定款変更の手続きの流れ|どこに何を出すか

前田 壮一
前田 壮一
定款変更の手続きの流れ|どこに何を出すか

この記事のポイント

  • ✓決める・記録する・届ける の3段階で終わる
  • ✓株主総会の決議から議事録の作り方
  • ✓登記が要るかどうかの見分け方

会社の目的を増やしたい。本店を引っ越す。商号を変えたい。そう思って「定款変更手続き」を調べ始めると、聞き慣れない言葉ばかりが出てきて、何から手を付ければいいのか分からなくなる。

まず、安心してほしい。定款変更の手続きは、突き詰めると3つの作業しかない。株主総会で決めること、決めたことを紙に残すこと、そして変えた内容によっては法務局と税務署に届けること。この3つである。専門家に頼まず自分で進めても、実作業は半日から1日で終わる規模の話だ。

この記事では、その3つの作業を順番に、どの書類をどこへ出すのかまで具体的に並べていく。書いてある金額と期限は、会社法・登録免許税法の条文と、法務局が公開している申請書の記載例で確かめたものだけを使う。

定款を変えるとは、会社の土台を書き換えるということ

定款とは、会社の決まりを書いた文書のこと。会社の名前、やる事業、本店を置く場所、株式の扱い、役員の人数、株主総会の開き方といった土台のルールが並んでいる。会社を作ったときに必ず作り、公証人という国の任命を受けた人の認証を受けている。

この文書に書いてある項目は、性格によって3つに分かれる。

1つ目は、書いていないと定款そのものが成り立たない項目。会社法が定めているのは、目的、商号、本店の所在地、設立のときに出資される財産の価額またはその最低額、発起人の氏名または名称と住所の5つである。

2つ目は、書いておかないと効力が生じない項目。株式に譲渡制限をつける、取締役会を置く、公告の方法を電子公告にするといった定めがこれにあたる。書くか書かないかは会社の自由だが、書かなければその制度は使えない。

3つ目は、書いても書かなくてもよい項目。事業年度、株主総会の議長を誰にするか、取締役の員数の上限といった、運営上の取り決めである。

定款変更の手続きは、この3つのどれを変える場合でも同じ入り口から始まる。株主総会である。

手続きは3段階。全体像を先に押さえる

細かい話に入る前に、ゴールまでの道筋を見ておきたい。

段階 やること どこへ出すか 期限
1 決める 株主総会で定款変更を決議する 社外には出さない 期限なし
2 記録する 議事録を作り、新しい定款を用意する 本店に備え置く 総会の直後
3 届ける 登記事項なら変更登記を申請する 本店の所在地を管轄する法務局 変更から2週間以内
3 届ける 税務上の異動を届け出る 異動前の納税地の所轄税務署 異動後すみやかに

ここで一番大事なのは、段階3が全員に必要なわけではないということ。変えた項目が登記簿に載っていなければ、段階2で手続きは完了する。法務局に行く必要も、お金を払う必要もない。

たとえば事業年度を4月始まりから1月始まりに変えるのは、立派な定款変更である。しかし事業年度は登記簿に載っていないので、登記は不要になる。この場合に必要なのは、議事録を作ることと、税務署に異動届出書を出すことだけだ。

逆に、事業の目的を1つ増やすのは登記簿に載っている項目なので、法務局への申請まで進む。同じ「定款変更」という言葉でも、やることの量がまるで違う。ここを最初に見分けておくと、無駄な準備をせずに済む。

段階1 株主総会で決議する

定款を変える権限は株主の側にある。会社法がはっきりそう定めている。

株式会社は、その成立後、株主総会の決議によって、定款を変更することができる。 出典: laws.e-gov.go.jp

取締役会では決められない。取締役会を置いている会社であっても、会社の土台を書き換えるのは株主の仕事という建て付けになっている。

そして、この決議は普通決議ではなく特別決議になる。特別決議の条件は2つある。議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席していること。そして、出席した株主の議決権の3分の2以上が賛成すること。

3分の2の分母は「出席した株主の議決権」であって、発行済株式の総数ではない。この点を取り違えている人は多い。株主が社長ひとり、あるいは社長と配偶者だけという会社なら、全員が出席して全員が賛成するので計算でつまずくことはない。

総会を開くには、取締役が株主へ招集の通知を出す。通知の期限は会社の形で変わる。

会社の形 通知の期限
公開会社 総会の日の2週間前まで
公開会社でない株式会社 総会の日の1週間前まで
公開会社でなく取締役会も置いていない会社 1週間前まで。定款で短縮できる

