EC・D2Cコンサルの実績の見せ方|出せない仕事をどう伝えるか

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
EC・D2Cコンサルの実績の見せ方|出せない仕事をどう伝えるか

この記事のポイント

  • ✓EC・D2Cコンサルの実績の見せ方を
  • ✓名前を出せない案件をどう伝えるかという観点で整理しました
  • ✓成果ではなく判断を書く方法

EC・D2Cコンサルの実績の見せ方でつまずくのは、書くことが無いからではありません。書けることはあるのに、名前が出せない、数字が出せない、成果が自分だけの手柄ではない、という制約が重なるからです。この記事では、出せない仕事をどう伝えるかを中心に、実績の整理の手順と書き方の基準をまとめます。

支援の仕事は、成果物が依頼先の中に残ります。制作の仕事のように、完成したものを見せて説明することができません。だからこそ、実績の書き方そのものが仕事の質を伝える手段になります。何をどう書くかで、次の依頼が来るかどうかが変わります。

実績が出せない理由を整理する

まず、なぜ出せないのかを分類します。理由によって対処が違うため、まとめて「出せない」と扱うと、出せるものまで隠すことになります。

秘密保持の約束で名前が出せない場合

最も多い理由です。契約書に、業務で知った情報を第三者に開示しない旨の条項があり、支援していた事実そのものが対象に含まれていることがあります。この場合、ブランド名も、商品名も、特定できる情報も書けません。

ただし、契約書をよく読むと、事実の開示だけが禁じられていて、抽象化した記述までは制限していないことがあります。「アパレルの自社ECの立ち上げ支援」という程度の記述であれば、多くの契約で問題になりません。判断に迷う場合は、依頼先に確認するか、専門家に相談してください。自己判断で書いて後から問題になると、その1件だけでなく、以後の紹介まで失います。

成果が自分の貢献だけではない場合

EC・D2Cの成果は、多くの要因の合計です。商品そのものの魅力、社内の実行力、物流の安定、市場の動き。支援した側が「売上を伸ばしました」と書くと、他の関係者の貢献を自分のものにしていることになります。

この場合の問題は、契約ではなく誠実さです。過大に書いた実績は、詳しい人が読めば分かります。EC・D2Cの領域で発注する側は、社内に経験者がいることも多く、書き方が不自然だとすぐ気づかれます。書けないのではなく、書き方を変える必要がある、という整理をします。

途中で終わった案件の場合

方針が変わって支援が終わった、担当者が異動して立ち消えになった、予算が付かなくなった。こうした案件は、成果が出る前に終わっています。実績として書けないと考える人が多いのですが、そこでやった仕事に価値が無かったわけではありません。

途中で終わった案件でも、現状の分析、課題の特定、施策の設計までは残っています。何を明らかにしたかを書けば、実績として成立します。むしろ、終わった理由を含めて誠実に書くほうが、読み手からの信頼は高くなります。

名前を出さずに伝える書き方

出せない情報を隠すのではなく、抽象度を変えて伝える形にします。書き方の型を持っておくと、案件ごとに悩まずに済みます。

抽象度を1段だけ上げる

固有名詞を消すときに、抽象度を上げすぎるのが失敗の典型です。「EC事業の売上改善を支援」とだけ書くと、何をしたのか分かりません。抽象度は1段だけ上げます。

固有のブランド名は消しても、業種、事業の規模感、扱っているチャネル、商品の性質は残します。「創業から数年の化粧品ブランドで、自社ECとモールを併用している事業者の支援」という書き方なら、名前は出ていないのに輪郭がはっきりします。読み手は、自分の事業と近いかどうかを判断できます。

置き換える要素をあらかじめ決めておく

書くたびに悩まないよう、置き換える要素を決めておきます。業種は大分類まで、規模は従業員の人数帯か事業の年数、チャネルは自社ECとモールとSNSの組み合わせ、商品は単価帯ではなく性質。この4つを揃えれば、どの案件も同じ形で書けます。

規模を書くときに、売上の金額を書くのは避けます。金額が入ると特定されやすくなり、かつ数字が独り歩きします。「数名の体制でEC全体を回している」といった書き方のほうが、読み手にとっても自分と比べやすくなります。

