楽譜作成・作詞の実績の見せ方|出せない仕事をどう伝えるか


この記事のポイント
- ✓楽譜作成・作詞 実績の見せ方を
- ✓守秘義務や権利の都合で公開できない仕事にどう対処するかを軸に解説
- ✓工程の公開という3つの手段と
楽譜作成・作詞の実績の見せ方で行き詰まる原因は、実績が足りないことではありません。手がけた仕事の多くが、名前を出せない、譜面そのものを見せられない、という制約を抱えているからです。採譜した譜面は依頼者のもの、書いた詞は権利ごと渡している、そもそも公開前の楽曲だから触れられない。この状態で「実績を見せてください」と言われると、何も出せないように感じます。
結論から書くと、出せない仕事は出さないまま伝えられます。譜面や詞の依頼者が実績で見ているのは、有名な仕事をしたかどうかではなく、自分の依頼を任せられるかどうかです。判断材料になるのは、記譜の読みやすさ、対応できる編成の幅、やりとりの正確さ。この3点は、公開できない案件からでも取り出せます。この記事では、出せない仕事の伝え方と、見せる作品そのものの作り方を、順に整理します。
実績が求められる場面が増えている背景
譜面や詞の仕事は、以前は紹介や口伝えで回っていました。演奏の現場でつながった人から頼まれる、教室の生徒の保護者から相談される、という形です。この経路では実績の提示はあまり求められません。相手はすでに人となりを知っているからです。
いまは在宅で募集を探して応募する経路が広がり、面識のない相手とやりとりする機会が増えました。すると、判断材料は提出された情報だけになります。応募者が何人も並ぶ状況では、実績が整理されているかどうかが、そのまま選考の結果に直結します。
もう一つの変化は、依頼者側の目が肥えたことです。楽譜作成ソフトが無料で使えるようになり、依頼者自身が試しに触ってみることも増えました。その結果、「ソフトに入力すれば誰でも作れる」と思われる場面と、「自分でやってみたら全然きれいにならなかった」と気づかれる場面の両方が生まれています。後者の依頼者にとって、読みやすく整った譜面は明確な価値です。だからこそ、見せるべきは技術の難しさではなく、仕上がりの整い方になります。
出せない理由を種類で分けると、対処法が変わる
「実績を出せない」とひとまとめにしている人が多いのですが、理由によって取れる手段はまったく違います。まず自分の案件がどれに当たるのかを仕分けます。
契約で公開を禁じられているもの
秘密保持契約を結んでいる場合、案件の存在自体に触れられないことがあります。この種の制約は最も強く、抽象化してもなお違反になる場合があります。判断に迷うなら契約書の条項を読み返し、それでも不明なら依頼者に確認します。確認すること自体は失礼ではありません。むしろ、勝手に判断して公開するほうがはるかに危険です。
権利が相手側にあるもの
譜面を納品して著作権を譲渡した、詞を買い取りで渡した。この場合、成果物そのものを自分の作品として掲示することはできません。ただし、「その案件に関わった」という事実まで禁じられているとは限りません。契約書に公開禁止の条項がなければ、依頼者に一言確認したうえで、事実だけを書けることがあります。
まだ公開されていないもの
制作中の楽曲や、発表前の演奏会の譜面がこれに当たります。永久に出せないわけではなく、公開後であれば掲示できる可能性があります。納品時に「公開後に実績として紹介してよいか」を聞いておくと、時間を置いて使えるようになります。この一言を納品メールに入れる習慣をつけるだけで、数か月後の手札が増えます。
出せるが、見せる意味が薄いもの
意外と多いのがこれです。公開してよい仕事なのに、内容が地味で見せどころがない。この場合は、無理に並べるより、後述する「再現サンプル」を作ったほうが効果が高くなります。実績の数を増やすことと、判断材料を提供することは別の話です。
出せない仕事を伝える4つの型
種類が分かったら、伝え方を選びます。型は次の4つです。組み合わせて使います。
型1. 固有名詞を外して、条件だけを書く
最も汎用性が高い方法です。「誰の」「何という曲か」を外し、「どんな条件の仕事だったか」だけを残します。
