プレスリリース作成代行をフリーランスに頼む相場|日本での依頼の流れ 2026

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
プレスリリース作成代行をフリーランスに頼む相場|日本での依頼の流れ 2026

この記事のポイント

  • プレスリリース作成代行の相場をフリーランス・制作会社・PR会社の3経路で比較
  • 日本の発注実務における費用の内訳
  • 医療や金融など規制業種の注意点

プレスリリース作成代行の相場を調べていて、「PR会社は高そうだが、フリーランスに頼んで大丈夫なのか」という所で手が止まっている。日本の発注担当者から実際によく聞く悩みです。結論から書きます。原稿1本の作成だけを切り出すなら、フリーランスへの直接発注はおおむね2万円〜8万円、制作会社や編集プロダクションで5万円〜15万円、PR会社の月額契約に含める形だと月20万円〜60万円という3層に分かれます。価格差の正体は「原稿の巧拙」ではなく、取材の深さ、メディアリストの有無、そして掲載後のフォロー体制です。この記事では、その内訳を分解したうえで、日本でフリーランスに依頼するときの流れと、失敗しないための条件設定を整理します。

プレスリリース作成代行の相場が3層に分かれる理由

まず前提を揃えます。プレスリリースの費用は「原稿制作費」「配信費」「PR戦略の顧問料」の3つが混ざって語られがちで、この分離ができていないと相場の比較が成立しません。同じ「30万円」でも、原稿1本に30万円払う話と、月次のPR支援全体で30万円という話では意味が全く違います。

配信プラットフォームの料金は公開されているので、比較の基準点として使えます。

主に原稿作成から配信までを担当し、たとえばPR TIMESでは、プレスリリース原稿作成が5万円、配信が3万円〜、効果測定が5千円〜(すべて税抜)です。 出典: pr-strategy-office.com

この数字が示しているのは、「原稿を書く」という作業単体の市場価格が5万円前後に収束しているという事実です。つまり、それを大きく超える見積もりが出てきたときは、原稿以外の何かに対価を払っていることになります。逆に、それを大きく下回る見積もりが出てきたときは、取材やファクトチェックの工程が省かれている可能性が高い。相場を見るときは、金額そのものより「何が入っていて何が入っていないか」を先に確認してください。

相場を構成する3つのレイヤー

第1層はPR会社です。年間契約や月額リテナー契約が基本で、原稿制作は業務の一部にすぎません。メディアリレーション、記者への個別アプローチ、危機管理広報、取材同席までを含むため、月額20万円〜60万円、大手の総合代理店では月100万円を超える契約も珍しくありません。

第2層は制作会社や編集プロダクションです。原稿制作をパッケージで請け負い、1本あたり5万円〜15万円が中心帯。ディレクターと制作者が分業しており、担当者の入れ替わりにも耐えます。ただし、その分の管理コストが価格に乗ります。

第3層がフリーランスへの直接発注です。1本2万円〜8万円が中心で、経験の浅い書き手なら1万円台、元記者や広報経験者だと10万円を超えることもあります。中間に会社が入らないぶん、同じ支払額でも書き手の手取りは厚くなり、依頼側は同じ予算でより多くの本数を回せます。

相場に幅がある最大の要因は「取材の有無」

正直なところ、多くの比較記事はここを曖昧にしたまま金額だけを並べています。実務で価格を動かす最大の変数は、ヒアリングの回数と時間です。メールで資料をもらって書くだけなら3時間ほどで初稿が出ますが、経営者に60分のインタビューを行い、開発担当にも確認を取り、数字の裏取りをして書くとなると、同じ1本でも10時間以上かかります。相場表の上限と下限は、ほぼこの工数差だと考えて構いません。

日本のプレスリリース市場とフリーランス活用の現状

日本ではプレスリリースの配信本数が長期的に増加傾向にあります。背景にあるのは、配信プラットフォームの普及によって「上場企業だけのもの」だった広報活動が、スタートアップや中小企業、個人事業主にまで開かれたことです。かつては記者クラブへの投げ込みやFAX送信が主流で、実務的なノウハウが社内に蓄積されていない企業には手が出せませんでした。現在はWeb上で完結するため、参入障壁が実質的に消えています。

