ふるさと兼業で地方の仕事に関わる方法


この記事のポイント
- ✓報酬や稼働時間はどれくらいか
- ✓会社員が始めるときの就業規則や税金の扱い
- ✓応募から参画までの流れ
「ふるさと兼業」で検索する人の多くは、地方に何か関わりたいという気持ちと、今の仕事を辞めるつもりはないという現実の、その両方を抱えています。結論から書きます。ふるさと兼業は移住の前段階ではなく、住む場所を変えずに地域の事業へプロジェクト単位で関わる働き方です。報酬が目的の副業とは設計思想が違い、無報酬のプロボノ枠も多く混ざっています。ここを取り違えたまま応募すると、3か月後に必ず息切れします。この記事では、募集の実態、制度の裏付け、報酬と稼働の現実、会社員が踏むべき手続きを、公的な統計と制度の原文にあたって順番に整理します。
ふるさと兼業とは何か。名称と仕組みを分けて理解する
まず言葉の整理からです。「ふるさと兼業」は一般名詞のようでいて、実際にはNPO法人G-netが運営事務局を務めるプロジェクト型兼業・プロボノのマッチングサイトの名称でもあります。岐阜を拠点に地域企業と若者をつなぐ活動を20年以上続けてきた団体が運営しており、掲載されているのは求人票ではなく「プロジェクト」です。観光案内所の来訪動機をリサーチから企画まで一緒に作る、地域のロゴを事業者が自発的に使う文化に育てる、といった具合に、業務内容ではなく解きたい問いが先に書かれています。
ふるさと兼業を活用することで、中小企業は外部人材をプロジェクト単位で活用し、需要に合わせた柔軟な人材確保が可能になります。正社員採用に頼らず、必要なタイミングで、必要なスキルや経験を持つ副業人材・外部人材と協業できる点が大きな特徴です。 出典: otaru.mypl.net
一方で、地域の仕事に関わる入り口はこのサイトだけではありません。国の制度として用意されているものが、性格の違う三つに分かれています。ひとつは総務省の地域おこし協力隊で、こちらは住民票を移す前提の制度です。二つめが内閣府のプロフェッショナル人材事業で、各道府県に設置されたプロフェッショナル人材戦略拠点が、地域企業と外部人材のマッチングを支援します。三つめが総務省の特定地域づくり事業協同組合制度で、季節ごとの労働需要に応じて複数の事業者の仕事に従事する「マルチワーカー」を、組合が無期雇用したうえで派遣する仕組みです。
この三つのうち、住む場所を変えずに関われるのは二つめだけです。ふるさと兼業のようなマッチングサイトは、この二つめの領域を民間側から埋めている存在だと理解すると、位置づけがはっきりします。実際、ふるさと兼業の地域パートナーは内閣府のプロフェッショナル人材事業における令和8年度の登録民間人材ビジネス事業者として、複数の都道府県拠点に登録されています。制度と民間サービスが地続きになっているわけです。
なお、プロフェッショナル人材戦略拠点への相談そのものは無料です。人材のマッチングには別途所定の手数料が発生することがある、という条件付きの記載が公式サイトにあります。企業側が拠点経由で人を探す流れなので、働き手が直接窓口に行って案件を紹介してもらう使い方とは少し違います。まずは民間のマッチングサイトを見て、地域の事業者がどんな課題を出しているかを眺めるところから始めるのが現実的です。
募集の中身。何が「仕事」として切り出されているか
ふるさと兼業に並んでいるプロジェクトを継続して観察すると、切り出されている業務にはっきりした傾向があります。地域の中小企業や一般社団法人が、自分たちでは手が回らない領域を、そのまま外に出しているのです。
最も多いのが広報とブランディングの領域です。ロゴやキャッチコピーを作ったあと、それを地域の事業者に使ってもらうところで止まっている。SNSのアカウントは開設したが更新が続かない。観光案内所に人が来ない理由を誰も調べていない。こうした「作ったあとの運用」が丸ごと空いています。次に多いのが販路開拓と商品企画で、いい原料や技術はあるのに売り方が分からないという相談です。三番目にITと業務改善が来ます。受発注が電話とファクスで回っていて、在庫がどこにあるか社長の頭の中にしかない、という状態の会社は地方に山ほどあります。
