株主総会の議事録に何を書くのか|ひとり会社でも使える書き方とひな形


この記事のポイント
- ✓株主総会議事録に何を書けばよいのかを
- ✓法務局のひな形と法律の条件に沿って整理した
- ✓電子データで保存する条件
法人を作ったあと、最初につまずく書類のひとつが株主総会議事録だ。株主が自分ひとりしかいない会社でも作らなければならないと聞いて、何をどこまで書けばいいのか分からなくなる。検索してたどり着くのは士業のサイトばかりで、条文の引用が並び、読み終わっても手が動かない。この記事では、株主総会議事録に入れる項目を法律が求めている順に並べ直し、ひとり会社でもそのまま使える形にまで落とす。あわせて、押印が必要になる場面、法務局に出すときに一緒に作る書類、保存の期間と場所まで通しで扱う。
株主総会の議事録は「決めた証拠」を紙の形にしたもの
株主総会議事録という名前は重々しいが、中身は「いつ、どこで、誰が集まって、何を決めたか」を残した記録にすぎない。会社法は、株主総会を開いたら議事録を作ることを会社に求めている。ここでいう会社法とは、会社の作り方と運営のルールをまとめた法律のことで、条文はe-Gov法令検索で誰でも読める。
株主総会議事録とは、株主総会の決議事項などを記載した書類です。会社法で作成・保存義務が定められており、株主総会が開催された日時・場所・決議内容・取締役氏名などの事項を記載しなければなりません。
株主総会議事録は、税務調査や登記の際に必要であるため、ルールに則り、取締役が適切に作成・保存してください。作成・保存義務に違反すると、100万円以下の過料が科される可能性があります。 出典: freee.co.jp
ここで押さえておきたいのは、議事録が「会社の中の記録」で終わらないという点だ。使う場面は大きく3つある。
1つ目は登記だ。役員が入れ替わる、本店を移す、商号を変える、目的を書き足す。こうした変更を法務局に届け出るとき、申請書に添える書類として株主総会議事録が要る。法務局が公開している商業・法人登記の申請書様式を開くと、役員変更の記載例には添付書類として株主総会議事録が明記されている。つまり議事録は、会社の中だけで回る書類ではなく、国の登記簿を書き換えるための根拠になる。
2つ目は税務調査だ。役員報酬をいくらにしたか、退職金をいくら払ったか。こうした金額は、株主総会で決めたという裏付けがあって初めて筋が通る。取締役の報酬は、定款に書いていなければ株主総会の決議で決めることになっている。決議の記録がなければ、支払った側の言い分を支える紙が何もない状態になる。
3つ目は株主や債権者からの閲覧請求だ。株主と債権者は、会社の営業時間内であればいつでも議事録を見せてほしいと請求できる。ひとり会社では現実に請求が来ることは少ないが、将来に出資者を入れたり、金融機関と付き合いが深くなったりすれば話は変わる。
作らなかった場合、または保存しなかった場合には、100万円以下の過料が科される可能性がある。過料は前科がつく刑罰ではなく、行政上のペナルティとしてのお金だが、裁判所から通知が届く点は変わらない。
議事録に必ず入れる6つの項目
会社法は議事録の書式そのものを決めていない。決めているのは「これだけは内容に含めること」という項目で、法務省令に6つ並んでいる。初めて作る人が迷わないよう、専門用語を外して並べ直す。
1. 開いた日時と場所。 何年何月何日の何時何分に、どこで開いたかを書く。ここには「その場にいなかった役員や株主が、どうやって参加したか」も含まれる。オンライン会議で参加した取締役がいるなら、テレビ会議システムで参加した旨を書き添える。
2. 議事の経過の要領と、その結果。 「要領」という言い方は分かりにくいが、要するにあらすじでよいということだ。発言を一字一句書き起こす必要はない。議長が議案を出し、説明し、賛否を諮り、可決した。この流れが読み取れれば足りる。
3. 特定の場面で述べられた意見や発言の概要。 監査役が辞める理由を総会で述べた、会計参与が計算書類について意見を言った、といった決まった場面の発言は、概要を残すことが求められている。ひとり会社や小さな会社では、この場面に当たらないことがほとんどだ。当たらないなら書かなくてよい。
