Webサイト保守・分析の納期に間に合わないとき|伝える順番


この記事のポイント
- ✓Webサイト保守・分析で納期遅れが確定したときに
- ✓どの順番で伝えるかを実務ベースで整理しました
- ✓遅れの兆候を捉える方法
結論から書きます。Webサイト保守・分析の仕事で納期に間に合わないと分かったとき、最初にやるべきは謝罪ではありません。「いつ、何が、どこまで出せるのか」を数字で示すことです。順番を間違えると、信頼の回復に何倍も時間がかかります。
保守や分析の仕事は、制作と違って納期の性質が複雑です。月次レポートのように期日が固定されているものもあれば、障害対応のように発生してから時計が動き出すものもある。さらに、外部要因で止まる場面が多い。CMSのバージョンアップが想定外の挙動を起こした、依頼側から必要な情報が届かない、外部ツールの仕様変更で計測が止まった。こうした遅れは、努力の量とは無関係に発生します。
この記事では、納期遅れが見えた時点から着地までを、時系列に沿って整理します。兆候の捉え方、一次連絡の文面、代替案の作り方、遅れたあとの信頼回復、そして再発を防ぐ工程設計まで。読み終えたときに、明日そのまま使える手順になっているはずです。
納期遅れは「起きるもの」として設計されている
まず、認識を揃えておきます。Webの保守運用における納期遅れは、例外的な事故ではありません。工程の性質上、一定の確率で発生します。この前提を持っていないと、遅れた瞬間に思考が止まり、連絡が遅れ、被害が拡大します。
遅れの原因は、実は3つに集約される
制作会社側の資料でも、保守や制作の遅延要因はおおむね同じ枠に収まります。第1に、依頼側からの素材や確認の遅れ。第2に、仕様の追加と変更。第3に、技術的な想定外です。この3つで大半を説明できます。
順番に見ていきます。素材と確認の遅れは、保守案件で最も頻繁に起きます。月次レポートに載せるキャンペーンの実施状況を依頼側に確認したいのに、担当者が出張中で返事が来ない。更新用のテキストが届かない。この待ち時間は、受け手の作業時間ではなく相手の都合で決まるため、こちらでは短縮できません。
仕様の追加と変更は、分析が絡むと特に増えます。「レポートに競合比較も入れてほしい」「セグメントを分けて見たい」という追加は、依頼側からすると小さな一言ですが、実作業では計測の設計から見直す必要が出ることがあります。ここで「はい」と即答してしまい、あとで工数が足りなくなるパターンは非常に多い。
技術的な想定外は、保守の宿命です。プラグインを更新したら別のプラグインと競合した、PHPのバージョンを上げたら一部の機能が動かなくなった、外部APIの仕様が予告なく変わった。こうした事象は、着手するまで分かりません。だからこそ、更新作業には検証の時間を確保しておく必要があります。
保守と制作では、遅れの意味が違う
制作の遅れは「公開日がずれる」という一点に集約されます。ところが保守の遅れは、種類によって影響がまったく違います。月次レポートが数日遅れることと、サイトが落ちたまま復旧が遅れることは、同じ「遅れ」でも重大性が桁違いです。
この違いを依頼側と共有していないと、レポートの遅延で過剰に責められたり、逆に障害対応の遅れを軽く扱われたりします。遅れを報告するときは、それがどの種類の遅れで、どの程度の影響があるのかを、こちらから明示してください。相手の判断材料を先に渡すということです。
保守運用がなぜ専門性を要求される仕事なのかについては、制作会社側からも次のように説明されています。
Webサイト保守を制作会社に依頼するメリットとして、専門知識と技術力に加え、豊富な経験に基づいたクオリティの高い保守サービスが受けられることが挙げられます。制作会社ではサーバー環境・Webサイトの構造やプログラミング、CMSの設定など、専門的な領域を熟知しています。Webサイト運用における現状の課題に沿って適切な対策を講じ、継続的にサポートしてもらえます。 出典: upgrade.co.jp
裏を返せば、依頼側は「専門家に任せているから安心」という前提で発注しています。その前提があるからこそ、遅れの連絡が遅いと「専門家なのに管理できていない」という評価につながる。連絡の速さは、技術力とは別の軸で評価されているということです。
正直なところ、遅れそのものより連絡が問題になっている
