株主総会の議事録の書き方|前から順に埋めていく手順

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
株主総会の議事録の書き方|前から順に埋めていく手順

この記事のポイント

  • 株主総会議事録の書き方を
  • 前から順に埋めていける手順として整理しました
  • 会社法と法務省令が求める6つの記載事項

株主総会議事録の書き方で迷う理由は、だいたい一つに絞られます。何を書けばよいかではなく、どの順番で何を埋めればよいかが分からない、という迷いです。結論から言うと、株主総会議事録は書くべき中身が法律と法務省令で決まっていて、その並びどおりに前から埋めていけば完成します。創作する余地はほとんどありません。この記事では、はじめて議事録を作る人が、白紙の状態から順に穴を埋めていける形で手順を並べます。

議事録は決議そのものではなく、会議があった事実を残す書類

最初に位置づけをはっきりさせます。株主総会議事録は、決議を成立させるための書類ではありません。決議は、議決権を持つ株主が集まって賛成多数になった時点で成立します。議事録はその後で、何がどう決まったかを文書として固定するために作ります。

この順番を取り違えると、書き方そのものがぶれます。議事録を「これから決めるための申請書」だと思って書くと、決意表明のような文章になってしまう。実際には過去に起きたことの記録なので、文末は「決議した」「承認可決した」「報告した」という完了形で揃います。

作成が必要だということ自体も、法律に直接書かれています。

株主総会の議事については、法務省令で定めるところにより、議事録を作成しなければならない。 2 株式会社は、株主総会の日から十年間、前項の議事録をその本店に備え置かなければならない。 3 株式会社は、株主総会の日から五年間、第一項の議事録の写しをその支店に備え置かなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp

「法務省令で定めるところにより」という一言が重要です。具体的に何を書くかは、会社法本体ではなく会社法施行規則という別の省令のほうに書かれています。だから会社法だけを読んでも記載事項は出てきません。書き方を調べていて手がかりが見つからなかった経験があるなら、探す場所が違っていた可能性が高いです。

もう一つ、株主が1人だけの会社でも議事録は要ります。1人会社だと「会議」という感覚が湧きにくいのですが、株主総会という機関は株主が1人でも存在します。一人で決めて、一人で議事録に残す。形は簡素になりますが、作らなくてよいことにはなりません。

作らない、置いておかないと過料の対象になる

書かなくても誰も困らないのでは、という発想は捨てたほうがよいです。会社法は、議事録を備え置かなかった場合や、記載すべき事項を書かなかった場合を、過料に処すべき行為として並べています。過料の上限は100万円です。対象になるのは会社という法人ではなく、取締役など個人です。

現実に過料が科される場面は多くありません。ただし、議事録が無いことで止まる手続きは、もっと日常的な場所に山ほどあります。

一つ目は登記です。役員を選び直した、商号を変えた、本店を移した。こうした変更を法務局に届け出るときは、その決議があったことを示す書面として株主総会議事録を出します。議事録が無ければ、登記の申請そのものが進みません。

二つ目は税務です。役員報酬をいくらにしたか、退職金をいくら払ったか。こうした支出が経費として認められるかどうかは、正しい機関がきちんと決めたかどうかに左右されます。税務調査で真っ先に見られるのが、その決議を裏づける議事録です。

三つ目は株主や債権者からの閲覧請求です。会社法は、株主と債権者が営業時間内であればいつでも議事録の閲覧や写しの交付を請求できると定めています。求められてから慌てて作ると、日付をさかのぼって作った書類になってしまい、かえって不利になります。

つまり、過料を避けるために書くのではなく、後から必ず出番が来るから書く。そう考えたほうが実態に合っています。

中身は法務省令で6つに決まっている

ここが議事録づくりの骨です。会社法施行規則は、株主総会議事録に入れるべき内容を列挙しています。並びを崩さずに整理すると、次の6つです。

  1. 開催された日時と場所(その場にいない人が出席した場合は、その出席の方法も)
  2. 議事の経過の要領と、その結果
  3. 法律で定められた一部の場面で、総会の場で述べられた意見や発言があるときは、その概要
  4. 総会に出席した取締役、執行役、会計参与、監査役、会計監査人の氏名または名称
  5. 議長がいるときは、議長の氏名
  6. 議事録を作る仕事をした取締役の氏名

