職場・転職相談の納期に間に合わないとき|伝える順番


この記事のポイント
- ✓職場・転職相談の納期遅れが避けられないと分かったとき
- ✓誰に何をどの順番で伝えるか
- ✓再発を防ぐ進行管理までを
職場・転職相談の仕事を受けていて、納期遅れが避けられないと分かった瞬間。あの手が冷たくなる感覚を、多くの人が経験しています。相談の記録をまとめた報告書、企業に提出する面談レポート、監修を引き受けた原稿。どれも相手側の予定に組み込まれているので、遅れは自分だけの問題では終わりません。
結論から書きます。納期遅れで信用を失うかどうかを決めるのは、遅れたという事実ではなく、伝える順番です。遅れそうだと分かった時点で、誰に、何を、どの順で伝えるか。ここが整っていれば、遅れは事故ではなく調整として処理されます。逆に、間に合わせようとして黙って作業を続け、期日の当日に「できませんでした」と言うのが、もっとも取り返しがつかない。これ、知らない人が本当に多いんです。以下では、第一報の作り方から、法律上の責任の線引き、再発を防ぐ進行管理までを順に整理します。
納期遅れが起きる構造を先に押さえる
対処法の前に、なぜ職場・転職相談の仕事で納期遅れが起きるのかを分解しておきます。原因が分かっていないと、謝罪の言葉だけが上手くなって、同じことを繰り返します。
相談は相手の都合で動く
制作物の仕事と決定的に違うのは、作業時間の大半が「相手がいないと進まない」ことです。面談の日程が相談者の都合でずれる、企業側の担当者が確認に時間をかける、追加のヒアリングが必要になる。自分の手が空いていても、前に進めない時間が発生します。
この構造を無視して、自分の作業時間だけで納期を見積もると必ず破綻します。面談から報告までの工程には、相手の応答待ちがどこに何回入るかを先に洗い出す。応答待ち1回あたりに3営業日を見込んでおくと、実際の進行に近い日程が引けます。
相談内容が想定より重い
初回の面談を始めてみたら、事前に聞いていた内容より深刻だった。ハラスメントや健康の問題が絡んでいて、当初の枠では扱いきれない。こういうケースでは、面談そのものの回数が増え、記録の作成にも時間がかかります。
これは見積もりミスというより、相談という仕事の性質です。だからこそ、契約時に「内容によっては期間の見直しを協議する」という条項を入れておく。入れてあれば、重い案件に当たったときに堂々と相談できます。
複数案件のピークが重なる
月末に企業の面談報告がまとまる、期の変わり目に相談が集中する。フリーランスで受けていると、繁忙のピークが読めるようになるまでに時間がかかります。そして読めていない時期に、ピークが重なる案件を安請け合いしてしまう。
対策は単純で、受注の時点で他案件の山を確認することです。カレンダーに納期だけでなく「その納期の前に必要な作業日」をブロックとして入れておくと、重なりが目で見えます。納期の日付だけを管理していると、必ずどこかで衝突します。
もう1つ、案件の種類を混ぜすぎないことも効きます。継続の相談案件、単発の面談、記事の監修、セミナーの準備。それぞれ頭の使い方が違うので、同じ週に全部を詰めると切り替えのコストで作業が進まなくなります。曜日で種類を分ける、午前と午後で分ける。粗い分け方でも、切り替えの回数が減るだけで進行は改善します。
見積もりの前提を確認していない
受注時に「いつまでにできますか」と聞かれて、その場で答えてしまう。これが遅延の温床になります。相談の仕事は、面談の回数、相談者の人数、記録の粒度、確認の往復で必要時間が数倍変わるからです。
その場で答えず、「前提を確認して本日中にお返しします」と一度持ち帰る。持ち帰って、面談回数と応答待ちの回数を数え、そのうえで日付を出す。この一手間を入れるだけで、無理な納期を自分から名乗り出る事故が消えます。相手も、根拠のある日付のほうを信用します。
自分の体調と生活
見落とされがちですが、相談を受ける仕事は感情の消耗が大きい。重い相談を連続で受けた週は、事務作業の生産性が明確に落ちます。これは根性の問題ではなく、業務特性です。
仕事が間に合わない状態が続くときの見方について、参考になる指摘があります。
一方で、さまざまな工夫を試みても締め切りに間に合わなかったり、ほかの人より仕事の進捗が遅いと感じたりする場合は、その仕事が向いていない可能性も。ストレスを感じながら無理に仕事を続けても、成果が出ずに評価を受けられないこともあるでしょう。仕事が間に合わないのは、自分の能力が足りないからと落ち込まず、適性のある職場への転職を検討してみてください。 出典: hataractive.jp
