定款の事業目的を書き換えるときの文言の決め方


この記事のポイント
- ✓定款目的変更で一番迷うのは
- ✓新しい事業を何という言葉で書くかです
- ✓登録免許税3万円と添付書類
新しい仕事の引き合いが来た、取引先から「その事業は定款に入っていますか」と聞かれた、補助金や許認可の申請で目的の欄を指摘された。定款目的変更を調べ始める入口は、だいたいこの3つのどれかです。まず、安心してください。手続きそのものは難しくありません。難しいのは、新しい事業を何という言葉で書くかという文言の決め方のほうです。この記事では、文言を決める物差しから、決議、登記、登記のあとの届出までを順に並べます。
事業目的は、会社が何をしてよいかを外に示す欄
定款とは、会社の決まりごとを書いた文書のことです。その先頭近くに必ず置かれているのが事業目的の条文で、「当会社は、次の事業を営むことを目的とする。」という書き出しのあとに、営む事業が番号を振って並んでいます。
この欄は会社法で必ず書くことになっています。
株式会社の定款には、次に掲げる事項を記載し、又は記録しなければならない。 一 目的 二 商号 三 本店の所在地 四 設立に際して出資される財産の価額又はその最低額 五 発起人の氏名又は名称及び住所 出典: laws.e-gov.go.jp
目的は5つの必須事項の筆頭に置かれています。合同会社などの持分会社でも同じで、会社法第576条が目的を記載事項の一番目に挙げています。
そして、この目的は定款の中に眠っているだけの文章ではありません。会社法第911条第3項は、設立の登記で登記しなければならない事項の一番目に目的を挙げています。つまり目的は、法務局の帳簿に載り、登記事項証明書を取れば誰でも読める情報です。取引先が会社の実在を確かめるとき、金融機関が融資の審査をするとき、役所が許認可を判断するとき、見ているのは会社が自分で保管している定款ではなく、こちらの登記のほうです。
ここが、目的の文言を軽く扱えない理由になります。社内の文書なら、後から説明を足すことができます。登記は、書いてある言葉だけで判断されます。
目的にない事業をやってしまったらどうなるか
先に、多くの人が気にする点を片付けておきます。定款の目的に書いていない仕事を受けたら、その契約は無効になるのか、という疑問です。
実務の感覚で言えば、取引そのものが直ちに使えなくなるという扱いにはなりません。そこを心配して手が止まるより、目的に書いていないことで具体的に困る場面を押さえておくほうが役に立ちます。困るのは次の3つです。
1つめは、許認可です。建設業、宅地建物取引業、労働者派遣事業、人材紹介、古物商、旅行業、産業廃棄物の収集運搬など、役所の許可や登録が要る事業では、申請の段階で定款の目的を確認されます。目的に該当の事業が書かれていないと、そこで止まります。
2つめは、金融機関です。融資の申し込みでは登記事項証明書を出します。申し込んだ資金の使い道と、登記に載っている目的が噛み合っていないと、説明を求められます。補助金や助成金の申請でも同じことが起きます。
3つめは、取引先の審査です。大きな会社ほど、新規の取引先を登録するときに登記事項証明書を取り、目的の欄と発注する業務が合っているかを見ます。ここで合っていないと、取引開始の前に確認の往復が発生します。
いずれも「契約が無効になる」という話ではなく、「先に進めない」という話です。だからこそ、目的の変更は急ぎではないように見えて、必要になったときには急ぎになります。
目的を変えたくなる場面は、だいたい決まっている
運営者として在宅で働く人や小さな会社を長く見てきた限りでは、目的を足す相談が持ち込まれる場面には型があります。
よくあるのは、受託の内容がずれてきたときです。設立のときは受託開発だけを書いていた会社が、運用保守や研修、コンサルティングまで引き受けるようになる。書いてある言葉は3年前の仕事の形のままで、いま実際にやっていることと離れていきます。
次に多いのが、販売を始めるときです。サービスだけを提供していた会社が、自社の製品や他社の商品を売るようになる。物を仕入れて売る行為は、目的の書き方としてはサービスの提供とは別の言葉になります。
そして、資格や免許を取るときです。人を紹介する仕事を始めるために有料職業紹介の許可を取る、中古品を扱うために古物商の許可を取る。このときは、役所が求める言い回しで目的を書く必要が出てきます。
いずれの場合も、変えるのは定款の条文であり、そのあと登記を直します。この2つがセットです。
文言を決める4つの物差し
