UI/UXデザインの継続案件にする|単発で終わらせない

長谷川 奈津
長谷川 奈津
UI/UXデザインの継続案件にする|単発で終わらせない

この記事のポイント

  • UI/UXデザインの継続案件を作るための契約設計を法務の視点で整理
  • 保守枠や準委任の使い分け
  • 偽装請負や専属義務のリスクまで実務の手順で解説します

UI/UXデザインの仕事を単発で終わらせず継続案件にするには、営業の頑張りより契約の形が効きます。これ、知らない人が本当に多いんです。同じ相手と長く仕事をしている人は、たまたま気に入られたのではなく、続く形の契約を最初に用意しています。逆に、毎回ゼロから見積りを出し直している人は、案件が終わるたびに関係も終わっています。この記事では、UI/UXデザインの継続案件を作るために、契約の形をどう組み立てるかを法務の視点で整理します。

単発で終わる案件には、共通した構造がある

まず、なぜ単発になるのかを分解します。理由は3つあります。

第一に、契約が成果物の完成で終わる形になっているから。完成した瞬間に契約上の関係が消えるので、次の話をするには新しい商談を立てる必要があります。第二に、次に何をやるかが決まっていないから。担当者は予算を取る材料がないので動けません。第三に、公開後の窓口が決まっていないから。何か起きたときに誰に言えばよいのか分からないと、相手は社内の別の手段を探します。

この3つはいずれも、能力の問題ではなく設計の問題です。設計は書類で解決できます。

継続に切り替わるのは、相手が「相談先」を必要としたとき

依頼側の内部では、デザインに関わる判断が日常的に発生しています。新しい機能を追加する、キャンペーンのページを作る、別の部署から相談が来る。そのたびに、判断できる人を探しています。

このとき、社内に判断できる人がいなければ外部に聞きます。聞く相手が決まっていれば、そこに聞きます。決まっていなければ、案件として立ててから探します。継続案件とは、この「聞く相手として登録されている状態」のことです。

つまり、継続を作るために必要なのは、大きな仕事を取ることではありません。相談を受け付ける入口を、契約の形として用意しておくことです。

継続を前提とした働き方は、市場全体で増えている

働く場所の制約が外れたことで、外部の専門家を常時関与させる形が取りやすくなりました。案件情報を扱う事業者の説明でも、遠隔での常時関与が前提になっていることが読み取れます。

Midworksではリモート勤務ができる案件は多くあります。実際に、87%以上の案件がリモートでの勤務が可能な案件です。あなたのご希望にあった働き方をご支援いたしますので、お気軽にご相談ください。 出典: mid-works.com

物理的に同じ場所にいる必要がなくなると、月に数回の関与といった細かい関わり方が現実的になります。以前は、通う手間があるために、まとまった量でなければ発注しにくいという事情がありました。その制約が外れた分だけ、継続的で薄い関与の形が組みやすくなっています。

継続案件の3つの形

継続と言っても中身は一つではありません。実務では次の3つに分かれます。

保守運用型

納品後の細かい修正や更新に対応する形です。月ごとに一定の枠を設け、その範囲で対応します。

この形の利点は、相手の心理的なハードルが低いことです。大きな予算を取る必要がなく、担当者の裁量で決められる規模に収まります。そして、些細な相談が入ってくることで、大きな案件の芽を早く掴めます。

注意点は、枠の使われ方が月によって大きく振れることです。何もない月と、集中する月が出ます。繰り越しを認めるかどうかを先に決めておかないと、使い切れなかった月に不満が残ります。

伴走型

相手の社内にデザインを進める人がいて、その判断を支える形です。定例で状況を見て、方針を示し、必要なところだけ手を動かします。

この形は、成果物の量では測れません。だから、成果物単位の契約ではなく、稼働の時間や関与の頻度で契約します。ここを混同すると、「今月は成果物が少ないのに同じ金額なのか」という話になります。何を買っているのかを、契約書の中で明確にしておく必要があります。

プロジェクト連続型

案件そのものは都度立ちますが、優先的に声がかかる関係です。基本契約を1本結んでおき、個別の案件は発注書で回します。

この形は、大きな組織との取引で使われます。毎回契約書を結び直す手間がなくなり、担当者は発注書1枚で発注できます。事務の手間が減ることは、想像以上に発注のしやすさに効きます。

請負と準委任の違いを押さえる

継続の形を選ぶ前に、契約の類型を理解しておきます。ここを取り違えている人が非常に多い領域です。

完成責任があるかどうかが分かれ目

請負契約は、仕事の完成に対して報酬が支払われます。つまり、完成しなければ報酬は発生しません。一方、準委任契約は、業務の遂行に対して報酬が支払われます。成果物の完成そのものは義務ではありません。