これは会社員向けの文脈で書かれたものですが、フリーランスにもそのまま当てはまります。つまり、遅れが単発なのか常態なのかを分けて考えるということです。単発なら進行管理の問題で、直せます。常態なら、受けている仕事の量か種類が自分に合っていない可能性を疑ったほうがいい。
遅れると分かった瞬間にやること
ここからが本題です。遅れる見通しが立った瞬間から、時間との勝負が始まります。
判断のタイミングは「間に合うかもしれない」段階
多くの人が第一報を遅らせるのは、「まだ間に合うかもしれない」と考えるからです。ここが最大の落とし穴になります。
正しい基準は、間に合う確率が70%を下回った時点で連絡する、です。確定してから伝えるのでは遅い。相手にも調整の時間が必要で、その時間を奪うことが信用を壊します。逆に、早めに伝えて結果的に間に合ったなら、それは「巻き返してくれた」という評価になります。早く言って損をすることは、実務上ほとんどありません。
伝える順番は「事実、原因、代替案、依頼」
第一報の構成は固定します。順番を毎回考えると、感情が混ざって長くなります。
最初に事実。何が、いつまでに、どれくらい遅れるか。「報告書の提出が、当初の期日から3営業日遅れる見込みです」のように、数字で書きます。「少し遅れそうです」は事実ではありません。相手は自分の予定を組み直すために、具体的な日付を必要としています。
次に原因。1行で書きます。長い説明は言い訳に見えます。「面談の追加日程が確定したのが今週になったため」で十分です。ここで相談者や第三者のせいにする書き方をすると、たとえ事実でも心証が悪くなります。主語は自分の進行管理に置きます。
その次に代替案。これが最重要です。新しい期日を1つ提示し、可能なら「部分的に先に出せるもの」を添えます。報告書全体は遅れるが、面談の要点サマリーは明日出せる、という形です。相手の困りごとは「予定が読めないこと」なので、読める形を返すと問題の半分が消えます。
最後に依頼。相手にしてほしいことを書きます。「新しい期日でご調整いただけますでしょうか」「難しい場合は、優先順位をご指示ください」。判断を相手に返すのが礼儀であり、同時に自分を守ります。相手が了承した記録が残るからです。
伝える相手の順番
社内外に複数の関係者がいる場合、伝える順番も重要です。原則は、影響を受ける順ではなく、決める権限がある順です。
企業案件なら、まず発注元の担当者。担当者を飛ばして上位者に伝えると、担当者の立場を壊します。担当者に伝えたうえで「上長への共有が必要でしたらご指示ください」と添える。個人の相談者が絡む場合は、相談者への連絡は発注元と足並みを揃えます。勝手に相談者へ伝えると、企業側の説明と食い違うことがあります。
連絡手段は記録が残るもので
電話で先に伝えるのは構いませんが、必ず同じ内容をメールで送ります。電話だけだと、後日「そこまで具体的な日付は聞いていない」という食い違いが起きます。
現場で扱った相談のなかに、口頭で納期の変更を合意したつもりが、発注元の社内では変更が共有されておらず、当初の期日で未納扱いになっていた例がありました。文面が1通あれば起きなかった話です。記録は相手を疑うために残すのではなく、双方の記憶違いを防ぐために残します。
遅れの伝え方の文面をどう組むか
実際の文面をどう組むか、要素ごとに見ていきます。
件名で結論を出す
「ご報告」「ご連絡」だけの件名は開かれません。「【納期変更のご相談】面談報告書の提出日について」のように、件名で用件が分かるようにします。相手が忙しいほど、件名の情報量が効きます。
謝罪は冒頭に短く、繰り返さない
冒頭に一度、簡潔に。「ご迷惑をおかけし申し訳ございません」で足ります。文中に何度も謝罪を挟むと、読み手は本題を探しにくくなります。謝罪の量と誠実さは比例しません。
数字は具体的に、幅を持たせない
「来週中には」ではなく「9月11日の18時まで」と書きます。幅を持たせると、相手は最悪の日付で予定を組むか、確認のために追加の連絡をしてきます。どちらも相手の手間を増やします。
相談者の情報は書かない
