定款の附則とは何か|設立のときの記録を残す部分

前田 壮一
前田 壮一
定款の附則とは何か|設立のときの記録を残す部分

この記事のポイント

  • ✓会社法の条文と法務局の記載例に当たって整理しました
  • ✓附則に置かれる5つの項目
  • ✓最初の事業年度の決め方

会社を作るときに受け取った定款を開いて、最後のほうに「第6章 附則」という見慣れない章があることに気づいた。あるいは、定款のひな形を見ていて、附則に何を書けばよいのか分からず手が止まっている。定款附則とは何かを調べる入口は、だいたいこのどちらかです。まず、安心してください。附則は難しい部分ではありません。むしろ、設立のときの事実を記録しておくための、いちばん読みやすい章です。この記事では、附則に何が書かれているのか、なぜそこに置かれているのか、そして会社を動かし始めたあと附則をどう扱えばよいのかを順に整理します。

附則は、定款の最後に置かれる「設立のときの記録」

定款とは、会社の決まりごとを書いた文書のことです。ほとんどの定款は、章立てになっています。総則、株式、株主総会、役員、計算、そして最後に附則。この並びはひな形の時点でほぼ共通していて、附則は必ず末尾に来ます。

附則に置かれるのは、会社がこれからずっと使う決まりではなく、会社が生まれた瞬間の事実です。いくら出資して始めたのか、最初の決算をいつで区切るのか、最初の取締役は誰なのか、出資した人は誰でいくら払ったのか。どれも、会社が動き出したあとは変わらない過去の情報です。

言い換えると、定款は2つの性質の違う文章が1つに綴じられている文書です。前のほうの章は「これから先のルール」であり、後ろの附則は「始まりの記録」です。役割が違うので、章を分けて置いてある。この見方ができると、附則に何を書き、何を書かないかの線引きが自然に決まります。

本則と附則の違いは、いつまで効くか

本則というのは、附則より前に置かれている部分のことです。総則から計算までの各章が本則にあたります。

本則に書くのは、会社が存続する限り繰り返し使う決まりです。会社の名前、事業の内容、本店の場所、株式の扱い、株主総会の招集のしかた、取締役の人数や任期、事業年度の区切り、決算の公告のしかた。どれも毎年、あるいは何かが起きるたびに参照されます。

対して附則に書くのは、一度きりで役目が終わる事柄です。設立のときの出資額は、設立が終われば二度と使いません。最初の事業年度も、1回目の決算が済めばそれで終わりです。設立時の取締役も、最初の任期が来て改選されれば、附則に書かれた名前は過去の記録になります。

この違いは、定款を読む人の側にとっても意味があります。金融機関や取引先が定款を見るとき、いまのルールを知りたいなら本則を読み、会社の生い立ちを知りたいなら附則を読む。どこを見ればよいかが分かれているからこそ、確認が早く終わります。

附則に置かれる5つの項目

実際の定款で、附則にはどんな条文が並んでいるのか。ひな形の多くは、次の5つを置いています。

1つめは、設立に際して出資される財産の価額と、成立後の資本金の額です。「当会社の設立に際して出資される財産の価額は、金100万円とする。」「当会社の成立後の資本金の額は、金100万円とする。」といった形で書かれます。

2つめは、最初の事業年度です。「当会社の最初の事業年度は、当会社成立の日から令和○年3月末日までとする。」という書き方をします。

3つめは、設立時取締役です。「当会社の設立時取締役は、次のとおりである。」として、氏名を並べます。取締役会を置く会社なら、設立時代表取締役もここに書くことがあります。

4つめは、発起人の氏名、住所、割当てを受ける株式数、払い込む金額です。発起人とは、会社を作る手続きを進めて出資をする人のことです。1人で作る会社なら、ここは1行で終わります。

5つめは、法令の準拠です。「この定款に規定のない事項は、全て会社法その他の法令に従う。」という1文を置きます。定款に書き漏らしがあっても、法律の原則に戻って処理される、という確認です。