保守契約の解約理由を聞くと、作業品質そのものより「連絡が来ない」「聞かないと状況が分からない」という不満が上位に来る傾向があります。正直なところ、これはどうかと思う話ではありますが、受け手側にも言い分はあります。状況が確定していない段階で報告すると、かえって混乱させると考えてしまう。
ただ、この配慮はほぼ確実に裏目に出ます。依頼側にとって最も不安なのは、悪い知らせではなく、知らせがないことです。確定していない情報でも、「現時点で分かっていること」「まだ分かっていないこと」「次にいつ続報を出すか」の3つを添えれば、報告として成立します。
遅れの兆候を捉える
納期遅れの対応で最も差がつくのは、気づくタイミングです。締切の前日に気づくのと、3日前に気づくのとでは、打てる手の数がまったく違います。
締切から逆算した中間チェックポイントを置く
月次レポートのように期日が決まっている作業では、締切の当日ではなく、その手前に自分用のチェックポイントを置いてください。データの抽出が終わっている日、考察の下書きができている日、依頼側への確認事項を投げ終わっている日。この3つを日付として決めておくと、遅れが「締切当日の事故」ではなく「中間点の未達」として早く可視化されます。
実務上、最も効くのは「依頼側への確認事項を投げる締切」です。相手からの返答待ちが遅延の主要因である以上、投げるのが遅ければ、その時点で遅れが確定します。逆に言えば、確認事項さえ早く投げておけば、返事が遅れても「こちらは期日通りに動いている」という記録が残ります。
待ち時間を作業時間と分けて記録する
遅れの原因を説明するとき、感覚で語ると水掛け論になります。「確認をお願いしてから5日間、ご返答をいただけていません」と事実として書けるかどうかで、会話の質が変わります。
そのために、依頼を投げた日時と返答が来た日時を記録しておいてください。チャットツールを使っているなら履歴がそのまま証拠になりますが、口頭や電話で確認したものは記録が残りません。口頭でやりとりした内容は、その日のうちに「本日ご相談した件を整理しました」という形でテキストに落として送る。この習慣が、遅れの原因を説明するときに効きます。
技術的な作業には検証枠を先に確保する
CMSやプラグインの更新作業は、「更新するだけ」の時間で見積もると必ず溢れます。更新後に表示崩れがないか、フォームが動くか、決済が通るかを確認する時間まで含めて枠を取る。そして、問題が起きたときに切り戻す時間も別に見ておく。
現実的な組み方は、更新作業の実時間に対して、検証と切り戻しの余裕を同程度確保することです。この余裕を見込んでいない予定は、何かが起きた瞬間に破綻します。余裕枠を持っておけば、想定外が起きても納期を守れる可能性が残る。守れなかったとしても、「検証で問題が見つかったため公開を止めています」という説明ができます。これは遅延ではなく判断として受け取られます。
間に合わないと分かった瞬間にやること
ここからが本題です。遅れが確定的になった時点で、何をどの順番でやるか。
第1に、着地点を仮でよいので固定する
連絡する前に、まず自分の中で「いつまでに、何を、どこまで出せるか」を決めてください。ここが曖昧なまま連絡すると、相手からの最初の質問「で、いつになるんですか」に答えられません。答えられないと、相手は状況を把握できず、社内への報告もできない。
決めるべきは3点です。全体の完了見込み日。その日より前に部分的に出せるものがあるか。そして、その見込みが外れる要因は何か。3つ目を明示しておくことが重要で、「依頼側からの確認が返ってくればこの日、返ってこなければさらに延びる」と条件付きで示せば、相手も自分が動くべきことを理解します。
第2に、連絡する。謝罪より先に事実を書く
連絡の順番には型があります。結論、事実、影響、代替案、依頼、謝罪。この順で書いてください。
謝罪を先頭に置いた文章は、読み手が「何が起きたのか」を掴むまでに時間がかかります。相手が最初に知りたいのは、あなたの反省ではなく、自分の予定がどう変わるかです。まず結論を置き、判断に必要な情報を渡し、その上で謝罪する。この順番のほうが、誠実さが伝わります。
文面の例を挙げます。
