発行可能株式総数とは|増資のときに引っかかる数字


この記事のポイント
- ✓発行可能株式総数を定款にどう書くかで
- ✓あとの増資の手間が変わります
- ✓会社法が定める4分の1の下限と4倍の上限
発行可能株式総数を定款にいくつと書くか。結論から書くと、公開会社でない普通の中小企業であれば、設立時に発行する株式数の10倍前後にしておけば、当面まず困りません。そして、この数字は一度決めたら忘れてよい項目ではなく、増資や株式の割り当てをしようとした瞬間に必ず引っかかってくる数字です。
この項目がやっかいなのは、設立のときには何の意味もない飾りに見えるのに、数年後に急に効いてくる点にあります。出資を受けることになった、役員に株式を渡すことになった、そのタイミングで「上限に達しているので先に定款を直してください」と言われる。株主総会の特別決議と変更の登記が必要になり、登録免許税が3万円、司法書士に頼めばその報酬も乗ります。増資の話が進んでいる最中に、この手続きのために2週間から1か月を取られるわけです。
この記事では、発行可能株式総数が何を決めている数字なのか、会社法がどこまで縛っているのか、実際にいくつにしておくのが合理的なのかを、条文と公的機関の解説に沿って整理します。定款への書き方と、あとから増やすときの手順も具体的に示します。
発行可能株式総数とは、その会社が出せる株式の上限
発行可能株式総数とは、その会社が発行することのできる株式の総数のことです。定款に書いた数字が上限になり、会社はこれを超えて株式を発行できません。
独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営するJ-Net21は、この仕組みを次のように説明しています。
発行可能株式総数とは、株式会社が発行することのできる株式の総数のことです。つまり、その会社が発行できる株式の数の上限ということです。会社はこの発行可能株式総数を超えて株式を発行することはできません。会社法では、株式会社は設立登記のときまでに、発行可能株式総数を定款で定めなければならないとしており、この発行可能株式総数の定めは廃止することはできません。かりに、発行可能株式総数を超えて株式を新たに発行する必要が生じた場合は、事前に株主総会の特別決議によって、定款を変更する必要があります。 出典: j-net21.smrj.go.jp
ここで押さえておきたい用語が2つあります。
発行済株式の総数は、いま実際に世の中に出ている株式の数です。設立のときに発起人が引き受けた株式、その後の増資で発行した株式の合計になります。
発行可能株式総数は、その上限です。発行済株式の総数が発行可能株式総数に達すると、それ以上は1株も発行できません。
この2つを混同したまま定款を作ると、設立時に発行する株式数をそのまま上限に書いてしまい、最初の増資でいきなり定款変更が必要になります。実際、この書き方をしている会社は珍しくありません。
なぜ上限を定款に書かせるのか
上限を決める理由は2つあります。J-Net21の同じ解説は、会社の資金調達の機動性を確保することと、取締役会の権限乱用を防ぐこと、という2点を挙げています。
株式を新しく発行するのは、本来なら株主に関わる重い決定です。それを毎回株主総会にかけていたら、資金が必要になったときに間に合いません。そこで、あらかじめ上限を定款で決めておき、その範囲内なら取締役会の決議だけで株式を発行できるようにしています。この仕組みを授権資本制度と呼びます。
一方で、上限がなければ取締役会が好きなだけ株式を発行できてしまい、既存の株主の持ち分の割合がどんどん薄まります。それを防ぐために、発行できる枠の上限を株主が決める定款で縛る、という設計になっています。
つまり、発行可能株式総数は「経営陣に渡す白紙委任状の額面」だと考えると分かりやすくなります。額面が大きいほど経営陣は動きやすく、小さいほど株主の目が届きます。1人株主の会社なら自分に委任するだけなので大きくしてよく、複数の株主がいる会社なら、そこが交渉の対象になります。
いつまでに決めなければならないか
会社法第37条は、発起人が発行可能株式総数を定款で定めていない場合には、株式会社の成立の時までに、その全員の同意によって定款を変更して発行可能株式総数の定めを設けなければならないとしています。逆に、定款で定めている場合でも、成立の時までは発起人全員の同意で変更できます。
