ECサイト制作の案件の取り方は、作れる範囲をどこまで区切って書くか


この記事のポイント
- ✓ECサイト制作の案件の取り方で差がつくのは
- ✓スキルの量ではなく作れる範囲をどこまで区切って書けるかです
- ✓単価の幅が生まれる構造
ECサイト制作の案件の取り方を調べている人の多くは、営業のテクニックを探しています。ところが、実際に案件が決まるかどうかを分けているのは、営業文の言い回しではありません。結論から書きます。決め手は、自分が作れる範囲をどこまで細かく区切って書けるか、です。
「ECサイトを制作できます」と書いた提案と、「Shopifyで、商品数50点まで、既存テーマのカスタマイズ、決済と送料の初期設定まで対応します。撮影とライティングは含みません」と書いた提案。後者のほうが、できることは狭い。それでも選ばれるのは後者です。理由は単純で、発注する側は「何ができるか」より「どこまでやってもらえて、どこから先は自分でやるのか」を知りたいからです。
この記事では、ECサイト制作の案件がどんな構造で流通しているのかを押さえたうえで、範囲の区切り方、案件を取る経路の使い分け、提案文の組み立て方、そして取れないときに見直すべき点までを順に整理します。
ECサイト制作の案件市場は、作れる人ではなく範囲が読める人を探している
まず市場の話から始めます。ここを誤解したまま営業をかけても噛み合わないからです。
ECサイト制作という言葉が指す範囲は、ここ数年でかなり広がりました。かつては、カートシステムをゼロから構築する開発案件が中心でした。今は違います。ShopifyやBASE、STORES、makeshop、EC-CUBEといった既製のカートが普及したことで、案件の重心が「作る」から「整える」に移っています。テーマを選んでカスタマイズし、商品データを流し込み、決済と配送を設定し、公開後の見た目を調整する。この一連の作業を担う人が求められています。
この変化は、フリーランスや副業で入る人にとっては追い風です。ゼロからのシステム開発なら、実務経験と体制が要ります。しかし既製カートを整える仕事なら、必要なのは「手順を間違えずに終わらせる力」です。ただし追い風には裏があって、参入する人が増えたぶん、提案の中身で差がつきにくくなりました。だからこそ、範囲の書き方が効いてきます。
もう一点、押さえておきたい傾向があります。ECサイトは、公開してからが本番だという点です。企業サイトやブランドサイトは公開すればしばらく形が保ちますが、ECは商品が入れ替わり、季節ごとに売り場が変わり、決済や配送のルールも動きます。つまり発注する側は、制作を頼む時点ですでに「この先も相談できる相手か」を見ています。範囲を明示する提案が評価されるのは、そこに「今回はここまで、その先は別途相談」という続きの余地が読み取れるからでもあります。
単価の幅が大きいのは、範囲の定義が曖昧だから
ECサイト制作の単価相場を調べると、数万円から数百万円まで幅がありすぎて参考にならない、と感じたはずです。この幅は、スキルの差だけで生まれているわけではありません。同じ「ECサイト制作」という言葉が、まったく違う作業量を指しているから生まれています。
既存のShopifyストアにテーマを当てて商品を並べるだけの案件と、基幹システムと在庫を連携させて多言語で海外発送まで扱う案件が、同じ検索キーワードの下に並んでいる。この状態で「相場はいくらですか」と聞いても、答えが出ないのは当然です。
参考として、雇用側の水準を見ておきます。制作に関わる職種の年収は、次のように整理されています。
転職サービス「doda」の調べによると、2025年12月時点正社員ではたらくWebデザイナーの平均年収は384万円とされています。 出典: hipro-job.jp
同じ記事では、上流に関わる職種のほうが水準が上がることも示されています。
一方で、Webデザイナーよりも上流工程に携わるWebプロデューサー/Webディレクターについては、平均年収が453万円と全体平均を上回っています。 出典: hipro-job.jp