一方で、本数が増えれば1本あたりの注目度は下がります。同じ日に数百本のリリースが並ぶ状況では、内容が平凡なものは記者の目に触れないまま流れていきます。この「量は増えたが読まれない」という構造が、外注需要を押し上げている直接の原因です。社内で書けなくはないが、書いても届かない。ならばプロに任せる、という判断が働きます。

広報担当が「兼任1人」という現実

日本の中堅・中小企業で、広報を専任で置いている会社は多くありません。マーケティング担当が兼任、あるいは経営企画や総務が片手間で担当しているケースが大半です。この体制で月1本2本のリリースを出し続けるのは、実務上かなり厳しい。ネタ出し、社内調整、原稿執筆、配信設定、掲載チェック、社内報告までを1人で回すと、1本あたり15時間前後は消えます。

そこで、原稿執筆だけを外に出す発注形態が定着しました。ネタ出しと社内調整は自社、執筆は外部、配信は自社アカウント、という分担です。この形なら外注費は原稿分だけで済み、社内にノウハウも残ります。フリーランス活用が伸びているのは、この「部分外注」との相性が良いからです。

発注側から見た経路の増加

企業がフリーランスに発注する経路も広がりました。知人紹介や過去の取引先だけでなく、業務委託マッチングサービスや在宅ワーク求人サイト経由での発注が一般的になっています。プラットフォームによっては仲介手数料が発生しますが、手数料0%で直接やり取りできる仲介サイトも存在します。同じ支払総額なら、手数料が抜かれない分だけ書き手に渡る金額が増え、結果として応募してくる書き手の質も変わってきます。発注側にとっても無視できない差です。

こうした周辺業務の相場感を掴んでおくと交渉がしやすくなります。広報と隣接する営業資料や販促物の外注については営業代行・アポ・販促資料作成のお仕事にまとまっており、どんな業務が外部委託されているかの実例が確認できます。リリース後の効果測定やレポーティングを外に出したい場合はマーケ戦略・分析・レポート作成のお仕事が参考になり、分析とレポート作成が別スキルとして扱われている点が分かります。

依頼先別の費用相場を具体的に比較する

ここからは3つの経路それぞれについて、金額と実態を分解します。

PR会社・総合代理店に依頼する場合

月額リテナー契約が基本形です。相場は月20万円〜60万円で、この中に原稿制作、メディアリスト作成、記者へのアプローチ、掲載モニタリング、月次レポートが含まれます。契約期間は6ヶ月12ヶ月の縛りがあることが多く、単発では受けない会社も少なくありません。

このレンジで買っているのは原稿ではなく、記者との関係性です。同じ内容のリリースでも、担当記者に個別に一報が入るかどうかで掲載確率は変わります。新規事業の立ち上げやIPO準備など、短期間で認知を作らなければならない局面では合理的な投資になります。逆に、月1本程度の定常的な情報発信のために契約すると、費用対効果は悪くなります。

調査設計から入る専門型のサービスも登場しています。

c-slide labは、独自調査による一次データを起点としたプレスリリース制作を強みとする、調査特化型のPR専門サービスです。原稿作成や配信代行ではなく、「メディアが取り上げたくなるデータ」をゼロから設計する点に特徴があります。 出典: cone-c-slide.com

自社調査を絡めたリリースは記事化されやすい一方、調査設計と集計の工数が乗るため、1本あたりの単価は通常のリリースの2倍3倍になります。予算配分を決めるときは、この種のリリースを年に何本入れるかを先に決めておくと計算が立ちます。

制作会社・編集プロダクションに依頼する場合

1本5万円〜15万円が中心帯です。取材あり・図版ありのフルパッケージだと15万円前後、資料支給で執筆のみなら5万円前後に収まります。ディレクターが窓口に立つため、要件の整理や社内調整のサポートも受けられます。

メリットは安定性です。担当ライターが体調を崩しても代替が立ちますし、複数本を並行して進める際の進行管理も任せられます。デメリットは、ディレクション費が上乗せされることと、書き手の顔が見えにくいこと。指名でライターを選べない契約だと、品質が担当者次第でぶれます。年間12本以上のように本数がまとまるなら、この経路は検討に値します。

