完全在宅勤務の障害者採用を探す|応募の準備と配慮の伝え方


この記事のポイント
- ✓完全在宅勤務の障害者採用について
- ✓法定雇用率の引き上げと短時間勤務の算定特例
- ✓就労パスポートを使った配慮の伝え方
まず、安心してください。完全在宅勤務で障害者採用の求人を探している皆さんに、最初に伝えたいのは「募集は確かに増えている」という事実です。ただ、増えているのに見つけにくい。理由は、探す場所と検索に使う言葉が限られているからです。
もう1つ、正直に書いておきたいことがあります。求人票に「完全在宅」と書かれていても、中身は4通りに分かれます。そこを見分けられないまま応募すると、内定のあとに条件が合わず断ることになります。時間も気持ちも消耗します。
この記事では、制度の側で何が変わったのかを先に整理し、そのうえで求人の見分け方、相談できる窓口、配慮の伝え方、面接で聞いておくこと、働き始めてから使える仕組みまでを順に並べます。制度の数字は厚生労働省の資料で今日時点の記載を確かめたものだけを載せています。
完全在宅の障害者採用は、制度の側から増えています
なぜ募集が増えているのか。背景には法定雇用率の引き上げがあります。
法定雇用率とは、従業員のうち何%以上の障害のある方を雇う義務があるか、という割合のことです。厚生労働省の資料によると、民間企業の法定雇用率は令和5年度の2.3%から令和6年4月に2.5%へ、さらに令和8年7月に2.7%へと段階的に引き上げられました。対象となる事業主の範囲も、従業員43.5人以上から40.0人以上へ、そして37.5人以上へと広がっています。
つまり、いままで対象外だった規模の会社も採用を始める必要が出てきました。国や地方公共団体の法定雇用率は令和8年7月1日から3.0%、都道府県等の教育委員会は2.9%になっています。
ここで会社の側に何が起きるか。採用したいけれど、通勤できる範囲に人がいない。オフィスに配慮のための設備を用意する余裕がない。この2つの壁に当たります。そこで、通勤を前提にしない採用、つまり完全在宅の枠を作る会社が増えました。募集が増えたのは会社の善意だけではなく、制度に押された結果という面があります。
会社の側の事情を知っておくと、応募の場面で話が早く進みます。会社は「長く続けてくれる人」を探しています。完全在宅の枠を作るのは会社にとっても初めての場合が多く、うまく回るかどうか不安を持っています。だから応募する側が「こういう条件なら続けられます」と具体的に言えると、会社の不安が減ります。ここが採否を分ける実務のポイントです。
※法定雇用率の数字は年度によって変わります。応募の時期に合わせて、厚生労働省のページで最新の記載を確かめてください。
「完全在宅」と書かれた求人の中身は4通りに分かれます
求人票の「完全在宅」は、法律で定義された言葉ではありません。書き手によって指す範囲が違います。正直に書きますが、ここを確かめずに進むと後で困ります。
1つ目は、本当に最初から最後まで自宅で完結するものです。面接もオンライン、研修もオンライン、端末は郵送で届きます。
2つ目は、業務は在宅だが、入社の手続きと端末の受け取りで1回だけ出社が必要なものです。
3つ目は、研修期間だけ出社が必要なものです。研修が1か月から3か月ある場合、その期間は通勤することになります。
4つ目は、求人票の見出しだけが「完全在宅」で、勤務地の欄には事業所の住所が書かれているものです。実際は「在宅勤務も相談できる」という意味で、原則は出社という募集です。
見分け方は3つの質問に絞れます。面接はオンラインか対面か。研修はどこで受けるのか。端末はどう受け取るのか。この3点を応募の前に問い合わせてください。聞いたことで不利になる募集は、そもそも条件が合いません。
求人サイトの絞り込み条件には、こういう項目が並んでいます。
車いすの使用可能通院の配慮可能通勤時間の配慮時短勤務未経験可年間休日120日以上服装自由短時間勤務可(週20時間以上30時間未満)短時間勤務可(週30時間以上40時間未満)中途入社多数 出典: bab-navi.dandi.co.jp
注目したいのは「通院の配慮可能」と「短時間勤務可」が独立した条件として並んでいることです。完全在宅かどうかだけでなく、この2つも自分の条件に合うかを見てください。在宅でも、決まった時間に必ずログインしていることを求められる募集はあります。通院で抜ける時間があるなら、そこを先に確かめておく必要があります。
短い時間で働く道が、制度の上で開きました