読み替えると、こうなります。最初に作る定款に書いていなくても違法ではありませんが、会社ができるまでには必ず決めなければならない。それなら最初の定款に書いておくほうが、手続きが1回減ります。実務で使われているひな型に最初から入っているのは、そういう理由です。
なお、発起人だけで設立せず、外部から出資者を募る形(募集設立)で作る場合は、会社法第98条が同じことを定めています。この場合は発起人の同意ではなく、創立総会の決議で定款を変更して定めを設けます。
会社法が縛っている2つの数字
発行可能株式総数の決め方には、会社法が定める縛りが2つあります。どちらも「公開会社かどうか」で効き方が変わります。
ここでいう公開会社とは、株式の全部または一部について、譲渡に会社の承認を要するという定めを置いていない会社のことです。上場しているかどうかとは関係ありません。創業期の中小企業はほぼ例外なく、すべての株式に譲渡制限を付けているので、公開会社ではありません。
設立のときの下限|4分の1ルール
会社法第37条第3項は、設立時発行株式の総数は発行可能株式総数の4分の1を下ることができないとしています。ただし書きがあり、設立しようとする株式会社が公開会社でない場合はこの限りでない、とされています。
つまり、公開会社として設立するなら、上限は設立時に発行する株式数の4倍までです。100株発行するなら上限は400株が限界になります。一方、譲渡制限を付けた会社であれば、この縛りはかかりません。100株発行して上限を10,000株にしても問題ありません。
増やすときの上限|4倍ルール
もう1つが会社法第113条第3項です。次の場合には、定款変更後の発行可能株式総数は、変更が効力を生じた時における発行済株式の総数の4倍を超えることができないとしています。1つは公開会社が定款を変更して発行可能株式総数を増やす場合、もう1つは公開会社でない株式会社が定款を変更して公開会社になる場合です。
J-Net21の解説も同じ点に触れていて、公開会社が20株を発行している状態で上限を増やす場合、20株の4倍である80株を超えられないと具体例で示しています。
ここでも、譲渡制限を付けた会社には縛りがかかりません。発行済みが100株でも、上限を100,000株に増やす定款変更ができます。中小企業にとって実際に効いてくる制約はほとんどない、というのが結論です。
条文そのものを確かめたい場合は、e-Gov法令検索の会社法で第37条と第113条を並べて読むのが早いです。
上限をなくすこと、減らすことはできるのか
会社法第113条第1項は、株式会社は定款を変更して発行可能株式総数についての定めを廃止することができない、と定めています。つまり「上限なし」にはできません。授権資本制度の前提が崩れるためです。
減らすことはできます。ただし同条第2項が、定款を変更して発行可能株式総数を減少するときは、変更後の発行可能株式総数は、変更が効力を生じた時における発行済株式の総数を下ることができない、としています。すでに出ている株式より小さい上限にはできない、という当たり前の話です。
実務で減らす場面はほとんどありません。大きな上限が登記に載っていて困ることがまずないからです。強いて言えば、株主構成を整理したあとに「これ以上は勝手に発行しない」という意思を外に示す目的で減らす例がある程度です。
実際にいくつにするか|1株の金額から逆算する
決め方の手順は次のとおりです。
まず1株の金額を決めます。 J-Net21は、1株あたりの金額を1万円か5万円に設定する会社が多いとしたうえで、1株当たりの価格に上限はないので1株100万円とすることも可能だとしています。
次に発行する株式数を出します。 資本金を1株の金額で割った数です。資本金100万円で1株5万円なら20株、資本金100万円で1株1万円なら100株になります。
最後に上限を決めます。 ここが判断です。設立時に発行する株式数をそのまま上限にすることもできますが、J-Net21は、今後事業を拡大して多くの株式を発行する意思がある場合は、発行可能株式総数を多めに設定しておくほうが、新たに株式を発行する必要が出てきたときの株主総会の特別決議や変更登記といった手間を省ける、としています。
数字の目安として、実務でよく使われるのが10倍です。設立時に100株なら上限1,000株、200株なら2,000株といった具合です。増資を何度か重ねても届かない水準で、かつ登記に載る数字として不自然でない、というあたりが理由です。