公開会社とは、発行する株式の全部または一部に譲渡制限をつけていない会社のこと。中小企業の大半は全株式に譲渡制限をつけているので公開会社ではなく、1週間前の通知で足りる。株主全員の同意があれば、招集の手続きそのものを省いて開くこともできる。

株主が遠方にいる場合は、集まらずに決める方法もある。取締役または株主が提案し、議決権を行使できる株主の全員が書面か電磁的記録で同意すれば、決議があったものとみなされる。条件は「全員」の同意で、1人でも同意しない株主がいれば使えない。この方法で作った同意書は、決議があったとみなされた日から10年間、本店に備え置く義務がある。

段階2 議事録を作り、新しい定款を用意する

決議したら議事録を作る。会社法が作成を義務づけており、記載する項目は法務省令で決まっている。

法務局が公開している目的変更の記載例には、そのまま流用できる議事録の見本が載っている。並んでいる項目は次のとおりである。

・開催した日時(何年何月何日の午前何時何分から) ・開催した場所(当会社の本店において、など) ・株主の総数 ・発行済株式の総数(自己株式があるときはその数も) ・議決権を行使することができる株主の数 ・議決権を行使することができる株主の議決権の数 ・出席した株主の数(委任状による者を含む) ・出席した株主の議決権の数 ・出席した取締役の氏名(議長と議事録を作成した者が分かる形で) ・出席した監査役の氏名(監査役がいる場合) ・総会が適法に成立した旨 ・議案の内容と決議の結果 ・閉会した時刻 ・議長および出席した取締役が記名する欄

議案の書き方には作法がある。法務局の見本では「議案 定款変更の件」と見出しを立て、「定款第2条を次のとおり変更すること」と書いたうえで、変更後の条文を丸ごと書き写している。「目的に1号を追加する」という差分の書き方ではない。変更後の姿を全文で確定させておくと、このあとの登記でそのまま使える。

議事録は総会の日から10年間、本店に備え置く。支店がある会社は写しを5年間、支店にも置く。株主と債権者は営業時間内ならいつでも閲覧や写しの交付を請求できるので、社内メモではなく外から見られる前提の文書だと考えたほうがよい。

そしてもう1つ、新しい定款の用意である。法律上は、もとの定款と変更を決議した議事録がそろっていれば、それが現在の定款ということになる。ただし実務では、変更を反映した1本の定款を作り直して保管しておくのが普通だ。取引先や金融機関に「現在の定款の写し」を求められたとき、古い定款と議事録の束を渡すのは通らないからである。

ここで費用の誤解を1つ解いておきたい。会社を作るときの定款は公証人の認証が要り、紙で作ると4万円の収入印紙を貼ることになる。しかし認証が必要なのは設立のときの定款だけで、変更後の定款に認証は要らない。印紙税法も、4万円の課税対象を「会社の設立のときに作成される定款の原本」に限っている。つまり定款を作り直しても、認証手数料も印紙代もかからない。ここは無料で済む。

段階3の入り口 登記が要るかどうかを見分ける

ここが分かれ道になる。変えた項目が登記簿に載っているかどうかを確かめる。

登記簿に載っているのは、会社法が列挙している項目である。主なものを挙げると次のようになる。

登記簿に載っている(登記が要る) 登記簿に載っていない(登記は不要)
目的 事業年度
商号 株主総会の議長の決め方
本店および支店の所在場所 取締役の員数の上限
資本金の額 株主総会の招集地
発行可能株式総数 定時株主総会を開く時期の定め
発行する株式の内容(譲渡制限の定めなど) 事業年度に関する附則
公告方法 会社の内部手続に関する取り決め
存続期間または解散の事由の定め
取締役会設置会社である旨などの機関設計
役員の氏名

登記が要ると分かったら、期限が走り出す。

会社において第九百十一条第三項各号又は前三条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp

起算点は、変更の効力が生じた日である。決議のなかで効力発生日を先に指定していればその日、指定していなければ決議した日になる。

2週間を過ぎても申請そのものは受け付けてもらえる。ただし会社法は、登記を怠った場合に代表者を100万円以下の過料に処すると定めている。過料は会社ではなく代表者個人にかかる。金額は遅れた期間や事情で変わり、通知は忘れたころに裁判所から届く。決議した当日に、申請する日をカレンダーへ入れてしまうのが確実である。

