事業計画作成支援の実績の見せ方|出せない仕事をどう伝えるか


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この記事のポイント
- ✓事業計画作成支援の実績の見せ方を
- ✓守秘義務で公開できない案件をどう伝えるかという観点から整理しました
- ✓実績がない段階での代替策
事業計画作成支援という仕事には、構造的な矛盾があります。仕事の質を証明する最大の材料が、まさに公開できない情報でできているという矛盾です。融資の申込書類、資金繰り表、取引先の一覧、創業者の自己資金の内訳。どれも依頼者にとっては外に出したくないものばかりで、そのまま実績として並べることはできません。
事業計画作成支援の実績の見せ方で悩む人の本当の困りごとは、「実績がない」ことではなく「実績はあるが出せない」ことです。ここを混同したまま対策を考えると、方向を間違えます。この記事では、出せないものと出せるものを法的な観点で仕分ける手順、依頼者から掲載の許諾を得る具体的な進め方、まだ案件が少ない段階での代替策、そして書いてはいけない表現までを整理します。これ、知らない人が本当に多いところです。
実績が出せなくなる理由を法的に分解する
「なんとなく出しづらい」で止まっていると、出せるはずのものまで出せなくなります。何が根拠でどこまで制限されるのかを分けて考えます。
秘密保持義務が及ぶ範囲
事業計画作成支援では、業務委託契約書の秘密保持条項か、独立したNDA(エヌディーエー)で守秘の範囲が決まります。多くの契約書では、業務の過程で知り得た情報全般が秘密情報とされ、事業者名だけでなく、事業内容、財務数値、経営者の個人的事情まで含まれます。
ここで確認すべきなのは三点です。秘密情報の定義に何が含まれるか、義務の存続期間はいつまでか、例外規定があるか。つまり、契約が終わっても義務は残るのが普通で、期間の定めが「契約終了後3年」なのか「無期限」なのかで、書ける時期が変わります。例外規定として「相手方の書面による事前の承諾を得た場合」が入っていれば、許諾さえ取れば公開できます。ここが実務上の突破口になります。
契約書を交わしていない口約束の案件でも、義務がないわけではありません。商慣習上、依頼者が秘密にしていると合理的に期待できる情報を外に出せば、信義則上の問題になります。契約書がないことは、免罪符ではなく、むしろ範囲が不明確という危険な状態です。
依頼者名を出せなくても書けるものがある
秘密保持の対象になるのは、依頼者を特定できる情報と、依頼者が秘密として扱っている情報です。逆に言えば、依頼者を特定できず、かつ一般的な知識に還元された記述は、原則として書けます。
たとえば「都内の飲食店の創業案件で、公庫向けの創業計画書の作成を支援した」という記述と、「A市のB町にある居酒屋C店のオーナーD氏の融資を支援した」という記述では、法的な意味がまるで違います。前者は業種と地域の粒度が粗く、特定に至りません。後者は特定情報そのものです。実績の見せ方の技術は、この粒度をどこまで粗くすれば特定を避けられるかを判断するところにあります。
独占業務との線引きを誤ると別の問題になる
事業計画作成支援に関連して、実績の書き方で法的な問題が生じやすいのが、士業の独占業務との関係です。税務代理や税務書類の作成は税理士、官公署に提出する書類の作成は行政書士、登記は司法書士の業務です。資格を持たない人が「補助金の申請書類を作成しました」「税務署への届出を代行しました」と実績に書くと、実際にやっていなくても、やったと受け取られる表示になります。
安全な書き方は、自分がやった行為を正確に動詞で書くことです。「事業計画のヒアリングと構成案の作成を担当」「財務モデルの作成を支援」「文章の推敲を担当」。動詞を正確にすると、資格の壁を越えずに貢献を伝えられます。※どこまでが独占業務に当たるか判断に迷うケースでは、各士業会の相談窓口や弁護士に確認してください。
出せるものと出せないものを仕分ける四段階
実績の開示は、ゼロか百かではありません。段階に分けて、案件ごとにどの段階まで出せるかを決めます。
段階1 業種と支援内容だけを書く