Webデザイナーの平均年収が384万円、ディレクター側が453万円。差はおよそ69万円です。この差が何から生まれているかというと、手を動かす量ではなく、範囲を決める役割を担っているかどうかです。案件の取り方を考えるとき、この構造は覚えておく価値があります。範囲を決められる人のほうが、単価は上がるということです。
準委任と請負のどちらで受けるかも、範囲の話
案件の形式も、実は範囲の話です。時給や月単位で稼働を売る準委任型と、成果物を納めて対価を得る請負型では、求められるものが違います。
「時給3.000円」みたいな準委任契約って、皆さんハードル高く感じてますよね。確かに準委任契約は常駐も多く、実際、実務経験1年以上無いと厳しいかなと思います。 出典: shogo-log.com
準委任型は実務経験を問われやすい傾向があります。副業や実績が浅い段階から入るなら、成果物を区切って納める請負型のほうが現実的です。そして請負型で受けるということは、納める物の輪郭を自分で定義する必要があるということです。ここでも範囲の話に戻ってきます。
作れる範囲を区切るとは、具体的に何を書くことか
「範囲を区切って書く」と言われても、抽象的で動けないと思います。書くべきことは3つです。カートの種類、担当する工程、そして含まれないもの。順に見ていきます。
カートの種類で区切る
まず、扱えるカートシステムを名指しします。「ECサイトを作れます」ではなく「Shopifyを扱えます」と書く。この差は大きい。
なぜなら、カートごとに設定画面も、テーマの構造も、拡張の仕方もまったく違うからです。BASEで作れる人がEC-CUBEを触れるとは限らないし、逆も同じです。発注する側はそれを知っているので、カート名が書かれていない提案は「経験がないのかもしれない」と読まれます。
カートには、それぞれ棲み分けがあります。オープンソース型については、次のような整理がされています。
オープンソース型で、【国内ECプラグインシェアNo.1】の実績を持つショッピングカートです。WordPressのプラグインによるシステムのため、EC-CUBEと同様にデザインやSEO設定に関する自由度が高いことも特長です。半面、選定の際にはエンジニアの確保が重要となるカートシステムとも言えます。 出典: synq-ps.co.jp
自由度が高いものほど、扱える人の確保が課題になる。裏を返せば、扱える人には需要があるということです。ただし副業から入るなら、まずは設定が完結しやすいASP型のカートを1つ、確実に扱えるようにするほうが案件に届きます。手を広げるのは後で構いません。1つのカートで数件こなすと、設定でつまずく場所が読めるようになり、見積もりの精度が上がります。この「読める」状態こそが、次の案件の武器になります。
担当する工程で区切る
次に、ECサイトの立ち上げを工程に分解して、どこを担うかを書きます。分解の粒度はこのくらいが実用的です。
要件の整理、カートの選定、テーマの選定とデザイン調整、商品データの登録、決済の設定、配送と送料の設定、特定商取引法に基づく表記などの必須ページ作成、テスト注文、公開作業、公開後の初期調整。
このうち、自分が担当するものだけに印をつけて提案に書きます。全部に印がつく必要はありません。むしろ、副業で入る人が全部を引き受けると、必ずどこかで詰まります。詰まりやすいのは決済の審査待ちと商品データの整備です。前者は事業者側の手続きなので自分では進められず、後者は点数が増えるほど際限なく膨らみます。
商品データの登録を引き受けるなら、点数の上限を必ず書いてください。「50点まで」と書くのと書かないのとでは、後で起きることがまったく違います。商品情報は、サイズ違いや色違いを別の行として数えるかどうかで、作業量が何倍にもなります。上限を書くときは「バリエーションを含めて何点まで」と、数え方まで添えておくと安全です。
含まれないものを、はっきり書く
3つ目が、いちばん抜けやすくて、いちばん効きます。含まれないものを書くことです。
含まれないものの代表例は、商品撮影、商品説明文のライティング、ロゴやバナーの新規デザイン、公開後の運用代行、広告の運用、そして公開後の修正対応です。これらは「当然やってくれるもの」と思われがちで、書いていないと後から無償で降ってきます。
