編み図のダウンロード販売の始め方と、著作権で気をつける点

長谷川 奈津
長谷川 奈津
編み図のダウンロード販売の始め方と、著作権で気をつける点

この記事のポイント

  • ✓編み図のダウンロード販売を始める手順と
  • ✓著作権で越えてはいけない線を条文に当たって整理しました
  • ✓何が保護され何が保護されないのか

編み図のダウンロード販売は、在庫を抱えず、作った分だけ売れる形の副業として相談が増えている分野です。編み物が得意な人にとっては、作品を1点ずつ売るよりも時間あたりの収入を組み立てやすい。ただし、この分野には著作権の線が何本も引かれていて、知らずに踏み越えると販売の停止だけでなく損害賠償の話になります。この記事では、ダウンロード販売の始め方を手順で追いながら、著作権で何が保護され何が保護されないのか、購入者にどこまで許すのか、そして販売に必要な法令上の表示までを整理します。法律の個別の判断は事案の細かい事情で変わるので、迷う場面では専門家に相談する前提で読んでください。

編み図のダウンロード販売とは、何を売っている仕事なのか

最初に、売っているものの正体をはっきりさせます。編み図のダウンロード販売で購入者が受け取るのは、多くの場合PDFのファイルです。中身は、記号を並べた編み図、段ごとの文章による指示、使用した糸と針の情報、ゲージ、仕上がりの寸法、組み立ての手順、そして完成品の写真です。

つまり、売っているのは「作り方の説明書」です。ここが物販と決定的に違います。物を売る場合は1点作るごとに時間と材料がかかりますが、説明書は一度作れば同じものを何度でも販売できます。制作にかかった時間を売れた数で割るので、売れるほど時間あたりの収入が上がる構造になります。

一方で、説明書であることから生じる負担もあります。第一に、再現性の担保です。買った人が同じものを作れなければ商品として成立しません。ゲージの表記、糸の代替の案、初心者がつまずく箇所の補足を入れないと、問い合わせと返金の依頼が増えます。第二に、複製への備えです。デジタルのファイルは簡単に複製できるため、購入者による再配布を防ぐ手立てを考える必要があります。第三に、説明の技術です。編める人が書ける人だとは限りません。編み図のダウンロード販売で差が付くのは、編む腕ではなく説明の腕です。

売る形は3つあります。1つ目は、販売のプラットフォームに出品する形です。決済と配信の仕組みを借りるかわりに手数料を払います。2つ目は、自分のサイトで売る形です。手数料は下がりますが、集客と決済の設定を自分で用意します。3つ目は、月ごとの会員制にして、継続的に新しい編み図を配る形です。収入が安定しやすい反面、毎月の制作が止められなくなります。始めるときは1つ目から入り、売れる型が見えてから他を検討するのが現実的です。

著作権で保護されるものと、されないもの

ここが本題です。編み物と著作権の関係は誤解が多く、「編み方は真似してよい」と「編み図は真似してよい」が混ざって語られています。この2つは別です。

まず、編み図そのものは著作物になり得ます。著作権法は著作物を例示していて、その中に図面が挙げられています。

この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。 一 小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物 四 絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物 六 地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物 出典: laws.e-gov.go.jp

記号を並べた編み図は6号の図形の著作物、段ごとの文章による指示は1号の言語の著作物、完成品の写真は写真の著作物として扱われる余地があります。つまり、他人が作った編み図をそのまま写して売る行為、文章の指示を言い換えただけで売る行為、他人が撮った作品写真を自分の販売ページに使う行為は、いずれも権利を侵害する可能性があります。

一方で、保護されないものもあります。著作権は表現を守る制度で、アイデアそのものは守りません。「玉編みで模様を作る」「増し目をこの位置に置く」といった技法や手順の考え方は、誰かの独占にはなりません。伝統的な模様の名前や、長く使われてきた基本の編み方も同様です。また、実用に供される品物の形そのものは、著作物として保護されにくい領域です。マフラーや靴下の形に著作権が及ぶという考え方は、一般的には取られていません。