最も安全な段階です。「小売業の新規出店にあたる事業計画の作成支援」「BtoBのサービス業で、既存事業の再構築に関する計画書作成を担当」といった書き方をします。依頼者の特定につながる要素を全部落とし、自分が何をしたかだけを残します。
この段階でも、読み手が知りたいことの半分は伝わります。依頼者が知りたいのは「自分と似た状況の案件を扱ったことがあるか」なので、業種と支援内容が合っていれば、それだけで検討の対象になります。契約上の許諾が取れない案件は、全部この段階に置きます。
段階2 状況と打ち手を匿名化して書く
一段深く、案件の構造まで書く段階です。「創業前で決算書がなく、根拠となる数値をゼロから積み上げる必要があった案件で、市場データと同業の公開情報から売上の前提を組み立てた」といった記述になります。
匿名化の実務では、次の要素を必ず加工します。事業者名、屋号、代表者名、所在地の市区町村、創業年月、金額の実額、取引先名、従業員数の実数、業界内で一社しか該当しないような特徴。特に最後の要素が見落とされがちです。「国内で唯一の技術を持つ製造業」と書けば、業界の人には特定されます。地域と業種と規模の三つが揃うと、狭い業界では一意に定まってしまうので、どれかを落とします。
段階3 依頼者の許諾を得て具体的に書く
許諾が取れれば、業種、規模、目的、結果まで書けます。ここまで来ると実績としての説得力は大きく変わります。許諾は口頭ではなく、書面かメールなど記録の残る形で取ります。
依頼者に許諾を求めるのは気が引けるという声をよく聞きますが、依頼者側にも掲載する動機があることは意外と知られていません。取引先として名前が出ることが信用になる場合や、事業の露出そのものが宣伝になる場合です。頼み方については後述します。
段階4 依頼者名まで出す
最も強い段階で、依頼者が事例紹介への協力に同意した場合に限られます。この場合は、掲載する文面そのものを依頼者に確認してもらい、修正を反映してから公開します。事後の削除依頼にも応じる旨を伝えておくと、依頼者は同意しやすくなります。
四段階のどれを使うかは案件ごとに決め、その判断を記録に残します。何年か経って記憶が薄れたとき、どの案件がどこまで出せるかが分からなくなるのを防ぐためです。
依頼者に掲載の許諾を取る具体的な手順
許諾取りは、実績を増やすうえで最も効率のよい作業です。断られても失うものはなく、通れば一気に段階が上がります。
頼むタイミングは納品直後が最も通る
許諾を求めるのは、成果物を納品して依頼者が満足している時点が最も通ります。融資が実行された、補助金が採択された、社内の稟議が通ったという結果が出た直後は、依頼者の心理的なハードルが最も低い時期です。
逆に、案件が終わって数か月経ってから連絡すると、依頼者は身構えます。用件が実績掲載だけの連絡は唐突に見えるためです。納品時のやり取りの流れで自然に切り出すのが実務的です。
頼み方の型
依頼のメールは、掲載する内容を先に示してから許諾を求めるのが基本です。「掲載してよいですか」と抽象的に聞くと、依頼者は最悪のケースを想像して断ります。実際の文面案を添えて「この範囲であればいかがでしょうか」と聞くと、判断が具体的になります。
文面の骨組みは次のとおりです。まず今回の案件のお礼を述べ、次に実績として紹介させていただきたい旨を伝え、掲載予定の文面をそのまま貼り、社名や金額を伏せた形であること、掲載後もいつでも取り下げに応じることを明記して、可否の返信を求めます。
三つの選択肢を示す方法も有効です。社名を出して掲載、業種のみで匿名にして掲載、掲載しない。選択肢があると、依頼者は「掲載しない」以外を選びやすくなります。全部を断られるより、匿名なら可という答えが返ってくる確率が上がります。
許諾の記録を残す
返信メールをそのまま保存し、案件の記録に紐づけます。何を、どの範囲で、いつ許諾されたかが後から確認できる状態にします。担当者が交代した後で「聞いていない」と言われる事態を防ぐためです。
依頼者側の担当者が許諾を出す権限を持っているかも、軽く確認しておきます。大きな組織では広報部門の確認が必要な場合があり、担当者の独断で出した許諾が後で問題になることがあります。
実績が少ない、または全部出せない段階での見せ方
