EC・D2Cコンサルの最初の打ち合わせで聞くこと|後戻りを防ぐ

長谷川 奈津
長谷川 奈津
EC・D2Cコンサルの最初の打ち合わせで聞くこと|後戻りを防ぐ

この記事のポイント

  • EC・D2Cコンサルの初回の打ち合わせで何を聞くべきかを
  • 後戻りを防ぐ観点から整理しました
  • 質問の順番と判断の基準をまとめています

EC・D2Cコンサルの初回の打ち合わせは、提案の場ではありません。後戻りするかどうかがここで決まります。聞き漏らした前提は、契約後に「そんな話は聞いていない」という形で必ず戻ってきます。この記事では、初回に何を、どの順番で聞くのかを整理します。

初回で提案を急ぐと、相手の事業の構造を知らないまま一般論を並べることになります。EC・D2Cの支援では、粗利の構造も、在庫の回り方も、社内の体制も、ブランドごとにまったく違います。前提を外した提案は、その場では良く聞こえても、実行の段階で必ず止まります。聞くことに時間を使ったほうが、結果的に早く進みます。

初回の打ち合わせで実際に決まっていること

初回は情報を集める場ですが、同時に相手も判断しています。この人に任せられるかどうかを、話す内容より、聞き方で見ています。

提案より質問の質で判断されている

初回で流暢に施策を並べる人より、事業の構造を細かく聞いてくる人のほうが信頼されます。理由は単純で、聞かれた側は「この人はうちの事情を分かろうとしている」と感じるからです。逆に、聞かずに提案してくる相手には、「どこでも同じ話をしているのだろう」という印象を持ちます。

質問の質は、具体性で決まります。「課題は何ですか」ではなく「先月と先々月で、注文の件数と平均の購入金額はどちらが動きましたか」と聞く。前者には抽象的な答えしか返らず、後者には事実が返ります。事実が返ってくる質問を用意していくことが、初回の準備です。

時間配分をあらかじめ決めておく

初回の打ち合わせは1時間前後になることが多いのですが、配分を決めずに入ると、雑談と自己紹介で半分が消えます。目安として、自己紹介と経緯の確認に最初の10分、事業と数字の確認に30分、期待値のすり合わせに10分、進め方と次のステップに10分という形で組んでおきます。

配分を決めておくと、途中で話が逸れたときに戻せます。相手が話し好きな場合、思い出話で時間が終わることもあります。「そのお話は次回に詳しくうかがいたいので、先に数字のところを確認させてください」と言えるのは、配分が頭に入っているときだけです。

聞いたことをその場で記録する形を用意する

初回で得た情報は、量が多く、あとから思い出せません。質問のリストを紙かデータで用意して、その場で埋めていく形にします。相手の目の前でメモを取ることに遠慮はいりません。むしろ、記録している姿は真剣に聞いている印象を与えます。

用意した質問リストは、そのまま議事録の骨組みになります。打ち合わせの後で一から書き起こすより、埋めたリストを整えるほうが早く、抜けも出ません。資料の作成に時間をかけすぎない工夫として、MOS Word(Microsoft Office Specialist)で扱うような文書作成の基本操作を押さえておくと、議事録や質問票の整形にかかる時間を減らせます。

打ち合わせの前に自分で調べておくこと

初回で聞く内容の質は、事前に調べた量で決まります。調べれば分かることを聞くと、時間が減るだけでなく、準備していない印象を与えます。

販売しているすべての場所を見ておく

自社のECサイトだけでなく、モールの店舗、SNSのアカウント、実店舗の有無まで確認します。同じ商品が複数の場所で売られている場合、価格や表現が揃っているかを見ます。揃っていない場合、それ自体が課題になっている可能性があります。

サイトは実際に購入の手前まで進めてみます。商品を選び、カートに入れ、購入の画面まで行くと、送料の表示、決済の選択肢、会員登録の必須有無といった条件が見えます。この体験があるかどうかで、打ち合わせでの質問の具体性が変わります。