3番目だけは少し特殊で、監査役が辞任した理由を述べたときなど、決まった場面でだけ登場します。中小企業の通常の定時株主総会では出てこないことがほとんどです。実質的には、1、2、4、5、6の5つを埋めれば形になります。

注目したいのは、この一覧に「押印」も「署名」も出てこないことです。記載事項として法務省令が求めているのは氏名までで、印鑑は含まれていません。押印の話はもっと先で出てきますが、記載事項そのものとは別の話だと、この時点で切り分けておくと混乱しません。

もう一つ、日時の欄に補足がある点も見落とされがちです。会場にいない取締役や株主が参加した場合は、その出席の方法まで書くことになっています。オンライン会議システムでつないだのなら、そのことを書く。電話でつないだのならそう書く。この一行が抜けると、記載事項の欠落になります。

手順1 日時と場所、そして出席の方法を書く

ここから実際に埋めていきます。1行目はこうなります。

「令和○年○月○日午前○時○分から、当会社の本店において定時株主総会を開催した。」

押さえどころは3つあります。第一に、開始時刻を分単位まで書くこと。時刻の記載は後で閉会時刻と対になり、会議が実際に行われたことを示す痕跡になります。第二に、場所を具体的に書くこと。本店で開いたなら「当会社の本店において」で足りますが、社長の自宅や貸会議室で開いたなら、その住所を書いたほうが安全です。第三に、定時株主総会なのか臨時株主総会なのかを書き分けること。決算を承認する年1回の総会が定時株主総会で、それ以外の必要に応じて開くものが臨時株主総会です。

オンライン参加があったときは、この段落のあとに一文足します。「取締役○○○○および株主○○○○は、ウェブ会議システムにより出席した。」のように、誰が、どの方法で参加したかが分かるように書きます。

なお、定時株主総会は毎事業年度の終了後、一定の時期に招集しなければならないと定められています。3月決算の会社が6月に開くことが多いのは、決算の数字が固まるまでに時間がかかるからで、6月でなければならない決まりがあるわけではありません。

手順2 株主の数と議決権の数を並べる

次のブロックは数字の羅列になります。法務局が公開しているひな形では、この順で並んでいます。

・株主の総数 ・発行済株式の総数(自己株式があるときはその数も) ・議決権を行使することができる株主の数 ・議決権を行使することができる株主の議決権の数 ・出席株主数(委任状による者を含む) ・出席株主の議決権の数

この6行を書く目的は、決議が成立する数に届いていたことを示すためです。普通の決議は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を持つ株主が出席し、出席した株主の議決権の過半数の賛成で成立します。定款の変更など重い決議では、出席した株主の議決権の3分の2以上が必要になります。出席していた議決権の数を書いておけば、その線を越えていたことが後から検算できます。

株主が社長1人だけの会社なら、すべての行に同じ数字が並びます。それでも省かないほうがよいです。行があるだけで、確かに数えたという事実が残ります。

自己株式、つまり会社自身が持っている自分の株式には議決権がありません。持っている場合は発行済株式の総数から差し引いて考えます。ここを混同すると、議決権の数だけ合わなくなります。

手順3 議長を決めて、開会を宣言するまで

数字のブロックの直後に、出席した役員の名前を並べます。

「出席取締役 ○○○○(議長兼議事録作成者)」「出席監査役 ○○○○」といった形です。かっこ書きで議長と議事録作成者を兼ねることを示しておけば、記載事項の5番目と6番目を一度に満たせます。この書き方は法務局のひな形がそのまま採用しているもので、迷ったらこれを真似るのが早いです。

続く一文が開会の宣言です。

「以上のとおり株主の出席があったので、定款の定めにより代表取締役社長○○○○は議長席につき、本定時総会は適法に成立したので、開会する旨を宣し、直ちに議事に入った。」

長い一文ですが、ここには3つの事実が詰まっています。議長が誰で、どんな根拠でその人が議長になったのか。総会が成立する数に達していたのか。そして議事に入った、という時点の区切りです。

