Webマーケティングの実績の見せ方|出せない仕事をどう伝えるか


この記事のポイント
- ✓Webマーケティングの実績の見せ方を
- ✓守秘義務で名前を出せない案件をどう伝えるかという視点で整理しました
- ✓実績が少ない段階での代替案
Webマーケティングの実績の見せ方で最も多い悩みは、「守秘義務があって案件名を出せない」というものです。結論から言うと、実績で評価されているのはクライアント名でも派手な数字でもなく、「同じ状況を渡されたときに、この人は何をどの順番でやるのか」という再現性です。だから社名を伏せても、伝え方さえ設計すれば実績は成立します。
正直なところ、案件名を並べただけの実績一覧は、発注者側から見てほとんど情報量がありません。有名な企業の名前が並んでいても、その中で何を担当したのかが書かれていなければ判断できないからです。この記事では、出せない仕事をどう言語化するか、匿名化した実績にどこまでの具体性を持たせるか、実績そのものが少ない段階で何を見せるかという順で整理していきます。
発注者が実績で確認していること
実績の見せ方を設計する前に、読む側が何を見ているのかを押さえておきます。ここを外すと、労力をかけた資料が的外れになります。
見られているのは成果ではなく判断の筋道
発注者が実績を見るときの関心は、「この人に頼んだら、うちの状況でも同じように動けるか」の一点です。成果の数字は判断材料の1つに過ぎません。むしろ、数字だけが大きく書かれていて、その数字がどういう施策の結果なのかが書かれていない資料は、疑いを持たれます。
判断されるのは次の3点です。課題をどう定義したか、複数の選択肢の中からなぜその施策を選んだか、実行のあとで何を検証したか。この3つが書かれていれば、成果の大小にかかわらず「考えて動ける人」だと伝わります。逆に、この3つがないまま「アクセス数が伸びました」と書いても、たまたま伸びたのかもしれない、と読まれます。
この構造がわかると、社名を出せないことは大きな障害ではなくなります。課題の定義、選択の理由、検証の内容には、そもそもクライアント名は必要ないからです。
業界の近さが判断基準になる
もう1つ、発注者が重視するのが業界の近さです。Webマーケティングの手法自体は業界をまたいで共通していますが、実務上の制約は業界ごとに大きく違います。
Webマーケティングには共通するノウハウがある一方で、業界ごとにユーザー行動や商習慣、法規制などが異なります。そのため、自社と近い業界での支援経験があるかどうかは重要な判断基準です。 出典: plan-b.co.jp
つまり、社名を伏せても「どの業界の、どういう規模の事業者を支援したか」は伝える必要があります。ここを丸ごと消してしまうと、実績としての価値がほとんど残りません。匿名化の設計とは、「消してよい情報」と「消してはいけない情報」を分ける作業です。
成功事例が参照される場面
発注者側が外部に依頼する動機のひとつは、社内に判断の材料がないことです。
どのようにWebマーケティングを実施すべきか悩んでいる場合は、実際に成功を収めた企業の事例からヒントを得られるかもしれません。 出典: conmark.jp
事例が求められるのは、自社の状況に当てはめて考えるためです。だから実績を書くときは「何をやったか」より「どういう状況でそれを選んだか」を厚く書いたほうが、読み手の役に立ちます。この視点で書かれた実績は、そのまま提案の材料としても機能します。
出せない仕事が生まれる3つのパターン
「出せない」と一括りにされがちですが、原因によって取れる手段が変わります。まず自分の案件がどれに当たるかを分類します。
契約で公開が禁じられている
最も多いのがこのパターンです。秘密保持契約(NDA)を結んでいる、あるいは業務委託契約の中に守秘義務条項が入っている場合、案件の存在自体を公開できないことがあります。
ここで重要なのは、契約書に書かれている禁止の範囲を正確に読むことです。「業務上知り得た情報の開示を禁じる」という条項と、「本契約の受託の事実を第三者に開示することを禁じる」という条項では、意味がまったく違います。前者であれば、案件の中身は出せなくても「この業界の支援経験がある」という事実自体は言える場合があります。後者なら、受託した事実も言えません。