検索して出てくる情報を一通り読む

ブランド名で検索して、上位に何が出てくるかを見ます。自社サイトが最初に出るのか、モールの店舗が先に出るのか、口コミサイトが出るのか。この並びは、そのブランドが検索の世界でどう見られているかを表します。

あわせて、プレスリリースや取材記事があれば読んでおきます。創業の経緯、商品の背景、代表者が何を大事にしているか。この情報は、打ち合わせでの言葉選びに効きます。ブランドが大事にしていることと逆の提案を初回でしてしまうと、その後の話が進みません。

競合と呼べる相手を2つか3つ見ておく

同じ価格帯、同じ顧客層の商品を扱うブランドをいくつか見ておきます。ページの作り、送料の条件、定期購入の設計、SNSでの見せ方。比較の材料を持っていると、打ち合わせで「他社ではこうしている」という話ができます。

ただし、初回で競合の話を長くするのは避けます。相手はその競合を何年も見ているので、こちらの浅い理解が露呈します。事前に見ておくのは、話すためではなく、相手の答えを理解するためです。

事業の前提を聞く

まず確認するのは、何を、誰に、どこで売っているのかです。ここが曖昧なまま数字の話に入ると、数字の意味が読めません。

商品と顧客の輪郭を掴む

商品の点数、価格帯の幅、季節性の有無、リピートが前提の商品かどうか。この4つを聞きます。単品を繰り返し買ってもらうモデルと、多品目から選んでもらうモデルでは、打つべき施策がまったく違います。

顧客については、年代や性別より、購入のきっかけを聞きます。「何を見て買っているか」「初回と2回目で買う商品が変わるか」「贈り物としての購入があるか」。この情報は、社内の担当者が肌感覚で持っていることが多く、データには表れません。初回で聞いておかないと、あとからデータだけを見て的外れな解釈をすることになります。

粗利の構造を聞く

売上だけを見て提案すると、事業を悪化させることがあります。広告を増やして売上が伸びても、粗利が薄い商品では利益が減ります。原価の比率、送料の負担、決済やモールの手数料、梱包資材のコスト。この構造を聞かないと、どの商品を伸ばすべきかが判断できません。

数字そのものを初回で開示してもらえないこともあります。その場合は、比率の大小だけでも聞きます。「送料は利益を圧迫していますか」「値引きをすると赤字になる商品はありますか」といった聞き方なら、具体的な金額を出さずに答えられます。開示が難しい理由がある場合は無理に踏み込まず、契約後に確認する項目として記録しておきます。

在庫と生産のリードタイムを聞く

EC・D2Cの支援で見落とされやすいのが、在庫と生産の制約です。施策が当たって注文が増えても、在庫が無ければ売れません。生産に数か月かかる商品なら、施策の実行時期を生産計画に合わせる必要があります。

聞くのは、発注から入荷までの期間、最小の発注単位、在庫を切らしたことがあるか、切らしたときにどう対応したかです。この情報がないまま販促を提案すると、欠品を招いて信用を落とします。在庫の制約は、施策の優先順位を決める最も強い条件のひとつです。

数字の現状を聞く

次に、数字がどこにあり、誰が見ていて、そもそも正しく取れているのかを確認します。

見ている指標と見ていない指標を確認する

多くの現場では、売上と注文件数は見ていても、その先が見られていません。新規とリピートの内訳、流入経路ごとの購入率、カートに入れてから離脱する割合、返品や交換の率。どこまで見ているかを聞くと、社内の分析の成熟度が分かります。

見ていない指標があること自体は問題ではありません。問題は、見ていないのに見ているつもりでいる場合です。「コンバージョン率は把握しています」と言われたときに、その数字の分母が何かを確認します。全セッションなのか、商品ページの閲覧なのか、特定の流入だけなのか。分母がずれていると、判断も全部ずれます。

データの在りかと権限の状態を聞く

管理画面がいくつあり、それぞれ誰がアカウントを持っているかを聞きます。カートシステム、アクセス解析、広告の管理画面、モールの管理画面、メール配信ツール、在庫管理システム。多いブランドでは、これだけで10を超えます。