デザインを納品する案件は請負に馴染みます。相談に乗る、判断を支える、定例で状況を見るといった業務は準委任です。継続案件で揉めるのは、実態が準委任なのに請負の契約書を使っているケースです。

請負のまま継続すると何が起きるか

請負の契約書には、成果物の定義と検収の条項が入ります。ところが伴走型の実態には、明確な成果物がありません。すると、検収の基準が存在しないまま毎月請求することになり、相手の経理から「何に対する支払いか」と問われます。

さらに厄介なのは、瑕疵担保にあたる契約不適合責任の扱いです。請負では、納めたものに不備があれば修補の義務を負います。継続的な関与の中で作った細かい成果物すべてにこの責任が及ぶと解釈されると、際限のない無償対応につながります。

つまり、業務の実態に契約の型を合わせることが、そのまま自分を守る作業になります。

契約書の書き分けかた

伴走型や保守運用型では、契約書の目的条項に「業務の遂行」を書きます。具体的には、対応する業務の種類を列挙し、成果物の完成を約するものではない旨を明記します。

そのうえで、実際に制作物が発生する場合は、個別の発注書で請負として切り出します。基本契約は準委任、個別の制作は請負という二層構造にすると、実態と書類がずれません。書類のやりとりに慣れておくことは継続取引の土台になるので、ビジネス文書検定のような体系で書式の型を押さえておくと、この切り分けが早く進みます。

月額の契約で必ず決める6項目

保守運用型や伴走型で契約する場合、次の6つを決めていないと必ず揉めます。

対応する業務の範囲

何をやって何をやらないかを、業務の種類で列挙します。「デザインの修正」だけでは足りません。画面の追加は含むのか、新しい機能の設計は含むのか、実装の確認は含むのか。

範囲外の依頼が来たときの扱いも書きます。別途見積りとするのか、翌月の枠を前借りするのか。ここを決めておくと、断ることが交渉ではなく手続きになります。

稼働時間の上限と繰り越し

月あたりの上限時間を決めます。そして、超えた場合と、余った場合の両方を決めます。

超えた場合は追加請求とするのが基本ですが、少しの超過で毎回請求するのは事務が煩雑です。「上限の1割までは調整の範囲とする」といった緩衝を設けておくと、実務が回ります。余った分の繰り越しは、認めるなら期限を切ります。無期限の繰り越しは、いずれ大きな債務のように扱われます。

連絡の手段と応答の時間

どこで連絡を受けるか、いつまでに返すかを決めます。ここを決めていないと、深夜や休日の連絡に応じる義務があるかのような空気が生まれます。

「平日の営業時間内に受け付け、原則として翌営業日までに一次回答する」といった書き方をします。緊急対応が必要な性質の業務であれば、その条件と扱いを別に定めます。継続案件で消耗する最大の要因は、作業量ではなく、いつ連絡が来るか分からない状態です。

追加作業の判定を誰がするか

範囲内か範囲外かで意見が割れたとき、どう決めるかを書きます。実務的には、こちらが「これは範囲外にあたるので、別途お見積りします」と申し出て、相手が承諾したら着手する、という流れを条項にします。

判定の手続きが書かれていないと、着手した後で「それは月額に含まれると思っていた」と言われます。着手前に一往復入れる仕組みを、契約に組み込んでおきます。

支払期日

継続契約では、締め日と支払日を明記します。月末締めの翌月末払いなど、相手の社内ルールに合わせて構いませんが、書面に残します。

ここには法律上の上限があります。2024年11月に施行されたフリーランス保護新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)では、発注事業者は成果物を受領した日から起算して60日以内のできる限り短い期間内に支払期日を定め、その期日までに支払う義務があります。継続的な役務提供でも、支払いを無期限に先延ばしにすることは認められません。制度の詳細は公正取引委員会(https://www.jftc.go.jp/ )や厚生労働省(https://www.mhlw.go.jp/ )の案内が一次情報です。

契約期間、更新、解約

期間を定め、更新の方法を書きます。自動更新にするか、都度合意にするか。自動更新のほうが継続しやすい一方、条件の見直しの機会が減ります。

実務的には、期間を半年から1年とし、自動更新としたうえで、更新の1か月前に条件を協議する機会を設ける書き方が使いやすいです。この協議の機会が、条件を見直すための正当な入口になります。

