小説・シナリオ制作のポートフォリオの作り方|見る人が知りたいこと

長谷川 奈津
長谷川 奈津
小説・シナリオ制作のポートフォリオの作り方|見る人が知りたいこと

この記事のポイント

  • ✓小説・シナリオ制作のポートフォリオを
  • ✓発注側が見る順番に合わせて組み立てる手順をまとめました
  • ✓守秘義務で出せない仕事の書き方

小説・シナリオ制作のポートフォリオを作ろうとして、手が止まる人はとても多いです。理由ははっきりしていて、「何を入れるか」より先に「誰が、どんな順番で、何を判断するために見るのか」を決めていないからです。作品を並べただけの本棚は、書いた人にとっては誇らしくても、読む側にとっては仕事を任せる根拠になりません。

結論から書きます。小説・シナリオ制作のポートフォリオは、作品を鑑賞してもらうための場ではなく、発注側が「この人に頼んで大丈夫か」を短時間で判断するための資料です。だから必要なのは、全文でも、作品数の多さでもなく、条件つきで書けることが分かる抜粋と、その作品がどういう制約の中で作られたかの説明です。この記事では、収める作品の選び方から、抜粋の切り方、守秘義務で出せない仕事の扱い、置き場所の決め方、更新の回し方までを、受注後の実務を前提に順を追ってまとめます。

ポートフォリオは「読ませる」ものではなく「判断させる」もの

小説やシナリオの書き手が最初につまずくのが、この前提の入れ違いです。作品は読んでもらってこそ価値が伝わる、という感覚は正しい。ただし依頼を検討している相手は、読者ではありません。締切と予算と社内調整を抱えたまま、複数の候補から一人を選ぶ立場の人です。この違いを理解しないまま作ると、丁寧に作ったのに問い合わせが来ない、という状態になります。

発注側が最初の数分で見ている3つのこと

依頼側が候補者のページを開いてから離脱するまでの時間は長くありません。その短い時間で確認しているのは、大きく3つです。

1つ目は、扱える領域が自分の案件と重なるかどうか。恋愛小説の連載を得意とする人と、ゲームのイベントシナリオを量産できる人と、企業のブランドストーリーを書ける人は、同じ「文章を書く仕事」に見えて、求められる筋肉がまったく違います。ここが噛み合っていなければ、文章の巧拙以前に候補から外れます。

2つ目は、指定された条件の中で書けるかどうか。実務のシナリオ制作には必ず制約があります。文字数の上限、既存キャラクターの口調、使ってはいけない表現、分岐の数、読み上げ時の秒数。制約なしで書かれた自由作品が並んでいると、条件を守れる人かどうかが読み取れません。

3つ目は、やり取りが成立しそうかどうか。誤字が残っている、リンクが切れている、連絡先が見つからない、といった細部は、そのまま納品物の管理精度として受け取られます。文章の仕事は最終的に「原稿を約束どおり出せる人か」で選ばれます。

作品集と職務経歴書の違いを埋める

小説・シナリオ制作のポートフォリオは、純粋な作品集と職務経歴書のちょうど中間にあります。作品集だけでは、どういう発注に応えられるのかが分からない。経歴書だけでは、文章そのものの手触りが分からない。この2つを1つの資料の中でつなぐのが、ポートフォリオの本来の役割です。

具体的には、作品ごとに「どういう依頼だったか」「どこを担当したか」「どんな制約があったか」を短く添え、その直後に抜粋を置きます。順番が逆になっている例をよく見かけますが、抜粋を先に置くと、読み手は文脈を持たないまま文章を読むことになり、評価軸が定まりません。前提を先、本文を後。この順番だけで、伝わり方は大きく変わります。

外部の解説でも、まず作り方の考え方から入ることの重要性が語られています。

今回は「小説の仕事をしたい人が実践すべきこと」でも触れたポートフォリオの作り方に関して、詳しくお話します。 出典: creative-story.net

作り方の手順に入る前に、この「判断させる資料である」という位置づけを固めておくと、後で迷ったときの判断基準になります。迷ったら「これは相手の判断を助けるか」で残すかどうかを決めればよいからです。

依頼が来る現場の構図を先に理解する

同じ「シナリオ」という言葉でも、現場によって求められるものは違います。自分が狙う領域を決めずに作ったポートフォリオは、どの現場にも半分しか刺さりません。ここを整理しておくと、収める作品の取捨選択が一気に楽になります。

