定款を変えたら登記も要るのか|要る変更と要らない変更

丸山 桃子
丸山 桃子
定款を変えたら登記も要るのか|要る変更と要らない変更

この記事のポイント

  • ✓定款変更登記が必要になる変更と
  • ✓定款を変えても登記が要らない変更を4つの組み合わせで整理します
  • ✓2週間の期限と過料のリスクまで解説します

定款を変えることになった。事業の内容を広げたい、会社の名前を変えたい、決算の時期をずらしたい。そこまでは決まったものの、次に出てくるのが「これは登記も必要なのか」という疑問です。調べ始めると、登記が要ると書いてあるページと、要らないと書いてあるページの両方が出てきて、余計に分からなくなります。

答えは、変更する項目によって違います。定款を変えても登記がまったく発生しないものがありますし、逆に定款を変えていないのに登記だけが必要になるものもあります。この2つが別々の仕組みだということを理解すると、自分の会社の場合にどうすればよいかが一発で分かるようになります。

この記事では、定款の変更と登記の関係を4つの組み合わせに整理し、それぞれにどんな項目が入るのかを具体名で並べます。そのうえで、決議の方法、作る書類、費用の目安、期限と期限を過ぎたときのリスクまでをまとめます。

「定款を変える」と「登記を書き換える」は別の話

まず、2つの文書の性格を分けて捉えてください。

定款は、会社が自分たちのために作る基本ルールの文書です。会社の目的、名前、本店をどこに置くか、株主総会をどう開くか、役員を何人置くか。こうした決まりごとを書いてあります。この文書は会社の中で保管するもので、外部の誰かに提出して登録する仕組みにはなっていません。設立のときだけ公証人に確認してもらう手続きがありますが、それ以降の書き換えについて外部の確認は要りません。

登記は、国が管理している会社の公的な記録です。誰でも手数料を払えば登記事項証明書を取れます。取引の相手がその会社の実在と代表者を確かめるための仕組みなので、載っている項目は法律で決まっています。会社法は、株式会社について登記しなければならない事項を29の号に分けて列挙しています。合同会社については別の条文で、11の号に分けて列挙しています。

つまり、定款は会社が自由に決められる中身を含んだ文書、登記は法律が決めた項目だけを載せる記録です。この2つは重なる部分がありますが、一致はしていません。

重なる部分の例が商号です。会社の名前は定款にも書かれていますし、登記にも載っています。だから商号を変えると、定款の書き換えと登記の書き換えの両方が発生します。

重ならない部分の例が事業年度です。決算をいつ締めるかは定款に書かれていますが、登記の項目には入っていません。だから事業年度を変えても、定款を書き換えるだけで登記は発生しません。

逆に、定款に書かれていないのに登記される項目もあります。代表例が役員の氏名です。誰が取締役かは定款に書くものではありませんが、登記には載ります。だから役員が交代すると、定款は変えずに登記だけを書き換えます。

4つの組み合わせで整理する

この関係を表にすると、次の4つに分かれます。自社の変更がどこに入るかを確かめてください。

組み合わせ1:定款の変更が必要で、登記も必要。 商号、目的、本店の所在地を別の市区町村に移す場合、公告の方法、発行可能株式総数、株式の譲渡制限に関する定め、取締役会や監査役を置くかどうかといった機関の設計、会社の存続期間や解散の事由、単元株式数、株券を発行する旨。こうした項目が入ります。手続きとしては、決議をして定款を書き換え、そのうえで登記も申請します。

組み合わせ2:定款の変更は必要だが、登記は不要。 事業年度、取締役の員数、取締役の任期、株主総会の招集に関する定め、基準日の定め、株主総会の議長を誰にするか。こうした項目です。決議をして定款を書き換えれば終わりで、法務局に出すものはありません。

組み合わせ3:定款の変更は不要だが、登記は必要。 役員の就任と退任、代表取締役の交代、資本金の額の増減、本店を同じ市区町村の中で移す場合、支店の設置。こうした項目です。定款に「本店は東京都渋谷区に置く」としか書いていなければ、渋谷区内での引っ越しは定款に触れずに登記だけで済みます。