会社によっては、ここに公告の掲載方法や、最初の代表取締役の住所などが加わります。順番も事務所によって前後します。ただ、中身の性質は変わりません。すべて設立のときの事実か、書き漏らしを埋めるための一般的な確認です。

法律で必ず書くことになっている事項が、なぜ附則にあるのか

ここで多くの人が引っかかる点があります。附則に置かれている項目のうち、いくつかは会社法が必ず書けと命じている事項だという点です。

株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。 一 目的 二 商号 三 本店の所在地 四 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額 五 発起人の氏名又は名称及び住所 出典: laws.e-gov.go.jp

この5つのうち、4番目の出資される財産の価額と、5番目の発起人の氏名と住所は、いま見たとおり附則に置かれているのが通例です。必ず書けと言われている事項なのに、なぜ本則ではなく末尾なのか。

理由は、会社法が「定款のどこに書くか」までは決めていないからです。条文が求めているのは記載することであって、章立ては会社が自由に決められます。そして実務は、性質で分けるほうが読みやすいと判断してきた。設立にしか使わない情報を本則の真ん中に置くと、毎年参照する条文の流れが途切れます。だから末尾にまとめる。それだけの理由です。

もう1つ、実務上の利点があります。附則にまとめておけば、役目を終えたときに章ごと見直せます。条文が本則の中に散らばっていると、どれが過去の記録なのかを1つずつ判断しなければなりません。

設立時取締役を附則に書くと、何が省けるのか

附則の項目の中で、書くかどうかで手続きが変わるものが1つあります。設立時取締役です。

会社法第38条第1項は、発起人は出資の履行が完了したあと遅滞なく設立時取締役を選任しなければならないと定めています。原則としては、出資のあとに発起人が選ぶ、という手順です。

ところが、同条第4項に例外が置かれています。定款で設立時取締役として定められた者は、出資の履行が完了した時に、選任されたものとみなす、という規定です。

つまり、附則に設立時取締役の氏名を書いておけば、出資が済んだ時点で自動的に選ばれたことになり、別途の選任手続きを踏む必要がありません。1人で会社を作る場合、自分で自分を選任する書面を作る作業が丸ごと消えます。ひな形が附則に設立時取締役を置いているのは、この省略を使うためです。

取締役会を置く会社では、設立時代表取締役を誰にするかという問題が残ります。会社法第47条は、設立時取締役の過半数をもって設立時代表取締役を選定すると定めており、こちらは定款に書いても手続きが不要になるわけではないという整理をする事務所もあります。ここは判断が分かれるところなので、取締役会を置く形で設立するなら、司法書士に確認してから定款の文案を決めるのが安全です。

最初の事業年度は、どう決めればよいのか

附則の中で、唯一その場で判断が要るのが最初の事業年度です。

本則には、通常の事業年度の区切りが書いてあります。「当会社の事業年度は、毎年4月1日から翌年3月31日までの年1期とする。」といった条文です。ところが、会社が生まれた日は4月1日とは限りません。だから最初の1期だけは、成立の日から最初の決算日までという変則的な期間になります。これを附則で定めます。

決め方には制約が1つあります。事業年度は1年を超えられません。

この法律において「事業年度」とは、法人の財産及び損益の計算の単位となる期間(以下この章において「会計期間」という。)で、法令で定めるもの又は法人の定款、寄附行為、規則、規約その他これらに準ずるもの(以下この章において「定款等」という。)に定めるものをいい 出典: laws.e-gov.go.jp

同じ条文には、この期間が1年を超える場合は開始の日から1年ごとに区分すると続いています。つまり、定款で1年半の事業年度を作っても、税の世界では1年で区切られます。ですから、決算日を決めるときは、成立の日から1年以内に最初の決算日が来るようにします。

どの月を決算月にするかは、会社の事情で決めます。仕事の繁忙期と決算作業が重ならない月を選ぶ、資金繰りの谷を避ける、といった実務的な観点で選ぶ会社が多くあります。消費税や法人税の扱いに関わる論点もありますが、金額や事業の内容で結論が変わるため、決算月を決める前に税務署か税理士に確認してください。ここは定款を作り直さないと変えられない部分なので、設立前に一度考えておく価値があります。