そのうえで、こちらに権限を出せるものと出せないものを確認します。出せないものについては、必要な数字を誰が、どの頻度で出してくれるのかを決めます。ここを初回で確認しておかないと、契約後に「見られると思っていた数字が見られない」という状態から始まることになります。

計測が壊れていないかを確認する

支援を始めてから、計測タグが二重に入っていた、コンバージョンの定義が実態と合っていなかった、といった問題が見つかることは珍しくありません。この場合、それまでの数字はすべて信頼できないので、判断のやり直しになります。

初回では、計測の設定をいつ、誰が行ったかを聞きます。サイトを作り直したあとに設定を見直していない場合、壊れている可能性が高くなります。数字が取れる状態を作る作業そのものが必要になることもあり、その場合は支援の範囲に含めるかどうかを決める必要があります。EC運営の日常業務の範囲はEC運用代行・商品登録のお仕事にまとまっているので、どこまでを自分が担い、どこから社内や別の担当者に任せるかを整理する材料になります。

数字を誰に報告しているかを聞く

担当者が誰に何を報告しているかを確認します。週次で売上だけを上に上げているのか、月次で詳しい資料を作っているのか。報告の形が分かると、こちらが出すレポートの形も決まります。担当者がそのまま社内に転用できる資料を出せば、担当者の負担が減り、こちらの評価も上がります。

報告の頻度が高い現場では、短い期間で数字が動いたかどうかを問われます。時間のかかる施策を進めるときは、途中経過を示す中間の指標を先に決めておかないと、途中で打ち切られます。何をもって進んでいると見なすかを、初回のうちに合意しておくと後が楽になります。

体制と権限を聞く

提案が実行されるかどうかは、体制で決まります。良い提案でも、動かす人がいなければ紙のままです。

担当者の人数と兼務の状況

EC担当が何人いて、そのうち専任は何人か。兼務の場合、他に何を担当しているか。この情報は、施策の量を決める前提になります。専任がいない現場に週に何本もの施策を提案しても、実行されません。

地方の中小企業や、社内に経験者がいない企業では、この制約が特に強く出ます。支援する側から見た実情について、長く中小企業の支援を行っている事業者はこう書いています。

20年以上の地方の中小企業さまのご支援をしてきている弊社だからわかる実情があります。D2C、EC、DXといっても地方企業にとってはそう簡単ではないということ。理由はさまざまありますが、まず、弊社のようなコンサル・システム会社・制作企業の初期コストが高すぎてリスクがありすぎること。さらに、余裕のある人員体制ではなく、かつ、目的とする事業参入の知識と経験のある人員がいないこと。採用するとしても、間接部門の若い社員を駆り出すのが関の山。 出典: top1-consulting.com

人員の余裕がないこと、経験のある人がいないこと。この2つが前提の現場では、施策の数を絞り、手順を細かく書いた形で渡す必要があります。初回でこの制約を掴めていれば、提案の粒度を最初から合わせられます。

決裁者と決裁の流れを聞く

打ち合わせに出ている人が決裁者とは限りません。誰が最終的に判断するのか、判断までに何段階あるのか、判断のタイミングは月次か随時かを聞きます。

決裁の流れが分かると、提案の出し方が変わります。役員会が月に一度しかない会社なら、その日程から逆算して提案を出す必要があります。この確認を怠ると、提案してから1か月以上返事が来ず、その間の稼働が宙に浮きます。

実装できる人がいるかを確認する

サイトの改修、システムの設定変更、デザインの修正。これらを社内でできるのか、外部に頼むのかを聞きます。外部に頼む場合、その会社との関係、依頼から反映までの期間、費用の枠があるかまで確認します。

実装の手段がない現場では、提案の内容そのものを変える必要があります。改修を伴わない施策を中心に組み立てるか、あるいは制作までを含めた形で支援するか。制作側の業務の範囲はECサイト制作・運用・画像制作のお仕事にまとまっているので、自分が引き受けられる範囲を判断する材料になります。