組み合わせ4:どちらも不要。 就業規則、社内規程、業務の進め方に関する取り決め。会社のルールではあっても、定款にも登記にも入っていないものです。

この4つのうち、混乱のもとになるのは2と3です。定款を書き換えたのだから登記もしなければ、と思い込んで法務局に問い合わせるパターンが組み合わせ2。役員が代わっただけだから定款には関係ない、と思って登記まで忘れるパターンが組み合わせ3です。

自社の変更がどこに入るか迷ったら、判断の順番はこうなります。まず「その項目は定款に書かれているか」を、手元の定款を開いて確かめます。次に「その項目は登記事項証明書に載っているか」を、証明書を取って確かめます。この2つの答えの組み合わせが、そのまま作業の内容になります。

定款変更も登記も必要な項目

いちばん件数が多いのがこの組み合わせです。代表的なものを見ていきます。

商号の変更。 会社の名前を変える場合です。同じ住所にすでに同じ商号の会社がある場合は登記できないので、事前に確認します。会社名を変えると、銀行口座、契約書、印鑑、名刺、ウェブサイトまで影響が及ぶため、登記の手続きそのものより周辺の作業のほうが重くなります。

目的の変更。 事業の内容を追加したり変えたりする場合です。フリーランスから法人にした人が、設立時に想定していなかった分野の仕事を受けるようになったときに発生します。目的は登記に載るので、取引先や許認可の窓口から「この事業が目的に入っていない」と指摘されることがあります。許認可が必要な事業を始めるときは、目的に適切な文言が入っているかを先に確認してください。

本店を別の市区町村に移す場合。 定款には本店の所在地を書きますが、多くの会社は「東京都渋谷区」のように最小行政区画までしか書いていません。この書き方なら、渋谷区内の移転では定款に触れる必要がありません。区をまたぐと定款の書き換えが必要になります。管轄する法務局が変わる移転では、手続きも費用も重くなります。

公告の方法。 決算などを世間に知らせる手段を、官報にするか、新聞にするか、自社のサイトに載せる電子公告にするかという定めです。これは定款にも登記にも載ります。電子公告を選ぶ場合、そのページのURLも登記されます。

発行可能株式総数の変更。 発行できる株式の上限です。増資を重ねて上限に近づいたときに引き上げます。増資の前提として必要になることがあるので、増資を計画している会社は残りの枠を確認しておいてください。

株式の譲渡制限に関する定め。 株式を譲るときに会社の承認が要る、という定めです。中小企業のほとんどがこの定めを置いています。承認する機関を取締役会から株主総会に変えるといった細かい変更も、定款と登記の両方に反映します。

機関の設計。 取締役会を置くのをやめる、監査役を置く、といった変更です。役員が減って取締役会の人数を満たせなくなったときなどに発生します。機関を変えると役員の構成も変わるので、役員変更の登記が同時に走ることが多くなります。

定款変更は必要だが登記は不要な項目

この組み合わせを知っているかどうかで、無駄な費用と手間が変わります。

事業年度の変更。 決算月を変える場合です。定款には事業年度を書いてありますが、登記の項目には入っていません。したがって株主総会で決議して定款を書き換えれば、法務局に出すものはありません。登録免許税もかかりません。

ただし、登記が不要でも税務署への届出は必要です。異動届出書を提出し、変更後の事業年度で申告することになります。決算月を変えると、変更した年度だけ期間が短くなり、その短い期間で申告と納税をすることになります。消費税の扱いが変わる場合もあるので、変更する前に税務署か税理士に確認してください。

取締役の員数。 「当会社の取締役は3名以内とする」といった定めを変える場合です。登記されるのは実際に就任している取締役の氏名であって、定款上の上限や下限ではありません。したがって員数の定めを変えても登記は発生しません。

