話し方・プレゼン指導の最初の打ち合わせで聞くこと|後戻りを防ぐ


この記事のポイント
- ✓話し方・プレゼン指導の初回の打ち合わせで何を聞くかを
- ✓七つの質問群と終了時に確定させる四項目に整理しました
- ✓後戻りが起きる典型パターン
話し方・プレゼン指導の初回の打ち合わせは、指導を始める場ではなく、指導が成立する条件をそろえる場です。ここで確認を飛ばした項目は、必ず後半で戻ってきます。目標が曖昧なまま進んで終了時に評価ができない、評価者の基準を聞かずに練習して本番でずれる、録画の可否を確認せずに当日慌てる。どれも初回の数十分で防げるものです。この記事では、打ち合わせ前の準備、その場で聞く七つの質問群、終了時に必ず確定させる四項目、そして後戻りが起きる典型パターンを、実務の順番に沿って整理します。
初回で決めるのは指導内容ではなく前提条件
初回にいきなり改善点を伝えたくなりますが、それをすると打ち合わせが指導に変わり、条件の確認が終わらないまま次回に持ち越されます。初回の目的は、この案件がどういう形なら成立するのかを両者で確定させることです。
条件が固まらないまま進むと、後半のすべてが不安定になる
目標が決まっていなければ、練習の内容が選べません。評価者が分からなければ、整える順番が決まりません。使える時間が分からなければ、渡す課題の量が決まりません。指導の後半で「思っていたのと違う」という言葉が出る案件は、ほぼ例外なく初回で条件を詰めていません。逆に、初回で条件がそろえば、二回目以降は内容に集中できます。
相手も何を伝えるべきか分かっていない
依頼者や受講者は、自分の課題を言語化できているとは限りません。「うまく話せない」「緊張する」という表現の裏に、構成の問題、資料の問題、場の設計の問題が混在しています。だからこそ、こちらが質問の順番を用意しておく必要があります。相手に自由に話してもらうだけでは、必要な情報はそろいません。
伝わらない原因の所在が話し方そのものにあるとは限らないことは、指導の解説でも繰り返し扱われています。
実際、心理学の法則に「メラビアンの法則」というものがあります。メラビアンの法則によると、人がコミュニケーションを取る際には、視覚情報が55%、聴覚情報が38%、言語情報が7%の割合で影響を与えるとされています。 出典: mcstudy.mynavi.jp
この種の整理は、何を優先して直すかの目安として使われます。ただし、実際の案件で何が効くかは相手の状況によって変わるため、初回では一般論を当てはめる前に、その人の本番がどういう場なのかを聞き取る必要があります。
打ち合わせの前に準備しておくこと
初回の質が上がるかどうかは、当日より前に決まります。
質問票を先に送る
聞きたいことを一覧にして、打ち合わせの数日前に送ります。相手はその場で考えるより、事前に思い出す時間があるほうが正確に答えられます。特に、本番の日程、評価者、過去に指摘された内容は、その場で即答できないことが多い項目です。事前に送ることで、打ち合わせの時間を確認ではなく深掘りに使えます。
時間配分を先に決める
初回の時間をどう使うかを、開始時に相手へ伝えます。聞き取りに何分、実際に話してもらう時間に何分、進め方の説明に何分、という配分です。配分を共有すると、相手も話の長さを調整します。共有しないと、最初の質問への回答だけで大半の時間が消えることがあります。
資料があれば先に読む
既存のスライドや原稿があるなら、事前に共有してもらって読んでおきます。当日その場で読むと、読む時間そのものが打ち合わせから引かれます。読んだうえで質問を用意しておけば、初回の密度が大きく変わります。
初回に聞く七つの質問群
質問は群に分けて順番に置きます。順番を固定すると、抜けが起きません。
本番の場について
いつ、どこで、何分間、誰に向けて話すのか。会場の広さ、マイクの有無、聴衆の人数、時間の厳守度合い。これらは練習の設計を直接左右します。時間が厳格に区切られる場なら、内容を削る訓練が必要になります。質疑が長い場なら、想定問答の準備が中心になります。場の情報が抜けたまま練習すると、本番で条件が違って再現できません。
評価する人について
聞き手の中に、判断を下す人がいます。その人が何を基準に見ているのか、過去にどんな指摘をしてきたのか、専門知識をどの程度持っているのかを聞きます。専門知識のある相手なら前提の説明を削れますが、ない相手なら用語の言い換えが必要です。評価者の情報は、内容の取捨選択に直結します。