ここが本題です。新しい事業を何と書くか。実務では次の4つの物差しで判断します。
1つめは、具体性です。読んだ人がどんな事業なのかを想像できる程度に絞られている必要があります。「商業」「事業」のような、範囲がどこまでも広がる言葉だけでは通りません。一方で、細かすぎると今度は窮屈になります。「ソフトウェアの企画、開発、販売及び保守」くらいの粒度が扱いやすい、というのが現場の相場観です。
2つめは、明確性です。造語や社内用語、はやりの略語だけで書くと、読む人によって意味が変わります。自社では当たり前に使っている呼び方でも、登記を読むのは外部の人です。カタカナの新語を使うなら、「インターネットを利用した情報提供サービス」のように、何をするかが分かる日本語を併せて置きます。
3つめは、適法性です。法律で禁じられている行為や、特定の資格者でなければできない業務をそのまま目的に書くことはできません。たとえば弁護士や税理士にしかできない業務は、その資格を持たない会社の目的にはなりません。
4つめは、営利性です。会社は利益を上げることを前提にした組織なので、収益を生まない活動だけを目的に置く書き方は想定されていません。寄付や地域貢献を掲げたい場合は、本業の目的を並べたうえで、別の項として置くのが一般的です。
この4つを通したうえで、最後にもう1つ確かめることがあります。いまの目的と重複していないかです。既に「ソフトウェアの開発」と書いてあるのに、別項で「システムの開発」を足すと、読む側は違いが分からず、結局どちらも説明を求められます。足す前に、いま書いてある条文を通しで読み直します。
許認可が絡むなら、文言は役所で先に確かめる
4つの物差しより優先される場面が1つあります。許認可です。
許可や登録を出す役所は、定款の目的に決まった趣旨の記載があるかを見ます。何と書けば足りるかは事業ごとに違い、同じ事業でも自治体によって運用の細かさが違うことがあります。ここで自己流の言い回しを使うと、登記を済ませたあとに役所から「この書き方では読み取れない」と言われ、もう一度株主総会からやり直すことになります。決議をやり直し、登記をやり直すということは、登録免許税をもう一度納めるということでもあります。
順番を間違えないことです。正しい順番は、許認可の担当窓口に相談して求められる記載を確認する、その文言で株主総会の決議をする、登記を申請する、登記事項証明書が出てから許認可を申請する、です。登記が終わるまで数日から2週間程度かかり、そのあと許認可の審査にさらに時間がかかります。事業の開始日から逆算して動きます。
窓口に聞くときは、「この事業をやりたいのですが、定款の目的にはどう書けばよいですか」と、やりたいことを先に伝えるのが近道です。文案を持ち込んで可否だけを尋ねると、やりとりが往復します。
聞く先は事業によって分かれます。建設業なら都道府県の建設業の担当課、宅地建物取引業なら都道府県の宅建業の担当課、労働者派遣事業や有料職業紹介事業なら都道府県の労働局、古物商なら営業所を置く場所を管轄する警察署の生活安全課、産業廃棄物の収集運搬なら都道府県の廃棄物対策の担当課、飲食業なら保健所です。国の役所ではなく、地域の窓口が入口になる事業が多い、と覚えておくと迷いません。
窓口に相談するときは、いまの定款の写しと、登記事項証明書を持っていきます。現在の目的に何と書いてあるかが分からないと、担当者も何を足せばよいかを答えられません。電話で済む場合もありますが、文言そのものを確かめたいときは書類を持って行くほうが早く終わります。
「前各号に附帯する一切の事業」は何のためにあるのか
法務局が公開している目的変更の記載例には、変更後の目的として次のような並びが示されています。1が製造販売、2が売買、そして3が「前各号に附帯する一切の事業」です。
この最後の1行は、ほとんどの会社の定款に入っています。役割は、本業に付随して自然に発生する周辺の行為を、いちいち条文にしなくても読み込めるようにしておくことです。たとえばソフトウェアを開発する会社が、その操作説明の資料を作って納品する。これを別項として書かなくても、附帯する事業として読めます。
ただし、この1行は万能ではありません。本業と関係のない新しい事業までは呼び込めません。開発会社が飲食店を始めるとき、この1行があるから書かなくてよい、とはなりません。許認可が要る事業も同じで、役所は附帯の条項では足りないと判断するのが通常です。
つまり、この1行は周辺業務のための緩衝材であって、新規事業の受け皿ではありません。新しい柱を立てるときは、独立した項として書き足します。