書き方は難しく考えなくて構いません。「本件に含まれないもの」という項目を1つ立てて、箇条書きで並べるだけです。これを書くと冷たい印象になるのではと心配する人がいますが、実際は逆です。発注する側にとっては、自分が何を用意すればいいかが明確になるので、むしろ安心材料になります。範囲が書かれていない提案のほうが、発注後の揉め事を想像させてしまう。
案件を取る経路は4つある。順番に使い分ける
範囲が書けるようになったら、次は経路です。ECサイト制作の案件が流れてくる場所は、大きく4つに分かれます。
クラウドソーシングは、実績を作る場所として使う
最初に思いつくのがクラウドソーシング型のサービスです。案件数が多く、登録すればすぐに応募できます。ただし、ここには構造的な弱点があります。手数料です。仲介型のサービスでは報酬から一定割合が差し引かれる仕組みが一般的で、受け取る額は提示額より減ります。
正直なところ、単価だけを見れば効率がいい場所ではありません。それでも使う価値があるのは、実績が空白の段階を抜けるためです。1件でも完了した案件があると、その後の提案の説得力が変わります。目的を「実績を作ること」に限定して、期間を決めて使うのが合理的です。
制作会社の下請けは、範囲が明確で入りやすい
意外に見落とされているのが、制作会社からの下請けです。制作会社は受注が重なると手が足りなくなり、コーディングや商品登録のような工程を外に出します。
下請け案件の良いところは、範囲が最初から切られていることです。要件は制作会社側が整理済みで、こちらは指定された作業を仕上げるだけ。エンドクライアントとの折衝も発生しません。範囲を自分で定義するのが苦手な段階では、むしろこちらのほうが向いています。
弱点は単価です。間に1社入るぶん、直接受けるより手取りは薄くなります。ここも、慣れるための期間と割り切るのが現実的です。ただし下請けで入る場合でも、範囲の書き方の練習にはなります。制作会社から渡される指示書は、範囲がどう切られているかの見本そのものだからです。受け取った指示書を保存しておいて、自分が提案を書くときの型として使うといい。
直接取引と紹介は、最終的にいちばん強い
案件の取り方として、長期的にいちばん効くのは直接取引です。仲介手数料が乗らないため、同じ予算でも受け手の手取りが厚くなります。逆に発注する側から見ると、同じ予算でより多くを頼めます。双方が得をする構造なので、一度成立すると継続しやすい。
直接取引の入口は、多くの場合が紹介です。既存の依頼者から別の事業者を紹介される、知人の事業者から相談される、という形が中心になります。だから最初の数件を丁寧に終わらせることが、そのまま次の営業になります。
紹介を待つだけでなく、自分から接点を作る方法もあります。実店舗を持つ事業者で、ネット販売を始めたいが何から手を付けるか分からない、という層は今も厚い。そういう相手に対して「まずカートを1つ選んで、商品を10点だけ並べて公開してみませんか」と、最小の範囲を提案する形が刺さります。いきなり全商品を並べる前提で見積もりを出すと、金額が大きくなって話が止まります。小さく始める提案は、相手の決断のハードルを下げる働きをします。
求人型のマッチングサービスは、条件で絞れる
4つ目が、業務委託の募集が掲載されるマッチングサービスです。案件の条件が最初から明示されているため、範囲が合うものだけを選んで応募できます。仲介型と違って手数料が引かれない仕組みのサービスもあり、手取りの面で有利になります。
ECまわりで実際にどんな仕事が募集されているかは、ECサイト制作・運用・画像制作のお仕事を見ると輪郭がつかめます。制作そのものだけでなく、商品画像の加工や商品登録、更新作業といった周辺の仕事が一定量あることが分かります。自分の範囲に合う仕事がどのあたりにあるかを、応募する前に確かめておくと無駄が減ります。
提案文は、相手が判断できる材料を並べるだけでいい
経路が決まったら、提案文です。ここで凝った文章を書こうとする人が多いのですが、必要なのは説得ではなく、判断材料の提供です。
冒頭で、相手の案件に対する理解を示す
提案文の1行目に自己紹介を置くのは、あまり効きません。相手が読みたいのは、自分の案件が理解されているかどうかです。