4. 出席した取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人の氏名。 役職名と氏名を並べる。株主ではなく役員の名前である点に注意したい。
5. 議長がいたなら、議長の氏名。 定款で「代表取締役社長が議長になる」と決めている会社が多い。その場合は定款の定めにより議長になった旨を書くと、なぜその人が議長なのかが読み手に伝わる。
6. 議事録を作った取締役の氏名。 誰が作成の職務を行ったかを残す。ひとり会社なら代表取締役本人の名前がここに入り、4番と5番と6番がすべて同じ名前になる。それで問題ない。
この6つのうち、実務で抜けやすいのは6番だ。議長と出席取締役の名前は書いたのに、作成者を書き忘れる。記載例を見ながら書いていると、末尾の署名欄で満足してしまうためだ。
株式の数や議決権の数は、この6項目には入っていない。ただし登記に使う議事録では、定足数を満たしていたことが読み取れるように、議決権を行使できる株主の数と議決権の数、出席した株主の数と議決権の数を冒頭に並べるのが一般的だ。法務局の記載例もこの形になっている。
ひとり会社でも使えるひな形と、書く順番
法務局の記載例をもとに、株主が少ない会社でそのまま使える形を示す。空欄の記号はテンプレートであることを示すための印で、実際には自社の情報を入れる。
第◯回定時株主総会議事録
令和◯年◯月◯日午前◯時◯分から、当会社の本店において定時株主総会を開催した。
株主の総数 ◯名
発行済株式の総数 ◯◯株
議決権を行使することができる株主の数 ◯名
議決権を行使することができる株主の議決権の数 ◯◯個
出席株主数(委任状による者を含む) ◯名
出席株主の議決権の数 ◯◯個
出席取締役 ◯◯◯◯(議長兼議事録作成者)
以上のとおり株主の出席があったので、定款の定めにより代表取締役◯◯◯◯は議長席につき、
本総会は適法に成立したので、開会する旨を宣し、直ちに議事に入った。
第1号議案 第◯期計算書類の承認に関する件
議長は上記議案を付議し、第◯期の貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書
および個別注記表について説明した。総会は満場異議なくこれを承認可決した。
議長は以上をもって本日の議事を終了した旨を述べ、午前◯時◯分閉会した。
上記の決議を明確にするため、この議事録を作り、議長兼議事録作成者が記名押印する。
令和◯年◯月◯日
◯◯株式会社 第◯回定時株主総会
代表取締役 ◯◯◯◯ 印
書く順番はこの通りに進めると迷わない。まず表題で、定時なのか臨時なのかと回数を示す。次に開催の日時と場所。続いて株主と議決権の数を並べ、出席した役員の名前を書く。ここまでが「開いた事実」の記録だ。
そのあとに議案が来る。議案は「第1号議案」「第2号議案」と番号を振り、1つの議案につき、議長が付議したこと、説明した内容、諮った結果の3つを書く。結果は「満場異議なく承認可決した」「出席株主の議決権の過半数の賛成により可決した」のように、賛成がどれだけあったかが分かる書き方にする。
最後に閉会時刻を書き、日付と会社名、署名する人の役職と氏名を並べて終わる。開会時刻と閉会時刻の両方を書くのは、総会が実際に時間をかけて行われたことを示すためだ。ひとり会社で実質5分で終わったとしても、始まりと終わりの時刻は書いておく。
議事録の分量は、A4で1枚から2枚に収まるのが普通だ。長く書けば信頼性が上がるという種類の書類ではない。むしろ、書かなくてよい発言まで書き込むと、あとから矛盾を指摘される材料を自分で増やすことになる。
定時と臨時で変わるところ、変わらないところ
株主総会には定時と臨時の2種類がある。定時株主総会は、毎事業年度の終わったあと一定の時期に開くもので、決算を承認する場だ。臨時株主総会は、それ以外のタイミングで必要が生じたときに開く。
議事録の書き方という点では、両者の骨格は同じだ。必ず入れる6項目も同じ、保存の期間も同じ、押印のルールも同じ。違うのは表題と、扱う議案の中身だけだと考えてよい。