これは知っておくと選択肢が広がる話です。少し制度の説明が入りますが、分かりやすく書きます。
これまで、会社が法定雇用率の計算に入れられるのは、週の所定労働時間が20時間以上の方でした。つまり週20時間未満で働きたい方は、会社にとって雇用率の数に入らないので、募集自体が作られにくかったのです。
これが令和6年4月から変わりました。厚生労働省の資料によると、週の所定労働時間が10時間以上20時間未満の精神障害者、重度身体障害者、重度知的障害者について、雇用率の計算上0.5カウントとして算定できるようになりました。
意味を言い換えます。週10時間から働く枠が、会社にとって作る意味のある枠になりました。だから「週10時間以上30時間未満」「特定短時間勤務」といった条件の募集が、ここ数年で出てくるようになったのです。
もう1つ、週20時間以上30時間未満の精神障害のある方については、当分の間、雇入れからの期間などに関係なく1カウントとして算定できる特例が続いています。
この話をなぜするか。体調に波がある方が「フルタイムで働けないから正社員の枠は無理だ」と最初から諦めてしまうケースが多いからです。制度の側が短い時間の働き方を数に入れるようになったので、求人の検索でも「短時間」「週20時間未満」「特定短時間」という語を足してみてください。1語増やすだけで、出てくる募集の数が変わります。
※どの区分に当たるかは手帳の種類と等級で決まり、個別の事情で結論が変わります。自分がどの枠に該当するかは、ハローワークの障害者の窓口で確認してください。
応募の前に、どの窓口とつながるかを決める
求人サイトだけで探すと、募集の一部しか見えません。完全在宅の募集は、公的な窓口を経由するものが相当あります。厚生労働省は障害のある方が相談できる機関を整理して公開しています。
ハローワークには障害のある方の専門の窓口があります。専門職員や職業相談員が、障害の種類や程度に応じた職業相談と紹介、就職した後の職場定着の指導まで行う仕組みです。完全在宅の求人も、ここに登録されているものがあります。
地域障害者職業センターは、職業評価、職業指導、職業準備訓練、職場適応援助といった専門的な支援を行う機関です。自分に何ができて、どんな環境なら続けられるかを整理する段階で使えます。
障害者就業・生活支援センターは、就職の相談と生活面の相談を両方受ける窓口です。在宅で働くと生活のリズムが崩れやすいので、この窓口を知っておくと後で助かります。
在宅就業支援団体という仕組みもあります。厚生労働省は、在宅就業障害者に対する支援を行う団体として厚生労働大臣に申請し、登録を受けた法人だと説明しています。完全在宅で働くことを前提にした支援を扱う団体で、一覧が公開されています。
さらに、障害の種別ごとの窓口もあります。発達障害者支援センターは、保健、医療、福祉、教育、労働の関係機関と連携しながら本人と家族を支援する機関です。難病相談支援センターは、難病のある方の療養上と生活上の相談、就労支援を扱います。
どこから相談すればよいか分からない場合、厚生労働省は相談先を整理した資料を公開しています。順番としては、ハローワークの障害者の窓口にまず行き、そこから必要な機関を紹介してもらう流れが迷いません。
手帳がなくても応募できる募集はあるか
これは相談の多い点です。正直に書きます。
障害者採用の枠、いわゆる障害者雇用枠の募集は、原則として障害者手帳(身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳)を持っていることが応募の条件になります。理由は、会社が法定雇用率の計算に入れるために手帳での確認が必要になるからです。
一方で、手帳がなくても応募できる道が2つあります。1つは、一般の求人で完全在宅の募集に応募する道です。フルリモートの事務職やIT系の募集は、障害者枠に限らず増えています。この場合、配慮が必要なことは入社後に相談する形になります。
もう1つは、業務委託で在宅の仕事を受ける道です。手帳の有無は関係ありません。ただし、雇用ではないので労働基準法の保護がなく、収入が安定するまでに時間がかかります。この道を選ぶ場合の注意は後の節で書きます。
手帳の申請を考えている方へ。申請の窓口は、身体障害者手帳と療育手帳がお住まいの市区町村の福祉の担当、精神障害者保健福祉手帳も市区町村の窓口です。申請から交付までに数か月かかることがあるので、就職の準備と並行して進める形になります。
※手帳の取得が可能かどうかは、医師の診断と自治体の判定によります。取得できるかどうかを他人が判断することはできません。かかりつけの医療機関と自治体の窓口に相談してください。この記事は診断や治療について助言するものではありません。