たとえば「アマチュア合唱団の演奏会用に、混声4部の音源から総譜とパート譜を制作。納期2週間、PDF納品」という書き方です。曲名も団体名も出ていませんが、依頼者が知りたいことはほぼ揃っています。編成、素材、成果物、納期。この4点が並んでいれば、自分の依頼が受けられるかどうかを判断できます。
注意点は、条件を具体的に書きすぎて特定できてしまう状態を避けることです。日付、地名、曲の特徴を細かく書くと、関係者には誰の案件か分かってしまいます。抽象化の程度は、契約の厳しさに合わせて調整します。
型2. 同等の題材で、自分の作品を作る
守秘の縛りがきつい場合に最も確実なのがこれです。実際の案件と同じ種類の作業を、自分で用意した題材でもう一度やって、それを見本にします。著作権の切れた古典的な楽曲を採譜する、自分で作ったメロディに詞をつける、既存の簡易な譜面を演奏用に組み直す。
この方法の利点は、守秘に一切触れないことと、見せたい要素を自分で設計できることです。実案件は依頼者の都合で作られているので、必ずしも自分の強みが出るとは限りません。見本用なら、パート譜の切り出しやページめくりの処理といった、見せたい技術を意図的に含められます。
型3. 成果物ではなく、工程を見せる
完成した譜面を出せなくても、どういう手順で作るかは公開できます。素材を受け取ってから納品までの流れ、確認する項目、修正のやりとりの進め方。これを文章と図で示すと、依頼者にとっては作品と同じかそれ以上の判断材料になります。
譜面の仕事で依頼者が最も不安に思うのは、途中経過が見えないことです。工程が示されていれば、その不安が減ります。実務では、この工程の説明が受注を決める場面が少なくありません。
型4. 依頼者の言葉を借りる
納品後に「読みやすかった」「本番で使いやすかった」といった感想をもらったら、掲載してよいか確認します。団体名を伏せて「合唱団の指揮者の方より」といった形にすれば、多くの場合は許可が得られます。第三者の言葉は、自分でどれだけ説明するより強く働きます。
許可を取る手間を惜しまないことです。無断で載せるのは論外ですが、聞けば断られない場面も多い。聞かない人が多いだけです。
見せる作品は、完成度より読みやすさで選ぶ
出せる作品を用意できたとして、次はどれを見せるかです。ここで多くの人が誤解しています。凝った譜面、難しい編成、装飾の多いレイアウト。こういうものを選びがちですが、依頼者が見ているのはそこではありません。
依頼者が最初に確認しているのは読みやすさ
譜面を受け取る人は、演奏者に渡す立場です。だから真っ先に見るのは、その譜面が実際に演奏の現場で使えるかどうかです。音符が詰まっていないか、記号が読み取れるか、ページのどこでめくることになるか。これらは音楽の知識がなくても、開いた瞬間に分かります。
逆に言えば、技術的に高度なことをしていても、読みにくければ評価されません。見せる作品を選ぶときは、自分が難しいと思ったものではなく、開いた瞬間に整って見えるものを選びます。
読みやすさを構成する要素を、意識的に作り込む
見本として出す譜面では、次の点を意図的に整えます。段の間隔が均等であること。小節の幅が音符の密度に応じて調整されていること。強弱記号や発想記号の位置が揃っていること。歌詞が音符の真下に配置され、音節の切れ目が正しいこと。ページの切り替わりが、演奏者が手を離せる位置にあること。
これらは地味ですが、演奏者からすると使い勝手を決定づける部分です。そして、依頼者はこの差を言葉にできなくても、感覚として受け取ります。
演奏の実感と記譜の関係については、オーケストラの譜面制作を扱った解説が観察の姿勢を示しています。
実際に聞こえてくる音と楽譜上のアーティキュレーションの関係がどうなっているのかを観察することで、徐々にイメージが湧くようになっていくはずです。 出典: kensukeinage.com
聞こえる音と、紙の上の記号の対応を意識して譜面を作っているかどうかは、成果物に表れます。見本を作るときは、書き終えたあとに必ず再生して、記号と音の整合を確認します。この一手間があるかないかが、読みやすさの差になります。
型の違う3点にそろえる
見せる作品は、数を増やすより種類を分けたほうが効きます。用意するのは3点です。単旋律とコードだけの簡素なもの。伴奏付きのもの。複数パートのもの。この3つがあれば、たいていの依頼はどれかに近い形になり、依頼者は自分の案件を重ねて想像できます。