案件の記録がまだ薄い段階でも、能力を伝える方法はあります。実績の代わりに置けるものを並べます。
手順そのものを公開する
事業計画作成支援を依頼する側が最も不安に思うのは、何をどう進めるのかが分からないことです。だから、進め方を公開するだけで不安の大半が解消されます。初回のヒアリングで何を聞くか、資料をどう受け取るか、何回のやり取りでどこまで仕上げるか、修正はどう扱うか。
この手順書は、実績よりも読まれます。過去の案件を並べたページよりも、「自分の場合はこう進むのか」が分かる説明のほうが、依頼の判断材料になるからです。しかも手順の公開は誰の秘密も侵しません。
実在しない架空の案件でサンプルを作る
自分で架空の事業を設定し、その事業計画書を一式作ってサンプルとして公開する方法があります。飲食店の創業、ECサイトの立ち上げ、既存製造業の新規事業。読み手が想像しやすい題材を選びます。
注意点が一つあります。サンプルであることを明記することです。架空の事例を実績と誤認させると、優良誤認にあたる表示になり得ます。「サンプルとして作成した架空の事例です」と冒頭に書き、実在の企業とは無関係である旨を添えます。この一行があるかないかで、法的な評価は変わります。
素材を配って判断材料にしてもらう
ヒアリングシート、資料のチェックリスト、財務パートの前提を整理する表。実務で使っている道具を汎用化して配ると、支援の質が具体的に伝わります。道具の設計を見れば、どこまで細かく考えている人かが分かるからです。
配布物の質は、案件の件数よりも雄弁なことがあります。特に初めて事業計画書を作る依頼者にとっては、道具そのものが価値なので、そこから相談につながる流れが生まれます。
制度の更新に追いついていることを示す
補助金の公募要領は毎回変わり、融資制度も改定されます。制度の変更点を自分の言葉で整理して発信していると、実務に触れ続けていることの証拠になります。案件の実績を出せない代わりに、制度の理解の深さで代替する方法です。
情報源は一次情報に当たります。制度や統計は中小企業庁や経済産業省の公開資料で確認でき、そこを起点に整理すれば、内容の正確性も担保できます。
実績を書く型と、書き方の失敗例
出せる範囲が決まったら、次は書き方です。同じ内容でも書き方で伝わり方が大きく変わります。
課題、制約、打ち手、結果の四つで書く
一件の実績は、次の四つで構成すると読みやすくなります。依頼者が置かれていた状況、その案件特有の制約、自分が取った打ち手、そしてどうなったか。
多くの人が打ち手だけを書きます。「事業計画書の作成を担当しました」では、誰が書いても同じ文章になります。制約を書くと個別性が出ます。「創業前で決算実績がなく、設備の見積もりも未確定という段階での着手だった」という一文があると、その案件の難度が伝わります。
結果は、書ける範囲で具体的に書きます。融資が実行された、採択された、社内で承認された。金額を出せない場合は、金額を書かずに結果の事実だけを書きます。「希望していた資金調達が実行された」で十分に伝わります。
数字が書けないときの代替表現
金額や件数を出せない案件では、数字の代わりに次の要素で具体性を作ります。期間、工程の数、扱った書類の種類、想定していた読み手、直面した論点。「公募の締切まで2週間という条件で、公募要領の審査項目に沿って構成をゼロから組み直した」という記述には、金額が一つも出てきませんが、内容は十分に具体的です。
融資審査を通す書類の作り方について、次のような指摘があります。
金融機関の融資審査を通過するために重要なことは、例文をコピペするのではなく、自身の経験に基づいた独自の強みを客観的な数字で裏付けることです。 出典: biz.moneyforward.com
これは事業計画書の書き方についての指摘ですが、支援者自身の実績の書き方にもそのまま当てはまります。テンプレート的な自己紹介ではなく、自分が実際に扱った状況を、出せる範囲の事実で裏付ける。依頼者を説得する構造と、自分を説得材料にする構造は同じです。
避けるべき書き方