表題は「第◯回定時株主総会議事録」と「臨時株主総会議事録」で使い分ける。定時には期の回数を入れるのが通例で、臨時には回数を入れないことが多い。ここを取り違えても登記が通らないわけではないが、あとから自社の記録を並べたときに、どの期のものか分からなくなる。
議案の中身は明確に違う。定時株主総会では、計算書類の承認が毎年必ず入る。計算書類とは、貸借対照表や損益計算書など、その期の成績をまとめた書類のことだ。取締役会を置いていない会社では、これを定時株主総会に出して承認を受ける。役員の任期が満了する年であれば、同じ総会で選び直す議案も加わる。
取締役の任期は、原則として選任後2年以内に終わる事業年度のうち最後のものに関する定時株主総会の終結時までとされている。ただし、株式の譲渡に会社の承認が要る会社、いわゆる非公開会社であれば、定款で最長10年まで伸ばせる。ひとり会社で任期を10年にしている例は多いが、その場合は10年目の定時株主総会で必ず選び直しの議案が立つ。任期を伸ばすと総会の手間は減るが、10年に1度の手続きを忘れやすくなる面もある。
臨時株主総会の議案は、必要が生じたその都度だ。本店を別の市区町村に移す、事業目的を追加する、商号を変える、増資する、役員を途中で入れ替える。いずれも登記とセットで発生することが多く、議事録がそのまま登記の添付書類になる。
押印が問われるのは登記に出すとき
議事録に押印が必要かどうかは、多くの人が引っかかるところだ。答えを先に書くと、会社の中に置いておくだけの議事録には、法律上の押印義務はない。そのうえで、登記に使う議事録では話が変わる。
登記の場面で厳しくなるのは、代表取締役が新しく就任したときの扱いだ。取締役会を置いていない会社で、株主総会の決議によって代表取締役を決めた場合、その株主総会議事録に議長と出席取締役が押した印について、市区町村長が作った印鑑証明書を添えることが求められる。つまり、この場面では議事録に個人の実印を押し、印鑑証明書を取ってくる必要がある。
ただし例外があり、その印鑑が、前の代表取締役が法務局に届け出ている印鑑と同じであるときは、印鑑証明書の添付が要らない。代表者が変わらず再任されただけの場合は、この例外に当たることが多い。
取締役会を置いている会社では、代表取締役を選ぶのは取締役会なので、印鑑証明書が問われるのは取締役会議事録のほうになる。この場合の株主総会議事録は、取締役を選んだ記録として添えることになり、押印は会社の実印で足りるのが通例だ。
新しく取締役に就任する人については、就任を承諾したことを示す書類に押した印鑑の証明書か、本人確認ができる公的な証明書のどちらかが要る。就任承諾書を別に作る代わりに、議事録に「被選任者は席上その就任を承諾した」と書いておけば、就任承諾書の提出を省ける。この方法を使うときは、登記申請書に「就任承諾書は、株主総会議事録の記載を援用する」と書き添える。就任承諾書を1枚減らせるので、書類を減らしたい会社は検討する価値がある。
押印の要否は会社の機関設計と議案の組み合わせで決まるため、迷ったら申請先の法務局に電話で確認するのが早い。法務局は申請前の相談を受け付けており、添付書類の過不足はその場で教えてもらえる。
登記に出すなら株主リストもセットで作る
登記の添付書類として議事録を出すとき、もう1枚必要になる書類がある。株主リストだ。2016年10月1日以降の申請から添付が求められるようになった書類で、この存在を知らずに議事録だけ持っていくと、法務局で差し戻される。
「株主リスト」が登記の添付書面となりました。平成28年10月1日以降の株式会社・投資法人・特定目的会社の登記の申請に当たっては、添付書面として、「株主リスト」が必要となる場合があります。 出典: moj.go.jp
株主リストが要るのは2つの場面だ。ひとつは、登記する事項について株主総会の決議が必要な場合。もうひとつは、株主全員の同意が必要な場合。役員の変更、商号の変更、目的の変更、本店移転の多くはひとつ目に当たる。
