話し相手・愚痴聞きのポートフォリオの作り方|見る人が知りたいこと

長谷川 奈津
長谷川 奈津
話し相手・愚痴聞きのポートフォリオの作り方|見る人が知りたいこと

この記事のポイント

  • ✓話し相手・愚痴聞きのポートフォリオの作り方を
  • ✓守秘義務と規約の制約を前提に整理します
  • ✓見る人が確認している項目

話し相手・愚痴聞きのポートフォリオを作ろうとして、手が止まる人が多くいます。デザイナーなら制作物、ライターなら記事、エンジニアなら成果物を並べれば済む。ところがこの仕事は、やったことを一切外に出せません。これ、知らない人が本当に多いのですが、出せないのは制約であって、ポートフォリオが作れないという意味ではありません。

つまりこういうことです。この仕事のポートフォリオは、過去の作品集ではなく、これから何をするかの設計図です。何を聞き、どう返し、どこで止め、どう記録するか。それを具体的に示したものが、依頼を出す側にとっての判断材料になります。この記事では、見る人が実際に確認している項目から逆算して、作り方を手順に分解します。

ポートフォリオという言葉のずれを直す

まず言葉の定義を揃えます。ここがずれたまま作り始めると、いつまでも「載せるものがない」状態から抜け出せません。

この仕事では実績の陳列ができない

話し相手・愚痴聞きの依頼では、相談内容は当然として、誰から依頼を受けたか、いつ何回対応したか、相談者がどう変わったかまで、すべて外に出せません。書面で秘密保持の契約を交わしていない場合でも同じです。役務の性質上、相談内容を第三者に開示しないことは黙示的に合意されていると解されるのが通常で、実務もその前提で回っています。つまり、契約書がないから守秘義務もない、という理屈は通りません。

さらに、プラットフォームを使っている場合は運営の規約が二重にかかります。利用者とのやり取りの転載、外部連絡先の交換、他サービスへの誘導が禁止されているのが一般的です。相談内容を伏せたつもりで評価コメントの画面を貼っただけでも、転載禁止に触れることがあります。※この判断に迷う場合は、使っているサービスの利用規約の該当条項を確認してください。

出せないのは相談者に属する情報だけ

ここが分岐点です。出せないのは「相談者に属する情報」であって、「自分に属する情報」ではありません。自分が何をするか、どんな手順で対応するか、どこまで受けてどこで止めるか、どう記録して、いつ消すか。これらはすべて自分の情報なので、いくらでも書けます。

この線引きを一度言語化しておくと、載せられる材料が一気に増えます。実際、ポートフォリオが空白のまま止まっている人の多くは「全部書けない」と丸ごと判断していて、この区別をしていません。書けない範囲を正確に説明できること自体が、仕事を理解している証拠になります。

依頼者は過去ではなく未来を見ている

そもそも、依頼を出す人が知りたいのは、この人が過去に誰の何を聞いたかではありません。自分が相談したときに、どう扱われるかです。過去の実績はその予測材料の1つに過ぎず、対応の型が具体的に示されていれば、実績がなくても予測はできます。

だから、この仕事のポートフォリオは未来形で書きます。「こういう対応をしてきました」ではなく「こういう場面ではこう対応します」。この形にすると、守秘義務にも規約にも一切触れずに、依頼者が必要とする情報を全部渡せます。作品集を作れないことは、実は不利ではありません。作品集を並べる仕事より、判断に必要な情報を直接書ける分だけ、伝達の効率は高くなります。

見る人が確認している6つの項目

依頼者がポートフォリオを開いてから離脱するまでの数十秒で、確認している項目は決まっています。優先度の高い順に6つです。

自分の相談を受けてもらえるか

最初に見るのは、対応領域です。職場の人間関係、家族との関係、育児の孤独、介護の疲れ、進路の迷い、体調への不安。自分の状況と重なる言葉があるかどうかを探しています。ここで重ならなければ、それ以上は読みません。