小説・ゲーム・映像・広告でチェック点が違う

小説の受注仕事では、地の文の設計と、長い尺を最後まで持たせる構成力が見られます。読点の打ち方、視点の固定、時系列の処理といった基礎が安定しているかどうかが、真っ先に確認されます。

ゲームのシナリオでは、キャラクターの口調の再現度と、分岐やフラグを含めた仕様の理解が重視されます。既存作品の続きを書く、指定のキャラクターで書く、といった依頼が中心になるため、自分の作風より「合わせられること」が価値になります。文字数の上限が厳密に決まっていることも多く、あふれた原稿を自力で削れるかどうかも見られます。

映像作品の脚本では、画で見せられるかどうかが判断軸になります。心情を地の文で説明できないため、行動と台詞に落とす技術が要ります。ト書きの書式に沿えているかどうかも、そのまま実務経験の指標として読まれます。

広告やブランドストーリーの制作では、伝えたい要件と読後の行動が最初から決まっています。文章の巧さより、要件を落とさずに読ませる設計が問われます。

自分がどの領域を主戦場にするかによって、ポートフォリオの表紙に相当する冒頭部分の書き方が変わります。複数の領域を狙う場合でも、1つの資料に全部を混ぜず、領域ごとにページや章を分けたほうが、読み手は迷いません。

公募向けの実績と業務向けの実績は別物

新人賞や文学賞への応募歴、投稿サイトでの評価、コンテストの受賞歴は、書き手としての力量を示す材料になります。ただし業務としての受注実績とは、証明している内容が違います。

公募の実績が示すのは、締切に間に合わせて完成させる力と、一定水準の完成度です。業務実績が示すのは、他人の要件に合わせて書ける力と、修正のやり取りを成立させる力です。実務のシナリオ制作の現場では、後者の比重が高くなります。

だから受賞歴があっても、それだけを並べるのは得策ではありません。受賞歴は信頼の入口として置き、そのうえで「指定条件のもとで書いた例」を必ず1つは載せる。条件つきの作例がないなら、自主的に作ってでも置いたほうがよいです。たとえば既存の公開素材を使わずに、自分で「文字数上限あり、視点固定、キャラクター2人、読了3分」といった条件を設定して書いた短編を1本用意する。これだけで、条件下で書ける証拠になります。

書籍や小説、シナリオ制作の仕事が実際にどういう形で発注されているかは、募集要項の言葉づかいを見るのが一番早いです。案件の分類や求められる作業範囲を俯瞰しておくと、自分のポートフォリオに足りない要素が見えてきます。書籍・小説・シナリオ制作のお仕事では、この分野の仕事がどんな粒度で切り出されているかを整理しているので、収録作品を決める前に一度目を通しておくと判断が早くなります。

収める作品の選び方

作品選びは「多いほうが有利」ではありません。むしろ点数が増えるほど、読み手が最初に読む1本の質が下がります。ここは絞る勇気が要ります。

点数を絞る判断基準

収録数は3点から6点を基本にします。理由は単純で、判断する側が全部読むことは想定できないからです。上から順に読み、2本目までで印象が決まります。したがって並び順は、力作順ではなく「狙う案件との近さ順」にします。

選ぶときの基準は3つです。第一に、狙う領域と重なっているか。第二に、条件つきで書いたものか。第三に、権利上そのまま見せられるか。この3つを満たすものだけを残し、満たさないものは思い切って外します。外した作品は削除するのではなく、別の一覧として「その他の作品」にまとめて後段に置けば十分です。

さらに、収録作品は種類を散らしたほうが情報量が増えます。同じ作風の短編が5本並んでいても、伝わる情報は1本分とあまり変わりません。長さの違うもの、話法の違うもの、担当範囲の違うものを混ぜると、対応できる幅が伝わります。

出せない仕事をどう扱うか

シナリオ制作の受注実績は、公開できないものが相当な割合を占めます。守秘義務契約を結んでいる案件、名前が出ない形で納品した案件、発売前の作品、社内資料として使われた原稿。これらを「載せられないから無かったことにする」のは大きな損です。

出せない仕事は、作品そのものではなく「案件の輪郭」で書きます。具体的には、業種と用途、担当範囲、分量の規模感、制作期間の目安、使われた形態までを匿名で記述します。作品名も、クライアント名も、固有の設定も出さない。それでも「この規模の案件を、この範囲で担当した経験がある」という情報は残ります。