企業案件で遅延理由を説明するとき、相談者の個別事情を書いてはいけません。「相談者の家庭の事情で日程が動いたため」と書いた時点で、守秘の約束を破っています。「日程調整に想定より時間を要したため」で止めます。理由の具体性より、守秘のほうが優先です。
第一報の文面をどう組み立てるか
要素の順番が決まったら、実際の文面に落とします。企業の担当者へ送る第一報は、次のような構成になります。
件名は「【納期変更のご相談】面談報告書の提出日について」。本文は、冒頭に一度だけ謝罪を置き、続けて「9月8日提出予定の面談報告書について、9月11日18時までの提出に変更をお願いしたく、ご連絡いたしました」と事実を書きます。原因は「面談の追加日程の確定が今週にずれ込み、記録の整理に必要な期間が確保できなかったためです」と1文で。
そのうえで代替案を出します。「全体の提出は11日となりますが、面談の要点をまとめたサマリーは本日中にお送りできます。社内でのご共有に必要でしたら、先にそちらをお使いください」。最後に依頼で締めます。「11日での調整が難しい場合は、優先いただきたい項目をご指示ください。その範囲を先に仕上げます」。
この文面が機能するのは、相手に判断の材料と選択肢を渡しているからです。遅延の連絡でやってはいけないのは、謝罪と説明だけで終えて、相手に「で、どうすればいいのか」を考えさせることです。考える手間を相手に押し付けた瞬間に、遅延は相手の問題に変わり、心証が悪化します。
相談者向けの文面は別に用意する
同じ内容でも、相談者本人に送る文面は組み立てが変わります。事務的な日付の話に、内容を扱っている事実を添えます。「先日ご相談いただいた内容の整理に、もう少しお時間をいただきます。11日までに、お話しいただいた3点についてまとめたものをお送りします」。
日付だけでなく「何を届けるか」を書くのがポイントです。相談者にとっては、期日そのものより、自分の話が形になるかどうかが関心事だからです。
法律の面から見た納期遅れ
ここは正確に押さえておきたいところです。堅い話になりますが、噛み砕いて書きます。
契約の型で責任の重さが変わる
業務委託と一口に言っても、成果物の完成を約束する型と、業務の遂行そのものを約束する型があります。報告書の納品を約束しているなら前者に近く、期日までに完成しなかった場合の責任が発生します。面談の実施を約束しているなら後者に近く、面談を実施していれば債務は履行されています。
つまり、自分の契約がどちらの型かを知っておくと、遅れたときに何が問題になるのかが分かります。契約書に「成果物」「納品」「検収」という言葉が並んでいれば完成を約束する型に寄っています。「業務時間」「稼働」「実施」という言葉が中心なら遂行を約束する型に寄っています。
※契約書の解釈で争いになりそうなときは、条文の読み方を含めて弁護士に相談してください。ここに書いているのは一般的な整理であり、個別の契約の判断ではありません。
遅延で損害賠償を求められるのか
遅れたら即座に賠償、というわけではありません。損害が実際に発生していること、その損害と遅延に因果関係があること、この2つが必要です。加えて、契約に遅延損害金の定めがあるかどうかも効いてきます。
実務上、キャリア相談の報告書が数日遅れて具体的な損害が算定されるケースは多くありません。ただし、遅延を放置して相手の事業に実害が出た場合は別です。だからこそ、第一報を早く出して代替案を示すことが、法的にも自分を守る行為になります。連絡を怠った期間は、こちらの落ち度として評価されやすいからです。
発注側にも守るべきルールがある
遅れの話をすると受注側の責任ばかりが語られますが、発注する側にも法令上の義務があります。取引条件を書面や電子データで明示すること、報酬を定められた期日までに支払うこと、正当な理由なく受領を拒まないこと。これらは制度として整理されており、e-Govなどで内容を確認できます。
なぜこれが納期の話に関係するかというと、条件が明示されていない契約では、そもそも「何がいつまでの納品なのか」が確定していないからです。発注時に納期が文字で示されていないなら、遅延の判断基準も存在しない。条件を書面でくださいと求めることは、遅延トラブルの予防そのものです。
遅れの原因が発注側にあるとき
面談に必要な情報がなかなか出てこない、確認の返信が2週間止まっている。こうした事情で遅れる場合は、遅れが確定する前に事実を記録しておきます。