自分の契約書を読み直さずに「守秘義務があるから全部出せない」と判断している人は少なくありません。まず条項を確認する。これが最初の作業です。※ 条項の解釈に迷う場合や、過去の契約が失効しているかどうかの判断が必要な場合は、弁護士などの専門家に確認してください。
成果が出なかった案件
数字が伸びなかった案件を実績から外す人は多いのですが、これは機会損失です。うまくいかなかった案件ほど、判断の筋道を説明する材料が詰まっています。
書き方の要点は、失敗の原因を外部要因に押し付けないことです。「クライアントの意思決定が遅かったので成果が出ませんでした」と書くと、次の依頼者は「うちも同じように言われるのか」と受け取ります。そうではなく、「初期の仮説がこうで、検証の結果こうだったので、途中で方針をこう切り替えた」と書く。方針転換の判断ができる人だと伝わります。
成果が出なかったことを正直に書ける人は、実は信頼されやすくなります。すべての案件が成功している実績一覧は、読む側から見ると不自然です。
下請けや再委託で表に出せない
制作会社や代理店の下請けとして入っている案件は、エンドクライアントの名前を出せないだけでなく、元請けの名前も出せないことがあります。この場合は、担当した工程と役割を軸に書きます。
「代理店の運用チームの一員として、広告アカウントの日次の調整とレポートの作成を担当」といった書き方であれば、契約上の問題は起きにくく、能力は伝わります。ただし、元請けとの契約に「業務の受託事実の開示禁止」が含まれている場合は、この書き方でも抵触する可能性があります。確認は必ず先にします。
出せない実績を伝える手順
ここからが実務です。順番どおりに進めると、契約に触れずに使える実績が残ります。
ステップ1 契約書の該当条項を洗い出す
過去に受けた案件の契約書をすべて開き、守秘義務に関する条項を抜き出します。確認するのは、禁止されている情報の範囲、期間、例外規定の3点です。守秘義務には期間の定めがあることが多く、契約終了から一定期間が過ぎていれば制約が外れている場合もあります。
契約書が手元にない案件は、その時点で「出せない」側に分類します。記憶で判断してはいけません。
ステップ2 匿名化のレベルを3段階で決める
案件ごとに、どこまで書けるかを3段階に分けます。レベル1は社名まで出せる案件、レベル2は業種と規模までなら出せる案件、レベル3は担当した業務の内容だけを書ける案件です。
この分類をしておくと、実績資料を作るときに迷いません。レベル1の案件を最初に置き、レベル2で幅を見せ、レベル3は経験の量として補足に回します。全部を同じ粒度で書こうとするから手が止まります。
ステップ3 数字を抽象化する
成果の数字をそのまま書けない場合、変化の方向と幅で表現します。「問い合わせ数が倍以上に増えた」「離脱率が3割ほど下がった」といった書き方であれば、元の数字は特定されません。
注意点として、業界と規模を書いたうえで具体的な数字を出すと、事業者が特定されることがあります。市場に事業者が少ない業界では、この組み合わせだけで名前が割れます。業界を書くなら数字を丸める、数字を出すなら業界を広く書く。どちらかを選びます。
ステップ4 プロセスを主役にする
社名も数字も削ったあとに残るのが、プロセスです。ここを厚く書くことで、実績としての価値が戻ります。
書く項目は決まっています。渡された状況、そこから定義した課題、検討した選択肢、選んだ理由、実行した内容、検証の方法、そこから得た判断。この7項目を1案件ぶん書けば、社名がなくても読み応えのある実績になります。むしろ社名だけ並んだ一覧より、こちらのほうが評価されます。
ステップ5 開示の許可を取りにいく
最後に、これは多くの人がやっていない手順です。過去のクライアントに「実績として掲載してよいか」を確認する。断られることもありますが、承諾が得られれば一気にレベル1の案件が増えます。