「月次レポートの提出日について、ご連絡です。当初お約束していた期日に間に合わず、提出は3営業日後になる見込みです。理由は、先週お送りしたキャンペーン実施状況の確認事項について、まだご回答をいただけておらず、該当セクションの記述を確定できないためです。影響として、次回の定例会でご報告予定だった施策の効果検証が、暫定値での報告になります。対応として、確認事項に関わらない部分については明日中に先行してお送りし、確認いただいた時点で該当セクションを追記した完成版をお送りします。お手数ですが、確認事項へのご回答を明後日までにいただけますでしょうか。期日を守れず申し訳ありません。」
この文面には、責任転嫁の匂いがありません。相手の返答が遅れているという事実は書いていますが、それを「相手のせい」とは書かず、「そのため確定できない」という状態の説明にとどめています。この書き分けが、遅れの連絡で最も難しく、最も重要な部分です。
第3に、伝える相手を間違えない
窓口の担当者にだけ伝えて済ませるか、その上の決裁者にも共有するか。この判断を誤ると、あとで「聞いていない」という話になります。
原則は、窓口の担当者に伝え、その担当者が社内で説明しやすい形に整えることです。担当者を飛ばして上位者に直接連絡すると、担当者の立場を壊します。ただし、影響が大きい遅れ、たとえば公開予定日がずれる、キャンペーンの開始に間に合わないといったケースでは、担当者に「上長にも共有していただけますか。必要であれば私からご説明します」と添えてください。
伝え方として有効なのは、担当者がそのまま転送できる文面にしておくことです。社内向けに書き直す手間を相手にかけさせないだけで、印象がかなり変わります。
第4に、続報の予定を約束する
一次連絡で最も忘れられがちなのが、次の連絡をいつするかの約束です。「進捗があり次第ご連絡します」は、相手にとっては「いつ来るか分からない」と同義です。
「明日の17時までに、現時点の状況をあらためてご連絡します」と時刻まで書く。そして、進捗がなくても約束した時刻に連絡する。進捗がないことを報告するのは気が重いものですが、約束を守ったという事実は残ります。遅延対応の局面では、この積み重ねだけが信頼を支えます。
代替案の作り方
遅れの連絡で差がつくのは、代替案の質です。ただ謝るだけの連絡と、選択肢を添えた連絡では、受け取られ方がまったく違います。
分割納品を第一候補にする
保守や分析の成果物は、多くの場合分割できます。月次レポートなら、数値のサマリーだけ先に出して、考察と提案を後日出す。更新作業なら、影響の小さいページから順に反映する。この分割ができるかどうかを、まず検討してください。
分割を提案するときは、先に出す分の価値を明確にしてください。「数値部分だけ先にお送りします」ではなく、「社内会議で数値だけ必要とのことでしたので、そこだけ先にお送りします。考察は会議後で問題ないという理解でよろしいでしょうか」と書く。相手の用途に合わせて分けている、という説明があるだけで、これは妥協ではなく調整として受け取られます。
優先度の付け替えを提案する
複数の作業を抱えていて全部は間に合わない場合、どれを優先するかを相手に決めてもらうのも有効です。「AとBを今週中にとお約束していましたが、両方は難しい状況です。どちらを優先すべきかご指示いただけますか」と聞く。
この聞き方には2つの効果があります。相手が優先度を決めることで、後回しになった作業について合意が形成される。そして、相手が「両方すぐに」と答えられない場面を作ることで、業務量の実態を共有できます。ただし、この手は乱発できません。毎回優先度の判断を求めていると、単に管理能力がないと見なされます。
外部要因は、事実と対処をセットで書く
外部ツールの仕様変更やサーバー側の障害など、明らかに自分の責任外の要因で遅れることもあります。この場合でも、「こちらの責任ではありません」という書き方はしないでください。事実として何が起きたかを書き、それに対して何をしたかを書く。
たとえば「解析ツール側の仕様変更により、これまで取得できていた項目が取得できなくなりました。代替の取得方法を検証中で、明日中に見込みをご連絡します。今月分については、影響を受けない項目のみでレポートを構成する案と、代替取得の目処が立つまで提出を延ばす案の2つが考えられます」と書く。責任の所在を主張しなくても、事実を並べれば読み手は理解します。
遅れたあとの信頼回復