ここで正直なところを書くと、募集要項に「マーケティング経験者募集」と書かれていても、実際に求められているのは戦略立案ではないことがほとんどです。現場で必要なのは、誰かが決めたことを形にして、週に一度でも進捗を動かし続ける手です。立派な提案書を一本出して終わる関わり方は、地域側からするとほぼ役に立ちません。逆に言えば、華やかな経歴がなくても、手を動かして期日を守れる人であれば十分に通用します。
募集の形態は、報酬のあるプロジェクトと、交通費のみのプロボノ枠が混在しています。ここを事前に確認せずに応募して、あとから「無報酬だった」と落胆する人が一定数います。掲載ページの条件欄は必ず最後まで読んでください。報酬額が「応相談」になっている場合は、応募前の面談で必ず聞くことです。聞きにくいと感じるかもしれませんが、条件を曖昧にしたまま始めた関係のほうが、あとで双方に負担を残します。
報酬と稼働の現実。数字で見た兼業の重さ
稼働時間の目安は、プロジェクトの規模によって大きく振れます。ただ、募集ページに書かれている条件を横断して見ると、週あたり3時間から10時間程度、期間は3か月から6か月に設定されているものが中心です。平日の夜と土日の一部を使う前提の設計になっており、フルタイムの仕事と並行できる範囲に収める意図が読み取れます。
報酬は、月額で数万円という水準のものから、プロジェクト総額で十数万円というものまで幅があります。時間単価に直すと、都市部の同じスキルの業務委託相場より低く出るのが一般的です。これは隠しても仕方のない事実で、地域の中小企業が払える額には上限があるからです。報酬の多寡で判断するなら、ふるさと兼業は合理的な選択肢ではありません。
では何が得られるのか。ひとつは、都市部の分業された仕事では触れられない「事業全体」に関われることです。社長と直接話し、意思決定の過程を見て、自分の提案が翌週には現場で試される。この速度は大企業では味わえません。もうひとつは、職務経歴に書ける具体的な成果です。転職市場で評価されるのは肩書きではなく、何をどう動かしたかの記述です。
その職務経歴の書き方については職務経歴書の書き方完全ガイド|転職成功率を上げるコツ【2026年版】で、実績を数字と行動に分解して書く型を解説しています。ふるさと兼業で関わったプロジェクトは、規模が小さいぶん自分の担当範囲がはっきりしているので、この型にそのまま乗せやすいという利点があります。
転職市場全体の数字も押さえておきましょう。厚生労働省の雇用動向調査によれば、令和7年の転職入職者のうち前職より賃金が「増加」した割合は40.8%、「減少」した割合は31.0%で、増加が減少を9.8ポイント上回っています。転職そのものが賃金を下げる時代ではなくなっている一方で、3割は下がっているという現実も同時にあります。兼業で外の仕事を試してから動くという順番には、この下振れを避ける意味があります。
移住する道との比較。地域おこし協力隊と特定地域づくり事業協同組合
住む場所を変えずに関わる道を選ぶ前に、変える道がどうなっているかも知っておくと判断が楽になります。比較の対象になるのは二つです。
ひとつめが、総務省の地域おこし協力隊です。都市地域から過疎地域などの条件不利地域に住民票を異動し、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR、農林水産業への従事、住民支援といった地域協力活動を行いながら、その地域への定住・定着を図る取り組みです。隊員は各自治体の委嘱を受け、任期はおおむね1年から3年。総務省の公式説明によれば、令和6年度は10代から60代以上までの幅広い年齢層の総勢7,910名が活動しており、任期後の定住率は約70%とされています。
この数字は、思っているより重い意味を持ちます。任期の1年から3年をかけて、仕事と住居の準備を現地でじっくり進められるから、定住率がこの水準になるのです。裏を返せば、腰を据えて動ける期間があることが定着の条件だということでもあります。週数時間の兼業でその地域に住み着けるかというと、まず無理です。ここは分けて考えたほうがいい。制度の詳細は総務省の地域おこし協力隊のページにまとまっています。
二つめが、特定地域づくり事業協同組合制度です。人口が急激に減っている地域で、中小企業等協同組合法に基づく事業協同組合が、季節ごとの労働需要に応じて複数の事業者の事業に従事するマルチワーカーを雇い、各事業者へ派遣します。特徴は、組合が無期雇用した職員に限って、労働者派遣事業を許可ではなく届出で実施できる点です。根拠法は令和元年法律第64号で、令和7年法律第15号により改正されています。夏は農業、冬は観光、といった具合に仕事をつなぎ合わせて、年間を通じた安定雇用を作る発想です。