同じ型のものを10点並べるより、違う型を3点並べるほうが、対応範囲が広いという情報が伝わります。ここはデータとロジックの話で、センスの問題ではありません。
作詞は、完成品より過程を見せる
詞は、完成形だけを見せてもうまく伝わりません。読み手には「なぜこの言葉なのか」が見えないからです。作詞の見本では、与えられた条件、そこから立てた方向性、そして完成した詞をセットで示します。
条件は「合唱曲、卒業をテーマに、明るすぎない」といった形で構いません。方向性は、選んだ視点や避けた表現を短く書きます。この過程が見えると、依頼者は「この人に自分の条件を渡したらどう料理されるか」を想像できます。詞そのものの巧拙より、条件を受け止めて形にする力が伝わるほうが、依頼につながります。
複数案を出す仕事が多いなら、同じ条件から異なる方向で書いた2案を並べて見せるのも有効です。引き出しの数が可視化されます。
見本に使う題材の選び方
再現サンプルを作るとき、題材の選び方でつまずく人がいます。判断の順序を決めておくと迷いません。
まず、その曲の著作権の保護期間が終わっているかを確かめます。作曲者と作詞者で没年が違えば、詞だけが保護されている状態もあります。歌詞を扱う見本では、両方を別々に確認します。
次に、参照する音源の権利を確かめます。楽曲そのものの保護期間が終わっていても、演奏や録音には別の権利が働きます。市販の音源を採譜の素材にして、そのまま音と譜面を並べて公開するのは避けます。素材が要るなら、自分で演奏して録音するか、権利者が利用を認めている音源を使います。
編曲を含む見本では、どこまでが原曲で、どこからが自分の判断かを添え書きします。編成を変えた、難易度を下げた、繰り返しを整理した。この説明があると、依頼者は自分の要望と重ねて読めます。
海外の曲を扱う場合は、国によって保護期間の考え方が違います。判断がつかないものは題材から外し、確実に扱えるものだけで型の違う3点をそろえます。見本は数を競うものではないので、迷う題材を無理に入れる意味はありません。
題材を決めたら、選んだ理由を1行だけ添えておきます。なぜその曲を選んだのかが書かれていると、見る側は作った人の判断の基準を読み取れます。作品そのものより、この1行が効く場面があります。
実績を置く場所を整える
作品が揃っても、置き方が悪ければ見てもらえません。
一覧の構成は、条件が先、作品が後
ページを開いた人が最初に知りたいのは、この人は何ができるのかです。対応できる編成、使えるソフト、出せる形式、標準的な納期。これを最初に置き、その後に作品を並べます。作品から始めると、見る側は自分に関係があるかどうかを判断できないまま眺めることになります。
PDFは、開かせる前に中身を見せる
譜面をPDFで置く場合、リンクを踏まないと中身が見えない状態にしないことです。冒頭ページの画像を並べ、その下にPDFへのリンクを置きます。画像で読みやすさが伝われば、そこで判断が終わることも多い。
ファイル名にも気を配ります。無題や連番のファイル名は、それだけで管理が雑な印象を与えます。編成と種別が分かる名前にしておきます。
音を添えると、譜面の説得力が上がる
楽譜作成ソフトの再生機能で書き出した音を、譜面と一緒に置きます。演奏として上手である必要はありません。譜面のとおりに音が鳴ることが確認できればよく、それだけで「この譜面は正しく打ち込まれている」という証明になります。
学び続けている姿勢は、それ自体が材料になる
実績が薄い段階では、何を学んでいるかも判断材料になります。作曲や編曲の学習環境は整ってきており、オンラインで体系的に学べる講座も一般的になりました。
「作曲・DTMを学びたいけどレッスンに通う時間がない...」そんな方でも、ご自宅や外出先で本格的に学べます。プロの現場で使われる実践テクニックを動画で学び、曲作りのクオリティが一気にレベルアップ! 出典: kensukeinage.com
在宅で学べる環境があるということは、裏を返せば、学んでいること自体は差別化になりにくいという意味でもあります。だから、講座を受けたという事実ではなく、そこで作ったものを見せます。学習の証明ではなく、成果物が判断材料です。
