決算公告をしないとどうなるか|過料が来る場面

丸山 桃子
丸山 桃子
決算公告をしないとどうなるか|過料が来る場面

この記事のポイント

  • 決算公告しない会社が大多数という現実と
  • それでも過料が現実になる場面を整理します
  • 官報と自社サイトの費用差

決算公告しないまま何年も過ぎている。そう気づいて検索したなら、まず知っておきたい事実が2つあります。1つは、同じ状態の会社が圧倒的多数だということ。もう1つは、それでも罰の定めは生きていて、他の手続きをきっかけに表に出る場面があるということです。この記事では、義務が誰にかかるのか、過料が現実になるのはどんなときか、そして公告を出す場合にいちばん安い方法はどれかを、法令と公式の料金表で確かめた範囲だけで整理します。

決算公告をしていない会社が多数派という現実

決算公告とは、会社が1年の決算の結果を、誰でも見られる場所に出す手続きのことです。株式会社には法律でこれが義務づけられています。ところが、実際に出している会社の割合を調べた数字を見ると、義務と現実の差は相当なものです。

調査会社である株式会社東京商工リサーチの「2022年『官報』決算公告調査」によると、官報での決算公告が義務になっていると推測される企業のうち、実際に官報での決算公告を確認できた企業の割合は、わずか1.8%だったとのことです。 出典: biz.moneyforward.com

1.8%という数字は、言い換えれば98%以上が出していないということです。国内の株式会社はおよそ260万社あるといわれますから、母数の大きさを考えると、公告を出していない会社を全部取り締まるのは物理的に無理だと分かります。

出していない理由は、だいたい3つに集約されます。1つ目は費用です。官報に決算公告を載せると、枠を使う形なら1枠あたり税込40,882円かかります。貸借対照表の要旨は2枠に収まることが多く、その場合は税込81,765円です。毎年これを払い続けるのは、売上数千万円規模の会社にとって軽い出費ではありません。

2つ目は手間です。決算を締めて、株主総会を開いて、そこから原稿を作って申し込んで、校正のやり取りをして、掲載日を待つ。税理士に頼めば別途費用が乗ります。3つ目は、出していない会社があまりに多いので、出さないことが異常に見えないという空気です。同業の登記簿を取っても公告の実績がないなら、自社だけが取り残されている感覚は生まれません。

ただし、多数派だから安全という話ではありません。多数派なのは「見つかっていない状態」であって、「義務がない状態」ではないからです。この区別を曖昧にしたまま放置すると、後で説明する場面でまとめて表に出てきます。

編集部が中小のアパレルブランドの経理を支援している業務委託の方から聞いた話では、取引先の大手小売から与信の資料を求められた際、登記簿に公告方法が「官報に掲載する方法」と書いてあるのに官報を検索しても一度も出てこないことを、先方の与信担当が指摘してきたそうです。罰が来たわけではありません。ただ、書いてあることと実際が食い違っている点を見られた、という事実だけが残りました。

義務があるのは誰か、株式会社と合同会社の線引き

そもそも自社に義務があるのかどうかから確かめます。根拠になっているのは会社法440条です。条文はこうなっています。

株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp

ここから読み取れることを、法律の言葉を外して並べます。

第一に、義務があるのは株式会社です。合同会社や合名会社、合資会社には、これと同じ定めが置かれていません。つまり合同会社なら決算公告をしなくても、公告を怠ったことを理由に責められる場面はありません。合同会社を選ぶ人が増えている背景の1つがこれです。

第二に、出すのは原則として貸借対照表だけです。貸借対照表とは、決算日時点で会社が何を持っていて、どれだけ借りているかを並べた表のことです。もうけがいくら出たかを示す損益計算書まで出す必要があるのは「大会社」に限られます。大会社の定義は、資本金が5億円以上か、負債の合計が200億円以上のどちらかに当てはまる株式会社です。中小企業のほとんどはここに入らないので、公開するのは貸借対照表だけで足ります。