現在の状態について
これまでどんな場で話してきたか、どこでうまくいかなかったか、他人から何を指摘されたか。指摘の内容は特に重要です。「早口」「声が小さい」「何が言いたいか分からない」では、対処がまったく違います。過去の指摘を集めると、本人が自覚している問題と、周囲が見ている問題のずれが見えます。
本人の動機について
本人が受けたいのか、周囲が受けさせているのかを確認します。申し込み者と受講者が別人の場合は、この確認が最も重要になります。本人に動機がない場合、宿題が返ってこないため、指導の設計を変える必要があります。その場合は、本人が達成できる小さな目標を一つ設定し、そこから積み上げる形にします。
使える時間について
本番までの日数と、その間に練習へ割ける時間の両方を聞きます。日数だけでは設計できません。一日に15分しか取れないのか、週末にまとめて2時間取れるのかで、渡す課題の形が変わります。細切れの時間しか取れないなら、短時間で完結する課題に分解します。
記録について
録画や録音が可能かを確認します。指導の成果は前後の比較でしか可視化できないため、記録が取れるかどうかは進め方に影響します。社内資料を含む内容だと録画が禁じられている場合があり、その場合は音声のみ、あるいは記述による比較に切り替えます。記録した映像や音声の保管期間と削除方法も、この場で決めます。個人情報の取り扱いに関する基本的な考え方は、公的機関の資料でも確認できます。制度に関する情報は総務省にまとまっています。
決定権と支払いについて
進め方を最終的に決めるのは誰か、費用は誰が支払うのか、いつ支払われるのか。企業案件では、打ち合わせに出ている担当者が決裁者とは限りません。決裁の流れを聞いておくと、条件を変更する必要が出たときに誰へ相談すべきかが分かります。支払いの条件は、初回で確認しておかないと後で持ち出しにくくなります。
聞き方を変えたほうがよいこと
質問の内容だけでなく、聞き方でも結果が変わります。
弱点を直接聞かない
「何が苦手ですか」と聞くと、本人の自己評価しか出てきません。それより「直近で話した場面を教えてください」と聞き、その場で何が起きたかを具体的に語ってもらいます。出来事を語ってもらうほうが、事実に近い情報が集まります。自己評価は参考程度に扱い、観察と突き合わせます。
目標を相手の言葉から作る
「どうなりたいですか」だけでは抽象的な答えが返ります。「本番が終わったあと、何が起きていれば成功だと思いますか」と聞くと、具体的な場面が出てきます。出てきた場面を、観察できる形に翻訳します。時間内に話し終える、質疑で三往復する、原稿を見ずに冒頭を話す。この翻訳作業を相手の目の前で行うと、目標が共有されます。
過去の受講経験を確認する
以前に別の指導を受けたことがあるかを聞きます。受けたことがあるなら、そのとき何が役に立ち、何が合わなかったのかを聞きます。合わなかった方法を繰り返すと、初回で信頼を失います。逆に、合った方法が分かれば設計が早くなります。
現状の把握は、実際に話してもらって行う
聞き取りだけでは、現状は分かりません。初回のうちに、必ず話してもらう時間を取ります。
短く区切って話してもらう
長く話してもらう必要はありません。3分程度で足ります。本番で話す内容の冒頭部分、あるいは自己紹介でもかまいません。短くても、声の出し方、間の取り方、視線、姿勢、話の組み立て方は十分に観察できます。
観察の観点を先に決めておく
聞きながら何を見るかを、事前に決めておきます。冒頭で結論が出るか、一文の長さ、間の位置、視線の動き、語尾の処理、時間の管理。観点を決めておかないと、印象だけが残って具体的な記録になりません。観点ごとにメモを取り、あとで講評の材料にします。
その場では指摘を絞る
観察した内容をすべて伝えると、相手は受け止めきれません。初回で伝えるのは、最も効果が大きい一点だけにします。残りは記録に残し、二回目以降に順番に扱います。初回で多くを指摘すると、相手は自分に問題が多すぎると感じ、その後の練習に向かえなくなります。
録画があれば一緒に見る
その場で録画し、すぐに見返す時間を取ると、本人の気づきが早くなります。他人から指摘されるより、自分で見て気づいたことのほうが定着します。この方法は初回で最も効果が出やすいため、記録が可能な案件では必ず組み込みます。
打ち合わせの終わりに確定させる四つ
初回を終える前に、次の四つを口頭で確認し、その日のうちに文面で送ります。