書き方は、単語の羅列にしないことです。「人間関係」ではなく「異動のあとに職場になじめないという話」まで具体化します。抽象語は範囲が広いように見えて、実際には誰の状況にも刺さりません。逆に、具体的な状況を5つか6つ並べたほうが、該当する人には強く届きます。範囲が狭くなることを恐れる必要はありません。狭く書いた領域に該当した人は、そのまま依頼まで進みます。

いつ話せるか

次が稼働の形です。曜日、時間帯、1回の目安の長さ、対応形式。相談したい人は自分の生活の中で相談できる時間を探しているので、ここが噛み合わなければ候補から外れます。

「随時対応します」という書き方は、親切なようで情報がゼロです。読んだ人は結局こちらに問い合わせて確認しなければならず、その手間で離脱します。狭くてよいので固定した枠を書くほうが、問い合わせも依頼も増えます。稼働枠が書けるかどうかは、稼働の設計が済んでいるかどうかの表れでもあり、読む側はそこも見ています。

何をしてもらえて、何はしてもらえないか

対応する範囲と、しない範囲の両方です。多くの人は受ける範囲だけを書きますが、依頼者にとってはしない範囲のほうが重要な場面があります。助言が欲しいのか、聞いてほしいだけなのか。前者を求めている人が後者専門の相手に依頼すると、双方が不幸になります。

医療的な判断、法律的な判断、金銭に関わる助言は行わないこと。危険が伴う状況では対応を止めて公的な窓口を案内すること。これを明記しておくのは、依頼者の期待値を整える意味と、自分を守る意味の両方があります。※実際に判断が必要な事案では、それぞれの専門家に相談するよう案内してください。

話しやすい相手か

ここで初めて人柄の話になります。文章の温度、言葉の選び方、そして後述する応答サンプル。丁寧すぎる文章はかえって話しにくさを与えます。敬語の密度が高いほど信頼されるわけではありません。

「親身に寄り添います」「どんなお話でも受け止めます」といった表現は、何も伝えていません。同じことを伝えたいなら、応答サンプルで見せます。姿勢は宣言ではなく、具体的なやり取りの中にしか現れません。文章全体を読み返して、主張している文と示している文の比率を確認してください。示している文のほうが多い状態が理想です。

話した内容がどう扱われるか

見落とされがちですが、依頼者が最も不安に思う項目の1つです。話した内容が記録に残るのか、残るならどこに保管され、いつ消えるのか。誰かに共有されることはあるのか。

ここを書いているポートフォリオは非常に少ないため、書くだけで差がつきます。記録するのは呼び名と話題の分類だけであること、具体的な発言や固有名詞は残さないこと、端末での管理方法、破棄の時期。この4点で十分です。文書としての書き方に自信がなければ、ビジネス文書検定で扱われる記載の基準が土台になります。

トラブルになったときにどうなるか

最後に、途中で終了する場合の条件、キャンセルの扱い、報酬の支払い方法です。単発なら軽く済みますが、継続を想定する場合は必須になります。

フリーランスとして仕事を受ける場合、発注する側には取引条件を明示する義務や、報酬の支払期日に関する義務が課されています。つまり、条件を先に確認するのは失礼ではなく、双方にとって正常な手続きです。制度の内容はe-Govで公開されている法令情報から確認できます。ポートフォリオに条件が書いてあると、この確認をこちらから切り出す必要がなくなり、最初のやり取りが軽くなります。

応答サンプルが唯一の作品になる

作品集が作れないこの仕事で、唯一の作品にあたるのが応答サンプルです。架空の相談設定を自分で作り、それに対する自分の応答を書いたもの。実在の相談を一切使わないので、守秘義務にも規約にも触れません。

3つの場面を用意する

用意するのは3パターンです。1つ目は、相談者が状況を整理できないまま話し始める場面。2つ目は、アドバイスは不要で聞いてほしいだけだと明言される場面。3つ目は、話が途中で止まって沈黙が続く場面。この3つは実際の稼働で必ず起きます。

この3つを選ぶ理由は、依頼者が不安に思う場面と重なるからです。うまく話せないかもしれない、説教されるかもしれない、沈黙が気まずいかもしれない。この不安に対して、こちらがどう振る舞うかを先に見せることになります。不安を消すのが目的なので、うまく対応できている場面ではなく、難しい場面を選ぶのが正解です。