三つの道を並べると、性格の違いがはっきりします。地域おこし協力隊は移住して地域に入る道。特定地域づくり事業協同組合は移住して複数の仕事を掛け持つ道。そしてふるさと兼業のようなプロジェクト型は、住まいを動かさずに関わる道です。どれが優れているという話ではなく、自分がいま動かせるものが時間だけなのか、生活の拠点ごとなのかで選ぶ対象が変わります。総務省は、移住した定住人口でも観光に来た交流人口でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々を「関係人口」と呼び、地域づくりの担い手として期待していると整理しています。ふるさと兼業は、この関係人口を作る手段のひとつに位置づけられます。
制度の裏付け。副業・兼業は国が後押ししている
会社員が最初に不安になるのが「そもそも勤め先が許すのか」という点です。ここは制度の原文にあたるのが一番早い。
厚生労働省は平成30年1月に、副業・兼業について企業と働く人が現行の法令のもとで何に留意すべきかをまとめた「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を作成しました。その後、令和2年9月と令和4年7月に改定されています。解説やモデル規定、各種様式例をまとめたパンフレットは令和7年3月31日改定版が最新です。内容を一文で言えば、副業・兼業は原則として認める方向で整理されており、労働時間の通算や健康確保の手続きが具体的に示されています。
同じ平成30年1月、厚生労働省はモデル就業規則も改定しました。労働者の遵守事項にあった「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という規定を削除し、副業・兼業についての規定を新設しています。つまり、国が示す就業規則のひな型からは、すでに副業禁止の条文が消えています。勤め先の規則がまだ古いままなら、それは国の方針に追いついていないだけです。
詳細は厚生労働省の副業・兼業のページで原文が公開されています。ガイドライン本体、パンフレット、労働時間の通算に関する解説資料、様式例まで揃っているので、勤め先に相談する前に一度目を通しておくと話が早く進みます。
ただし注意点があります。公務員は地方公務員法や国家公務員法の兼業制限を受けるため、民間と同じ扱いにはなりません。地方公務員については、営利企業への従事等に係る任命権者の許可に関する留意事項が令和7年6月に通知として出されており、許可の運用が整理されつつあります。該当する場合は、必ず所属の人事部門に先に確認してください。
会社員が始める前に片づけておく4つの手続き
制度が許していても、手続きを飛ばすと後で面倒になります。順番に片づけましょう。
第一に、勤め先の就業規則です。副業・兼業の条項がどう書かれているかを確認し、届出制なのか許可制なのかを見ます。届出制なら所定の様式を出すだけで済みますが、許可制なら上長との面談が要ります。このとき、報酬額よりも「本業に支障が出ない稼働設計」を先に説明するほうが通りやすい。週何時間を、どの時間帯に、どのくらいの期間使うのかを紙一枚にまとめて持っていくのが実務的です。
第二に、労働時間の通算です。副業先と雇用契約を結ぶ場合、労働時間は本業と通算されます。ここを誤ると、本業側に割増賃金の負担が生じることがあります。ふるさと兼業のプロジェクトは業務委託契約であることが多く、その場合は労働時間の通算対象にはなりませんが、契約の形態は必ず書面で確認してください。「手伝い」のような曖昧な形で始めるのが一番危険です。
第三に、税金です。給与以外の所得が年間20万円を超える場合、確定申告が必要になるのが一般的な扱いです。ただし、所得の種類や他の収入の状況によって取り扱いは変わるので、金額や事情に応じて税務署または税理士に確認してください。経費として認められる範囲も、交通費や通信費の按分など判断が分かれる部分があります。領収書は最初から分けて保管しておくと後が楽です。
