年休を使って副業をしてよいか|就業規則で確かめる点と届け出

長谷川 奈津
長谷川 奈津
年休を使って副業をしてよいか|就業規則で確かめる点と届け出

この記事のポイント

  • ✓年休(年次有給休暇)を使って副業をしてよいかを
  • ✓厚生労働省の副業・兼業ガイドラインとモデル就業規則で整理しました
  • ✓年休の使い道は自由という原則

年休を取った日に、副業の仕事を入れてもよいのか。会社に知られたら問題になるのではないか。年休を使って副業をしようと考えたとき、多くの人がこの点で迷います。せっかく休みを取るのだから、その時間を副業に充てたいと考えるのは自然なことですが、会社のルールや法律の扱いが分からないまま進めるのは不安なものです。

結論から書きます。年休の使い道は、原則として働く人の自由です。会社は、年休を何に使うかを理由に、年休を認めなかったり、取り消したりすることはできません。ただし、副業そのものは、年休かどうかとは別に、会社の就業規則のルールに従う必要があります。多くの会社では、副業を始めるときに届け出を求めており、本業に支障が出る場合、会社の秘密が漏れる場合、会社の名誉や信用を傷つける場合、競業で会社の利益を害する場合には、副業を禁止したり制限したりできると定めています。つまり、確かめるべきは「年休を使ってよいか」ではなく、「その副業が就業規則のルールの範囲に収まっているか」です。

この記事では、年休を使って副業をするときの考え方を、労働基準法、厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」と「モデル就業規則」をもとに整理し、就業規則で確かめる点、届け出の出し方、退職前の有給消化中や公務員の場合の注意点、税金の手続きまで解説します。

年休とはどんな休みか

まず、年休の基本を確認しておきます。年休とは、年次有給休暇の略で、休んでも給料が支払われる休みのことです。労働基準法の第39条で、働く人の権利として定められています。

労働基準法の第39条第1項では、雇われた日から6か月間続けて勤務し、全労働日の8割以上出勤した人に、10日の年休を与えなければならないとされています。その後は、勤続年数に応じて日数が加算され、6年6か月以上勤務すると1年で20日になります。週の所定労働日数が少ないパートやアルバイトの人にも、働く日数に応じた日数の年休が与えられます。

勤続期間 6か月 1年6か月 2年6か月 3年6か月 4年6か月 5年6か月 6年6か月以上
付与日数 10日 11日 12日 14日 16日 18日 20日

年休をいつ取るかは、原則として働く人が決められます。労働基準法の第39条第5項では、会社は、働く人が請求した時季に年休を与えなければならないとされています。会社がこれを変更できるのは、請求された時季に年休を与えることが「事業の正常な運営を妨げる場合」に限られます。これを時季変更権と言います。

また、年に10日以上の年休が与えられる人については、会社は、そのうち5日を、働く人の意見を聞いたうえで時季を指定して取らせなければなりません(第39条第7項)。さらに、労働基準法の附則第136条では、年休を取った人に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならないとされています。

年休の使い道は自由という原則

年休を副業に使ってよいかを考えるうえで、一番大事なのが、年休の使い道は働く人の自由だという原則です。

この原則は、昭和48年の最高裁判所の判決で示された考え方として、広く知られています。判決は、年休をどのように利用するかは労働基準法の関知しないところで、使用者の干渉を許さない労働者の自由である、という趣旨を述べています。つまり、会社は、年休を取る理由を聞いて、その理由によって年休を認めるかどうかを決めることはできません。旅行に使っても、家でゆっくり休んでも、資格の勉強に使っても、副業に使っても、年休としての扱いは同じです。

年休を申請するときに、理由を書く欄がある会社もあります。しかし、理由を書かなかったことや、理由が副業だったことを理由に、年休を認めないことは、原則としてできません。会社が年休の時季を変えられるのは、先ほどの「事業の正常な運営を妨げる場合」だけです。

ただし、ここで混同しやすい点があります。年休を取ることと、その日に副業をすることは、別の問題だという点です。年休そのものは自由に使えても、副業をすること自体については、就業規則のルールが及びます。たとえば、就業規則で副業に届け出が必要とされているのに、届け出をせずに副業をしていた場合、それは年休の問題ではなく、副業のルールに反したという問題になります。