応答だけでなく理由を書く

サンプルの構成は、相談者の発言を2、3行、こちらの応答を3行から5行、その応答を選んだ理由を2行。理由が要です。応答だけだと「感じのいい人」で終わりますが、理由まで書くと「意図を持って聞いている人」に変わります。

理由の書き方は、技法の説明にしないことです。「傾聴の技法における反射を用いています」ではなく、「相手の言葉を言い換えずに返すことで、自分の感覚が他人の言葉に置き換えられる感じを避けています」と書きます。専門用語で説明すると、依頼者ではなく同業者に向けた文章になります。読む相手は相談したい人であって、同業者ではありません。

実在の相談を加工して使わない

ここは絶対に守ってください。実在の相談を匿名化して脚色し、事例として載せるのは守秘義務違反のリスクがあります。加工したつもりでも、相談者本人が読めば分かります。本人が「これは自分のことだ」と気づく可能性が少しでもあるなら、載せません。

安全なのは、ゼロから架空の設定を作ることです。年齢も職業も設定しない、あるいは実際の相談者層とは違う設定にする。これなら誰の情報にも当たりません。手間は増えますが、後から問題になる余地がなくなります。この判断を面倒がって加工物を載せた結果、相談者との信頼が壊れる事例は実際に起きています。

サンプルは寝かせてから直す

書いた直後は自分の応答が良く見えます。日を置いて読み返すと、相手の話を先回りして要約している箇所、助言を足している箇所が見つかります。そこを削るのが推敲です。3日ほど置いてから読み返すことをおすすめします。

削る基準は明確です。相談者の発言を言い換えている箇所、こちらの解釈を挟んでいる箇所、次の展開を促している箇所。この3つを削ると、応答は短くなりますが、傾聴の姿勢がはっきり出ます。長い応答は親切に見えて、実際には相手の時間を奪っています。

掲載媒体ごとに書き分ける

同じ材料でも、載せる場所で使える範囲が変わります。1つの文章を全部にコピーすると、どこかで規約違反になります。

スキルシェア型のサービスでは、提供できる形式そのものが制限されている場合があります。実際に出品している人が次のように書いています。

スキルシャアサービスの規約に従ってサービスを提供していかなければいけないので、できることが限られています。例えば、ココナラでは、LINEやZoomなど、他のコミュニケーションツールを用いることや、対面でのやり取りは禁止となっています。 出典: note.com

つまり、そのサービスのプロフィール欄には外部の連絡先や他サービスへの誘導を書けません。ここに置くのは、対応領域、稼働の形、断る基準、応答サンプルです。

自分のサイトやブログには外部リンクの制約はありませんが、プラットフォーム上のやり取りや評価を持ち出すことはできません。ここには応答サンプルを厚く置き、記録の扱い方針を全文で載せます。SNSは文字数の制約があるため、対応領域と稼働時間帯の2点に絞ります。

作る順番は、最も制約の厳しい媒体に合わせた版をまず1つ作り、そこから制約の緩い場所向けに足していく形にします。逆の順番だと、緩い版から禁止事項を探して削る作業になり、見落としが出ます。更新のときも同じ順番で回すと、媒体ごとに内容が食い違う事故を防げます。

法的に踏んではいけない表現

ここは法務の観点から、はっきり書いておきます。ポートフォリオの表現でよく問題になる箇所が4つあります。

第一に、資格の表現です。持っていない資格を持っているように書くのは論外ですが、民間資格を国家資格と誤認させる書き方も避けます。資格名は正式名称で、認定団体まで書くのが安全です。カウンセラーという語自体は名称独占ではありませんが、公認心理師は名称独占の資格なので、資格を持たずに名乗ることはできません。

第二に、効果の表現です。「悩みが解決します」「気持ちが楽になります」といった書き方は、結果を約束したことになります。この仕事で約束できるのは、聞く時間を確保することだけです。結果を書きたい場合は断定を避け、何をするかの記述に置き換えます。

第三に、医療的な表現です。「うつの改善に」「不安の治療として」といった表現は、医療行為との誤認を招きます。診断名を用いた効果の記述は行わないでください。※体調に関わる相談を受ける可能性がある以上、この線引きは必ず守ってください。