依頼の仕方にはコツがあります。「掲載してよいですか」と聞くより、実際の掲載文案を作って「この内容で掲載を検討していますが、問題のある表現はありますか」と送るほうが承諾率は上がります。相手は判断の手間が減り、修正の指示だけ出せば済むからです。文面の作り方に不安があるなら、ビジネス文書検定で扱われるような依頼状や照会文の型を押さえておくと、こうした確認のやり取りが速くなります。
匿名化した実績の具体的な書き方
抽象論では使えないので、書き方の型を示します。
情報量が足りない書き方と足りる書き方
情報量が足りない例は「大手ECサイトの広告運用を担当。売上向上に貢献」です。これは何も言っていないのと同じで、業種も規模も担当範囲も検証内容も欠けています。
情報量が足りる例は次のような形です。「食品を扱うEC事業者。自社サイトとモール出店を併用しており、広告の予算がモール側に偏っていた。自社サイトへの流入が広告停止で途切れる構造だったため、検索広告の一部を指名検索の受け皿づくりに振り替え、あわせて記事コンテンツからの導線を整備。実施後は広告を止めた期間の流入の落ち込みが緩やかになった。担当は広告アカウントの設計と運用、記事の構成案の作成まで」。
社名は一文字も出ていませんが、業種、事業の構造、課題、打ち手、検証、担当範囲が全部入っています。読む側はこれで判断できます。
業種と規模の書き方
業種は、細かすぎず粗すぎない粒度にします。「小売業」では粗すぎ、「有機野菜の定期宅配」では特定されます。「食品を扱うEC事業者」くらいが目安です。
規模は、従業員数や売上ではなく、事業の運営体制で表します。「マーケティング専任が1名の体制」「社内に制作機能を持たない事業者」といった書き方であれば、規模感が伝わりつつ特定はされません。発注者が知りたいのも、実は売上規模ではなく「自社と似た体制の支援経験があるか」です。
担当範囲を必ず明示する
チームで動いた案件では、自分がどこを担当したのかを明示します。ここを曖昧にすると、後の面談で詳細を聞かれたときに答えられず、信頼を失います。
「戦略の立案から実行まで」のような書き方は避けます。実際には戦略を立てたのは別の人で、自分は実行だけだった、というケースが多いからです。「アカウント設計は元請けが担当し、日次の運用調整とレポート作成を担当」と正確に書いたほうが、結果として評価されます。
実績そのものが少ない段階での見せ方
出せない実績すらない、という段階の人もいます。その場合に有効な選択肢が3つあります。
自分のメディアを実績にする
自分でサイトやSNSのアカウントを運用し、その運用記録を実績として出す方法です。この方法の強みは、数字も施策もすべて自分のものなので、守秘義務の制約が一切かからない点にあります。
見せ方は、通常の実績と同じ7項目の型を使います。何を目的に始め、どういう仮説で施策を打ち、何を検証し、何がわかったか。規模が小さくても、検証の設計がしっかりしていれば評価されます。逆に、規模だけ大きくて検証がないものは評価されません。
公開情報を使った分析レポート
依頼者になりそうな事業者の公開情報を分析し、改善案をまとめたレポートを作る方法です。実案件ではないので成果の数字は出せませんが、課題を見つける力と打ち手の引き出しは示せます。
注意点が1つあります。実在する事業者を名指しで批評したレポートを公開の場に出すのは避けます。相手の許可がないまま「このサイトはここが駄目」と書くと、書かれた側との関係が最初から悪くなります。分析の対象は自分の中に留め、提案の場で直接見せる形にします。
使えるツールと運用の型を示す
実績の代わりに、扱えるツールと運用の型を示す方法もあります。アクセス解析、広告の管理画面、タグの管理ツール、ヒートマップ、レポートの自動化まで、どこまで自分で設定できるかは具体的に書けます。
ただし、ツール名を並べるだけでは意味がありません。「このツールで何を判断したことがあるか」まで書きます。「解析ツールで、フォームの離脱が起きている入力項目を特定し、項目の削減を提案した」といった形です。ツールは手段なので、判断とセットにして初めて実績になります。この領域の仕事の広がりを掴んでおきたい場合は、Webマーケティング全般のお仕事を見ると、実際にどのような業務が外部に発注されているかが職種単位で整理されています。