「何日に何を依頼し、何日時点で未着」という時系列をメールで残す。責める文面にする必要はありません。「本日時点で資料が未着のため、当初の期日での提出が難しくなります。着信から3営業日で仕上げる想定です」と書けば、事実の共有と条件の再設定を同時にできます。後から経緯を再構成するのは難しいので、進行中に残すのが鉄則です。
労働時間や安全衛生に関わる相談を扱うなら、厚生労働省の公開資料も一次情報として押さえておくと、相談者への説明の精度が上がります。
相談者本人に伝えるときの注意
企業案件では、遅れの影響が相談者本人に及ぶことがあります。面談の日程がずれる、フィードバックの提供が遅れる。ここでの伝え方は、発注元への連絡とは組み立てが変わります。
相談者は待っている理由が違う
発注元が気にしているのは予定の管理です。相談者が気にしているのは、自分の話がちゃんと扱われているかどうかです。同じ「遅れます」でも、受け取り方がまったく違います。
相談者は、勇気を出して話した内容が宙に浮いている状態に置かれています。ここで事務的な遅延連絡だけを送ると、「自分の相談は軽く扱われている」と受け取られます。日付の連絡に加えて、内容を確実に扱っていることを一文で示します。「先日お話しいただいた異動の件と、上司との面談の準備については、優先して整理を進めています」といった形です。
遅れる理由を相談者に転嫁しない
相談者の日程調整が原因で遅れた場合でも、その事実を相談者に突きつけないことです。「◯◯様のご都合で日程が動いたため」と書くと、相談者は自分が悪いと感じ、次回から要望を言いにくくなります。相談の質が落ちるので、結果として仕事の成果が下がります。
書くなら「日程の再調整に時間を要したため」で止めます。事実は変わらず、相手を追い詰めません。
相談を止めるべきときは別の判断になる
遅れの背景に、相談者本人の状態悪化がある場合は、日程の話ではなく相談の継続可否の話になります。眠れていない、日常の判断ができていない。こうした兆候が見えたら、無理に予定どおり進めず、医療機関や公的な相談窓口につなぐことを提案します。
※健康や労働環境に深刻な問題が疑われる場合は、キャリアの相談として抱え込まず、専門の窓口を案内してください。抱え込むことは相談者の利益になりません。
遅れを生まない面談運営の工夫
遅延対応の話をしてきましたが、そもそも遅れが起きにくい運営の形があります。ここは受注後の実務として押さえておく価値があります。
面談の直後に記録の骨組みを作る
面談が終わってから記録を書き始めるまでの時間が空くほど、作業時間は伸びます。記憶が薄れるので、音声や走り書きから内容を再構成する手間が増えるからです。
面談の直後、15分だけ使って、見出しと箇条書きの骨組みを作ります。完成させる必要はありません。骨組みさえあれば、後日の清書は流れ作業になります。この15分を確保するために、面談の予約を連続で詰めないという運用が必要になります。
提出物の型を先に決める
毎回ゼロから構成を考えていると、書き出すまでの時間が長くなります。面談報告書の項目、相談者向けサマリーの構成、企業向けの共有資料の粒度。それぞれ型を作っておき、案件ごとに中身を入れ替えるだけにします。
型を作るときに重要なのは、守秘の線を型に組み込んでおくことです。企業向けの型には個人が特定される記述を入れない欄構成にしておく。都度判断していると、疲れているときに線を越えます。
確認の往復回数を契約で決める
提出後の修正が無制限だと、納期はいくらでも後ろにずれます。修正の回数と、修正依頼を受け付ける期限を条件に入れておきます。「提出後7営業日以内に1回まで」といった形です。
回数を決めることは、相手に不便を強いる話ではありません。むしろ、いつ終わるかが決まるので発注側も予定を組めます。終わりの定義がない仕事は、双方にとって管理不能になります。
繁忙期を先に潰しておく
相談の依頼には季節性があります。期の変わり目、賞与の支給後、年度末。この時期に予定を詰めると、想定外の1件で全部が崩れます。
繁忙期には、あらかじめ空き枠を残しておきます。空き枠は無駄ではなく、遅延を吸収する保険です。埋まっている前提で組んだ日程は、1件の追加で破綻します。
遅れたあとに信用を戻す手順
第一報を出して調整がついたら、そこで終わりではありません。信用が戻るかどうかは、そのあとの動きで決まります。
新しい期日は必ず守る
