未経験からエンジニアへ転職する方法


この記事のポイント
- ✓エンジニア転職を未経験から考えている人へ
- ✓公的統計で求人の実数を確かめたうえで
- ✓書類と面接で落ちる場所
エンジニア転職を未経験から考えるとき、いちばん困るのは「本当に入れるのか」が誰に聞いても分からないことです。転職サイトを開けば「未経験歓迎」の文字が並び、SNSを開けば「三か月で転職できた」という話と「未経験は無理」という話が同時に流れてきます。どちらも本当のことを言っている可能性があり、だからこそ判断ができません。
この記事では、まず公的な統計で「未経験者が入り込める余地が実際にどれくらいあるのか」を数字で確かめます。そのうえで、入り口になる職種の違い、採用側が見ている三つの材料、学習の順番、資格の使いどころ、書類と面接で落ちやすい場所、会社の見分け方までを順に整理します。結論を先に書くと、未経験からのエンジニア転職は「運」ではなく「どの入り口を選び、何を証拠として持っていくか」でほぼ決まります。
求人の側から見ると、エンジニアは今どういう位置にいるのか
最初に、感覚ではなく数字で現在地を確かめます。厚生労働省がハローワークの求人と求職をまとめて毎月公表している一般職業紹介状況では、職業別の求人倍率まで細かく出ています。令和8年7月分の参考統計表を見ると、全職業の有効求人倍率は1.05倍、これに対して情報処理・通信技術者は1.34倍でした。新規求人倍率で見ると全職業2.04倍に対し情報処理・通信技術者は2.98倍です。
この差は小さく見えるかもしれませんが、他の職業と並べると意味がはっきりします。同じ表で事務従事者は有効求人倍率0.36倍、一般事務従事者にいたっては0.29倍です。つまり事務の仕事は、求職者三人から四人に対して求人が一つしかありません。美術家・デザイナー・写真家・映像撮影者の枠は0.15倍で、求職者の数が求人の六倍以上います。
令和8年7月の有効求人倍率は1.18倍で、前月と同水準。 令和8年7月の新規求人倍率は2.10倍で、前月と比べて0.06ポイント低下。 出典: 厚生労働省
ここから読み取れることは単純です。エンジニアは「入りやすい仕事」ではありませんが、「席の数が求職者より多い、数少ない職種のひとつ」ではあります。人気のある仕事ほど席が足りず、席が余っている仕事ほど知名度が低い。未経験からの転職で勝ち筋があるのは後者です。エンジニアはその中で、給与水準と在宅のしやすさが両立している珍しい枠に入っています。
ただし注意が必要です。この1.34倍という数字は、経験者向けの求人も含めた全体の数字です。未経験可の求人だけを取り出せば倍率はもっと厳しくなります。数字が示しているのは「業界全体に人手が足りていない」ことであって、「誰でも受かる」ことではありません。人手が足りないから未経験を育てる会社が出てくる、という順番で理解しておくと判断を誤りません。
「エンジニア」とひとくくりにしない。未経験の入り口は四種類ある
求人票に書かれた「エンジニア」は、実際には仕事の中身がまったく違うものの総称です。未経験からの応募で最初につまずくのは、この違いを知らずに全部に同じ応募書類を出してしまうことです。入り口になりやすい順に四つ挙げます。
運用・保守、ヘルプデスク
すでに動いているシステムを見張り、止まったときに決められた手順で復旧させる仕事です。夜勤やシフト勤務が含まれることが多い代わりに、未経験の採用枠がいちばん広く開いています。ここから始めて一年から二年でサーバーやネットワークの構築側へ移り、そこから開発へ進む道は昔からある王道です。
短所もはっきりしています。決められた手順を実行する時間が長いため、放っておくと「手順書を読める人」で止まります。在職中に自分で環境を作って触る時間を確保できるかどうかで、その後の伸びが割れます。
インフラ、ネットワーク
サーバーやネットワーク機器、クラウド環境を設計して組み立てる仕事です。プログラムを書く量は開発より少なく、構成図と設定と手順が主役になります。学習の成果が資格という形で見えやすく、未経験者が「勉強を続けられる人だ」と示しやすい領域です。
Webアプリケーション開発
