スキマ時間に進む楽器演奏・BGM制作の工程と、まとまった時間が要る工程


この記事のポイント
- ✓楽器演奏・BGM制作はスキマ時間でできるのか
- ✓細切れの時間で進む工程とまとまった時間が要る工程を分けたうえで
- ✓1曲を分解して日常に組み込む段取りと
楽器演奏・BGM制作をスキマ時間で進められますか。このご相談、本当によくいただきます。
結論からお伝えします。工程によります。
この仕事はひとかたまりの作業ではありません。少なくとも8つの工程に分かれていて、そのうち半分ほどは5分や15分の細切れでも確実に前へ進みます。けれど残りの工程は、まとまった時間がないとほとんど動きません。ここを分けないまま「スキマ時間でできる副業」として受けてしまうと、進む工程だけが終わり、動かない工程だけが締切の直前に残ります。
大丈夫ですよ。分け方さえ分かれば、生活の形は変えずに組み込めます。この記事では工程を一つずつ見ていきます。
「スキマ時間」を、先に3つの長さに分けておく
言葉の整理から始めます。スキマ時間と一口に言っても、実際には長さがまるで違うものが混ざっています。ここを意識していない方が、とても多いんです。
1つ目は、5分未満のごく短い時間。電車を待つ間、レンジが回っている間、子どもが玄関で靴を履いている間です。手はふさがっていることも多く、パソコンは開けません。
2つ目は、15分から30分ほどの時間。子どもを送り出したあと、昼休みの後半、寝かしつけが終わったあとの一息。座って画面を見られますが、深く集中する前に終わります。
3つ目は、45分から1時間程度。ここまでくると、細切れというより小さなまとまりです。
この3つは、できることがまったく違います。同じ「スキマ時間」という言葉でひとくくりにしていると、5分でやるべきことを45分の枠に入れてしまったり、その逆をやってしまったりします。ご自身の一日の中に、どの長さがいくつあるのか。まずそこを数えてみてください。
分け目は難しさではなく「戻ってくるまでのコスト」
どの工程がスキマ時間で進むのか。判断の基準は、作業そのものの難しさではありません。
一度中断したあと、元の状態まで戻るのにどれくらいかかるか。ここです。
たとえばファイル名を整える作業は、途中で止めても、次に開いた瞬間に続きから始められます。戻ってくるコストがほぼゼロだからです。反対に、曲全体の音のバランスを取る作業は、耳が慣れて聞き分けられるようになるまでに時間がかかります。10分で中断すると、次に再開したときはまた耳を慣らすところからやり直しです。15分を3回積み上げても、45分を1回とは同じになりません。
心理学の言葉で言えば、作業を保持している状態を作り直す負荷の問題です。日常の言葉に置き換えるなら、「頭の中に作りかけの設計図を広げておく必要があるかどうか」。設計図が要る作業は細切れに向かず、要らない作業は細切れで回ります。
この一点で仕分けていきます。
細切れの時間で確実に進む工程
まず、進むほうから見ていきましょう。ここを知っておくと、5分や15分が急に使える時間に変わります。
リファレンスを聴き込む
依頼を受けたら、参考として示された曲や音を繰り返し聴きます。この作業は耳だけで完結するので、移動中でも家事の合間でも進みます。イヤホンがあれば十分です。
聴くときは、漫然と流さずに1回ごとに1つだけ着目点を決めます。今回はテンポ、次はどの楽器が鳴っているか、その次は音の詰まり具合。1回3分の曲なら、5分のスキマに1回分がきれいに収まります。この積み重ねが、あとの制作時間を大きく縮めます。
依頼文を読み解き、確認事項を書き出す
依頼文には曖昧な言葉が必ず含まれます。「明るく」「上品に」「重すぎない感じで」。これを具体的な質問に変換する作業も、細切れで進みます。
用途はどの場面か、尺は何秒か、参考になる既存の音はあるか、納品形式はどうか。この4つを箇条書きにするだけなら、15分あれば足ります。作り始める前に一往復の確認を入れておくと、あとの作り直しがはっきり減ります。
音色と音源を選ぶ
打ち込みで進める部分の音色選びは、候補を絞る段階までは細切れでできます。候補を3つまで残しておいて、実際に曲へ当てはめる作業だけをまとまった時間に回す。この分け方が有効です。
数秒の素材を録る