この2つを見分けると、実務の線が見えてきます。既製品や他人の作品を見て、自分で寸法を測り、自分でゲージを取り、自分で記号図を書き起こしたものは、原則として自分の著作物になります。逆に、他人の編み図を手元に置いて写す作業をしたなら、どれだけ体裁を変えても複製の問題が残ります。作業の過程が結論を分けるので、参考にした資料は記録しておいたほうがいい。

やってはいけない4つの行為

相談の現場で実際に問題になっている型を4つ挙げます。

1つ目は、書籍や雑誌に載っている編み図を写して売る行為です。「自分で書き直したから大丈夫」という説明をよく聞きますが、元の図を見ながら書き起こす作業は複製または翻案にあたり得ます。書籍の編み図は、著者と出版社の権利が及んでいます。

2つ目は、他人が販売している編み図を買って転売する行為です。購入したファイルの所有と、販売する権利は別です。購入したことで得られるのは、通常はその編み図を使って自分が編む許諾までです。再配布の許諾は含まれません。

3つ目は、既存のキャラクターや商標を編み図にして売る行為です。アニメや漫画のキャラクターを編むための編み図は、キャラクターの著作権に触れます。企業のロゴマークは商標の問題にもなります。「手編みだから」「人形だから」という理由で例外になることはありません。権利者が二次創作の範囲を公表している場合もありますが、その場合は公表された条件の中に収まっているかを確認してください。

4つ目は、他人が撮った作品の写真を販売ページに使う行為です。自分が編んだ作品でも、写真を撮ったのが別の人なら、写真の権利はその人にあります。無料の素材サイトの写真も、商用の利用が許されているかを規約で確かめる必要があります。

この4つに共通しているのは、いずれも「元になったものが誰かの表現だった」という点です。編み方の技法を学んで使うことは自由でも、誰かが形にした図や文章や写真をそのまま持ち込むと問題になります。判断に迷ったときは、元になったものを見ながら作業したかどうかを思い返してください。見ながら作ったなら、そこには元の表現が残っています。なお、罰則の面でも軽い扱いではありません。著作権の侵害は民事の損害賠償のほかに刑事の罰則が定められている行為で、悪質だと判断されれば刑事の手続きに進みます。著作権法は、著作権を侵害した者を10年以下の拘禁刑または1,000万円以下の罰金に処し、両方を併せて科すこともできると定めています。個人の副業でここまで至る例はまれですが、「知らなかった」が免責の理由にならない分野だという認識は持っておいてください。

これらは、指摘されてから直せばよいという性質の問題ではありません。販売のプラットフォームは権利者からの申し立てを受けると出品を削除し、繰り返せばアカウントを停止します。売上が育ってから止められると、損失はそれまでの制作時間の全部になります。始める前に線を引いておくほうが安全です。

判断に迷うグレーな領域の考え方

明確に禁じられるものと明確に自由なものの間に、判断が分かれる領域があります。4つ挙げて、考え方を示します。

第一に、既製品を分解して同じものの編み図を作る場合です。商品の形そのものは著作物として保護されにくい一方で、独創的な模様の図案には美術の著作物としての保護が及ぶ余地があります。市販品を丸ごと再現する編み図は、ブランドの権利との関係でも問題が生じることがあります。模様を自分で組み替えるのが安全です。

第二に、海外の編み図を翻訳して売る場合です。翻訳は原著作者の権利が及ぶ行為なので、無断ではできません。原作者から許諾を得て翻訳版を出す例は実際にありますが、その場合は許諾の範囲を書面で確認してください。

第三に、無料で公開されている編み図を使う場合です。無料であることと、自由に使えることは違います。公開者が示している利用の条件を読み、商用の利用と再配布が認められているかを確認します。条件が書かれていない場合は、使えないものとして扱うのが無難です。

第四に、複数の資料を参考に組み立てた場合です。実際の制作では、複数の技法書を見て学んだ知識を組み合わせます。知識を使うことは問題になりません。問題になるのは、特定の1点の表現をなぞった場合です。参考にした資料が1点に偏っているなら、構成を自分の判断で組み直したほうがいい。

いずれの場面でも、判断の材料になるのは制作の過程の記録です。どの寸法を自分で測り、どのゲージを自分で取り、どの段を自分で計算したか。手元にメモが残っていれば、説明できます。この記録は、後から作れません。