フリーランスに直接依頼する場合

1本2万円〜8万円。経験値による幅が大きく、目安としては次のように分かれます。

経験レベル 1本あたりの目安 想定される対応範囲
Webライター経験のみ 1.5万円〜3万円 資料支給で執筆、フォーマット準拠
リリース執筆経験あり 3万円〜6万円 ヒアリング1回、構成提案、修正2回
元記者・広報経験者 6万円〜12万円 取材、企画設計、メディア視点の助言
調査設計まで対応 10万円〜25万円 調査票作成、集計、グラフ作成込み

この表で注目してほしいのは、価格帯が上がるほど「書く」以外の比重が増える点です。6万円以上の帯は、実質的に企画コンサルティングの領域に入っています。単に文章を整えてほしいだけなら下の帯で十分ですし、ネタそのものから一緒に考えてほしいなら上の帯を選ぶべきです。

書き手側の収入水準を掴んでおくと、提示額が妥当かどうかの判断がしやすくなります。編集・執筆職全体の統計値は著述家,記者,編集者の年収・単価相場にまとまっており、職種としての賃金水準から逆算した適正単価を考える材料になります。

配信費用は原稿費と別に見積もる

見落とされがちですが、配信プラットフォームの利用料は原稿費とは別枠です。従量課金型で1配信あたり3万円前後、月額プランなら月8万円前後というのが日本の一般的な水準です。フリーランスに原稿だけ頼み、配信は自社アカウントから行う運用にすれば、この費用は自社側のコストとして固定できます。代行業者に配信まで任せると、プラットフォーム利用料に手数料が上乗せされるケースがあるため、内訳の提示を求めてください。

見積もりの内訳を分解する

「1本8万円」という見積もりを受け取ったとき、それが高いのか安いのかを判断する方法を示します。工程ごとに時間単価で分解するのが最も確実です。

ヒアリングと情報整理

1時間2時間のヒアリングに、事前準備と議事整理を加えて3時間前後。ここを省いた見積もりは安くなりますが、発注側が資料をきれいに揃える手間が増えるだけで、社内工数に振り替わっているだけです。トータルコストで比べてください。

構成設計と執筆

リリースは形式が決まっているぶん、構成の自由度が低いように見えます。しかし実際には、リード文の切り口をどこに置くかで反応が変わります。同じ新商品発表でも「機能」を軸にするか「社会課題」を軸にするかで、拾ってくれる媒体が変わる。構成設計に2時間、執筆に3時間、推敲に1時間というのが標準的な配分です。

私が以前、あるBtoBサービスのリリースを担当したときの話です。機能一覧を丁寧に書いた初稿は、社内では評判が良かったのに1件も記事化されませんでした。書き直しで冒頭を「業界の人手不足」という文脈に変えたところ、業界紙2誌に載った。原稿の完成度ではなく、記者が自分の記事に使える文脈を持っているかどうかが分岐点だったわけです。この経験以降、ヒアリングでは必ず「この発表は社会の何と接続しているか」を聞くようにしています。

図版・画像の準備

グラフやイメージ画像の制作は別料金になることが多い項目です。既存素材の加工なら5,000円1万円、ゼロから作るグラフやインフォグラフィックなら1万円3万円。リリースは画像の有無で転載率が変わるため、ここをケチる意味はあまりありません。

デザイン工程まで一人に任せたい場合は、対応範囲を事前に確認する必要があります。デザイン職の守備範囲と単価感についてはUI/UXデザインのフリーランスになるには?必要スキルと案件相場で、デザイン領域の案件相場と必要スキルが整理されています。文章とデザインを兼務できる書き手は多くないため、分業を前提に予算を組むのが現実的です。

修正対応と配信オペレーション

修正回数の上限を決めていない契約は、ほぼ確実にトラブルになります。標準は2回まで、それ以降は1回あたり見積額の10%20%を追加、という形が実務上よく使われています。社内の承認ラインが多い企業ほど修正が増えるので、決裁者を早い段階でヒアリングに同席させると総コストが下がります。