法務局に何を出すか

申請書は法務局のサイトから無料でダウンロードできる。商業・法人登記の申請書様式のページに、商号の変更、目的の変更、公告方法の変更、本店移転(管轄内・管轄外)といった場面ごとの様式と記載例が並んでいる。自分の変更に合う様式を選んで、記載例をなぞれば書ける。

目的を変更する場合の申請書には、次の項目を書く。

・会社法人等番号(分かる場合) ・商号のフリガナ ・商号 ・本店 ・登記の事由(目的の変更) ・登記すべき事項(変更後のすべての目的と、原因年月日) ・登録免許税の金額 ・添付書類の一覧 ・申請の日付、申請人の本店・商号、代表取締役の住所と氏名、登記所に提出した印鑑 ・連絡先の電話番号 ・提出先の法務局名

登記すべき事項の欄には注意書きがある。目的は変更した部分だけでなく、変更後のすべての目的を書く。1号だけ追加したつもりでも、1号から最後まで全部を並べ直すことになる。議事録の段階で全文を確定させておけば、ここでそのまま写せる。

添付する書類は3つである。

・株主総会議事録 1通 ・株主の氏名または名称、住所および議決権数等を証する書面(株主リスト) 1通 ・委任状 1通(代理人に申請を任せた場合だけ)

株主リストは、平成28年10月1日以降の株式会社の登記で必要になった書面で、誰がどれだけの議決権を持っているかを会社が証明するものである。法務省が添付の要る場面を整理している。

登記すべき事項につき株主総会の決議を要する場合 出典: moj.go.jp

書く株主の範囲は決まっている。議決権の割合が高い順に並べて、合計が3分の2に達するまで、または10位に達するまでの、どちらか少ない人数を書く。株主が3人の会社なら3人全員で終わる。記載するのは氏名または名称、住所、株式数、議決権数、議決権数の割合の5項目で、これを代表者が証明する形になる。自己株式のように議決権のない株式は、分母にも分子にも入れない。

申請書が複数ページになるときは、つづり目に契印を押す。契印には、申請書に押した印鑑と同じ印鑑を使う。登録免許税は収入印紙を貼付台紙に貼って納める。印紙は割印を押さず、消印作業の都合で右側に寄せて貼る、という運用まで記載例に書かれている。

出し方は3通り。オンラインなら証明書がなくても使える

申請の出し方は、窓口へ持参する、郵送する、オンラインで送る、の3つである。

このうちオンラインには、電子証明書を使う本来のオンライン申請のほかに、QRコード(二次元バーコード)付き書面申請という方法が用意されている。申請用総合ソフトという無料のソフトで申請書を作り、その情報をインターネット経由で事前に登記所へ送ったうえで、印刷した申請書を登記所に提出する方式である。電子証明書を持っていなくても使える。

一度作ったデータはソフト上で管理できるので、次に同じような申請をするときに再利用できる。会社を長く続けるなら、最初の1回でこの環境を作っておくと、2回目以降が楽になる。

なお、本店を別の法務局の管轄へ移す場合だけは出し方が特殊になる。移転前の所在地を管轄する登記所宛ての申請書と、移転後の所在地を管轄する登記所宛ての申請書の2通を作り、両方を同時に、移転前の所在地の登記所へ提出する。窓口を2か所回るわけではない。

かかるお金の全体像

自分で手続きする場合、かかるのは登録免許税だけである。金額は登録免許税法の別表で区分ごとに決まっている。主な変更の金額を並べると次のようになる。

変更する内容 登録免許税
目的・商号・公告方法などの登記事項の変更 申請1件につき3万円
本店または支店の移転 1箇所につき3万円
支店の設置 1箇所につき6万円
取締役会・監査役会などの機関に関する事項の変更 申請1件につき3万円
役員に関する事項の変更 1件につき3万円(資本金1億円以下の会社は1万円)
資本金の増加 増加した資本金の額の1000分の7(3万円に満たないときは3万円)
新株予約権の発行 1件につき9万円

読み方にコツがある。課税されるのは区分ごとなので、同じ区分に入る変更をまとめて1通の申請書で出せば3万円のままである。目的と商号と公告方法を同時に変えても、どれも登記事項の変更という同じ区分なので3万円で済む。

一方、区分が違えば合算される。目的の変更と役員の変更を同時に出すと、区分が違うので3万円と1万円を足した4万円になる(資本金1億円以下の会社の場合)。変更したい項目が複数あるなら、同じ時期にまとめて1回で出すのが金額の面でも手間の面でも得になる。