この区別を押さえておくと、「年休中だから何をしても自由」と思い込んで、副業のルールを見落とすことを防げます。

副業・兼業について国はどう考えているか

副業のルールを確かめる前に、国が副業・兼業をどう考えているかを知っておくと、会社とのやり取りの見通しが立てやすくなります。

厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(令和4年7月改定)では、企業の対応の基本的な考え方として、裁判例を踏まえれば、原則として副業・兼業を認める方向とすることが適当だとしています。そのうえで、副業・兼業に関する裁判例について、次のように整理しています。

労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは、基本的には労働者の自由であること 出典: 厚生労働省

ガイドラインは続けて、例外的に副業・兼業を禁止または制限できるとされた場合として、労務提供上の支障がある場合、業務上の秘密が漏洩する場合、競業により自社の利益が害される場合、自社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合の4つを挙げています。

年休を取った日は、本業で働く義務がない日です。ですから、その日の時間は、ガイドラインの言う「労働時間以外の時間」と同じように、基本的には自由に使える時間だと考えられます。それでも、上の4つの例外にあたる場合は、会社が副業を制限できます。年休の日に副業をするときも、この4つにあたらないかを確かめることが大切です。

就業規則で確かめる4つの点

自分の会社の就業規則で、副業についてどう定めているかを確かめましょう。厚生労働省のモデル就業規則(令和7年12月版)では、副業・兼業について第70条で、次のような規定の例を示しています。

第70条 労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。 2 会社は、労働者からの前項の業務に従事する旨の届出に基づき、当該労働者が当該業務に従事することにより次の各号のいずれかに該当する場合には、これを禁止又は制限することができる。 ① 労務提供上の支障がある場合 ② 企業秘密が漏洩する場合 ③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合 ④ 競業により、企業の利益を害する場合 出典: 厚生労働省

モデル就業規則はあくまで例で、実際の会社の就業規則は会社ごとに違います。自分の会社の就業規則を開いて、次の点を確かめてください。

確かめる点1:副業が認められているか

就業規則に副業を認める規定があるか、それとも禁止や許可制になっているかを確認します。許可制とは、副業をする前に会社の許可を得なければならない仕組みのことです。届出制とは、副業をすることを会社に知らせれば足りる仕組みのことです。どちらなのかで、事前にすべき手続きが変わります。

確かめる点2:届け出や許可の手続き

届け出や許可が必要な場合は、いつまでに、どの書式で、何を書いて出すのかを確認します。副業先の会社名、仕事の内容、働く時間や日数、雇われる形か業務委託の形かなどを書かせる会社が多くあります。

確かめる点3:禁止や制限の理由

どんな場合に副業が禁止や制限されるのかを確認します。モデル就業規則の4つの理由と同じ内容の会社が多いですが、会社によっては、ほかの理由を挙げていることもあります。

確かめる点4:休暇の扱いに関する規定

年休や特別休暇の扱いについて、副業との関係で何か定めがあるかを確認します。たとえば、病気やけがの療養のための休暇や休職の期間中は、療養に専念することを求める規定を置いている会社があります。年休とは性格が違う休みなので、混同しないよう注意します。

就業規則が見当たらないときは、会社に見せてもらうよう頼みましょう。労働基準法の第106条で、会社は就業規則を、働く人が見られるようにしておかなければならないとされています。

年休の日の副業で、問題になりやすい場面

年休の日の副業そのものは原則として自由でも、内容によっては問題になる場面があります。ガイドラインの4つの例外に沿って、具体的に見ていきます。

1つ目は、労務提供上の支障がある場合です。たとえば、年休を連続して取り、そのあいだに副業で長時間働いた結果、休み明けに体調を崩して本業に支障が出た、という場合です。年休は本来、心と体を休めるための休みです。年休を副業で埋め尽くして疲れをためると、本業での働きに影響が出るおそれがあります。

2つ目は、業務上の秘密が漏洩する場合です。本業で知った顧客の情報や、社内の技術、企画の内容を、副業で使ってしまう場合です。年休の日であっても、本業の秘密を守る義務は続きます。

3つ目は、競業により会社の利益を害する場合です。本業と同じ業種の会社で働く、本業の顧客から直接仕事を受ける、といった場合がこれにあたる可能性があります。ただしガイドラインは、会社の正当な利益が侵害されない場合には、同じ業種や職種であっても副業を認めるべき場合も考えられるとしています。