やってはいけない実績の見せ方
ここは短く、しかし確実に押さえておきます。
守秘義務に触れる開示
最も避けるべきは、契約で禁じられている情報を出してしまうことです。案件名や社名だけでなく、特定につながる情報の組み合わせにも注意が必要です。業種、地域、規模、時期、施策の4つが揃うと、業界内では簡単に特定されます。
一度でも守秘義務に触れる開示をすると、それを見た次の発注者は「この人に頼むと、うちの情報も外に出る」と判断します。実績を見せるためにやったことが、依頼を減らす結果になります。
成果の誇張と因果の飛躍
数字を盛るのは論外として、盛っていなくても因果を飛躍させると誇張になります。季節要因や広告予算の増額で伸びた数字を、自分の施策の成果として書くケースです。
読む側はプロなので、この飛躍にはすぐ気づきます。「この施策でこの伸びは説明できないのでは」と思われた時点で、資料全体の信頼が下がります。外部要因があるなら、それを書いたうえで自分の寄与を切り分けて書くほうが、はるかに信頼されます。
他人の仕事を自分の実績にする
チームで動いた案件の成果を、あたかも1人でやったように書くのは避けます。面談で工程を掘り下げられると必ず露見しますし、業界は狭いので、実際に担当していた人の耳に入ることもあります。
AIツールの活用が広がってからは、この線引きがもう1つ増えました。ツールが出力したものをそのまま納品した場合、それを「自分が作った」と書けるかどうかです。判断の基準は、出力に対して自分がどの検証と修正を加えたかにあります。何をどう検証したかを書けるなら実績になり、書けないなら実績にはなりません。この領域の業務範囲は変化が速いので、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事で、どこまでが外部委託の対象として扱われているかの傾向を確認しておくと判断しやすくなります。
実績資料の構成と更新
実績を書けるようになったら、次は並べ方です。
1案件1ページの型で作る
1つの案件を1ページにまとめ、前述の7項目を同じ順番で並べます。すべての案件が同じ構造になっていると、読む側は比較しやすくなり、必要な情報にすぐ辿り着けます。
ページの冒頭に、業種と担当範囲と結果の方向を1行で書きます。読み手は全ページを読みません。冒頭の1行だけを流し読みし、気になったページだけ本文を読みます。この読まれ方を前提に構成します。
見せる順番を相手に合わせて変える
実績資料は固定ではなく、提案する相手に合わせて並べ替えます。相手と同じ業種の案件を先頭に置き、次に体制が似ている案件、その次に規模が近い案件という順です。
冒頭に置く案件は最大でも3件程度に絞ります。すべてを見せようとすると、相手は最初のページで疲れます。残りは「他にこういう領域の経験があります」と一覧で示せば十分です。
更新は案件が終わるたびに行う
まとめて更新しようとすると、記憶が薄れて書けなくなります。案件が終わった時点で、7項目の下書きだけでもその場で作っておきます。数字が出せるかどうかの判断は後回しでよく、まずは判断の筋道を記録に残すことが目的です。
この習慣がある人とない人では、1年後に手元にある実績の量がまったく変わります。実績が少ないのは案件が少ないからではなく、記録していないからという場合が少なくありません。
場面ごとに出し方を変える
同じ実績でも、提案書に載せる場合、面談で口頭で説明する場合、公開のサイトに載せる場合では、書ける範囲も適切な分量も変わります。1つの資料を使い回すと、どの場面でも中途半端になります。
提案書に載せる場合
提案書に載せる実績は、その提案の根拠として機能する必要があります。だから、これから提案する施策と同じ判断をした過去の案件を選びます。関係のない実績を並べても、読み手は提案の妥当性を判断できません。
分量は1案件あたり短めに抑えます。提案書の主役は提案の中身であり、実績はその裏付けだからです。冒頭に業種と担当範囲、次に課題と打ち手、最後に結果の方向。この3ブロックで足りることがほとんどです。詳細を知りたければ相手が質問してきます。