本店を別の管轄へ移す場合は、前述のとおり申請書が2通になるので、3万円が2つで6万円である。同じ管轄の中での移転なら3万円で済む。引っ越し先を選ぶ段階で管轄を確かめておくと、この差が出る。

司法書士に依頼する場合は、これに報酬が乗る。報酬額は自由化されているので事務所によって幅があり、依頼前に見積もりを取って比べるしかない。登録免許税は誰が出しても同じ金額なので、比べるべきは報酬の部分になる。

登記のあとに出す届出を忘れない

法務局の手続きが終わっても、まだ残りがある。会社の情報を持っている役所は法務局だけではないからだ。

税務署には異動届出書を出す。国税庁が案内している手続で、対象になる異動が広く並んでいる。

事業年度等の変更、納税地の異動、資本金の額等の異動、商号又は名称の変更、代表者の変更、事業目的の変更、法人の合併、法人の分割による事業の譲渡若しくは譲受け、法人区分の変更、法人の解散(信託の終了を含みます。)・清算結了、支店・工場等の異動等をした場合の手続です。 出典: nta.go.jp

提出の時期は「異動等後すみやかに」とされている。提出先は、異動前の納税地を所轄する税務署長である。引っ越した先の税務署ではない点に注意したい。添付書類は原則として不要だが、異動の内容を確かめるために定款などの写しを求められることがある、と案内されている。

税務署のほかにも、都道府県税事務所と市区町村役場への届出が要る。様式は自治体ごとに違うので、それぞれのサイトで確認する。本店を移したときは、日本年金機構への届出や、労働保険・雇用保険の所在地変更の手続きも出てくる。

許認可を受けて事業をしている会社は、さらに念入りに確認したい。建設業、宅地建物取引業、古物商、有料職業紹介、飲食業といった許認可は、商号や本店や役員の変更を許可を出した役所へ届け出る義務があり、期限が定められていることが多い。目的を変えた場合も、許可の条件に関わる可能性がある。登記より先に、許認可の担当窓口へ一本電話を入れておくのが安全である。

つまずきやすいところを先に潰しておく

手続きそのものは難しくないが、順番と細部でつまずく人が多い。よくある4つを挙げておく。

1つ目は、登記の期限を議事録を作った日から数えてしまうこと。起算点は変更の効力が生じた日である。決議で効力発生日を先に指定したなら、その日から2週間になる。

2つ目は、登記すべき事項に変更部分だけを書いてしまうこと。目的なら変更後の全項目を書く。記載例にもそう注記されている。

3つ目は、株主リストを付け忘れること。議事録だけを持っていくと、その場で補正になる。株主が1人の会社でも必要な書面である。

4つ目は、許認可の届出を後回しにすること。登記は済んだが許可の届出を忘れていて、更新のときに発覚する、という話は珍しくない。許可を持っている事業は、定款を変える相談を始めた段階で窓口に確認しておきたい。

もう1つ、先の話として付け加えておく。変更が登記事項にあたるなら、登記が終わったあとに新しい登記事項証明書を取っておくとよい。取引先や金融機関に変更を知らせるとき、この1枚があれば説明が要らない。

2週間はどこから数えるのか

期限の話は、数え方を1つ間違えると1日分ずれる。民法に期間の数え方の通則があり、登記の申請期間もこれに沿って数える。

まず、期間の初日は数に入れない。日や週や月で期間を定めたときは初日を算入しないと定められているので、変更の効力が生じた日は0日目として扱い、その翌日から数え始める。9月1日に決議して同じ日に効力が生じたなら、9月2日が1日目で、9月15日が14日目になる。

次に、末日が休みに当たる場合である。期間の末日が日曜日や祝日その他の休日に当たるときは、その日に取引をしない慣習がある場合にかぎり、期間は翌日に満了する。法務局は土日祝が閉庁なので、末日が土曜なら翌週の月曜まで、という扱いになる。

もっとも、この1日や2日を当てにする前提で動くのは勧められない。補正を求められれば数日が飛ぶし、郵送なら到着日が分からない。決議した当日に申請日を決めて、余裕のある平日に出すのがいちばん安い。

オンラインで出すなら、使える時間を先に確かめる

申請用総合ソフトで作った情報を送るにも、送信できる時間が決まっている。登記・供託オンライン申請システムは、ご利用可能時間を次のように示している。

・平日 8時30分から23時00分まで ・休日 8時30分から18時00分まで ・12月29日から1月3日までの年末年始は利用できない

平日は夜まで開いているので、日中に動けない人でも送れる。休日も夕方まで使える。ただし年末年始は完全に止まるため、12月下旬に決議した会社は、2週間の期限が年末年始をまたぐかどうかを先に確かめておきたい。年明けに送ろうとして、使えるのが1月4日からだと気づく順番になると、期限を越える。