目的は多いほうがよいのか、少ないほうがよいのか
設立のときに将来やるかもしれない事業を10も20も並べておく、という考え方があります。後から変更する手間と費用を省けるからです。実際、変更には登録免許税がかかるので、一理はあります。
反面、目的が多すぎる登記には副作用があります。読んだ相手に、何の会社なのかが伝わりにくくなることです。金融機関の担当者や取引先の審査担当は、目的の欄から会社の輪郭をつかみます。関連のない事業が20も並んでいると、本業がどれなのか分からない。融資の場面では、事業の焦点が絞れていない会社と受け取られることがあります。
もう1つ、許認可の場面では逆に邪魔になる場合もあります。業種によっては他の事業との兼業に条件が付くものがあり、目的に書いてあるだけで説明を求められることがあります。
落としどころは、いま現に売上がある事業と、1年以内に着手が見えている事業までを書く、というあたりです。もっと先の構想は、そのときに足せば済みます。変更の手続き自体は、ここまで読めば分かるとおり、一度経験すれば2回目からは半日の作業です。
目的の条文は、実際にどう書き換えるのか
条文の形を見ておくと、議事録に何を書けばよいかがはっきりします。
設立のときによくあるのは、次のような条文です。「第2条 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。1 ソフトウェアの企画、開発及び販売 2 前号に附帯する一切の事業」。
ここに運用保守と研修を足すなら、変更後はこうなります。「第2条 当会社は、次の事業を営むことを目的とする。1 ソフトウェアの企画、開発及び販売 2 情報システムの運用、保守及び技術支援 3 情報技術に関する教育及び研修 4 前各号に附帯する一切の事業」。
見てのとおり、附帯の項は常に最後に置きます。新しい項を末尾に足して附帯の項が真ん中に残ると、「前各号」が何を指すのか読めなくなります。項を追加するときは、附帯の項を一番下へ送り、番号を振り直します。
議事録には、変更後の条文をそのまま全文書きます。法務局の記載例も、議案を「定款変更の件」とし、「定款第2条を次のとおり変更すること」として変更後の条文を掲げる形を示しています。変更前の条文も併せて残しておくと、後から読む人が何が変わったのかを追えます。登記の場面では変更後だけで足りますが、社内の記録としては両方あるほうが役に立ちます。
合同会社でも条文の形は同じです。決議のしかたが総社員の同意に変わるだけで、書く内容は変わりません。社員が1人なら、同意書に「当会社の定款第3条を次のとおり変更することに同意する」と記し、変更後の条文を掲げて記名押印します。
電子定款で作った会社が目的を変えるとき
設立のときに紙ではなくPDFで定款を作り、電子署名を付けて認証を受けた会社が増えています。紙で作ると収入印紙が要るのに対し、電子の文書にはこれがかからないためです。
印紙税の対象になる定款は、国税庁の一覧表で第6号文書として整理されています。
6 [定款] (注) 株式会社、合名会社、合資会社、合同会社または相互会社の設立のときに作成される定款の原本に限ります。 4万円 出典: www.nta.go.jp
金額は4万円ですが、注意書きに「設立のときに作成される定款の原本に限ります」とあることに目を留めてください。ここから2つのことが読み取れます。1つは、設立のあとに目的を変えて作り直した定款には、この印紙が要らないということ。もう1つは、印紙が課されるのは紙という物に対してであり、紙を作らなければ課税の対象になる文書が存在しない、ということです。電子定款で設立費用が抑えられる仕組みは、この一行に集約されています。
では、設立を電子で行った会社が目的を変えるときはどうなるか。結論は、紙で作った会社と何も変わりません。変更の場面では公証人の認証が不要なので、電子署名を付け直す必要もありません。株主総会の議事録を作り、登記を申請するだけです。
注意点があるとすれば、変更後の定款をどの形で保管するかです。設立のときの定款がPDFで手元にある場合、そのPDFを直接書き換えることはできません。電子署名は、署名した時点の内容と結びついているためです。書き換えると署名が壊れます。
実務では、元のPDFはそのまま残し、変更を反映させた最新版を別の文書として作ります。この最新版には公証人の認証も電子署名も要らず、通常のWord文書やPDFで構いません。会社の実印を押した紙で保管している会社も多くあります。求められたときに出せる形であればよい、と考えれば足ります。