提案書は社内で回覧されることが多いので、守秘義務の範囲は最も厳しく見積もります。目の前の担当者にだけ口頭で伝えるつもりの情報を、書面に落としてはいけません。書面は必ずどこかにコピーが残ります。
面談で口頭で説明する場合
面談では、資料に書けなかった部分を補足できます。ただし「ここだけの話ですが」と社名を口にするのは避けます。相手にとっては、他社の情報を平気で漏らす人という印象が残るだけです。守秘義務の範囲は、口頭であっても書面であっても変わりません。
口頭で有効なのは、判断に迷った場面の説明です。「この案件では2つの選択肢で迷い、こちらの理由でこう決めました」という話は、書面よりも会話のほうが伝わります。面談の準備としては、主要な案件について「迷った場面」を1つずつ思い出しておくと、質問にすぐ答えられます。
想定される質問は決まっています。担当範囲はどこまでか、判断は誰がしたか、うまくいかなかった点は何か、同じ状況にもう一度当たったら何を変えるか。この4つは、どの案件についても答えられるようにしておきます。
公開のサイトに載せる場合
公開の場に出す実績は、最も制約が厳しくなります。検索で誰でも見つけられる状態になるため、業種と規模と時期の組み合わせで特定される可能性を、より慎重に見積もる必要があります。
公開用では、案件単位ではなく領域単位でまとめる方法も有効です。「食品を扱うEC事業者の広告運用で扱ってきた論点」といった形で、複数の案件から得た知見を抽象化して書きます。個別の案件が特定されず、それでいて経験の深さは伝わります。
公開用の実績には、更新日を入れておきます。数年前の情報のまま置かれている実績は、読む側から見ると現在の力量がわかりません。内容を変えていなくても、確認した日付を更新するだけで印象が変わります。
実績が伝わっていないときの見直し方
資料を作ったのに反応が薄い場合、原因はだいたい3つのどれかです。
先頭の案件が相手とずれている
読み手は最初の1件か2件で「自分に関係があるか」を判断します。ここに相手と業種も体制も違う案件が置かれていると、以降を読んでもらえません。提案のたびに並べ替える手間を惜しまないことです。
並べ替えを楽にするには、案件ごとにタグを付けて管理します。業種、事業の形態、担当した工程、支援の期間。この4つでタグ付けしておけば、相手に合わせた抽出が短時間でできます。
担当範囲が曖昧になっている
「戦略から実行まで」「全体を統括」といった書き方は、具体性がないうえに、盛っている印象を与えます。読み手はこの手の表現を何度も見ているので、曖昧な言葉ほど割り引いて読みます。
工程名で書くと具体性が出ます。要件の整理、アカウントの設計、日次の運用調整、レポートの作成、社内への説明資料の作成。このうちどれを担当したかを列挙するだけで、曖昧さは消えます。担当していない工程を書かないことも、同じくらい重要です。
検証の記述が抜けている
施策を書いて結果を書いているのに、その間の検証が抜けている資料は非常に多くあります。何を見て効果を判定したのか、比較の対象は何だったのか、他の要因をどう除いたのか。この記述があるかどうかで、資料の説得力が変わります。
検証を書けない案件は、実際に検証していなかった可能性があります。その場合、資料を直すより先に、次の案件での動き方を変えるほうが本質的です。実績の見せ方の問題に見えて、実務の型の問題であることは珍しくありません。
日々残しておく記録
実績資料は、案件が終わってから作るものではなく、案件中に貯めた記録から組み立てるものです。作業中に残しておくと後で助かる記録は4つあります。
1つ目は、着手時点の数字です。支援に入る前の状態を記録していないと、後から変化を語れません。開始時のスクリーンショットや数値の控えを、最初の週に必ず取っておきます。
2つ目は、判断の理由です。施策を決めたときに「なぜそれにしたか」を1行でよいので残します。数ヶ月経つと、当時の判断の理由は驚くほど思い出せなくなります。この1行があるかどうかで、後の実績の厚みが変わります。