購入者にどこまで許すかを、自分で決めて書く

編み図を売る側になると、こちらが権利者になります。購入者が何をしてよいのかを決めて、販売ページと編み図の中に明記します。決めるべき項目は5つです。

1つ目は、編み図の再配布です。ほぼすべての販売者が禁止します。ファイルを他人に渡す、SNSに上げる、別のサイトで再販するといった行為です。

2つ目は、完成品の販売です。買った人が編み図どおりに作った品物を売ってよいかどうか。ここは販売者によって扱いが分かれます。全面的に許す、点数の上限を付けて許す、出典の表示を条件に許す、禁止する。どれを選んでも構いませんが、書いていないと問い合わせが増えます。編み物の愛好者は「作って売ってよいか」を必ず気にするので、明記するだけで信頼が上がります。

3つ目は、教室やワークショップでの使用です。編み図を教材として配る形は再配布にあたるため、別に条件を決めます。参加者がそれぞれ購入することを条件にする例が多い。

4つ目は、完成品の写真の扱いです。買った人が自分の作品を投稿するのは、宣伝になるので歓迎する販売者が多い。その際、編み図の画像そのものが写らないようお願いする一文を添えておきます。

5つ目は、私的な複製の範囲です。著作権法は、個人的または家庭内その他これに準ずる限られた範囲内で使うことを目的とする場合に、使用する者が複製できると定めています。手元で印刷する、拡大してコピーする、といった行為はこの範囲に入ります。ここを制限しようとしても実効性がないので、印刷は自由だと明記して、そのかわり他人への配布を禁じる形にするほうが読み手に伝わります。

この5つを決めると、購入者からの問い合わせがほぼ尽きます。逆に、決めずに売り始めると、同じ質問に毎回その場で答えることになり、答えが人によって変わってしまいます。一度ぶれた回答は、購入者の間で共有されます。

条件は、短く、箇条書きで、編み図のファイルの1ページ目と販売ページの両方に記載します。長い規約文を作る必要はありません。読まれない規約より、5行で読み切れる条件のほうが守られます。文章の型を押さえておくと、この種の文面を短く正確に書けるようになります。宛名や件名の作法から文書の構成までを体系的に扱うビジネス文書検定のような検定は、販売ページの文面や問い合わせへの返信を整える力に直接つながります。

どこで売るか。手数料と配信の仕組みを比べる

販売先の選び方は、手数料の率だけでは決まりません。見るべき項目は、手数料、定額の費用、振込の条件、デジタルファイルの配信に対応しているか、購入者の層の4つです。

デジタルの配信に対応している代表的な販売先の1つがBOOTHです。公式の案内では、電子コンテンツのダウンロード販売が可能であることと、サービス利用料の率が示されています。

BOOST↑(ブースト)による代金の上乗せがあった場合、BOOST↑金額にも5.6%のサービス利用料が発生いたします。 出典: booth.pm

同じ案内には、サービス利用料とは別に振込時の手数料が200円から300円(税込)かかること、売上は月ごとに締めて翌月20日から5営業日以内に振り込まれることが記載されています。ダウンロード販売の場合、利用料の対象は商品価格です。率のほかに1件あたりの定額の費用が加わる仕組みになっているため、低価格で売るときの影響が大きい。価格を決める前に、公式の受取金額の比較で実際の手取りを確認してください。

ハンドメイドの販売サイトは、購入者の層が編み物に近いという利点があります。ただし、デジタルのファイルを扱えるかどうかはサイトによって違い、手数料の率もデジタルと物販で分かれていないことがあります。出品の前に、規約でデジタル商品の取り扱いを確認してください。手数料は税込で表示されているか、送料や購入オプションの金額も対象に含まれるかまで見ると、実際の手取りが読めます。

自分のサイトで売る形は、手数料を決済の手数料だけに抑えられます。かわりに、ファイルの配信、購入者への自動の案内、不正なダウンロードへの対策を自分で用意します。集客も自分で行うため、既に発信の場を持っている人に向いた形です。

どの経路を選ぶ場合でも、手取りの計算は同じ考え方です。表示価格から率で引かれる手数料と定額の費用を引き、振込の手数料を引く。中間に入る仕組みが多いほど、同じ価格でも手元に残る額が薄くなります。手数料0%の形が効くのは、単価が上がるからではなく、同じ単価で手取りが厚くなるからです。低価格の商品を数多く売る形では、この差が積み上がります。