ここで1つ、設計の話をしておきます。1株の金額を大きくしすぎると、あとで株式を分けにくくなります。1株5万円で20株しかない会社に、新しい出資者が10万円入れると2株です。持ち分の割合を細かく調整できません。1株1万円や1株1,000円にしておくと、刻みが細かくなって調整が効きます。株式を分割すれば後からでも刻みは細かくできますが、それにも手続きが要ります。外部からの出資を視野に入れているなら、最初から株数を多めにしておくほうが楽です。
正直なところ、設立の実務ではこの部分が軽く扱われがちです。ひな型の数字をそのまま使ってしまい、増資のときに気づく。設立のときに5分考えるか、2年後に3万円と1か月を払うか、という差でしかありません。
定款にはどう書くか
定款での書き方は1行で足ります。株式に関する章の冒頭に、次のような条文を置くのが一般的な形です。
「当会社が発行することができる株式の総数は、1,000株とする。」
種類株式を発行する会社であれば、種類ごとの発行可能種類株式総数もあわせて定めます。ただし創業期に種類株式を使う会社はまれなので、まずは1行で問題ありません。
あわせて置かれることが多いのが、株式の譲渡制限に関する条文です。「当会社の株式を譲渡により取得するには、株主総会の承認を受けなければならない」といった形で書きます。この1行があるかどうかで、上で見た4分の1ルールと4倍ルールの適用が変わります。
定款のひな型そのものは、日本公証人連合会が定款等記載例として公開しています。民間のテンプレートを集める前に、まずこちらを見るほうが確実です。
上限に達したときに何をするか
実際に上限まで発行してしまい、さらに株式を出したくなったときの手順は次のようになります。
1. 株主総会の特別決議で定款を変更する。 発行可能株式総数の変更は定款変更なので、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。株主が1人か2人なら、書面での決議で済ませることもできます。
2. 変更の登記を申請する。 発行可能株式総数は登記される項目です。会社法第911条第3項が、設立の登記で登記すべき事項の1つとして発行可能株式総数を挙げています。登記されている以上、変えたら登記も直します。
法務省は変更の登記について、次のように案内しています。
会社等の設立に当たって登記した事項に変更が生じたときは、2週間以内に、その本店又は主たる事務所の所在地において 、変更の登記をしなければなりません(会社法第915条第1項、一般社団法人及び一般財団法人に関する法律(以下「一般法人法」といいます。)第303条)。 出典: moj.go.jp
3. 登録免許税を払う。 登録免許税法の別表第一は、商業登記のうち登記事項の変更、消滅または廃止の登記について、申請1件につき3万円と定めています。発行可能株式総数の変更はここに入ります。
4. 増資そのものの登記も必要になる。 上限を増やしたうえで実際に株式を発行すると、資本金の額が増えます。資本金の増加の登記には、増加した資本金の額の1000分の7(これで計算した額が3万円に満たないときは3万円)の登録免許税がかかります。
同じ申請書で2つの変更を一緒に出せる場面もありますが、税額は登記の区分ごとに計算して合算するのが原則です。つまり、上限に引っかかった状態での増資は、引っかからなかった場合に比べて3万円と手続き1回分だけ余計にかかります。設立時に上限を大きめにしておく理由は、突き詰めるとこの3万円です。
増資のとき、何株発行するかで持ち分が決まる
上限の話とあわせて理解しておきたいのが、増資のときに何株発行するかで持ち分の割合が決まる、という点です。ここを分かっていないと、上限を大きくしておく意味も実感できません。
たとえば、創業者が100株を持っている会社があるとします。ここに出資者が入り、新しく25株を発行して引き受けてもらったとします。発行済株式の総数は125株になり、創業者の持ち分は100割る125で80%、出資者は20%です。発行する株数と持ち分は、このように直結しています。
問題は、1株あたりの金額をいくらにするかです。設立時の1株の金額と、増資のときの1株の金額は同じである必要がありません。会社が育っていれば、1株あたりの価値は上がっているはずで、その水準で発行します。設立時に1株1万円で100株(資本金100万円)だった会社が、1株10万円で25株を発行すれば、会社に入るお金は250万円で、出資者の持ち分は20%になります。