書く内容は、株主総会の決議が要る場合であれば、議決権の数が多い上位10名の株主と、議決権の割合を上から足していって3分の2に達するまでの株主、このどちらか少ないほうの株主について、氏名または名称、住所、株式数、議決権数、議決権数の割合の5点を並べ、代表者が証明する形にする。
ひとり会社であれば、株主は1名で議決権の割合は100%になる。上位10名でも3分の2でも、結果として1行だけのリストになる。書式は法務省のページからExcelとPDFの両方で配布されているので、自分で表を組む必要はない。
総会を開かずに株主全員の同意で決めた場合は、書く項目が少し変わり、株主全員について氏名または名称、住所、株式数、議決権数の4点を書く。議決権の割合は不要だ。
総会を開かずに決めたときの議事録
株主が少ない会社では、実際に全員が集まって会議をすることのほうが珍しい。会社法はこの実態に合わせて、決議を省略する方法を用意している。取締役または株主が議案を提案し、議決権を行使できる株主の全員が書面または電子データで同意の意思を示せば、その提案を可決する総会決議があったものとみなされる。
この方法を使った場合でも、議事録は作る。ただし書く項目が変わる。会議を開いていないので、開催の日時や場所、議事の経過は存在しない。代わりに、決議があったとみなされた事項の内容、その提案をした人の氏名または名称、決議があったとみなされた日、議事録を作った取締役の氏名の4点を書く。
注意したいのは、同意書そのものも保存しなければならない点だ。株主から集めた同意の書面または電子データは、決議があったとみなされた日から10年間、本店に備え置く。議事録を作ったから同意書は捨ててよい、とはならない。
また、この方法で登記をする場合も株主リストは必要だ。決議を省略したケースも添付が求められる対象に入っている。会議を開かなかったから書類が減るわけではなく、むしろ同意書という別の紙が増えると考えたほうが実態に合う。
定時株主総会の議案すべてについてこの方法で決議があったとみなされた場合、その時点で定時株主総会が終結したものとみなされる。役員の任期は定時株主総会の終結時までで区切られるので、この「みなされた日」が任期の区切りになる。
電子データで作るときの条件と、保存する場所
議事録は、書面でも電子データでも作れる。紙に印刷して綴じる義務はない。
保存の場所と期間は法律で決まっている。総会の日から10年間、議事録を本店に備え置く。支店があるなら、写しを5年間、その支店に備え置く。
株主総会議事録は、本店では10年間、支店では写しを5年間保存することが義務とされています。ただし、議事録を電子データで作成し、支店においてそのデータを閲覧できるようにしている場合には、支店での備え置き義務はありません。 出典: freee.co.jp
支店で写しを置かなくてよくなる条件は、電子データで作っていて、なおかつ支店で株主や債権者の閲覧請求に応じられる措置をとっていることだ。支店が1か所でもあるなら、紙を2セット回すより、社内で共有できる場所にデータを置くほうが運用は楽になる。支店がない会社には関係のない話なので、ひとり会社であれば本店に10年、とだけ覚えておけばよい。
電子データで作る場合、電子署名が必須かどうかを気にする人が多いが、会社の中に置いておくだけなら電子署名がなくても議事録として成立する。一方で、登記のオンライン申請に添付する電子データとして使うなら、決められた形式の電子署名が要る。法務局の窓口に紙で出すのか、オンラインで出すのかで求められるものが変わるので、作る前にどちらで申請するかを決めておきたい。
税務の側からも保存の話が来る。法人は帳簿と、取引に関して作ったり受け取ったりした書類を、確定申告書の提出期限の翌日から7年間保存することになっている。欠損金が生じた事業年度については10年間だ。議事録そのものはこの「帳簿書類」の一覧に名指しで並んでいるわけではないが、役員報酬や退職金の根拠として提示を求められる場面があるため、結局は会社法の10年に合わせて残しておくのが現実的だ。
法務局で止まる書き損じ
議事録が原因で登記が進まなくなるパターンは、だいたい決まっている。