意外に思われるかもしれませんが、短い素材の録音は細切れ向きです。5秒の音を録るのに必要な静寂は5秒だからです。ギターの単音、シェイカーの一振り、机を叩く音。同じ動作を数回録っておいて、選ぶのは後回しにします。
一方、通しの本番録音はまったく別物です。これは後半で扱います。
ファイルを整理し、命名を揃える
地味ですが、効いてきます。素材のファイル名を規則に沿って揃え、フォルダを分け、不要なテイクを消す。この作業は頭の設計図を必要としないので、15分の枠にちょうど収まります。
整理が行き届いていると、まとまった時間が取れたときに探し物をせずに済みます。つまり、細切れの時間を使って、まとまった時間の密度を上げているわけです。
連絡と事務を片づける
見積の返信、進捗の一報、請求の作成。これらも細切れで進みます。むしろ、まとまった制作時間を事務で削るほうがもったいない。
文面に迷う方が多いのですが、型が決まっていれば数分で書けます。結論、理由、次の予定。この順で短く書けば十分です。書式そのものに不安がある方はビジネス文書検定の出題範囲を眺めておくと、見積書や納品時の連絡文の骨格がつかめます。一度型を覚えてしまえば、以降はずっと5分で終わる作業になります。
骨組みのアイデアを書き留める
曲の骨組みそのものを組み立てるのはまとまった時間の仕事ですが、そのもとになるアイデアを書き留める作業は、細切れどころか歩いている間でも進みます。
思いついたフレーズを口ずさんで録音アプリに残す。コード進行の候補を3つだけメモに書く。参考にしたい曲名を保存しておく。この程度で構いません。まとまった時間が取れたときに、真っ白な画面の前で「さて何を作ろう」と考えるところから始めるのか、それとも手元に候補が5つある状態から始めるのか。この差が、90分の中身を決めます。
書き留めるときの注意点が1つあります。あとから自分が読んで分かる形にしておくことです。数日経つと、断片的なメモは意味を失います。どの依頼のために思いついたのか、どんな場面を想定したのか。この2行を添えるだけで、あとで使える資産になります。
音の引き出しを増やしておく
これは特定の依頼に紐づかない、いわば貯金にあたる作業です。
日用品を叩いた音、弦をミュートして弾いた音、瓶を指で弾いた音。こうした短い素材を、依頼がない日にも少しずつ録って貯めておきます。1回5分で1つ増えれば十分です。
貯めた素材は、次に効果音の依頼が来たときにそのまま使えます。ゼロから録るのと、手元の素材を加工するのとでは、制作にかかる時間がまるで違います。スキマ時間を、未来の自分の時間短縮に投資している形です。
中断が入る前提で、崩れにくい仕組みを作る
細切れで働く方には、もう一段の工夫をおすすめしています。中断を避けるのではなく、中断されても崩れない形にしておくという考え方です。
まず、作業を閉じるときに1行のメモを残します。「次はドラムの音量を下げるところから」。これだけで、次に開いたときの迷いが消えます。メモがないと、まず状況を思い出すところから始まり、その数分で15分の枠が半分になります。
次に、繰り返す作業を型にします。書き出しの設定、フォルダの構成、納品時の連絡文。毎回考え直しているものを、一度テンプレートにしてしまう。最初に30分かけて作れば、あとは毎回3分で済みます。
そして、確認する項目を一覧にしておきます。冒頭が欠けていないか、末尾に余計な無音や雑音がないか、指定の形式になっているか、ファイル名は規則どおりか。この4つを紙かメモアプリに書いておいて、納品前に必ず目で追う。記憶に頼らないことが、疲れているときの取りこぼしを防ぎます。
こういう相談がよくあります。「集中が続かないので向いていない気がします」。でも、お話を伺うと、集中力の問題ではないことがほとんどです。中断のたびに毎回同じことを思い出す作りになっているだけなんです。仕組みを変えれば、同じ集中力でも進み方が変わります。
家族や同居人がいる家で、音をどう扱うか
在宅でこの仕事をする方から、環境の相談もよくいただきます。
音を扱う仕事は、家の中で存在感があります。ヘッドホンをしていれば聴く側の音は漏れませんが、録音のときは家全体に静かにしてもらう必要が出てきます。ここで気を遣いすぎて、結局まとまった時間を取れないまま締切が来る。そういう方が少なくありません。