なお、システムの利用時間内であっても、保守などで予告なく止まることがあると注意書きが添えられている。期限の最終日に送るつもりでいると、止まったときに逃げ場がない。締切の3日前を自分の締切にしておくと、この種の事故を避けられる。

QRコード付き書面申請を使う場合も、事前に情報を送るところまではこの時間内に行う。印刷した申請書を登記所へ持ち込むのは、登記所の開いている時間になる。

申請したあと、完了までに何が起きるか

申請書を出してから登記が終わるまでの間に、3つの分かれ道がある。どれに進んでも納めた登録免許税が無駄になるとは限らないので、仕組みを知っておくと落ち着いて対応できる。

1つ目は、そのまま完了する道である。登記官が内容を調べ、問題がなければ登記が実行される。完了の連絡は原則として来ないので、各法務局が公表している登記完了予定日を見て、その日を過ぎてから登記事項証明書を取って確かめる。

2つ目は、補正である。書類の不足や記載の誤りが見つかると、申請書に書いた電話番号に連絡が来る。直せる範囲のものなら、補正書を出すか窓口で直す。申請そのものはそのまま生きているので、登録免許税を払い直す必要はない。連絡先の電話番号を書き忘れると、この連絡が来ないまま時間が過ぎるので、必ず書いておく。

3つ目は、取下げと却下である。直しきれない不備があるときは、いったん申請を引っ込めて出し直すことになる。ここで知っておきたいのが、貼った収入印紙の扱いだ。

登録免許税法は、取下げにあわせて、消印がされた印紙をその登記所での登記について取下げの日から1年以内に再使用したいと申し出たときは、再使用できる証明をすることができると定めている。この証明を受けた場合、その分の登録免許税は還付されない。つまり、還付を受けて現金を戻すのではなく、次の申請にそのまま使えるようにするという仕組みである。

証明を受けたあとで結局使わないことになったら、証明のあった日から1年を経過する日までに、証明を無効にして還付を受けたいと申し出ることができる。この申出があったときは、新たな取下げがあったものとして還付の手続きに乗る。

却下された場合も、納めた登録免許税は還付の対象になる。却下に伴って申請書を返すときに、登記官が再使用を認めるのが適当だと判断すれば、取下げと同じように再使用の証明を受けられる場合もある。

計算を間違えて多く納めていた場合は、また別の道がある。申請書に書いた税額の計算が誤っていたために納めすぎていたときは、登記を受けた日から5年を経過する日までに申し出て、還付の手続きを進めてもらうよう請求することができる。区分を取り違えて3万円のところに6万円を貼ったようなケースが、これに当たる。詳しい条文は登録免許税法で確認できる。

添える書類のうち、原本を返してほしいものがあるときは、あらかじめその写しを作って一緒に出す。写しに原本と相違ないことを書いて代表者が記名し、原本と並べて提出すると、登記が終わったあとに原本を返してもらえる。定款や許認可の証明書のように、他の役所へ回す予定がある書類はこの扱いにしておくと、同じ書類を何通も取り直す手間が消える。返送してほしい場合は、切手を貼った返信用の封筒も入れておく。

覚えておくと効くのは、取下げになっても印紙は捨てないという点だけである。窓口で「取り下げます」と言う前に、再使用の申出をあわせてするかどうかを決めておく。何も言わずに取り下げると、還付の手続きに回り、現金が戻るまでに時間がかかる。

運営者として見てきた、法人化のあとにつまずく人の共通点

在宅で働く人と発注する企業のあいだを20年近く見てきた立場から言うと、法人を作ったあとに困る人には共通点がある。事務手続きを「いつかまとめてやる」ものだと思っていることだ。

定款変更に限らず、会社の届出には期限がある。しかも期限に遅れたことは、その場では何も起きない。何も起きないまま数年が過ぎ、融資を申し込むとき、事業を売るとき、大きな取引先の審査を受けるときになって、まとめて表に出る。登記簿と定款と実態が食い違っている会社は、その時点で数週間止まる。

運営者として見てきた限りでは、長く続いている会社ほど、こうした事務を「面倒な義務」ではなく「あとで自分を助ける記録」として扱っている。決議した日に議事録を作り、その日のうちに申請日を決める。所要時間は合わせて1時間ほどで、これを後回しにして得られるものは何もない。