一度遅れた案件は、その後の数か月が勝負です。ここでの動き方で、契約が続くかどうかが決まります。
次の期日は必ず守れる幅で置く
遅れを取り戻そうとして、次の期日を無理に前倒しする人がいます。これは最悪の選択です。2回続けて遅れた時点で、相手はあなたの見積もりを信用しなくなります。
次の期日は、確実に守れる幅で設定してください。相手から「もっと早くできませんか」と言われても、確実性を優先すると説明する。「早めに出して品質が落ちるより、確実な日程でお出しします」という説明は、遅延の直後であれば受け入れられます。そして、その期日より早く出せたなら、それは加点になります。
報告の頻度を一時的に上げる
遅延のあとしばらくは、報告の頻度を上げてください。週次で状況を1行送るだけでも構いません。相手が最も不安なのは「またいつ遅れるか分からない」という状態であり、頻度の高い報告はその不安を直接消します。
頻度を上げる期間は、おおむね次の納品が2回続けて期日通りに終わるまでで十分です。それ以降も高頻度を続けると、こちらの負担になり、結局続かなくなります。続かない習慣は、途切れたときに逆効果になるので、期限を決めて実行してください。
原因の説明を、対策とセットで一度だけ行う
遅延の原因について、繰り返し説明する必要はありません。ただ、一度はきちんと説明してください。何が原因で、それに対して工程をどう変えたか。この説明があると、相手は「同じことは起きない」と判断できます。
説明の形式は、長文である必要はありません。「今回の遅延は、確認事項の投げ出しが遅かったことが原因でした。今後は、レポート作成の着手時点で確認事項を洗い出し、締切の1週間前までにお送りします」といった短い記述で十分です。長い反省文は、読む側の負担になるだけで、対策の実効性を示しません。
再発を防ぐ工程の作り方
対症療法だけでは、遅延は繰り返します。工程そのものを変える必要があります。
契約段階で、待ち時間の扱いを決めておく
依頼側の確認待ちで遅れるケースが多いなら、その扱いを契約や運用ルールに書いてください。「確認依頼から3営業日以内にご回答がない場合、納品予定日はその日数分後ろにずれます」といったルールです。
このルールは、相手を責めるためのものではありません。遅れが発生したときに、責任の所在を議論せずに済ませるための装置です。ルールがあれば、「ルール通りに日程を調整します」と事務的に処理できる。ルールがなければ、毎回どちらが悪いかの話になります。
このあたりの取り決めは、Web関連の業務範囲を整理するときに一緒に決めておくと定着しやすい。保守や分析の実務がどういう作業の集合なのかはWebサイトコンサル・保守・分析のお仕事にまとまっており、業務ごとに待ち時間が発生する箇所を洗い出す材料になります。
定型作業はテンプレート化して時間を短縮する
月次レポートのように毎月繰り返す作業は、テンプレート化の効果が非常に大きい。データの抽出手順、グラフの形式、記述の骨組みを固定しておけば、作業時間は回を追うごとに減ります。減った時間が、そのまま遅延に対する余裕になります。
テンプレート化で見落とされがちなのは、文章の型です。数値の説明、前月との比較、原因の推測、次月の施策提案。この4つの型を用意しておくと、書き出しで止まる時間がなくなります。分析の仕事で時間を食うのは、実は集計より文章化であることが多い。レポート作成の実務がどう組み立てられているかはマーケ戦略・分析・レポート作成のお仕事が参考になります。
書類作成の基本的な作法を体系的に押さえたい場合は、ビジネス文書検定のような資格の出題範囲が使えます。報告書や依頼文の型を学ぶ内容が含まれており、遅延連絡のような気を使う文書を書くときの土台になります。
抱える案件数の上限を決める
遅延の根本原因が「案件を取りすぎている」であるケースは、実務上かなり多い。この場合、工程の工夫では解決しません。上限を決めて、それ以上は受けないという判断が必要です。
上限の決め方は、月間の稼働可能時間から逆算します。定型作業に必要な時間を足し上げ、突発対応のための余裕を差し引く。残りが新規に使える時間です。この計算をしていないと、感覚で受けてしまい、月末に破綻します。
体制の選択肢を比べておく
納期を守れるかどうかは、個人の努力だけでなく、どういう体制で受けているかにも左右されます。ここは依頼側にも説明できるようにしておくと、遅延の交渉が楽になります。