書き方の例としては、次のような粒度です。「家庭用ゲーム向けのイベントシナリオを担当。既存キャラクター4名の掛け合いで、1話あたりの文字数上限と読了時間の指定あり。プロットからの一貫制作ではなく、監修担当が用意した構成に沿った本文執筆を担当」。この程度でも、読む側は仕事の形を想像できます。

注意点として、守秘義務の範囲は契約ごとに違います。業種を出すことすら禁じられている場合もあれば、実績として社名を出す許可を取れる場合もあります。契約書の秘密保持条項と、実績公開に関する条項を確認したうえで書くのが原則です。判断が難しいときは、担当者に「実績としてどこまで書いてよいか」を書面で確認しておくと、後から揉めません。許可が取れれば、それ自体が強い実績になります。

二次創作や投稿サイトの作品を入れるかどうか

投稿サイトに公開している作品は、扱いを分けて考えます。オリジナル作品は、権利が自分にあるため収録に問題はありません。閲覧数や評価が付いているなら、読者に届いた証拠として機能します。

一方、二次創作は原則として業務用のポートフォリオには載せません。権利関係が原著作者の許容の上に成り立っているため、商用の営業資料に転用するのは筋が通らないからです。ただし「特定のキャラクターの口調を再現する力」を示したい場合、二次創作の代わりに、自分で作ったキャラクター設定を先に提示し、その設定どおりに書いた掛け合いを載せる方法があります。設定と本文の一致を見せられるので、再現力の証明としては十分に機能します。

1作品ごとに書く項目のひな型

作品ごとの説明は、毎回自由に書くと粒度がばらつきます。項目を固定して埋める形にしておくと、書く側も楽になり、読む側も比較しやすくなります。

前提条件を先に書く

各作品の先頭には、次の項目を短く並べます。

・用途と媒体(何のために、どこで使われた文章か) ・想定読者(誰に向けた文章か) ・分量(総文字数、話数、尺) ・与えられた制約(文字数上限、視点、語り口、使えない表現、納期の目安) ・担当範囲(企画、構成、本文、リライト、監修のどこか)

この5項目があるだけで、抜粋の読まれ方が変わります。制約なしの自由作品なら「自主制作、条件は自分で設定」と正直に書けばよく、隠す必要はありません。むしろ条件を自分で設計できることの証明になります。

担当範囲を正確に切り分ける

シナリオ制作は分業が進んでいる領域です。プロットを別の人が作り、本文だけを複数人で分担し、監修者が最終調整をする、という流れは珍しくありません。この場合に「シナリオ担当」とだけ書くと、実態より広く受け取られます。後で認識のずれが起きると、信頼を失います。

担当範囲は、工程で切って書くのが確実です。企画立案、世界観設計、プロット作成、本文執筆、既存原稿のリライト、校正、監修。このうち自分がやった工程だけを挙げます。共同制作なら「共同制作。担当は本文執筆のうち第3章から第5章」といった書き方にします。範囲を狭く正確に書くほど、逆に信頼されます。

制作中の判断を1つだけ書く

ここが差の出る部分です。作品の説明に、制作中に下した判断を1つだけ添えます。たとえば「主人公の内面描写を削り、行動で示す構成に切り替えた。読み上げ前提の媒体で、地の文が長いと聞き手が離れると判断したため」といった具合です。

発注側が知りたいのは、うまく書けたかどうかではなく、状況に応じて判断を変えられるかどうかです。判断の記述が1つあるだけで、指示待ちではなく自分で考えて動ける人だと伝わります。長く書く必要はなく、2文で足ります。

抜粋の作り方

全文を載せるべきか、抜粋にすべきかは、よく相談を受ける論点です。結論は、業務用のポートフォリオでは抜粋を基本にします。全文は別途、読みたい人だけが辿れる場所に置きます。

冒頭を切るか、山場を切るか

抜粋の切り出し方には2つの流儀があります。冒頭から順に切る方法と、作品の中で最も密度が高い場面を切る方法です。

読み手が判断したいのが「文章の基礎体力」なら、冒頭が適しています。導入の設計、情報の出し方、読者を引き込む速度が一度に見えるからです。読み手が判断したいのが「感情を動かす筆力」なら、山場を切ります。ただし山場の抜粋は前提の説明が必要になるため、直前に状況を2行から3行で補足します。

実務では、冒頭の抜粋を先に置き、山場の抜粋を後に置く並びが機能します。順番に読めば、導入の技術と山場の技術の両方が確認できるからです。

分量の目安と読み口の設計

1作品あたりの抜粋は、画面をスクロールし続けなくても読み切れる長さに収めます。目安として、抜粋は2000字前後まで。これを超えると、読み手は途中で判断を打ち切ります。