販売に必要な法令上の表示

個人が自分のサイトで編み図を売る場合、特定商取引法の通信販売の規定がかかります。同法は、広告に表示すべき事項を定めています。

販売業者又は役務提供事業者は、通信販売をする場合の商品若しくは特定権利の販売条件又は役務の提供条件について広告をするときは、主務省令で定めるところにより、当該広告に、当該商品若しくは当該権利又は当該役務に関する次の事項を表示しなければならない。 一 商品若しくは権利の販売価格又は役務の対価(販売価格に商品の送料が含まれない場合には、販売価格及び商品の送料) 二 商品若しくは権利の代金又は役務の対価の支払の時期及び方法 三 商品の引渡時期若しくは権利の移転時期又は役務の提供時期 出典: laws.e-gov.go.jp

このほか、申込みの期間に定めがある場合はその内容、申込みの撤回や解除に関する事項の表示も求められます。省令では、事業者の氏名または名称、住所、電話番号の表示も定められています。個人が自宅の住所を公開することへの抵抗は理解できますが、法令上の要請なので、対応の方法を考える必要があります。請求があれば遅滞なく書面や電磁的記録で示すという表示をしておけば一部を省略できる仕組みもあるため、この扱いを使うかどうかを先に決めてください。

ダウンロード販売では、返品と返金の扱いを明記するのが実務上とても重要です。ファイルは受け取った時点で内容を見られるため、「思っていたものと違った」という申し出への対応を決めておかないと、毎回判断に迷います。返品を受け付けないなら、その旨を購入前に見える場所に書きます。ここを書いていないと、一般の通信販売のルールが適用される場面が出てきます。

販売のプラットフォームを使う場合は、事業者の表示や返品の条件がプラットフォーム側の規約で整えられていることがあります。それでも、自分の商品に固有の条件は自分で書く必要があります。プラットフォームの規約に任せきりにせず、商品説明の中に条件を書いてください。

編み図の品質は、売れ続けるかどうかを決める

編み図のダウンロード販売は、最初の1本が売れるまでが難しく、売れ始めてからは品質が全部を決めます。品質の中身を6つに分けます。

1つ目は、ゲージです。10センチ四方あたりの目数と段数、使用した糸と針の号数を必ず記載します。ゲージの記載がない編み図は、買った人が寸法を合わせられません。

2つ目は、糸の情報と代替の案です。使った糸の名前だけでなく、番手や太さの分類、必要な量を記載します。糸が廃番になることは珍しくないため、同じ太さの別の糸で作る場合の注意も添えます。

3つ目は、記号図と文章の両方を載せることです。記号図が読める人と、文章の指示のほうが分かる人がいます。両方あると対応できる層が広がります。海外の購入者を想定するなら、記号の凡例を図で示しておくと伝わります。

4つ目は、つまずく箇所の補足です。増減目の位置、編み地の合わせ方、とじ方。ここに写真か図を入れると、問い合わせが目に見えて減ります。制作の途中の写真は、作っているうちに撮っておかないと後から用意できません。

5つ目は、テストニットです。自分以外の人に編んでもらい、書いた通りに作れるかを確認します。無償で頼むのではなく、完成した編み図を提供する形で協力を募る例が一般的です。指摘は必ず出ます。出た指摘を直してから販売するだけで、返金の依頼が大幅に減ります。

6つ目は、更新の仕組みです。誤りが見つかったときに修正版を届けられるようにしておきます。販売先のプラットフォームにファイルを差し替える機能があるか、購入者に通知が届くかを確認してください。

品質を上げる作業は、集中して一気に進めたほうが質が揃います。制作と執筆をどう区切って進めるかは、在宅ワークの集中力アップ|ポモドーロ以外に効く7つのテクニックで扱われている時間の区切り方が実際に使えます。編む作業と書く作業は使う頭が違うので、混ぜずに分けたほうが進みます。

価格の決め方と、売上の伸ばし方の順番

価格は、原価から積み上げる方法では決まりません。デジタルの商品は複製の費用がほぼゼロなので、原価の計算に意味がないからです。決め方は3つの軸で考えます。

第一に、同じ分野の相場です。編み図のダウンロード販売は、簡単な小物で数百円、衣類やバッグのように工程が多いもので千円台という価格帯が中心になっています。相場から大きく外れると、高すぎれば売れず、安すぎれば労力が回収できません。

