【上限は2社】在宅電子書籍の表紙デザインの掛け持ちが回る条件


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この記事のポイント
- ✓電子書籍の表紙デザインを在宅で掛け持ちしたいが破綻が怖い
- ✓という相談が増えています
- ✓修正の往復が読めない仕事は3件目から必ず崩れます
電子書籍の表紙デザインを在宅で掛け持ちしたい。でも同時に何件まで抱えられるのか分からない。この状態で検索している人に、結論から言います。同時に契約する相手は2社までです。
理由はシンプルで、この仕事は制作時間ではなく修正の往復回数で稼働が決まるからです。往復は相手のタイミングで発生するので、自分では制御できません。制御できない要素を3系統以上抱えると、スケジュールが組めなくなります。
これは根性や才能の話ではなく、単純な計算の話です。この記事では、掛け持ちが回る条件を数値で示し、契約や税金の実務、そして撤退ラインの決め方までを整理します。おしゃれな仕事に見えて、実態はかなり地味な数字の管理です。
結論から言うと、上限は「同時2社×案件3件」
まず数字を置きます。在宅で表紙デザインを掛け持ちする場合の実務的な上限は、契約している依頼元が2社、同時に進行している案件が合計3件までです。
なぜ社数と案件数を分けるのか。理由は、この2つで発生する負荷の種類が違うからです。案件数は制作時間に効きます。社数は、コミュニケーションのルールの数に効きます。依頼元が変われば、連絡手段も、ファイルの受け渡し方も、確認の回数も、請求の締め日も変わります。これを覚え直すコストが、案件数以上に効いてきます。
実際、掛け持ちで破綻した人の記録を見ると、案件数を増やしたときより、依頼元を増やしたときのほうが崩れています。案件を3件から4件にしたときは対応できたのに、依頼元を2社から3社にした月に納期を落とす。この順番がとても多い。
そして、もうひとつ目安を出します。同時案件数と1件あたりの平均往復回数を掛けた値が、週15を超えると対応が難しくなります。同時3件で平均往復が5回なら、値は15。ちょうど上限です。ここから案件を1件足すか、往復が1回増えるだけで超えます。
電子書籍の表紙デザインという市場の構造を、数字で見る
なぜ往復がここまで効くのか。市場の構造を押さえておきます。
依頼者が個人の著者であることの意味
電子書籍の表紙デザインの依頼者は、出版社の編集者ではなく、個人の著者であるケースが大半です。個人出版の仕組みが整ったことで、原稿を書いた人がそのまま発注者になりました。
この構造の特徴は3つあります。依頼者はデザインの発注に慣れていない。依頼者は自分の本を客観視できない。そして、依頼者は表紙で売れ行きが変わると強く信じている。この3つが揃うと、「もっとインパクトが欲しい」「なんとなく違う」といった、実行に落とせない指示が出やすくなります。
これは依頼者が悪いわけではありません。当事者である以上、自分の本を平均的な読者の目で見るのは難しい。ただ、受け手にとっては往復が増える原因になります。アパレルのEC運営でも同じ構造があって、ブランドのオーナーは自分の商品を客観視できないので、写真の選定で何往復もします。当事者性が高い商材ほど、この現象は強く出ます。
始めるハードルが低いことも、この仕事の特徴です。
電子書籍の表紙デザインの依頼を見て、私はすぐに思いました。やってみよう、と。普段、腰が重くて新しいことに取り組むことの少ない私がそう思った理由は2つ。 出典: note.com
始めやすいのは良い点です。ただ、始めやすい仕事は終わらせにくい。完成の判断が依頼者側にあるからです。掛け持ちで回すなら、この「終わりの決め方」を先に握っておく必要があります。
相場の幅と、実質単価のばらつき
表紙1点の相場は、テキストと既存素材の組み合わせなら5,000円前後から、イラストを描き起こすものなら3万円から10万円程度まで動きます。
ただ、この相場表は掛け持ちの計画には使えません。同じ1万円でも、初稿1案で決まる案件は3時間、修正が6回続く案件は12時間かかります。実質単価は4倍違う。掛け持ちのスケジュールを金額ベースで組むと、必ずずれます。