法律が継続案件を守っている部分

中途解約には予告期間がある

継続的な業務委託については、フリーランス保護新法で中途解約の予告義務が定められています。一定期間以上継続している契約を中途解約する場合、原則として30日前までに予告しなければなりません。

これは、突然の打ち切りで生活が立ち行かなくなることを防ぐための規定です。つまり、明日から来なくていい、という切り方は原則としてできません。継続案件は不安定だと言われますが、法律上の保護はむしろ単発より厚い部分があります。

※ 予告義務には例外もあり、個別の事情によって扱いが変わります。実際に打ち切りを通告された場合は、通告の時期と契約の期間を確認したうえで、必要であれば弁護士に相談してください。

一方的な条件の引き下げは規制されている

継続の中で、途中から報酬を下げるよう求められることがあります。合意なく一方的に減額することは、買いたたきとして問題になり得ます。

また、発注した内容を発注者側の都合で受け取らない、理由なくやり直しをさせる、といった行為も禁止されています。継続案件では力関係が固定しやすいため、こうした規制の存在を知っているかどうかが実際の交渉力になります。

書面での条件明示が義務づけられている

発注する側には、業務の内容、報酬額、支払期日などを書面または電磁的方法で明示する義務があります。口約束のまま継続している状態は、本来の形ではありません。

条件が書面にない場合、こちらから「条件の確認書をお送りします」と言って作ってしまう方法があります。相手が作るのを待つより早く、内容もこちらで整理できます。

相手の社内で継続の予算がどう作られるか

契約の形を整えても、相手の予算が付かなければ継続にはなりません。発注側の内部でどう予算が立つかを知っておくと、提案の出し方が変わります。

単発の予算と継続の予算は財布が違う

多くの組織では、制作費のような一度きりの支出と、毎月出ていく費用が別の枠で管理されています。一度きりの支出は案件ごとに稟議を上げますが、毎月の費用は年度の計画に組み込む必要があります。

つまり、継続の話を持ちかけるタイミングは、相手の年度計画の作成時期に近いほど通りやすくなります。多くの企業では、年度が始まる数か月前に翌年度の計画を固めます。この時期を担当者に聞いておき、逆算して提案を出すと、成功率が変わります。

担当者の裁量で決められる範囲を探る

年度計画を待たずに始めたい場合は、担当者の決裁範囲に収める方法があります。一定金額以下であれば上長の承認なしで発注できる、という運用を持つ組織は少なくありません。

この範囲を直接聞くのは不躾なので、「毎月の枠として、ご担当者様の判断で進められる規模感はどのあたりでしょうか」といった聞き方をします。相手も社内の事情を知っているので、率直に答えてくれることが多いです。範囲に収まる形で始めて、実績ができてから広げるほうが、最初から大きく提案するより通ります。

何に対する支払いかを経理が理解できる形にする

継続の請求で止まりやすいのは、経理の段階です。毎月同じ金額の請求書が来るのに、何をしたのかが分からないと、支払いの承認が止まります。

対策は、請求書とは別に、その月に対応した内容の簡単な報告を添えることです。箇条書きで数行あれば十分です。この一手間があるだけで、経理からの問い合わせがなくなり、担当者も社内で説明しやすくなります。継続案件が途中で切れる原因の一つは、この事務的な摩擦です。

契約書に入れておきたい条項

継続を前提にするなら、単発の契約書にはない条項が必要になります。実務でよく効くものを挙げます。

業務範囲の変更手続き

業務の内容は、続けるうちに必ず変わります。変わったときにどうするかを、あらかじめ手続きとして書いておきます。

「業務の範囲を変更する場合は、書面または電磁的方法により協議のうえ合意する」という一文で足ります。この一文があると、範囲が自然に広がっていく状況に対して、協議を求める根拠ができます。何も書かれていないと、広がった範囲を戻すのは交渉になり、関係を悪くします。

報酬の見直し条項

物価や作業量の変化に応じて報酬を見直せる旨を書いておきます。「契約期間の満了時に、業務量および経済情勢を勘案して報酬を協議する」といった書き方です。

この条項がないと、値上げの相談は関係の外側からの持ち込みになります。あれば、契約に基づく手続きになります。実際に値上げするかどうかは別として、話し合いの場を制度として持っておくことに意味があります。

成果物の権利と、継続中に作ったものの扱い

継続の中で作られる細かい成果物について、権利の帰属を決めておきます。都度の取り決めにすると、数が多いだけに漏れが出ます。

あわせて、契約が終了した後に、それまでの成果物を相手がどう使えるかも書きます。ここが曖昧だと、終了後に相手が別の会社に引き継ぐときに揉めます。円満に終われる契約は、次の紹介につながります。