数字が出せないときは構造を書く

成果の数字が出せない場合、代わりに構造を書きます。何が課題で、どう考えて、何を優先し、どういう順番で実行したか。この流れは、数字よりも仕事の質を伝えます。

発注する側が知りたいのは、実は数字ではありません。自分の事業に置き換えたときに、この人が何をしてくれるかです。構造が書かれた実績は、その想像を助けます。数字だけ並んだ実績は、条件が違えば再現しないことを読み手も知っています。

何を実績として扱うかを広げる

実績を「成果が出た案件」に限定すると、書けるものが少なくなります。範囲を広げます。

成果ではなく判断を実績にする

支援の価値は、正しい判断を提供したことにあります。広告の出稿を増やすのではなく在庫の整理を先にした、モールの拡大より自社ECの導線を直すことを優先した、といった判断です。

判断を書くときは、なぜその判断をしたかの根拠を添えます。「在庫の回転が遅く、販促を強めると欠品が出る可能性が高かったため」といった形です。根拠のある判断は、条件が違う読み手にも応用できる情報として伝わります。

途中で止めた判断も実績になる

やらないと決めたことも実績です。提案を求められた施策について、費用対効果が見合わないと判断して止めた。この判断は、依頼先の支出を減らしています。

書き方は、「実行しなかった理由」を中心にします。何を検討し、どの条件で見合わないと判断したか。この記述は、無闇に施策を増やさない姿勢を示します。発注する側は、過去に「提案ばかり増えて実行が追いつかない」経験をしていることが多く、この姿勢は評価されます。

社内に残した仕組みを書く

支援が終わったあとに、依頼先の社内に残るものがあります。数字を見る手順、定例の進め方、商品を登録する際の基準、施策を判断する優先順位の考え方。これらは目立たない成果ですが、支援の本質に近い部分です。

仕組みを残した経験は、次の依頼先にとって価値のある情報です。特に、社内に経験者がいない事業者は、支援が終わったあとに元に戻ってしまうことを心配しています。仕組みを残す仕事をしてきたと分かれば、その不安に答えられます。実務の範囲を具体的に示したい場合は、EC運用代行・商品登録のお仕事にある業務の分類を使って、自分が触れた領域を整理すると伝わりやすくなります。

実績を書く前に、案件ごとの記録を整える

実績の文章が書けない原因の多くは、書く力ではなく記録が無いことです。終わってから思い出そうとすると、印象しか残っていません。

案件ごとに残す項目を決めておく

案件が始まった時点で、記録の枠を作ります。残すのは、着手時点の状況、依頼された内容、実際に行ったこと、その判断の理由、終了時点の状況、振り返りの6項目です。項目を固定しておけば、書くたびに何を残すか考えずに済みます。

着手時点の状況は、特に重要です。支援が進むと、始めたときの状態を忘れます。サイトの構成、商品の点数、見ていた指標、社内の体制。これらを最初に書き留めておくと、終わったときに何が変わったかを比べられます。写真や画面の記録も残しておくと、後から説明しやすくなります。

数字は生の値ではなく前後の状態で残す

依頼先の数字をそのまま自分の記録に残すことは避けます。契約上の問題になる可能性があるうえ、管理の負担も増えます。残すのは、生の値ではなく、どの指標がどちらに動いたかという状態です。

「新規の獲得に偏っていた構成が、リピートを含む構成に変わった」「見ていなかった離脱の指標を月次で見る形になった」といった書き方であれば、契約上の懸念なく残せます。実績として書くときにも、この形のほうがそのまま使えます。

走りながら残す習慣にする

記録は、案件が終わってからまとめて書こうとすると、必ず粗くなります。定例の後や、大きな判断をした直後に数行だけ足していく形にします。1回あたり数分の作業です。

この習慣があると、実績を書く必要が生じたときにすぐ書けます。急に提案の機会が来たときに、記録から必要な部分を抜き出すだけで済みます。記録が無い状態から書き起こすと、半日かかったうえに内容が薄くなります。

