提案が読まれるかどうかで決まる、Webサイト保守・分析の案件の取り方

長谷川 奈津
長谷川 奈津
提案が読まれるかどうかで決まる、Webサイト保守・分析の案件の取り方

この記事のポイント

  • ✓Webサイト保守・分析の案件の取り方を
  • ✓提案文の書き方から見積もりの出し方
  • ✓契約で最初に決めておくべき条項まで整理しました

先日、Webの運用を請け負っている方から相談を受けました。「保守の案件に20件以上応募しているのに、返信が1件も来ない」と。提案文を見せてもらったところ、原因はすぐに分かりました。文章が丁寧すぎて、相手が知りたいことが1行も書かれていなかったのです。

Webサイト保守・分析の案件の取り方でつまずく人の多くは、スキル不足で落ちているわけではありません。提案が最後まで読まれていないだけです。これ、知らない人が本当に多いんです。

保守という仕事は、依頼する側にとって「長く付き合う相手を選ぶ」行為です。だから発注者が見ているのは、技術の高さより先に、この人に任せて安心できるかどうか。今日は、その安心をどう文章で伝えるか、そして契約の段階で何を決めておくべきかを、順番にお話しします。

発注側は、提案のどこを読んでいるのか

まず、相手の立場に立ってみましょう。ここが分からないまま提案を書いても、届きません。

保守の募集を出した企業の担当者は、多くの場合Webの専門家ではありません。総務や広報の担当者が、他の仕事と並行して業者選びをしています。届いた提案を1件ずつじっくり読む時間はありません。

つまり、提案は「全部読んでもらえる前提」で書いてはいけないということです。

最初の数行で振り分けられている

実際の選考は、こんな流れで進みます。届いた提案の冒頭数行を見て、明らかに読む価値がなさそうなものを外す。残ったものを本文まで読む。そのうえで2社か3社に絞って質問する。

ここで最初に外されるのは、次のような書き出しです。

・自己紹介から始まる提案(「はじめまして。フリーランスでWeb制作をしております」) ・経歴の羅列から始まる提案(「〇〇大学卒業後、制作会社に5年勤務し」) ・意欲の表明から始まる提案(「ぜひ御社のお役に立ちたく、応募いたしました」)

どれも礼儀正しい文章です。ただ、担当者が知りたいことは1つも書かれていません。担当者が知りたいのは「うちのサイトの何を、どうしてくれるのか」です。

発注側が本当に不安に思っている3つのこと

保守を外部に頼む企業が抱えている不安は、だいたい3つに集約されます。

第1に、放置されないかという不安です。制作会社に作ってもらったまま、更新されずに数年放置されている。この状態から抜け出したくて募集を出しているケースが非常に多い。

第2に、途中でいなくなられないかという不安です。個人に頼んで、半年後に連絡が取れなくなった。こういう経験をした企業は、次の依頼で慎重になります。

第3に、何をやっているのか分からなくなる不安です。毎月お金を払っているのに、何が行われているのか見えない。この不透明さは、契約の解除につながります。

提案文でこの3つに触れられているかどうか。ここが、読まれる提案と読まれない提案の分かれ目です。

保守という仕事の本質は、こう表現されています。

サイトは作って終わりではありません。古い情報のまま放置せず、最新のお知らせやサービス内容へとスピーディーに更新します。さらに、閲覧者の利用状況を分析し、「もっとこうすれば見やすくなる」「問い合わせが増える」といった改善策をご提案しながら、サイトの成果を一緒に育てていきます。 出典: depart-inc.com

「一緒に育てていく」という言葉が本質を突いています。発注側が求めているのは作業者ではなく、サイトの状態を継続的に見てくれる相手です。提案文の中身も、この期待に合わせて組み立てる必要があります。

読まれる提案文の組み立て方

では、どう書けばよいのか。順番を変えるだけで、読まれ方は大きく変わります。

冒頭は、相手のサイトを見た事実から始める

提案の1行目に置くべきは、自己紹介ではありません。相手のサイトを実際に見て気づいた事実です。

たとえばこういう書き出しです。「御社サイトのお知らせが2年前で止まっている点と、スマートフォンで表示したときに問い合わせボタンが画面下に隠れてしまう点が気になりました」。

この1行があるだけで、担当者は続きを読みます。理由は単純で、自社のサイトを本当に見た人だと分かるからです。

逆に言うと、テンプレートを使い回した提案は、この1行が書けません。だから冒頭が自己紹介になります。発注側は毎日そういう提案を見ているので、一瞬で見分けがつきます。