対処は、事前の共有です。「今週の土曜の10時から11時半、録音をするので静かにしてほしい」と先に伝えておく。当日になって突然お願いするより、はるかに通りやすくなります。家族にとっても、いつ協力すればよいのかが分かるほうが楽です。
反対に、細切れで進む工程はヘッドホンで完結します。リファレンスの聴き込み、音色の絞り込み、ファイル整理。これらは家族が同じ部屋にいても進められます。つまり、家の中の静けさを必要とする工程だけを週に1回か2回に集約し、それ以外は普段の生活の中に混ぜる。この分け方が、家庭内の摩擦をいちばん減らします。
自分だけが我慢すればいいと考えて、深夜に無理な録音を続ける方もいます。けれど、睡眠を削って作った音は、翌日の自分の耳では判断できません。体調を崩してまで守る締切はありません。難しいときは、納期の相談を先に入れてください。事前の相談は、事後の遅延よりずっと軽く受け止められます。
まとまった時間がないと動かない工程
ここからは、細切れにすると崩れるほうです。無理に押し込まないでください。
通しの本番録音
演奏を通しで録る作業には、連続した静かな時間が必要です。3分の演奏を録るには、少なくとも3分間、生活音が入らない状態が続かなければなりません。それに加えて、機材を出して接続し、音量を合わせ、耳と指を温める準備が要ります。
準備に15分、録音に30分、片づけに10分。この一連を分割することはできません。週のどこかに、この塊を1つ置いてください。
ミックスと全体のバランス調整
複数の音を重ねて、全体の聞こえ方を整える工程です。ここが最も細切れに向きません。
理由は耳にあります。同じ音を聴き続けると耳が慣れてしまい、判断が変わります。逆に間を空けすぎると、前回どこを直したのかが分からなくなります。ある程度の時間を続けて確保し、その中で判断を完結させるほうが、結果的に速く終わります。
曲の構成を設計する
どこで盛り上げ、どこを引くのか。全体の流れを決める作業も、頭の中に設計図を広げ続ける必要があります。15分では設計図を広げ終わったところで時間が来ます。
最終確認
書き出したファイルを最初から最後まで通して聴く工程です。途中で止めてしまうと、止めた場所の前後にある不具合を見落とします。尺が短ければ数分で終わりますが、必ず一度で通してください。
1つの案件を、生活の形に合わせて分解する
工程が分かったら、次は組み立てです。
たとえば1週間で仕上げる依頼を受けたとします。細切れの時間しか取れない日と、まとまった時間が取れる日を、先に分けます。
平日の細切れには、リファレンスの聴き込み、確認事項の整理、音色候補の絞り込み、素材の単発録音、ファイル整理、連絡を割り当てます。土曜の午前に90分の塊を取り、そこで通しの録音と構成の決定を済ませます。日曜の夜にもう1つ60分の塊を取り、ミックスと最終確認をして納品します。
この形にすると、まとまった時間は週に2回で足ります。逆に言えば、週に2回の塊すら取れない生活のときは、通しの演奏が必要な依頼を受けないという判断が要ります。短い効果音やジングルだけに絞れば、塊が取れない週でも回ります。
こういう相談がよくあります。「まとまった時間がないから諦めたほうがいいでしょうか」。そんなことはありません。受ける仕事の種類を、取れる時間の形に合わせればいいんです。全部を諦める必要はありません。
家庭の事情で細切れの時間しか取れない方に向けた在宅仕事の組み立て方は育児中にできる在宅副業10選|スキマ時間で月3万円を目指すでも扱われています。音の仕事以外の選択肢と並べて考えたい方は、目を通しておくとよいでしょう。
スキマ時間を前提にするときの、単価の注意点
ここは正直にお伝えします。スキマ時間だけで完結させようとすると、価格の面で不利になりやすい構造があります。
理由は2つです。1つは、細切れで進む工程は準備や整理といった時間で、依頼者から見える成果物にはなりにくいこと。もう1つは、まとまった時間が要る工程を避けると、受けられる仕事が短い尺のものに偏り、1件あたりの金額が小さくなることです。
参考として、外部に音楽制作を頼む側から見た価格の目安を挙げておきます。