依頼する側が実績のどこを読んでいるか

実績を書くときは、読み手が何を見ているかを知っておくと、書く内容が絞れます。

自分の事業と近いかどうかを見ている

読み手が最初に探すのは、自分の事業と似た条件の案件です。業種、規模、チャネルの組み合わせ、社内の体制。近いものがあれば、その事例を詳しく読みます。近いものが無ければ、そこで離脱します。

だからこそ、業種と規模とチャネルを揃えて書くことに意味があります。華やかな案件を1件だけ大きく書くより、条件の違う案件を同じ形式で並べたほうが、当たる範囲が広くなります。

再現できそうかどうかを見ている

読み手は、その成果が特殊な条件によるものかどうかを見ています。潤沢な広告予算があった、もともとブランドに知名度があった、社内に専任の担当が複数いた。こうした条件で出た成果は、自分のところでは再現しないと判断されます。

条件を書くことは、成果を小さく見せる行為ではありません。むしろ、条件を明示したうえで何をしたかを書けば、条件が違う読み手が「うちならどうなるか」を考え始めます。その思考が始まった時点で、問い合わせは近づきます。

誇張が無いかどうかを見ている

EC・D2Cの領域で発注する側は、社内に経験者がいることが多く、書かれている内容の現実味をすぐ判断します。短期間で大きく変わったと書かれていれば、何か別の要因があったのではないかと疑います。

疑われた時点で、他の記述の信頼性も落ちます。誇張しない書き方は、地味に見えても、詳しい読み手に対しては最も効きます。判断の根拠を丁寧に書いた実績は、成果の大きさに関係なく評価されます。

実績を置く場所ごとに書き分ける

同じ実績でも、置く場所によって適した長さと粒度が変わります。

ポートフォリオに置く場合

一覧で見られる前提なので、1件あたりは短くします。業種と規模、支援した領域、期間、担当した役割の4項目を揃えて、同じ形式で並べます。形式が揃っていると、読み手は比較しながら読めます。

そのうえで、詳しく書いた事例を2件か3件だけ用意します。全部を詳しく書くと読まれません。詳しく書く事例は、自分がこれから受けたい仕事に近いものを選びます。過去の実績の一覧は、次に来る依頼の方向を決める役割も持っています。

提案書の中に入れる場合

提案書に入れる実績は、その相手の課題に近いものだけを選びます。数を並べるより、1件を深く書くほうが効きます。相手の状況と似た条件で、何をどう考えたかを書けば、提案の説得力が上がります。

提案書の実績ページは、視覚的な整理が効きます。文章だけで詰め込むと読まれません。図や表で構造を示す作り方については、MOS PowerPoint(Microsoft Office Specialist)で扱う資料作成の基本を押さえておくと、伝える順番の設計がしやすくなります。

プロフィール文に書く場合

プロフィールは短いので、実績を並べる場所ではありません。書くのは、どの領域の、どういう状況の事業者を支援してきたかの総括です。案件数を書く場合は、正確な数だけを書きます。

支援者の経歴の書き方として参考になる例があります。ある支援事業者は、代表者の経歴をこのように公開しています。

元船井総合研究所のWEBグループのトップとして、立ち上げ&拡大を行い、個人でもトップコンサルタントとして社内No.1の実績を持つ(2015年1月末退職)。業界No.1、海外チャネルで勝てるEC・通販ビジネスに成長させたクライアント企業数は、70社以上あり、累計1,000件以上の通販・EC案件を経験している。現在は越境ECを含めた海外WEBマーケティングに集中し、日系&クライアントの実績を拡大させている 出典: top1-consulting.com

この書き方では、個別のクライアント名を一切出さずに、経験の量と領域を伝えています。所属していた組織名、担当していた範囲、経験した案件の数、現在の専門領域。この4つの組み合わせで輪郭を作る形は、個人で活動する場合にも応用できます。

公開の許可を取る手順

書ける範囲を広げる最も確実な方法は、許可を取ることです。手順を決めておけば、聞きにくさは減ります。

契約の段階で決めておく

最も良いタイミングは、契約を結ぶときです。業務が始まる前なら、実績の公開について事務的に話せます。契約書の中に、実績としての公開に関する条項を入れるか、別途の覚書として交わします。