配信オペレーションは、プラットフォームへの入稿、タグ設定、公開時刻の調整までを含めて1時間2時間。効果測定レポートは5,000円2万円程度が目安です。

フリーランスに依頼するメリット

費用対効果が読みやすい

工程ごとに切り出して発注できるため、予算のコントロールが効きます。今月は執筆だけ、来月は取材込み、というように必要な部分だけ買える。会社との契約では最低本数や期間の縛りが入りますが、個人との取引では柔軟に調整できます。

書き手の実績を事前に確認できる

過去に書いたリリースを直接見せてもらえるのが最大の利点です。制作会社経由だと「弊社の制作実績」としか出てこず、実際に誰が書いたのかは分かりません。個人であれば、その人が書いた原稿がそのまま届きます。品質のばらつきが起きにくい構造です。

業界知識のマッチングができる

医療機器、SaaS、食品、不動産といった領域ごとに、専門知識を持つ書き手が存在します。業界用語の説明が不要な相手を選べば、ヒアリング時間が短縮され、事実誤認のリスクも下がります。技術領域のリリースであれば、開発現場の言葉が分かる書き手が有利です。エンジニア領域の単価感を知りたい場合はソフトウェア作成者の年収・単価相場が参考になり、技術職の市場価値がどの水準にあるかを把握できます。

継続によってコストが下がる

同じ書き手に繰り返し依頼すると、企業の事業内容や社内の言い回し、NGワードの把握が進み、ヒアリング時間が短くなります。3本目以降は初回の60%程度の工数で回るようになるため、単価を据え置いたまま納期が縮む、あるいは単価交渉の余地が生まれます。

フリーランスに依頼するデメリットと回避策

フェアに書きます。個人発注には明確な弱点があります。

代替が効かない

体調不良や他案件の遅延が、そのまま納期に響きます。回避策は2つ。1つは、リリース日から逆算して5営業日以上のバッファを取ること。もう1つは、同じ品質帯の書き手を2人確保しておくことです。年間本数が多い企業ほど、2人体制を組んでおく価値があります。

メディアリレーションは期待できない

多くのフリーランスライターは記者との個別のつながりを持っていません。書けるが、届けられない。掲載を強く狙うフェーズではPR会社との併用を検討すべきです。原稿はフリーランス、メディアアプローチはPR会社、という分業も現実的な選択肢です。

情報管理のリスク

未発表情報を扱う以上、秘密保持は必須です。NDA(エヌディーエー)を締結せずに発注するのは避けてください。個人との契約でも書面は交わせます。クラウド上での資料共有では、閲覧権限の期限設定とダウンロード制限をかけるのが基本です。

請求・支払いの事務が増える

複数の個人に発注すると、請求書の受領や源泉徴収の処理が増えます。ここは仕組みで解決できます。請求書のやり取りを効率化する方法についてはNotion フリーランス 請求書 作成 方法!2026年最新の自動化術で、Notionを使った請求書作成の自動化手順が解説されており、発注側から書き手にフォーマットを指定する際の参考にもなります。

依頼先を選ぶ5つの判断軸

判断軸1:過去の掲載実績を「媒体名」で確認する

「多数の実績があります」では判断できません。どの媒体に、いつ、どんな内容で掲載されたかを聞いてください。狙いたい媒体と実績が重なっていれば、その書き手は使える可能性が高い。逆に、業界紙狙いなのにWebメディアの実績しかない相手だと、想定している読者に届きません。

判断軸2:初回の質問の質を見る

依頼相談をした段階で、相手からどんな質問が返ってくるかは強力な判定材料です。「文字数は」「納期は」しか聞いてこない相手は、テンプレートに流し込むタイプです。「この発表の一番の news value は何だと考えていますか」「競合の同種の発表と何が違いますか」と聞いてくる相手は、企画から関与できます。

判断軸3:見積もりの内訳が出せるか

一式いくら、としか出てこない見積もりは要注意です。ヒアリング、執筆、修正、図版、配信の各項目に分けて提示できる相手は、工程を管理できている証拠になります。内訳が出れば、予算に合わせて工程を削る交渉もできます。