完全在宅で募集の多い職種を5つ
どんな仕事が在宅で募集されているかを知っておくと、準備するものが決まります。募集の多い順に5つ並べます。
1つ目は、事務とバックオフィスです。データ入力、書類のチェック、経費の処理、採用の事務、営業の補助。求人サイトには、総務、経理、人事のアシスタントを完全在宅で募集する例が並んでいます。必要なのは表計算の基本操作と、文書の作法です。文書の書き方を体系的に押さえておくと書類選考で有利になるので、ビジネス文書検定のように社内外の文書の書式と敬語の使い分けを段階的に測る検定は、準備として無駄になりません。
2つ目は、IT系の技術職です。システム開発、プログラマー、社内のシステム担当。在宅と相性がよく、完全在宅の正社員採用の例が出ています。単価と年収の水準を知りたい方は、ソフトウェア作成者の年収・単価相場のように統計をもとに職種ごとの相場をまとめたページで位置を確かめてください。仕事の中身を先に知りたい方は、アプリケーション開発のお仕事で扱う領域を見ておくと、学ぶ順番が決めやすくなります。
3つ目は、問い合わせ対応です。チャットやメールで問い合わせに答える仕事で、声を出さないので家の環境の条件が緩くなります。
4つ目は、CADのオペレーターや図面の作成です。専門のソフトを扱うので、覚えるまでに時間がかかりますが、覚えたあとは在宅で完結します。
5つ目は、分析とマーケティングの補助です。数字の集計、レポートの作成、広告の運用の補助。近年はここにAIを組み込む仕事が増えています。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事のように、AIを業務に使う側の案件がどう募集されているかを見ておくと、経験のつなげ方が見えてきます。
ネットワークの基礎を測るCCNA(シスコ技術者認定)のような資格は、IT系の在宅の募集で読まれる材料になります。未経験から入るなら、事務かIT系の入り口から始める方が募集の数が多いです。
配慮の伝え方。就労パスポートという道具があります
ここが、完全在宅の応募で一番差が出るところです。
配慮が必要なことを伝えるのは、わがままではありません。会社に「どうすれば続けて働けるか」を教える行為です。ところが、言葉にするのが難しい。「体調に波があります」だけでは、会社は何をすればよいか分かりません。
厚生労働省は、この伝え方を助ける道具を用意しています。
就労パスポートは、障害のある方が、働く上での自分の特徴やアピールポイント、希望する配慮などについて、支援機関と一緒に整理し、事業主などにわかりやすく伝えるためのツールです。 出典: 厚生労働省
大事なのは「支援機関と一緒に整理し」という部分です。1人で書こうとすると、自分の困りごとをどこまで書くか迷います。ハローワークや地域障害者職業センターの担当者と一緒に作れば、会社が読んで動ける形に整えてもらえます。
完全在宅の場合、書いておくと効く項目を挙げます。作業に集中できる時間の長さと、休憩の取り方。連絡の受け方で楽な方法(電話よりチャットのほうが楽、など)。通院の頻度と時間帯。体調が崩れたときの合図と、そのときにしてほしい対応。画面を見続ける時間の上限。音や光の条件。
書き方のコツが1つあります。困ることだけを並べず、「こうしてもらえれば、これができます」の形で書くことです。「朝は調子が出にくいので、始業を10時にしていただければ、終業まで集中が続きます」。この形なら、会社は判断できます。
※就労パスポートの使用は任意です。すべてを開示する義務はありません。何をどこまで伝えるかは自分で決められます。迷ったら支援機関の担当者に相談してください。
面接で聞かれること、聞いておくこと
完全在宅の採用面接は、オンラインで行われることが多いです。準備する項目を整理します。
聞かれることは3方向です。1つは、いままでの経験と、在宅で何ができるか。2つは、配慮が必要な内容と、会社にしてほしいこと。3つは、自宅の作業環境です。回線の種類、作業する場所、同居している家族がいるかどうか。個人情報を扱う仕事では、画面をのぞかれない場所という条件が付きます。
逆に、皆さんの側から聞いておくべきことを5つ挙げます。
1つ目は、勤務時間の柔軟さです。始業と終業の時刻が固定か、幅があるか。通院で抜ける時間を認めてもらえるか。
2つ目は、連絡の手段です。1日に何回、どんな形で連絡があるか。カメラを常時つけることを求められるかどうかも確かめてください。ここは在宅の働きやすさに直結します。