最も多いのが、日付の矛盾だ。総会の日付より前の日付で就任承諾書を作ってしまう、議事録の開催日が定款で定めた基準日の期間から外れている、といったずれが起きる。基準日を決めた場合、その日の株主が権利を行使できる期間は3か月以内と決まっているので、決算日を基準日にしている会社は、決算日から3か月を過ぎた日に定時株主総会を開くと筋が通らなくなる。
次に多いのが、定足数と賛成数の書き方だ。「満場異議なく可決」とだけ書いてあるのに、冒頭の出席株主の議決権の数が、決議に必要な数に届いていない。数字と文章がかみ合っていないと、法務局は決議が有効に成立したと読めない。議案の種類によって必要な賛成の割合は変わり、定款の変更のように重い議案では、出席株主の議決権の3分の2以上という重い条件がかかる。
3つ目は、押印と印鑑証明書のずれだ。議事録に押した印と、添えた印鑑証明書の印が違う。あるいは印鑑証明書の発行から時間が経ちすぎている。印鑑証明書は発行から3か月以内のものを求められることが多いので、書類を揃える順番としては、議事録を先に作り、印鑑証明書はあとから取りに行くほうが安全だ。
4つ目は、登記の期限を過ぎていることだ。登記すべき事項が発生してから2週間以内に申請することが法令で決まっている。期限を過ぎても申請そのものは受け付けてもらえるが、代表者に対して裁判所から100万円以下の過料が科される可能性がある。役員の任期満了は毎年同じ時期に来るので、カレンダーに入れておくのが確実だ。
書き損じを防ぐ実務的な方法として、法務局の記載例をそのまま土台にするやり方がある。記載例は注釈つきで公開されており、どこに何を書くか、どの場合に何を足すかが本文の脇に書かれている。ゼロから文章を考えるより、記載例の固有名詞を自社のものに置き換えるほうが、抜けも矛盾も起きにくい。
1年の流れのどこで作ることになるのか
議事録づくりを重く感じる原因のひとつは、それが年間のどこに入る作業なのかが見えていないことだ。決算日を起点に並べ直すと、位置がはっきりする。
3月31日を決算日とする会社を例にする。
・4月から5月 計算書類と事業報告をまとめる。監査役がいれば監査を受け、取締役会があればそこで承認する ・5月中旬 招集の通知を出す。全株式に譲渡制限をつけている会社なら、総会の1週間前までで足りる ・5月下旬 定時株主総会を開き、決算の承認と、任期が満了する役員の選び直しを決める ・総会の当日か翌日 議事録を作る。数字が頭に残っているうちに書くのがいちばん早い ・総会から2週間以内 役員の変更など登記すべき事項があれば、法務局へ申請する ・5月31日まで 法人税と地方税の申告を済ませる
最後の行が全体の位置を決めている。法人税法は、確定申告書を各事業年度の終了の日の翌日から2か月以内に提出することを求めている。3月決算なら5月末が期限だ。そして申告は確定した決算に基づいて行うものなので、その前に定時株主総会で決算を承認しておく必要がある。つまり総会の時期は、申告期限から逆算して自動的に決まっている。
どうしても2か月では総会を開けない会社には、申告期限を1か月延ばす仕組みがある。定款の定めなどによって決算後2か月以内に定時総会が招集されない状況にあると認められる場合に、税務署長へ申請して延長を受けるものだ。ただし申請は、延長したい事業年度の終了の日までに出す必要がある。決算が終わってから思い立っても間に合わないので、使うなら決算日より前に動く。
この並びを1枚のメモにして、決算のファイルの先頭に入れておく。翌年はそれをなぞるだけになり、毎年ゼロから思い出す必要がなくなる。
見せてほしいと言われたときに、どこまで応じるのか
閲覧を求められたときの扱いは、株主名簿とくらべると性質がはっきりする。
株主名簿については、会社法が請求の理由を明らかにすることを求めていて、しかも会社が断れる場合をいくつか挙げている。権利の確保や行使に関する調査以外の目的で請求してきたとき、会社の業務を妨げる目的のときなどだ。
議事録には、この条件が置かれていない。株主と債権者は、会社の営業時間内であればいつでも、書面またはその写しの閲覧か謄写を請求できる。理由を述べる必要はなく、会社が断れる場合も並べられていない。この書類が「外に見せるための記録」であることは、この差にそのまま表れている。