依頼の種類ごとに、見せるべき実績は変わる
同じ「楽譜作成」でも、依頼の種類によって依頼者が確かめたい点が違います。全部を1つのページに並べるより、種類別に見せ方を用意したほうが刺さります。
採譜の依頼に対しては、素材の悪条件を見せる
音源から譜面を起こす仕事で問われるのは、聞き取りの精度です。ここで有効なのが、条件の悪い素材を扱った例を見せることです。楽器が重なって聞こえる箇所、テンポが揺れている箇所を、どう処理したかを短く添えます。きれいな音源から起こした譜面は誰でも作れますが、難しい素材を扱えることは差別化になります。
素材そのものを公開できない場合は、自分で録音した演奏を素材にして採譜し、その音源と譜面を並べて置きます。素材と結果の両方を見せられるので、聞き取りの精度が直接伝わります。
浄書の依頼に対しては、変換前後を並べる
手書き原稿や不揃いな譜面を整える仕事では、変換前と変換後の対比が最も分かりやすい材料です。元が公開できないなら、自分で乱雑な手書き譜を書き、それを清書した例を作ります。読みにくい状態から読みやすい状態へ移った差が視覚的に伝わり、説明がほとんど要らなくなります。
編曲を含む依頼に対しては、音で聞かせる
編曲は紙だけでは判断できません。書き出した音源を添えて、原曲の骨格をどう変えたかを短く説明します。難易度を下げたアレンジ、編成を変えたアレンジなど、目的の違うものを並べると、依頼者は自分の要望に近い例を見つけられます。
作詞や、映像向けの依頼に対しては、条件適合力を見せる
作詞や映像用の楽曲まわりでは、制約の中で成立させる力が問われます。文字数の制限、音数の制限、避けたい表現の指定。こうした条件を自分で設定し、その条件で書いたものを見せます。制約が明示されていると、読み手は「条件を守れる人だ」と判断できます。
応募文の中で、実績をどこに置くか
実績をまとめたページを作っても、応募文の中でうまく提示できなければ届きません。譜面の依頼は応募が集まりやすく、依頼者は一件あたり短時間しか読みません。
冒頭で、自分がその依頼のどの部分に対応できるかを一文で書きます。次に、その依頼と最も近い型の作品を1点だけ挙げ、リンクを添えます。全部を見せようとしないことが重要です。10点並べたリンクは読まれませんが、1点に絞ったリンクは開かれます。
そのうえで、納期と納品形式について自分から提示します。実績と条件が同じ文面の中に並んでいると、依頼者はその場で判断を終えられます。読み手の手間を減らすことが、選ばれる確率を上げます。
問い合わせから着手までに確認する項目
実績を見て問い合わせが来たあと、着手の前に確認する項目を決めておくと、後の作り直しが減ります。ここを飛ばすと、せっかく実績で選ばれても、進行でつまずきます。
素材の形です。音源なのか、手書きの譜面なのか、既存のデータなのか。データの場合は、作成したソフトと版まで聞きます。開けない形式で届いてから慌てるのを防げます。
編成と、最終的な使い道です。誰が演奏するのか、本番で使うのか稽古で使うのか、印刷するのか画面で見るのか。印刷するなら、用紙の大きさと、めくる回数の制約が出てきます。
納品する形です。PDFだけでよいのか、譜面ソフトの元データも渡すのか、パート譜を分けるのか。元のデータを渡すかどうかは、その後の修正を誰がやるかに直結するので、必ず先に決めます。
修正の範囲と回数です。音の訂正、見た目の調整、編成そのものの変更。この3つは作業の重さが違うので、別のものとして分けて書いておきます。
締切と、その前に一度見せる日です。全部できてから見せるのではなく、途中で1回渡す日を決めておくと、方向の違いが早い段階で見つかります。
権利と公開の扱いです。納品後に実績として紹介してよいか、その場合はいつからか、団体名を出してよいか。着手前に聞いておけば、納品のあとで切り出す気まずさがなくなります。この一往復が、次の見本を増やしていきます。
実績を古びさせない運用
実績ページは作って終わりではありません。放置された実績ページは、更新日が古いまま残り、活動していない印象を与えます。