抜粋の途中で切れる場合は、切れ目に「(以下省略)」と入れるより、区切りのよい場面の終わりで止めるほうが読後感がよくなります。文章の途中でぶつ切りにされると、読み手は評価を保留してしまいます。

会話が続く場面を抜粋する場合は、話者が分かるようにします。地の文で誰が話しているかを補うか、台詞の前に話者名を置くか、どちらかに統一します。ポートフォリオ上で読みづらい形式のまま置くと、書式に無頓着だと受け取られます。

会話劇や分岐シナリオの見せ方

分岐のあるシナリオは、そのまま文章として並べても構造が伝わりません。分岐を扱った経験を示したいなら、簡単な構造図を先に置き、そのうえで1本の経路の本文を抜粋します。構造図は複雑にする必要はなく、選択肢と到達先が分かる程度で十分です。

読み上げ前提の音声作品や、尺の指定がある映像作品は、秒数を併記します。「この抜粋は読み上げ約90秒」と書くだけで、尺を意識して書ける人だと伝わります。この一行があるかないかで、映像や音声の案件での評価は変わります。

置き場所と導線の決め方

作品と説明が用意できたら、次はどこに置くかです。ここで選択を間違えると、読まれる前に離脱されます。

投稿サイト、note、独自ページ、PDF

投稿サイトは、小説の読者に届けるには強い場所です。ただし業務の依頼者にとっては、他作品の広告や関連作品の導線が邪魔になり、判断に必要な情報にたどり着きにくいという弱点があります。作品の置き場としては使い、ポートフォリオの入口としては使わないほうが無難です。

noteのような汎用の発信プラットフォームは、記事単位で構成を自由に組めるため、ポートフォリオの入口として機能します。作品ごとの説明と抜粋を1記事にまとめ、目次から辿れるようにすると読みやすくなります。

自分のドメインで独自ページを持つ形は、見せ方を完全に制御できるのが利点です。反面、更新の手間がかかるため、更新頻度が落ちると古い情報が残り続けます。

PDFは、企業への応募や商談の場で強い形式です。相手が社内で回覧するとき、ページが固定されているほうが扱いやすいからです。ただしWebの入口がないと検索から見つけてもらえないため、Web版とPDF版の両方を用意し、内容を同期させるのが現実的です。

シナリオの領域で仕事を探している人が、実際にどういう場所を使って営業しているかについては、外部の調査記事でも同じ問題意識が示されています。

では実際これらの仕事に関わっている方は、どういうポートフォリオを使って仕事を探しているのでしょうか。 出典: arms.works-life.com

依頼を受け取る導線を必ず置く

意外に多いのが、連絡先が見当たらないポートフォリオです。作品と説明が整っていても、問い合わせ方法が分からなければ依頼は来ません。

導線として置くべきは、連絡手段、対応できる依頼の種類、対応できない依頼の種類、返信の目安時間の4つです。特に「対応できない依頼」を明示しておくと、噛み合わない相談が減り、結果として実務の時間が守られます。返信の目安は48時間以内といった形で具体的に書くと、相手が動きやすくなります。

連絡先は、作品ページの末尾だけでなく、冒頭のプロフィール部分にも置きます。上から読んで気に入った人が、最後まで読まずに連絡できる状態にしておくためです。

発注側の不安を先に潰す

依頼をためらわせるのは、文章の質そのものより、進行の不透明さです。ここを先回りして書いておくと、問い合わせの段階から話が早くなります。

納期と進行の書き方

進行の説明は、工程と所要日数の目安をセットで書きます。ヒアリング、プロット提出、初稿提出、修正、納品。各段階でどの程度の日数が必要かを書いておくと、依頼側は社内のスケジュールに落とし込めます。

同時に、こちらが必要とする情報も明記します。既存設定資料、キャラクター表、文字数上限、禁止表現の一覧、参考作品。これらが揃わないと着手できないことを先に伝えておくと、着手後の手戻りが減ります。

修正対応の範囲

修正の扱いは、後からもめやすい部分です。ポートフォリオの段階で「初稿提出後の修正は何回まで、どの範囲まで」を明記しておくと、契約前に認識が揃います。

範囲の切り分けは、誤字脱字や表記統一といった調整と、方向性そのものを変える書き直しを分けるのが基本です。前者は回数に数えず、後者を回数で管理する形が実務では扱いやすい。プロットの承認を経てから本文に入る進行にしておけば、大幅な書き直しはそもそも発生しにくくなります。