3つ目は、体調が崩れたときの扱いです。当日の連絡はどこへ入れるか。急に休んだときの引き継ぎはどうなるか。
4つ目は、相談先です。会社の中に障害者雇用の担当者がいるか。困ったときに誰に言えばよいか。
5つ目は、契約の形と更新です。有期契約か無期契約か。正社員登用の制度があるか。完全在宅の募集は契約社員から始まる例が多いので、そこからどう変わるのかを聞いておくと計画が立てられます。
もう1つ、確かめておくと安心なのは、その会社で完全在宅の方が実際に働いているかどうかです。先に働いている人がいる会社では、仕組みが整っています。新しく枠を作った会社では、一緒に仕組みを作っていく形になります。どちらが良いという話ではなく、自分がどちらを望むかという話です。
在宅で働くための環境と、会社が用意するもの
働き始める前に、環境の分担をはっきりさせてください。ここを曖昧にすると、あとで自己負担が積み上がります。
会社が用意するものとして多いのは、パソコンとその周辺機器、業務で使うソフトの利用権、セキュリティの仕組みです。障害の内容に応じた入力装置や読み上げのソフトを会社が用意する例もあります。
自分で用意するものとして多いのは、通信回線、机と椅子、部屋の環境です。ここに費用がかかります。在宅勤務の手当が出る会社もあるので、金額と支給の条件を確かめてください。
配慮のための設備について、会社が助成金を使える仕組みがあります。厚生労働省の資料によると、令和6年4月以降、障害者介助等助成金の拡充や職場適応援助者助成金の拡充、職場実習と見学の受入れ助成の新設が行われています。つまり、会社が費用を理由に難色を示した場合でも、使える制度がある可能性があります。「会社の負担が大きいから無理」と言われたときに、この話を知っているかどうかで結果が変わることがあります。
作業の環境については、3つだけ押さえてください。1つは、画面の高さと椅子の高さの関係です。長時間の作業は姿勢で決まります。2つ目は、照明です。手元に影が落ちない角度にします。3つ目は、区切りです。作業する場所と休む場所を分けられると、気持ちの切り替えがしやすくなります。
同居している家族がいる場合、勤務時間を先に伝えておいてください。完全在宅は「家にいる」ので、家事や用事を頼まれやすくなります。時間の境目を決めておくことは、家族と衝突しないための実務です。
試して決められる制度があります
いきなり本採用は不安、という方に向けた仕組みが2つあります。
1つは、障害者トライアル雇用事業です。厚生労働省は、障害者を一定期間(原則3か月)試行雇用することにより、適性や能力を見極め、求職者と事業主の相互理解を深めることで、継続雇用への移行のきっかけとすることを目的とした制度だと説明しています。3か月という期間があるので、続けられるかどうかを実際に働いて判断できます。会社の側も試せるので、採用のハードルが下がります。
もう1つは、職場適応援助者、いわゆるジョブコーチです。職場での適応に課題がある方に対して、援助者を事業所に派遣して人的な支援を行い、職場の課題を改善して定着を図る仕組みです。完全在宅の場合、オンラインでの支援になることがあります。
このほか、就職の準備段階から職場定着までを一貫して支援する「チーム支援」という仕組みもあります。ハローワークを中心に、福祉などの関係者が障害者就労支援チームを組む形です。
訓練の仕組みもあります。障害者職業能力開発校は、一般の職業能力開発施設で訓練を受けることが難しい重度障害者等を対象にした職業訓練を行う施設です。また、企業、社会福祉法人、NPO法人、民間の教育訓練機関などを委託先として、障害の態様に応じた公共職業訓練を行う仕組みもあります。在宅で受けられる訓練があるかどうかは、地域によって違うので窓口で確かめてください。
まず、安心してください。いきなり完璧な状態で就職しなければならない、という制度設計にはなっていません。試す段階、訓練する段階、支援を受けながら働く段階が用意されています。
差別の禁止と合理的配慮は、法律上の義務です
ここは制度の話として、はっきり書いておきます。
平成28年4月(一部は公布日または平成30年4月)から改正障害者雇用促進法が施行され、雇用分野における障害者差別は禁止され、合理的配慮の提供は事業主の義務とされています。厚生労働省は、障害者差別禁止指針(平成27年厚生労働省告示第116号)と合理的配慮指針(平成27年厚生労働省告示第117号)を出して、具体的な内容を示しています。