計画は時間ベースで組んでください。案件を受けるときに「何時間かかるか」を先に見積もり、その合計が自分の稼働可能時間を超えないようにする。金額は結果として付いてくるものと考えたほうが、破綻しません。
プラットフォーム手数料が掛け持ちの効率を下げる
掛け持ちで数を回す戦略を取るなら、手数料の影響が大きくなります。大手のクラウドソーシングでは報酬から16.5%から20%程度が引かれます。年間150万円の売上なら、24万円から30万円が手元に残りません。
掛け持ちは稼働を増やす戦略なので、手取り率が低いと、増やした稼働の一部が丸ごと消えます。同じ2社を回すなら、手数料が乗らない直接取引の比率を上げたほうが、同じ稼働で結果が変わります。
掛け持ちが回る5つの条件
上限の数字を示しましたが、その上限まで回すには条件があります。5つ挙げます。
条件1: 修正回数の上限が全案件で明示されている
これが最優先です。往復が読めない案件が1つでもあると、他の案件のスケジュールも巻き添えになります。
書き方は、見積もりに1行入れるだけです。「初稿2案、そこから修正2回まで。3回目以降は1回3,000円で承ります」。相手を縛るための文ではなく、依頼者に予算の見通しを渡すための文です。実際、この一行があるほうが反応は良くなります。追加でいくらかかるか分からない不安がなくなるからです。
そして、この一行があると依頼者の行動も変わります。修正の機会が限られていると分かると、要望をまとめて出すようになる。細切れに1日3回連絡が来る状態から、まとまった要望が1回来る状態になります。これは掛け持ちにとって決定的な差です。
条件2: 依頼元ごとの締め日と支払日が把握できている
掛け持ちで意外と負荷になるのが、請求まわりです。依頼元によって締め日も支払日も違うので、月末に複数の請求書を別々の様式で出すことになります。
対処は、依頼元ごとの条件を1枚の表にまとめておくことです。締め日、支払日、請求書の送付先、必要な記載項目、振込手数料の負担。この5列があれば足ります。2社ならこの表で管理できますが、4社を超えると管理コストが跳ね上がります。上限を2社としている理由のひとつがここです。
条件3: 連絡可能な時間帯を全依頼元に伝えてある
掛け持ちで崩れる典型が、複数の依頼元から同時に連絡が来て、どれも即答できずに全部遅れるパターンです。
これは最初に防げます。「平日は20時以降、土日は日中に対応いたします。お急ぎの場合はその旨をご記載ください」。この一文を最初のメッセージに入れておくだけで、返信の期待値が揃います。伝えていないと、返信が遅いという評価だけが残る。
私が最初にSNS運用の案件を掛け持ちしたとき、この一文がなくて失敗しました。3社から日中に連絡が来て、全部に即レスしようとして、どの作業も進まない日が続いた。ルールを先に出していれば防げた話です。センスの問題ではなく、単に設計を書いていなかっただけでした。
条件4: 作業の枠が90分以上まとまって取れる
表紙デザインは色と余白の判断が多い仕事です。細切れの20分を積み上げても、まとまった90分には勝てません。中断からの復帰には15分から20分かかると言われますが、デザイン作業では直前まで見ていた色の感覚が飛ぶので、体感はもっと長い。
掛け持ちの設計としては、連絡対応は細切れ時間に、制作は90分以上の枠に、と分けます。週に90分枠を4コマ確保できるなら、同時3件は回せます。2コマしか取れないなら、同時2件までに抑えてください。
条件5: 撤退ラインが数値で決まっている
最後が、やめる条件です。掛け持ちは増やす話ばかりされますが、減らす基準を先に決めておかないと、崩れてから減らすことになります。
決めるのは3つです。着手までの遅れ、返信の遅れ、そして睡眠時間。依頼を受けてから最初のファイルを開くまでに3日以上かかった。依頼者からの連絡に48時間以上返せなかった。睡眠が5時間を下回る日が週3日以上あった。このどれかが起きたら、新規受注を止めます。
止めるといっても永久にではなく、抱えている案件が2件減るまで、という条件付きで構いません。数値で決めておくと、感情に左右されずに判断できます。
掛け持ちを始めるまでの手順
条件が分かったところで、実際の進め方を順番に書きます。