決めるのは、ブランド名を出せるか、業種と規模だけなら出せるか、一切出せないか、公開の前に確認を取るか、の4点です。一切出せないと言われた場合も、その事実を記録しておけば、後で迷いません。

終了の段階で改めて聞く

契約時に「公開は不可」となっていても、支援が終わるときに状況が変わっていることがあります。成果に満足していれば、事例として出すことを許可してくれる場合があります。

聞くタイミングは、最終の報告を終えた直後が適しています。感謝を伝えられている流れの中で聞くと、話が進みやすくなります。ここで断られても関係は悪くなりません。聞かないまま終わると、その案件は永久に書けなくなります。

掲載する前に文面を見せる

許可が出た場合も、掲載する文面は事前に見せます。こちらが問題ないと思った表現が、相手にとっては困る場合があります。特に、課題として書いた部分は、相手から見れば自社の弱点の公開です。

見せる手間を惜しんで、後から取り下げを求められるほうが損失は大きくなります。文面を確認してもらった記録は残しておきます。担当者が異動したあとに問い合わせが来ることもあるためです。支援の範囲そのものを説明する必要がある場面では、EC/D2C・店舗運営コンサルのお仕事にある業務の分類を引いて、どの部分を担当したのかを示すと誤解が生まれにくくなります。

実績が薄い段階での作り方

これから始める場合、書ける実績が無い状態から始まります。この段階でやることは決まっています。

自分の事業か身近な事業で作る

自分でネットショップを開き、商品を売ってみる。これが最も早い方法です。規模は小さくてよく、扱う商品も何でも構いません。カートシステムの設定、商品ページの作成、広告の出稿、受注と発送。一通り経験すると、支援するときの解像度が変わります。

身近な事業者に協力してもらう方法もあります。この場合、報酬の有無にかかわらず、支援の範囲と期間を決めて、記録を残しながら進めます。記録が残っていないと、あとから実績として書けません。

公開情報だけで診断のレポートを書く

支援先がなくても、公開されている情報だけで診断のレポートは書けます。実在するブランドのサイトを見て、導線の課題、商品ページの構成、送料の条件、SNSとの連携を分析し、改善の方向を書きます。

この形のレポートは、そのまま営業の材料になります。ただし、無断で作ったレポートを本人に送りつけるのは避けます。求められていない指摘は、押し売りとして受け取られます。使うのは、あくまで自分の分析力を示す見本としてです。実在のブランド名は伏せて構成だけを見せる形にすると、角が立ちません。

小さく受けて記録を徹底する

最初の案件は、範囲が狭くても構いません。商品ページの改善だけ、広告の見直しだけ、といった形で受けます。範囲が狭ければ責任も限定でき、結果も見えやすくなります。

大事なのは、記録です。着手前の状態、行ったこと、その理由、結果、振り返り。この5つを案件ごとに残します。記録があれば、あとから実績の文章はいくらでも書けます。記録がなければ、成果が出た案件でも書けません。制作や画像の作業まで含めて受ける場合の業務の範囲はECサイト制作・運用・画像制作のお仕事にまとまっているので、自分がどこまでを担当したかを正確に書き分ける参考になります。

誤解を招く見せ方をしない

実績の書き方には、書いてはいけない形があります。短期的には効いても、長い目で見て損をします。

因果を断定しない

「施策を行った結果、売上が伸びた」という書き方は、断定です。実際には、季節性、他の施策、市場の動き、商品自体の変化が同時に起きています。断定した書き方は、詳しい読み手には不誠実に映ります。

代わりに、「この施策を行い、同じ期間に売上が伸びた」という書き方にします。関与したことと、起きたことを並べる形です。因果を主張しなくても、仕事をしたことは伝わります。むしろ、要因を切り分けて考えている姿勢が伝わり、評価が上がります。