多くの人が「エンジニア」と聞いて思い浮かべる仕事です。画面側を作るフロントエンド、サーバー側を作るバックエンドに分かれます。未経験の採用枠は運用・保守より狭いものの、成果物を自分で作って見せられるため、実力があれば経歴を飛び越えやすい領域でもあります。具体的にどんな案件が動いているのかは、アプリケーション開発のお仕事にまとまっています。受託開発と自社サービスで求められるものが違うことも、ここを読むと感覚がつかめます。
社内情報システム
自分の勤める会社のパソコン、ネットワーク、業務システムの面倒を見る仕事です。前職が事務職や営業職の人が、業務を知っている強みをそのまま持ち込める点で相性がよい入り口です。外向けの納期に追われにくく、働き方が安定しやすい一方で、技術的な幅は会社の規模に左右されます。
この四つのうち、どれを目指すかを決めずに学習を始めると、教材選びから面接の受け答えまで全部がぼやけます。逆に決めてしまえば、やることは驚くほど絞れます。
未経験採用で見られているのは、知識量ではなく三つの証拠
未経験の採用面接に出ている人たちが何を見ているかは、実はかなりはっきりしています。技術の知識量は、三番目か四番目の材料でしかありません。上位に来るのは次の三つです。
一つめは、続けられる人かどうかの証拠です。未経験者を採ると、会社は数か月から一年、戦力にならない期間の給与を負担します。その投資が回収できるかどうかの判断材料は、応募者が「これまで何かを途中でやめずに続けた記録」を持っているかどうかです。学習時間の記録、毎日の小さな更新、半年続いた勉強会への参加。派手さは要りません。日付が並んでいることに意味があります。
二つめは、自分で調べて進める人かどうかの証拠です。現場では、誰も答えを知らない問題が毎日出てきます。エラーメッセージを読み、公式の説明にあたり、条件を変えて試す。この手順を自分で回せるかどうかが決定的です。面接で「詰まったときにどうしましたか」と聞かれるのは、この確認をしています。答えるときは、解けた話よりも「どう切り分けたか」を話したほうが伝わります。
三つめは、前職で何を担っていたかの説明です。未経験の転職で最も損をしているのは、前職を「関係ないもの」として切り捨ててしまう人です。飲食店で在庫と発注を回していた経験は、業務システムの要件を理解する土台になります。コールセンターで問い合わせを分類していた経験は、障害対応の初動そのものです。営業で見積もりを作っていた経験は、工数見積もりの感覚に直結します。この翻訳ができている人は、同じ職歴でも通過率がまるで違います。
翻訳した内容をどう書類に落とすかは、職務経歴書の書き方完全ガイド|転職成功率を上げるコツ【2026年版】に型がまとまっています。未経験の場合は「できること」より「やってきたことの構造」を書いたほうが読まれます。
最初の三か月でやることを決める。教材を増やさない
学習でいちばん多い失敗は、教材を増やすことです。動画講座を二つ、参考書を三冊、学習サイトを二つ同時に開き、どれも半分で止まる。これは意志の問題ではなく、設計の問題です。未経験から始める場合、最初の三か月は次の順番で一本に絞ると進みます。
まず、選んだ入り口に必要な基礎を一つの教材で最後まで通します。Web開発ならHTMLとCSSとJavaScript、インフラならLinuxの基本操作とネットワークの基礎です。分からない箇所は飛ばして構いません。全体の地図を先に持つことのほうが、細部の理解より優先です。
次に、小さくても動くものを自分の手で作って公開します。Web開発なら、自分が毎日使う何かを作るのが確実です。家計の記録でも、読んだ本の一覧でも構いません。インフラなら、クラウドの無料枠でサーバーを立て、Webサーバーを動かし、手順を記録として残します。ここで重要なのは、完成度ではなく「他人が見られる形で外に出ていること」です。
最後に、作ったものを壊して直します。わざと設定を間違え、エラーを出し、公式の説明を読んで戻す。この作業が、面接で話せる材料をいちばん多く生みます。うまくいった話には再現性がありませんが、直した話には手順が残ります。
学習の環境選びで迷ったら、AIを使った業務改善の案件がどんな内容かを見ておくと視野が広がります。AIコンサル・業務活用支援のお仕事には、プログラムを書く以外の関わり方が並んでいます。エンジニアという言葉から連想する仕事より、実際の市場はずっと幅があります。
資格は必要か。基本情報とCCNAの使いどころ