アマチュアの個人クリエイターの場合、インストゥルメンタルBGMで2週間程度、歌曲で1~2ヶ月程度で制作してくれる方が多いです。相場は1曲5000円(BGM)〜5万(歌曲)ほど。費用を抑えたいという場合に良いでしょう。中には、プロに近いような作曲をしてくれる方もいますが、個人クリエイターのため依頼する人によってはクオリティーが低いこともあります。依頼する際は、サンプルなどを確認して見極める必要があります。 出典: g-angle.co.jp
BGM1曲で5,000円前後から、という水準です。制作期間として2週間程度が見込まれていることも分かります。この2週間という数字は、毎日机に張りついている前提ではありません。細切れの時間を挟みながら進めることを織り込んだ期間だと考えると、スキマ時間を使う働き方は依頼者側の想定とも矛盾しません。
大切なのは、細切れで進めた工程も含めて自分の作業時間を把握しておくことです。実際にかかった時間を記録せずに金額だけを決めると、あとで割に合わないと感じる原因になります。この点は、続けられるかどうかに直結します。
他の職種の水準と並べて眺めたい方は、ソフトウェア作成者の年収・単価相場や著述家,記者,編集者の年収・単価相場といった職種別の相場データが参考になります。数字を見て冷静になるのは、悪いことではありません。
案件の探し方と、在宅で回すための環境
案件を扱うサイトでは、この分野の仕事がこう説明されています。
楽器演奏の録音・音源提供の仕事・案件一覧ページです。クラウドソーシング・アウトソーシングに強いランサーズでは、楽器演奏の録音・音源提供の仕事情報の検索から納品、報酬の受け取りまで、すべて完結します。時間や場所にとらわれず、在宅や副業などさまざまな働き方を実現可能です。24時間365日のサポート体制をご用意しています。仕事、業務委託/副業案件、求人をお探しのフリーランスの方はまず会員登録がおすすめです。 出典: lancers.jp
検索から納品、報酬の受け取りまでが画面上で完結する、という点は押さえておきたいところです。つまり、案件を探す作業そのものもスキマ時間で進められます。募集を眺めて条件を確認し、気になったものを保存しておく。この選び方の時間を、15分の枠に定期的に置いておくと、締切に追われてから慌てて探すことがなくなります。
どんな種類の依頼が出ているのかを俯瞰したい方は楽器演奏・BGM・SEのお仕事や作曲・編曲・効果音・ジングルのお仕事で扱われる仕事の分類を見ておくと、自分の時間の形に合う入口が見つけやすくなります。
在宅で回すための環境面も、少しだけ触れておきます。音声ファイルは容量が大きく、やり取りの回数も多くなります。送信の待ち時間が長いと、せっかくの15分がファイルの転送だけで終わってしまいます。在宅ワークに最適なネット回線|光回線vsホームルーターの選び方のような比較で回線の条件を見直しておくと、細切れの時間の目減りを防げます。録音機材や自宅の環境づくりそのものについては楽器演奏・BGM制作の在宅ワーク|音楽家のオンライン副業が詳しいので、そちらを参照してください。
自分の時間の形に合う案件を、どう見分けるか
募集を眺めるときに、どこを見れば自分の生活に合うか判断できるのか。ここも整理しておきます。
見るべきは4点です。1つ目は尺です。数秒から十数秒の効果音やジングルは、通しの録音を必要としないため、まとまった時間が取りにくい方でも回せます。反対に、複数の楽器を重ねた数分の楽曲は、塊の時間が前提になります。
2つ目は納期の長さです。同じ作業量でも、3日後が期限の依頼と3週間後が期限の依頼では、必要な生活の組み替えがまったく違います。細切れ中心で進めるなら、納期に余裕のある依頼を選ぶほうが安全です。募集文に納期が書かれていない場合は、応募の前に確認してください。
3つ目は修正の条件です。修正の回数や範囲が書かれていない依頼は、終わりが読めません。終わりが読めない仕事は、スキマ時間で回している方にとって特に負担が大きくなります。何往復まで含むのか、追加分はどう扱うのかを、受ける前に文面で確認しておきましょう。
4つ目は連絡の頻度です。日中の即レスを求められる依頼は、会社勤めや育児の合間に働く方には向きません。返信できる時間帯を先に伝えておき、それで問題ないかを確認する。ここを曖昧にしたまま受けると、作業以外のところで消耗します。