議長を誰にするかは、多くの会社で定款に書いてあります。手元の定款を開いて、「株主総会の議長は代表取締役社長がこれに当たる」といった条文があるか確かめてください。定款に定めが無ければ、その場で株主が選びます。その場合は「出席株主の互選により、取締役○○○○が議長に就任した」と書き換えます。

手順4 議案は「付議、審議、結果」の3段で書く

議事録の本体は議案です。ここだけは会社ごとに中身が変わりますが、書く型は共通しています。1議案につき、次の3段で組み立てます。

第1段、議長が議案を出した。第2段、説明や質疑があった。第3段、賛成多数で決まった。

法務局のひな形では、役員を選び直す議案がこう書かれています。

第2号議案 取締役及び監査役の任期満了に伴う改選に関する件 議長は、取締役及び監査役の全員が本定時総会の終結と同時に任期満了し退任することになるので、その改選の必要がある旨を述べ、その選任方法を諮ったところ、出席株主中から議長の指名に一任したいとの発言があり、一同これを承認したので、議長は下記の者をそれぞれ指名し、これらの者につきその可否を諮ったところ、満場異議なくこれに賛成したので、下記のとおり再選重任することに可決確定した。 出典: houmukyoku.moj.go.jp

読みにくい一文ですが、分解すると先ほどの3段そのものです。議長が必要性を述べた(付議)、選び方を諮ったら一任すると言われた(審議)、満場異議なく可決した(結果)。この骨格さえ守れば、文章はもっと短くても構いません。

ここで法律が求めているのは「議事の経過の要領及びその結果」です。要領、つまり要点で足ります。発言を録音して一言一句起こす必要はありません。逆に、結果だけを書いて経過を一切書かないのは、要領が抜けているので不足になります。誰が何を提案し、どういう理由で、どう決まったか。この3点が読み取れればよい、という水準です。

賛成の程度も書き分けます。全員が賛成したなら「満場異議なくこれを承認可決した」。反対がいたなら「出席株主の議決権の過半数の賛成をもって可決した」のように、可決の根拠が分かる書き方にします。争いのあった議案で「満場一致」と書いてしまうと、事実と違う記録になります。

手順5 閉会の時刻と、名前を並べて締める

議案を書き終えたら、閉会で締めます。

「議長は以上をもって本日の議事を終了した旨を述べ、午前○時○分閉会した。」

そのあとに結びの一文と、氏名を並べます。法務局のひな形では、取締役会を置いていない会社の例がこうなっています。

「上記の決議を明確にするため、この議事録を作り、議長、出席取締役及び出席監査役がこれに記名押印する。」

そして日付、会社名、役職と氏名が続きます。ここまで書けば議事録は完成です。開始時刻から閉会時刻まで、前から順に時間どおりに並んでいるので、読む側も迷いません。

なお、この結びの文は、取締役会を置いている会社のひな形では「記名する」となっていて、押印の文字がありません。同じ法務局の記載例でも、会社の形によって書き分けられています。押印の話は後の見出しで詳しく扱います。

法務局が公開しているひな形を骨組みに使う

自力で文章を考えるより、公的な記載例を骨にしたほうが早くて安全です。法務局は商業・法人登記の申請書様式のページで、登記の目的ごとに申請書と添付書面の記載例を公開しています。役員変更の記載例には、株主総会議事録の文例がまるごと入っています。

このひな形を使う利点は3つあります。

一つ目は、記載事項の抜けが起きにくいことです。法務省令が求める項目が最初から並んでいるので、穴を埋めれば足ります。二つ目は、登記の窓口が想定している文言をそのまま使えることです。同じ言い回しであれば、審査する側も読み慣れています。三つ目は、注意書きが付いていることです。どの場合に印鑑証明書が要るか、就任承諾書を省略できるのはどんなときか、といった条件が記載例の脚注に書かれています。

ただし、ひな形は取締役会を置いている会社と置いていない会社で別々に用意されています。自分の会社がどちらなのかを先に確かめてください。登記事項証明書を取れば、取締役会設置会社である旨が登記されているかどうかで判別できます。ここを取り違えると、押印の要否や代表取締役の選び方がまるごとずれます。