過去にやったことを聞く

初回で最も価値がある情報は、過去に何をやって、何がうまくいかなかったかです。

これまでの支援先との経緯を聞く

過去に他のコンサルタントや代理店に依頼したことがあるか、あるならなぜ終わったのかを聞きます。答えにくい質問なので、責める形にならないよう聞き方に配慮します。「相性の問題もあると思うのですが、どのあたりが合わなかったかをうかがえますか」といった聞き方なら答えやすくなります。

返ってくる答えには、その企業が支援に何を期待しているかが表れます。「報告ばかりで実行が進まなかった」と言われたなら、実行の伴走が求められています。「数字の説明が難しくて分からなかった」と言われたなら、伝え方に工夫が要ります。過去の不満は、そのまま次に評価される基準になります。

失敗した施策とその理由を聞く

過去に試して効果が出なかった施策を聞きます。同じことを提案してしまうのが最悪の展開です。ただし、効果が出なかった理由が施策そのものにあるとは限りません。実行の途中で止まった、対象が違った、計測できていなかっただけ、という場合が多くあります。

聞くときは、施策の名前だけでなく、どの期間に、どういう形で実行し、何をもって効果が無いと判断したかまで確認します。判断の根拠が曖昧なら、条件を変えて再度試す価値があります。この確認は、初回でしかできません。契約後に「実はそれ、前にやりました」と言われると、信頼が一段下がります。

期待値をすり合わせる

前提と現状を掴んだら、相手が何を期待しているかを言葉にしてもらいます。

売上を上げたいという言葉を分解する

「売上を上げたい」という要望は、そのままでは仕事になりません。新規の顧客を増やすのか、既存の顧客に多く買ってもらうのか、単価を上げるのか、離脱を減らすのか。どれを優先するかで、やることが変わります。

分解して聞いたときに、相手が即答できないことがあります。その場合は、こちらから選択肢を示して、どれが近いかを選んでもらいます。選んでもらった内容は、その場で復唱して確認します。ここで合意した優先順位が、後の提案すべての土台になります。

いつまでに何が変わっていてほしいかを聞く

期限の感覚は、必ず確認します。3か月で結果を求められているのか、1年かけて土台を作る話なのかで、支援の設計が変わります。短期で成果を求められている場合、時間のかかる施策は最初から外すか、短期の施策と並行して進める形にします。

期限の背景も聞きます。決算の時期なのか、新商品の発売に合わせているのか、社内で予算の見直しがあるのか。背景が分かると、何をもって成功と見なされるかが読めます。

やらないことを初回のうちに言う

初回で信頼を得ようとして、できることを広く言ってしまう人がいます。これは後で必ず苦しくなります。自分がやらないこと、得意でないことは、初回のうちに言葉にしておきます。

「システムの開発は範囲外です」「撮影の実作業は別の方に頼む形になります」と最初に言っておけば、期待がずれません。範囲を絞ることで断られるなら、その案件は最初から合っていません。支援の全体像や求められる関与の深さについては、EC/D2C・店舗運営コンサルのお仕事に業務の範囲がまとまっているので、自分の担当領域を説明する際の整理に使えます。

取引の条件にも初回で触れておく

金額の話は初回では詰めきれませんが、条件の枠組みには触れておきます。ここを曖昧にしたまま進むと、後で困るのは受ける側です。

取引条件が書面で示されるかを確認する

業務委託で仕事を受ける場合、発注する側には取引の条件を書面などで明示する義務があります。委託する業務の内容、報酬の額、支払期日といった項目が対象です。フリーランスと発注者の取引に関するルールは、公正取引委員会が内容を公開しているので、契約の形を決める前に確認しておくと安心です。

初回では、「発注書や契約書はどのような形で交わされますか」と聞くだけで十分です。この一言で、相手の社内の運用が分かります。書面を出す習慣がない相手の場合、こちらから雛形を用意する準備をしておきます。