この4点を確認する作業自体は、5分から10分で終わります。応募する前のこのひと手間が、あとの数週間の穏やかさを決めます。焦って受けたくなる気持ちは分かりますが、合わない依頼を1件受けるより、合う依頼を待つほうが結果として続きます。
細切れの働き方で、体を壊さないために
もう一つだけ、お伝えしておきたいことがあります。
スキマ時間を使うということは、休憩だった時間を作業に変えるということでもあります。通勤の移動、昼休みの後半、寝る前の30分。これまで何もしていなかった時間に見えても、実際には頭を休めていた時間です。
そこを全部埋めてしまうと、数か月で疲れが表に出てきます。眠りが浅くなる、集中が続かない、音の判断ができなくなる。特に耳を使う仕事は、疲労の影響が品質に直結します。
ですから、埋めない枠を意図的に残してください。1日のうち、どれだけ忙しくてもここには仕事を入れない、という時間を決めておく。夕食の時間でも、入浴の時間でも構いません。その枠があるだけで、追い立てられる感覚がかなり和らぎます。
耳の休息についても触れておきます。長時間ヘッドホンで作業を続けると、音の判断が鈍っていきます。同じ曲を聴き続けると、粗が聞こえなくなるのです。1時間に1度は外して、静かな状態を数分作る。これだけで、書き出したあとの聞き逃しが減ります。
体調を崩してまで守らなければならない締切は、基本的にありません。難しいときは、早めに納期の相談を入れてください。事前の相談は、事後の遅延よりずっと軽く受け止めてもらえます。無理をして納めた1件より、無理なく続けられる形のほうが、結果として長く仕事につながります。
この分野の需要と、これから
将来のことも冷静に見ておきましょう。
動画、ゲーム、アプリ、店舗、配信。音を必要とする場所は増えています。無料素材だけでは他の作品と重なってしまうため、オリジナルの音への需要はなくなりません。一方で、文章から音楽を作る技術は年々進んでいて、汎用的で当たり障りのないBGMほど置き換えの圧力を受けます。
残りやすいのは、作品ごとの文脈に合わせて細かく調整が必要な音、生の楽器でなければ出ない質感、そして依頼者と言葉を交わしながら詰めていく工程です。技術の進歩を扱う分野そのものに関心がある方はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事で周辺の仕事の広がりを、技術系の資格から入り口を探したい方はCCNA(シスコ技術者認定)のような認定を見ておくと、音の仕事と組み合わせた進み方も見えてきます。
いずれにしても、細切れの時間で進む工程は、その多くが人とのやり取りと準備に関わる部分です。ここは自動化されにくい領域でもあります。依頼者が言葉にできていない要望を質問で引き出し、参考の音を一緒に探し、出来上がったものについて説明する。この往復は、時間を細かく分けても成立しますし、機械に置き換わりにくい。スキマ時間で働く方にとって、むしろ有利に働く部分だと考えています。
需要の広がり方についても、少し補足しておきます。かつて音楽の外注といえば、映像作品や商業施設のような予算のある現場が中心でした。今は、個人が運営する配信チャンネル、小規模なアプリ、社内向けの研修動画、地域のイベント告知といった、規模の小さい依頼が数として増えています。1件あたりの金額は大きくありませんが、必要とされる尺は短く、求められる完成度も過剰ではありません。細切れの時間で回せる仕事が増えているという意味では、働き方の選択肢は広がっています。
ただし、この層の依頼者は音楽制作の相場や工程に詳しくないことが多い、という点は覚えておいてください。悪気なく無理な納期を提示してきたり、修正の範囲を決めずに依頼してきたりします。だからこそ、受ける側が条件を言葉にして確認する必要があります。これは自分を守るためであると同時に、相手にとっても進めやすい形を作る行為です。
運営者として見てきた、時間の使い方と続き方の考察
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見て、はっきりした傾向があります。