案件が終わるたびに、掲載できるかどうかを判断して、可能なものを追加します。掲載できない案件でも、そこで学んだ処理方法を工程の説明に反映させます。3か月に一度は全体を見直し、古い作品のうち今の水準に届かないものは差し替えます。作品の入れ替えは、数を増やすより効果があります。
自分の技術が上がると、以前の作品が粗く見えてきます。これは良い兆候ですが、そのまま置いておくと判断材料としては足を引っ張ります。見せる作品は、常に今の実力の下限を示していると考えます。並べた中で最も出来の悪いものが、依頼者の中での期待値になります。
出す前に確認する項目
作った見本を公開する前に、自分で点検します。次の項目を順に見ていきます。
守秘に触れる情報が残っていないか。ファイルのプロパティに依頼者名や元のファイル名が残っていないか。譜面のヘッダーやフッターに、意図しない情報が入っていないか。音符の入力ミスがないか。強弱記号や発想記号の位置が揃っているか。歌詞の音節の割り付けが正しいか。ページの切り替わりが演奏の妨げになっていないか。書き出したPDFが、他の環境でも同じ表示になるか。
特に見落としやすいのがファイルの属性情報です。譜面ソフトから書き出したPDFには、制作者名やタイトル情報が埋め込まれることがあります。実案件のファイルを流用して見本を作った場合、ここに元の情報が残ります。公開前に必ず確認します。
点検が済んだら、他人に見てもらいます。演奏する人に見せて、実際に弾いてもらうのが最も確実です。読みにくい箇所は、演奏者がつまずいた場所として即座に分かります。
実績がない段階から、最初の1件までの進め方
実績ゼロの状態で最も損なのは、作品を出さないまま応募を続けることです。譜面の依頼者は、応募者の経歴より、実際に作ったものを見て判断します。何もない状態での応募は、判断材料を渡さずに選んでくださいと言っているのと同じです。
最初にやるべきは、権利の問題がない題材で見本を3点作ることです。著作権保護期間が終わっている古典的な楽曲であれば、採譜も浄書も自由に行えます。これを型の違う3点にそろえます。作る過程がそのまま練習になるため、実績づくりとスキルアップが同時に進みます。
そのうえで、最初の数件は条件が明確な案件を選びます。編成が小さく、納期に余裕があり、依頼内容が具体的なもの。条件が曖昧な案件で経験を積もうとすると、作業量が読めず、消耗するだけで実績も残りません。
海外の依頼を視野に入れる場合も、見せ方の原則は同じです。海外案件の受注手順をまとめたUpworkの使い方ガイド|日本人フリーランスが海外案件を取る方法では、プロフィールと作品の提示が選考の中心になる仕組みが解説されており、譜面のように成果物が言語に依存しない職種と相性のよい進め方が分かります。
実績の見せ方でやりがちな失敗
最後に、実際によく見かける失敗を挙げておきます。どれも直すのは簡単です。
作品を並べているのに、それが何の仕事なのか書いていない。譜面の画像だけが並んでいて、編成も素材も納品形式も分からない状態です。見る側は音楽の専門家とは限りません。1行の説明を添えるだけで、伝わり方が変わります。
経歴の説明が長く、作品にたどり着くまでが遠い。学んだ場所や年数を先頭に長く書いても、依頼者の判断には直結しません。経歴は短く、作品を前に置きます。
対応できないことを書いていない。何ができるかだけを並べていると、対応外の依頼が来て、断る手間が発生します。扱わない編成、対応できない形式を明記しておくと、問い合わせの質が上がります。断る手間が減るだけでなく、正直に書いてあること自体が信頼につながります。
そして最も多いのが、完璧なものが用意できるまで公開を待ってしまうことです。実績が薄い時期に何も出さないでいると、判断材料がない状態が続きます。今ある水準で3点そろえて公開し、後から差し替えるほうが、結果として早く進みます。正直なところ、完成を待って何も出していない期間が一番もったいない。
現場の観察と、職種データから見えること
20年この市場を見てきた立場から言えば、実績の量と受注の数はきれいには比例しません。並べた作品が3点でも継続的に依頼を受けている人がいる一方で、多くの案件を経験していながら次が続かない人もいます。差が出ているのは、見せている情報が依頼者の判断に噛み合っているかどうかです。依頼者は、どれだけすごい仕事をしたかではなく、自分の譜面がどう仕上がるかを知りたい。ここに答えている資料が用意されているかが分かれ目になります。