支払いのタイミングを確認する

報酬の支払期日についても、法律で上限の考え方が定められています。物品や役務を受け取った日から起算して一定の期間内に支払う必要があり、支払いを不当に遅らせることは禁じられています。個別の事案でどう適用されるかは状況によって変わるため、判断に迷う場合は弁護士や専門の窓口に相談してください。

初回では、締め日と支払日のサイクルだけを聞いておきます。月末締めの翌月払いなのか、それより後ろなのか。長期の案件では、この差が資金の回り方に効いてきます。

秘密保持の扱いを先に決める

EC・D2Cの支援では、初回の打ち合わせの時点ですでに機微な情報に触れます。売上、原価、仕入先、今後の商品計画。NDA(エヌディーエー)を結ぶタイミングを確認し、必要なら初回の前に結んでおきます。

あわせて、実績としてどこまで公開してよいかも聞いておきます。ブランド名を出せるか、業種と規模だけなら出せるか。契約が終わってから聞くと、答えを出せる人がいなくなっていることがあります。

初回で起きやすい失敗と、その避け方

初回の打ち合わせでの失敗は、決まった形で繰り返されます。あらかじめ知っておけば避けられます。

用語をそのまま使って話が通じなくなる

コンバージョン率、カート放棄率、LTV、ROAS。業界では当たり前の言葉でも、相手の社内では通じないことがあります。通じていないのに、相手が分かったふりをして頷くと、認識がずれたまま進みます。

対策は、一度は言い換えることです。「カートに入れたあとに買わずに離れてしまう割合」のように言い換えたうえで、「社内ではどう呼んでいますか」と聞きます。相手の社内の言葉に合わせておくと、その後の資料も伝わりやすくなります。特に、社内で数字を報告している担当者にとっては、いつも使っている言葉のままのほうが説明しやすくなります。

その場で回答を作ってしまう

「この場合どうすればいいですか」と聞かれると、答えたくなります。しかし前提を掴みきる前の回答は、外れる確率が高く、しかも相手の記憶に残ります。後から修正すると、一貫性がないと見られます。

分からないことは、その場で分からないと言います。「持ち帰って、データを見てから答えます」と言うほうが信頼されます。ただし、持ち帰ると言った内容は必ず期日を決めて返します。返さないと、その一言が言い訳に見えます。

相手の課題認識を否定してしまう

相手が「広告の効率が悪いのが問題です」と言ったときに、データを見て別の原因が見えることがあります。それでも、初回でその認識を正面から否定しないほうがよい場面が多くあります。相手はその認識を社内で共有し、予算を取っている可能性があるためです。

否定するのではなく、並べます。「広告の効率も課題ですが、あわせて購入後の離脱も見ておきたいです」という形にすれば、相手の面子を潰さずに視点を広げられます。認識を修正するのは、データを揃えてからで十分に間に合います。

話を聞くだけで終わってしまう

質問に徹すると決めていても、聞くだけで終わると、相手には何も残りません。「話しやすい人だった」で終わり、他社と比較されたときに印象で負けます。

避けるには、打ち合わせの最後に、聞いた内容を要約して返します。「今日うかがった中では、在庫の制約が施策の順番を決める最大の条件だと理解しました」といった形です。要約が的確であれば、それだけで理解力が伝わります。提案でなくても、理解の深さは示せます。

打ち合わせのあと24時間ですること

初回の価値は、終わったあとの動きで決まります。ここを丁寧にやる人が、次に進みます。

議事録を送る

聞いた内容を整理して、24時間以内に送ります。書くのは、確認できた事実、確認できなかった事項、次に必要な情報、次のステップの4つです。感想や提案は書きません。事実の整理だけで十分に価値があります。

議事録を送ると、相手の社内で共有されます。打ち合わせに出ていなかった決裁者が読むこともあります。そのときに、事実が整理された文書があると、こちらの仕事の質が伝わります。

認識のずれを1点だけ返す

議事録の最後に、認識のずれがありそうな点を1つだけ書きます。「新規獲得を優先すると理解しましたが、在庫の制約を考えると既存顧客への施策を先に置く選択肢もあります」といった形です。