手順1: 現在の実働時間を工程別に測る
まず、直近で納品した3件について、工程ごとの実働時間を洗い出します。工程は、原稿読み込みと打ち合わせ、素材選定、初稿制作、修正対応、納品処理の5つ。
大事なのは、実際に手を動かした分数を出すことです。「その日は表紙作業をしていた」ではなく「合計何分か」。記憶で書くと必ず過小になるので、これから受ける案件で計測するほうが正確です。
手順2: 平均往復回数を数える
次に、依頼者とのメッセージを開いて往復の回数を数えます。挨拶や事務連絡は除き、制作に影響した指示のやり取りだけを数える。
3回以下なら健全、4から6回なら要改善、7回以上なら契約条件から見直す必要があります。この数字が、掛け持ちできる件数を直接決めます。
手順3: 週の稼働可能時間を確定する
生活の中で確保できる時間を、曜日ごとに書き出します。ここで甘く見積もると全部崩れるので、実際に確保できる最小値で書いてください。
週10時間なら、1件10時間の案件を月4件まで。週6時間なら月2件まで。この計算をしてから受注を決めます。
手順4: 2社目を探すときは、1社目と性質が違う相手にする
掛け持ちのコツとして、依頼元の性質を分散させてください。個人の著者2社を並べると、どちらも往復が多いので、繁忙が重なったときに逃げ場がありません。
理想は、往復の多い個人案件と、往復の少ない法人案件を1つずつ持つことです。法人の依頼は仕様が文書で来ることが多く、修正の回数が読めます。個人案件が荒れたときの緩衝材になります。
手順5: 確認シートを共通の型にする
依頼元が増えると、確認事項の管理が煩雑になります。だから、着手前の確認シートは1つの型に統一して、全案件で同じものを使ってください。
入れる項目は6つ。想定読者、競合になる書籍3点、避けたい色と表現、タイトルと著者名の正式表記、シリーズ化の予定、納品形式。とくに正式表記はコピーで受け取るようにしてください。旧字体か新字体か、英字の大文字と小文字、副題の区切り記号。表記のゆれによる作り直しは地味ですが頻発します。
こうした確認書や見積書の型を体系的に整えたい場合は、ビジネス文書検定の出題範囲が実務の骨組みとして使えます。何をどの順で書けば誤解が減るかという整理は、掛け持ちの負荷を直接下げます。
契約と権利で、掛け持ち特有の注意点
複数の依頼元を持つと、契約面のリスクも複数系統になります。押さえるべき点を整理します。
著作権と実績掲載を、案件ごとに確認する
表紙は商品パッケージに相当するので、依頼者は当然に自由に使えると考えます。一方、制作者は著作権が自分に残ると考えている。この認識のずれが後で問題になります。
決めるべきは3点です。著作権を譲渡するのか利用許諾にとどめるのか。譲渡する場合、著作者人格権の不行使を含めるのか。実績としてポートフォリオに掲載してよいか。掛け持ちの場合、依頼元ごとに扱いが違うので、案件ごとに記録しておく必要があります。
とくに実績掲載は、掛け持ちで営業を続けるうえで死活的です。掲載できない案件ばかり受けると、ポートフォリオが増えず、次の依頼元を開拓できなくなります。
競業と守秘の線引き
同じジャンルの書籍を扱う依頼元を複数持つ場合、守秘の線引きが必要になります。A社の企画情報をB社の案件で使わない、というのは当然として、A社で使った構図をB社の表紙で流用しないという配慮も要ります。
契約書に競業避止の条項が入っている場合は、その範囲を必ず確認してください。「同種の業務を他社から受けない」という広い書き方になっていると、掛け持ち自体が契約違反になります。この条項がある場合は、受注前に範囲の限定を交渉すべきです。
報酬の減額や条件変更への備え
掛け持ちしていると、1社で問題が起きたときに交渉に割ける時間が限られます。だから、条件は最初に文書化しておくことが重要になります。
取引条件の明示、報酬の支払期日、不当な減額の禁止といったルールは公正取引委員会が所管しています。発注書や契約書に何を書いておくべきかの実務的なチェック項目は、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに整理されています。掛け持ちで件数が増えるほど、こうした型を持っている効果が大きくなります。