第一に、成果を誇張する表現です。「採択率100%」のような表示は、母数が数件でも数字としては嘘ではないかもしれませんが、読み手に実際より高い実力を想起させるおそれがあり、表示のルールとして問題になり得ます。母数を併記しないまま率だけを出すのは避けます。
第二に、他人の成果物を自分の実績として見せることです。チームで関わった案件で、自分の担当外の部分まで含めて実績として語ると、後で発覚したときの損失が大きくなります。「担当範囲は構成案の作成と財務パートのレビュー」というように、範囲を明示します。
第三に、依頼者が特定できる書き方です。本人は匿名化したつもりでも、業種と地域と時期が揃えば、業界の人には分かってしまいます。公開前に「この文章から依頼者が特定できるか」を、業界の外の人ではなく、業界の中の人の視点で見直します。
第四に、資格が要る行為をしたと読める表現です。前述のとおり、動詞を正確にすることで回避できます。
見せる場所ごとの使い分け
同じ実績でも、置く場所によって最適な形が変わります。
プロフィールや紹介ページ
ここでは網羅性より一貫性が大事です。扱ってきた案件の種類を三つから五つの類型に整理し、それぞれ一行ずつ書きます。数十件を羅列するより、類型が整理されているほうが、読み手は自分がどれに当てはまるかを判断できます。
支援の進め方、対応できる範囲、対応できない範囲も同じページに置きます。できないことを書いてあるページは信用されます。逆に、なんでもできると書いてあるページは判断材料になりません。
提案文や見積もりの添付
案件に応募する際の提案文では、相手の状況に最も近い実績を一つか二つに絞ります。全部を貼るのは逆効果です。読み手は自分の案件との距離を測っているので、遠い事例が並ぶほど焦点がぼやけます。
提案文には、実績に加えて「今回の案件でどう進めるつもりか」を短く書きます。過去の話より、これからの話のほうが、判断には効きます。
打ち合わせの場での説明
対面やオンラインの打ち合わせでは、文章では書けない範囲まで口頭で説明したくなりますが、ここが最も事故が起きやすい場面です。話の流れで具体的な社名や数字を出してしまうと、記録は残りませんが義務違反は成立します。
打ち合わせでも、書けない情報は話しません。その代わり、判断の過程を詳しく話します。「こういう制約があるときは、この順番で組み立てます」という話し方は、秘密を漏らさずに実力を示せます。固有名詞を伏せたまま、制約の種類と打ち手の順序だけを語る形に整えておくと、どの案件の話をしていても同じ説明で通せます。
実績を残すための案件記録の作り方
実績の見せ方を考える前に、そもそも記録が残っていないと何も書けません。案件が終わった直後に、次の項目を書き残す習慣を作ります。
業種と事業の概要、支援の目的、着手時点の状況、自分の担当範囲、直面した論点と判断、成果物の一覧、結果、期間、開示できる段階の判定、許諾の有無。この十項目を一枚にまとめておけば、数年後でも実績として書き起こせます。
記録を取るタイミングは、案件が終わった当日か翌日です。時間が空くと、判断の理由が思い出せなくなります。成果物そのものは残っていても、「なぜこの構成にしたのか」「どこで方針を変えたのか」という過程は記憶からしか取り出せません。実績として書くときに読み手を動かすのは、まさにその過程の部分なので、成果物のファイルだけを保存して満足しないようにします。
記録の形式は凝る必要がありません。案件ごとに一枚のテキストファイルを作り、十項目を上から埋めるだけで十分です。重要なのは形式ではなく、全案件について同じ項目が埋まっていることです。項目が揃っていれば、後から類型別に並べ替えたり、条件で絞り込んだりできます。案件ごとにばらばらの書き方をしていると、いざ実績ページを作る段になって、一件ずつ読み返す羽目になります。
記録は依頼者の情報を含むため、保管にも配慮が必要です。パスワードで保護する、共有ドライブに置くなら権限を絞る、契約で定めた保存期間を過ぎたら削除する。個人情報や機微情報の取り扱いの基本については、公的機関が公開している解説が参考になります。記録の管理が甘い支援者に、依頼者は財務情報を預けたいとは思いません。
依頼者は実績のどこを見ているか
書く側の都合だけで整えても、読まれる場所がずれていれば意味がありません。依頼する側が実績のどこを見ているのかを、選び方の視点から整理します。