ここで刻みの細かさが効いてきます。1株5万円で20株しかない会社に250万円を入れてもらおうとすると5株です。20株に5株を足して25株、持ち分は20%と、たまたま割り切れました。しかし、持ち分を15%にしたいとなると3.53株となり、株式を小数で発行することはできません。1株の金額が大きいほど、こうした調整が効かなくなります。
だから、設立時にあえて1株の金額を小さくして株数を多めにしておく、という設計が出てきます。そして株数が多ければ、発行可能株式総数も相応に大きくしておく必要が出ます。1株1,000円で1,000株発行するなら、上限は10,000株といった具合です。
この設計は、出資を受けるつもりがまったくない1人会社であれば気にしなくてかまいません。ただし「いまは考えていない」と「将来も絶対にない」は別です。上限を大きめに書いておくのに費用はかからないので、可能性がゼロでないなら余裕を持たせておくほうが合理的です。
資本金にいくら計上するかは、また別の話
株式を発行したときに会社に入ったお金の全額を資本金にしなければならないかというと、そうではありません。ここも増資の設計に関わる部分です。
会社法第445条は、株式会社の資本金の額は、設立または株式の発行に際して株主となる者が払い込みまたは給付をした財産の額とするとしたうえで、その額の2分の1を超えない額は資本金として計上しないことができる、としています。計上しなかった分は資本準備金になります。
これが効いてくるのは登録免許税です。株式会社の設立の登記は資本金の額の1000分の7(15万円に満たないときは15万円)、資本金の増加の登記は増加した資本金の額の1000分の7(3万円に満たないときは3万円)で計算します。払い込まれた額の半分を資本準備金に回せば、課税の基礎になる資本金の額がその分小さくなります。
たとえば2,000万円の増資を受けた場合、全額を資本金にすれば登録免許税は14万円です。半分の1,000万円を資本準備金にすれば7万円になります。差額は7万円です。
ただし、資本金の額は登記に載り、取引先や金融機関が見る数字でもあります。小さくすれば税は減りますが、対外的な見え方は変わります。また、資本金が1,000万円以上か未満かで消費税の扱いが変わる場面もあります。どちらを選ぶかは事情によるので、金額が大きい増資のときは税理士に一度当たっておくのが安全です。
種類株式を出すなら、種類ごとの上限も決める
普通株式だけを発行している会社であれば、発行可能株式総数を1行書けば終わりです。しかし、議決権のない株式や、配当を優先して受け取れる株式といった、内容の違う株式(種類株式)を発行する会社では、もう1段の定めが必要になります。
会社法第911条第3項は、設立の登記で登記すべき事項として、発行する株式の内容を挙げたうえで、種類株式発行会社にあっては発行可能種類株式総数および発行する各種類の株式の内容とする、としています。つまり、会社全体の上限に加えて、種類ごとの上限も決めて登記する、という構造です。
創業期に種類株式を使う会社は多くありませんが、外部から出資を受けるときに、出資者側から優先株式での引き受けを求められる場面はあります。その段階になると、発行可能株式総数の枠と、種類ごとの枠の両方を見ることになります。設立時に普通株式だけで作っておいて、必要になった時点で種類株式の定めを追加する、という進め方で問題ありません。
1人会社と共同創業では、決め方の考え方が違う
同じ「上限をいくつにするか」でも、株主が1人の会社と、複数人で始める会社では、考えるべきことが変わります。
株主が1人の会社は、上限を大きくしても誰も困りません。授権資本制度は経営陣の暴走から株主を守るための仕組みですが、株主と経営者が同じ人なら守る相手がいないからです。この場合は、将来の増資や株式の分割を見込んで、余裕を持った数字を入れておくのが単純に得です。上限に引っかかるたびに3万円と手続き1回を払う理由がありません。
複数人で始める会社では、上限そのものが交渉材料になります。上限が大きいということは、取締役会の決議だけで発行できる枠が大きいということで、持ち分の割合が薄まる余地が大きいということでもあります。創業者の1人が代表取締役で、もう1人が出資だけという構成なら、後者にとっては上限が小さいほうが安心です。