合理的配慮とは、障害のある方が働くうえでの支障を改善するために、事業主が必要な措置を取ることです。分かりやすく言えば、同じ条件で働けるように環境や進め方を調整することです。完全在宅そのものが、この配慮の1つの形になっている場合もあります。
厚生労働省は、実際に民間企業が提供している配慮の例をまとめた事例集を公開しています。合理的配慮指針事例集は第六版まで出ており、令和7年9月には障害者への合理的配慮好事例集も公開されています。会社と話し合うときに「他社ではこういう配慮をしている」と示せる資料があると、話が具体的になります。
ただし、正直に書いておきます。合理的配慮の義務には「過重な負担にならない範囲で」という限定が付きます。だから、望むものがすべて通るわけではありません。大事なのは、会社と話し合う過程があることです。一方的に断られたまま終わらせずに、代わりの方法を一緒に探す。指針もその話し合いを求めています。
※配慮を求めても応じてもらえない、あるいは障害を理由に不利な扱いを受けたと感じた場合、各都道府県の労働局に相談できます。相談は無料です。ここは個別の事情で結論が変わる領域なので、記録を残しておいてください。やりとりの日付と内容をメモに残すだけで、相談のときに話が早く進みます。
給与、社会保険、働く時間の関係
お金の話を整理します。ここを知らないと、働く時間を決められません。
完全在宅の障害者採用でも、雇用である限り最低賃金が適用されます。在宅だから安くてよい、ということはありません。給与の形は月給か時給で、短時間勤務の場合は時給が多くなります。
社会保険の加入は、働く時間で決まります。週の所定労働時間が20時間以上で、勤め先の従業員数の基準を満たし、他の要件にも当てはまる場合、健康保険と厚生年金保険の対象になります。加入すると保険料の負担が出ますが、傷病手当金(病気で働けない間に健康保険から出るお金)の対象になり、将来の年金が厚くなります。
年金を受け取っている方が働く場合の注意もあります。障害年金には所得による支給の制限がある種類があり、働き方によって影響が出ることがあります。ここは年金の種類と等級、収入の額で結論が変わるので、必ず年金事務所か市区町村の窓口で確認してください。記事の数字で自分の場合を判断しないでください。
働く時間を決めるときの考え方として、3つの段を持っておくと整理しやすいです。週10時間から20時間未満の段、週20時間から30時間未満の段、週30時間以上の段。制度の扱いがこの境目で変わるので、体調の見通しと制度の境目を重ねて決めます。
最初から長い時間を選ばないでください。正直に書きますが、完全在宅は通勤の負担がないぶん、働く時間を長く見積もりがちです。ところが在宅には別の負担があります。仕事と生活の境目がなくなること、相談が遅れること、動く機会が減ること。この3つは通勤している人には起きない負担です。短い段から始めて、続けられると分かってから増やす順番が安全です。
業務委託で在宅の仕事を受ける道と、その注意
雇用ではなく、業務委託で在宅の仕事を受ける道もあります。手帳の有無は関係なく、時間の使い方も自由です。ただ、リスクを正直に書きます。
まず、労働基準法が適用されません。最低賃金もありません。有給休暇もありません。仕事が来ない月があれば収入はゼロです。会社の社会保険にも入りません。
次に、体調に波がある場合、締め切りを守れない月が出ます。雇用なら休暇の制度がありますが、業務委託は締め切りに間に合わなければ契約の話になります。だから、受ける量を控えめにする設計が必要です。
そのうえで、この道が向いている場合もあります。自分のペースで進められる、通院の予定を最優先にできる、体調の良い時間帯にまとめて作業できる。こうした自由は、雇用では得にくいものです。
業務委託で受ける場合に守るべき線が3つあります。1つ目は、条件を書面で受け取ることです。仕事の内容、報酬の額、支払期日を、メールでも構わないので文字で残します。2つ目は、支払期日を確かめることです。フリーランスとの取引についての法律では、発注する側は物やサービスを受け取った日から起算して60日以内の日に支払期日を定めることになっています。3つ目は、やり直しの扱いを先に決めることです。修正が何回まで報酬の範囲か、それを超えたらどうなるか。
取引の条件を確かめるときの項目は、発注書と契約書のチェックの形で整理できます。フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストのように、書面に何が書かれていなければならないかを一覧にした記事を手元に保存できます。応募の前に読んでおくと、条件の欠けている取引に気づけます。