期間と条件を必ず添える

数字を書く場合は、期間と条件を必ず添えます。どの期間の話か、何と比較しているか、対象はどの範囲か。これが無い数字は、読み手にとって解釈できません。

条件を添えると数字の印象が弱くなることがあります。それでも添えます。条件を隠した数字は、質問されたときに答えられず、その場で信用を失います。最初から条件付きで書いておけば、質問が来ても答えられます。

自分の役割を明記する

チームで動いた案件では、自分が何を担当したかを明記します。全体の設計をしたのか、特定の領域だけを見たのか、実行の管理をしたのか。書かないと、全部を自分がやったように読まれます。

役割を正直に書いても、評価は下がりません。むしろ、チームで動いた経験があることは強みです。EC・D2Cの支援は、制作、物流、システム、広告と多くの関係者が関わります。その中で自分の役割を認識して動ける人であることは、伝える価値のある情報です。

紹介で仕事が来る場合の実績の役割

EC・D2Cの支援は、紹介で広がることが多い領域です。紹介の場面では、実績の使われ方が変わります。

紹介する側が説明に使う材料になる

紹介してくれる人は、こちらのことを一言で説明します。「ECに詳しい人がいる」だけでは、紹介された側は判断できません。紹介する側が使いやすい説明の材料を、実績の中に用意しておきます。

用意するのは、扱ってきた業種の範囲と、得意な支援の型を短くまとめた一文です。「化粧品と食品の自社ECで、立ち上げから初期の導線設計まで見ている」といった形です。この一文があれば、紹介する側はそのまま伝えられます。伝える言葉が無いと、紹介は起きません。

更新が止まっている実績は逆効果になる

紹介された相手は、必ず調べます。そのときに、最終の更新が数年前で止まっていると、現在活動しているのかどうかが分かりません。EC・D2Cの領域は変化が速いため、古い情報しか無い状態は、知識も古いのではないかという印象につながります。

更新は、案件が増えたときだけではありません。扱える領域が広がった、使えるツールが増えた、支援の型を変えた。こうした変化も更新の対象です。頻度としては、四半期に一度見直せば十分に足ります。

断る基準も書いておくと精度が上がる

受けない仕事の条件を書いておくと、合わない依頼が減ります。「実装の手配までは行わない」「短期間で売上を大きく動かすことを目的とした依頼は受けていない」といった記述です。

断る基準を書くことで依頼が減ることを心配する人がいますが、減るのは合わない依頼です。合う依頼にとっては、基準が明確な相手のほうが安心して頼めます。実績の一覧の末尾に、この基準を数行置いておく形が扱いやすくなります。

現場を長く見てきた立場からの観察

在宅ワークとフリーランスの市場を20年運営してきた立場から言えば、実績で選ばれる人と選ばれない人の差は、書いてある案件の華やかさではありません。差が出るのは、書き方の一貫性です。同じ形式で整理された実績は、数が少なくても信頼されます。形式がばらばらで、成果が出た案件だけを大きく書いている実績は、数があっても軽く見えます。

運営者として見てきた限りでは、長く続いている人ほど、成果よりも判断の記録を残しています。何を優先し、何をやらないと決めたか。この記録は、次の依頼先が「この人に任せたら、うちの状況でも考えてくれる」と感じる材料になります。逆に、成果の数字だけを並べている人は、条件が違う案件で選ばれにくくなります。

中間の会社を介さない直接の取引では、実績の見せ方の重みがさらに増します。仲介が入る場合、選定は仲介側の基準で行われ、実績は書類の一項目です。直接の取引では、依頼先が自分の目で読んで判断します。同じ予算でも依頼側はより多くを頼め、受ける側は手数料0%の分だけ手取りが厚くなる構造がある一方で、選ばれるかどうかは自分の見せ方に直接かかってきます。

書く仕事や編集の仕事と隣接する部分も多いため、実績を整理する作業そのものが文章の練習になります。著述家,記者,編集者の年収・単価相場にある職種の分類を見ると、EC・D2Cの支援がどれだけ広い領域に接しているかが分かります。実績を書くときに、自分がどの領域まで踏み込んだのかを正確に区切ることが、次の依頼の精度を上げます。