4つ目は、会社の名誉や信用を損なう場合です。会社の信用を傷つけるような副業や、会社の名前を出して行う副業などがこれにあたる可能性があります。

もう1つ注意したいのが、年休の取り方の問題です。たとえば、本業の繁忙期に、副業の予定に合わせて年休を何度も取ると、会社が時季変更権を使うことがあります。これは副業を理由にしているのではなく、事業の正常な運営を妨げるかどうかの問題です。副業の予定を入れる前に、本業の予定や、職場の繁忙期を確かめておくと、無用な摩擦を避けられます。

届け出の出し方と、書いておきたい内容

就業規則で副業に届け出や許可が必要とされている場合は、副業を始める前に手続きをします。年休の日だけ副業をする場合でも、副業をすること自体の届け出は必要です。

届け出の書式が決まっている会社は、その書式に従います。書式がない場合は、次のような項目を書いておくと、会社が判断しやすくなります。

  1. 副業先の名前と所在地(個人で受ける場合は、その旨)
  2. 副業の内容
  3. 契約の形(雇われる形か、業務委託の形か)
  4. 副業をする日と時間の見込み(年休の日、休日、勤務時間外など)
  5. 本業の仕事と競合しないこと、本業の秘密を使わないことの確認
  6. 健康に配慮して、働く時間が長くなりすぎないようにすること

厚生労働省のガイドラインでは、会社が副業の内容として確認する事項として、副業先の事業内容、副業先で従事する業務内容、労働時間を通算する対象になるかどうかを挙げています。こうした点を最初から書いておくと、会社とのやり取りがスムーズに進みます。

届け出の文章を書くのが苦手な人は、ビジネス文書検定で、ビジネス文書の書き方の基本を学んでおくと役立ちます。この検定は、社内外に出す文書の作り方や表現の基本を問うものです。

なお、ガイドラインでは、副業・兼業に関する相談や自己申告を行ったことによって、不利益な取扱いをすることはできないとされています。届け出は、自分を守るための手続きでもあります。

時間単位の年休や半日休暇を副業に使う場合

年休は1日単位で取るのが基本ですが、会社によっては、時間単位や半日単位で取れる場合があります。副業の打ち合わせや短い作業のために、こうした仕組みを使いたいと考える人もいるでしょう。

時間単位の年休は、労働基準法の第39条第4項で定められています。会社と働く人の代表との間で書面の協定(労使協定)を結んだ場合に、年に5日分までを時間単位で取れるようにできる仕組みです。労使協定とは、会社と、働く人の過半数で作る労働組合(それがない場合は働く人の過半数を代表する人)との間で結ぶ取り決めのことです。協定がない会社では、時間単位の年休は取れません。

半日単位の年休は、法律に直接の定めはありませんが、会社が就業規則などで認めていれば取ることができます。

時間単位や半日単位の年休を副業に使うこと自体も、1日単位の年休と同じく、使い道は原則として自由です。ただし、勤務日の途中で年休を取って副業をする場合は、本業の勤務時間との境目があいまいになりやすい点に注意が必要です。本業のパソコンや連絡手段を副業に使わない、本業の勤務時間中に副業の連絡をしない、といった線引きを自分で決めておくと、誤解を招きにくくなります。

副業が会社に知られる経路と、住民税の扱い

年休の日に副業をすることを、会社に知られたくないと考える人もいます。しかし、就業規則で届け出が必要とされているなら、届け出をするのが本来の手順です。そのうえで、副業が会社に伝わる仕組みも知っておくと、手続きの漏れを防げます。

会社員の住民税は、多くの場合、会社が毎月の給料から差し引いて納める仕組みになっています。これを特別徴収と言います。副業の収入があると、その分だけ住民税の額が増えるため、会社の担当者が住民税の額の変化に気づくことがあります。

副業の所得が、業務委託や自分の事業などの給与以外の所得である場合は、確定申告のときに、副業の分の住民税を自分で納める普通徴収を選べる場合があります。普通徴収とは、市区町村から届く納付書などで、自分で住民税を納める方法のことです。ただし、副業がアルバイトなどの給与である場合は、原則として普通徴収を選べません。この違いはよく間違われるので注意が必要です。最終的な扱いは市区町村によって違うことがあるため、住んでいる市区町村に確認してください。