第二に、作るのにかかった時間です。1本の編み図を作るには、試作、ゲージの測定、記号図の作成、文章の執筆、写真の撮影、テストニットの反映という工程があります。ここに数十時間かかるのが普通です。この時間を、売れると見込む本数で割ってみます。何本売れれば労力が回収できるかが分かると、価格の下限が見えます。

第三に、束ねて売るかどうかです。1点ずつ売るほか、数点をまとめた形、季節ごとの集まり、会員制で継続的に配る形があります。まとめた形は1回の売上が上がりますが、期待値も上がるため品質の要求が高くなります。

売上を伸ばす順番にも型があります。最初にやるのは、1本を完璧に仕上げることです。売れる編み図が1本あると、そこから同じ層に向けた2本目が売れます。逆に、質の低い編み図を数多く並べると、最初に買った人が離れます。次にやるのは、見つけてもらう経路の整備です。完成品の写真を発信の場に出し、作り方の一部を無料で公開して、購入につなげます。3つ目が、購入者との関係づくりです。質問に丁寧に答えた人が次も買います。

在宅で制作を続けるには、環境の整備も無視できません。写真の投稿とファイルの配信が中心になるため、通信が不安定だと作業が止まります。回線の選び方は在宅ワークに最適なネット回線|光回線vsホームルーターの選び方で条件ごとに整理されています。上りの速度が効く作業が多いので、そこを見て選んでください。

1本目を作る前に決める4つのこと

最初の編み図を作り始める前に決めておくと、作り直しが減ります。4つ挙げます。

第一に、読者を決めます。編み物を始めたばかりの人に向けるのか、ある程度編める人に向けるのか。ここが決まらないと、説明の細かさが定まりません。初心者向けなら、目の拾い方や糸の始末まで書く必要があり、ページ数が増えます。経験者向けなら、記号図と要点だけで足ります。両方に向けようとすると、どちらにも刺さらない編み図になります。

第二に、題材を決めます。選ぶ基準は3つです。作る時間が短いもの、糸の量が少ないもの、季節に左右されにくいもの。最初の1本で大作を選ぶと、完成まで数か月かかって、売れるかどうかの検証が遅れます。小物から入り、売れる感触をつかんでから工程の多いものに進むのが安全です。

第三に、糸を決めます。入手しやすく、廃番になりにくく、複数の色が揃っているものを選びます。限定色や輸入品を指定すると、買った人が同じものを用意できません。代替の候補を2つか3つ示せる糸を選んでください。

第四に、ファイルの形式を決めます。PDFが標準です。印刷して手元で見ながら編む人が多いため、A4で読める文字の大きさにします。画面で読む人のために、目次から各章へ飛べるようにしておくと親切です。ファイルの中に、購入者の名前や購入した日を入れる仕組みを用意する販売者もいます。再配布を思いとどまらせる効果があります。

この4つを決めてから作り始めると、途中で方針が揺れません。逆に、決めずに作ると、書いている途中で「これは初心者に分かるのか」と迷い、手が止まります。制作の速さは、腕よりも決めの早さで変わります。

作った編み図をどう売り伸ばすかを考えるとき、文章で商品を説明する仕事の単価がどう決まっているかを知っておくと基準が持てます。著述家,記者,編集者の年収・単価相場のように職種ごとに単価が分解された資料を見ると、文字数で決まる仕事と成果で決まる仕事の違いが分かります。編み図は後者に近い商品なので、量ではなく質に時間をかけたほうが収入に返ってきます。

税金と手続きを、始める前に把握しておく

収入が出たら、税の手続きが必要になります。押さえるべき点を3つに絞ります。

第一に、確定申告の要否です。会社員が副業として編み図を売る場合、国税庁は、給与を1か所から受けていて給与所得と退職所得を除く各種の所得金額の合計額が20万円を超える人は確定申告をしなければならないとしています。20万円は収入ではなく所得、つまり売上から経費を引いた額で判断します。そして20万円の線は所得税の話なので、住民税の申告は別に必要になる場合があります。