もう1つ、手取りの話をしておきたい。法人化を考える人の多くは報酬の額面に目を向けるが、実際に手元へ残る額を押し上げるのは、あいだに手数料が乗らない取引の比率であることが多い。手数料0%で直接やり取りできる関係を持っている人は、同じ予算でも依頼する側がより多く頼めるので、受ける側の手取りが厚くなる。事務に使う半日をそこへ回せる体制を作れるかどうかが、法人として続くかどうかの分かれ目になる。

目的を決めるときは、実際の仕事の呼び名から逆算する

定款変更でいちばん多いのが事業目的の追加である。ここで効いてくるのが、目的をどんな言葉で書くかという点だ。目的は登記簿に載って誰でも見られるので、取引先が自社の事業範囲を確かめる材料になる。

実務に合った言葉を選ぶには、実際に市場でどんな呼び名で仕事が募集されているかを見るのが早い。システム開発を受ける会社なら、アプリケーション開発のお仕事に、受託開発から保守や技術支援までどんな業務が実在するのかがまとまっている。報酬の水準を確かめるならソフトウェア作成者の年収・単価相場が目安になる。

生成AIの活用支援を目的に加えるなら、AIコンサル・業務活用支援のお仕事やAI・マーケティング・セキュリティのお仕事で、発注する側がどんな言葉で業務を書いているかを拾っておくとよい。文章や編集を事業にするなら著述家,記者,編集者の年収・単価相場が判断材料になる。

議事録や株主リストを自社で作るなら、文書作成の型を押さえておくと負担が減る。ビジネス文書検定が扱っている範囲が、ちょうどこの土台にあたる。技術系の事業を目的に書くなら、CCNA(シスコ技術者認定)のような資格が、その事業を実際にやれる会社であることの裏づけになる。

取引条件をどう固めるかという観点では、フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストが、発注書に何を書いておけば後で揉めないかを整理している。会計の体制を外に出すか自社で回すかを考えているなら、会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】で専門家側の働き方を知っておくと、依頼の仕方が変わる。報酬の回収でつまずいた経験があるなら、未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】も目を通しておきたい。

なお、目的の書き方が許認可の要件を満たすかどうか、どの変更が登記事項にあたるかの最終判断は、会社ごとの事情で変わることがある。許認可を持っている、種類株式を出している、株主が分散しているといった事情があるときは、決議の前に司法書士か弁護士に一度確認してから進めたほうが安全である。税務上の扱いについても、金額や事情で結論が変わるため、税務署か税理士に確認してほしい。

よくある質問

Q. 定款を変更したら、必ず法務局に登記しなければなりませんか?

いいえ。変えた項目が登記簿に載っている場合だけです。目的、商号、本店の所在場所、資本金の額、公告方法などは登記が要りますが、事業年度や取締役の員数の上限、株主総会の議長の決め方は登記簿に載っていないため不要です。この場合は議事録を残して定款を差し替えれば完了します。

Q. 定款変更の費用はいくらかかりますか?

自分で手続きするなら登録免許税だけです。目的や商号などの登記事項の変更は申請1件につき3万円、本店移転は1箇所につき3万円、支店の設置は1箇所につき6万円です。登記が不要な変更なら費用はかかりません。司法書士に頼む場合は、これに報酬が上乗せされます。

Q. 変更した定款に、もう一度公証人の認証は必要ですか?

必要ありません。公証人の認証が要るのは会社を作るときの定款だけです。印紙税も設立のときに作成される定款の原本に限って課されるため、変更後の定款を作り直しても収入印紙は不要です。作った定款は本店に備え置いて保管してください。

Q. 登記の期限に遅れるとどうなりますか?

期限を過ぎても申請自体は受け付けてもらえます。ただし会社法は、登記を怠った場合に代表者を100万円以下の過料に処すると定めています。過料は会社ではなく代表者個人にかかり、裁判所から通知が届きます。決議した日に申請日を決めてしまうのが確実です。

この記事について

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編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年2月23日最終更新:2026年9月19日
前田 壮一

この記事を書いた人

前田 壮一@SOHO編集部

元メーカー管理職・43歳でフリーランス転身

大手電機メーカーで品質管理を20年間担当した後、42歳でフリーランスに転身。中高年のキャリアチェンジや副業の始め方を、自身の経験をもとに発信しています。

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SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方