いずれにしても、届け出が必要な会社で届け出をせずに副業を続けることは、それ自体が就業規則に反することになります。住民税の扱いで隠そうとするより、最初に届け出をして、堂々と副業をするほうが、結果として自分を守ることにつながります。

副業が雇われる形のときの労働時間の通算

副業が、ほかの会社に雇われてアルバイトなどをする形の場合は、労働時間の通算という考え方も知っておく必要があります。労働時間の通算とは、本業と副業の両方で雇われている場合に、両方の労働時間を合計して、法定労働時間(1日8時間、1週40時間)を超えているかどうかを判断するという考え方です。

厚生労働省のガイドラインでは、法定労働時間などについては、本業と副業の労働時間が通算されるとしています。一方で、休憩、休日、年次有給休暇については、労働時間に関する規定ではないため、通算されないとしています。

年休を取った日は、本業では実際に働いていないので、その日の本業の労働時間はありません。年休の日に副業で働いた時間は、副業先での労働時間として扱われます。本業で働いていない日に副業で8時間を超えて働く場合や、同じ週の本業の労働時間と合わせて40時間を超える場合は、副業先で割増賃金の扱いが問題になることがあります。具体的な計算は、副業先の会社に確認してください。

また、ガイドラインは、労働時間を通算して法定労働時間を超える場合には、長時間の時間外労働にならないようにすることが望ましいとしています。年休の日を副業で埋めるときは、その週全体で働く時間が長くなりすぎていないかを、自分でも確かめておきましょう。

副業が業務委託や自分で事業を営む形の場合は、労働基準法が適用されないため、労働時間の通算はありません。ただし、働きすぎによって健康を損なうおそれがあることは同じです。

退職前の有給消化中にアルバイトをする場合

退職が決まり、残った年休をまとめて取る「有給消化」の期間中に、アルバイトや次の仕事を始めたいと考える人もいます。この場合は、いくつか特に注意する点があります。

まず、有給消化中も、退職日までは本業の会社の従業員です。就業規則の副業のルールは、退職日まで適用されます。届け出が必要な会社なら、有給消化中のアルバイトについても届け出が必要です。とくに、同じ業種の会社で働き始める場合は、競業にあたるかどうかが問題になりやすいため、退職日までは控えるか、会社に相談しておくのが安全です。

次に、社会保険と雇用保険の扱いです。退職日までは本業の会社の社会保険に加入しているため、同時に別の会社で社会保険の加入条件を満たす働き方をすると、両方の会社に関わる手続きが必要になります。雇用保険は、原則として、同時に2つの会社で加入することはできません。次の会社への入社日を退職日より前にすると、こうした手続きが複雑になります。入社日は退職日の翌日以降にするのが、手続きの面では分かりやすい形です。

また、有給消化中に次の会社で働き始めることは、本業の会社との雇用契約が続いている中での二重の就労になります。本業の会社の就業規則でどう扱われるかを確かめずに進めると、退職金の扱いなどで思わぬ問題になることがあります。判断に迷うときは、会社の人事担当や、労働局の総合労働相談コーナーに相談してください。

公務員が年休を使って副業をする場合

公務員の場合は、民間の会社員とはルールが大きく違います。年休を取った日であっても、公務員としての身分はそのままで、副業(兼業)の規制は変わらずに適用されます。

一般職の国家公務員は、国家公務員法の第103条と第104条で兼業が規制されています。内閣人事局と人事院が令和8年4月に公表した兼業のQ&A集では、常勤の職員は、一定の基準を満たした場合に、所轄庁の長などの承認または許可を得て兼業ができるとされています。承認の対象には、不動産や駐車場の賃貸、太陽光電気の販売、遺贈などで継いだ家業のほか、職員の知識や技能をいかした事業、社会貢献に資する事業が挙げられています。

同じQ&A集では、許可にあたっての要件として、勤務時間と兼業の時間が重ならないこと、兼業による心身の著しい疲労で職務の能率に悪影響を与えないことなどを挙げ、原則として兼業の時間が週8時間以下、1か月30時間以下、勤務日は3時間以下であることとしています。年休を取った日に兼業をする場合も、承認や許可を得ていることが前提です。