ただし、取締役会を置かない会社では、そもそも株式の発行に株主総会の決議が要ります。会社法は、公開会社でない株式会社が募集株式を発行する場合、募集事項の決定を株主総会の特別決議で行うのが原則としているからです。創業期の中小企業はほとんどがこの形なので、上限を大きくしたからといって代表者が勝手に発行できるわけではありません。ここを誤解して上限を小さくしすぎると、実害のない心配のために将来の手続きを増やすことになります。
外部から出資を受ける予定がある会社では、出資者側が定款を見ます。上限に十分な余裕があるか、種類株式を発行できる定めがあるか、譲渡制限がどう書かれているか。このあたりが整っていないと、出資の話が決まってから定款を直す作業が挟まり、着金が遅れます。出資の相談を始める前に定款を読み直しておくと、この待ち時間を消せます。
従業員や協力者に株式を渡す予定がある会社も、枠を広く取っておく必要があります。新株予約権を使う場合、会社法第113条第4項は、新株予約権者が取得することとなる株式の数は、発行可能株式総数から発行済株式(自己株式を除く)の総数を控除して得た数を超えてはならない、としています。つまり、新株予約権を出す時点で、行使されたときに必要になる株数の枠が空いていなければなりません。ストックオプションを検討し始めたら、真っ先に確かめる数字がこれです。
書き間違いで登記が通らない場面
最後に、実務でつまずきやすい点を挙げておきます。
発行済株式の総数と混同して書いてしまう。 定款に「発行する株式の総数」という古い言い方が残っているひな型があり、これを発行済みの数と読んでしまう例があります。定款に書くのは上限のほうです。
上限より多く発行しようとする。 取締役会や株主総会で増資を決議してから上限に気づくと、決議をやり直すことになります。増資の話が出たら、金額より先に株数と上限を確かめてください。
定款を直したのに登記を忘れる。 発行可能株式総数は登記事項です。株主総会で決議しただけでは登記簿の数字は変わりません。登記されている数字と定款の数字が食い違っている状態は、融資審査や取引先の与信調査で必ず指摘されます。
議事録が残っていない。 定款変更は株主総会の特別決議で行うので、議事録が登記の添付書類になります。1人株主の会社でも議事録は必要です。あとから作ろうとすると日付の辻褄が合わなくなるので、決議した日に作ってください。
いまの上限を確かめる方法
自分の会社の発行可能株式総数がいくつになっているかは、登記事項証明書を見れば分かります。株式・資本金の区に、発行可能株式総数と発行済株式の総数が並んで載っています。この2つを見比べれば、あと何株発行できるかがすぐ出ます。
登記事項証明書は法務局の窓口で取れるほか、オンラインでも請求できます。手数料は法務局が公表している一覧に載っていて、書面請求が1通600円、オンラインで請求して郵送で受け取る場合が1通520円、オンラインで請求して窓口で受け取る場合が1通490円です。
証明書としての効力が要らず、中身を確認したいだけなら、登記情報提供サービスで全部事項を1件330円で見られます。増資の相談が始まった段階で、まずこれを1件取って上限と発行済みの差を見る。ここから始めると、手続きの見積もりが正確になります。
数字の設計は、外に出せない仕事
20年この市場を見てきた立場から言えば、会社の設立まわりで経営者が自分でやるべき仕事と、人に任せてよい仕事の線引きは、はっきりしています。発行可能株式総数をいくつにするかは、前者です。将来どこまで株式を出すつもりか、誰に持たせるつもりかという話であり、資本政策そのものだからです。ここを代行業者の初期値のまま通すと、数年後に必ず手戻りが出ます。
一方で、決めた内容を文書に落とす作業、議事録を整える作業、必要な書類を揃える作業は、慣れた人に任せたほうが速く、間違いも少なくなります。長く続いている会社ほど、この切り分けが早い段階でできています。
そのときに効いてくるのが、間に入る手数料の大きさです。同じ予算でも、仲介の取り分が大きければ実際に手を動かす人に届く額は減り、受ける側の手取りも薄くなります。手数料0%で直接やり取りする形は、依頼する側が同じ予算でより多く頼め、受ける側の手取りが厚くなるという意味で、両方に効きます。運営者として見てきた限りでは、この形で続いている関係ほど、単発の作業ではなく継続的に任せられる関係に育っています。