文書の形式を整える仕事そのものに不安があるなら、基礎から体系的に学べる検定を一度通しておく手もあります。ビジネス文書検定は、社内外でやりとりする文書の構成や敬語の使い分けを扱う試験で、議事録や通知文の型を身につける入口になります。

議案別に、押さえる要素が変わる

議案の型は同じでも、中に入れる要素は議案ごとに違います。よく出てくる4つを並べます。

決算の承認では、承認する書類の名前を並べます。貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表。監査役がいる会社では、監査役が調査して問題なしと報告した旨も書きます。数字そのものを議事録に書き写す必要はなく、どの書類を承認したかが分かれば足ります。

役員の選任では、選ばれた人の氏名を書きます。新しく就任する人の場合は住所も書きます。そして「被選任者は、いずれも席上その就任を承諾した」という一文を必ず入れてください。この一文があると、登記のときに就任承諾書を別に用意せず、議事録の記載を援用できます。法務局の記載例にもその旨の注記があります。書類を1枚減らせるので、実務では効きます。

役員報酬では、総額の上限を決めるのが一般的です。個々の取締役にいくら払うかは、総額の枠内で取締役の話し合いに委ねる形にします。この議案は税務でも見られるので、決議した日と金額が読み取れるように書きます。

定款の変更では、変更前と変更後の条文を並べて書きます。第何条をどう直したかが分かる形にしておくと、後から定款を追いかける人が助かります。定款変更は重い決議にあたるので、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成が必要です。この数に届いていたことが、先に書いた議決権の数から読み取れるようにしておきます。

会議を開かずに決めたとき、書く中身が入れ替わる

株主が数人しかいない会社では、全員が同じ場所に集まるほうが面倒だということがあります。会社法は、取締役や株主が提案した事項について、議決権を行使できる株主の全員が書面または電磁的記録で同意の意思表示をしたときは、その提案を可決する決議があったものとみなすと定めています。会議を開かずに決める方法です。

この方法を使ったときは、議事録に書く中身が入れ替わります。会社法施行規則は、みなし決議の場合の記載事項を別に定めています。

  1. 決議があったものとみなされた事項の内容
  2. その提案をした者の氏名または名称
  3. 決議があったものとみなされた日
  4. 議事録を作る仕事をした取締役の氏名

開催した日時と場所も、議長も、出席株主数も出てきません。会議を開いていないので当然です。ここに通常の議事録の型を持ち込んで「○○において開催した」と書いてしまうと、事実と違う記録になります。

同意書そのものの保管も必要です。決議があったものとみなされた日から10年間、同意の書面または電磁的記録を本店に備え置くことになっています。議事録だけ作って同意書を捨てる、という運用は成り立ちません。

会議を開く場合でも、株主全員の同意があれば招集の手続きを省略して開催できます。招集通知を出す期間は、公開会社でない会社なら総会の日の1週間前までで、取締役会を置いていない会社はさらに短い期間を定款で定めることもできます。実際に集まれるなら、この省略のほうが手続きは簡単です。

押印は法律の義務ではない。それでも押す場面がある

株主総会議事録に押印しなければならない、という決まりは会社法にも会社法施行規則にもありません。記載事項として求められているのは氏名までです。ここは多くの人が誤解しています。

では、なぜ実務では押しているのか。登記の場面で、別の規則が押印とその印鑑証明書を要求することがあるからです。

商業登記規則は、代表取締役の就任による変更の登記の申請書について、株主総会の決議で代表取締役を定めた場合は、議長および出席した取締役が議事録に押した印鑑の証明書を添付しなければならないと定めています。ただし、その印鑑が、変更前の代表取締役が登記所に提出している印鑑と同じであるときは不要です。

つまり、押印が問われるのは「取締役会を置いていない会社で、株主総会で代表取締役を選んだとき」です。このとき、前任の代表取締役が総会に出席して会社の実印を議事録に押していれば、ほかの出席取締役の印鑑証明書は要りません。逆に前任者が出席していない、あるいは実印を押していないなら、議長と出席取締役の全員が実印を押し、それぞれの印鑑証明書を用意することになります。