地方公務員も、地方公務員法で営利企業への従事などが制限されており、任命権者の許可が必要です。具体的な基準は自治体ごとに違うため、所属する組織の人事担当部局に確認してください。

副業の収入と確定申告の線

年休の日に副業をして収入を得たら、税金の手続きも必要になります。会社員の場合、本業の給料の税金は年末調整で精算されますが、副業の収入は自分で申告が必要になることがあります。

国税庁の「給与所得者で確定申告が必要な人」の説明では、給与を1か所から受けていて、その給与の全部が源泉徴収の対象となる人は、給与所得と退職所得以外の所得の合計額が20万円を超える場合に、確定申告が必要とされています。副業が業務委託や自分の事業で、その所得(収入から経費を引いた額)が20万円を超えると、確定申告が必要になります。

一方、副業もアルバイトなどの給与で、給与を2か所以上から受けている場合は、年末調整されなかった給与の収入金額と、給与所得と退職所得以外の所得の合計額が20万円を超えると、確定申告が必要とされています。副業の給与については、所得ではなく収入金額で判断する点に注意が必要です。詳しくは国税庁の確定申告が必要な人の説明を確認してください。

また、所得税の確定申告が不要な場合でも、住民税の申告は別に必要になることがあります。20万円という線は所得税の話で、住民税にはこの線がありません。住民税の申告については、住んでいる市区町村に確認してください。

副業の収入で税金の計算が複雑になる場合は、税務署や税理士に相談するのが確実です。会計の専門家が副業をするときの働き方は、会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】で、勤め先のルールとの付き合い方を含めて解説されています。

副業を理由に不利益な扱いを受けたときの相談先

年休を取ったことや、副業の届け出をしたことを理由に、不当な扱いを受けたと感じたときは、1人で抱え込まずに相談できる窓口があります。

労働基準法の附則第136条では、年休を取った人に対して、賃金の減額その他不利益な取扱いをしないようにしなければならないとされています。また、厚生労働省のガイドラインでは、副業・兼業に関する相談や自己申告を行ったことにより、不利益な取扱いをすることはできないとされています。

それでも、年休を取ったことを理由に評価を下げられた、副業の届け出をしたら異動や減給をほのめかされた、といった相談は起こりえます。こうしたときは、まず会社の人事担当や、社内の相談窓口に事実を伝えて確認します。社内で解決しない場合は、各都道府県の労働局や労働基準監督署に置かれている総合労働相談コーナーに相談できます。総合労働相談コーナーでは、解雇や労働条件、職場のトラブルなど、労働に関するあらゆる相談を受け付けています。

相談するときは、いつ、だれから、どんなことを言われたのか、どんな扱いを受けたのかを、日付と一緒に記録しておくと、話がスムーズに進みます。就業規則の写し、年休の申請や承認の記録、副業の届け出の控えなども、手元に残しておきましょう。個別の事情で判断が分かれる問題については、弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談するのが確実です。

業務委託の副業で、トラブルを防ぐために

年休の日に、業務委託の形で副業の仕事を受ける人も多くいます。雇われる形と違い、業務委託の副業では、自分で契約の内容を確かめて、トラブルを防ぐ必要があります。

業務委託の副業で多いトラブルは、報酬の未払いや支払いの遅れ、発注後の一方的な内容の変更、納品後のやり直しの要求などです。2024年11月に施行されたフリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス法)では、事業者がフリーランスに仕事を発注するときに、取引の条件を明示することや、報酬を一定の期日までに支払うことなどが定められています。会社員が副業として業務委託で仕事を受ける場合も、条件によってはこの法律の保護の対象になります。

契約書や発注書に書いておきたい項目は、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストで、確認すべき項目がチェックリストの形で整理されています。万が一、報酬が支払われない場合の対応は、未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】で、支払督促の流れや専門家に頼むときの費用の考え方が解説されています。具体的なトラブルが起きたときは、弁護士などの専門家に相談してください。

よくある相談の型と、考え方の整理

年休と副業について寄せられることの多い相談を、いくつかの型に分けて、考え方を整理しておきます。実際の判断は会社の就業規則や個別の事情で変わるため、あくまで考え方の目安として読んでください。