「商品点数が多いとのことなので、登録作業の負担が大きくなりそうです。まず主力の20点だけで公開して、残りは公開後に追加していく進め方も可能です」。こういう1文が最初にあると、その先が読まれます。募集文をきちんと読んだ人だと伝わるからです。
範囲、期間、金額、含まれないものを、この順で書く
本文は箇条書きで構いません。むしろ箇条書きのほうがいい。書く順番は、対応範囲、想定期間、金額、含まれないもの。この4点があれば、相手は判断できます。
想定期間は、実働の日数ではなく暦の日数で書いてください。副業で週末しか動けないなら、そのことも書きます。隠すと後で必ず問題になりますし、書いたからといって落とされるとは限りません。むしろ、稼働できる曜日と時間帯が書かれている提案は、連絡の取り方が想像できるぶん安心されます。
金額は、内訳を分けて書くと通りやすくなります。一式でいくら、と書くより、テーマ調整でいくら、商品登録でいくら、と分けたほうがいい。分けておくと、予算が足りないときに相手のほうから「商品登録は自分たちでやります」と削る提案が出てきます。一式表記だと、削る場所が分からないので、まるごと見送りになります。
実績の見せ方は、点数より近さ
実績を並べるとき、件数を稼ごうとして関係の薄いものまで詰め込むのは逆効果です。相手の案件に近いものを1つか2つ、何をどこまで担当したかを添えて出すほうが効きます。
「このサイトを作りました」ではなく「このサイトで、テーマのカスタマイズと商品登録120点、送料設定を担当しました」と書く。担当範囲が書かれた実績は、そのまま「この人に頼めること」の説明になります。
受注後の進め方まで書いておくと、決まる確率が上がる
範囲と金額を書いたら、もう一段だけ踏み込むと反応が変わります。受注したあと、どういう順番で進めるのかを短く添えることです。
発注する側の不安は、金額よりも「頼んだ後、どう進むのか分からない」ことにあります。とくにECサイトを初めて作る事業者は、自分が何をいつ用意すればいいのかが見えていません。商品の写真は誰が撮るのか、送料はいつ決めればいいのか、決済の申し込みには何日かかるのか。ここが見えないまま発注するのは、相手にとって怖い。
だから提案の末尾に、3行から5行で流れを書きます。たとえば「初週に要件の確認とカートの初期設定、2週目にデザイン調整、3週目に商品登録とテスト注文、4週目に公開作業」といった具合です。あわせて、相手に用意してもらうものも並べます。商品写真、商品名と価格の一覧、送料の条件、返品の条件、事業者の住所と連絡先。この5点は、ほぼどの案件でも必要になります。
この流れを書く効果は2つあります。1つは、相手が発注の判断をしやすくなること。もう1つは、こちらの見積もりに根拠が生まれることです。工程が並んでいれば、金額がどこから来ているかが読み取れます。根拠のある金額は、値切られにくい。
決済の審査待ちを、最初から日程に入れておく
流れを書くときに必ず入れてほしいのが、決済の申し込みと審査です。クレジットカード決済を使う場合、事業者の審査に日数がかかります。ここを日程に入れていないと、制作は終わっているのに公開できないという状態が生まれます。
そして、この待ち時間の責任は制作側にはありません。にもかかわらず、日程だけを見て「遅れている」と受け取られることがあります。最初に「決済の審査には日数がかかるため、申し込みは初週に済ませてください」と書いておけば、この誤解は起きません。段取りを先に見せることは、自分を守る行為でもあります。
断る基準を先に決めておく
案件を取ることばかり考えていると見落としますが、取らない基準を持っている人のほうが結果的に案件が続きます。理由は単純で、範囲の合わない案件を1件抱えると、そのあいだ他の案件に手が回らなくなるからです。
断る基準は、3つ用意しておけば足ります。1つ目は、扱えないカートが指定されている案件。2つ目は、公開日が決まっていて、そこまでの日数が自分の稼働では足りない案件。3つ目は、募集文に範囲が書かれておらず、質問しても曖昧な返事しか返ってこない案件です。
3つ目がいちばん判断に迷います。「まずは話しましょう」とだけ返ってくる相手は、範囲を決めていないことが多い。決まっていない範囲を、こちらが無償で整理してあげる形になりがちです。要件整理そのものを有償の作業として提案するなら構いませんが、無償の前提で引き受けると消耗します。断ることに罪悪感を持つ必要はありません。範囲が合わない相手と組むほうが、双方にとって損です。