第四に、情報の扱いです。本業と副業先が同業だと、競業避止や秘密保持の問題が生じます。ふるさと兼業の場合は業種が離れていることが多いので衝突は起きにくいのですが、コンサルティングやIT支援の形で関わるなら、本業で得た顧客情報や技術情報を持ち出さない線引きを自分の中で明確にしておく必要があります。
つまずく人に共通する5つのパターン
続かない関わり方には、はっきりした型があります。
ひとつめは、初回の熱量で稼働を積みすぎるパターンです。最初の一か月で週15時間使ってしまい、本業の繁忙期と重なって二か月目に失速する。これが最も多い。稼働は最初から上限を決めて、余ったら足す形にしてください。
二つめは、現地に行く前提で組んでしまうパターンです。オンラインで完結する設計にしておかないと、交通費と移動時間が効いてきます。往復で6時間かかる場所に月2回通うと、それだけで月12時間が移動に消えます。キックオフと最終報告だけ現地、あとはオンライン、という割り切りが現実的です。
三つめは、成果物の定義が曖昧なまま始めるパターンです。「広報を手伝ってほしい」という依頼をそのまま受けると、終わりが来ません。何を、いつまでに、どの状態にするかを一行で書いて、双方で確認する。これをやるかやらないかで、プロジェクトの後半の空気が変わります。
四つめは、地域側の事情を軽く見るパターンです。相手は本業の合間に対応しています。こちらが土曜の夜に送ったメッセージへの返信が水曜になるのは普通のことで、それを遅いと感じ始めると関係が悪化します。反応の速さを前提にしない進め方を最初から組んでおくべきです。
五つめは、自分のスキルを大きく見せてしまうパターンです。できないことをできると言って入ると、実務が始まった瞬間に露見します。地域の現場は人数が少ないぶん、誰が何をやっているかが全部見えています。できる範囲を正直に伝えたうえで「その隣の領域なら調べながらやれる」と言うほうが、はるかに信頼されます。
選考で見られている点と、通る応募文の書き方
応募フォームに書く内容で、通過率は明確に変わります。地域側が見ているのは、実は経歴ではありません。
見られているのは三点です。まず、その地域や事業に対する具体的な関心があるか。「地方創生に興味があります」は何も言っていないのと同じです。募集ページに書かれた課題のどこに反応したのかを、自分の言葉で一段掘って書く。次に、稼働の現実性。週に何時間、どの曜日に動けるかを明記する。ここが空欄の応募は、本業との両立を考えていないと見なされます。最後に、初回の三週間で何をするつもりかの見立て。完璧な計画は不要で、「まず現状のSNSの投稿履歴とアクセスを見せてもらい、反応が取れている型を洗い出したい」程度で十分です。
書類の書き方そのものに不安があるなら、文章表現の基礎を測る資格としてビジネス文書検定のような検定があります。これ自体が応募で評価されるわけではありませんが、相手に伝わる文書の型を身につける手段としては地味に効きます。地域の事業者とやりとりする場面では、簡潔で誤解の少ない文章が書けることが、そのまま信頼につながります。
面談では、報酬と稼働の条件を必ず自分から確認してください。遠慮して聞かずに始めると、3か月後に必ずこじれます。契約書または合意メモを残すこと、成果物の所有権と公開可否を決めておくこと。この二点は、どんなに小さなプロジェクトでも省略しないでください。
地域を選ぶときの見方。距離ではなく関係の濃さで決める
どの地域のプロジェクトに応募するかで迷う人は多い。出身地に貢献したいという動機から入る人もいれば、旅行で気に入った土地を選ぶ人もいます。どちらでも構いませんが、選び方の軸をひとつ足しておくと続きやすくなります。
その軸は、受け入れ側の体制です。具体的には、窓口になる担当者が明確か、過去に外部人材を受け入れた経験があるか、この二点を見てください。初めて外部の人を入れる事業者は、何を任せていいか分かりません。その状態で入ると、こちらが仕事を自分で作り出さないと何も進まない。逆に、過去に何人か受け入れてきた事業者は、依頼の切り出し方が上手です。募集ページに過去の参画者の声が載っているかどうかは、判断材料になります。
次に、地域側の意思決定の速さも見ておくべきです。社長が直接出てくる小さな会社は速い。一方で、複数の団体が関わる協議会型のプロジェクトは、合意形成に時間がかかります。兼業で使える時間は限られているので、決まらない会議に同席する時間が長いプロジェクトは、こちらの持ち出しが増えます。最初の面談で「この件は誰が決めますか」と聞いておくだけで、だいぶ見通しが立ちます。