個人で受ける場合の利点と限界
個人が保守を受ける利点は、意思決定が速いことです。判断を仰ぐ相手がいないため、障害の一次対応から復旧の判断まで一人で完結できます。依頼側から見ても、窓口と作業者が同一なので、伝言による情報の劣化が起きません。細かい調整が多い案件ほど、この速さは効きます。
限界は、稼働が一人分しかないことです。体調を崩した日、別案件の障害が重なった日には、どうしても止まります。この構造的なリスクを隠したまま契約すると、実際に止まったときに「なぜ代わりの人がいないのか」という話になる。むしろ契約前に「一人体制であること」「そのため時間外は自動監視と通知で受け、人の対応は営業時間内であること」を説明しておくほうが安全です。説明しておけば、それは想定内の事象になります。
制作会社に任せる場合との違い
制作会社に保守を任せる形は、交代要員がいる点が最大の利点です。担当者が休んでも別の人が対応でき、夜間当番を組める会社もあります。一方で、窓口と実作業者が分かれるため、細かい要望が現場に届くまでに時間がかかることがあります。依頼から着手までのリードタイムは、個人より長くなる傾向があります。
費用の考え方も違います。会社に依頼する場合は、待機している人員の人件費が月額に含まれる構造になります。個人の場合は、待機を含めない前提で組めるため、同じ作業範囲であれば費用は抑えやすい。つまり、費用と即応性のどちらを優先するかで選択が変わるということです。この比較を依頼側に示せると、「なぜ時間外対応が別料金なのか」を説明しやすくなります。
依頼側が保守の発注先を選ぶときに何を見ているのかも、押さえておく価値があります。実務側の整理では、次のような観点が挙げられています。
・Webサイトの保守でどの程度の実績があるか・サポート体制 (24時間対応・夜間や土日対応 など)・対応可能なCMS (WordPress・EC-CUBEなど)・得意とするプログラミング言語 (JavaScript・PHPなど)・担当者の保有資格や実務経験年数・セキュリティ全般に関する専門知識と技術力・プライバシーマーク認証取得の有無 (機密情報や個人情報を取り扱う場合は特に重要) 出典: upgrade.co.jp
サポート体制が選定項目に入っているということは、依頼側は最初から「止まったときにどう動くか」を見ているということです。だからこそ、契約時に対応時間を明示しておくことは、条件を狭める行為ではなく、選ばれるための情報提供になります。
監視と通知の仕組みを先に入れておく
体制の弱さを補う方法として最も効果が高いのは、人ではなく仕組みに検知させることです。サーバーの死活監視、証明書の有効期限の通知、バックアップ取得の成否通知。これらを自動化しておくと、異常に気づくのが人の目視より確実に早くなります。
ネットワークやサーバーの基礎を体系的に押さえておくと、監視の設計精度が上がります。CCNA(シスコ技術者認定)の出題範囲には、ネットワークの基礎と障害切り分けの考え方が含まれており、どこを監視すれば異常を早く捉えられるかを判断する土台になります。監視項目を適切に選べていれば、遅延の芽を締切の何日も前に潰せます。
稼働の可視化を依頼側と共有する
遅延の交渉で強いのは、稼働状況を普段から共有している人です。月次で「今月はこの作業にどれだけ時間を使い、突発対応がどれだけ発生したか」を1行でも書いておく。これがあると、繁忙期に遅れが出たときに「先月から突発対応が増えている」という文脈で説明できます。
共有していない状態でいきなり「忙しくて間に合いません」と言うと、単なる言い訳に聞こえます。同じ内容でも、事前に稼働の推移を共有していれば、状況の報告になる。この差は大きい。可視化は、遅れたときのための保険として機能します。
運営者から見た、遅れる人と遅れない人の違い
フリーランスや在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、納期を守れる人と守れない人の差は、作業速度ではありません。手前の設計にどれだけ時間を使っているかです。遅れない人は、着手する前に確認事項を洗い出し、相手に投げ、返答を待つ間に別の作業を進めています。遅れる人は、順番に作業を進めていき、最後に確認が必要なことに気づく。