目標
観察できる形に翻訳した目標を、そのまま読み上げて合意を取ります。「本番で時間内に話し終える」「質疑で詰まらずに三往復する」という具体的な文にします。抽象的な言葉のまま終えると、後で解釈が分かれます。
範囲
含むものと含まないものを両方伝えます。特に、資料の新規作成、当日の同行、参加者以外への共有、録画の二次利用については、含まないなら明示します。含まないことを伝える作業は、断りではなく範囲の明確化です。
回数と日程
全何回で、次回はいつか。振り替えは何日前まで可能か。ここを決めずに終えると、日程調整の連絡だけで往復が増えます。次回の日程は、その場で確定させるのが最も効率的です。
次回までに相手がやること
宿題を一つだけ渡します。複数渡すと実行されません。冒頭三〇秒を録音する、指摘された一点を意識して一度話してみる、資料の結論を一文に書き直す。実行できる大きさに絞ります。宿題が返ってくるかどうかは、その後の進行を予測する材料にもなります。
議事メモの書き方と送り方
初回の内容は、その日のうちに文面にして送ります。記憶が新しいうちに書くほうが正確で、送るのが遅れるほど価値が下がります。
四つの確定事項を先頭に置く
目標、範囲、回数と日程、次回までの宿題。この四つを冒頭に箇条書きで並べます。相手が読むべきものが先頭にあると、確認が確実になります。聞き取った内容の要約は、その後ろに置きます。
観察した内容は事実として書く
「早口でした」ではなく「一分あたりの語数が多く、句点の位置で間がほとんど入っていませんでした」と書きます。事実として書くと、相手が受け入れやすくなり、改善の方向も具体化します。評価の言葉だけを書くと、指摘として受け取られて反発を招きます。
認識が違う場合の連絡方法を添える
「相違があればご連絡ください」と一行添えます。この一行があると、行き違いが早い段階で表面化します。なければ、相手は違和感を持ったまま次回に来ることになります。文書の型を整える基本はビジネス文書検定で扱われる範囲にも重なり、押さえておくと業務連絡全般の速度が上がります。
後戻りが起きる典型パターン
初回の確認を飛ばすと、決まった形で戻ってきます。
評価者を聞かなかった場合
練習を重ねた内容が、本番の評価軸と合いません。特に、依頼者が人事部で評価者が現場の管理職という構図で起きます。この場合、指導そのものは適切でも成果として認識されません。初回で評価者の基準を確認し、共有できないなら成果の定義を変えておく必要があります。
目標を抽象的なまま進めた場合
終了時に評価ができません。相手は「変わった気がしない」と言い、こちらは反論の材料を持ちません。目標を観察できる形にする作業は、初回の中心的な仕事です。
範囲を伝えなかった場合
資料の作り直しや、当日の同行を求められます。断ると関係が悪化し、受けると工数が膨らみます。含まないものを初回で伝えていれば、追加の依頼として扱えます。
動機を確認しなかった場合
宿題が返らず、練習が進みません。二回目以降に気づいても、設計を組み直す時間がありません。初回で動機の所在を確認し、動機が弱い場合は目標を下げた設計に切り替えます。
記録の可否を確認しなかった場合
当日になって録画できないと分かり、比較の材料が作れません。成果を示せないまま終わり、次の依頼につながりません。
オンラインで初回を行う場合
画面越しの初回には、対面にない準備が要ります。接続の確認を開始前に済ませ、その時間を打ち合わせ時間に含めない旨を先に伝えます。画面共有で資料を見る場合は、相手側の操作に慣れが必要なことも想定します。話してもらう時間では、カメラの位置によって姿勢や視線が確認できないことがあるため、上半身が入る画角に調整してもらいます。録画機能を使う場合は、開始前に相手の同意を口頭で取り、記録に残します。オンラインでの働き方を前提に活動範囲を広げる場合は、Webマーケティング フリーランスで海外ノマド!年収、スキル、成功への道で扱われている環境の整え方も参考になります。
依頼の入口ごとに、初回の重心を変える
同じ七つの質問群を使っても、依頼がどこから来たかによって、深く掘るべき場所が変わります。
企業の研修担当者から来た依頼
