法人の印鑑登録に要るもの|個人の印鑑証明書も要る

丸山 桃子
丸山 桃子
法人の印鑑登録に要るもの|個人の印鑑証明書も要る

この記事のポイント

  • 法人の印鑑登録に必要なものを持ち物の単位で整理しました
  • そして作成後3か月以内の個人の印鑑証明書
  • 印鑑カードの申請まで含めた順番と

法人の印鑑登録に必要なものは4つです。印鑑届書、登録する会社の印鑑、代表者個人の実印、そして代表者個人の印鑑証明書。この4つがそろっていれば、その日のうちに終わります。

見落とされやすいのが4つめです。会社の印鑑を登録する手続きなのに、なぜ個人の印鑑証明書が要るのか。理由は、届け出ている人が本当に代表者本人かを確かめる手段が、それしかないからです。会社の印鑑はこれから登録するものなので、本人確認の材料になりません。

ここでは、持ち物を1つずつ、どこで手に入れて何に使うのかまで分解します。あわせて、印鑑カードを同じ日に受け取るための段取りと、代理の人に頼む場合に追加で要るものを、法務局と法務省が公表している資料で確かめた内容だけで並べます。

必要なもの1:印鑑届書

法務局が配っている「印鑑(改印)届書」という様式です。A4の紙1枚で、法務局のサイトからPDFとExcelの両方が手に入ります。登記所の窓口にも備え付けられています。

この様式は法人の種類で分かれていません。1つの用紙に「代表取締役・取締役・代表理事・理事」と候補が印刷されていて、自分に当たるものを選ぶ作りです。合同会社の代表社員のように候補に無い肩書は、隣の空欄に書き込みます。

一方、記載例のほうは法人の種類ごとに用意されています。株式会社、特例有限会社、持分会社、NPO法人、一般社団法人、一般財団法人、事業協同組合、社会福祉法人、医療法人、学校法人など、15種類ぶんのPDFが並んでいます。書き始める前に、自分の法人の種類に合う記載例を1つ開いて、どの欄に何が入るかを見ておくと迷いません。

書く内容は、商号、本店の住所、印鑑を届け出る人の資格と氏名と生年月日です。商号と住所は、登記するとおりに一字一句合わせます。名刺に刷っている「1-1-1」のような略記ではなく、「一丁目1番1号」の形です。設立の登記と同時に出すなら、登記申請書の表記をそのまま写してください。

書き込むのは太い枠の中だけです。枠の外にある「印鑑処理年月日」「受付」「調査」といった欄は、登記所の職員が使うものなので空欄のままにします。

必要なもの2:登録する会社の印鑑

会社の実印にする印鑑そのものです。届書の左上にある四角い欄に、この印鑑を押します。押した印影がそのまま登録されるので、かすれや二重写りがあると使えません。

印鑑の大きさには決まりがあります。商業登記規則は次のように定めています。

印鑑の大きさは、辺の長さが一センチメートルの正方形に収まるもの又は辺の長さが三センチメートルの正方形に収まらないものであつてはならない。 4 印鑑は、照合に適するものでなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp

言い換えると、辺1センチメートルの正方形にすっぽり入ってしまう小さすぎるものと、辺3センチメートルの正方形からはみ出す大きすぎるものは登録できません。実際に売られている法人の実印は直径18ミリメートルが定番で、この範囲にきちんと収まります。

「照合に適するもの」という条件も効いてきます。輪郭が欠けている、文字がつぶれて読み取れない、デザインを凝らしすぎて輪郭線が途切れている。こういうものは差し戻される可能性があります。ネット通販で極端に安く買ったものや、ゴム印は避けてください。

はんこ屋で「会社設立セット」として売られている3本組は、実印・銀行印・角印の組み合わせで、実印はこの規格に合わせて作られています。会社を作るタイミングで一式そろえるのが結局いちばん早いです。

押すときは、印鑑用の朱肉を使い、下に硬い板を敷いて垂直に押します。練習用の紙で数回試してから本番に移ってください。押し損じたら修正液や二重線でごまかさず、新しい用紙に書き直すのが確実です。

必要なもの3:代表者個人の実印

届書の下のほうに「届出人」の欄があります。ここに押すのは、代表者個人が住んでいる市区町村に登録している実印です。会社の印鑑ではありません。

この書類で最も間違えやすいのが、押す印鑑が2種類あるという点です。上の欄は会社の印鑑、下の欄は個人の実印。上下の使い分けを取り違えると、本人確認ができていないとして受け付けてもらえません。