出身地を選ぶ場合の注意も書いておきます。地元だからという理由で入ると、地縁のある人から別の相談が飛んでくることがあります。頼まれると断りにくい。これは善意の連鎖ですが、兼業の稼働枠は簡単に溢れます。プロジェクトの範囲外の依頼が来たら、その場で受けずに「担当の窓口を通してもらえますか」と返す。冷たく見えても、この線を引けるかどうかが、一年後も関係が続いているかを分けます。
もうひとつ、気候と季節も実は効きます。農業や水産に関わるプロジェクトは繁忙期が固定されており、その時期は相手の反応が止まります。年度末に予算の話が集中する自治体系も同様です。応募前に「この仕事の山場はいつですか」と聞いておくと、自分の本業の繁忙期と重ならないかを確かめられます。
長く続いている人が何をしているか
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、地域の仕事に長く関わり続けている人には、共通する振る舞いがあります。単発の作業をきれいに納めることよりも、「この人に任せると楽だ」という状態を作ることに時間を使っているのです。
具体的には、こういうことをしています。依頼された作業の前後にある、誰もやっていない小さな段取りを黙って埋める。議事録を残す、次回までの宿題を箇条書きにして送る、相手が使いやすいファイル形式に直しておく。どれも成果物には数えられませんが、これがあるかないかで、相手の負担がまったく変わります。結果として、次のプロジェクトも同じ人に声がかかる。
もうひとつ、中間に手数料が乗らない直接のやりとりでは、同じ予算で依頼側はより多く頼めて、受け手の手取りは厚くなります。地域の事業者が払える額には限りがあるので、この差は大きい。金額そのものが上がるわけではなく、渡した予算がそのまま相手の仕事に届くという質の話です。長く続いている関係ほど、この構造の上に成り立っています。
逆に、続かない人にも共通点があります。成果を報告することに熱心で、相手が次に何をすればいいかを示さない。報告書は立派だが、それを読んだ地域側が動けない。これでは二回目がありません。地域の現場に必要なのは評論ではなく、次の一手です。
プロジェクトが終わったあとの3つの出口
期間が決まっている働き方なので、終わりが必ず来ます。そのあとどうなるかを、実際に起きているパターンで整理しておきます。
一つめは、同じ地域で次のプロジェクトに入る道です。最も多い流れで、一度信頼を得ると、同じ事業者か、その事業者が紹介する別の会社から声がかかります。地方は横のつながりが濃いので、評判の伝わり方が都市部とは比べものになりません。良い評判も悪い評判も同じ速さで回ります。
二つめは、関わり方を変えて継続する道です。プロジェクトとしては終わっても、月に数時間の顧問やアドバイザーという形で残るケースがあります。報酬は下がりますが、稼働も下がるので、本業との両立という点では持続可能です。地域側も、困ったときに聞ける相手が外にいる状態を望んでいます。
三つめは、そこで終える道です。これを失敗だと考える必要はありません。半年関わってみて、自分には合わなかったと分かること自体が成果です。合わなかった理由を言語化しておけば、次に何を選ぶべきかの判断材料になります。ここで無理に続けると、本業にも地域にも良い結果を残しません。
どの出口を選ぶにせよ、終了時にやっておくべきことがあります。成果物と引き継ぎ資料を、相手が自分たちで運用できる形にして渡すことです。自分にしか触れないツールや、自分のアカウントに紐づいたデータを残したまま抜けると、そこで積み上げたものが止まります。次の担当者が読めば分かる手順書を一枚残す。これができている人は、必ずまた呼ばれます。
職種データから見た、ふるさと兼業の入口になりやすい仕事
どんなスキルが地域で求められているかを、職種ごとの仕事内容と相場のデータから逆算してみます。
地方の中小企業が外部に出したがる業務の筆頭は、広報と文章です。商品説明、会社案内、補助金の申請書類、採用ページの原稿。どれも社内に書ける人がいないという理由で止まっています。著述家,記者,編集者の年収・単価相場には、この職種の仕事内容と報酬の分布がまとまっています。相場を知ったうえで条件を見れば、提示額が地域水準としてどの位置にあるかを判断できます。