取締役会を置いている会社では、代表取締役は取締役会で選ぶので、株主総会議事録のほうに印鑑証明書を求められる場面はありません。法務局の記載例で結びの文が「記名する」となっているのは、これが理由です。

判断に迷ったら、次の順で確かめてください。まず取締役会設置会社かどうか。次に、その総会で代表取締役を選んだかどうか。この2つがどちらも当てはまるときだけ、押印と印鑑証明書を本気で気にすればよい、という整理になります。

なお、登記で株主総会の決議が必要になる場面では、株主リストという書面も併せて添付します。議決権の多い上位10名、または議決権割合を多い順に足して3分の2に達するまでの株主のうち、人数の少ないほうについて、氏名または名称、住所、株式数、議決権数、議決権数の割合を代表者が証明する書面です。議事録とセットで求められるので、様式と記載例を先に見ておくと当日慌てません。

作ったあとの置き場所と年数

完成した議事録は、総会の日から10年間、本店に備え置きます。支店がある会社は、その写しを5年間、支店に置きます。

備え置くというのは、金庫にしまい込むという意味ではありません。株主と債権者が営業時間内に閲覧や謄写を請求してきたときに、すぐ応じられる状態にしておくということです。請求があったのに正当な理由なく拒むと、これも過料の対象に挙がっています。

電磁的記録、つまりデータで作ることも認められています。会社法施行規則は、議事録を書面または電磁的記録で作らなければならないと定めていて、どちらでもよいという立て付けです。データで作る場合、支店への写しの備置きは、支店で閲覧の請求に応じられる措置をとっていれば不要になります。

現実的な運用としては、紙で1部作って本店に綴じ、同じ内容のデータを別の場所に置いておく形が扱いやすいです。年に1回しか作らない書類なので、置き場所を決めておかないと3年後に探せなくなります。ファイル名に開催日を入れて、開催日順に並ぶようにしておくだけでも後が違います。

書き損じで止まりやすい5か所

最後に、作り直しになりやすい箇所を並べます。

1つ目は、日付と時刻の整合です。開会が午前10時なのに閉会が午前9時30分になっている、というような取り違えが起きます。テンプレートを流用したときに直し忘れるのが典型です。

2つ目は、出席役員の名前の抜けです。記載事項に出席した取締役の氏名が入っているので、来ていた人を書き漏らすと不足になります。逆に、来ていない人を書くのはもっと危険です。事実と違う記載は過料の対象に挙がっています。

3つ目は、議決権の数の計算です。自己株式を差し引いていない、議決権制限のある株式を数え間違えている、といったずれが起きます。数字が合わないと、決議が成立していたのかどうかが読み取れなくなります。

4つ目は、就任承諾の一文の欠落です。役員を選んだ議案で「席上その就任を承諾した」が抜けていると、登記のときに就任承諾書を別に用意することになります。新任の場合は住所の記載も必要です。

5つ目は、みなし決議と通常の議事録の混在です。会議を開かずに決めたのに、開催日時と場所を書いてしまう。この間違いは登記の窓口でも指摘されます。

書き上げたら、法務省令が求める6つの項目を指で追いながら1つずつ確認するのが確実です。慣れれば3分で終わります。

定時と臨時で、書き出しと議案の中身が変わる

株主総会には2種類あります。毎事業年度の終了後に必ず開く定時株主総会と、必要が生じたときにいつでも開ける臨時株主総会です。議事録の型は共通ですが、書き出しと議案の顔ぶれが違います。

定時株主総会の議事録は、決算の承認が第1号議案に来るのが通例です。そのあとに役員の任期満了に伴う改選、剰余金の配当、役員報酬の改定といった議案が並びます。役員の任期は原則2年(監査役は4年)で、定款で最長10年まで伸ばせます。任期が切れる年の定時総会で選び直し、議事録を添えて登記する。この流れが2年ごと、あるいは10年ごとにやってきます。