複数書くと反論に見えます。1点だけなら、考えている姿勢として伝わります。この1点が的を射ていれば、次の打ち合わせの中心がその話題になり、提案の場が自然に生まれます。

現場を長く見てきた立場からの観察

在宅ワークとフリーランスの市場を20年運営してきた立場から言えば、初回の打ち合わせで差がつくのは、話す力ではなく記録の力です。長く続いている人は、聞いたことを漏らさず残し、次の打ち合わせでその内容を前提として話します。相手は「前に話したことを覚えている」という事実に信頼を寄せます。

運営者として見てきた限りでは、初回で提案を急いだ案件ほど、途中で止まる割合が高くなります。前提を外した提案は、実行の段階で必ず条件に引っかかるためです。逆に、初回を全部質問に使った案件は、二度目の打ち合わせで提案が通ることが多い。急がば回れという言い方は古いのですが、この領域では実際にそうなっています。

中間の会社を介さない直接の取引では、初回の打ち合わせの意味も変わります。仲介が入る場合、条件のすり合わせは仲介側が行い、こちらは決まった枠の中で動きます。直接の取引では、範囲も条件も自分で決められる代わりに、初回で確認すべきことが増えます。手間は増えますが、同じ予算でも依頼側はより多くを頼め、受ける側は手数料0%の分だけ手取りが厚くなります。この構造があるからこそ、初回に時間をかける価値があります。

長期の関係になるかどうかも、初回である程度見えます。数字を出し渋る、決裁者に会わせない、過去の経緯を話さない。この3つが揃う相手とは、契約後も情報が出てこない可能性が高くなります。断る判断も含めて、初回は双方が相手を確かめる場です。EC・D2Cの支援は、書く仕事や編集の仕事と隣接する部分も多く、著述家,記者,編集者の年収・単価相場にある職種の分類を見ておくと、自分がどの役割で入るのかを説明しやすくなります。

よくある質問

Q. EC・D2Cコンサルの初回の打ち合わせで提案はしないほうがよいですか?

初回は前提を掴む場に使うほうが、後戻りが減ります。事業の構造、粗利、在庫の制約、社内の体制を知らないまま提案すると、実行の段階で条件に引っかかって止まります。ただし何も返さないのも印象が悪いため、議事録の最後に認識のずれを1点だけ書き添えると、考えている姿勢が伝わり、次回の提案につながります。

Q. 初回で相手が数字を出してくれない場合はどうすればよいですか?

具体的な金額を求めず、比率や大小だけを聞く形に切り替えます。「送料は利益を圧迫していますか」「値引きすると赤字になる商品はありますか」といった質問なら、開示せずに答えられます。開示が難しい理由がある場合は無理に踏み込まず、契約後に確認する項目として記録し、権限の付与とあわせて改めて依頼します。

Q. 打ち合わせの時間配分はどう決めればよいですか?

1時間なら、自己紹介と経緯に10分、事業と数字の確認に30分、期待値のすり合わせに10分、進め方と次のステップに10分が目安です。配分を頭に入れておくと、話が逸れたときに戻せます。質問リストをその場で埋める形にしておけば、記録が残り、そのまま議事録の骨組みとして使えます。

Q. 初回で契約や報酬の条件まで話してよいのでしょうか?

金額を詰める必要はありませんが、条件の枠組みには触れておきます。発注書や契約書をどう交わすか、締め日と支払日のサイクル、秘密保持を結ぶタイミングの3点です。取引条件の明示や支払期日に関するルールは公的機関が内容を公開しているので、事前に確認しておくと、その場で戸惑わずに済みます。

Q. 過去の失敗した施策を聞くとき、気まずくなりませんか?

責める形にならない聞き方をすれば問題ありません。「相性の問題もあると思うのですが」と前置きし、施策の名前だけでなく、実行の期間や効果が無いと判断した根拠まで確認します。効果が出なかった理由が施策自体ではなく、途中で止まったことや計測の不備にある場合も多く、条件を変えれば再度試す価値が見つかります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月11日最終更新:2026年9月5日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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