当たり前に見えますが、ここを外すと致命的です。2回目の遅延は、1回目の10倍のダメージがあります。だから、新しい期日は余裕を持って設定します。ぎりぎりの日付を出して守れないより、少し先の日付を出して前倒しで出すほうがいい。
進捗を途中で1回入れる
新しい期日までの中間地点で、短い進捗連絡を1本入れます。「予定どおり進んでおります。11日の提出で変更ありません」。3行で足ります。相手は遅延を1度経験しているので、次も遅れるのではないかと気にしています。その不安を消すのは、こちらから出す1本の連絡です。
納品時に何を直したかを添える
再発防止として何を変えたかを、1行から2行で添えます。「今後は面談の日程確定を起点に工程を組み直し、応答待ちの期間を見込んだ日程でご提示します」。これがあると、遅延が「反省して改善した出来事」として整理されます。何も言わないと、相手の中では「遅れる人」というラベルだけが残ります。
値引きを申し出るかどうか
自分から値引きを申し出るのは、原則として勧めません。金銭で処理すると、以後の関係で遅延が値引きの交渉材料になります。改善は仕事の質で返すのが基本です。相手から減額の申し出があった場合は、契約書の定めに沿って対応し、定めがなければ協議のうえで文面に残します。
再発を防ぐ進行管理
遅れを1回でも経験したら、進行管理の仕組みを作り替えます。
納期から逆算した中間期日を置く
最終納期だけを管理していると、遅れに気づくのが遅くなります。面談完了、記録の一次作成、内容の見直し、提出用の整形。工程ごとに中間の期日を置いて、そこを過ぎたら即座に判断する運用にします。中間期日を1つ落とした時点で第一報を検討する、というルールにしておくと、判断が個人の気分に左右されません。
応答待ちの時間を工程に入れる
自分の作業時間だけでスケジュールを引くのをやめます。相手の応答が必要な箇所を工程表に明示し、そこに待ち時間を確保しておく。相手が早く返してくれたら前倒しになる、という設計にします。
受注時に稼働の上限を決める
同時に抱える案件の上限を数で決めておきます。継続の相談案件を5件までにする、単発を含めて週の面談を一定数に収める。上限を決めていないと、依頼が来た勢いで受けてしまい、翌月に破綻します。
職種ごとの相場観を持っておく
進行の見積もりは、相談者の職種によっても変わります。技術職の相談は、経歴の整理に専門用語の確認が入るので工数が読みにくい。文章の仕事は、成果物のサンプル確認に時間がかかる。職種ごとの仕事の中身を把握しておくと、初回の見積もりの精度が上がります。参考としてソフトウェア作成者の年収・単価相場や著述家,記者,編集者の年収・単価相場のような職種別の情報を見ておくと、相談者の状況を掴む速度が変わります。
相談者から資格の話が出たときに調べ直す時間も、意外と工数を食います。事務系で名前が挙がるビジネス文書検定、IT系のCCNA(シスコ技術者認定)あたりは、位置づけを事前に頭に入れておくと、面談中に調べる時間がなくなります。
遅延の記録を資産に変える
一度でも遅れると、その案件は特別扱いになりがちです。ただ、記録の残し方を整えておくと、遅延の経験は次の見積もりの精度に変わります。
実績値を残す
案件ごとに、面談から報告書提出までに実際にかかった日数を記録します。予定と実績の差を並べておくと、自分の見積もりの癖が見えます。多くの場合、応答待ちの時間を過小評価しているか、記録作成の時間を過小評価しているかのどちらかです。
10件ほど実績が溜まると、案件の型ごとの標準日数が出せるようになります。ここまで来ると、受注時の日程回答が推測ではなく実績に基づくものになります。相手からの信頼も変わりますし、自分の不安も減ります。
遅延の原因を分類する
遅れた理由を「忙しかった」で片付けないことです。応答待ち、内容の重さ、案件の重複、体調、見積もり不足。この5分類のどれかに入れて記録します。
分類して数えると、対策が絞られます。応答待ちが多いなら契約に期限の条項を入れる。案件の重複が多いなら受注の上限を下げる。体調が多いなら、稼働そのものを見直す必要があります。原因の分布を見ずに全部を精神論で処理しようとすると、必ず再発します。
発注元ごとの傾向を持つ
同じ発注元でも、担当者によって返信の速度がまったく違います。担当者ごとの応答日数を控えておくと、その案件の日程を組むときに現実的な余裕を入れられます。
これは相手を評価する話ではなく、自分の日程を守る話です。返信が遅い相手には、締切を前倒しで設定し、リマインドを1回入れる前提で組む。それだけで、遅延のかなりの部分が消えます。