権利と表記の扱い

著作権の扱いは、案件によって大きく変わります。著作権を譲渡する契約なのか、利用許諾にとどめるのか。氏名表示があるのか、ないのか。二次利用の範囲はどこまでか。ポートフォリオ上では、対応可能な条件の幅を書いておきます。

つまり、こういうことです。「著作権譲渡にも対応する」「氏名表示なしの案件も受ける」と書いてあれば、依頼側は自社の条件に合うかどうかを事前に確認できます。逆に「氏名表示は必須」と決めているなら、それも先に書く。条件が合わない相手からの問い合わせを減らすほうが、双方にとって時間の節約になります。

なお、報酬の支払いや取引条件をめぐる基本的な決まりについては、公的機関が出している資料が参考になります。取引に関する制度の考え方は公正取引委員会の公表資料で確認できます。契約書の文言で迷う場面が出たら、条文の原典に当たるのが確実です。個別の紛争になっている場合は、弁護士に相談してください。

更新と運用のルール

作って終わりにすると、ポートフォリオはすぐ古くなります。運用の型を決めておくと、更新が習慣になります。

版を分けて管理する

ポートフォリオは、狙う領域ごとに版を分けて持ちます。ゲームシナリオ向け、書籍向け、広告向け、といった具合です。中身の8割は共通でよく、冒頭の紹介文と、上位に置く作品の並び順だけを入れ替えます。

版を分けておくと、提出のたびに作り直す必要がなくなります。提出先が決まったら、対応する版を選び、必要なら1作品だけ差し替える。この運用にすると、応募のたびにかかる時間が大きく減ります。

出せる実績が増えたときの入れ替え

新しい実績を追加するときは、必ず古い作品を1つ外します。足すだけにすると、読み手が最初に読む作品の質が下がっていくからです。

入れ替えの判断基準は、狙う領域との近さです。技術的に優れていても、狙う案件と方向が違う作品は下に落とします。落とした作品は削除せず、後段の一覧に残しておけば、幅の広さを示す材料として使えます。

更新の頻度は、案件が1つ終わるたびが理想です。難しければ、四半期に一度と決めて予定に入れておきます。記憶が新しいうちに書いたほうが、制作中の判断を具体的に書けます。

応募や登録で使う場合の違い

制作会社や出版社への応募、エージェント登録で使う場合は、フリーランスとしての営業用とは整え方が少し変わります。

求人応募に出すときの整え方

企業への応募では、担当者が社内で共有することを前提に組み立てます。ファイル名に氏名と日付を入れる、ページ番号を振る、印刷しても崩れない形式にする、といった細部が効いてきます。

応募書類としての体裁も見られます。文章の仕事に応募する以上、書類の日本語が整っていることは前提条件です。表記ゆれ、句読点の打ち方、敬語の使い方といった基礎の精度が、そのまま原稿の精度として評価されます。文書作成の基本的な作法を体系的に確認しておきたい場合、ビジネス文書検定で扱われる範囲が、そのまま実務の書類作りの基準になります。

また、応募先が求めているスキルの棚卸しにも意味があります。文章の仕事は隣接領域が広く、企画や編集、マーケティングの要素を求められることが増えています。関連する職域の求人がどういう能力を求めているかは、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事のような分野別の整理を見ると輪郭が掴めます。

市場の需要をどう読むか

この分野で仕事を続けるうえでは、需要のある領域を定期的に見直す必要があります。物語を必要とする媒体は増え続けており、書籍やゲームだけでなく、音声コンテンツ、企業の採用広報、教育教材など、以前は文章の仕事とみなされていなかった領域からの発注が増えています。

職種としての位置づけや、隣接する職域との関係を掴んでおくと、自分のポートフォリオをどの方向に厚くすべきかが見えてきます。文章を扱う職種の全体像は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で職域の広がりとして確認でき、専門職としての位置づけを客観的に把握する材料になります。他分野の独立事例と比較したい場合は、UI/UXデザインのフリーランスになるには?必要スキルと案件相場のような、制作系フリーランスの立ち上げ方をまとめた記事が参考になります。ポートフォリオの組み立て方には、職種を越えて共通する原則があります。

運営者の視点から見えていること

在宅ワークとフリーランスの市場を20年見てきた立場から言うと、小説やシナリオの分野で長く仕事が続いている人には、共通する特徴があります。作品の質が飛び抜けているというより、依頼側の手間を減らす資料を持っていることです。