この入口では、受講者本人と話す機会が初回にないことがあります。担当者から聞けるのは、制度上の目的と、参加者の所属や役職までにとどまることが多く、本人の動機や現在の状態は分かりません。そこで重心を置くのは、研修が現場の課題から発生したのか、年間計画の実施要件から発生したのかを見分けることです。前者なら現場の管理職への事前確認を提案し、後者なら成果の定義を過度に高く設定しないほうが双方にとって良い結果になります。あわせて、参加人数と一人あたりの実演時間を確認します。人数が多く実演時間が短い形式なら、個別の講評ではなく共通課題の整理が中心になり、準備すべき教材の性質が変わります。
個人が自分で申し込んできた依頼
動機は明確ですが、目標が本人の中でも固まっていません。ここでの重心は、直近で控えている具体的な場面を一つ特定することです。場面が特定できれば、目標も練習内容も自動的に決まります。控えている場面がない場合は、練習の的が作れないため、開始時期を場面が決まってからに調整する提案をします。この判断を初回でしておくと、成果の出ない期間を作らずに済みます。
面接や進学の対策として来た依頼
期限が明確で、評価者の関心も読みやすい入口です。ただし、依頼者が保護者や紹介者である割合が高く、本人の意思確認が特に重要になります。また、対策は志望内容そのものへの助言と地続きになりやすいため、初回で範囲を明示します。進路の是非には踏み込まず、話す順番と受け答えの型に限定する旨を、その場で伝えて記録に残します。
紹介で来た依頼
紹介者への配慮から確認を省きたくなりますが、省くと条件が固まらないまま始まり、うまくいかなかったときに紹介者との関係まで傷つきます。紹介であっても七つの質問群は同じ順で通します。紹介者にとっても、条件が合わない案件が成立するほうが不利益になります。
初回で見えた情報を、二回目以降にどうつなぐか
初回で集めた情報は、そのまま設計図になります。
目標から逆算して回数を割り当てる
確定した目標を、達成に必要な工程に分解します。構成の組み直し、話す順番の固定、間の取り方、質疑の想定問答、通し練習。それぞれに何回分を割り当てるかを決め、残り回数と突き合わせます。回数が足りないなら、初回のうちに目標を下げるか、回数の追加を相談します。二回目以降に気づくと、調整の余地がありません。
観察記録を評価の基準として保存する
初回に観点ごとに取ったメモは、終了時の比較材料になります。同じ観点で最終回にも記録を取れば、変化を事実として示せます。録画が取れない案件でも、この記録があれば成果を説明できます。観点を毎回変えてしまうと比較ができなくなるため、観点は初回に決めたものを固定します。
相手の反応速度を記録しておく
宿題が返ってくるまでの日数、日程調整の返信の速さ、資料共有への対応。これらは二回目以降の進行を予測する材料になります。反応が遅い相手なら、締め切りを前倒しに設定し、確認の連絡を工程に組み込みます。予測しておけば、遅れが起きても対応が間に合います。
想定と違った点を必ず書き留める
初回の前に立てた想定と、実際に聞き取った内容の差分を記録します。この差分が積み上がると、質問票の順番や内容を自分の実態に合わせて改良できます。指導の仕事は案件ごとの差が大きく、他人の型をそのまま使うより、自分の記録から作った型のほうが精度が高くなります。伝える仕事全体の実態を統計から確認したい場合は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場のような資料も、稼働の設計に使えます。
運営者の視点から見た、初回の重み
在宅と業務委託の市場を長く見てきた立場から言えば、指導の仕事で継続的に依頼を受けている人は、初回に時間をかけています。すぐ指導を始めず、条件を確認することに時間を使う。この進め方は一見遠回りに見えますが、二回目以降の速度がまったく違います。逆に、初回から改善点を並べる人は、その場の満足度は高くても、終了時の評価が安定しません。目標が共有されていないため、成果を測る基準がないからです。
もう一つ、運営者として見てきた限りでは、間に人が入るほど初回で得られる情報が薄くなります。評価者が誰か、なぜこの依頼が発生したのか、本人がどう受け止めているのか。これらは伝言を経るたびに削られ、指導者の手元には「話し方を改善したい」という一行だけが残ります。依頼者と直接話せる形なら、初回でその背景まで聞けます。手数料0%で直接つながる取引が支持されるのは、受け取る額の厚みだけではなく、この情報の密度が成果を左右するからです。依頼者の側も、同じ予算でより深い関与を引き出せます。