記載例の欄外にも「市区町村に登録済の印鑑」と注記が入っています。届書を印刷したら、押す前に両方の欄の注記を読んでおいてください。

個人の実印をまだ登録していない場合は、そこから始めることになります。住んでいる市区町村の役所で印鑑登録をして、印鑑登録証を受け取る手続きです。会社の設立を決めてから、いちばん最初に片付けておくべき手続きがこれだ、と考えてください。定款を公証役場で認証してもらう段階でも個人の印鑑証明書が要るので、どのみち必要になります。

必要なもの4:代表者個人の印鑑証明書

市区町村役場で取る、個人用の印鑑証明書です。届書に添付して提出します。

期限があります。商業登記規則では、市町村長の作成した証明書で作成後3月以内のもの、と定められています。印鑑届書の記載例にも「この届書には作成後3か月以内の本人の印鑑証明書を添付してください」と明記されていて、様式の一番下にも添付書面として書かれています。

つまずきやすいのが、定款の認証から登記の申請までに時間が空いた場合です。会社を作る過程では、公証役場での定款認証のときにも個人の印鑑証明書を使います。そのときにまとめて取ったものを手元に置いているうちに、3か月を過ぎてしまうことがあります。出す前に日付を確かめてください。

通数を減らす方法もあります。届書の下のほうに「市区町村長作成の印鑑証明書は、登記申請書に添付のものを援用する」というチェック欄があります。設立の登記申請書にも代表者の印鑑証明書を添付する場合、同じものを使い回してよい、という意味です。ここにレ点を入れれば、印鑑届書のために別途1通用意する必要はありません。

1通あたりの手数料は数百円ですが、役所へ行く回数が1回減ることのほうが大きい。チェック欄の存在は覚えておいて損がありません。

持って行かなくてよいもの

逆に、要ると思われがちで実は不要なものを挙げておきます。

会社の登記事項証明書は不要です。設立と同時に出すならまだ登記されていませんし、すでに登記されている会社なら会社法人等番号を書けば足ります。

代表者の運転免許証やマイナンバーカードも、届書の提出には求められていません。本人確認は個人の実印と印鑑証明書で行う設計だからです。ただし持って行って困るものでもないので、心配なら財布に入れておけばよいです。

定款の原本も不要です。設立登記の申請書には添付しますが、印鑑届書の添付書面ではありません。

銀行印や角印も不要です。登記所に届け出るのは1本だけで、それが会社の実印になります。銀行印は銀行に、角印は社内で使うもので、登記所とは関係がありません。

手数料も不要です。印鑑の届出そのものに手数料はかかりません。収入印紙を貼る欄も様式に用意されていません。

いつ出すのか:設立と同時が最も手数が少ない

印鑑届書は、設立の登記申請書と一緒に出せます。法務局のサイトでも、株式会社の設立登記申請書の記載例のところに印鑑届書の様式と記載例が並べて置かれていて、セットで用意することが前提の作りになっています。

同時に出す利点は2つあります。1つは、個人の印鑑証明書を援用できるので1通で済むこと。もう1つは、登記所へ行く回数が1回で済むことです。

あとから出すこともできますが、会社の実印が登録されていない状態では困る場面が出てきます。書面で登記を申請する場合、申請書や委任状には登記所に提出している印鑑を押すことが定められています。また、会社の印鑑証明書を請求できるのは印鑑を登記所に提出した者だけです。法人口座の開設や事務所の契約で印鑑証明書を求められたときに、すぐ動けません。

なお、会社の設立年月日は、登記所が設立登記申請書を受け付けた日になります。法務局も、会社・法人は設立の登記をすることによって成立するので、設立年月日は登記所が申請を受け付けた日になる、と説明しています。創業日にこだわりがあるなら、その日に窓口へ出す必要があります。

どこへ出すのか:本店の管轄に限られる

提出先は、会社・法人が登記されている登記所です。設立のときは、本店の住所を管轄する登記所になります。

ここは間違えやすいところです。会社の印鑑証明書そのものは、商業・法人登記情報交換システムによって全国どこの登記所でも取れます。ところが印鑑に関する届出は、本店の管轄の登記所でしか受け付けていません。法務局も、印鑑に関する届出は会社・法人が登記されている登記所に提出するよう案内しています。