判断軸4:修正対応の条件が明文化されているか

修正回数、修正の定義(誤字修正と方向転換は別物です)、追加費用の発生条件。この3点が事前に書面化されていれば、後の揉め事はほぼ防げます。

判断軸5:業種の規制に対する理解度

これが最も見落とされる軸です。医療、健康食品、金融など、表現規制のある業種のリリースを、規制を知らない書き手が書くと、修正の往復が膨大になるか、最悪の場合は公開後に取り下げることになります。詳細は後述しますが、依頼前に「この業種の表現規制はご存知ですか」と一言確認するだけで、事故の大半は避けられます。

依頼から公開までの流れ

日本の企業がフリーランスに発注する場合の標準的な進行を、7ステップで示します。

ステップ1:発表内容と目的の言語化

何を発表するか、それによって誰にどう思われたいか。この2つを社内で先に決めます。ここが曖昧なまま発注すると、書き手は資料に書いてあることを並べるしかなくなります。目安としてA4用紙1枚程度のメモにまとめてから声をかけてください。

ステップ2:候補者の選定と打診

業務委託マッチングサービスや在宅ワーク求人サイトで募集を出すか、実績を見て個別に打診します。募集を出す場合は、業種、想定文字数、取材の有無、希望納期、予算レンジを明記すること。予算を伏せた募集には、条件の合わない応募が集まりやすくなります。

ステップ3:見積もりと条件のすり合わせ

内訳付きの見積もりを受け取り、修正回数、著作権の扱い、秘密保持、支払いサイトを確認します。支払いサイトは月末締め翌月末払いが一般的ですが、個人事業主にとっては資金繰りに直結する条件なので、可能なら短くすると良い書き手が集まりやすくなります。

ステップ4:ヒアリング

60分前後を確保し、決裁者に同席してもらいます。ここで方向性の合意まで取れると、後の修正が激減します。オンライン会議で録画を残しておくと、書き手の確認作業が楽になります。

ステップ5:初稿の受領と確認

初稿では、文章の巧拙より「事実関係」と「切り口」を確認してください。てにをはの修正は後工程で構いません。数字、固有名詞、日付、役職名の誤りは、この段階で潰し切ります。

ステップ6:修正と最終確認

法務やコンプライアンス部門のチェックが必要な業種では、この段階で必ず通します。修正指示は箇条書きで、「どこを」「どう直すか」を具体的に書くこと。「なんとなく硬い」といった曖昧な指示は往復回数を増やすだけです。

ステップ7:配信と効果測定

公開後は、掲載媒体、転載数、リリースページの閲覧数を記録します。3ヶ月分のデータが溜まると、どの切り口が反応を取れるかが見えてきます。次回発注時の指示がここで格段に精度を上げます。

医療・健康食品・金融など規制業種の注意点

プレスリリースは広告ではないという建前がありますが、実際には表示規制の対象になり得ます。誇大な表現を避けるべき業種では、依頼前に前提を共有してください。

医療・医療機関

医療機関の広告は、医療広告ガイドラインによって表現が細かく制限されています。「日本一の治療実績」といった比較優良広告、「必ず治る」といった誇大広告、術前術後の写真の扱いなどが対象です。リリースであっても、患者を誘引する意図と特定性・誘引性が認められれば規制の射程に入ります。所管する制度の詳細は厚生労働省の公表資料で確認できます。書き手にはガイドラインの存在を必ず伝え、原稿段階で該当表現を排除してもらうこと。

健康食品・サプリメント

医薬品的な効能効果の標榜は認められていません。「血圧を下げる」「脂肪を燃焼させる」といった表現は、機能性表示食品や特定保健用食品としての届出・許可がある場合を除いて使えません。体験談の掲載も、実質的に効果を暗示するものは問題になります。リリースで書けるのは、成分名、配合量、届出表示の範囲内の記載までです。ここを知らない書き手に任せると、修正の往復が延々と続きます。