運営者として見てきた限りでは、譜面と詞の仕事は、一度信頼を得ると同じ相手から繰り返し依頼が来ます。合唱団も音楽教室も映像制作者も、毎年似た課題を抱えるからです。だからこそ、実績の見せ方は新規の受注のためだけの作業ではありません。仲介を経由せず直接やりとりする関係であれば、手数料0%のぶん、同じ予算で依頼者はより多く頼め、受け手の手取りは厚くなります。長く続く関係ほど、この差は積み上がります。
どんな依頼の型があり、募集文のどこを見るべきかは、職種の解説を読むと整理できます。採譜、浄書、編曲、作詞といった種類ごとの違いをまとめた楽譜作成・作詞のお仕事が、見本を何点そろえるべきかを考える材料になります。制作側とセットで発注される場面も多いため、作曲・編曲・効果音・ジングルのお仕事で隣接する工程の作業範囲を把握しておくと、自分がどこまで対応できるかを実績ページに明記できます。
文章を納品する作詞のような仕事は、著述業と働き方の構造が近くなります。職種別の年収データを扱った著述家,記者,編集者の年収・単価相場を見ると、文章の仕事が単発の売り切りではなく継続的な関係で成り立っている様子が読み取れます。実績とあわせて提出する見積書や提案書の形式に不安があるなら、ビジネス文書の型を体系的に扱うビジネス文書検定の出題範囲が、そのまま書類の点検表として使えます。
出せない仕事を抱えているのは、ある程度経験を積んだ証拠でもあります。抽象化する、再現サンプルを作る、工程を見せる、依頼者の言葉を借りる。この4つを使い分ければ、守秘を守ったまま判断材料を提供できます。実績ページは自慢の場ではなく、依頼者が安心して発注するための資料です。そう位置づけ直すと、何を載せるべきかは自然に決まります。
よくある質問
Q. 守秘義務がある案件を、実績として一言でも触れてよいのでしょうか?
契約書の条項次第です。案件の存在自体を明かせない契約もあるため、まず条文を確認します。禁止が明記されていない場合でも、依頼者に確認してから掲載するのが安全です。確認が取れないなら、固有名詞を外し、編成や納期といった条件だけを書く形にとどめます。判断に迷う内容は載せないほうが、長期的には信用を守れます。
Q. 実績がまったくない状態で、何から用意すればよいですか?
著作権保護期間が終わっている楽曲を題材に、型の違う見本を3点作ります。単旋律とコードの簡素なもの、伴奏付きのもの、複数パートのものです。この3つがあれば大半の依頼を想像してもらえます。作る過程が練習にもなるため、実績づくりと技術の向上を同時に進められます。作ったら必ず演奏できる人に見てもらいます。
Q. 譜面のどこを見て依頼者は判断していますか?
最初に見られているのは読みやすさです。段の間隔、小節の幅、記号の位置の揃い方、歌詞の割り付け、ページをめくる位置。演奏の現場で使えるかどうかが、開いた瞬間に伝わります。技術的に高度な処理をしていても、詰まっていて読みにくい譜面は評価されません。見本を選ぶときは、開いた瞬間に整って見えるものを優先します。
Q. 作詞の実績は、完成した詞だけを載せればよいですか?
完成形だけでは伝わりにくいため、与えられた条件と、そこから立てた方向性を添えます。テーマ、想定する場面、避けた表現を短く書き、そのうえで詞を示します。読み手は、条件を受け止めて形にする力を見ています。同じ条件から異なる方向で書いた2案を並べると、引き出しの幅が可視化され、依頼の判断材料になります。
Q. 公開前の案件を、後から実績にすることはできますか?
納品時に「公開後に実績として紹介してよいか」を確認しておけば、時間を置いて掲載できる場合があります。この一言を納品メールに入れる習慣をつけると、数か月後に使える材料が増えます。確認せずに納品してしまった案件でも、後から改めて依頼者に聞けば許可が出ることがあります。無断で公開することだけは避けます。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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