管轄がどこになるかは、法務局のサイトの管轄案内で調べられます。同じ市内でも、区によって管轄の出張所が分かれていることがあるので、行く前に確かめてください。

窓口の受付時間は、祝日と年末年始を除く月曜日から金曜日の午前8時30分から午後5時15分までです。ただし法務省は、令和6年1月4日から登記所の窓口対応時間を9時から17時までとする運用を始めたと案内しています。朝いちばんで済ませるつもりでも、9時前には対応してもらえない可能性が高いので、午前9時以降の前提で予定を組んでください。

印鑑カードも同じ日に受け取れる

印鑑届書を出しただけでは、会社の印鑑証明書は取れません。もう1つ、印鑑カードが要ります。

印鑑カードは、印鑑証明書を請求するときに窓口で提出する磁気帯付きのカードです。商業登記規則では、印鑑の証明の申請書を提出する場合には印鑑カードを提示しなければならないと定められています。カードが無ければ、代表者本人が行っても印鑑証明書は出ません。

このカードは自動では送られてきません。「印鑑カード交付申請書」を別に出して、初めて交付されます。様式は法務局のサイトにPDFとExcelで用意されています。

申請書には、登記所に提出した印鑑を押す欄があります。様式の注記でも「押印欄には、登記所に提出した印鑑を押印してください」と指定されています。印鑑届書に押した印鑑と同じものです。

書く内容は、登記所の名前、商号、本店の住所、印鑑を届け出た人の資格と氏名と生年月日、会社法人等番号、申請人の住所と氏名と連絡先です。

カードの交付に手数料はかかりません。申請書には収入印紙を貼る欄そのものがありません。法務局が示す標準処理期間も「申請書の提出から即日」なので、窓口に出せばその場で渡されます。

ただし設立と同時の場合は事情が変わります。登記が完了するまで会社法人等番号が割り当てられないため、カードの交付は登記の完了後になるのが通例です。設立登記の申請と一緒にカードの申請書も出しておけるかは、管轄の登記所の運用で変わります。窓口で確かめてください。

代理の人に頼むときに追加で要るもの

家族や社員、司法書士に頼む場合は、持ち物が1つ増えます。委任状です。

法務局は次のように整理しています。

代理人が印鑑カード交付申請、印鑑(改印)届又は印鑑・印鑑カード廃止届をする場合には、委任状が必要です(下記の様式には、委任状欄があります。)。 出典: houmukyoku.moj.go.jp

別紙を用意する必要はありません。印鑑届書にも印鑑カード交付申請書にも、下半分に委任状の欄が組み込まれています。

印鑑届書の委任状には、代理人の住所と氏名、委任する権限、日付、そして委任した代表者本人の住所と氏名を書き、代表者個人の実印を押します。届出人の欄に書くのは代理人の住所と氏名で、代理人の押印は不要です。記載例にも「代理人は押印不要」と書かれています。

印鑑カード交付申請書の委任状は、押す印鑑が違います。こちらは登記所に提出した印鑑、つまり会社の実印を押します。会社の印鑑を押した申請書を代表者が作っておいて、代理の人は提出だけを担当する形にすれば、実印そのものを持ち出させずに済みます。

添付する個人の印鑑証明書は、代理の人に頼む場合も代表者本人のものです。代理人の印鑑証明書ではありません。

オンラインで出すなら、様式も手順も別になる

登記の申請をオンラインで行い、印鑑の届出も同時にオンラインで済ませる場合、ここまで説明してきた紙の様式は使いません。法務省が専用の様式を別に用意しています。

専用様式には1センチメートルごとの目盛りが印刷されていて、印影の大きさを測るために使われます。拡大や縮小をして印刷すると目盛りが狂うため、A4で等倍で印刷し、印刷した用紙をさらにコピーして使うことも禁じられています。

押印についても指定があります。

様式には、必ず物体による印章を用いて押印してください。物体による印章ではない「電子印鑑」や「電子ハンコ」は、届け出ることはできません。 出典: moj.go.jp

押したあとは原寸大でスキャンしてPDFにします。解像度の目安は600dpi程度とされていて、これより低いと印影がつぶれて原本の提出を求められることがあります。そのうえで電子署名を付けて送信します。

注意点が2つあります。印鑑の提出だけを単独でオンラインで行うことはできず、必ず登記申請のデータと一緒に送ること。そして書面申請の場合は、QRコード付き書面申請を含めて、従来どおり紙の印鑑届書が必要になることです。