事業の形を整える段階になると、登記や届出の手続きも視野に入ります。自分でやるか専門家に任せるかの費用感は本店移転・役員変更登記の報酬相場|オンライン申請とプロへの依頼比較【2026年最新】で比較されており、外注判断の型として応用できます。
税金は、掛け持ちの件数が増えるほど早く整える
依頼元が複数になると、収入の管理が一気に面倒になります。ここは早めに仕組み化してください。
給与を1か所から受けていて、それ以外の所得が年間20万円を超える場合、所得税の確定申告が必要です。所得は売上から経費を引いた額なので、売上40万円で経費が15万円なら所得は25万円になります。経費になり得るのは、デザインツールの利用料、素材やフォントの購入費、参考書籍代、通信費の按分などです。制度の詳細は国税庁の案内が基準になります。
掛け持ちで注意すべきは、依頼元ごとに支払調書の有無や源泉徴収の扱いが違う点です。源泉徴収されている案件とされていない案件が混在すると、年間の集計が複雑になります。入金額と請求額の差額を毎月記録しておかないと、年末に照合できなくなります。
記録は最初から取ってください。件数が少ないうちは表計算ソフトで足りますが、月4件を超えたらfreeeやマネーフォワードのようなクラウド会計を検討する段階です。会計や申告を外注するという選択肢もあり、その仕組みと費用感は税理士の副業ガイド|確定申告代行・記帳代行で稼ぐ方法【2026年版】で扱われています。
社会保険については、業務委託である限り本業の加入関係が変わりません。これが変わるのは副業が雇用契約で一定の要件を満たす場合だけです。制度の確認先は日本年金機構、働き方と契約の枠組みは厚生労働省になります。
掛け持ちの相手として、表紙デザイン以外も検討する
2社の枠のうち1つを、性質の違う仕事にすると安定します。往復の多い個人案件ばかりを並べると、繁忙が重なったときに逃げ場がなくなるからです。
往復が読める仕事として現実的なのは、成果物が文書や数値で確定する領域です。生成ツールを業務にどう組み込むかを支援する仕事は、成果物が資料や設計になるため、感覚的な差し戻しが起きにくい特徴があります。この分野の案件の性質はAIコンサル・業務活用支援のお仕事で確認できます。広告運用やセキュリティ周辺は数値で成果を示せるので評価軸が明確で、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事にその実務が整理されています。
技術寄りに振るならアプリケーション開発のお仕事があり、仕様が文書で確定するぶん往復の予測が立ちます。この方向の収入水準はソフトウェア作成者の年収・単価相場、基礎資格としてはCCNA(シスコ技術者認定)が入口になります。書籍まわりを軸にするなら編集や構成に広げる道もあり、その水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認できます。表紙のために原稿を読んでいる人は、編集の入口にかなり近い場所にいます。
一週間のスケジュールを、実際に組んでみる
数字の話を続けてきたので、ここで具体的な形に落とします。個人の著者からの案件と、法人からの案件を一件ずつ持っている状態を想定して、平日に本業か別の仕事がある人の一週間を組みます。
月曜と火曜は、連絡対応だけの日にします。制作はしません。週末に届いた要望をまとめて読み、返信の文面を作り、必要なら確認の質問を投げる。ここで質問を出しておくと、水曜以降に着手するときに材料が揃っています。制作をしない日をあえて作るのは、非効率に見えて実は効きます。材料が揃わないまま手を動かすと、あとでやり直しになるからです。
水曜と木曜は、制作の日にします。まとまった枠を確保して、片方の案件だけに集中します。二つの案件を同じ日に触らないのが重要です。表紙は色と余白の判断が多い仕事なので、案件を切り替えるたびに感覚のリセットが必要になります。同じ日に二件を触ると、切り替えのコストが積み上がって、結局どちらも中途半端になります。
金曜は、納品と請求の処理に充てます。書き出し、使用素材の一覧作成、依頼者への送付。この工程は集中を必要としないので、疲れている日に回せます。請求書の作成も同じ日にまとめると、月末に慌てなくて済みます。