決議のしかた
目的を変えるのは定款の変更なので、株式会社では株主総会の決議が要ります。
株式会社は、その成立後、株主総会の決議によって、定款を変更することができる。 出典: laws.e-gov.go.jp
この決議は、普通の決議より条件が重い特別決議です。会社法第309条第2項は、議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成を要すると定めています。定款の変更は会社法の第6章に置かれているため、同項第11号によってこの要件が働きます。
株主が代表者1人だけの会社なら、実質は自分で決めることになりますが、議事録は必ず作ります。登記の添付書類として法務局に出すからです。株主総会を実際には開かず、株主全員が書面で同意して決議があったものとみなす方法(会社法第319条第1項)を使う会社も多く、その場合も書面は残します。
合同会社をはじめとする持分会社には株主総会がありません。代わりに会社法第637条が、持分会社は定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によって定款の変更をすることができると定めています。社員全員の同意書を1枚作る、というのが実務の形です。社員が1人の合同会社なら、同意書も1人分で足ります。定款に「社員の過半数の同意による」といった別段の定めを置いている会社は、そちらが優先されるので、まず自社の定款を読み直します。
決議をしたら、その日から2週間以内に登記を申請します。期限の根拠は会社法第915条第1項で、登記事項に変更が生じたときは2週間以内に変更の登記をしなければならないと定めています。目的は第911条第3項第1号の登記事項なので、ここに当たります。
法務局に出す書類と、かかるお金
申請書の様式は法務局のサイトに置かれています。株式会社なら「株式会社変更登記申請書(目的の変更)」、合同会社なら「合同会社変更登記申請書(商号の変更及び目的の変更)」です。記載例のPDFと、書き込み用のWord・PDFの両方が用意されているので、白紙から作る必要はありません。
税金は登録免許税です。法務局の記載例には、目的の変更の登記について次のように示されています。
1.登録免許税 金3万円 収入印紙又は領収証書で納付します 出典: houmukyoku.moj.go.jp
3万円を収入印紙で納めます。収入印紙は法務局の窓口や郵便局で買えます。なお、同じ株主総会で商号の変更もまとめて決議した場合、商号と目的はどちらも同じ区分の登記事項として扱われるため、別々に3万円ずつかかるわけではありません。まとめて決議して1件で申請すると費用が抑えられるのは、このためです。役員の変更のように区分の違う登記を同時に申請する場合は、区分ごとに税額が積み上がります。
添付書類は3種類です。株主総会議事録が1通。株主リストが1通。代理人に頼む場合は委任状が1通です。
株主リストは、2016年10月から株主総会の決議を要する登記に必要になった書類です。法務局の記載例は、記載を要する株主の数について、議決権の割合の合計が3分の2に達するまでと、10位に達するまでのいずれか少ない人数と案内しています。記載するのは氏名または名称、住所、株式数、議決権数、議決権数の割合で、会社の代表者名義で証明します。株主が1人の会社なら1行で終わります。
司法書士に頼む場合は、これに報酬が加わります。報酬は事務所ごとに自由に決められるので、相場という言い方はできません。見積もりを取るときは、登録免許税を含んだ総額なのか、報酬だけの金額なのかを必ず確かめます。ここを聞かずに2件を比べると、安く見えたほうが結局高い、ということが起きます。
登記すべき事項の書き方で、最もつまずくところ
申請書の中で間違いが集中するのが、登記すべき事項の欄です。法務局の記載例には、この欄について注意書きが添えられています。目的は変更部分だけでなく、変更後の全ての目的を記録してください、というものです。
ここを読み飛ばして、新しく足す1項だけを書いてしまう人がとても多い。目的の登記は、既存の並びに1行を追記する形ではなく、変更後の目的一式で丸ごと入れ替える形になります。ですから、既にある項も含めて、変更後の姿をそのまま全部書き出します。
議事録の書き方も同じ考え方です。法務局の記載例では、議案を「定款変更の件」とし、定款の該当条を次のとおり変更する、として変更後の条文の全文を掲げています。変更後の姿を残すことで、後から読んだ人がその時点の定款を再現できます。