指導という職種で発生する作業の全体像は、職種別の解説を見ると整理しやすくなります。話し方・プレゼン指導・模擬面接のお仕事には、この分野で求められる工程がまとめられています。経験を教える側に転換する進め方については、定年後のフリーランス独立|退職金を活かした起業プランと注意点に整理された考え方も参考になります。
初回で条件が合わないと分かったときの扱い
七つの質問群を通した結果、この案件は成立しないと判断することがあります。その判断も初回の成果です。
判断はその場で保留し、当日中に伝える
打ち合わせの場で結論を出すと、感情的な流れに引きずられます。「持ち帰って進め方を整理し、本日中にご連絡します」と伝えて場を閉じ、記録を見返してから判断します。ただし、連絡は当日中に出します。翌日以降に伸ばすと、相手が次の手を打つ時間が減ります。
断るときは自分の条件として説明する
「この日程では、責任を持って成果を出せる準備ができません」「その範囲は対応の範囲外です」という形にします。相手の準備不足を理由に挙げないことで、関係が残ります。断る連絡には、代替案を一つだけ添えます。日程をずらす提案、範囲を縮めた提案、あるいは一般的な進め方を短くまとめて渡す、のいずれかです。
条件を変えれば成立する場合は、変更案を具体的に出す
多くの案件は、断るか受けるかの二択ではありません。目標を下げる、回数を減らす、範囲を絞る。どの条件をどう変えれば成立するかを具体的に示せば、相手は判断できます。抽象的に「難しいです」とだけ伝えると、交渉の余地がないと受け取られます。
見送った案件も記録に残す
なぜ見送ったのかを一行で残します。動機が確認できなかった、評価者が特定できなかった、期限に対して練習時間が足りなかった。記録が積み上がると、問い合わせの段階で判別できる項目が増え、初回に進む前に絞り込めるようになります。
聞き取りをその場で記録する型
初回で集めた情報は、記憶に頼ると翌日には半分が抜けます。書きながら聞く形を最初から用意しておきます。
記入欄を先に作っておく
七つの質問群に対応した空欄を並べた紙、あるいは画面を用意し、聞きながら埋めていきます。欄が空のままなら、その項目を聞き漏らしたことがその場で分かります。自由記述のメモだけで進めると、書けた項目は詳しくなり、聞かなかった項目は存在ごと消えます。欄を先に作る目的は、内容を詳しく残すことではなく、抜けを可視化することです。
相手の言葉をそのまま残す欄を分ける
聞き取りの記録は、相手が話した言葉と、こちらの解釈を分けて書きます。「本番で頭が真っ白になる」という発言と、「準備した内容の想起が本番環境で妨げられている」という解釈は別のものです。解釈だけを残すと、後で見返したときに何が根拠だったのかが追えなくなります。目標を観察できる形に翻訳する作業も、元の言葉が残っていなければ相手と突き合わせられません。
決まらなかった項目に印を付ける
その場で決まらない項目は必ず出ます。評価者が誰か担当者にも分からない、本番の持ち時間が未定、録画の可否は社内確認が要る。こうした項目は空欄のままにせず、決まらなかったという印と、誰がいつまでに確認するかを書き込みます。印がないと、決まったことと決まっていないことが混ざり、次回に持ち越されたまま本番まで残ります。
相手に見せながら書く
画面共有や手元の紙を相手に見せながら書くと、その場で訂正が入ります。聞き違いや取り違えを後から発見するより、書いている最中に直すほうが速く、相手の側にも確認されているという実感が残ります。特に、目標の文言と範囲の線引きは、見せながら書くと合意が確実になります。
同席者が複数いる初回の進め方
企業の案件では、初回に複数人が同席することがあります。人数が増えると、情報は増えず偏ります。
発言の少ない人にこそ確認する
同席者のうち、実際に本番で話す人が最も発言しないことがよくあります。役職の高い人や依頼の窓口が話し続け、受講者本人は相づちだけで終わる形です。この状態のまま終えると、動機と現在の状態が分からないまま設計に入ることになります。時間配分を共有する段階で、本人に話してもらう時間を明示的に確保しておきます。
意見が割れた場面を記録に残す
同席者の間で、課題の認識が食い違うことがあります。窓口は構成の問題だと言い、現場の管理職は声の届き方だと言う。この食い違いは、どちらが正しいかを初回で決める必要はありません。割れたという事実を記録に残し、議事メモに両方を書いて、優先順位を誰が決めるのかだけを確認します。片方だけを採用して進めると、終了時にもう片方から評価されません。