第三に、公告方法が官報または日刊新聞紙の会社は「要旨」で足ります。要旨とは、全部を細かく載せるのではなく、資産・負債・純資産という3つの部に分けて、主な項目だけを並べた短い形のことです。会社計算規則がその区分を定めていて、流動資産・固定資産・繰延資産、流動負債・固定負債といった大きな括りが並べばよいことになっています。数字を1円単位で全部さらす必要はありません。

第四に、上場会社などで有価証券報告書を提出している株式会社は、この義務の対象外です。すでに詳しい開示をしているので、重ねて公告する必要がないという整理になっています。

なお、一般社団法人や一般財団法人にも、別の法律でほぼ同じ形の義務があります。貸借対照表を定時社員総会の後に公告し、規模が大きい法人は損益計算書も出す、という組み立てまでそっくりです。会社ではないから関係ない、とはなりません。

過料が来るのはどんな場面か

罰の定めは会社法976条にあります。登記を怠ったとき、公告や通知を怠ったとき、開示を怠ったときなどに、100万円以下の過料に処すると書かれています。ここで押さえておきたいのは、次の3点です。

1つ目は、過料を払うのは会社ではなく役員個人だということです。条文が名指ししているのは取締役や監査役、清算人といった人であって、法人ではありません。会社の経費で処理する性質のものでもありません。代表取締役の自腹になります。

2つ目は、過料は刑事罰ではないということです。前科はつきませんし、警察が動くものでもありません。裁判所から通知が届き、指定された額を納める、という流れになります。金額も100万円が自動的に来るわけではなく、上限が100万円というだけです。

3つ目が実務上いちばん大事で、公告を出していないことだけを理由に役所が調べに来る仕組みは用意されていない、という点です。官報を1社ずつ照合して未掲載の会社を洗い出す部署は存在しません。だから98%が未実施のまま回っています。

では、どんなときに表に出るのか。現実に起きているのは、他の手続きの流れで一緒に見つかるパターンです。

役員の任期が切れたのに変更登記を何年も放置していて、まとめて登記を出したときがその典型です。登記を怠ったこと自体が同じ条文の対象なので、裁判所へ通知が回ります。このとき、放置していた期間の長さや事情が見られます。公告を出していないことが単独で追加されるわけではありませんが、会社の手続きが全般に止まっている状態が可視化されます。

法務局のページには、登記すべき期間を過ぎてから申請しても、それだけで申請が却下されることはないが、代表者に対して裁判所から100万円以下の過料に処される可能性があると明記されています。あわせて、最後の登記から12年を経過している株式会社は、みなし解散の登記の対象になるとも書かれています。放置は登記の世界では確実に記録に残ります。

もう1つが、会社をたたむとき、売るとき、もめたときです。解散して清算に入ると、債権者に対する公告を官報で出さなければなりません。会社を第三者に売る場面では、買い手側の弁護士が法令遵守の状況を一通り調べます。株主同士が対立して裁判になった場面では、相手方が会社の落ち度を並べる材料として持ち出します。平時には誰も見ないものが、非常時には全部見られます。

出さないことで失うのは、過料より信用のほうです

過料の確率が低いと分かった上で、それでも公告を出す判断をする会社があるのはなぜか。理由は、失うものが罰金ではないからです。

取引先の与信を考えてみます。継続して仕事を出す側は、相手の会社が来年も存在しているかを気にします。非上場で株主も限られている会社の場合、外から財務を知る手段はほとんどありません。信用調査会社のデータを買うか、決算書を直接もらうか、登記簿と公告を見るか。このうち、こちらが能動的に用意できるのは公告だけです。出していれば、少なくとも「隠していない会社」という前提で話が始まります。

金融機関との関係でも同じことが言えます。融資の審査では決算書を直接提出するので、公告の有無が審査項目になるわけではありません。ただ、条件変更の交渉や、新しい支店との取引を始める場面で、外から確認できる情報が何もない会社と、毎年きちんと出している会社では、初回の会話の温度が変わります。