文字を訂正するときの作法も押さえておきます。法務局は、訂正したい文字を二重線で消し、近くに正しい文字を書いて押印する方法を案内しています。修正液や塗りつぶしは使えません。申請書を直すときは申請書に押した印鑑を、添付書面を直すときはその書面に押した印鑑を使います。
議事録の原本を手元に残したいときは、原本の還付を請求できます。原本をコピーし、そのコピーに申請書へ押印した人が「原本に相違ありません。」と記載して記名したうえで、原本と一緒に提出します。
期限を過ぎてしまった場合についても、法務局は明記しています。
登記すべき期間内に登記を怠り、その後に登記申請をする場合であっても、そのことだけをもって申請が却下されることはありませんが、会社・法人の代表者に対して、裁判所から100万円以下の過料に処される可能性があります。 出典: houmukyoku.moj.go.jp
過料は会社ではなく代表者個人に科されるものです。気づいた時点ですぐ申請するのが正解で、放置するほど不利になります。
登記が終わったあとの届出
登記が完了したら、税務署へ届出を出します。国税庁は、異動事項に関する届出として事業目的の変更を明示しています。
事業年度等の変更、納税地の異動、資本金の額等の異動、商号又は名称の変更、代表者の変更、事業目的の変更、法人の合併、法人の分割による事業の譲渡若しくは譲受け、法人区分の変更、法人の解散(信託の終了を含みます。)・清算結了、支店・工場等の異動等をした場合の手続です。 出典: www.nta.go.jp
提出の時期は異動等のあと速やかに、提出先は異動前の納税地の所轄税務署長です。添付書類は原則なしとされていますが、異動事項の内容確認のために定款等の写しを確認する場合があると案内されています。手続の根拠は法人税法第15条と第20条、および法人税法施行令第18条です。e-Taxソフトで作成して提出でき、書面で出すこともできます。
都道府県税事務所と市区町村にも、同じく異動の届出が要ります。こちらは自治体ごとに様式と提出先が違うので、それぞれのサイトで様式を確認します。
このほか、許認可を取っている事業なら、担当官庁への変更の届出が必要になる場合があります。社会保険や労働保険は、目的の変更だけであれば届出の対象外であることが多いのですが、事業の内容によって労災保険の料率区分が変わることがあるので、新しい事業が主力になるときは労働基準監督署に確認しておくと安全です。
定款そのものはどう直すのか
登記が終わったあと、手元の定款用紙をどうするかで迷う人がいます。結論を言えば、公証役場へ持ち込んで認証を受け直す必要はありません。公証人の認証が要るのは、会社を作るときに最初に作った定款だけです。会社法第30条第1項が認証を求めているのは設立時の定款であり、成立後の定款変更は株主総会の決議で効力が生じます。
実務で行われているのは2つのやり方です。1つは、最初の定款と、その後の変更を決議した議事録を一式で保管しておく方法。もう1つは、変更を反映させた最新版を1つの文書として作り直し、末尾に変更の経緯を記す方法です。後者は現行定款と呼ばれ、金融機関や許認可の窓口から提出を求められたときに渡すのはこちらになります。
どちらの形にせよ、変更の根拠となった議事録は捨てないことです。会社法第31条は、定款を本店と支店に備え置かなければならないと定めており、株主と債権者は営業時間内であれば閲覧や写しの交付を求められます。求められたときに、いまの内容と、そこに至った経緯の両方を示せる状態にしておくのが備え置きの意味です。
なお、条を追加すると、それ以降の条番号がずれます。他の条文から「第10条に定める」といった形で参照している箇所があると、そこが食い違います。目的の条文だけを差し替える変更ならずれは起きませんが、他の変更とまとめて決議するときは、条文全体を通して読み直しておきます。
受ける仕事の幅から、目的の文言を逆算する
ここまでは手続きの話でした。最後に、文言を決める判断そのものについて、市場の側から補助線を引いておきます。
目的の欄は、会社が「これから何で稼ぐか」を外に宣言する場所です。であれば、いま来ている引き合いだけでなく、単価と継続性の見込める仕事の形から逆算して書くほうが無駄がありません。
たとえば開発の受託を軸にするなら、開発だけでなく運用保守と技術支援まで含めた書き方にしておくと、契約の形が変わったときに書き直さずに済みます。仕事の実態と単価の考え方はソフトウェア作成者の年収・単価相場に、案件の中身はアプリケーション開発のお仕事に整理されています。文章や編集で立てるなら、制作だけでなく企画や編集業務まで書いておくと幅が出ます。仕事の広がり方は著述家,記者,編集者の年収・単価相場を見ると分かります。