取締役の任期。 非公開会社では任期を最長10年まで伸ばせます。この年数を変える場合、定款の書き換えは必要ですが、任期そのものは登記事項ではないので登記は不要です。ただし、任期を伸ばすと役員の重任登記の回数が減り、任期を縮めると増えます。登記の費用に間接的に効いてくる変更です。

株主総会に関する定め。 招集の時期、招集通知をいつまでに出すか、議長を誰にするか、定足数をどうするか。こうした定めは定款に書かれていますが、登記の項目には入っていません。

基準日の定め。 誰を株主として扱うかの基準日に関する定めです。これも登記されません。

この組み合わせに当たる変更では、作るものは株主総会議事録と、書き換えた定款だけです。法務局に行く必要はなく、費用も発生しません。登記が要ると思い込んで司法書士に相談すると、その相談自体が無駄になります。まずは自社の定款と登記事項証明書を並べて、その項目が証明書に載っているかを見てください。載っていなければ登記は不要です。

定款変更は不要だが登記は必要な項目

逆のパターンです。こちらは忘れると過料のリスクがあるため、注意が要ります。

役員の就任と退任。 取締役や監査役が代わったときです。誰が役員かは定款に書くものではないので、定款は触りません。ただし登記は必要です。忘れやすいのが任期満了による重任で、同じ人が続けて就任する場合でも、任期が切れた時点でいったん退任し、選び直したことを登記します。非公開会社で任期を10年にしていると10年に1度しか発生しないため、存在ごと忘れられがちです。

代表取締役の交代、および代表取締役の住所の変更。 代表取締役は氏名だけでなく住所も登記されます。引っ越しただけでも登記が必要になります。

資本金の額の増減。 資本金の額は登記事項です。増資をすれば登記が発生します。株式会社では、発行する株式の条件を決めるのは株主総会ですが、定款そのものを書き換えるわけではありません。ただし発行可能株式総数の枠を超える場合は、そこだけ定款の変更が必要になります。

本店を同じ市区町村の中で移す場合。 定款に最小行政区画までしか書いていなければ、定款は触らずに登記だけを書き換えます。自宅を本店にしている会社が引っ越したときによく起きます。

支店の設置と廃止。 支店の所在場所は登記事項です。

発行済株式の総数の変更。 増資や自己株式の消却で株数が変わったときです。

この組み合わせで大事なのは、「定款を触らないから軽い手続きだ」と考えないことです。登記が必要である以上、期限も過料のリスクも、定款変更を伴う場合とまったく同じです。

定款を変えるときの決め方

定款を書き換えると決めた場合、会社の形によって決議の方法が違います。

株式会社の場合。 定款の変更は株主総会の決議で行います。しかも通常の過半数ではなく、重い要件が課されています。議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。定款で「出席の要件は議決権の3分の1以上でよい」と緩めることはできますが、賛成の割合を3分の2より下げることはできません。

株主が1人だけの会社なら、その1人が決めれば成立します。フリーランスから法人にした人の多くがこの形です。株主が複数いる会社では、3分の2を集められるかが実務上の関門になります。

合同会社の場合。 定款の変更は、定款に別段の定めがある場合を除き、総社員の同意によって行います。多数決ではなく全員です。社員が3人いて2人が賛成でも、残り1人が同意しなければ変更できません。ただし定款の中に「この事項の変更は業務執行社員の過半数で決める」といった定めを置いておけば、その定めが優先します。設立のときにこの一文を入れておくかどうかで、後の手続きの重さが変わります。

なお、定款を書き換えるときに公証人の確認は不要です。公証人の認証が要るのは設立のときだけで、設立後の変更については会社の中の決議だけで効力が生じます。この点を知らずに公証役場に問い合わせる人がいますが、その必要はありません。

書き換えた定款は会社で保管します。何度も変更していると、どれが最新版か分からなくなることがあります。変更のたびに日付を入れて保存し、議事録とセットで残しておくと、次の手続きが楽になります。