そして、意外に見落とされているのが登記簿です。登記簿には公告方法が必ず記載されています。定款で何も決めていない会社は、自動的に「官報に掲載する方法」と登記されます。つまり、登記簿には「官報に出します」と宣言してあるのに、官報を検索しても一度も出てこない、という状態が外から確認できてしまいます。決算公告を出していないこと自体より、この食い違いのほうが説明しづらいという声を聞きます。

一般社団法人の世界でも状況は似ています。

一般社団法人は、毎事業年度終了後に決算公告を行うことが法律で義務付けられています。 この義務を怠った場合、100万円以下の過料という罰則が科される可能性があるとされています。 しかし、罰則が実際に適用されるケースは多くないため、公告を行わない法人も少なくないのが現状です。 出典: wakaba-sdn.com

会費を集めて活動する法人の場合は、会員への説明責任という別の圧力も働きます。罰の話とは切り離して、出すかどうかを決めることになります。

いちばん安く済ませる方法は、官報ではありません

出す方向に舵を切るとして、費用を比べます。方法は3通りあり、金額の差が10倍以上あります。

官報に載せる。 全国官報販売協同組合が公開している料金表によると、会社等の枠付公告は普通で1枠あたり税込40,882円、ページ指定なら税込54,979円です。1枠の大きさは2.9センチメートル×6.1センチメートルで、活字は8ポイント。決算公告は2枠を使うことが多く、その場合は税込81,765円になります。行単位で載せる形なら会社等は1行あたり税込3,947円で、1行は22文字詰めです。料金は全国一律で、校正のための追加費用はかかりませんが、クレジットカードは使えません。決算公告は本紙ではなく号外に載るため、申し込みから掲載までに時間がかかります。2026年9月18日に申し込んだ場合の目安は号外掲載が10月15日で、およそ4週間先です。校了の連絡をした後は原則として修正も取消しもできないので、数字の確認は校正の段階で終わらせる必要があります。

日刊新聞紙に載せる。 時事を扱う日刊紙であれば選べます。ただし掲載料は官報よりかなり高く、実際には上場企業以外がこれを使う例はほとんどありません。金額は新聞社ごとに違うので、検討するなら直接見積もりを取ることになります。

自社のウェブサイトに載せる。 これがいちばん安い道です。会社法440条には、貸借対照表の内容を、定時株主総会が終わった日から5年を経過する日まで、インターネット上で誰でも見られる状態に置き続ければ、官報にも新聞にも載せなくてよいという定めがあります。ここで大事なのは、公告方法を「電子公告」に変える必要がないことです。登記簿の公告方法が「官報に掲載する方法」のままでも、この措置は使えます。

ホームページでの決算公告(電子公告)を行う最大のメリットはコストでしょう。全国紙で公告した場合、最低でも50万円以上は、官報に掲載した場合でも最低6万円程度はかかります。その点、自社のホームページをすでにもっているのであれば、ほとんど0円で決算公告を行うことができます。 出典: j-net21.smrj.go.jp

ウェブに載せる道を選んだ場合の条件は3つです。1つ目は、載せる中身が要旨ではなく貸借対照表そのものになること。官報や新聞なら要旨で済みますが、自社サイトに置く場合は表の内容を載せます。2つ目は、5年間消さずに置き続けること。ページを作り替えたときに過去分が消えていた、というのがいちばんありがちな失敗です。3つ目は、そのページのアドレスを登記することです。登記事項に追加されるので、法務局への申請が1回必要になります。

費用の総額で比べると、官報を5年続ければ40万円前後、自社サイトなら登記の費用が初回だけで、以後はサーバー代の範囲に収まります。すでにコーポレートサイトを持っているなら、追加の持ち出しはほぼゼロです。