第四に、比較の表現です。「他のサービスより丁寧」「業界で最も安い」といった書き方は、根拠を示せない限り不当な表示にあたる可能性があります。他と比べる書き方をせず、自分が何をするかだけを書けば、この問題は起きません。表示に関する考え方は公正取引委員会が公開している資料が参考になります。

顔写真・実名・自己開示をどこまで出すか

匿名性の高い仕事なので、身元をどこまで出すかは判断が必要です。結論から言うと、実名や顔写真を出さなくてもポートフォリオは成立します。

依頼者が求めているのは身元の保証ではなく、対応が予測できることです。活動名で通していても、断る基準、記録の扱い、応答サンプルが具体的であれば安心して依頼できます。逆に、実名と顔写真を出していても、対応の型が書かれていなければ判断材料になりません。身元を出す代わりに方針を出す。これが匿名性の高い仕事での信頼の作り方です。

自己開示の量にも注意します。自分の経験を書くことで共感を得ようとすると、読んだ人は「この人も話を聞いてほしい人なのかもしれない」と受け取ります。経歴を書く場合は、対応にどう活きるかまでを1行で添えて、感情の記述は入れません。

会社に勤めながら受ける場合は、勤務先が推測できる記述を避けます。業種、勤務地域、稼働できない時間帯の書き方から、勤務形態が読めてしまうことがあります。稼働枠は「対応できる時間」だけを書き、なぜその時間なのかは書かないのが安全です。

更新の運用と、やらなくてよいこと

ポートフォリオは作って終わりではありません。ただし、頻繁に作り直す必要もありません。

更新するのは3つです。対応領域、稼働枠、断る基準。継続の依頼が入って枠が埋まってきたら、公開している枠を実態に合わせます。埋まった枠を出したままだと、問い合わせに断りを入れることになり、双方の時間が無駄になります。月に一度、全媒体を見て回るくらいで足ります。

やらなくてよいことも決めておきます。まず、応答サンプルを増やし続けること。3つで十分で、増やすほど読まれなくなります。次に、他の出品者を意識した書き換え。比較を意識すると表現が過剰になり、法的なリスクが上がります。そして、無料で受けて評価を集めること。無償を前提とした関係は継続の依頼に繋がりにくく、時間の使い方として効率が悪くなります。

事業として長く提供している側の案内を見ると、伝える順番が非常に整理されています。

電話による愚痴聞きサービス『話し相手のスマイル』では、愚痴やお悩みなどの電話相談を受け付けております。ちょっと誰かに聞いて欲しい愚痴や、些細な事や一人で抱えきれないお悩みは『話し相手のスマイル』にお話しください。 出典: smile-soudan.com

誰の、どんな場面の相談を、どういう形式で受けるのかが冒頭に置かれています。「些細な事」でよいと明示している点も重要で、読む側の心理的な障壁を下げています。個人のポートフォリオでも構成の原則は同じです。人柄の話は後で、条件と受け入れ範囲の話が先です。

副業として始める人が押さえるべき点

副業でこの仕事を受ける場合、ポートフォリオに固有の注意が加わります。稼働枠を本業の繁忙期でも守れる範囲にすること、就業規則を先に確認すること、そして稼働の記録を自分のために残すことです。

記録は、相談者の情報を含まない形で、日付と稼働時間だけを残します。これは確定申告の準備にもなりますし、掲載内容を更新するときの材料にもなります。どの時間帯に依頼が多かったかが分かれば、公開する枠を調整できます。

この働き方のメリットは、初期費用がほとんどかからず、場所を選ばず、時間を細かく刻めることです。デメリットは、収入が相手の都合に左右されること、感情労働の疲労が遅れて出ること、そして実績が外から見えにくいことです。3つ目はポートフォリオの設計で補えますが、2つ目は補えません。1日に受ける上限を先に決めておく必要があります。

資格については必須のものはありません。ただし傾聴の講座、電話応対の実務経験、記録の取り方の3つは、対応の質に直結します。資格を書く場合も、その学習を通じて実際の対応で何を変えたかまで添えてください。資格名の羅列より、行動の変化のほうが依頼者には伝わります。