手続きの流れと作る書類

登記が必要なパターンで、実際に何をするかを順に見ます。

第1段階は決議です。 株式会社なら株主総会を開き、定款の変更を決議します。議事録には、開催した日時と場所、出席した株主の数と議決権の数、議案の内容、可決した事実、議長と出席した取締役の氏名を書きます。合同会社なら総社員の同意書を作り、社員全員が押印します。

第2段階は定款の書き換えです。 決議した内容を反映した新しい定款を作り、保管します。

第3段階は登記の申請です。 申請書に、会社法人等番号、商号、本店、登記の事由、登記すべき事項、登録免許税の額、添付書類を書き、代表者の住所と氏名を書いて、登記所に提出した印鑑を押します。

添える書類は、株式会社なら株主総会議事録と株主リストが基本です。株主リストは、登記すべき事項について株主総会の決議を要する場合に添える書面で、議決権の割合が高い順に、上位10名か、割合を足して3分の2に達するまでの人数か、少ないほうまでを書きます。代理人に任せる場合は委任状が加わります。

合同会社なら総社員の同意書が基本です。商業登記のルールでも、登記すべき事項について総社員の同意を要するときは、その同意があったことを証する書面を添えると定められています。

定款そのものを添えるかどうかは登記の内容によります。多くの変更では不要ですが、定款の定めに基づいて何かを決めた場合は、その根拠を示すために添えることがあります。

提出は、本店の所在地を管轄する法務局に、窓口か郵送かオンラインで行います。オンラインは専用のソフトウェアと電子証明書が要るため、年に何度も登記をしない会社には紙のほうが早いこともあります。

費用はいくらか。まとめて変えると安くなる

登録免許税の額は国税庁が税額表を公開しています。主なものを挙げます。

商号の変更、目的の変更、公告方法の変更、発行可能株式総数の変更など。 これらは登記事項の変更として、1件につき3万円です。

役員に関する事項の変更。 1件につき3万円ですが、資本金の額が1億円以下の会社については1万円です。中小企業のほとんどはこちらに当たります。

本店の移転。 1箇所につき3万円です。管轄する法務局が変わる移転では、移転前と移転後の両方で手続きが必要になるため、合計6万円になります。

資本金の額の増加。 増加した額の1000分の7で、3万円に満たないときは3万円です。

ここで知っておくと得をするのが、「1件につき」という単位の意味です。商号の変更と目的の変更を同じ申請書でまとめて出せば、どちらも同じ区分の登記なので合計3万円で済みます。別の日に分けて申請すると、3万円が2回かかります。変更したい項目が複数あるなら、時期をそろえて1回の申請にまとめるのが基本です。

一方、区分が違う登記は合算されません。商号の変更と役員の変更を同時に出す場合、前者で3万円、後者で1万円の合計4万円になります。

司法書士に依頼する場合は、この税額に報酬が加わります。金額は依頼先と内容によりますが、議事録の作成まで含めて任せられるので、実務の負担は大きく減ります。自分で進めるなら、法務局が公開している記載例を写す形で作れます。変更する項目が1つで、株主が少ない会社なら、自分でやり切れる手続きです。

登記が完了したら、変更後の登記事項証明書を取っておきます。銀行や取引先への届出でそのまま使えます。

期限は2週間。過ぎたときのリスク

会社の登記事項に変更が生じたときは、2週間以内に変更の登記をしなければならないと会社法が定めています。定款の変更にともなう登記も、この期限の対象です。

起算日は変更の効力が生じた日です。株主総会で決議した日に効力が生じる場合はその日、議案の中で効力発生日を別に定めた場合はその日になります。議事録の作成日ではありません。

期限を過ぎても、登記の申請自体は受け付けられます。窓口で断られることはありません。ただし制裁の規定があります。

期限を過ぎると「登記懈怠」となり、代表者個人に最大100万円の過料が科されるリスクがあります。 出典: biz.moneyforward.com

会社法にも、登記をすることを怠ったときは100万円以下の過料に処する、という定めがあります。過料は会社ではなく代表者個人に届きます。金額は遅れの長さや事情によって変わるため一律ではありません。