第二に、開業届です。事業として継続する見込みが立ったら、個人事業の開業等届出書を税務署に提出します。国税庁の案内では、提出期限は事業の開始等の事実があった日の属する年分の確定申告期限までとされています。「開業から1か月以内」と書いている情報が多く残っていますが、現在の記載はこの形です。青色申告の承認を受けたい場合は、原則としてその年の3月15日まで、その年の1月16日以後に事業を開始した場合は開始の日から2か月以内という別の期限があります。

第三に、記録です。売上は販売先の管理画面から取得できます。経費になり得るのは、糸と針などの材料費、撮影の機材、制作に使うソフトの費用、通信費の一部です。家庭と共用しているものは按分が必要で、按分の考え方は事情で変わります。判断に迷う部分は税務署か税理士に確認してください。

収入が育ってくると、消費税の扱いも視野に入ります。インボイスの登録をするかどうかは、取引先の性質と売上の規模で判断が変わる論点です。個人の購入者に直接売る形が中心なら、急いで決める必要はありません。企業からの依頼が入るようになった段階で検討すれば間に合います。

副業として何を身につけると収入につながりやすいかという観点では、制作の技術だけでなく説明する技術が効きます。在宅で使える技能をどう選ぶかは在宅ワークに強い資格10選|自宅で稼げるスキルを身につけるで分野ごとに整理されています。編み図の販売と相性がよいのは、文章と写真と表計算の3つです。

市場を長く見てきた立場からの観察

在宅と業務委託の市場を20年見てきた運営者の立場から言うと、制作物をデジタルで売る人の中で長く続いているのは、作る腕が高い人ではありません。買った人の困りごとを先に潰している人です。編み図で言えば、つまずきやすい段に補足を入れる、糸が廃番になったときの代替を示す、質問に24時間以内に返す。この積み上げが、同じ分野の中で選ばれる理由になります。

もう一つの観察は、値付けの傾向です。手仕事の分野では、自分の制作物を安く見積もる人が多い。数十時間かけた編み図に数百円を付け、労力が回収できないまま止めてしまいます。デジタルの商品は、売れた数で時間が割り戻される構造なので、価格を適正に置いたうえで売れる数を増やすのが正しい方向です。安くすれば売れるという発想で入ると、質を上げる余裕が消えます。

制作物を売る人の収入を分解すると、同じ売上でも手元に残る額に差が出ます。差を作っているのは、間に入る仕組みの数です。決済、配信、集客のそれぞれで手数料が乗ると、低価格の商品では利益がほとんど残りません。逆に、購入者と直接つながる経路を持っている人は、同じ価格で手取りが厚くなり、そのぶんを品質に回せます。長く続く人はここを早い段階で整えています。

編み物の分野に固有の観察もあります。編み図を売る人の中で伸びているのは、編み図そのものではなく「作れるようになる過程」を商品にしている人です。動画を添える、質問に答える場を用意する、難易度を段階で分ける。編める人を増やす方向に手間をかけた人が、繰り返し買われています。編み図は説明書なので、説明の質がそのまま商品の質になります。

最後に、著作権の話に戻ります。この分野で大きな問題になるのは、悪意のある盗用よりも、知らないまま踏み越えた例です。書籍の図を写した、無料で公開されていた図を使った、他人の写真を販売ページに載せた。どれも「だめだと知らなかった」で始まっています。保護されるのは表現で、保護されないのはアイデアという線を頭に入れ、参考にした資料を記録しておく。この2つを守るだけで、ほとんどの事故は避けられます。

よくある質問

Q. 本に載っている編み図を自分で書き直して売ってもよいですか?

書籍や雑誌の編み図には著者と出版社の権利が及びます。元の図を見ながら書き起こす作業は複製または翻案にあたり得るため、体裁を変えても問題は残ります。既製品や作品を見て、自分で寸法を測り、自分でゲージを取り、自分で計算して記号図を書き起こしたものであれば原則として自分の著作物になります。参考にした資料は記録を残してください。

Q. 購入者が編み図で作った完成品を売ってもよいと決められますか?

販売者が条件を決めて明記できます。全面的に許す、点数の上限を付ける、出典の表示を条件にする、禁止するのいずれでも構いません。編み物の購入者は「作って売ってよいか」を必ず気にするため、書いていないと問い合わせが増えます。編み図のファイルの1ページ目と販売ページの両方に、短く箇条書きで記載するのが実務的です。