実績は、増やすものではなく、整えるものです。案件が終わるたびに記録を整え、公開できる範囲を確認し、形式を揃えて残す。この積み重ねが、名前を出せない仕事ばかりでも伝わる実績を作ります。

実績を伝える文章の型を1つ持っておく

案件ごとに書き方を変えると、時間がかかるうえに粒度がばらつきます。型を1つ決めておけば、埋めるだけで済みます。

6つの要素を同じ順番で並べる

書く順番は、状況、依頼された内容、着手時点で分かったこと、判断とその理由、行ったこと、終了時点の変化の6つです。この順番で書くと、読み手は自然に流れを追えます。順番を変えると、途端に読みにくくなります。

各要素の分量は、2文から4文で十分です。長く書きたくなるのは、判断の理由の部分ですが、ここも絞ります。詳しく聞きたいと思わせるところで止めておくほうが、問い合わせにつながります。全部書いてしまうと、読み手は納得して終わります。

依頼された内容と実際にやったことを分けて書く

依頼された内容と、実際に行ったことは、しばしば一致しません。広告の改善を依頼されたが、着手して調べると商品ページの構成に問題があり、そちらを先に直した。こうした食い違いは、支援の現場では日常的に起きます。

この食い違いを書くことに価値があります。依頼されたことをそのままやる相手なのか、状況を見て順番を変えられる相手なのか。読み手が知りたいのは後者です。ただし、依頼を無視した形に読まれないよう、変更について合意を取った経緯まで書き添えます。

終了時点の変化は状態で書く

最後の要素は、数字ではなく状態で書きます。「見ていなかった指標を月次で確認する形になった」「商品登録の基準が文書として社内に残った」「広告の判断を担当者が自分で行えるようになった」といった記述です。

状態で書くと、条件の違う読み手にも意味が伝わります。数字は条件に依存しますが、状態の変化は再現の可能性を感じさせます。支援の目的が、依頼先が自走できるようにすることであるなら、状態の変化こそが本来の成果です。

よくある質問

Q. 秘密保持の契約があると実績は一切書けないのですか?

契約の内容によります。事実の開示だけが禁じられていて、抽象化した記述までは制限していない場合が多くあります。「アパレルの自社ECの立ち上げ支援」といった程度の記述であれば問題にならないことが一般的です。ただし判断に迷う場合は自己判断せず、依頼先に確認するか専門家に相談してください。後から問題になると以後の紹介まで失います。

Q. 成果の数字が出せないとき、実績には何を書けばよいですか?

数字の代わりに構造を書きます。何が課題で、どう考え、何を優先し、どの順番で実行したか。この流れは数字よりも仕事の質を伝えます。発注する側が知りたいのは数字そのものではなく、自分の事業に置き換えたときに何をしてくれるかです。構造が書かれた実績のほうが、条件の違う読み手にも判断材料になります。

Q. 途中で終わった案件も実績として書いてよいのでしょうか?

書けます。成果が出る前に終わっていても、現状の分析、課題の特定、施策の設計までは残っています。何を明らかにしたかを書けば実績として成立します。終了の理由が方針変更や予算の都合であれば、その経緯を含めて誠実に書くほうが、読み手からの信頼はむしろ高くなります。

Q. 実績を公開する許可はいつ取るのが良いですか?

最も良いのは契約を結ぶ段階です。業務が始まる前なら事務的に話せます。ブランド名を出せるか、業種と規模だけなら出せるか、公開前に確認を取るか、を決めておきます。契約時に不可だった場合も、支援の終了時に改めて聞くと状況が変わっていることがあります。聞かないまま終えると永久に書けなくなります。

Q. 実績がまったく無い段階では何から始めればよいですか?

自分で小さくネットショップを運営して一通りの工程を経験するのが最短です。あわせて、公開情報だけで診断のレポートを作れば、分析力を示す見本になります。最初の案件は範囲が狭くても構いません。着手前の状態、行ったこと、その理由、結果、振り返りの5つを記録に残しておけば、後から実績の文章はいくらでも書けます。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年8月2日最終更新:2026年9月5日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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