中盤は、作業範囲を具体的な箇条書きで

次に書くのは、月々何をするかです。ここは文章ではなく、箇条書きにしてください。

・月1回のCMSとプラグインの更新、更新後の全ページ表示確認 ・毎週のバックアップ取得と、復元可能かの確認 ・お知らせや価格情報の更新(月3件まで) ・月次のアクセスレポート(訪問数、流入経路、問い合わせ数の推移) ・SSL証明書とドメインの期限管理

こう書くと、担当者は自分の頭の中で「これなら毎月の支払いに納得できる」と判断できます。曖昧に「サイトの保守全般を承ります」と書かれても、判断できません。

範囲を明示することは、後のトラブル防止にもなります。書いていない作業を頼まれたときに「これは範囲外なので別途お見積もりします」と言える根拠になるからです。

終盤は、条件と次の一歩を書く

最後に、対応時間、連絡手段、報酬の目安、そして次にしてほしいことを書きます。

「平日は21時までに一次返信、作業は土日に実施」「連絡はチャットツールを想定」「初回のご相談は無料でお受けします」。この程度で構いません。

そして、次の一歩を明示する。「まずは現状のサイトを拝見して、改善点を整理した資料をお送りします。ご検討の材料にしてください」。相手が次に何をすればよいかが書かれていない提案は、そこで止まります。

送らないほうがよい提案

逆に、送るとかえって印象を落とす提案もあります。

サイトの欠点を並べ立てるだけの提案。改善案がないまま「ここが古い」「ここがおかしい」と指摘されると、担当者は責められている気分になります。指摘は必ず改善案とセットにしてください。

料金だけを安く提示する提案。保守は長く続く契約なので、安さで選ばれた関係は、もっと安い相手が現れた瞬間に終わります。そして安い契約は、範囲外の作業を頼まれやすい。

万能をうたう提案。「デザインもコーディングも広告運用もSEOも対応可能です」と書かれていると、専門性が見えません。保守の募集には、保守の話だけを書いたほうが通ります。

見積もりの出し方で、その後の関係が決まる

提案が読まれたら、次は金額の話です。ここでの設計が、契約期間中の負担を左右します。

月額と都度の線を引く

保守の報酬は、月額固定と都度精算を組み合わせるのが基本です。

月額に含めるのは、毎月必ず発生する定型作業です。更新、バックアップ、点検、レポート。量が読めるので、固定にできます。

都度精算にするのは、量が読めない作業です。ページの新規追加、デザインの変更、大規模なコンテンツの入れ替え、障害の復旧作業。

この線を引かずに「月額でサイトのことは全部お任せください」と提案すると、何が起きるか。依頼が積み上がっても報酬は変わらないので、時間単価がどんどん下がっていきます。

範囲外を先に書いておく

見積書には、含まれるものだけでなく、含まれないものも書いてください。

「以下は月額に含まれません。ページの新規作成、デザインの大幅な変更、写真撮影、原稿の執筆、他社が開発したシステムの改修」。

これを書いておくと、後から「ついでにこれもお願いできますか」と言われたときに、気まずさなく別料金の話ができます。書いていないと、断ること自体が関係を悪くする行為になってしまいます。

表示速度や改善提案を、価値として言葉にする

見積もりの金額に納得してもらうには、作業の意味を伝える必要があります。

ページの読み込みが遅いと、せっかく訪れてくれたお客さまが離れてしまいます。画像のデータサイズ調整や不要なデータの整理を定期的に行い、スムーズに表示される状態を維持します。誰もがストレスなく情報にたどり着ける、心地よいWeb体験を提供し続けます。 出典: depart-inc.com

「画像を軽くします」だけでは、担当者に価値が伝わりません。「読み込みが遅いと、来てくれた人が待ちきれずに離れます。その離脱を減らすために、毎月画像の整理をします」。ここまで書いて、はじめて金額の根拠になります。

保守と並行して分析まで請ける方向を考えるなら、依頼の出方をマーケ戦略・分析・レポート作成のお仕事で確認しておくとよいです。レポート作成が独立した依頼として成立している領域なので、月額に組み込むときの説明材料になります。

契約の段階で決めておくべきこと

ここからは法務の話です。提案が通って「お願いします」と言われたあと、契約書を交わさずに始めてしまう方が本当に多い。ここが後のトラブルの温床になります。

取引条件は書面か電磁的方法で明示される

2026年時点の日本では、フリーランスとして業務を受託する個人を保護するための法整備が進んでいます。発注する事業者には、業務内容、報酬額、支払期日などの取引条件を、書面または電磁的方法で明示する義務が定められています。