運営者として見てきた限りでは、長く同じ相手と契約が続いている人ほど、悪い知らせを早く出しています。遅れそうだという段階で、まだ確定していないのに連絡している。この「早すぎるかもしれない連絡」を続けている人は、実際に遅れたときの衝撃が小さく、関係が壊れません。逆に、確定するまで黙っている人は、確定した瞬間に相手を驚かせることになります。
もうひとつ、構造的な話をしておきます。仲介手数料が乗る取引では、同じ予算でも受け手の手取りが薄くなります。手取りが薄いと件数で埋めるしかなくなり、件数が増えれば管理が破綻して納期が崩れる。この連鎖は、現場で何度も見てきました。中間マージンの乗らない直接の取引で手数料0%が意味を持つのは、単価が高く見えるからではありません。同じ収入を少ない件数で成立させられるからです。件数が減れば、1件あたりに検証と余裕の時間を確保でき、結果として納期が守られる。納期管理は、精神論ではなく案件数の管理です。
自分の稼働と収入の水準が適正かどうかを確認したいときは、職業分類ごとの数字が参考になります。技術寄りの仕事ならソフトウェア作成者の年収・単価相場を見て、自分の稼働時間に対して無理のない案件数になっているかを点検してください。件数を減らす判断は、収入を減らす判断ではなく、続けられる状態を作る判断です。
分析を主軸にして仕事を組み立てている人の実際の動き方は、上級ウェブ解析士でコンサルティング独立|分析のプロとして稼ぐ方法にまとまっています。分析の仕事は成果が出るまでに時間がかかるため、期日の設計が特に重要になります。どのタイミングで何を出すかを決めておくと、遅延そのものが起きにくくなります。
最後にひとつだけ。納期に間に合わないと分かったときに一番やってはいけないのは、期日の当日まで黙っていることです。相手が困るのは遅れることではなく、遅れると知る時期が遅いことです。分かった瞬間に伝える。順番は、結論、事実、影響、代替案、依頼、謝罪。これだけ覚えておけば、多くの場面は乗り切れます。
よくある質問
Q. 納期に遅れそうだと分かったのは何日前に伝えるべきですか?
日数の基準ではなく、遅れる可能性を認識した時点で伝えてください。確定していなくても構いません。「現時点で間に合わない可能性があります」「明日の時点であらためて見込みをご連絡します」という形で、分かっていることと分かっていないことを分けて書けば報告として成立します。確定を待って黙っている時間が、最も損失を生みます。
Q. 遅れの原因が依頼側の確認待ちの場合、それを伝えてもよいですか?
事実として書くのは問題ありませんが、責任の所在を主張する書き方は避けてください。「ご回答をいただけていないため、該当箇所を確定できない状態です」と状態の説明にとどめ、そのうえで先行して出せる部分の提案を添えます。今後は確認依頼の期限と、回答が遅れた場合の日程調整ルールを事前に決めておくと繰り返しません。
Q. 一度遅れた案件で、次の期日はどう設定すればよいですか?
確実に守れる幅で設定してください。遅れを取り戻そうとして前倒しすると、2回続けて遅れた場合に見積もり自体が信用されなくなります。相手から前倒しを求められても、確実性を優先する理由を説明すれば遅延直後は受け入れられます。設定した期日より早く提出できれば、それは加点として働きます。
Q. 障害対応とレポート提出の遅れは同じ扱いでよいですか?
影響がまったく違うため、分けて扱ってください。サイト停止や情報漏えいの疑いがある障害は最優先で、即時の一次連絡が必要です。レポートの数日遅れは、事前連絡と代替案があれば調整可能な範囲に収まります。契約時に緊急度の段階を定義しておくと、報告の温度感を相手と揃えられます。
Q. 遅延が続く場合、何を見直せばよいですか?
まず抱えている案件数を疑ってください。工程の工夫で吸収できる遅れには限界があり、稼働時間を超えた受注が原因であるケースが多く見られます。月間の稼働可能時間から定型作業と突発対応の余裕を差し引き、新規に使える時間を計算してください。上限を決めて受注を制限する判断が、結果的に継続率を上げます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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