自分と同じ状況を扱ったことがあるか
依頼者が最初に探すのは、実力の証明ではなく類似性です。創業前なのか既存事業なのか、融資なのか補助金なのか、業種は近いか。この三点が合っていれば、件数が少なくても検討の対象に入ります。逆に、件数を並べていても類似性が読み取れない実績は、素通りされます。
だから実績の並べ方は、時系列ではなく類型別にします。「創業融資向け」「補助金申請向け」「既存事業の再構築向け」といった見出しを立てて、その下に該当する案件を置く。依頼者は自分に該当する見出しだけを読むので、探す手間が消えます。おすすめできない並べ方は、新しい順に全件を羅列する形式です。読み手が自分で分類する作業を強いることになります。
動機と経験の整合性が語れているか
事業計画書の審査でも、支援者の実績の評価でも、共通して見られているのは経験と現在の活動のつながりです。この点について、創業計画書の書き方を扱った解説に次の指摘があります。
創業動機・目的の項目では、「なぜこの事業を始めるのか」という熱意と、自身の経験との整合性を伝えます。融資担当者は、創業者の実体験が事業にどう活かされるかを重視します。未経験分野であっても、関連する実績や熱意を論理的に結びつけることが重要です。 出典: biz.moneyforward.com
支援者の自己紹介にも同じ構造が使えます。なぜ事業計画作成支援をやっているのか、前職や学んだことがこの仕事にどうつながっているのか。案件の実績が薄い段階では、この整合性の説明が実績の代わりとして機能します。未経験分野であっても関連する経験を論理的に結びつければよいという点は、支援者自身にも当てはまります。
使っている道具と進め方が具体的か
意外に効くのが、使用しているツールを書くことです。財務パートを表計算ソフトで作るのか専用のツールを使うのか、資料の受け渡しに何を使うのか、オンライン会議の環境はどうか。依頼者にとっては、自分の環境と合うかどうかの判断材料になります。会計データの受け渡しでは、依頼者がfreeeやマネーフォワードのようなクラウド会計を使っている場合があり、そこから出力できる形式に対応できるかどうかは実務上の分かれ目になります。
ツールの記載には副次的な効果もあります。道具の名前を具体的に書ける人は、実際に手を動かしている人だと伝わります。抽象的な言葉だけで構成された紹介文との差はここに出ます。
無料の相談窓口と比べられている前提を持つ
依頼者は、商工会議所や自治体の創業支援窓口、認定支援機関の初回相談といった無料の選択肢と比較しています。無料の窓口は費用がかからないというメリットがある一方、順番待ちがある、担当者によって対応の質が変わる、書類の作成そのものは自分でやる必要があるといったデメリットがあります。
有料の支援者に期待されているのは、この差を埋めることです。だから実績の見せ方でも、「どこまで手を動かすか」を明示するのが有効です。相談に乗るだけなのか、原稿まで書くのか、締切の管理まで引き受けるのか。無料の窓口では得られない部分を具体的に書けば、比較の土俵で位置づけが明確になります。
現場から見た実績の伝わり方
在宅・業務委託の市場を20年運営してきた立場から見ると、継続して依頼を受けている人の実績ページは、意外なほど地味です。派手な成果を並べるのではなく、扱える範囲と進め方が正確に書いてあるだけのことが多い。依頼する側は、すごい人を探しているのではなく、自分の案件を任せて大丈夫な人を探しているからです。
もう一つ、運営者として見てきた限りでは、実績を出せない仕事ほど、関係が長く続く傾向があります。財務情報や経営の内側に触れる仕事は、依頼者にとって相手を変えるコストが高く、一度信頼した相手に継続して頼むようになるためです。中間に仲介が入らず依頼者と直接つながる取引では、依頼者は同じ予算でより多くの相談ができ、受け手の手取りも厚くなります。手数料0%の直接取引が効くのは、金額の差だけではありません。長く続く関係のなかで、実績として外に出せない仕事が積み上がっていくとき、その積み上げがそのまま次の依頼につながる構造になるからです。