未経験者から最も多い質問が資格の扱いです。結論から書くと、資格は「入るための条件」ではなく「勉強を続けた証拠」として効きます。そして証拠としての効き方は、目指す入り口によって変わります。
情報処理推進機構が公表している統計を見ると、基本情報技術者試験の令和7年度の受験者は147,186人、合格者は56,370人で、合格率は38.3%でした。令和6年度は40.8%、令和5年度は47.1%ですから、少しずつ下がっています。
令和5年度以降の基本情報技術者試験の統計情報を掲載しています。令和8年7月時点の情報を掲載しています。 出典: 情報処理推進機構
三人に一人強しか受からない試験ですから、持っていれば「基礎の言葉が通じる人」という前提で話を始めてもらえます。ただし基本情報は知識の幅が広く、開発の実務に直結する部分は限られます。開発職を目指す人が最初の三か月をここに全部使うのは、順番として惜しい選択です。
インフラやネットワークを入り口にする場合は事情が変わります。この領域では機器やサービスの操作そのものが評価対象で、ネットワークの基礎を体系的に確かめるCCNA(シスコ技術者認定)のような認定が、実務の入り口と重なります。求人票の応募条件に名前が挙がることもあり、書類選考を通す役にも立ちます。
意外に軽視されているのが、文章を書く力の証明です。エンジニアの仕事時間のうち、コードを書いている時間は思ったより短く、仕様の確認、障害の報告、依頼の整理といった文章仕事が大きな割合を占めます。ビジネス文書検定のような資格そのものが採用を決めるわけではありませんが、報告と依頼の型を知っているかどうかは、入社後の評価に露骨に出ます。
前職の経験を言い換える。職種別の翻訳の例
前職を「関係ない」で片付けないという話を具体化しておきます。同じ職歴でも、言い換えができているかどうかで書類の読まれ方が変わります。
販売や接客をしてきた人なら、在庫の欠品を防ぐために発注のタイミングを決めていた経験が使えます。これは在庫管理システムが何のために存在するかを理解しているということで、小売向けのシステムを扱う会社では強みになります。クレーム対応で、怒っている相手から事実を聞き出して記録した経験は、障害が起きたときの一次対応とほぼ同じ手順です。
事務職をしてきた人なら、表計算ソフトで作った集計の仕組みが材料になります。関数を組み、入力ミスが起きない形にし、毎月同じ手順で回るようにした経験があるなら、それは業務の自動化そのものです。何人がその表を使っていたか、作る前と後で作業時間がどう変わったかを数字で言えると、説得力が一段上がります。
営業をしてきた人なら、見積もりを作った経験が効きます。前提条件が変われば金額が変わること、条件を書かずに金額だけ出すと後で揉めること。この感覚を持っている人は、要件を詰める打ち合わせで重宝されます。顧客の言葉を社内向けに翻訳する役割は、開発の現場でずっと足りていません。
製造や物流の現場にいた人なら、手順書に沿って作業し、異常が出たら止めて報告するという規律が身についています。運用の現場で最も求められるのは、まさにこの規律です。勝手に直さずに記録して報告できる人は、未経験でも信頼されるのが早いです。
医療や介護の現場にいた人なら、記録を残す習慣と、複数人で同じ情報を共有する習慣があります。引き継ぎの精度が命に直結する職場を経験していることは、そのまま運用の現場で通用します。
共通しているのは、業務を「どんな作業をしたか」ではなく「どんな仕組みの中で動いていたか」として説明し直すことです。この言い換えができると、未経験という言葉の重さがだいぶ軽くなります。
在職中に転職活動を進めるときの時間の作り方
学習と転職活動を在職のまま進める場合、最大の敵は時間ではなく疲労です。無理な計画を立てて三週間で崩れる例をよく見ます。崩れにくい形を三つ挙げます。
第一に、平日の学習は時間ではなく「開始の合図」で管理します。一時間やると決めるより、帰宅したらまず端末を開いて前回の続きを表示する、と決めるほうが続きます。開いてしまえば十分では終わらないことが多く、開けない日は何分と決めても開けません。
第二に、週末に一つだけ「外に出す作業」を置きます。作ったものを公開する、学習の記録を整理する、応募を一件出す。成果が外に出る作業を週一回入れておくと、進んでいる実感が保てます。