載せる中身の作り方と、そこに潜む落とし穴

費用の次に気になるのが、実際に何を書けばよいかです。会社計算規則がその形を決めていて、思っているより自由度は低くありません。

要旨は、資産・負債・純資産の3つの部に分けます。資産の部は流動資産・固定資産・繰延資産に、負債の部は流動負債・固定負債に区分します。引当金があるなら、それぞれ他の負債と分けて書きます。ここまでが最低限の骨組みです。株式に譲渡制限がついていない公開会社の場合は、財産の状態が分かるようにもっと細かく分ける必要がありますが、株式の譲渡に会社の承認が要る非公開会社であれば、大きな括りのままで足ります。中小企業のほとんどは後者です。

金額の単位にも決まりがあります。要旨に載せる金額は、百万円単位または十億円単位で表示することになっています。1円単位で並べる必要はありません。ただし、その単位で丸めると会社の財産の状態が正しく伝わらなくなるおそれがある場合は、適切な単位に変えることとされています。売上規模の小さい会社が百万円単位で丸めると中身がつぶれてしまう場合は、細かい単位を選ぶことになります。表示に使う言語は日本語が原則です。

そして、多くの解説記事が触れていない落とし穴がここにあります。貸借対照表だけを出す会社であっても、公告の中で明らかにしなければならない事項が別に決められていて、その中に当期純損益金額が含まれています。つまり、損益計算書を出さない中小企業でも、その年に最終的にいくら黒字だったか、いくら赤字だったかという1行は出すことになります。「貸借対照表だけなら、もうけは見えない」と思って進めると、想定外のものを出すことになります。

同じく明らかにする事項として並んでいるのは、会社が今後も事業を続けられるかどうかに疑いがある場合の注記、採用している会計処理の方針、貸借対照表に関する注記、税効果会計、関連当事者との取引、一株当たり情報、重要な後発事象です。いずれも、その年の個別注記表に書いた内容がある場合に限られます。書いていなければ出す必要はありません。

会計監査人を置いている会社で、監査報告に不適正意見がついている場合などは、その旨も公告で明らかにすることになっています。中小企業には縁の薄い話ですが、監査を受けるようになった段階で確認が必要です。

公告方法そのものを電子公告に変えるとどうなるか

自社サイトに決算を載せる話と、公告方法を「電子公告」に変える話は、似ていますが別物です。ここを混同すると、いらない手間と費用を背負います。

公告方法を電子公告に変えると、決算公告だけでなく、会社が出す公告全般を自社サイトで出せるようになります。合併するとき、資本金を減らすとき、解散するとき。これらの公告も官報に載せずに済みます。理屈の上では、官報の料金を払う場面が消えます。

ただし条件がつきます。電子公告で公告を出すときは、その内容が本当にインターネット上に置かれていたかどうかを、法務大臣の登録を受けた調査機関に調べてもらう義務があります。この調査には費用がかかり、金額は調査機関ごとに違うので見積もりが必要です。そして重要なのは、この調査義務から決算公告だけが明確に外されていることです。決算公告をウェブで出すのに調査は要りません。

もう1つの条件が、載せ続ける期間です。決算公告なら株主総会の終結日から5年、期間を定めて異議を述べてもらう種類の公告ならその期間が終わる日まで、それ以外の公告なら始めてから1か月。この間、ページを落としてはいけません。

とはいえ、サーバーが落ちることはあります。会社法には救済の定めがあって、次の3つをすべて満たせば、止まっていた間があっても公告の効力には影響しないとされています。1つ目は、止まったことについて会社に悪意も重い過失もないか、正当な理由があること。2つ目は、止まっていた時間の合計が、載せるべき期間の10分の1を超えないこと。3つ目は、止まったと分かった後すみやかに、止まった旨と時間と内容を、その公告に付け加えて公告すること。5年間の10分の1はおよそ6か月なので、決算公告に関しては相当に緩い基準です。

以上を踏まえると、中小企業にとっての最適解ははっきりします。公告方法は官報のままにしておき、決算公告だけ自社サイトに載せる。これなら調査機関の費用はかからず、毎年の官報代も消えます。合併や減資は滅多に起きないので、起きたときだけ官報に払えばよい、という整理です。