こうした「外に出しにくい仕事」は事業計画作成支援に限りません。たとえばAIコンサル・業務活用支援のお仕事は、企業の内部データや業務フローに触れるため、支援内容を公開できないことが多く、実績の見せ方の課題がそのまま重なります。同じくAI・マーケティング・セキュリティのお仕事の領域、特にセキュリティに関わる仕事では、実績を詳しく書くこと自体が依頼者のリスクになるため、匿名化の技術が必須になります。
文書そのものの完成度で評価される仕事という点では、書類作成の基礎を体系的に押さえておく価値があります。ビジネス文書検定は社外文書の構成や表現のルールを扱う検定で、実績紹介の文章を含め、外に出す文章の精度を上げるのに役立ちます。文章を書いて対価を得る職種の市場感については、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で周辺職種の位置づけを確認できます。
経験を重ねてから独立して支援側に回る流れも、この分野では一般的です。長い実務経験を持つ人が独立する際の論点は定年後のフリーランス独立|退職金を活かした起業プランと注意点で整理されており、経験そのものを実績としてどう提示するかという問題は、事業計画作成支援の実績の見せ方と地続きです。
出せない仕事をどう伝えるかという問いへの答えは、結局のところ一つです。出せない部分を無理に出そうとせず、出せる部分の精度を上げる。何をどこまでやったのかを正確な動詞で書き、判断の過程を見せ、進め方を公開する。守秘義務を守る姿勢そのものが、次の依頼者にとっては最大の安心材料になります。秘密を守る人だと分かるから、自分の秘密も預けられる。法律上の義務は、あなたを縛るものであると同時に、あなたを選ぶ理由にもなります。
よくある質問
Q. 守秘義務があると実績は一切書けないのですか?
書けます。制限されるのは依頼者を特定できる情報と、依頼者が秘密として扱っている情報です。業種、支援の内容、直面した論点、自分の担当範囲は、粒度を粗くすれば書けます。契約書の秘密保持条項に「相手方の事前の承諾がある場合」という例外が入っていれば、許諾を取ることで具体的な記載も可能になります。まず契約書の定義と例外規定を確認してください。
Q. 依頼者に実績掲載の許諾を頼むタイミングはいつがよいですか?
納品直後、依頼者が結果に満足している時点が最も通ります。融資の実行や補助金の採択といった結果が出た直後は心理的なハードルが低く、やり取りの流れで自然に切り出せます。数か月後に掲載だけの用件で連絡すると唐突に見えて断られやすくなります。掲載予定の文面を先に示して可否を聞くのが基本です。
Q. 実績がまだない段階では何を見せればよいですか?
支援の進め方そのものを公開するのが最も効果的です。初回に何を聞くか、資料をどう扱うか、何回のやり取りで仕上げるか、修正をどう扱うか。依頼者の不安の大半は手順が分からないことに由来します。あわせてヒアリングシートやチェックリストを配ると、道具の設計から実力が伝わります。架空事例のサンプルも有効ですが、架空であることを必ず明記します。
Q. 匿名化はどこまでやれば安全ですか?
事業者名、代表者名、市区町村レベルの所在地、創業年月、金額の実額、取引先名、従業員数の実数を落とします。加えて、業界内で一社しか該当しない特徴も外します。業種と地域と規模が揃うと、狭い業界では特定されます。公開前に、業界の外ではなく業界の中の人の視点で読み直し、特定できるかどうかを確認してください。
Q. 実績の書き方でやってはいけない表現はありますか?
母数を書かずに採択率だけを示すこと、チームで関わった案件を自分一人の成果として書くこと、依頼者が特定できる書き方、そして資格が必要な行為をしたと読める表現です。特に最後は重要で、税務書類の作成や官公署への提出書類の作成は独占業務にあたります。自分が実際にやった行為を正確な動詞で書けば回避できます。判断に迷う場合は各士業会や弁護士に確認してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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