長く続く方ほど、まとまった時間の確保にこだわっていません。むしろ、細切れの時間で片づく工程を徹底的に洗い出して、まとまった時間を「そこでしかできないこと」だけに使っています。準備と整理を先に済ませてあるので、90分の塊が実質90分の制作時間になる。逆に続かない方は、90分の塊のうち30分を探し物と準備に使ってしまい、進んだ実感が得られないまま終わります。
もう1つ、運営者として見てきた限りでは、手取りの厚さが時間の使い方を変えます。仲介の手数料が差し引かれない直接の取引では、同じ予算で依頼者はより多くを頼めるようになり、受け手は1件あたりに余裕を持てます。手数料0%という条件が効いてくるのは、金額そのものより、この余裕の部分です。余裕があると、確認の一往復や最終確認の時間を削らずに済みます。細切れの時間しか取れない方にとって、削らずに済むというのは、そのまま品質が保たれるということです。
冒頭の問いに戻ります。楽器演奏・BGM制作はスキマ時間で進むのか。準備、確認、素材づくり、整理、事務は進みます。通しの録音、ミックス、構成の設計は進みません。この線を引いたうえで、進まない工程が週に何回置けるかを数えてください。置ける回数に合わせて、受ける仕事の種類を選ぶ。それだけで、無理のない形が見つかります。
焦らなくて大丈夫です。まずは今週、15分の枠を1つだけ決めて、リファレンスを聴くところから始めてみてください。
最後にもう一つだけ。細切れの時間で働いていると、進んでいる実感が持ちにくくなります。1回15分の作業は、終わったあとに達成感が残りにくいからです。ここで「自分は全然進んでいない」と感じてしまい、意欲が落ちてしまう方がいます。
対策として、やったことを短く記録することをおすすめしています。日付と、その日にできたことを1行だけ。「リファレンス3回聴いた」「素材を2つ録った」。それだけで構いません。1週間分を並べて見ると、思っていたよりずっと進んでいることが分かります。細切れの働き方は、記録しないと成果が見えないだけで、実際には積み上がっています。
見えない努力を、自分で見えるようにしてあげてください。それが、この働き方を続けるうえでいちばん効く手当てだと思っています。
よくある質問
Q. 楽器演奏・BGM制作は本当にスキマ時間だけで完結しますか?
工程によります。リファレンスの聴き込み、確認事項の整理、音色候補の絞り込み、数秒の素材録音、ファイル整理、連絡や見積などの事務は細切れでも進みます。一方で通しの本番録音、ミックス、構成の設計は中断すると再開に時間がかかるため、まとまった時間が必要です。短い効果音やジングルに絞れば、塊の時間が取りにくい週でも回せます。
Q. まとまった時間は週にどのくらい必要ですか?
1週間で1曲を仕上げる場合、90分程度の塊を1回、60分程度の塊を1回の合計2回が一つの目安になります。前者で通しの録音と構成の決定、後者でミックスと最終確認を行う組み立てです。細切れの時間で準備と整理を済ませておくほど、この塊の時間を制作そのものに使えます。
Q. スキマ時間中心だと報酬は低くなりますか?
受ける仕事が短い尺のものに偏るため、1件あたりの金額は小さくなりやすい傾向があります。個人に依頼する場合のBGMの相場は1曲5,000円程度からとされており、効果音やジングルはこれより下がります。細切れで進めた準備や整理の時間も含めて実作業時間を記録し、そのうえで金額を判断することが大切です。
Q. 中断しても崩れにくい進め方のコツはありますか?
中断から戻るコストが低い作業を細切れに割り当てることです。ファイル名の規則を先に決めておく、確認事項を箇条書きで残しておく、次に何をするかを1行メモにしてから閉じる。この3つを習慣にすると、再開時に思い出す時間がほとんど要らなくなり、15分の枠がそのまま作業時間になります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
中西 直美@SOHO編集部
産業カウンセラー・キャリアコンサルタント
大手人材会社でキャリアカウンセラーとして15年間従事した後、フリーランスの産業カウンセラーとして独立。在宅ワーカーのメンタルヘルスケアを専門に活動しています。
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