第三に、応募のタイミングを学習の完成と切り離します。完璧に仕上げてから応募しようとすると、いつまでも応募できません。書類は出してから直すものだと決めて、最初の数社は練習のつもりで出すくらいでちょうどよいです。面接で聞かれた質問がそのまま、次に何を勉強すべきかの指示になります。
有給休暇の使い方も先に考えておくと楽です。面接が複数社と重なる時期は短く、その時期に半日単位で休みを取れるかどうかで選考の進み方が変わります。オンライン面接が中心になったとはいえ、静かな場所と安定した回線を平日の日中に確保する必要は残ります。
未経験の転職でやらないほうがよい三つの選択
最後に、避けたほうがよい選択を挙げます。どれも一見すると合理的に見えるため、引っかかる人が多い落とし穴です。
一つめは、高額な講座に最初の一歩として申し込むことです。学習の伴走に価値がないという話ではありません。問題は、自分がどの入り口を目指すかを決める前に申し込むと、内容が自分の目標とずれていても気づけないことです。無料や低額の教材を二週間触ってから判断しても遅くありません。
二つめは、複数の言語や分野を同時に勉強することです。求人票に並ぶ技術名を全部押さえようとすると、どれも中途半端になります。採用側が見ているのは網羅度ではなく、一つのものを最後まで扱いきった経験の有無です。
三つめは、条件の悪い会社に「とりあえず入る」ことです。経験を積めるならと考えて入った先が、経験にならない作業だけを割り当てる現場だった、という事例は珍しくありません。入る前に、配属の決まり方と、未経験入社した人の現在地を確かめてください。確かめられなかった場合は、その一社に賭けないほうが安全です。
書類と面接で、未経験者がいちばん落ちる場所
応募の段階で落ちる理由は、技術力の不足ではないことが多いです。見てきた限りでは、次の四つに集中します。
一つめは、志望動機が「働き方」だけで終わっていることです。在宅で働きたい、手に職をつけたい、将来性がある。どれも本心でしょうが、採用側から見ると自社である理由がありません。応募先が作っているものや、その会社が解こうとしている問題に一行でも触れられているかどうかで、印象がはっきり変わります。
二つめは、作ったものの説明が機能の羅列になっていることです。「ログイン機能とデータベースを実装しました」では、何を考えて作ったのかが伝わりません。誰の何の不便を解こうとして、どの選択肢の中からその作りを選び、何がうまくいかなかったのか。この順番で話すと、経験年数とは別の軸で評価されます。
三つめは、学習期間の説明が曖昧なことです。「独学で勉強しています」だけでは、一日十分なのか三時間なのか分かりません。何月から何を、週にどれくらい進めたのかを数字で言えるようにしておくと、それだけで印象が変わります。
四つめは、逆質問が用意されていないことです。未経験の面接では、応募者の質問が「入社後に何を期待しているか」の裏返しとして読まれます。研修の中身、最初の三か月で任される仕事、評価の見られ方。この三つを聞いておくと、自分の判断材料にもなります。
年代によって見られ方が変わる点も押さえておくと無駄がありません。20代なら伸びしろで採る判断が働きますが、30代以降は前職の業務知識との掛け算で見られます。年代別の探し方は20代の転職サイトおすすめ5選|未経験・第二新卒向けや転職サイトおすすめ比較【2026年版】|年代・職種別の選び方に整理されています。
会社の見分け方。求人票のどこを読むか
未経験可の求人には、育てる気のある会社と、頭数を集めたいだけの会社が混ざっています。求人票の段階で確かめられることは、思っているより多いです。
確かめたい一つめは、配属先が自社か客先かです。自社で開発しているのか、他社に常駐して働くのかで、身につくものがまったく違います。常駐そのものが悪いわけではなく、現場によっては経験者に囲まれて伸びます。問題は、どの現場に行くかが入社まで分からない場合です。「配属先はどうやって決まるか」「直近一年で未経験入社の人がどんな現場に行ったか」は、面接で聞いてよい質問です。
二つめは、研修の中身です。期間の長さより、何をどこまでやるかが重要です。三か月の研修でビジネスマナーが半分を占める会社と、一か月でもコードを書いて講師のレビューを受ける会社では、出てくる差が大きくなります。