次に多いのがIT関連です。業務システムの入れ替え、在庫管理の仕組み作り、予約フォームの設置。大掛かりな開発ではなく、既存のサービスを組み合わせて回るようにする仕事がほとんどです。アプリケーション開発のお仕事では、こうした開発案件がどんな進み方をするかが整理されています。地域側は仕様書を書けないので、要件を一緒に言語化する工程から入ることになります。
近年増えているのが、生成AIの業務導入を手伝う相談です。補助金の申請文の下書き、問い合わせ対応の定型化、商品説明の量産。地域の事業者ほど人手が足りないので、効果が直接出ます。AIコンサル・業務活用支援のお仕事に、どんな依頼が実際に来ているかがまとまっています。ここは専門家でなくても、社内で使った経験があれば十分に貢献できる領域です。
ネットワークやセキュリティの基礎が分かる人も重宝されます。地方の事業所は、無線の設定やアクセス権の管理が誰の担当でもないまま放置されていることが珍しくありません。CCNA(シスコ技術者認定)のような資格で扱う範囲は、まさにこの穴を埋める知識です。資格を取るためではなく、何が起きているかを説明できるようになるために学ぶ価値があります。
最後に、転職を視野に入れている人向けの補足です。ふるさと兼業での経験は、そのまま転職活動の材料になります。20代であれば20代の転職サイトおすすめ5選|未経験・第二新卒向け、年代や職種で絞り込みたいなら転職サイトおすすめ比較【2026年版】|年代・職種別の選び方に、それぞれの選び方が整理されています。外で実際に手を動かした経験を持って臨むかどうかで、面接で話せる中身の厚みが変わります。
こうして職種ごとに並べてみると、地域が求めているのは高度な専門性ではなく、社内の誰もが少しずつ持っている技能の「専任の担い手」だと分かります。都市部の会社で当たり前に回っている業務が、地方では誰の担当でもないまま放置されている。その落差がそのまま募集になっているわけです。自分の仕事の一部を切り出して外に持っていける形にしておくと、応募できる先は一気に増えます。
地域の仕事に関わるという選択は、収入を増やす手段としては効率が良くありません。ただ、自分が何をどこまでできるのかを、会社の看板を外した状態で確かめられる場所は、そう多くない。評価してくれる上司も、守ってくれる部署もない環境で、自分の手だけで何か動かせるかどうかが分かります。その意味では、次のキャリアを決める前に一度通っておく価値のある道だと言えます。
よくある質問
Q. ふるさと兼業は無報酬のものが多いのですか?
報酬のあるプロジェクトと、交通費のみのプロボノ枠が混在しています。掲載ページの条件欄に明記されていることが多いので、応募前に必ず確認してください。報酬が「応相談」の場合は、面談の場で金額と支払い時期を自分から聞くことです。条件を曖昧にしたまま始めると、後で双方に負担が残ります。
Q. 会社員でも参加できますか。勤め先の許可は必要ですか?
参加できます。厚生労働省は平成30年1月にモデル就業規則から副業禁止の規定を削除し、副業・兼業の規定を新設しています。ただし勤め先の就業規則が届出制か許可制かは会社ごとに異なるので、必ず先に確認してください。公務員は法律上の兼業制限があるため、所属の人事部門への確認が必須です。
Q. どれくらいの時間を使うことになりますか?
募集の条件を横断して見ると、週3時間から10時間程度、期間は3か月から6か月に設定されているものが中心です。平日の夜と土日の一部を使う前提の設計になっています。最初の一か月で稼働を積みすぎて失速する人が多いので、上限を決めてから始めるのが安全です。
Q. 現地に行く必要はありますか?
プロジェクトによりますが、オンライン中心で進められるものが多数です。ただしキックオフと最終報告は現地で行う形が一般的です。往復に時間がかかる地域だと移動コストが重くのしかかるので、応募前に現地訪問の頻度を確認し、通える範囲かどうかを判断してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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