つまり、口頭だけで「月3万円くらいでお願いします」と言われて始めるのは、本来の形ではないということです。

もし相手が書面を出してこない場合、こちらから確認のメールを送ってください。「今回のご依頼について、業務範囲と報酬、支払期日を以下の通り理解しております。相違があればご指摘ください」。この1通が残っていれば、条件は記録されます。

制度の詳細や相談窓口については、公正取引委員会や厚生労働省が案内を出しています。個別の事情によって扱いが変わることもあるので、判断に迷う場面では専門家や公的窓口に相談してください。

報酬の支払期日を確認する

支払いの期日についても、発注する事業者側に一定の規律が設けられています。納品したものを受け取った日から起算して、できる限り早い期日を定めることが求められる仕組みです。

保守の契約では、月末締めの翌月末払いといった形が一般的です。ここを確認せずに始めると、初回の入金が3か月後だった、といったことが起こります。

副業として請ける場合でも、この確認は必要です。金額の大小に関係なく、期日を決めておくこと自体が、健全な取引の前提になります。

途中で終わるときの条件を書いておく

保守契約でいちばん揉めるのが、終わり方です。

「来月から不要になりました」と月末に言われて、翌月分の予定を空けていた。こういうケースは実際にあります。だから、解約の申し出は何か月前までに行うかを、最初に決めておいてください。1か月前、あるいは2か月前が一般的です。

あわせて、契約終了時の引き継ぎについても決めておきます。管理画面の権限をどう返すか、バックアップデータをどう渡すか、これまでのレポートをどこまで提供するか。

この条項を入れておくと、実は受注のときに効きます。「終わるときのことまで決めてある相手」は、発注側から見て安心なのです。いなくなられる不安を、契約書で解消できるからです。

秘密保持と再委託

サイトの管理画面に入るということは、企業の内部情報に触れるということです。問い合わせフォームの内容、顧客情報、公開前の情報。

秘密保持の条項は必ず入れてください。そして、自分が他の人に作業を手伝ってもらう可能性があるなら、再委託が可能かどうかも確認しておく必要があります。無断で外注すると、契約違反になることがあります。

※ 金額が大きい契約や、顧客の個人情報を大量に扱う契約では、契約書の内容を弁護士や行政書士などの専門家に確認してもらうことをおすすめします。

提案が通ったあとの、打ち合わせで聞かれること

提案が読まれると、次はオンラインでの打ち合わせに進みます。ここで聞かれることは、実はある程度決まっています。準備しておけば怖くありません。

「今のサイトの何が問題だと思いますか」

これは、提案に書いた気づきをもう一段深く聞かれる質問です。指摘した点について「なぜそれが問題なのか」「直すとどうなるのか」を説明できるようにしておいてください。

「お知らせが2年前で止まっています」だけでは足りません。「更新が止まっているサイトは、訪問した人に活動が止まっている印象を与えます。採用の応募や問い合わせの判断材料になる部分なので、月1回でも動いていることを見せる価値があります」。ここまで話せると、話が進みます。

「どのくらいの期間、対応してもらえますか」

発注側の3つの不安のうち、いなくなられる不安が形になった質問です。

正直に答えてください。「最低1年は継続する前提でお受けします」「もし継続が難しくなった場合は、2か月前にご連絡し、引き継ぎ資料をお渡しします」。期間を長く約束するより、終わり方を明示するほうが安心されます。

「今の業者との違いは何ですか」

すでに保守を頼んでいる相手がいて、乗り換えを検討しているケースです。この質問で、前の業者の悪口を言うのは得策ではありません。

答えるべきは、自分の運用の型です。「毎月の報告で、何をしたか、次に何をするかを書面でお渡しします」「更新の依頼はチャットで受け、着手予定日をその日のうちにお返しします」。何をやっているか分からない不安に対して、具体的な運用で答える形です。

「ほかにどんな案件を担当していますか」

守秘義務があるので、クライアント名は出せません。ただ、業種と規模、担当している作業の種類なら話せます。「小規模な企業サイトを中心に、更新と月次レポートを担当しています」。

言えないことは言えないと伝えたうえで、代わりに話せる情報を出す。この姿勢自体が、秘密保持への信頼につながります。自社の情報も同じように守ってもらえると伝わるからです。