三つめは、残業と休日の書き方です。「月平均残業10時間」という数字自体より、その数字がどう集計されているかを聞けると確かです。みなし残業が何時間含まれているか、固定残業代が基本給に入っているかは、額面の見え方を大きく変えます。
四つめは、離職の状況です。直接聞きにくい項目ですが、「未経験で入った方は、いまどんな仕事をしていますか」と聞けば、答えの具体性で見当がつきます。名前と役割がすらすら出てくる会社と、一般論しか返ってこない会社があります。
五つめは、使っている技術が求人票に書いてあるかどうかです。具体的な名前が一つも出てこない求人は、仕事の中身が決まっていないか、書ける人が採用に関わっていないかのどちらかです。
入社後の最初の半年で、何が起きるか
内定を取ることを目標にすると、入社後の半年で折れる人が出ます。何が待っているかを先に知っておくと、折れ方が浅くて済みます。
最初の一か月は、環境構築と社内用語の習得でほぼ終わります。学習してきた内容がそのまま使える場面は少なく、社内だけで通じる略語、独自の手順、長く使われてきた仕組みの事情を覚える時間になります。ここで「勉強してきたことが無駄だった」と感じる人が多いのですが、無駄ではありません。土台があるから、独自の部分だけを覚えれば済んでいるのです。
二か月目から四か月目は、小さな修正や調査を任される時期です。この時期に評価を分けるのは、分からないことを聞くまでの時間です。三十分調べて糸口が見えなければ、今どこまで確かめてどこで止まっているかを添えて聞く。この形で聞ける人は、早い段階で信頼されます。逆に、丸一日黙って詰まっていた事実が後から分かると、実力とは別のところで評価が下がります。
五か月目から半年目には、一つの機能や一つの作業の担当を任されはじめます。ここで初めて、学習期間に作ったものの経験が効いてきます。設計を自分で決め、間違え、直す。この繰り返しが、経験年数という言葉の中身です。
この半年を乗り切るために、入社前にやっておくと効くことが一つあります。日々の作業を記録する習慣を先に作っておくことです。何を調べ、何が分かり、何が分からなかったかを毎日数行残す。半年後にこの記録を読み返すと、自分が何をできるようになったかが具体的に言えるようになります。次の面接で最も強い材料になるのは、この記録です。
年収はいつ、どう変わるのか
未経験でエンジニアに移る場合、最初の年収は下がる可能性を見ておくほうが安全です。ただし中期で見ると景色は変わります。
厚生労働省の令和6年賃金構造基本統計調査では、一般労働者の賃金は男女計で月額330.4千円でした。これは全職業の平均です。エンジニアの賃金は経験と領域で幅が大きく、平均だけを見ても判断材料になりません。職種ごとの相場はソフトウェア作成者の年収・単価相場にまとまっているので、自分が目指す入り口の数字を先に見ておくと、求人票の金額が高いのか低いのか判断できます。
転職そのもので賃金がどう動くかも公的データがあります。令和6年の雇用動向調査によると、転職した人のうち前職より賃金が増加した割合は40.5%、減少した割合は29.4%、変わらないが28.4%でした。一割以上増えた人が29.4%、一割以上減った人が21.7%です。
令和6年1年間の転職入職者の賃金変動状況をみると、前職の賃金と比べ「増加」した割合は 40.5%、「減少」した割合は 29.4%、「変わらない」の割合は 28.4%となっている。 出典: 厚生労働省
この数字は全職種の平均です。未経験での職種転換に限れば、最初は減少側に入る人が多いと考えたほうが現実的です。大事なのは、その期間をどれだけ短くできるかです。一年目で現場の言葉を覚え、二年目で任される範囲を広げ、三年目に経験者として市場に出る。この流れを最初から設計しておくと、最初の下振れに耐えられます。
副業や業務委託から入るという、遠回りに見える近道
転職という一本道だけで考えると、「受かるか受からないか」の賭けになります。そこに、もう一本の道を足しておくと安定します。小さな仕事を業務委託で受けて、実績を作ってから転職に臨む道です。