正当な理由なく拒むと過料の対象になる。会社法が100万円以下の過料を定めている場面には、閲覧や謄写を拒んだときと、備え置くべき書類を備え置かなかったときの両方が入っている。作っていないことと、作ったのに出せないことが、同じ重さで扱われているわけだ。
親会社がある会社では、もう1段ある。親会社の株主などが子会社の議事録を見たいときは、裁判所の許可を得てから請求することになっている。会社が直接その場で応じる相手ではないので、グループの上の会社から議事録を見せてほしいと言われた場合は、どの立場での請求なのかを先に確かめればよい。
実務で決めておくとよいのは、請求されたときに何を渡すかである。原本を手渡すのではなく写しを渡す、社外に出す前に代表者が中身を確認する、渡した日と相手を1行メモに残す。この3つを先に決めておけば、急に言われても慌てずに済む。
総会を開かないこと自体も、過料の対象に入っている
議事録の話をするときに抜けやすいのが、その手前の段階だ。会社法は、定時株主総会を毎事業年度の終了後の一定の時期に招集しなければならないと定めている。開くかどうかは会社の裁量ではない。
そして、招集を怠ったときも100万円以下の過料の対象として挙げられている。議事録を作らなかった場合と同じ枠である。「総会を開いていないから議事録がない」という説明は、理由になっていないどころか、もう1つの不備を自分から申告していることになる。
株主が1人の会社で、決算の数字を自分で確認して承認する。これで総会を開いたことになる。かかる時間は数十分で、そのまま議事録を書けばひとつの作業として終わる。開かない理由を探すより、開いて記録を残すほうが早い。
合同会社に株主総会議事録はない
同じ法人でも、合同会社には株主も株主総会も存在しない。出資して経営に関わる人を社員と呼び、意思決定は社員の同意や業務を執行する社員の決定で行う。会社法は持分会社に議事録の作成を義務づけていないので、株主総会議事録という書類自体が出てこない。
では登記のときに何を添えるのか。合同会社の登記では、総社員の同意書や業務を執行する社員の決定書といった書面が、株式会社の議事録に当たる役割を果たす。名前は違うが、外に対して決まったことを示す証拠という性質は同じだ。
義務がないからといって何も残さない運用は勧められない。社員が複数いる合同会社で、誰がいつ何に同意したかの記録がなければ、あとから意見が分かれたときに拠り所がなくなる。株式会社と同じ様式で作る必要はないので、日付、決めたこと、同意した社員の名前を書いた1枚を都度残しておけば足りる。
株式会社から合同会社へ、あるいはその逆へ組織を変えることを検討しているなら、この書類の作り方も一緒に変わる。手続きの入口が違うので、変更を考え始めた段階で司法書士に確認したほうが確実だ。
書類の型を持つことが、そのまま仕事の質になる
在宅で仕事を受ける人や小さな会社を運営する人を長く見てきた立場から言えば、議事録のような定型の書類は「毎年同じものを作る作業」に落とし込んだ人ほど、本業に時間を回せている。1年目に苦労して1つ型を作り、翌年からは日付と数字だけを差し替える。この形にたどり着くまでが山で、越えてしまえば年に30分の作業になる。
逆に、毎年ゼロから調べ直している会社は、毎年同じところでつまずく。押印は要るのか、株主リストは要るのか、期限はいつまでか。調べ直す時間そのものがコストであり、しかも去年の判断が正しかったかどうかを検証する手間も加わる。書類の型を持つというのは、判断を1回で済ませるということだ。
この考え方は、法人の書類に限らない。見積書、契約書、業務完了報告書といった取引の書類も同じで、型を持っている人は交渉が速い。実務の現場を見ていると、文書の作法を身につけている人ほど、発注側から「話が早い」と評価されている。文書作成そのものを体系的に学び直したい人には、ビジネス文書の型を扱うビジネス文書検定のような資格の学習範囲が、そのまま実務のチェックリストとして使える。