契約に至る前に起きるトラブルと、その防ぎ方

提案から契約までの間にも、注意しておきたい場面があります。相談として上がってくる典型を挙げておきます。

無償で作業を求められるケース

「まず1か月、無料でやってみてもらえませんか」。この申し出を受けることがあります。

判断は分かれます。実績を作りたい段階なら、範囲と期間を明確に区切ったうえで受けるのは一つの選択です。ただし、そのときは必ず「無償で行う範囲」を文書にしてください。「1か月間、月2回の更新と1回のレポート作成を無償で行います。それ以外の作業は対象外です」と書く。

危ないのは、期間も範囲も決めずに始めるパターンです。気づけば3か月が経ち、契約の話が出ないまま作業だけが続いている。こういうご相談、実は少なくありません。

無償期間が終わったあとの条件も、先に決めておいてください。「2か月目以降は月額いくらでの契約とさせていただきます」。ここまで書いてから始める。

提案書の中身だけを持っていかれるケース

丁寧な改善提案を送ったのに返信がなく、しばらく経ってサイトを見たら提案した通りの改修が行われていた。これも起こりうることです。

完全に防ぐことは難しいのですが、対策はあります。提案の段階では「何を改善すべきか」までを書き、「どうやって実現するか」の具体的な手順は契約後に渡す形にする。課題の指摘と、解決の実装を分けて考えるということです。

提案書のフッターに「本提案書に記載された内容の無断使用はご遠慮ください」と一文を入れておくのも、抑止としては意味があります。

条件が後から変わるケース

契約直前になって「やっぱり予算が下がりました」「対応時間を平日にも広げてほしい」と言われることがあります。

このとき、すでに準備を進めていると、断りにくくなります。だから、条件が確定するまでは実作業の準備に入らないこと。そして、条件が変わったら、それは新しい提案として組み直すこと。

条件の変更を受け入れるかどうかは自由ですが、変更後の条件で無理が出るなら、その場で断るほうが誠実です。無理な条件で始めた契約は、必ずどこかで破綻します。

受注が決まったあとの、事務まわりの準備

契約が決まったら、請求の実務が発生します。ここも先に整えておくと慌てません。

請求書に必要な項目

請求書には、請求日、請求先の名称、自分の氏名または屋号と連絡先、業務内容、金額、振込先、支払期日を記載します。

2026年時点では、取引の記録の残し方や消費税の扱いについて、事業の規模や登録の状況によって求められる対応が異なります。自分がどの扱いになるかは、国税庁の案内で確認するか、税務署の窓口や税理士に相談してください。ここは思い込みで判断せず、必ず一次情報に当たることをおすすめします。

支払いのサイクルを揃えておく

保守のような継続契約では、毎月同じ流れで請求が発生します。月末締めなのか、当月払いなのか。請求書を送るタイミングはいつか。

複数の案件を持つようになると、このサイクルがばらばらだと管理が煩雑になります。可能な範囲で揃えておくと、あとが楽です。

報酬が支払われないときの相談先

万が一、支払いが行われない場合。まずは書面で催促し、それでも動かなければ相談窓口に持ち込むことになります。取引の適正化に関する相談は公的な窓口で受け付けられており、記録が残っていれば話が進めやすくなります。

だからこそ、やり取りをチャットやメールに残しておくことが大事です。電話だけで進めた仕事は、何を約束したかを証明できません。

案件を探す経路と、それぞれの性質

提案の書き方と契約の準備ができたら、あとは経路です。どこで案件を探すかによって、届く提案の数も、手元に残る金額も変わります。

募集の内容から業界の標準を学ぶ

まず、募集の文面をまとめて読むことをおすすめします。Webサイトコンサル・保守・分析のお仕事を見ると、どういう業務範囲で、どういう条件が提示されているかが分かります。

これは案件を探す作業であると同時に、相場と標準を学ぶ作業です。数十件読むと、自分の提案に何が足りないかが見えてきます。

サイトの保守とSNSの運用をセットで頼まれる流れも増えています。SNS運用代行・SNS広告のお仕事の募集内容も見ておくと、提案の幅を広げる材料になります。

単価の目安を持ってから交渉する

見積もりを出すときに、業界の相場観がないと足元を見られます。エンジニア寄りの作業まで含める場合はソフトウェア作成者の年収・単価相場、レポートや記事の執筆まで請けるなら著述家,記者,編集者の年収・単価相場が判断材料になります。

同じ作業でも、案件を取る経路によって手元に残る金額は変わります。仲介手数料が引かれる仕組みか、手数料0%で直接やり取りする仕組みか。保守のように月額で長く続く契約では、この差が年単位で積み上がります。