この道の利点は三つあります。第一に、在職中でも始められるので生活が壊れません。第二に、納品した仕事は職務経歴書に書ける実績になります。第三に、そして実はこれがいちばん大きいのですが、「仕事として成立する品質」がどこにあるかを先に知れます。学習用の課題と、お金をもらって納める仕事の間には、締め切り、修正対応、説明責任という三つの壁があります。この壁を先に一度越えておくと、入社後の立ち上がりがまるで違います。
最初に受ける仕事は、開発そのものでなくても構いません。既存サイトの修正、データの整理、業務の手順をツールでつなぐ作業。どれも実務の言葉を覚える練習になります。セキュリティやマーケティング寄りの仕事も入り口になりえます。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事を眺めると、プログラムを書く仕事以外に、どんな形で技術が求められているかが見えてきます。
注意点も書いておきます。副業を認めていない会社もありますし、就業規則の確認は先に済ませてください。また、報酬の額だけで選ぶと、修正の回数が無制限に増える仕事を引くことがあります。最初の一件は、作業範囲がはっきりしていて、終わりが定義されている仕事を選ぶのが安全です。
市場を長く見てきた立場からの観察
在宅ワークと業務委託の市場を二十年見てきた立場から、統計に出てこないことを二つ書き残しておきます。
一つは、長く続く人と続かない人の差が、技術力ではないところにあることです。続く人は、単発の作業をこなすのではなく「この人に頼むと楽だ」という状態を作ることに時間を使っています。返事が早い、分からないことを早い段階で聞く、終わったときに何をしたかを一行で報告する。どれも技術とは無関係な習慣ですが、次の依頼が来るかどうかはここで決まっています。未経験から入る人が最初に身につけるべきなのは、実はこちらのほうです。
もう一つは、手取りの話です。仲介の手数料が乗らない直接のやり取りでは、同じ予算で依頼する側はより多くを頼めて、受ける側の手取りは厚くなります。手数料0%の形が効いてくるのは、金額そのものよりも、この「双方が損をしない」構造のほうです。依頼する側が無理な値切りをしなくて済むと、関係が長く続きます。長く続けば、仕事の中身も少しずつ難しいほうへ寄っていきます。未経験から始めた人が三年で経験者の顔になるのは、たいていこの循環に入れた場合です。
逆に言えば、単価の高さだけで案件を選び続けた人は、三年経っても同じ種類の作業を繰り返していることが多いです。求人倍率の数字が示すのは「席があるかどうか」までで、その席に座ってから何が起きるかは、どんな関係を作れるかで決まります。エンジニア転職を未経験から目指すとき、求人票の条件と同じくらい、入ってから誰と何をするのかを確かめておく価値があります。
よくある質問
Q. 未経験からエンジニアに転職するまで、どれくらいの学習期間が必要ですか?
入り口によって変わります。運用・保守やヘルプデスクは基礎知識と学習の継続が示せれば三か月前後から応募が現実的です。Web開発は自分で作った成果物を公開できる状態まで進める必要があり、半年前後を見る人が多くなります。重要なのは総時間より、毎日の記録が残っていることです。
Q. 資格は取ってから応募したほうがいいですか?
資格の合格を待って応募を遅らせる必要はありません。資格は勉強を続けた証拠として効くもので、応募の条件ではないからです。インフラやネットワークを目指す場合は認定資格が求人の条件に挙がることがあるため、並行して進めると書類選考で有利に働きます。
Q. 30代や40代からでもエンジニア転職はできますか?
可能ですが、見られ方が変わります。20代は伸びしろで採用されますが、30代以降は前職の業務知識と技術の掛け算で評価されます。自分が長くいた業界の仕組みを知っていることは強みになるので、その業界向けのシステムを扱う会社を狙うと通過率が上がります。
Q. 年収は転職直後に下がりますか?
未経験での職種転換では、最初は下がる場合を見込んでおくほうが安全です。令和6年の雇用動向調査では転職者全体の29.4%が前職より賃金が減少しています。一方で40.5%は増加しており、経験を積んだ後の二度目の転職で戻す設計にしておくと判断しやすくなります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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