1つ目は、「年休の日に、本業とは関係のない分野で業務委託の仕事をしたい」という型です。たとえば、事務職の会社員が、年休の日に記事の執筆を受ける場合です。本業との競合がなく、本業の秘密も使わないなら、ガイドラインの4つの例外にはあたりにくいと考えられます。就業規則で届け出が必要なら届け出をし、確定申告の線に気をつければ、問題になりにくい形です。

2つ目は、「年休の日に、本業と同じ業種の会社でアルバイトをしたい」という型です。この場合は、競業にあたるかどうかが問題になります。本業の顧客や取引先と関わるおそれがあるか、本業の会社の利益を害するおそれがあるかを、事前に会社と相談しておくのが安全です。

3つ目は、「年休を連続して取り、その期間を副業に充てたい」という型です。年休の使い道としては自由ですが、長期間にわたって副業で長時間働くと、休み明けに疲れが残り、本業に支障が出るおそれがあります。また、職場の繁忙期と重なると、時季変更権が使われることもあります。休む日と働く日の配分を考えておくことが大切です。

4つ目は、「体調不良を理由に年休を取った日に、副業をしてもよいか」という型です。年休の取得に理由を示す義務は原則としてありませんが、体調不良を理由として申し出た日に副業で働いていたことが分かると、会社との信頼関係を損なうおそれがあります。理由を伝える場合は、事実と違う理由を伝えないことが、余計な問題を避けるうえで大切です。

運営者の視点で見た、年休と副業の付き合い方

20年にわたってフリーランスや在宅ワークの市場を見てきた運営者の立場から言えば、副業を長く続けている会社員ほど、本業との線引きを最初にはっきりさせています。就業規則を確かめて届け出を出し、本業の顧客や情報には手を付けず、年休は副業だけでなく休むためにも残しておく。こうした基本を守っている人ほど、本業でも副業でも信頼を得て、結果として副業の仕事が長く続いています。

もう1つ見てきたのは、副業で受ける仕事の条件が、手取りの厚さを大きく左右するという点です。間に入る仲介の手数料が少ない取引ほど、同じ予算でも依頼する側はより多くを頼め、受ける側の手取りは厚くなります。年休という限られた時間を副業に充てるなら、時間あたりの手取りが厚い仕事を選ぶことが、本業とのバランスを保つうえでも大切です。ただし、仲介に頼らない分、契約の内容や報酬の支払いの条件は自分で確かめる必要があります。

年休の日にできる在宅の仕事にどんなものがあるかを知っておきたい人は、AIコンサル・業務活用支援のお仕事のようなお仕事ガイドで、仕事の中身と始め方を確認できます。また、文章を書く副業を考えている人は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で、執筆や編集に関わる仕事の年収や単価の目安を確かめておくと、限られた時間をどの仕事に充てるかを考える材料になります。

よくある質問

Q. 年休を副業に使うことを会社は禁止できますか?

年休の使い道は原則として働く人の自由で、会社は年休を何に使うかを理由に年休を認めないことはできません。ただし、副業そのものは就業規則のルールに従う必要があり、本業に支障がある、秘密が漏れる、名誉や信用を損なう、競業で利益を害する場合には、会社が副業を禁止または制限できるとする規定が多く見られます。

Q. 年休を申請するときに理由を副業と書く必要はありますか?

年休の取得そのものに、理由を書く義務は原則としてありません。会社が年休の時季を変えられるのは、事業の正常な運営を妨げる場合に限られます。ただし、就業規則で副業に届け出や許可が必要とされている場合は、年休とは別に、副業をすること自体の届け出や許可の手続きが必要です。

Q. 退職前の有給消化中にアルバイトをしても大丈夫ですか?

有給消化中も退職日までは本業の会社の従業員なので、就業規則の副業のルールが適用されます。届け出が必要な会社なら届け出をし、同じ業種で働く場合は競業にあたらないかを確かめます。雇用保険は原則として同時に2つの会社で加入できないため、次の会社への入社日は退職日の翌日以降にすると手続きが分かりやすくなります。

Q. 年休の日の副業で得た収入は確定申告が必要ですか?

給与を1か所から受けている会社員は、副業が業務委託などで、その所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要です。副業もアルバイトの給与の場合は、年末調整されなかった給与の収入金額などの合計が20万円を超えると必要になります。所得税の申告が不要でも住民税の申告が必要になることがあるため、市区町村に確認してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年10月2日最終更新:2026年10月6日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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