今から出す場合の順番と、過去分をどうするか

動き出す前に、順番を決めておきます。

はじめに、自社の登記簿を取ります。オンラインでも法務局の窓口でも取得できます。見るのは公告方法の欄です。ここに「官報に掲載する方法」と書いてあるのか、電子公告と書いてあるのか、何も書かれていないのかで、この先の打ち手が変わります。定款で決めていない会社は官報になります。

次に、定款を確認します。登記簿と定款が食い違っている会社は珍しくありません。設立時に司法書士が作った定款が手元にない場合は、公証役場に原本が保管されているので取り寄せられます。

それから、どの方法で出すかを決めます。自社サイトに載せる道を選ぶなら、登記の準備に入ります。法務局の申請書様式のページには、役員変更や商号・目的の変更、本店移転といったよく使う様式は並んでいますが、決算公告のアドレスを入れるための専用様式は用意されていません。変更登記の様式を使って、登記すべき事項の欄を書き換える形になります。登録免許税は、国税庁の税額表で「登記事項の変更、消滅または廃止の登記」に当たり、申請1件につき3万円です。電子証明書がなくても、二次元バーコード付きの書面申請という方法が用意されています。

最後に、過去の分をどうするかです。ここは判断が分かれるところで、断定は避けます。法律は「定時株主総会の終結後遅滞なく」と書いているので、何年も前の決算を今さら出しても本来の期限は守れていません。一方で、出さないままにしておくより、直近の1期分から出し始めて以後続けるほうが、外から見たときの状態はよくなります。何期分を遡るか、遡らずに今期から始めるかは、取引先や金融機関との関係、登記を近く出す予定があるかどうかで変わります。判断に迷う場合は、司法書士か税理士に事情を伝えて確認してください。個別の事情で答えが変わる領域です。

あわせて、直近90日の官報は官報発行サイトで無料で読めます。同業や取引先が実際に出しているかを見ておくと、自社がどの位置にいるかの見当がつきます。

自社サイトに載せるときに、実際に決めること

費用の比較で自社サイトを選んだ会社が、そのあとで迷うのは置き方です。決めることは5つあります。

置き場所。 会社概要の下に「決算公告」という1ページを作るのが一般的です。条件は、誰でも見られることです。会員登録の先に置く、パスワードをかける、社内からしか見えない場所に置く。いずれも条件から外れます。トップページから辿って着けるところに置いてください。

形式。 表をそのままHTMLで組んでも、PDFを置いても構いません。読む側が特別なソフトを入れずに開けることだけが要件です。画像1枚で貼る形は、拡大して読めなくなる端末が出てくるので避けたほうが無難です。

アドレスを固定する。 ここが実務でいちばん効きます。登記するのはページのアドレスそのものです。サイトを作り替えてアドレスが変わると、登記した先が開かない状態になり、登記を直すために再び申請と登録免許税が必要になります。年度をアドレスに入れず、短い階層で固定しておいて、そのページの中で年度ごとの表を並べる形にしてください。

消さない仕組みを残す。 5年間置き続ける義務があるのに、実際に消えるきっかけはほぼ1つで、サイトのリニューアルです。制作会社に頼んだ改修で、会社概要の下の階層ごと作り直され、過去分が消える。担当者が変わるときの引き継ぎに、このページは消さないという1行と、置いておく期限を書き残しておくのが現実的な対策です。

載せた日を書く。 5年の起算点は定時株主総会が終わった日です。ページに株主総会の日付と掲載を始めた日を書いておけば、いつまで置くべきかを後から数えられます。5期分が常に並んでいる状態が正常な姿になります。

年度ごとに追加していくと、数年後には会社の推移が外から読める形になります。これを嫌う気持ちが出てくるなら、自社サイトではなく官報を選ぶ判断もあります。ただし官報も誰でも読めるものなので、公開の範囲が変わるわけではありません。変わるのは、まとめて見られるかどうかだけです。