※報酬が支払われない事態になった場合の相談先は、フリーランス・トラブル110番などの無料の窓口です。金額や事情で取れる手段が変わるので、まず相談してください。
20年この市場を見てきた立場からの観察
最後に、フリーランスと在宅ワークの市場を長く運営してきた立場から見えていることを書きます。
完全在宅で長く続いている方に共通しているのは、作業の速さではありません。差が出るのは、自分の状態を先に伝えられるかどうかです。「今週は調子が上がらないので、この作業を金曜ではなく月曜に回せますか」と自分から言える方は、続いています。逆に、間に合わなくなってから連絡する形になると、在宅では相手が状況を見られないので、信頼が落ちます。
20年この市場を見てきた限り、依頼が続く方は「この人に任せると自分の手が空く」という状態を作っています。完全在宅は、依頼する側から見ると様子が見えません。だから、見えない不安を先に埋める連絡が、そのまま評価になります。これは障害の有無に関係なく、在宅で働くすべての人に共通する話です。
もう1つ、額面と手取りの話をしておきます。仲介の手数料が乗る取引では、依頼した側が出した予算の一部が途中で抜けていきます。中間のマージンが乗らない直接取引なら、同じ予算で依頼者はより多く頼めて、受け手の手取りは厚くなります。手数料0%の意味は、金額の大小ではなく、双方が得をする構造にあります。短い時間で働く方にとっては、この差が生活にそのまま出ます。
市場の方向としては、完全在宅の障害者採用の枠は今後も広がると見ています。理由は、法定雇用率の引き上げが段階的に続いていること、そして会社の側が在宅の運用に慣れてきたことです。オフィスを前提にした採用では人が集まらない地域の会社が、全国から採用する動きも出てきました。
そして、焦らないでください。完全在宅の枠は、応募から内定までに時間がかかることがあります。会社の側も初めての場合が多く、社内の調整に時間を使うからです。1社で決まらなかったことを、自分の力の問題として受け取らないでいただきたいのです。
まずは1つ、お住まいの地域のハローワークの障害者の窓口に行ってみるところから始めてみてください。準備さえ順番に進めれば、道はつながっています。
よくある質問
Q. 完全在宅の障害者採用は本当に増えていますか?
制度の側から増える方向に動いています。厚生労働省の資料によると、民間企業の法定雇用率は令和5年度の2.3%から令和6年4月に2.5%、令和8年7月に2.7%へ引き上げられ、対象となる事業主の範囲も従業員43.5人以上から40.0人以上、37.5人以上へと広がりました。通勤できる範囲に人がいない会社が全国採用に踏み出す形で、完全在宅の枠が作られています。
Q. 週20時間未満でも募集はありますか?
あります。令和6年4月から、週の所定労働時間が10時間以上20時間未満で働く精神障害者、重度身体障害者、重度知的障害者について、会社の雇用率の計算上0.5カウントとして算定できるようになりました。そのため「週10時間以上30時間未満」「特定短時間勤務」という条件の募集が出ています。検索に「短時間」「特定短時間」の語を足してください。
Q. 配慮してほしいことはどう伝えればよいですか?
厚生労働省が用意している就労パスポートという道具を使えます。働くうえでの自分の特徴やアピールポイント、希望する配慮を支援機関と一緒に整理して、会社に分かりやすく伝えるためのものです。書くときは困ることだけを並べず、「こうしてもらえればこれができます」の形にしてください。使用は任意で、すべてを開示する義務はありません。
Q. 障害者手帳がないと応募できませんか?
障害者雇用枠の募集は、原則として障害者手帳を持っていることが条件になります。会社が雇用率の計算に入れるために確認が必要だからです。手帳がない場合は、一般の求人で完全在宅の募集に応募する道と、業務委託で在宅の仕事を受ける道があります。手帳の取得が可能かどうかは医師の診断と自治体の判定によるので、市区町村の福祉の窓口に相談してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
前田 壮一@SOHO編集部
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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