具体的には、聞かれる前に答えが書いてある。対応できる領域、進行の流れ、修正の範囲、権利の扱い、連絡の目安。これらが揃っているだけで、依頼側は社内の稟議を通しやすくなります。逆に、作品だけが並んでいて条件が何も書かれていない場合、担当者は毎回問い合わせて確認する必要があり、その手間が理由で候補から落ちることがあります。文章の仕事は、原稿だけで完結しません。原稿を届けるまでの段取りを含めて評価されます。

もう1つ、運営者として見てきた限りで確かなことがあります。仲介が入らない直接のやり取りは、双方に効きます。中間マージンが乗らない分、同じ予算で依頼側はより多くの原稿を頼めるし、書き手は手数料0%で受け取れる分だけ手取りが厚くなります。厚くなった手取りは、次の作品の準備や資料の購入に回せるので、結果として仕事の質が上がる。この循環に入っている人は、単価の交渉に消耗せず、書くことに時間を使えています。ポートフォリオを整えるのは、この循環に入るための最初の一歩です。

独自データからの考察

この分野の依頼傾向を見ていると、募集の文面には共通した傾向が現れます。求められているのは「書ける人」ではなく「決まった条件で書ける人」です。文字数、口調、納期、修正回数といった条件が募集の段階で明示されている案件ほど、応募後の進行が速い。逆に条件が書かれていない募集は、着手後に要件が変わりやすく、制作側の負担が膨らみます。

この構造から導かれる実務上の対策は明確です。ポートフォリオの側で、自分が対応できる条件をあらかじめ提示しておく。そうすると、条件が明示されていない案件でも、こちらの提示した枠に沿って話が進みます。主導権を持って条件を決められるかどうかが、継続的に仕事を受けられるかどうかの分かれ目になります。

書籍や小説、シナリオの制作案件が実際にどんな作業単位で切り出されているかは、書籍・小説・シナリオ制作のお仕事にまとまっています。募集の文面を読んでから自分の資料を見直すと、足りていない項目がはっきりします。ポートフォリオは一度作って終わるものではなく、市場の言葉に合わせて更新し続ける資料です。判断材料を先回りして揃えておくことが、そのまま次の依頼につながります。

よくある質問

Q. 小説やシナリオのポートフォリオには何作品くらい載せればよいですか?

基本は3点から6点です。判断する側が全部を読むことは想定できないため、点数を増やすより、上から2本目までの質と並び順を優先します。並べる順番は力作順ではなく、狙う案件との近さ順にします。外した作品は削除せず、後段に一覧としてまとめておけば、対応できる幅を示す材料として使えます。

Q. 守秘義務があって公開できない仕事は、実績として書けませんか?

案件の輪郭であれば書けます。作品名やクライアント名、固有の設定は出さず、業種と用途、担当した工程、分量の規模感、制作期間の目安までを匿名で記述します。ただし秘密保持条項の範囲は契約ごとに違うため、事前に契約書を確認し、判断が難しければ担当者に書面で確認してください。許可が取れれば、それ自体が強い実績になります。

Q. 抜粋は冒頭と山場のどちらを載せるべきですか?

両方載せて、冒頭を先に置きます。冒頭の抜粋では導入の設計と情報の出し方が確認でき、山場の抜粋では感情を動かす筆力が確認できるためです。山場を載せる場合は、直前に状況を2行から3行で補足します。1作品あたりの抜粋は2000字前後までに収め、文章の途中ではなく場面の区切りで止めると読後感がよくなります。

Q. 受注実績がない場合、ポートフォリオは作れませんか?

作れます。条件を自分で設定して書いた作例を用意すれば、条件下で書ける証拠になります。文字数上限、視点の固定、登場人物の数、読了時間といった制約を明示し、その条件どおりに書いた短編を1本置きます。説明部分に「自主制作、条件は自分で設定」と正直に書いてかまいません。条件を設計できること自体が評価の材料になります。

Q. 二次創作の作品を載せてもよいですか?

業務用のポートフォリオには原則として載せません。権利関係が原著作者の許容の上に成り立っているため、商用の営業資料に転用するのは筋が通らないからです。指定キャラクターの口調を再現できることを示したい場合は、自分で作ったキャラクター設定を先に提示し、その設定どおりに書いた掛け合いを載せる方法で代替できます。

この記事について

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編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年3月12日最終更新:2026年9月9日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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