実務で問題になりやすいのは、役員の重任登記を長年放置しているケースです。非公開会社で任期を10年にしていると、10年に1度しか発生しないため存在ごと忘れられます。放置が長期にわたって発覚すると、まとまった額の通知が届くことがあります。

もう1つのリスクが、12年間まったく登記がされていない株式会社は解散したものとみなされる手続きの対象になることです。実際には事業を続けているのに、登記を放置していたために整理の対象になる会社が毎年一定数あります。任期を長く設定している会社ほど、この期間に近づきやすくなります。

合同会社の場合はどこが違うか

ここまでは株式会社を中心に説明してきました。合同会社でも考え方は同じですが、登記される項目の中身が違うので、対応表を作り直す必要があります。

会社法が定める合同会社の登記事項は、目的、商号、本店および支店の所在場所、存続期間や解散の事由についての定款の定めがあるときはその定め、資本金の額、業務を執行する社員の氏名または名称、会社を代表する社員の氏名または名称および住所、代表社員が法人であるときの職務を行うべき者の氏名と住所、公告方法についての定款の定め、電子公告に関する事項です。株式会社にあった発行可能株式総数、発行済株式の総数、株式の譲渡制限、取締役会や監査役といった機関の設計は、そもそも存在しません。

この違いから、合同会社では次のようになります。定款の変更も登記も必要な項目は、商号、目的、本店を別の市区町村に移す場合、公告方法、存続期間や解散事由の定めです。定款の変更は必要だが登記は不要な項目は、事業年度、業務執行社員の権限に関する取り決め、損益の分配の割合、社員総会に関する定めなどです。合同会社は利益の配分を出資の割合と切り離して自由に決められますが、その配分は登記されません。

注意が要るのが社員に関する項目です。合同会社では社員の氏名と住所、出資の額が定款に書かれています。したがって社員が入れ替われば必ず定款の変更が発生します。一方で登記に載るのは業務を執行する社員と代表社員だけなので、業務を執行しない社員が入れ替わっても登記は発生しません。この場合、定款は変えるが登記はしない、という組み合わせになります。ただしその出入りによって資本金の額が動くなら、資本金の額は登記事項なので登記が要ります。

決議の要件も違います。株式会社は3分の2以上の賛成で足りますが、合同会社は原則として社員全員の同意です。社員が増えるほど手続きが重くなるので、設立のときに「この事項は業務執行社員の過半数で決める」といった定めを入れておく価値があります。

見落としやすい注意点

最後に、実務でつまずきやすい箇所を挙げます。

手元の定款が最新版か分からない。 過去に変更しているのに、書き換えた版を保管していないケースです。この状態で新しい変更をすると、どの条文をどう直したのかが追えなくなります。変更のたびに日付入りで保存してください。

登記事項証明書を見ずに判断する。 その項目が登記に載っているかどうかは、証明書を取れば1分で分かります。数百円の手数料で確認できることを推測で済ませると、無駄な申請か、逆に申請漏れが起きます。

効力発生日を議事録に書き忘れる。 いつから効力が生じるのかを書いておかないと、登記の原因年月日を決められません。

株主リストの人数を間違える。 上位10名と、割合を足して3分の2に達するまでの人数の、少ないほうまでです。株主が5人しかいない会社で3人分しか書かないといった誤りが起きます。

目的の書き方が足りない。 許認可が必要な事業では、窓口が求める文言が入っていないと許可が下りないことがあります。目的を変えるときは、その事業の許認可の窓口に文言を確認してから決議するのが安全です。

事業年度を変えて税務署への届出を忘れる。 登記が不要な変更だからといって、何もしなくてよいわけではありません。

変更したい項目を並べて、かかるお金を計算してみる

税率の表だけを見ても、自分の会社でいくらになるのかは見えてきません。よくある組み合わせで計算しておきます。資本金は1億円以下、登記事項証明書は変更後に窓口で2通取る前提です。登記事項証明書の交付手数料は法務省の一覧で1通600円と示されています。