現物出資や設立費用を定款に書くとき

附則の話をするときに、必ず一緒に出てくるのが変態設立事項と呼ばれる項目です。名前は物々しいのですが、意味は単純で、設立のときに会社の財産を減らしかねない取り決めのことです。

株式会社を設立する場合には、次に掲げる事項は、第二十六条第一項の定款に記載し、又は記録しなければ、その効力を生じない。 一 金銭以外の財産を出資する者の氏名又は名称、当該財産及びその価額並びにその者に対して割り当てる設立時発行株式の数 出典: laws.e-gov.go.jp

この条文には続きがあり、会社の成立後に譲り受けることを約した財産、発起人が受ける報酬その他の特別の利益、会社が負担する設立に関する費用の3つが並んでいます。合わせて4つです。

大事なのは末尾の「記載し、又は記録しなければ、その効力を生じない」という部分です。定款に書いていなければ効力が生じません。たとえば、手持ちのパソコンや車を現物で出資して株式を受け取るつもりなら、定款にその財産と価額を書いておかないと、その出資は成立しません。設立にかかった費用を会社の負担にするつもりなら、同じく定款に書いておく必要があります。

これらを書く場所は、附則に置く会社もあれば、本則の中に独立した章を立てる会社もあります。どちらでも構いません。ただ、性質としては設立限りの事柄なので、附則に置くほうが読み手には親切です。

現物出資をする場合、原則としては裁判所が選ぶ検査役の調査を受けることになっています。ただし会社法第33条第10項第1号は、定款に記載された価額の総額が500万円を超えない場合には、この調査が不要になると定めています。小規模な会社が自分の機材を現物出資するときに、手続きが重くならないのはこの例外があるためです。

合同会社の定款に附則はあるのか

ここまでは株式会社を前提に書いてきました。合同会社の場合はどうなるのか。

合同会社にも定款があり、附則を置く形も広く使われています。ただ、中身は株式会社と少し違います。

会社法第576条第1項は、持分会社の定款に必ず記載する事項として、目的、商号、本店の所在地、社員の氏名または名称および住所、社員が無限責任社員か有限責任社員かの別、社員の出資の目的およびその価額または評価の標準の6つを挙げています。合同会社では社員の全部を有限責任社員とすることも定められています。ここで言う社員とは、従業員ではなく出資をした人のことです。

株式会社では発起人と株主が別の言葉で整理されますが、合同会社では出資した人がそのまま社員になります。そのため、出資の内容も社員の名前も、本則の総則や社員の章に書かれることが多く、附則に回るのは最初の事業年度と法令の準拠くらい、という定款も珍しくありません。

もう1つ違うのが、設立のときに公証人の認証が要らない点です。株式会社の定款は認証が必要ですが、合同会社にはその手続きがありません。そのぶん設立の費用も期間も短くなります。ただし定款を作らなくてよいわけではなく、作った定款は会社が保管します。

合同会社で定款を変更するときは、株主総会ではなく社員の同意で行います。会社法第637条は、持分会社は定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によって定款の変更をすることができると定めています。社員が1人なら、同意書も1人分です。

附則でよくある書き間違い

附則は難しくない部分ですが、それでも間違いは起きます。実務で見かけるものを挙げます。

最も多いのが、本則の事業年度と附則の最初の事業年度の食い違いです。本則に「毎年4月1日から翌年3月31日まで」と書いておきながら、附則の最初の事業年度を「成立の日から令和○年12月末日まで」としてしまう。決算月が2つ存在することになり、税務署への届出の段階で指摘されます。ひな形を流用するときに、片方だけ書き換えて片方を直し忘れる、という経路で起きます。