商号に「有限会社」が付いている会社は、そもそも義務がない

自社に義務があるかを確かめるとき、株式会社か合同会社かという分け方だけでは足りません。もう1つ、義務の外に置かれている会社があります。

(計算書類の公告等に関する規定の適用除外) 第二十八条 特例有限会社については、会社法第四百四十条及び第四百四十二条第二項の規定は、適用しない。 出典: laws.e-gov.go.jp

特例有限会社とは、平成18年に会社法が施行される前に有限会社として作られ、そのまま有限会社の商号を使い続けている会社のことです。制度としては株式会社の一種として扱われますが、いくつかの規定が外されていて、その1つが決算公告です。商号に「有限会社」が付いていれば、これに当たります。

貸借対照表を公告しなくてよいだけでなく、株主総会で承認した後の貸借対照表を株主や債権者に提供する義務についても、条文の適用から外されています。つまり、決算を外に出す場面が制度としてありません。

ただし、有限会社のままでいる限りの話です。商号を変更して株式会社へ移行すると、その時点から株式会社としての義務がかかります。移行を検討している会社は、毎年の公告をどう出すかも含めて費用を見積もってください。

もう1つ、休眠会社の整理の対象からも外れています。法務局が毎年行っている整理作業の対象は、最後の登記から12年を経過している株式会社で、特例有限会社は含まれないと明記されています。役員の登記を長く出していない有限会社が、知らないうちに解散したものとみなされる経路はありません。

制度が軽いぶん、株式を発行して外部から出資を受ける、といった動きは株式会社より不自由です。公告の義務がないことだけを理由に有限会社のまま留まるかどうかを決めるのではなく、資金調達や事業の承継の計画と合わせて判断してください。判断の材料が足りないと感じたら、司法書士か税理士に事情を伝えて確認するのが早いです。

手続きの負担を外に出すという考え方

ここからは、市場を長く見てきた立場からの観察です。

決算公告を出していない会社の多くは、公告そのものを嫌っているわけではありません。決算を締めた後の細々した作業を回す人手がなく、優先順位の低いものから落ちていく。その一番下に公告があるだけです。実際、経理を一人で回している会社では、決算期の2か月は他の仕事が止まります。

20年この市場を見てきて感じるのは、こうした「重要だが緊急ではない仕事」を外に出せている会社ほど、手続きの取りこぼしが少ないということです。決算書の数字を要旨の形に整える、掲載用の原稿を作る、ウェブに載せる形に組む。どれも月に何時間かの仕事であって、正社員を雇う規模ではありません。業務委託で頼める領域です。

文章と数字を扱う仕事の相場感を知りたい場合は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場が参考になります。職種別の年収と単価のデータを並べたページで、原稿を作る仕事にどの程度の予算を見ておけばよいかの目安になります。

社内文書や公告原稿の作成を任せる相手を選ぶとき、書式の正確さを確かめる材料が欲しいこともあります。ビジネス文書検定のページでは、この資格がどんな文書作成力を測るもので、どういう仕事に結びつくのかを整理しています。必須の資格ではありませんが、判断材料の1つにはなります。

決算資料の読み方まで含めて相談したい場合は、会計の専門家が副業で関わる形も増えています。会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】では、監査法人に勤めながら外部の仕事を受ける際の進め方をまとめています。依頼する側から読むと、どういう人がどういう条件で動けるのかが分かります。

業務を切り出して外に出すときは、契約の形も決めておきます。フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストは、発注書に何を書くべきかを項目ごとに並べた記事です。発注する側が最初に整えておくと、後の行き違いが減ります。

社内の作業そのものを見直す方向なら、AIコンサル・業務活用支援のお仕事が近い領域です。定型の集計や文書作成を仕組みで減らす支援を、外部の専門家に短期で頼む形が広がっています。

そしてもう1つ、運営者として見てきた限りで言えることがあります。仲介の手数料が乗らない直接の取引では、同じ予算で依頼する側はより多くを頼め、受ける側は手取りが厚くなります。手数料0%の強みは、金額そのものより、この「双方が得をする」構造にあります。年に数回の決算まわりの作業のように、頻度は低いが確実に発生する仕事ほど、この差が積み上がります。長く続く関係を作れている会社は、単発の作業を安く買い叩くのではなく、毎年同じ人に頼める状態を作ることに時間を使っています。