結局のところ、紙の様式に実物の印鑑を押す作業は、オンラインでも省けません。電子証明書の準備まで含めると、初回は紙で出すほうが早いことが多いです。

会社を作る流れの中で、印鑑登録はどこに入るか

持ち物の話だけを見ていると順番が分かりにくいので、会社設立の全体の中での位置を整理します。株式会社を作る場合の並びです。

最初にするのが、代表者個人の印鑑登録です。市区町村役場で個人の実印を登録して、印鑑登録証を受け取ります。すでに登録済みならここは飛ばせます。

次が商号の調査です。すでに登記されている他の会社と同一の商号で、本店の所在場所も同一である場合は登記できません。法務省はこの調査について、オンライン登記情報検索サービスを使ってパソコンから調べる方法を案内しています。

そのあとに会社の印鑑を作ります。商号が確定しないと彫れないので、この順番になります。はんこ屋に頼むと、仕上がりまで数日から1週間かかるのが普通です。ここを後回しにすると、登記の申請日が後ろにずれます。

続いて定款を作り、株式会社なら公証役場で認証を受けます。この段階で代表者個人の印鑑証明書を使います。

出資金を払い込み、設立登記申請書を作り、印鑑届書を添えて登記所に出す。ここが印鑑登録の本番です。個人の印鑑証明書は、定款認証で使ったものとは別に用意するか、登記申請書に添付するものを援用します。

登記が完了したら、印鑑カードの交付申請をして、会社の印鑑証明書を取れる状態にします。そのうえで税務署や都道府県税事務所、年金事務所への届出、法人口座の開設と進みます。

この並びを見ると、印鑑まわりの準備は「個人の印鑑登録」と「会社の印鑑の作成」の2つが入口だと分かります。どちらも数日から数週間かかるので、会社を作ると決めた週に着手しておくのが正解です。

合同会社や一般社団法人でも、持ち物は変わらない

株式会社以外の法人を作る場合も、持って行くものは同じ4つです。印鑑届書、会社の印鑑、代表者個人の実印、代表者個人の印鑑証明書。

変わるのは、届書の資格の欄に何を書くかだけです。合同会社などの持分会社なら代表社員、一般社団法人と一般財団法人なら代表理事、医療法人なら理事長というように、その法人の代表者を表す肩書を入れます。様式に印刷されている候補に無い場合は、隣の空欄に書き込みます。

NPO法人、社会福祉法人、学校法人、事業協同組合、管理組合法人、有限責任事業組合、投資事業有限責任組合についても、法務局が記載例を用意しています。

なお、合同会社は公証役場での定款認証が不要です。そのぶん、代表者個人の印鑑証明書を使う場面が1つ減ります。登記申請書に添付するものと、印鑑届書に援用するものを合わせて1通で足りる場合が多く、設立の手数が株式会社より軽くなります。

出し直しになりやすい形を先に知っておく

窓口で差し戻されるパターンは、だいたい決まっています。出す前に目を通しておいてください。

印影がかすれている、または濃すぎて輪郭がつぶれている。これがいちばん多い形です。押し直しではなく、新しい用紙に書き直すのが正解です。

本店の住所を「1-1-1」のように略して書いた。登記の表記と一致しないため、書き直しになります。

添付した個人の印鑑証明書が3か月を超えていた。定款認証のときにまとめて取ったものを使おうとして起きます。

届出人の欄に会社の印鑑を押してしまった。上下の使い分けを取り違えた形です。

代理の人に出してもらったのに、委任状の欄が空のままだった。あるいは委任状の押印を代理人がしてしまった。委任状に押すのは、委任した代表者本人の個人の実印です。

代表者の住所が登記簿と違っていた。これは印鑑届書の問題ではなく、住所変更の登記が先に必要になる形です。記載例にも、本人の住所や氏名が登記簿上の代表者のものと一致しない場合には変更の登記が必要になる、と注記されています。

補正の連絡は、申請書に書いた電話番号にかかってきます。日中つながる番号を書いておくこと、携帯電話の番号でも構わないことを法務局が明記しています。設立直後で固定電話をまだ引いていないなら、代表者の携帯番号で問題ありません。

登録が終わったあと、何ができるようになるか

印鑑の届出と印鑑カードの交付が済むと、会社の印鑑証明書を請求できるようになります。これが必要になるのは、法人口座の開設、事務所の賃貸借契約、自動車の登録、官公庁の入札参加資格の申請、補助金の申請、そして大きな取引先との契約です。