秘密保持の存続期間

継続の中では、相手の内部情報に深く触れます。契約終了後も一定期間は秘密保持の義務が残る旨を書きます。

同時に、実績としての公開について、どこまで可能かも決めておきます。継続案件は説明できる内容が多いだけに、公開の可否を決めておかないと、長く関わったのに何も語れないという状態になります。

継続案件に潜むリスク

続く関係にはよい面だけでなく、注意すべき構造もあります。

指揮命令が強くなりすぎる

継続的に関わっていると、次第に社員と同じような扱いになっていくことがあります。始業時間を指定される、他の業務を割り振られる、常時の連絡に応じることを求められる。

これが行き過ぎると、実態として雇用に近い状態になります。業務委託の形をとりながら実質的に指揮命令下に置く形は、法的に問題を生じます。自分の側でも、作業の進め方や時間配分は自分で決められる状態を保つよう意識しておきます。

1社への依存

継続案件は安定しますが、比率が上がりすぎると、その1社の方針変更で収入の大半が消えます。予告期間があるとはいえ、30日で次を埋めるのは簡単ではありません。

対策は単純で、継続の枠を複数持つことです。1社に大きく依存するより、中規模の継続を複数持つほうが安定します。この考え方は、収入の設計として職種を問わず有効で、分野ごとの働き方の違いを見ておくにはデザイナーの年収データ|Web・UI/UX・グラフィック分野別【2026年版】のような整理が参考になります。

専属義務と競業避止

契約書に、同業他社の仕事を受けてはならないという条項が入っていることがあります。継続案件では特に持ち込まれやすい条項です。

この制約を受け入れるかどうかは、慎重に判断します。制約の対価が支払われているかどうかが基準です。範囲を限定する交渉も可能で、「同一の商品カテゴリで直接競合する事業者に限る」といった形に絞れば、実務上の支障は小さくなります。

条件の見直しを言い出しにくくなる

長く続くほど、条件を変えてほしいと言いづらくなります。関係が良好であればあるほど、金額の話が持ち出しにくい。

これを避けるために、契約の中に協議の機会を組み込んでおきます。更新の1か月前に条件を協議する、と書かれていれば、その時期に話すのは義務の履行であって交渉の切り出しではありません。仕組みで解決できることを、根性で解決しようとしないことです。

単発から継続へ切り替える提案の出し方

タイミングは納品の直前

提案を出すのは、納品してからではなく、納品が見えてきた時期です。相手の中でこの案件がまだ生きているうちに出します。

納品後に出すと、新しい商談として扱われ、稟議が一から必要になります。案件の進行中であれば、同じ担当者の判断で延長として処理できることがあります。手続きの重さが違います。

提案書に書くこと

書くのは4点です。今回の範囲で扱わなかった課題、公開後に発生する見込みの作業、それらに対応する枠の大きさ、そして契約の形。

金額の話より、相手が社内で説明できる材料を並べることを優先します。担当者は上長に対して、なぜ継続的な支出が必要かを説明しなければなりません。その説明文をこちらが用意する、という感覚で書きます。

断られたときの次善策

継続の枠が取れなくても、そこで終わりにしません。次善策は2つあります。

1つは、期間を限定した形にすることです。「公開後3か月間だけ」であれば、予算の性質が変わり通ることがあります。もう1つは、無償でも接点を残すことです。3か月後に振り返りの場を持つことだけ約束しておく。場が約束されていれば、その時点で改めて提案できます。

UI/UXの領域でどういう関わり方が発注されているのかはUI/UX・アプリデザインのお仕事に整理されており、提案の形を考える材料になります。実装側と組む形での継続を狙う場合は、ソフトウェア作成者の年収・単価相場のような職種別の整理を見ておくと、チームの中での自分の位置づけを説明しやすくなります。

継続の中で自分の仕事を守る運用

契約を整えた後は、日々の運用でその契約を機能させる必要があります。書いてあっても運用しなければ、書いていないのと同じです。

作業の記録を毎月残す

何にどれだけ時間を使ったかを、月ごとに記録します。細かい工数管理は不要で、案件ごとにおおよその時間が分かれば十分です。

この記録は3つの場面で効きます。範囲外の作業が増えていることを示すとき、報酬の見直しを相談するとき、そして相手の経理に何をしたか説明するとき。感覚で「最近忙しい」と言っても交渉になりませんが、記録があれば事実の共有になります。