提案文の型を整える

提案文は、実は文書作成の技術がそのまま効く領域です。結論を先に書く、根拠を添える、相手の行動を明示する。この型を体系的に学びたい方には、ビジネス文書検定の出題内容が実務に直結します。

技術的な信頼性を示したい場面では、CCNA(シスコ技術者認定)のような資格が、サーバーやネットワークの知識の裏づけになります。保守の依頼者は技術に詳しくないことが多いので、分かりやすい指標があると判断しやすくなるのです。

市場を長く見てきた立場からの観察

フリーランス・在宅ワーク市場を20年運営してきた立場から、案件の取り方について感じていることを書いておきます。

運営者として見てきた限りでは、保守の案件を安定して取り続けている人は、応募の数で勝負していません。むしろ応募数は少なく、その代わり1件ごとに時間をかけています。相手のサイトを実際に開き、気づいた点を数個メモし、それを提案の冒頭に置く。この作業に30分かけている人が、返信率で圧倒的に上回っています。

もうひとつ気づくのは、長く続く人ほど「この人に任せると楽だ」という状態を作りにいっていることです。作業の質そのものより、報告が読みやすい、確認の連絡が要らない、こちらから聞く前に状況が届く。この積み重ねが、契約の更新を決めています。

直接取引の構造についても触れておきます。中間マージンが乗らない形で仕事が動くと、依頼側は同じ予算でより広い範囲を頼めますし、受け手は同じ作業量で手取りが厚くなります。この双方が得をする構造が効いてくるのは、保守のように毎月続く契約です。1か月分の差は小さくても、契約が2年、3年と続いたときの差は、想像より大きくなります。

データから見える、提案が通る条件

最後に、実務から見えてくる判断軸を整理します。

第1に、提案の長さです。長すぎる提案は読まれません。冒頭の気づきが3行、作業範囲が箇条書きで6行程度、条件が3行。この密度で足ります。

第2に、初回の接触で何を渡すかです。契約前に簡単な現状の整理を渡すと、返信率が変わります。無償で作業を渡すことに抵抗がある方もいますが、30分程度で作れる範囲に留めておけば、投資としては妥当です。

第3に、断られた案件を追いかけないことです。保守の募集は継続的に出ます。1社に固執するより、次の募集に同じ精度で提案するほうが結果につながります。

改善提案の見せ方については、こういう表現が参考になります。

画像調整などでサイトのパフォーマンスを最適化。誰もが快適に閲覧できる心地よいWeb体験を維持します。 出典: depart-inc.com

作業の内容と、それが誰にどう効くのか。この2つが1文に収まっていると、専門知識のない担当者にも伝わります。提案文の全部の項目を、この形に整えてみてください。

契約は、あなたを守る道具です。そして提案は、相手の不安を解く道具です。この2つを揃えた人が、保守という長い付き合いの仕事で、選ばれ続けています。

よくある質問

Q. 保守案件の提案文は、何から書き始めればよいですか?

自己紹介ではなく、相手のサイトを実際に見て気づいた事実から始めてください。「お知らせが2年前で止まっている」「スマートフォンで問い合わせボタンが隠れる」といった具体的な指摘です。この1行があるかどうかで、続きを読まれるかが決まります。指摘は必ず改善案とセットにし、欠点を並べるだけの提案は避けてください。

Q. 見積もりは月額固定にすべきですか、都度精算にすべきですか?

両方を組み合わせてください。更新、バックアップ、点検、レポートのように毎月必ず発生し量が読める作業は月額固定に。ページの新規追加、デザイン変更、障害復旧のように量が読めない作業は都度精算にします。見積書には含まれない作業も明記しておくと、後から追加依頼が来たときに気まずさなく別料金の話ができます。

Q. 契約書を交わさずに始めても大丈夫ですか?

おすすめしません。2026年時点では、発注する事業者に業務内容や報酬額、支払期日を書面または電磁的方法で明示する義務が定められています。相手から書面が出てこない場合は、こちらから条件を整理したメールを送り、記録を残してください。金額が大きい契約や個人情報を扱う契約では、専門家に内容を確認してもらうと安心です。

Q. 契約終了時の条件は何を決めておけばよいですか?

解約の申し出を何か月前までに行うか、管理画面の権限をどう返すか、バックアップデータやこれまでのレポートをどこまで提供するかを決めておいてください。終わり方が明記されている契約は、受注のときにも効きます。発注側が抱く「途中でいなくなられないか」という不安を、契約書で解消できるからです。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年8月7日最終更新:2026年9月24日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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