手数料は令和7年4月1日から変わっています。印鑑証明書は、窓口や郵送で紙の申請書を出す書面請求が1通500円。オンラインで請求して郵送で受け取る場合が450円、オンラインで請求して窓口で受け取る場合が420円です。登記事項証明書も一緒に求められることが多く、こちらは書面請求で1通600円です。

1つ覚えておきたいのが、登記の手続き中は証明書が出ないことです。法務局は、登記申請を行って手続が完了するまでの間、原則としてその会社の登記事項証明書と印鑑証明書は発行されないと案内しています。設立の登記を出した直後に銀行へ行っても、まだ何も取れません。目安になる「登記完了予定日」は管轄の法務局のサイトで公開されているので、口座開設の予約はその日以降に入れてください。

届出は義務ではなくなった。それでも出す理由

意外に知られていませんが、法人の印鑑を登記所に届け出る義務は、法律上はすでに無くなっています。商業登記法で印鑑の提出を定めていた第20条は削除されていて、条文は空欄になっています。

では出さなくてよいのかというと、実務では話が別です。書面で登記を申請する場合、申請書や委任状には登記所に提出している印鑑を押すことが商業登記規則第35条の2で定められています。印鑑を提出していなければ、この押印ができません。

そして、会社の印鑑証明書を請求できるのは印鑑を登記所に提出した者だけです(商業登記法第12条第1項)。届け出ていない会社は、印鑑証明書という書類を一生取れません。

銀行で法人口座を開くとき、事務所を借りるとき、自動車を買うとき、官公庁の入札に参加するとき。どの場面でも印鑑証明書を求められます。取引の相手から見れば、印鑑証明書を出せない会社は確認に手間がかかる相手です。

すべてをオンラインで完結させ、電子証明書だけで取引する体制を整えられる会社なら、届け出ない選択もあり得ます。ただしこれは取引先との関係で決まる話なので、迷うなら管轄の登記所か司法書士に確かめてください。一般的には、作った時点で届け出ておくほうが後々の手間が少なくなります。

印鑑カードをなくしたときの戻し方

カードを紛失したときは、まず無効にします。「印鑑・印鑑カード廃止届書」を本店の管轄する登記所に出して、そのカードを使えない状態にする手続きです。

商業登記規則では、印鑑カードの廃止の届出をするときに印鑑カードを提示すれば押印を要しない、と定められています。逆に言えば、紛失していてカードを出せない場合は、登記所に提出した印鑑を押して届け出ることになります。会社の実印が手元にあることが前提です。

廃止の届出と同時に、新しい印鑑カード交付申請書を出します。こちらにも登記所に提出した印鑑を押します。手数料はかからず、その場で新しいカードが交付されるのが通例です。

会社の実印そのものをなくした場合は、話が重くなります。カードだけでなく印鑑の届出もやり直すことになり、新しい印鑑を用意して、印鑑届書と代表者個人の印鑑証明書をそろえ直すことになります。3か月以内という期限も改めてかかるので、印鑑証明書を取り直すところから始まります。

実印とカードを同じ場所に置かないほうがよい理由が、ここにあります。片方だけなら復旧は軽く済みます。

登録したあとの印鑑を、どう置いておくか

届出が通ると、その印影は登記所のファイルに記録されます。記録の保存期間は永久とされていて、会社が続くかぎり照合の基準として残ります。

だからこそ、実物の管理を分けて考えてください。会社の実印を押す機会は、思ったほど多くありません。日常的に使うのは銀行印と角印のほうです。実印は事務所の鍵付きの引き出しか自宅の金庫に置き、印鑑カードは別の場所に置く。この2つを同じ袋に入れないだけで、片方を落としたときの被害が止まります。

印鑑が欠けたり、押した印影が薄くなってきたりしたら、改印を検討してください。登記所に提出された印鑑が照合に適さないものであるときは、登記官が改印その他相当の措置を求めることができるとされています。取引の途中で止められるより、気づいた時点で届け直すほうが早く済みます。改印には、新しく届け出るときと同じ様式を使います。

事務の段取りを覚えることが、受けられる仕事の幅になる

ここからは、業務委託や在宅で働く人の視点で考えます。

個人事業から法人に切り替えると、この手の書類のやり取りが仕事の一部になります。印鑑を登録しに行く半日、印鑑証明書を取りに行く半日は、どちらも売上を生まない時間です。1人で法人を回しているなら、その半日が丸ごと稼働から消えます。だから、持ち物を一度覚えて、行く回数を減らすことに意味があります。印鑑届書、会社の印鑑、個人の実印、3か月以内の個人の印鑑証明書。この4つを机に並べてから出発すれば、たいてい1回で終わります。

フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、長く仕事が続く人ほど、こうした事務を後回しにしません。依頼が来てから書類を集め始めるのではなく、受ける前提で印鑑カードの置き場所を決め、通数を確保し、電子証明書を取っておく。発注する側から見れば「この人に任せると止まらない」という評価になり、次の依頼につながります。腕は良いのに着手が毎回1週間遅れる人は、理由が事務の段取りにあると気づかれないまま、声がかからなくなっていきます。

もうひとつ、運営者として見てきた限りでは、手取りの厚さを決めるのは表に出る単価そのものより、間に何社入っているかです。仲介手数料が0%の直接取引なら、発注する側は同じ予算でより多くを頼めて、受ける側は同じ仕事でも手取りが厚くなります。双方が得をする代わりに、契約書や印鑑証明書のやり取りも自分の手元で発生します。事務を自分で回せることが、そのまま受けられる仕事の幅になるわけです。

どの分野で法人としての取引が動いているかは、仕事の種類ごとの解説が手がかりになります。企業の生成AI導入や業務の見直しを支援するAIコンサル・業務活用支援のお仕事は契約の単位が大きく、法人同士の取引になりやすい分野です。広告運用から情報セキュリティまでを含むAI・マーケティング・セキュリティのお仕事も継続契約が中心で、書類のやり取りが定期的に発生します。受託開発の進め方を知りたいなら、企画から実装までを説明したアプリケーション開発のお仕事が参考になります。

法人にするかどうか迷っているなら、報酬の水準から逆算するのが現実的です。地域差まで含めたソフトウェア作成者の年収・単価相場や、文章まわりの仕事をまとめた著述家,記者,編集者の年収・単価相場を見ると、どのくらいの売上から法人化の手間に見合うかの目安が立ちます。

書類の不備そのものを減らしたいなら、書き方を体系立てて学ぶ手もあります。申請書や契約書の型を扱うビジネス文書検定は、登記所や銀行に出す書類の差し戻しを減らすのに直結します。技術側で法人として案件を受けるなら、ネットワークの基礎を示せるCCNA(シスコ技術者認定)のような資格が、初めての取引先に対する安心材料になります。

取引が始まったあとの守りも決めておいてください。報酬が支払われないときの進め方は未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】に、発注書や契約書で外してはいけない項目はフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストにまとまっています。会社の数字まわりをどこまで自分で見るかの線引きは、会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】が参考になります。

持ち物は4つ、押す印鑑は2本、添付する証明書は3か月以内。出かける前に、この3点だけ確かめてください。

よくある質問

Q. 法人の印鑑登録に、代表者個人の印鑑証明書は本当に必要ですか?

必要です。市区町村長が作成した証明書で、作成後3か月以内のものを印鑑届書に添付します。会社の印鑑はこれから登録するものなので本人確認の材料にならず、代わりに個人の実印と個人の印鑑証明書で確認する仕組みになっています。設立登記の申請書に添付する分を援用するチェック欄があり、レ点を入れれば1通で足ります。

Q. 印鑑を押す欄は何か所あり、それぞれ何の印鑑ですか?

2か所です。用紙の左上にある欄には登録する会社の印鑑を押し、下のほうの届出人の欄には代表者個人が市区町村に登録している実印を押します。上下を取り違えると本人確認ができず受け付けてもらえないので、押す前に欄外の注記を読んでください。

Q. 印鑑登録に手数料はかかりますか?

印鑑の届出そのものに手数料はかかりません。印鑑カードの交付申請も無料です。費用がかかるのは、代表者個人の印鑑証明書を市区町村役場で取るときと、登録が終わったあとに会社の印鑑証明書を請求するときで、会社の印鑑証明書は窓口の書面請求で1通500円です。

Q. 印鑑届書はどこの法務局に出せばよいですか?

会社が登記されている登記所、設立のときは本店の住所を管轄する登記所に出します。会社の印鑑証明書は全国どこの登記所でも取れますが、印鑑に関する届出と印鑑カードの交付申請は本店の管轄でしか受け付けていません。管轄は法務局のサイトの管轄案内で確かめられます。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月21日最終更新:2026年9月19日
丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子@SOHO編集部

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

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