土日は、片方だけを制作の日にします。両方を作業日にすると回復の時間がなくなり、翌週の判断力が落ちます。掛け持ちを長く続けている人は、例外なく休みの日を確保しています。休みを取ることは甘えではなく、判断の精度を保つための投資です。
この組み方の要点は、日ごとに作業の種類を固定していることです。今日は連絡の日、今日は制作の日、と決めておくと、その日に何をするか迷う時間がなくなります。掛け持ちで消耗する原因の多くは、実は作業そのものではなく、何から手をつけるかを毎回考えることにあります。
依頼元を三社に増やしたくなったときに考えること
上限は二社と書きましたが、実際には三社目の話が来ます。継続的に依頼をくれそうな相手からの打診は、断るのが惜しい。この判断をどうするかを整理しておきます。
まず確認すべきは、既存の二社の状態です。どちらも往復が三回以下で安定していて、納期を落としたことがなく、直近三か月で新規受注を止めたことがない。この三つが揃っているなら、三社目を検討する余地があります。どれか一つでも欠けているなら、三社目は必ず崩れます。
次に考えるのは、既存のどれかを整理できないかという点です。掛け持ちの相手を増やすときにいちばん賢いのは、増やすと同時に減らすことです。三社のうち一社が、往復が多いわりに単価が低い、あるいは連絡が不規則で読めない、という状態なら、そこを切って新しい相手に入れ替える。総数を増やさずに質を上げる形になります。
入れ替えるときの伝え方も、型を持っておくと楽です。契約を切るのではなく、受注のペースを落とす形にするのが穏当です。「今期は制作枠の都合で、月あたりの受注件数を減らさせていただきます」と伝える。関係を完全に切らずに負荷だけ下げられるので、将来また状況が変わったときに戻れます。
そして、どうしても三社目を受けたい場合は、期限を切ってください。三か月だけ三社体制で走り、その間に着手の遅れや返信の遅れが出なければ継続、出たら元に戻す。期限を切っておくと、判断が感情ではなく結果に基づいたものになります。期限を切らずに増やすと、崩れていることに気づくのが遅れます。
掛け持ちのポートフォリオをどう作るか
依頼元を開拓し続けるには、見せられる実績が要ります。ただ、掛け持ちの状態で新しい作品を作る余裕はないので、既存の案件からどう作るかを考える必要があります。
まず、実績掲載の可否を案件ごとに記録してください。掲載できる案件が全体の半分を下回っている状態は危険です。営業材料が枯れていくので、新しい依頼元を開拓できなくなります。契約時に掲載の可否を確認する習慣をつけて、掲載不可の案件ばかりを受け続けないようにします。
次に、掲載できない案件でも、工程は資産になります。どういう確認をして、どういう根拠でこの構図を選んだか。この思考の過程を、作品を出さずに文章で説明することはできます。実際、発注する側が見たいのは完成品の見栄えだけではなく、進め方が信頼できるかどうかです。完成品を三点並べるより、一点について「なぜこうしたか」を丁寧に書いたほうが、問い合わせにつながるケースは珍しくありません。
そして、掲載する点数は多ければいいわけではありません。方向性がばらばらの作品を並べると、何が得意な人なのかが伝わらなくなります。掛け持ちで受ける案件のジャンルが分散していても、見せるときは絞ってください。得意なジャンルを三点から五点に絞って、それ以外は「他ジャンルも対応可」と一文で済ませる。これで問い合わせの質が変わります。
私も最初の頃、受けた案件を全部並べていました。数が多いほど信頼されると思っていたからです。実際は逆で、絞ったほうが問い合わせが増えました。並べる作業に時間をかけていたのに、その時間が成果を下げていた。掛け持ちで時間がないなら、なおさら絞るべきです。
運営者として見てきた、掛け持ちが続く人の共通点
フリーランスと在宅ワークの市場を20年見てきた立場から、観察を述べます。
掛け持ちで長く続く人ほど、単価を上げることより、依頼者の手間を減らすことに時間を使っています。確認シートを先に送る、修正の上限を明示する、納品時に使用素材の一覧を添える。地味な作業ですが、依頼者からすると「この人に頼むと自分が考えなくて済む」という体験になります。この体験が継続依頼を生み、継続依頼は条件交渉のコストが低い。掛け持ちで限られた時間を使う人にとって、これは決定的な差になります。