商号だけを変える場合。 登録免許税3万円に証明書2通の1,200円を足して、合計31,200円です。株主総会の議事録と株主リストは自分で作れば0円です。

商号と目的を同じ申請書で変える場合。 どちらも登記事項の変更という同じ区分なので、登録免許税は3万円のままです。証明書代を足して合計31,200円。商号を先に申請して、半年後に目的を申請すると3万円が2回になるので、同じ内容でも3万円の差が付きます。

商号の変更と代表取締役の交代を同時に出す場合。 区分が違うので合算されません。3万円と1万円で登録免許税は4万円、証明書代を足して合計41,200円です。

管轄の違う場所へ本店を移し、あわせて目的も変える場合。 本店移転は1箇所につき3万円で、管轄が変わると移転前と移転後の両方で登記するため6万円。目的の変更で3万円が加わり、登録免許税は9万円です。証明書代を足すと合計91,200円になります。ここまで来ると司法書士の報酬を払っても手間との釣り合いが取れる水準です。

つまり、費用を抑える方法はひとつだけです。変えたい項目を書き出して、同じ区分のものを同じ日の申請にまとめる。定款の変更が絡む項目なら、株主総会も1回で済みます。

登記が終わってからが本番。届け出る先が残っている

法務局で登記が完了しても、それを各所に知らせる作業が残ります。ここを落とすと、納税通知が古い住所に届く、口座の名義と請求書の社名が合わない、といった形で後から表面化します。

税務署。 異動届出書を出します。国税庁の案内は対象をこう並べています。

事業年度等の変更、納税地の異動、資本金の額等の異動、商号又は名称の変更、代表者の変更、事業目的の変更 出典: nta.go.jp

提出時期は異動等後すみやかに、提出先は異動する前の納税地を所轄する税務署長です。添付書類は原則なしですが、内容の確認のために定款等の写しを見せてほしいと言われることがあります。

都道府県税事務所と市町村。 税務署とは別に、同じ趣旨の届出が必要です。様式の名前は自治体によって違うので、納税通知を送ってきている窓口の案内を確認します。

年金事務所。 商号や本店が変わると、適用事業所の名称と所在地が変わります。届出の様式と期限は日本年金機構の適用関係届書のページで確認してください。従業員を雇っているなら、労働基準監督署とハローワークにも同じ変更の届出が発生します。

銀行。 口座の名義は自動では変わりません。変更後の登記事項証明書と、代表者の本人確認書類を持って窓口に行きます。融資を受けているなら、金融機関の担当者に先に伝えておくほうが話が早く進みます。

許認可の窓口。 建設業、宅地建物取引業、古物商、労働者派遣、産業廃棄物など、許可を受けて営んでいる事業では、商号や目的、本店、役員の変更がそのまま許可の変更届の対象になります。期限が登記より短く設定されていることもあるので、登記を申請する前に窓口の案内を読んでおきます。

このほか、契約書と請求書のひな形、請求書に載せる登録番号の登録事項、ウェブサイト、名刺、社判、取引先への通知が残ります。作業そのものは単純ですが、数が多いので一覧を作って消していくのが確実です。

会社の形を整えるという作業の位置付け

フリーランスから法人にした人が、数年後に定款を触る場面はかなりの確率でやってきます。受ける仕事の範囲が広がって目的を足す、自宅から事務所に移って本店を変える、決算の時期を業務の繁閑に合わせてずらす。どれも事業が動いている証拠です。

ただ、こうした手続きに時間を取られすぎるのも考えものです。20年この市場を見てきた立場から言えば、定款や登記の整備そのものが売上を生むわけではありません。それでも放置できないのは、取引先や金融機関がこの記録を見て判断するからです。記録が実態と合っていない会社は、いざというときに話が止まります。手をかける価値があるのは、そこで止まらないようにするためです。