会社の書類まわりを誰かに任せることを考え始めたら、どんな仕事が外に出せるのかを一覧で見ておくと具体化します。社内の手続きを洗い出して自動化の道筋を作るAIコンサル・業務活用支援のお仕事や、マーケティングと情報管理をまとめて見るAI・マーケティング・セキュリティのお仕事は、書類仕事の削減とそのまま重なる領域です。社内の手続きそのものを仕組みに置き換えるならアプリケーション開発のお仕事という発注の仕方もあります。
発注の予算を組むときは、相場を先に見ておくと交渉が早く終わります。エンジニアに頼む場合はソフトウェア作成者の年収・単価相場、文書を作る仕事を頼む場合は著述家,記者,編集者の年収・単価相場に、職業分類ごとの水準がまとまっています。
任せる相手を選ぶときの手がかりとして、資格を見る方法もあります。契約書や議事録を扱う業務ならビジネス文書検定、技術面の業務なら扱える範囲がはっきり分かるCCNA(シスコ技術者認定)のような資格が目安になります。
外注を始める前に整えておきたいのが、発注の型です。フリーランスに仕事を出す会社には下請法(取適法)の規制がかかる場面があり、発注書に書くべき項目が決まっています。この点はフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに整理されています。支払いでもめたときの回収手段と費用感は未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】にまとまっており、契約書に何を入れておくべきかを逆算できます。会計まわりを誰に見てもらうかで迷っているなら、会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】に、専門職がどこまで受けられるかが整理されています。
発行可能株式総数は、定款のたった1行です。その1行を設立時にどう書くかで、数年後の増資の速さが変わります。1株の金額を決め、発行株式数を出し、その10倍前後を上限として書く。公開会社でなければ縛りはほぼないので、迷ったら大きめにしておく。それだけで、あとから3万円と1か月を払う場面をひとつ減らせます。
よくある質問
Q. 発行可能株式総数は定款に必ず書かなければいけませんか?
会社法第27条が定める必須の5項目には入っていませんが、会社法第37条は、株式会社の成立の時までに発起人全員の同意で定めを設けなければならないとしています。最初の定款に書かなくても違法ではありませんが、成立までには必ず決めることになるので、最初から書いておくほうが手続きが1回減ります。
Q. 発行可能株式総数はいくつにするのが適切ですか?
公開会社でない会社なら法律上の縛りがほぼないので、設立時に発行する株式数の10倍前後にしておく例が多いです。上限に達すると、増やすために株主総会の特別決議と変更の登記が必要になり、登録免許税が3万円かかります。大きめに書いておいても税額は変わらないため、迷ったら多めにしておくほうが得です。
Q. 設立時の株式数と発行可能株式総数に決まった比率はありますか?
会社法第37条第3項は、設立時発行株式の総数は発行可能株式総数の4分の1を下ることができないとしています。ただし、設立しようとする会社が公開会社でない場合はこの限りではありません。株式の譲渡に会社の承認を要する定めを置いた会社であれば、この比率の制約はかかりません。
Q. 発行可能株式総数を変えるには何が必要ですか?
株主総会の特別決議による定款変更と、変更の登記が必要です。特別決議は、議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席分の3分の2以上の賛成で成立します。登記は変更から2週間以内に申請し、登録免許税は申請1件につき3万円です。増資もあわせて行う場合は、資本金の増加の登記にかかる税額が別に加わります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
朝比奈 蒼@SOHO編集部
ITメディア編集者
IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。
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