次に多いのが、出資額と資本金の額の書き分けです。「設立に際して出資される財産の価額」と「成立後の資本金の額」は、同じ金額になることが多いものの、別の概念です。出資額の一部を資本準備金に回すと、資本金の額は出資額より小さくなります。会社法第32条第1項は、成立後の株式会社の資本金および資本準備金の額に関する事項を発起人全員の同意で定めると規定しており、両者を分けて考える前提になっています。附則に片方しか書いていない定款を見かけますが、両方を書いておくほうが後から読む人に親切です。

3つめは、発起人が払い込む金額と株式数の対応です。「発起人 ○○○○ 10株、金100万円」といった書き方をしますが、1株あたりの金額が他の記載と合わないことがあります。株式数を変えたときに金額を直し忘れる、という単純な原因です。

4つめは、日付の書き方です。「当会社成立の日」と書くべきところを、定款を作った日や公証役場へ行った日で書いてしまう。会社が成立するのは設立の登記をした日です。会社法第49条は、株式会社は本店の所在地において設立の登記をすることによって成立すると定めています。定款を作った時点では、会社はまだ存在していません。

どれも、読み直せば気づく種類の間違いです。作った直後ではなく、一晩おいてから本則と附則を続けて読む。それだけで大半は防げます。

附則に書いた数字が、あとで効いてくる場面

附則は過去の記録だと書きましたが、そこに書いた数字が何年も先で効いてくることがあります。

まず、資本金の額です。資本金は登記事項なので、登記事項証明書を取れば誰でも見られます。取引先の与信判断で見られるほか、許認可の要件になっている業種もあります。建設業の一般建設業許可では、財産的基礎の要件が定められており、資本金の額が判断材料の1つになります。設立のときに小さく始めて、あとから増資するには、登記と登録免許税が必要になります。

次に、事業年度です。一度決めた決算月を変えるには、定款の変更と税務署への届出が要ります。手続き自体は重くありませんが、変更した年度は期間が短くなり、決算と申告がもう1回発生します。設立のときに考えておくほうが、あとから動かすより安く済みます。

そして、設立時の取締役です。附則に書いた設立時取締役は、最初の任期の起点になります。任期の原則は会社法第332条第1項が定めており、選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時まで、とされています。ここで重要なのが第2項です。公開会社でない株式会社、つまり発行する株式の譲渡に会社の承認が必要な会社であれば、定款によってこの任期を選任後10年以内まで伸ばせます。

1人で作る小さな会社は、ほぼすべてがこの公開会社でない会社に当たります。任期を2年のままにしておくと、役員がまったく変わっていなくても、2年ごとに改選の手続きと登記が必要になります。登記のたびに登録免許税がかかり、忘れれば過料の対象にもなります。任期を10年に設定しておけば、この繰り返しが5分の1に減ります。

反面、途中で役員構成を変えたくなったときに、任期満了を待てないという不便さは出ます。人を入れる予定があるなら、短めにしておくという判断もあります。いずれにせよ、これを決めるのは附則ではなく本則の役員の章です。附則に設立時取締役の名前を書くときに、任期の条文を一緒に開いて確認しておくと、あとの手戻りが減ります。

最後が、発起人の住所です。附則に書いた発起人の住所は、その後に引っ越しても自動では変わりません。設立時の記録なので、変える必要もありません。ただし、代表取締役の住所は登記事項なので、そちらは引っ越しのたびに変更の登記が要ります。附則の住所と登記の住所が違っていても間違いではない、と覚えておいてください。

電子定款で作った会社の附則

設立のときに紙ではなくPDFで定款を作り、電子署名を付けて認証を受ける方法が広く使われています。この場合も、附則の中身は紙の定款とまったく同じです。章立ても条文の並びも変わりません。

違うのは、あとから手を入れられないという点です。電子署名は署名した時点の内容と結びついているため、PDFを書き換えると署名が壊れます。附則に誤字を見つけても、そのファイルを直すことはできません。

実務では、元のPDFはそのまま保管し、必要になったときに変更を反映させた最新版を別の文書として作ります。この最新版には認証も電子署名も要りません。通常のWordやPDFで構わず、紙に印刷して会社の実印を押して保管している会社も多くあります。