この仕事だけで生活を組み立てるのは稼働時間の制約から難しいため、他の在宅の仕事と組み合わせる人が多くいます。分野ごとの依頼の発生の仕方はメンタル・心の悩み・愚痴聞きのお仕事で確認でき、収入の見通しを立てる材料としては、公的統計をもとにした著述家,記者,編集者の年収・単価相場のようなデータが使えます。成果物が残る仕事との併用を考えるなら、UI/UXデザインのフリーランスになるには?必要スキルと案件相場で扱われている領域が、ポートフォリオの作り方の対比としても参考になります。

学習歴と関連経験の書き方

資格が必須でない仕事なので、学習歴と関連経験の書き方には自由度があります。ただし、書き方によって効果がまったく変わります。

効かない書き方は、資格名と講座名を箇条書きで並べることです。読む側はその資格が何を保証するのか知りません。並べれば並べるほど、判断に使えない情報が増えます。効く書き方は、1つか2つに絞って、その学習が対応のどこに現れるかを書くことです。「傾聴の講座を受けたので、相手が話し終わる前に要約を挟まないようにしています」という形にすると、資格の説明が対応の説明に変わります。

関連経験も同じです。接客業、介護職、電話応対、事務職。これらの経験は、そのまま書いても伝わりません。「電話応対の実務経験があるので、終了時刻の予告と締めの流れが崩れません」まで書くと、依頼者が受け取る体験に接続します。

書かないほうがよい経験もあります。自分が過去に悩みを抱えていた経験を、共感の根拠として長く書くケースです。同じ経験があること自体は伝えてもよいのですが、その内容を詳細に書くと、読む人はこちらの状態を心配し始めます。1行に収めて、対応にどう活きるかへ繋いでください。

よく見かける失敗と、その直し方

実際のポートフォリオを見ていて、繰り返し目にする失敗が5つあります。どれも直し方は簡単です。

1つ目は、冒頭が自己紹介から始まっていることです。読む人は自分の悩みを抱えて来ているので、まず「自分の話を聞いてもらえるか」を確認したい。経歴や独立の経緯を冒頭に置くと、そこで離脱します。冒頭は対応領域から始めて、経歴は最後に回します。

2つ目は、優しさを言葉で主張していることです。「寄り添います」「受け止めます」を並べても、読む人は判断材料を得られません。これらの文を全部削って、応答サンプルに置き換えると、文章量は減りますが伝わる情報は増えます。削る勇気が要りますが、効果は大きい。

3つ目は、対応しない範囲が書かれていないことです。受ける範囲だけを広く書くと、依頼者は「本当に何でも受けるのだろうか」と疑います。断る基準がある人のほうが、受ける範囲については責任を持つ人だと読まれます。狭めることで信用が上がる、珍しい構造です。

4つ目は、記録と情報の扱いが空白なことです。ここは依頼者の不安が最も大きい箇所なのに、書いている人が非常に少ない。4行あれば書けるので、書かない理由がありません。

5つ目は、媒体ごとに内容が食い違っていることです。プラットフォームのプロフィールは去年の内容のまま、自分のサイトだけ更新されている。読む人は複数の場所を見て比べます。食い違いがあると、管理されていない印象になり、安全性の評価が下がります。月に一度、全部を並べて確認してください。

20年この市場を見てきた立場からの観察

在宅で働く人の仕事情報を長く扱ってきた立場から見ると、実績を出せない仕事で安定して依頼を受けている人は、隠す工夫ではなく、示す工夫に時間を使っています。過去は書けないので、これから何をするかを詳しく書く。この転換ができている人は、経験年数に関係なく選ばれています。

逆に、実務経験が長いのに依頼が伸びない人は、ポートフォリオの情報量が少ないまま止まっています。書ける材料が限られているという条件は全員に等しくかかっているので、その条件下でどこまで書いたかがそのまま差になります。依頼者は情報の多い側を選びます。