Q. ダウンロード販売の手数料はどのくらいかかりますか?

販売先によって違います。BOOTHはサービス利用料の率が5.6%で、これに1件あたりの定額の費用が加わり、振込時に200円から300円(税込)の手数料がかかります。売上は月ごとに締めて翌月20日から5営業日以内に振り込まれます。低価格の商品では定額の費用の影響が大きいため、価格を決める前に公式の受取金額の比較で手取りを確認してください。

Q. 個人が自分のサイトで売る場合、何を表示する必要がありますか?

特定商取引法の通信販売の規定により、販売価格、代金の支払時期と方法、商品の引渡時期、申込みの撤回や解除に関する事項などの表示が必要です。省令では事業者の氏名または名称、住所、電話番号の表示も定められています。請求があれば遅滞なく書面などで示す旨を表示すれば一部を省略できる仕組みもあります。返品と返金の扱いは購入前に見える場所へ明記してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年9月15日最終更新:2026年9月30日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

@SOHOで仕事を探してみませんか?

手数料0%・登録無料のクラウドソーシング。フリーランスの方も企業の方も、今すぐ始められます。

関連記事

カテゴリから探す

クラウドソーシング入門

クラウドソーシング入門

クラウドソーシングの基礎知識・始め方・サイト比較

職種別ガイド

職種別ガイド

職種・スキル別の案件獲得方法と単価相場

フリーランス

フリーランス

フリーランスの独立・営業・実務ノウハウ

お金・税金

お金・税金

確定申告・節税・経費・ローンなどお金の知識

スキルアップ

スキルアップ

プロフィール・提案文・単価交渉などのテクニック

比較・ランキング

比較・ランキング

サービス比較・おすすめランキング

AI活用

AI活用

職種別にChatGPT・生成AIを活用して業務効率化・収益化するノウハウ

最新トレンド

最新トレンド

市場動向・法改正・AIなど最新情報

発注者向けガイド

発注者向けガイド

クラウドソーシングで外注・人材探しをする企業・個人向け

転職・キャリア

転職・キャリア

転職エージェント・転職サイト比較・キャリアチェンジ

看護師の転職・求人

看護師の転職・求人

看護師の転職・派遣・単発バイト・副業など働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

薬剤師の転職・求人

薬剤師の転職・求人

薬剤師・登録販売者の転職・派遣・パートなど働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

介護職の転職・求人

介護職の転職・求人

介護職・介護福祉士・ケアマネジャー・訪問介護員の転職・派遣・夜勤など働き方のガイド

保育士の転職・求人

保育士の転職・求人

保育士・保育補助・幼稚園教諭の転職・派遣・パートなど働き方のガイド

医療職の転職・求人

医療職の転職・求人

医師・産業医・リハビリ職・歯科衛生士・管理栄養士・医療事務の転職や働き方のガイド。診療や医学の情報は扱いません

保険

保険

生命保険・医療保険・フリーランスの保険設計

採用・求人

採用・求人

無料求人掲載・採用コスト削減・人材募集の方法

オフィス・ワークスペース

オフィス・ワークスペース

バーチャルオフィス・コワーキング・レンタルオフィス

法律・士業

法律・士業

契約トラブル・士業独立開業・フリーランス新法

シニア・50代

シニア・50代

シニア世代のキャリアチェンジ・副業・年金

セキュリティ

セキュリティ

サイバーセキュリティ・脆弱性対策・情報保護

金融・フィンテック

金融・フィンテック

暗号資産・決済・ブロックチェーン・金融テクノロジー

経営・ビジネス

経営・ビジネス

経営戦略・ガバナンス・事業承継・知財

ガジェット・機材

ガジェット・機材

フリーランスに役立つPC・デバイス・周辺機器

子育て×働き方

子育て×働き方

子育てと在宅ワークの両立・保育園・時間管理

補助金・助成金

補助金・助成金

個人事業主・フリーランスが使える公的補助金・助成金・給付金の申請ガイド

アウトソーシング・外注ガイド

アウトソーシング・外注ガイド

SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方