金融・投資・保険

金融商品に関する情報発信には、リスク表示の義務や誇大広告の禁止が課されます。「元本保証」「絶対に儲かる」といった表現が禁止されるのは当然として、利回りの表示方法、過去実績の示し方、注記の書き方まで細かい決まりがあります。所管ルールの一次情報は金融庁で公開されています。金融系のリリースは、書き手の単価が他業種より20%50%高くなる傾向がありますが、これは規制知識に対する対価だと考えるべきです。

共通する注意点

業種を問わず、根拠のない「No.1」表示や「業界初」の主張は避けてください。調査に基づく場合は、調査主体、調査期間、調査対象、調査方法を注記に明記します。この注記がないNo.1表示は、優良誤認として問題視されるおそれがあります。表示に関する一般的なルールは公正取引委員会の公表資料が参考になります。

もう1点。人材募集や採用広報を絡めたリリースでは、労働条件の表示に関する規制も関わってきます。採用まわりの業務を外部に出す場合の実務は採用・労務・人事代行のお仕事に整理されており、採用領域の業務がどこまで委託可能かの目安が掴めます。

発注前に決めておくべき契約条件

著作権と利用範囲

原稿の著作権を譲渡するのか、利用許諾にとどめるのか。リリース原稿は自社サイトやパンフレットに転用することが多いため、二次利用の範囲まで含めて合意しておくべきです。譲渡なら追加費用が乗るのが通例で、目安は制作費の10%30%。著作者人格権の不行使についても触れておくと、後の改変が自由になります。

秘密保持と情報解禁日

未発表情報の取り扱い、解禁日前の口外禁止、関係者への共有範囲を明文化します。SNSでの言及禁止も明記しておくと安心です。

検収と支払い条件

何をもって納品完了とするかを決めます。「初稿提出時点」なのか「修正完了時点」なのか「公開時点」なのかで、支払いタイミングが変わります。公開が社内事情で延期された場合に支払いが止まるのは書き手にとって酷なので、修正完了時点を検収とするのが公平です。

なお、発注者と個人事業主の取引については、取引条件の書面明示や支払期日に関するルールが整備されています。契約書のひな型を用意する際は、e-Gov(e-Gov)で条文の原文を確認しておくと安全です。

契約書の書式サンプル

覚書レベルでも構いません。最低限、次の項目を埋めれば実務は回ります。

「株式会社〇〇(以下「甲」という)と△△(以下「乙」という)は、プレスリリース原稿の制作に関し、次のとおり合意する。第1条(業務内容)乙は、甲が指定する製品□□に関するプレスリリース原稿1本を制作する。第2条(報酬)金××円(税別)とし、検収完了月の翌月末日までに支払う。第3条(修正)修正は2回までとし、3回目以降は1回につき報酬額の20%を加算する」

このレベルの覚書でも、口約束よりはるかに事故が減ります。

書き手側から見た単価の作り方

発注者にとっても、書き手側の値付けロジックを知っておくと交渉が噛み合います。

時間単価から逆算する

フリーランスが持続的に活動するための時間単価は、経費と非稼働時間を織り込むと、会社員時代の時給の1.5倍2倍が目安になります。1本に8時間かかる案件で時間単価5,000円なら、提示額は4万円。この計算が成り立たない金額を提示すると、受注はされても優先度を下げられます。

専門性で単価を上げる

汎用的な文章力だけでは価格競争になります。特定業界の知識、調査設計、英語対応といった要素が単価を押し上げます。海外向けリリースの需要は伸びており、日本語と英語の両方で書ける書き手は希少です。逆に、日本語を母語としない書き手が日本語リリースを手がける場合は、日本語運用能力の証明が受注の鍵になります。日本語能力試験(JLPT)は海外在住者にも広く知られた日本語運用能力の指標で、ビジネス文書の受注時に提示できる客観的な材料になります。日本語を母語とする書き手であれば、日本語検定のように敬語や語彙の運用精度を測る資格が、校正まで任せられる証明として機能します。

継続案件を軸に据える

単発の高単価案件を追うより、月1本2本の継続契約を複数持つほうが、収入の安定性は高くなります。これは技術職でも同じ構造で、Rust フリーランス案件の単価相場と成功する学習・案件獲得術では、需要の高い技術領域における案件獲得の考え方が単価の観点から整理されており、専門性と継続性の関係は職種を越えて共通しています。