もう1つ、構造の話をします。仲介手数料が乗らない直接の取引では、同じ予算で依頼者はより長い時間を頼めますし、受ける側の手取りは厚くなります。手数料0%の意味は金額の大小ではなく、同じ稼働で残るものが違うという質の差です。感情労働は稼働本数に上限があるため、1件あたりに残る額が薄いと本数を増やして補うことになり、対応が雑になって継続が減ります。残る額が厚いほうが、丁寧さを維持したまま続けられます。

長く続く人ほど、単発の対応を上手にこなすことより、「この人に任せると考えることが減る」という状態を作ることに時間を使っています。ポートフォリオはその第一歩です。読んだ時点で、依頼するかどうかの判断に必要な材料が全部揃っている。それが良いポートフォリオの条件です。

作る順番と、完成の判断

材料を一度に揃えようとすると止まります。上から順に埋めてください。

最初に稼働の形。曜日、時間帯、1回の長さ、対応形式。これは既に決まっているはずなので書き出すだけです。次に対応領域と対応しない領域。ここは言語化されていないことが多いので、思いつく限り書き出してから絞ります。3番目に断る基準と記録の扱い方針。ここまでで、依頼者が最初に確認する項目が埋まります。

4番目が応答サンプル。ここが最も時間がかかるので、1つずつ書いて日を置いて読み返します。5番目に学習歴と関連経験。最後に全体を読み返して、優しさを主張している文と、結果を約束している文を削ります。文章が短くなっても構いません。主張を削って具体を残すほど、読み手が受け取る情報量は増えます。

完成の判断は、他人に読ませて確認します。読んだ人が「この人は何をしてくれて、何はしてくれないか」「いつ話せるか」「話した内容はどうなるか」の3つに答えられれば完成です。答えられない項目があれば、そこが書けていません。自分で読み返しても分からないので、必ず第三者に確認してもらってください。

条件を先に決めて書いておくことは、堅苦しく見えて、実は自分と相談者の双方を守ります。守られている状態で対応に集中できるから、丁寧になれる。法律や制度の話は身構えられがちですが、こうした仕組みは働く側の味方として機能します。

よくある質問

Q. 実績を一切出せない場合、ポートフォリオには何を載せればよいですか?

自分に属する情報を載せます。対応する領域としない領域、稼働できる曜日と時間帯、対応形式、断る基準、記録と情報の扱い方針、学習歴や関連経験の6つです。これらは相談者の情報を含まないため守秘義務に触れません。加えて、架空の設定でゼロから作った応答サンプルを3つ置くと、対応の型と人柄が具体的に伝わります。

Q. 過去の相談を匿名化して事例として載せてもよいですか?

避けてください。匿名化や脚色をしても、相談者本人が読めば自分のことだと分かる可能性があります。本人が気づく余地が少しでもあるなら載せない、という基準で判断します。事例を見せたい場合は、実在の相談を加工するのではなく、ゼロから架空の設定を作ってください。手間は増えますが、後から問題になる余地がなくなります。

Q. 応答サンプルはどんな場面を用意すればよいですか?

実際に必ず起きる3つの場面を選びます。相談者が状況を整理できないまま話し始める場面、アドバイスは不要で聞いてほしいだけと明言される場面、話が途中で止まって沈黙が続く場面です。相談者の発言を2、3行、応答を3行から5行、その応答を選んだ理由を2行で構成します。理由を添えると、意図を持って聞いている人だと伝わります。

Q. ポートフォリオに書くと問題になる表現はありますか?

4つあります。持っていない資格や、民間資格を国家資格と誤認させる書き方。「悩みが解決します」のように結果を約束する表現。診断名を用いた医療的な効果の表現。そして「他より丁寧」といった根拠を示せない比較表現です。約束できるのは聞く時間を確保することだけなので、何をするかの記述に置き換えてください。

Q. 実名や顔写真を出さないと信用されませんか?

出さなくても成立します。依頼者が求めているのは身元の保証ではなく、対応が予測できることです。活動名でも、断る基準、記録の扱い、応答サンプルが具体的であれば安心して依頼できます。逆に実名と顔写真を出していても、対応の型が書かれていなければ判断材料になりません。会社勤めの場合は、勤務先が推測できる記述を避けてください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年3月7日最終更新:2026年9月25日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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