見積書の形式を整えるだけで、通る率が変わる
提案が通ったあとに出す見積書も、判断材料の一部です。ここが雑だと、決まりかけた話が止まることがあります。
必要な項目は決まっています。宛名、発行日、有効期限、明細と単価、小計と消費税、合計、支払条件、そして備考としての作業範囲外の記載です。とくに有効期限は忘れられがちですが、書いておかないと数か月後に同じ金額で依頼が来ます。相場も自分の稼働状況も変わっているのに、断りにくくなる。
明細の書き方にもコツがあります。「ECサイト制作一式」と1行で書くより、工程ごとに分けて書くほうが通ります。分けて書くと、相手は削る場所を選べます。予算が合わないとき、一式表記だと丸ごと見送りになりますが、明細があれば「商品登録は自社でやるので、その分を引いてください」という話になる。受注に至る確率が上がります。
そして、見積書の書式は一度作れば使い回せます。案件ごとに作り直す必要はありません。最初の1件で整えておけば、その後の提案はすべて速くなります。
案件が取れないとき、まず見直すべき3点
提案を出しても返事がない。この状態が続くとき、原因はだいたい次の3つのどれかに入ります。
1つ目は、範囲が広すぎることです。「何でもやります」「ご要望に合わせて対応します」と書いていると、相手は何を頼めばいいか分かりません。柔軟性のつもりで書いた一文が、輪郭を消しています。
2つ目は、応募先が合っていないことです。大規模な要件の案件に、小規模しか扱えない体制で応募し続けても通りません。逆に、自分の範囲に合う小さな案件は、競合が少ないことが多い。応募先の選び方を変えるだけで反応が変わるケースは珍しくありません。
3つ目は、返信の速さです。これは軽視されがちですが、実務では大きい。ECサイトは公開日が決まっている案件が多く、発注する側は「連絡が取れる人」を強く求めます。半日以内に一次返信が返ってくるかどうかは、スキル評価より前の足切りとして機能しています。
4つ目として、実績の見せ方も確認してください。実績が1件もない段階で応募を続けるより、架空でも構わないので自分でストアを1つ立ち上げて、設定まで終わらせたものを見せるほうが早い。カートの管理画面を触ったことがある人かどうかは、話せば分かります。触ったことがない人の提案は、言葉の選び方でだいたい見抜かれます。
技術面の不足を埋めるより、この4点を直すほうが早く効きます。とくに1つ目は、今日書き直せます。
範囲を区切ることが、単価と継続の両方につながる
最後に、市場を長く見てきた立場からの観察を2つ書いておきます。
20年この市場を見てきて、案件が続く人と途切れる人の差がどこにあるかというと、技術の高さではありませんでした。続く人は、依頼者にとって「この人に任せると楽」という状態を作っています。楽というのは、確認する回数が少なくて済む、頼んだことがそのまま返ってくる、追加の相談をしても範囲の外か中かがすぐ分かる、という意味です。範囲を最初に区切っておくことは、この「楽」を作る最短の手段です。冷たいどころか、相手の負担を減らす行為なのです。
もう1つは、手取りの話です。仲介が入る取引では、提示額と受取額のあいだに差が生まれます。この差は、金額の大小の問題というより、同じ仕事に対する納得感の問題として効いてきます。中間のマージンが乗らない直接取引なら、発注する側は同じ予算でもう少し多くを頼めますし、受ける側は手数料0%ぶんだけ手取りが厚くなる。長く続けている人ほど、途中からこの形に移行していきます。仲介型のサービスで実績を作り、本命の継続案件は手数料が引かれない場に移す。この動線を最初から想定しておくと、遠回りが減ります。
周辺の単価水準と、次に伸ばす方向
自分の範囲を決めたあと、その先どこへ伸ばすかを考えるときは、周辺職種の水準を眺めておくと判断しやすくなります。開発寄りの方向に進む場合の目安はソフトウェア作成者の年収・単価相場にまとまっています。コーディングやカスタマイズの比重を上げるなら、この水準が参考になります。