範囲外の作業は、その場で言葉にする

範囲を超えた依頼が来たとき、黙って引き受けると、それが次からの基準になります。1回受ければ、相手はそれが範囲内だと理解します。

言い方は交渉である必要はありません。「こちらは今回の範囲外にあたりますが、今月の枠に余裕があるので対応します」と伝えるだけで十分です。対応はするが範囲外である、という事実を残しておけば、積み重なったときに協議を持ちかけられます。

定例の場を持つ

月に1回、短くてよいので状況を確認する場を持ちます。この場は、作業の報告のためではなく、次の相談を受けるためのものです。

定例がないと、相手は用事があるときしか連絡しません。用事がないと接点が消え、いつのまにか疎遠になります。定例があれば、大きな話題がない月でも接点が保たれ、雑談の中から次の課題が出てきます。

引き継ぎに備えて記録を残す

継続している間に、相手の担当者が変わることがあります。このとき、これまでの経緯が文書になっていないと、後任は一から状況を把握することになり、契約そのものが見直しの対象になります。

対策は、判断の理由を書いた資料を継続的に更新しておくことです。後任がその資料を読んで納得できれば、契約は続きます。読むものが何もなければ、後任は自分の知っている取引先に替えたくなります。継続案件が終わる原因として、担当者の交代は非常に多いものです。

続く関係を作っている人の共通点

フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から言えば、継続案件を安定して持っている人は、契約の話を早い段階で、事務的に済ませています。関係が温まってから切り出すのではなく、最初の段階で条件を書面にし、それを普通の手続きとして扱っている。

運営者として見てきた限り、条件の話を後回しにする人ほど、続いている案件でも消耗しています。範囲が曖昧なまま関与が広がり、報酬は最初のままという状態が積み上がるからです。逆に、条件が明確な関係は、双方が気持ちよく長く続きます。相手にとっても、いくらで何を頼めるかがはっきりしているほうが頼みやすいのです。

中間業者が入らない直接取引の場合、契約の設計は自分でやることになります。手間はかかりますが、その分だけ手数料が抜かれず、同じ予算でも依頼側はより多くを頼め、受ける側の手取りは厚くなります。手数料0%の構造で効いてくるのは、金額の大小より、条件を自分の実態に合わせて設計できるという点です。

継続案件の準備として何を揃えるべきかの全体像はUI/UXデザインのフリーランスになるには?必要スキルと案件相場にまとめてあります。契約は相手を縛るためのものではなく、双方が安心して長く続けるための道具です。書いてあるから守れるのであって、書いていないことは守れません。法律はあなたの味方ですが、味方が働けるのは、条件が形になっているときだけです。

よくある質問

Q. 継続案件は請負契約と準委任契約のどちらで結ぶべきですか?

業務の実態で決めます。成果物の完成に対して報酬を受けるなら請負、相談対応や定例での関与など業務の遂行に対して受けるなら準委任です。伴走型や保守運用型は準委任が実態に合います。基本契約を準委任にし、制作物が発生する都度に発注書で請負として切り出す二層構造にすると、書類と実態がずれません。

Q. 月額の枠は、使い切らなかった分を繰り越すべきですか?

繰り越すなら期限を切ってください。無期限に積み上がると、後で大きな作業を一度に求められる根拠になります。実務では、翌月までの繰り越しに限る形がよく使われます。繰り越しを認めない場合は、契約時にその旨を明記し、枠を使い切るための相談を月の前半に促す運用にすると不満が出にくくなります。

Q. 継続していた契約を突然打ち切られた場合、何か守りはありますか?

一定期間以上継続している業務委託については、フリーランス保護新法により原則として30日前までの解約予告が義務づけられています。突然の打ち切りは原則として認められません。ただし例外もあるため、通告の時期と契約期間を確認したうえで、金額が大きい場合は弁護士に相談してください。

Q. 同業他社の仕事を受けない条項を求められました。応じるべきですか?

その制約に見合う対価があるかどうかで判断します。応じる場合も、範囲を限定する交渉が可能です。「同一の商品カテゴリで直接競合する事業者に限る」といった形に絞れば、実務上の支障は小さくなります。範囲も期間も定めずに全面的に受け入れると、他の案件を受けられなくなり収入が不安定になります。

Q. 単発から継続への提案は、いつ出すのが効果的ですか?

納品が見えてきた時期です。案件が進行中であれば、同じ担当者の判断で延長として処理できることがあります。納品後に出すと新規の商談として扱われ、稟議が一から必要になります。提案書には、今回扱わなかった課題と公開後に見込まれる作業を並べ、担当者が社内で説明できる材料を用意します。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月18日最終更新:2026年9月14日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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