もうひとつ、運営者として見てきた限りでは、中間マージンの有無は掛け持ち層にこそ効きます。稼働を増やす戦略を取っている以上、手取り率が低いと増やした分の一部が丸ごと消えるからです。依頼者から見れば同じ予算でより多く頼めるようになり、受け手から見れば同じ働きで手元に残る割合が上がる。手数料0%の直接取引が持つ意味は、金額の大小ではなく、増やした稼働がそのまま結果に変わるという一点にあります。
逆に、掛け持ちが崩れる人に共通しているのは、断る型を持っていないことです。依頼が来たときに、断る文面を毎回考えるのが面倒で受けてしまう。断るときの型は短くて構いません。理由も条件も書かず、「現在の受注状況から今回はお受けできません。◯月以降であればご相談いただけますと幸いです」で十分です。理由を書くと交渉の余地があると受け取られ、そこからまた往復が発生します。
独自データから見える、掛け持ちを組む順番
在宅ワークの募集情報を横断して見ていると、制作系の案件には一貫した傾向があります。工程と成果物が具体的に書かれている募集ほど、実際の作業時間が見積もりに近い。逆に「センスのいい方」「イメージを形にしてくださる方」といった抽象的な表現が多い募集ほど、着手後の往復が増えます。
掛け持ちの設計では、この差が決定的です。往復が読めない案件を2つ並べた瞬間に、スケジュールが組めなくなります。だから案件選びは、単価の話ではなく、掛け持ちが成立するかどうかの前提条件になります。
進める順番はこうです。第一に、実働時間と平均往復回数を記録して現在地を出す。第二に、修正回数の上限を全案件で明示する。第三に、連絡可能な時間帯を全依頼元に伝える。第四に、2社目は1社目と性質の違う相手を選ぶ。第五に、撤退ラインを数値で決めて紙に書く。
この順番には理由があります。第一の記録がないと、何件まで持てるかが計算できないからです。持てる件数が分からないまま2社目を受けると、感覚で受けて感覚で崩れます。逆に、記録さえあれば、2社目を受けるかどうかは計算で答えが出ます。
掛け持ちは、器用さの問題ではありません。数字の管理の問題です。2社という上限は保守的に見えるかもしれませんが、この枠の中で往復を減らしていけば、同じ2社で扱える案件数は着実に増えていきます。増やすべきは社数ではなく、1社あたりの密度です。
よくある質問
Q. 在宅の表紙デザインは同時に何社まで掛け持ちできますか?
契約する依頼元は2社まで、同時進行の案件は合計3件までが実務的な上限です。案件数は制作時間に効きますが、社数は連絡手段や請求条件などルールの数に効くため、負荷の性質が違います。破綻するケースは案件を増やしたときより依頼元を増やしたときのほうが圧倒的に多くなっています。
Q. 掛け持ちで最初に整えるべきことは何ですか?
修正回数の上限を全案件で明示することです。往復が読めない案件が1つあると、他の案件のスケジュールも巻き添えになります。見積もりに「初稿2案、修正2回まで。3回目以降は1回3,000円」と1行入れるだけで、依頼者が要望をまとめて出すようになり、往復が大きく減ります。
Q. 掛け持ちする2社は、どう選べばいいですか?
性質の違う相手を組み合わせてください。個人の著者を2社並べると、どちらも往復が多いため繁忙が重なったときに逃げ場がなくなります。往復の多い個人案件と、仕様が文書で来る法人案件を1つずつ持つのが理想です。法人案件が緩衝材になり、個人案件が荒れても全体が崩れません。
Q. 掛け持ちをやめるべきタイミングはどう判断しますか?
数値で決めておいてください。着手までに3日以上かかった、依頼者への返信が48時間以上遅れた、睡眠5時間未満の日が週3日以上あった。このどれかが起きたら新規受注を止めます。永久にではなく、抱えている案件が2件減るまでという条件付きで構いません。感情ではなく数値で判断できる状態を作るのが目的です。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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