市場を20年見てきた立場からの観察
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から言うと、長く続いている人と続かない人の差は、遅れの有無ではありません。遅れは誰にでも起きます。差が出るのは、遅れたときの第一報が出るまでの時間です。半日で連絡が来る人は、遅延があっても仕事が途切れません。期日を過ぎてから連絡してくる人は、1回で切られます。
もう1つ、運営者として見てきた限りでは、遅延の背景に「受けすぎ」があるケースが非常に多い。そして受けすぎの背景には、1件あたりの手取りの薄さがあります。中間業者が入って手数料が引かれると、同じ生活を維持するために件数を積むしかなくなり、結果として全部の納期が薄氷になる。直接やり取りできる関係で手数料0%なら、依頼者が出した予算がそのまま受け手に渡るので、件数を絞って1件ずつ丁寧に回す選択肢が現実的になります。納期を守れるかどうかは、意志の強さより、案件構成の問題であることが多い。
依頼の探し方も、この構成に効いてきます。どういう依頼が出ているかを把握しておくと、繁忙期の前に案件の入れ替えを調整できます。職場・転職・キャリア相談のお仕事には相談系の依頼がどういう条件で出ているかが整理されているので、自分の稼働設計と照らして見る価値があります。組織課題は採用や広報の課題と地続きなので、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事のような隣接領域の依頼も眺めておくと、閑散期に埋める仕事の選択肢が増えます。
納期遅れは、起きた時点では単なる事故です。それを信用の毀損に変えるのは、伝える順番を間違えることであり、記録を残さないことです。事実、原因、代替案、依頼。この4つを、間に合う確率が下がった瞬間に、記録の残る形で送る。手順として持っておけば、動揺していても手は動きます。法律も手続きも、正しく使えばあなたの味方です。
よくある質問
Q. 納期に間に合わないと分かったら、いつ連絡すべきですか?
間に合う確率が70%を下回った時点です。確定してから伝えるのでは遅く、相手が予定を組み直す時間を奪います。早めに伝えて結果的に間に合った場合は「巻き返した」という評価になるので、早く言って損をすることはほぼありません。連絡が期日を過ぎてからになると、遅延そのものより連絡の遅さで信用を失います。
Q. 遅延の連絡には何をどの順番で書けばよいですか?
事実、原因、代替案、依頼の順です。事実は「何が何日遅れるか」を具体的な日付で書き、原因は1行で簡潔に、代替案として新しい期日と部分的に先に出せるものを提示し、最後に相手への依頼で締めます。謝罪は冒頭に一度だけ。電話で先に伝えた場合も、必ず同じ内容をメールで送り、記録を残します。
Q. 納期に遅れると損害賠償を請求されるのでしょうか?
遅れただけで即座に賠償になるわけではありません。実際に損害が発生していること、その損害と遅延に因果関係があること、契約に遅延損害金の定めがあるかどうかが関係します。ただし連絡を怠って放置した期間は落ち度として評価されやすいため、早い第一報と代替案の提示が法的にも自分を守る行為になります。個別の判断は弁護士に相談してください。
Q. 遅れの原因が発注側の返信待ちだった場合はどうしますか?
遅延が確定する前に、事実の時系列をメールで残します。何日に何を依頼し、何日時点で未着かを記載し、あわせて「資料の着信から3営業日で提出」といった条件の再設定を提案します。責める文面にする必要はありません。後から経緯を再構成するのは困難なので、進行中に記録を残すことが最も重要です。
Q. 一度遅れたあと、信用を戻すには何をすればよいですか?
新しい期日を必ず守ることが前提です。そのうえで、期日までの中間地点で3行程度の進捗連絡を1本入れます。相手は次も遅れるのではないかと気にしているため、こちらから出す短い連絡が不安を消します。納品時には工程をどう見直したかを1行添えると、遅延が改善された出来事として整理されます。値引きの申し出は原則として勧めません。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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