運営者として見てきた限りではっきりしているのは、間に手数料が乗らない直接の取引ほど、依頼する側と受ける側の双方に余裕が生まれるということです。同じ予算でも中間の取り分がなければ依頼側はより多くを頼めますし、受け手の手取りは厚くなります。手数料0%という条件が効いてくるのは、金額の大小そのものより、この「手取りが厚い」という質の部分です。会社の形を整える段階まで進む事業者は、たいてい先に取引の構造を整えています。

契約や請求の実務を固めたい人には、発注書と契約書で何を確かめるべきかを整理したフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストが役立ちます。入金が止まったときの備えとしては、回収の手段と費用の見当をまとめた未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】が判断を速くします。会計をどこまで自分でやるかで迷っているなら、会計の専門職が業務をどう切り分けているかを扱った会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】が線引きの参考になります。

事業の目的を足すかどうかを考えるとき、どの分野に需要が寄っているかを知っておくと判断材料になります。生成系の技術を業務に組み込む支援は、業務の整理から入る案件が多く、契約の単位が大きくなりやすい分野です。仕事の中身はAIコンサル・業務活用支援のお仕事にまとまっています。もう少し広い範囲を見るならAI・マーケティング・セキュリティのお仕事、開発そのものを請け負う道ならアプリケーション開発のお仕事で案件の種類を確認できます。目的の文言を決める前に、実際にどんな仕事が動いているのかを見ておくと、後から足し直す手間を減らせます。

報酬の水準を知りたいときは、職種ごとの相場が目安になります。開発職の水準はソフトウェア作成者の年収・単価相場、書き手としての水準は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で確認できます。

書類仕事を速くしたい人は、定型文書の型を身に付けておくと効きます。議事録や同意書の作法を押さえるならビジネス文書検定が直接役立ちますし、技術寄りの案件で信用を示したいならCCNA(シスコ技術者認定)のような基盤系の資格が実務に結び付きます。

定款の変更と登記の関係は、一度整理してしまえば迷わなくなります。手元の定款と登記事項証明書を並べて、変えたい項目が両方に載っているのか、片方だけなのかを確かめる。それだけで、法務局に行く必要があるのかどうかが決まります。申請書の記載例は法務局の商業・法人登記の申請書様式のページに、登録免許税の税率は国税庁の税額表に公開されています。

よくある質問

Q. 定款を変更したら必ず登記が必要ですか?

必要とは限りません。登記が必要なのは、変更した項目が登記事項に含まれている場合だけです。商号、目的、公告方法、発行可能株式総数などは登記も必要ですが、事業年度、取締役の員数、取締役の任期、株主総会の招集に関する定めなどは定款を書き換えるだけで登記は発生しません。手元の登記事項証明書にその項目が載っているかで判断できます。

Q. 定款変更登記にはいくらかかりますか?

登録免許税は、商号や目的などの登記事項の変更で1件につき3万円です。役員に関する事項の変更は資本金1億円以下の会社なら1万円、本店の移転は1箇所につき3万円です。同じ区分の変更を1通の申請書にまとめれば合算されないので、商号と目的を同時に変えても3万円で済みます。司法書士に頼む場合は別途報酬がかかります。

Q. 定款を変更するのに公証人の認証は必要ですか?

不要です。公証人の認証が求められるのは株式会社を設立するときの定款だけで、設立後の変更については会社の中の決議だけで効力が生じます。株式会社なら株主総会で出席株主の議決権の3分の2以上の賛成、合同会社なら原則として社員全員の同意が必要です。書き換えた定款は会社で保管します。

Q. 登記の期限を過ぎるとどうなりますか?

期限は変更の効力が生じた日から2週間です。過ぎても登記の申請自体は受け付けられますが、登記を怠ったことについて代表者個人に100万円以下の過料が科される可能性があります。とくに役員の重任登記は任期を10年にしていると忘れやすく、12年間登記がない株式会社は解散したものとみなされる手続きの対象にもなります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年6月12日最終更新:2026年9月19日
丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子@SOHO編集部

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

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