近年伸びているのは、成果物ではなく判断を売る形の仕事です。AIコンサル・業務活用支援のお仕事やAI・マーケティング・セキュリティのお仕事のように、企業側の相談に乗る仕事では、発注が法人限定になっている募集も見られます。この領域に出るつもりなら、目的に「経営コンサルティング」「業務改善に関する助言及び支援」といった項を置いておくと、審査の場面で説明が短く済みます。
運営者として20年この市場を見てきた限りでは、目的の欄を丁寧に書いている会社ほど、初回の取引が早く立ち上がります。理由は単純で、相手の社内手続きが止まらないからです。逆に、設立のときのまま何年も触っていない会社は、取引先の審査のたびに説明の往復が発生します。この往復は見えにくい費用です。
中間に人が入らない直接の取引では、同じ予算でも依頼する側はより多く頼め、受ける側は手取りが厚くなります。その関係を作るときに効くのが、相手が確かめたい情報を先に整えておくことです。契約面をどう整えるかはフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストが発注書に入れるべき項目から解説しており、代金が支払われなかったときの手順は未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】にあります。
書類の作法そのものを鍛えたいなら、ビジネス文書検定のように文書の型を体系的に学べる資格が実務に直結します。議事録も同意書も、形が整っているだけで差し戻しが減ります。技術職で法人を立てる人なら、CCNA(シスコ技術者認定)のように発注側が評価軸として見る資格を押さえておくと、目的の文言とは別の軸で選ばれやすくなります。会計まわりをどこまで自分でやるか迷っているなら、会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】に専門家側から見た業務の切り分け方が書かれており、外注と内製の線引きの目安になります。
最後に確認です。目的の書き方が許認可の要件を満たすかどうか、税務上どう扱われるかは、事業の内容と会社の事情によって変わります。判断に迷う点が出たら、管轄の法務局の相談窓口、許認可の担当官庁、税務署、または司法書士や税理士に確認してください。この記事は、確認すべき論点を先に把握しておくためのものです。
よくある質問
Q. 事業目的を変えるのに、いくらかかりますか?
法務局の記載例では、目的の変更の登記の登録免許税は3万円と示されています。収入印紙で納めます。同じ株主総会で商号の変更もまとめて決議すれば、同じ区分の登記として1件で申請でき、費用を抑えられます。司法書士に依頼する場合は、これに報酬が加わります。
Q. 目的に書いていない事業を始めてしまいました。今からでも間に合いますか?
間に合います。気づいた時点で株主総会の決議をして、登記を申請してください。会社法では変更が生じた日から2週間以内に登記することとされており、遅れても申請自体は受け付けられますが、法務局は代表者が裁判所から100万円以下の過料に処される可能性があると案内しています。放置するほど不利になります。
Q. 新しく足す1項だけを申請書に書けばよいですか?
いいえ。法務局の記載例には、目的は変更部分だけでなく変更後の全ての目的を記録するようにと注意書きがあります。既にある項も含めて、変更後の目的を一式で書き出します。ここは間違いが最も多い箇所です。
Q. 目的を変えたら、公証役場で認証を受け直す必要はありますか?
必要ありません。公証人の認証が要るのは、会社を作るときの最初の定款だけです。会社が成立した後の定款変更は、株主総会の決議で効力が生じます。変更後の内容をまとめた定款を作り直す場合も、決議した議事録を併せて保管しておくことが前提になります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
前田 壮一@SOHO編集部
元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身
大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。
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