決算公告を出すかどうかは、最終的には経営の判断です。98%が出していない現実も、100万円以下の過料という定めも、どちらも事実です。ただ、出さない理由が「手が回らないから」であるなら、それは手続きの問題ではなく体制の問題です。年に1回の作業をどう回すかを決めておけば、この検索を来年もう一度する必要はなくなります。

よくある質問

Q. 決算公告をしないと必ず過料が来ますか?

必ず来るわけではありません。公告の未実施だけを理由に調べる仕組みは用意されておらず、実際に官報で決算公告を確認できた株式会社は1.8%という調査結果もあります。ただし100万円以下の過料という定めは生きており、役員変更の登記をまとめて出したときや、解散・売却の場面で他の手続きと一緒に表に出ることがあります。

Q. 合同会社も決算公告をしなければいけませんか?

必要ありません。決算の公告を義務づけている会社法440条は株式会社についての規定で、合同会社などの持分会社には同じ定めが置かれていません。ただし解散したときの債権者への公告など、別の場面で必要になる公告はあるので、公告全般が不要というわけではありません。

Q. いちばん安く済ませる方法はどれですか?

自社のウェブサイトに貸借対照表を載せる方法です。株主総会が終わった日から5年を経過する日まで公開し続ければ、官報にも新聞にも載せる必要がなくなります。公告方法を電子公告に変える必要はなく、初回にページのアドレスを登記するだけです。官報は枠を2つ使うと税込81,765円かかります。

Q. 何年も出していませんが、今から遡って出すべきですか?

何期分を遡るかは、取引先や金融機関との関係、近く登記を出す予定があるかで変わるため一律には決められません。一般には、直近の1期分から出し始めて以後続ける形が取られることが多いですが、個別の事情で適切な対応が変わるので、司法書士か税理士に事情を伝えて確認してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月6日最終更新:2026年9月19日
丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子@SOHO編集部

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

@SOHOで仕事を探してみませんか?

手数料0%・登録無料のクラウドソーシング。フリーランスの方も企業の方も、今すぐ始められます。

関連記事

カテゴリから探す

クラウドソーシング入門

クラウドソーシング入門

クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド

職種別ガイド

職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワーク

副業・在宅ワークの始め方と対象者別ガイド

フリーランス

フリーランス

フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

お金・税金

お金・税金

確定申告・節税・経費・ローンなどお金の知識

スキルアップ

スキルアップ

プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング

比較・ランキング

サービス比較・おすすめランキング

AI活用

AI活用

職種別にChatGPT・生成AIを活用して業務効率化・収益化するノウハウ

最新トレンド

最新トレンド

市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド

発注者向けガイド

クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア

転職・キャリア

転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師の転職・求人

看護師の転職・求人

看護師の転職・派遣・単発バイト・副業など働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

薬剤師の転職・求人

薬剤師の転職・求人

薬剤師・登録販売者の転職・派遣・パートなど働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

介護職の転職・求人

介護職の転職・求人

介護職・介護福祉士・ケアマネジャー・訪問介護員の転職・派遣・夜勤など働き方のガイド

保育士の転職・求人

保育士の転職・求人

保育士・保育補助・幼稚園教諭の転職・派遣・パートなど働き方のガイド

医療職の転職・求人

医療職の転職・求人

医師・産業医・リハビリ職・歯科衛生士・管理栄養士・医療事務の転職や働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

保険

保険

生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人

採用・求人

無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース

オフィス・ワークスペース

バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

シニア・50代

シニア・50代

シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ

セキュリティ

サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック

金融・フィンテック

暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス

経営・ビジネス

経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材

ガジェット・機材

フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方

子育て×働き方

子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理

補助金・助成金

補助金・助成金

個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド

アウトソーシング・外注ガイド

アウトソーシング・外注ガイド

SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方