは自治体の判断で一概には言えません。生活保護を受けている人は収入を毎月申告する必要があり、申告しないと保護費の返還などの問題になることがあります。必ず先に相談してください。
Q. 就労移行支援の利用料はいくらかかりますか?
所得に応じて1か月あたりの上限額があります。生活保護世帯と市町村民税が非課税の世帯は0円、課税世帯で所得割16万円未満は9,300円、それ以外は37,200円が上限です。18歳以上の場合、世帯は本人と配偶者で判断されます。受給者証や事業所の請求で確認できます。
Q. 単発バイト以外に収入や経験を得る方法はありますか?
就労移行支援には職場体験の機会が含まれ、企業での実習を行う事業所もあります。事業所によっては生産活動に工賃が支払われることもあります。すぐの一般就労が難しい場合は、雇用契約を結んで支援を受けながら働く就労継続支援A型という選択肢もあります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
松本 あゆみ@SOHO編集部
元看護師・医療系ライター
大学病院で看護師として8年間勤務。介護福祉士の資格も取得し、医療・介護両方の現場を知る立場から、ヘルスケア系の記事を執筆しています。
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