なお、電子定款のPDFを紛失した場合、株式会社であれば公証役場に保存されているので、そこで謄本の交付を請求できます。保存の期間には限りがあるため、心当たりがあるなら早めに動くほうが確実です。合同会社は認証を受けていないので、公証役場には残っていません。自社で管理するしかない、ということになります。

役割を終えた附則は、消してよいのか

会社を作って数年が経ち、最初の決算も終わり、取締役の改選も済んだ。附則に書いてある内容は、もう1つも生きていない。これは消してもよいのか、という疑問が出てきます。

結論から言えば、消すこと自体はできます。附則の削除は定款の変更なので、株式会社なら株主総会の決議で行います。会社法第466条は、株式会社は成立後、株主総会の決議によって定款を変更することができると定めています。この決議は特別決議で、会社法第309条第2項により、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が要ります。

ただし、実務では消さずに残しておく会社のほうが多い。理由は2つあります。

1つは、消すために手間と時間がかかることです。役目を終えた条文が残っていても、会社の運営に不都合はありません。わざわざ株主総会を開いて削る動機が弱い。

もう1つは、記録としての価値です。附則を読めば、この会社がいくらで始まり、誰が出資し、誰が最初の取締役だったかが分かります。融資の申し込みや事業承継の場面で、会社の来歴を説明する材料になります。消してしまうと、設立時の定款を別途探すことになります。

他社の定款を見ても、附則は残っているのが通常です。消さないことが普通だと思っておいて構いません。

定款を作り直すとき、附則をどう扱うか

もう1つ、附則をめぐって迷いが出るのが、定款を作り直す場面です。

会社は、設立のあとに目的や商号や本店を変えます。そのたびに株主総会の議事録が増えていき、最初の定款と現在の内容がずれていきます。そこで、変更を反映させた最新版を1つの文書にまとめ直す、ということが行われます。これを現行定款と呼びます。

このとき、附則をどうするか。実務でよく取られているのは、附則をそのまま残したうえで、末尾に変更の経緯を書き足す方法です。「この定款は、令和○年○月○日開催の臨時株主総会の決議により、第2条を変更したものである。」といった記載を、附則の最後に追記していきます。

こうしておくと、1つの文書を読むだけで、会社の始まりと、そこから何がどう変わったかの両方が追えます。金融機関や許認可の窓口が定款の提出を求めるのは、まさにこの2つを確かめたいからです。

なお、作り直した定款に公証人の認証は要りません。会社法第30条第1項が認証を求めているのは設立のときの定款だけで、成立後の変更は株主総会の決議で効力が生じます。印紙も不要です。会社の実印を押した紙で保管している会社が多くあります。

附則の内容が外に出ていく場面

附則は社内の記録だと書きましたが、実際には社外に出ていく場面があります。代表的なのが、会社を作った直後の税務署への届出です。

国税庁は、内国普通法人等の設立の届出について、提出時期を法人設立の日、つまり設立登記の日以後2月以内とし、添付書類として定款の写しを求めています。提出先は納税地の所轄税務署長です。

[提出時期] 法人設立の日(設立登記の日)以後2月以内 [添付書類] 定款、寄付行為、規則又は規約の写し 出典: www.nta.go.jp

つまり、附則に書いた最初の事業年度は、この届出を通じて税務署が把握します。本則の事業年度と附則の最初の事業年度が食い違っていると、ここで確認が入ります。文案を作るときに数字を写し間違えると、あとで面倒になるのはこの経路です。

都道府県税事務所と市区町村への届出でも、同じく定款の写しを求められるのが一般的です。様式と提出先は自治体ごとに違うので、それぞれのサイトで確認します。

このほか、銀行の法人口座を開くとき、許認可を申請するとき、補助金に応募するときにも、定款の写しの提出を求められます。附則は必ずその中に含まれています。自分だけが読む部分ではない、という前提で作っておくのが安全です。