一方、商品説明文や特集ページの原稿まで引き受ける方向もあります。ECサイトは公開してからのほうが文章の需要が大きく、書ける人は重宝されます。その場合の目安は著述家,記者,編集者の年収・単価相場が近い。制作だけで見るか、書く仕事まで含めて見るかで、受けられる案件の幅が変わります。
技術を横に広げるより先に、書類仕事の精度を上げるという選択もあります。見積書や請求書、業務範囲を書いた簡単な合意文書をきちんと作れるかどうかは、直接取引に移るときに効いてきます。文書作成の基礎を体系的に押さえたい場合はビジネス文書検定が参考になります。合格そのものより、書式の型を知っているかどうかが実務では差になります。
ネットワークやサーバまわりの相談が来たときに一次対応できると、ECサイトの案件では強い武器になります。独自ドメインの設定やSSLの証明書、メールの到達といった話は、制作の範囲外に見えて実際には必ず絡んでくるからです。この領域の基礎を確認するならCCNA(シスコ技術者認定)の出題範囲が目安になります。ここまで踏み込む必要があるかは案件次第ですが、範囲の外にある相談を投げ返さずに一次回答できると、依頼者からの信頼は明確に変わります。
AIを使った商品説明文の下書きや、画像の一次加工といった領域も、ECの現場では実務に入ってきました。この周辺で何が仕事になっているかはAI・マーケティング・セキュリティのお仕事を眺めると分かります。制作の周辺で単価を上げる余地がどこにあるか、探すときの手がかりになります。
在宅で作業する体制そのものも、範囲の一部です。納期の直前に回線が不安定になると、公開作業が止まります。作業環境の整え方については在宅ワークに最適なネット回線|光回線vsホームルーターの選び方に選び方が整理されているので、公開日を預かる仕事を受ける前に一度見ておくといいでしょう。制作の周辺スキルを資格の形で補いたい場合は在宅ワークに強い資格10選|自宅で稼げるスキルを身につけるも判断材料になります。
範囲を区切るというのは、できることを減らす行為ではありません。できることの輪郭を、相手に見える形にする行為です。ECサイト制作の案件の取り方で悩んでいるなら、提案文の言い回しを直す前に、まず範囲の3項目、つまりカート名、担当工程、含まれないものを書き出してみてください。書けない項目があれば、そこが今の弱点です。弱点が特定できれば、次に何を学ぶかも決まります。
よくある質問
Q. ECサイト制作の案件は、未経験でも受けられますか?
既製カートの設定や商品登録を切り出した案件なら、未経験からでも入口があります。ただし「何でもできます」と書くと選ばれません。扱えるカート名、担当する工程、含まれない作業の3点を明記した提案を出してください。最初は制作会社の下請けなど、範囲が最初から切られている案件のほうが入りやすい傾向があります。
Q. 案件を探す場所は、どこから始めるのがいいですか?
実績が空白の段階なら、案件数の多い仲介型サービスで1件終わらせて実績を作るのが早いです。ただし仲介型は報酬から手数料が引かれます。実績ができたら、手数料が引かれないマッチングサービスや直接取引に軸を移すと手取りが厚くなります。目的別に期間を区切って使い分けるのが現実的です。
Q. 提案文には何を書けばいいですか?
順番は、相手の案件への理解を示す1文、対応範囲、想定期間、金額、含まれないもの、です。自己紹介は後ろで構いません。想定期間は実働日数ではなく暦の日数で書き、週末しか動けないならその事実も書いてください。金額は内訳を分けて書くと、予算が合わないときに相手から削る提案が出てきます。
Q. 提案しても返事が来ないときは、何を直すべきですか?
まず範囲が広すぎないかを確認してください。「ご要望に合わせて対応します」と書いていると、相手は何を頼めるか判断できません。次に応募先の規模が自分の体制と合っているか、最後に一次返信の速さを見直します。ECサイトは公開日が決まっている案件が多く、連絡の速さは技術評価より前の判断材料になっています。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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