発注構造から見た考察

在宅ワークと業務委託の市場を20年運営してきた立場から言えば、プレスリリース制作は「単発発注が最も損をしやすい領域」の代表格です。理由ははっきりしています。1本目は、発注側の事業理解に工数の大半が消えるからです。会社の沿革、製品の位置づけ、社内の言い回し、避けるべき表現。これらを把握する時間は原稿の質に直結しますが、1本で終わると全部捨てることになる。同じ書き手に3本目、4本目と頼んだときの投入時間あたりの成果は、初回とは比べ物になりません。

もう1つ、運営者として長く見てきて確信していることがあります。長く続く書き手ほど、原稿の巧さではなく「この人に任せると社内調整が楽になる」という状態を作ることに時間を使っています。決裁者が気にするポイントを先回りして潰す、法務が引っかかりそうな表現に事前に注釈を付ける、修正指示を出しやすい形で初稿を渡す。こうした振る舞いは単価表には現れませんが、発注側の総コストを確実に下げています。値段だけで選んだ書き手と、こうした配慮ができる書き手では、最終的な支払総額が同じでも社内で消える時間が全く違う。

そして、中間マージンの話です。仲介会社が入る取引では、発注額の一部が仲介の取り分になります。手数料0%で直接つながる形なら、同じ5万円を払っても書き手の手取りは厚くなり、発注側は同じ年間予算でより多くの本数を回せます。この構造を運営者として長く見てきて感じるのは、手取りが厚い環境の書き手ほど、1本にかける時間を惜しまないということです。金額の大小の話ではなく、余裕があるかどうかが原稿の詰めに出ます。取材のあと、聞き漏らした1点をわざわざ確認しに来るかどうか。ここが分かれ目になります。

職種別の年収データを横断して見ると、編集・執筆系の職種は技術職に比べて単価のレンジが狭く、経験年数による差が付きにくい構造にあります。だからこそ、業界知識や規制対応といった付加価値で差別化した書き手に、指名の発注が集中する。発注側の視点で言い換えれば、市場の平均相場を基準に値切るより、自社の業種を理解している書き手を見つけて長く付き合うほうが、1本あたりの実質コストは下がるということです。相場表の数字は出発点であって、答えではありません。

よくある質問

Q. プレスリリース作成をフリーランスに頼むと1本いくらが相場ですか?

資料支給で執筆のみなら1.5万円〜3万円、ヒアリング1回と修正2回を含む標準的な依頼で3万円〜6万円、元記者や広報経験者に企画から相談する場合は6万円〜12万円が目安です。調査設計や図版制作を含めると10万円以上になります。配信プラットフォームの利用料は原稿費とは別枠で、1配信あたり3万円前後かかります。

Q. PR会社とフリーランス、どちらに依頼すべきですか?

記者への個別アプローチや掲載獲得まで求めるならPR会社、原稿制作だけを切り出したいならフリーランスが合理的です。PR会社は月20万円〜60万円のリテナー契約が基本で、6ヶ月以上の期間縛りがあることも多い。月1本〜2本の定常発信であれば、フリーランスに執筆を任せて配信は自社アカウントから行う分業が費用対効果に優れます。

Q. 医療や健康食品のプレスリリースを依頼するとき何に注意すべきですか?

医療機関は医療広告ガイドライン、健康食品は医薬品的な効能効果の標榜禁止という制約があり、「必ず治る」「脂肪を燃焼させる」といった表現は使えません。依頼前に書き手へ規制の存在を明示し、対応経験があるかを確認してください。規制を知らない書き手に任せると修正の往復が増え、結果的にコストが膨らみます。

Q. 発注前に決めておくべき契約条件は何ですか?

修正回数の上限(標準は2回、以降は報酬額の10%〜20%を加算)、著作権を譲渡するか利用許諾にとどめるか、秘密保持と情報解禁日の扱い、検収のタイミングと支払期日の5点です。特に検収は「修正完了時点」と定めておくと、社内事情で公開が延期された際のトラブルを防げます。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月15日最終更新:2026年9月7日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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