法人を作ったあと、書類づくりを自分で全部抱えるか、外に出すかという判断も出てくる。定型の書類を作れる人に頼むという選択肢は、実は在宅ワークの市場でも需要がある分野だ。文書の作成や編集を仕事にしている人の相場観は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認でき、業務委託で依頼する場合の予算感をつかむ材料になる。システム面の内製化を考えているなら、開発を担う人の相場はソフトウェア作成者の年収・単価相場が参考になる。
会社の運営が軌道に乗ってくると、今度は業務そのものを外部に切り出す話が出てくる。どんな仕事が在宅で受け渡しされているかを知っておくと、自社のどこを外に出せるかの判断がつきやすい。開発を切り出すならアプリケーション開発のお仕事、業務の進め方そのものを相談したいならAIコンサル・業務活用支援のお仕事、集客まわりを含めて任せたいならAI・マーケティング・セキュリティのお仕事が、それぞれどんな案件が動いているかを知る入口になる。
外注の実務で見落とされやすいのが、支払いと契約の条件だ。発注書の書き方や、支払期日の決まりについてはフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストにまとめてある。万一、報酬の支払いでもめた場合の進め方は未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】が実務的だ。決算や税務まわりを相談できる相手を探しているなら、その分野の人がどう働いているかを知る意味で会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】も参考になる。技術面の委託先を選ぶ目を養いたいなら、ネットワークの基礎資格であるCCNA(シスコ技術者認定)の出題範囲に目を通しておくと、提案書の中身を読めるようになる。
20年この市場を見てきて確かなのは、間に中間業者が入らない直接の取引では、同じ予算でも依頼側はより多くを頼めて、受ける側の手取りは厚くなるということだ。手数料0%という条件の値打ちは、金額の多寡そのものよりも、双方が納得して長く続けられる関係を作りやすいという質にある。議事録のような書類を毎年きちんと残している会社は、そうした関係を築くときの信用の土台も同時に積み上がっている。
よくある質問
Q. 株主が自分ひとりの会社でも株主総会議事録は必要ですか?
必要です。会社法は株主の人数に関係なく、株主総会を開いたら議事録を作ることを求めています。ひとり会社では議長、出席取締役、議事録作成者がすべて同じ名前になりますが、それで問題ありません。作成や保存を怠ると100万円以下の過料が科される可能性があります。
Q. 議事録に押印は必要ですか?
会社の中に保管するだけなら法律上の押印義務はありません。ただし登記に使う場合は別で、取締役会を置いていない会社が株主総会で代表取締役を決めたときは、議長と出席取締役が押した印の印鑑証明書が求められます。前の代表者が法務局に届け出た印と同じ場合は添付を省けます。
Q. 株主総会を実際に開かずに決議を済ませることはできますか?
できます。議案について、議決権を行使できる株主の全員が書面または電子データで同意すれば、可決する決議があったものとみなされます。この場合も議事録は作りますが、書く項目が変わり、決議があったとみなされた事項、提案者の氏名、みなされた日、作成した取締役の氏名の4点になります。同意書自体も10年間の保存が必要です。
Q. 議事録はいつまで保存すればよいですか?
総会の日から10年間、本店に備え置きます。支店がある場合は写しを5年間置きますが、電子データで作り支店で閲覧できるようにしていれば支店での備え置きは不要です。10年を過ぎれば法律上の義務はなくなりますが、過去の決議が争点になったときの証拠になるため、廃棄せず残しておくのが安全です。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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