3つ目は、外部要因です。季節性、広告予算の増減、社内の体制変更、競合の動き。こうした要因を記録しておくと、成果の切り分けが正確にできます。誇張を避けるためにも必要な記録です。
4つ目は、うまくいかなかったことです。仮説が外れた記録は、実績としても、次の案件での判断材料としても価値があります。成功だけを記録する人と、失敗も記録する人では、蓄積の速度が違います。
20年この市場を見てきた立場からの観察
フリーランスと在宅ワークの市場を長く運営してきた立場から言えば、実績の見せ方で伸びる人には共通点があります。成果の大きさを競うのではなく、「渡された状況をどう読んだか」を書いている点です。発注者は、自分の会社が特別だと思っています。だから他社で大きな成果が出たという話より、状況の読み方が丁寧な話のほうが刺さります。社名を出せない案件しかない人でも、ここは書けます。
運営者として見てきた限りでは、長く仕事が続く人ほど、実績を「営業の道具」ではなく「自分の判断の記録」として扱っています。書き溜めた記録が思考の型になり、次の案件で初動が速くなる。この循環に入った人は、案件を探す時間そのものが減っていきます。もう1つ付け加えると、中間に事業者が入らない直接の取引では、同じ予算でも依頼者はより多くを頼め、受け手の手取りは厚くなります。手数料0%の取引が効くのは金額の話に見えて、実際にはその余白を検証と記録に回せるという時間の話です。実績を丁寧に残す余裕があるかどうかは、こういうところで決まります。
働く場所の制約が薄れたことで、実績資料だけで判断される場面も増えました。対面で補足説明ができない前提だと、資料の完成度がそのまま選考の結果になります。遠隔での受注を前提にした働き方の実際は、Webマーケティング フリーランスで海外ノマド!年収、スキル、成功への道で触れられています。読む側の環境が変わった以上、見せ方も更新する必要があります。社名を出せないことは、もう不利な条件ではありません。出せない前提で、何を書けば伝わるかを設計できるかどうかだけが差になります。
よくある質問
Q. 守秘義務がある案件は実績として一切書けないのですか?
契約書の条項によります。「業務上知り得た情報の開示禁止」であれば案件の中身は書けませんが、受託の事実自体は言える場合があります。「受託の事実の開示禁止」であれば事実も書けません。まず契約書の該当条項と期間、例外規定を確認してください。判断に迷う場合は専門家に相談します。
Q. 成果の数字を書けないとき、何を書けばよいですか?
渡された状況、定義した課題、検討した選択肢、選んだ理由、実行内容、検証方法、得られた判断の7項目を書きます。発注者が見ているのは数字の大きさではなく判断の再現性なので、この7項目が揃っていれば数字がなくても実績として機能します。
Q. 過去のクライアントに実績掲載の許可はどう取りますか?
掲載してよいかを尋ねるだけでなく、実際の掲載文案を作って「この内容で問題のある表現はありますか」と送る形にします。相手は判断の手間が減り、修正の指示だけで済むため承諾されやすくなります。契約終了から時間が経っている場合も、確認を取る価値があります。
Q. 実績がまだ1件もない場合はどうすればよいですか?
自分のサイトやSNSアカウントの運用記録を実績にする方法が最も確実です。守秘義務の制約がかからず、施策も数字もすべて自分のものとして使えます。規模が小さくても、仮説と検証の設計が書かれていれば評価されます。公開情報を使った分析レポートも代替になります。
Q. 匿名化するとき、どこまで業種を書いてよいですか?
「小売業」では粗すぎて情報にならず、細かく書きすぎると特定されます。「食品を扱うEC事業者」程度の粒度が目安です。業種を具体的に書く場合は成果の数字を丸め、数字を出す場合は業種を広く書きます。業種、地域、規模、時期、施策の4つ以上が揃うと特定されやすくなります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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