そもそも定款は、求められたら見せる義務のある文書でもあります。会社法第31条第1項は、株式会社は定款を本店と支店に備え置かなければならないと定めています。そして第2項により、株主と債権者は営業時間内であればいつでも、定款の閲覧や写しの交付を請求できます。債権者には、取引先や金融機関のように会社に対して債権を持つ相手が含まれます。

自宅を本店にしている1人の会社でも、この備置きの義務は同じようにかかります。請求されることは実際には多くありませんが、「どこにあるか分からない」という状態は避けます。設立のときに受け取った定款一式を、印鑑カードや登記事項証明書と同じ場所にまとめておく。それだけで、いざ求められたときに慌てずに済みます。写しを求めるときには会社が定めた費用を支払うこととされているので、社内で費用の定めを作っておく会社もあります。

定款を書くときに、どこまで先を見ておくか

ここまでは附則そのものの話でした。最後に、定款を作る段階で何を考えておくとよいかを、仕事の側から見ておきます。

運営者として在宅で働く人や小さな会社を20年見てきた限りでは、設立の書類でいちばん後悔が出るのは、附則ではなく本則の側です。事業年度をよく考えずに決めてしまった、目的を1行しか書かなかった、役員の任期を短く設定して改選のたびに登記費用がかかっている。どれも、設立のときに数分考えれば避けられたことです。

附則は事実の記録なので、後から悩む余地がほとんどありません。だからこそ、附則の書き方で止まっている時間があるなら、そのぶんを本則の設計に回すほうが効きます。

本則を設計するときの手がかりは、これからどんな仕事を受けるかです。開発を軸にするなら、実態と単価の考え方がソフトウェア作成者の年収・単価相場に、案件の中身がアプリケーション開発のお仕事に整理されています。文章や編集を軸にするなら、仕事の広がり方が著述家,記者,編集者の年収・単価相場から読み取れます。目的の条文は、この見通しに合わせて幅を持たせておくと、あとで書き直す回数が減ります。

伸びているのは、成果物ではなく判断を売る形の仕事です。AIコンサル・業務活用支援のお仕事やAI・マーケティング・セキュリティのお仕事のように、企業の相談に乗る領域では、発注の条件が法人限定になっている募集も見られます。法人を作る動機がここにあるなら、定款より先に、受注の形を整えておくほうが早く回り始めます。

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最後に確認です。定款の書き方や事業年度の決め方が税務上どう扱われるかは、会社の事情によって変わります。判断に迷う点が出たら、管轄の法務局の相談窓口、税務署、または司法書士や税理士に確認してください。法務局は申請書の様式と記載例を公開しており、定款や議事録の文案を考えるときの土台として使えます。

よくある質問

Q. 定款の附則には、必ず何かを書かなければいけませんか?

会社法は、定款のどこに何を書くかという章立てまでは決めていません。ただし、設立に際して出資される財産の価額と発起人の氏名と住所は必ず記載すべき事項とされており、実務ではこれらを附則に置くのが通例です。結果として、附則が空になることはほぼありません。

Q. 附則に設立時取締役を書くと、何か違いがありますか?

違います。会社法では、定款で設立時取締役として定められた者は、出資の履行が完了した時に選任されたものとみなされます。附則に書いておけば、発起人が別途選任する書面を作る手間が省けます。1人で会社を作る場合は、この省略の効果が大きくなります。

Q. 役割の終わった附則は削除したほうがよいですか?

削除は可能ですが、実務では残しておく会社が多数です。削除には株主総会の特別決議が必要で、手間に見合う利点が少ないためです。また附則には、いくらで始まり誰が出資したかという会社の来歴が残っており、融資や事業承継の場面で説明の材料になります。

Q. 最初の事業年度は自由に決められますか?

決算月は会社が選べますが、事業年度は1年を超えられません。法人税法は、定款で定めた会計期間が1年を超える場合、開始の日から1年ごとに区分すると定めています。成立の日から1年以内に最初の決算日が来るように設定してください。税務上の有利不利は事業内容で変わるため、税務署か税理士に確認してください。

この記事について

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編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年7月9日最終更新:2026年9月19日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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