窓口を一人に絞る
連絡の宛先が複数あると、日程調整と資料共有が二重になり、決定の所在も曖昧になります。初回の終わりに、以降の連絡先を一人に絞ることを提案し、その人の名前を議事メモに書きます。決裁の流れとは別に、日々の連絡の窓口を決めておく作業です。
書面に残す文言の例
口頭の確認は、そのまま書面に写して初めて効力を持ちます。議事メモや見積書に置く文言は、型を決めておくと毎回考えずに済みます。
範囲を書き分ける
含むものと含まないものを、同じ数だけ並べます。「本番で使用する原稿の構成に関する助言を含みます」「スライドの新規作成、および既存資料のデザイン修正は含みません」「本番当日の会場への同行は含みません」。含まないほうを書かずに送ると、書いていないものは含まれると解釈されます。
記録の扱いを書く
「練習中に撮影した映像は、指導期間中の比較のみに使用し、終了後一か月以内に削除します」「第三者への共有は行いません」。この二文があるだけで、録画の同意が得やすくなります。二次利用の可能性がある場合は、その旨と用途を別に書き、同意を個別に取ります。
中止と振り替えの条件を書く
「日程の変更は、開始の二日前までにご連絡ください」「それ以降の変更は、実施したものとして扱います」。期限と扱いの両方を書きます。期限だけを書いて扱いを書かないと、直前の変更が起きたときに毎回相談が発生します。
追加の依頼が出たときの扱いを書く
「合意した範囲を超えるご依頼は、別途お見積りのうえ対応します」。この一文を初回の議事メモに入れておくと、後から資料作成や同行を求められたときに、断るのではなく見積りを出す形に置き換えられます。範囲外の依頼は関係を壊す原因になりやすく、扱いを先に決めておくほど摩擦が減ります。
初回を一枚の手順に落とす
実務の順番に並べ直します。数日前に質問票を送り、既存の資料を読んでおきます。当日は冒頭で時間配分を共有し、七つの質問群を順に通します。次に短く話してもらい、事前に決めた観点で観察します。指摘は一点に絞って伝えます。終了前に、目標、範囲、回数と日程、次回までの宿題の四つを確認します。その日のうちに議事メモを送り、四つの確定事項を先頭に置きます。
この手順を固定しておくと、初回で聞き漏らすことがなくなり、後戻りが消えます。指導の仕事は相手の状態に強く依存するぶん、最初の一回で条件をそろえられるかどうかが、全体の質を決めます。
よくある質問
Q. 初回の打ち合わせにはどのくらい時間を取るべきですか?
聞き取り、実際に話してもらう時間、進め方の説明の三つが入る長さが必要です。目安として60分前後を確保し、開始時に配分を共有します。短くしすぎると条件の確認が終わらず、二回目に持ち越すことになります。持ち越すと、本番までの練習回数が実質的に減ります。
Q. 申し込み者と受講者が別人の場合、誰と打ち合わせすべきですか?
両方と話します。申し込み者からは目的と評価者と予算の枠を、受講者本人からは動機と現在の状態を聞きます。本人と話す時間が取れない条件なら、受注前にその時間を条件として提示します。本人の動機を確認しないまま始めると、宿題が返らず設計が崩れます。
Q. 初回で改善点を伝えないと、相手が不満に感じませんか?
一点だけ伝えます。最も効果が大きい観点を選び、その場で試してもらうと、変化が実感できます。すべてを伝える必要はありません。むしろ多く伝えるほど受け止めきれず、次回までの行動につながりません。残りは記録に残し、順番に扱う旨を説明します。
Q. 目標を具体的にしたがらない相手にはどうしますか?
こちらから候補を三つ提示し、選んでもらう形にします。時間内に話し終える、質疑で詰まらずに答える、原稿を見ずに冒頭を話す。選択肢があると、抽象的な希望が具体的な形に落ちます。それでも決まらない場合は、初回の観察をもとにこちらが案を作り、次回の冒頭で合意を取ります。
Q. 議事メモはどこまで詳しく書くべきですか?
確定事項の四つを先頭に置き、聞き取った内容の要約と観察した事実を続けます。分量より、読む相手が確認しやすい順番が重要です。評価の言葉ではなく事実で書くこと、相違があれば連絡してほしい旨を添えることの二点を守れば、長さは一枚に収まる程度で足ります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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