臨時株主総会の議事録は、議案が1つか2つしかないことがほとんどです。本店を移した、商号を変えた、事業目的を足した、役員が途中で辞めたので補充した。どれも登記とセットになる議案です。書き出しは「令和○年○月○日午前○時○分から、当会社の本店において臨時株主総会を開催した。」となり、「第○回」という回数は付けないのが一般的です。

臨時株主総会で注意したいのは、招集の手続きです。定時総会は毎年決まった時期に開くので段取りが体に入っていますが、臨時総会は思い立って開くので通知を忘れがちです。公開会社でない会社なら総会の日の1週間前までに通知を発することになっていて、取締役会を置いていない会社はさらに短い期間を定款で定められます。株主全員の同意があれば、招集の手続きそのものを省いて開催できます。株主が家族だけ、という会社ではこの省略を使うのが現実的です。ただし、省略したなら議事録に「株主全員の同意があったので招集手続を省略して開催した」と書き添えておくと、後から経緯が追えます。

書く前に、原本を手元に並べておく

議事録を書き始めてから止まる原因は、たいてい手元に数字や名前が無いことです。書き出す前に、次の5点を机の上に並べてください。

1つ目は定款です。議長を誰にするか、招集通知の期間を短縮しているか、役員の任期を何年にしているか。議事録の書き方を左右する条件がここに集まっています。定款を最後に開いたのがいつか思い出せないなら、それ自体が危険信号です。

2つ目は登記事項証明書です。取締役会設置会社かどうか、現在の役員は誰で任期がいつ切れるか、発行済株式の総数はいくつか。法務局に出す予定があるなら、登記されている内容と議事録の記載がずれていないかを突き合わせます。

3つ目は株主名簿です。株主の総数、それぞれの持ち株数、議決権の数。株主リストを作る場面では、住所まで必要になります。名簿を更新していない会社は珍しくありませんが、相続や譲渡があったのに名簿が古いままだと、議決権の数が実態と合わなくなります。

4つ目は決算書です。定時株主総会なら、承認する書類の名前を議事録に書きます。貸借対照表、損益計算書、株主資本等変動計算書、個別注記表。この4つが揃っているかを先に確かめます。

5つ目は前回の議事録です。同じ型を使い回せますし、前回からの変更点が分かります。「前回は取締役が3人だったが今回は2人」といった差分は、前回分を横に置かないと気づけません。

この5点さえ揃えば、議事録づくりは書き写す作業に変わります。逆に、揃えずに書き始めると、途中で調べ物が入って手が止まり、翌日には何をどこまで書いたか忘れます。年に1回か2回の作業だからこそ、準備を先に済ませる価値があります。

議事録づくりの手を、どこまで社内で抱えるか

ここからは市場の話です。株主総会議事録は年に1回か2回しか作らない書類で、しかも作るたびに前回のやり方を思い出すところから始まります。この「たまにしか来ないが、間違えると止まる仕事」は、社内で抱え込むと効率がよくありません。

在宅で働く事務系の人材に、議事録の下書きと体裁づくりを任せる会社は増えています。法律の判断そのものは司法書士や税理士の領域ですが、ひな形に沿って数字と氏名を埋め、体裁を整え、過去分と突き合わせて保管する作業は、文書作成の経験がある人なら十分にこなせます。

フリーランスや副業として文章まわりの仕事を受ける側の相場感は、職種別の単価データから掴めます。著述家,記者,編集者の年収・単価相場には、文章を扱う職種の報酬水準がまとまっていて、文書作成の外注費を見積もるときの目安になります。社内で担当者の時間を割く場合の人件費と比べてみると、どちらが安いかは会社の規模で変わります。

進め方を含めて相談したい場合は、業務の棚卸しから入る支援の形もあります。AIコンサル・業務活用支援のお仕事では、社内の定型業務をどこまで自動化し、どこから人に任せるかを整理する仕事の内容が紹介されています。議事録のような年次の定型文書は、ひな形とチェックリストを一度作っておけば、翌年からの負荷が大きく下がる種類の仕事です。

フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、この手の「年に数回しか発生しない事務」を外に出せている会社ほど、社内の人が本業に時間を使えています。逆に、仲介手数料を何段も挟んだ形で外注していると、発注側は同じ予算で頼める量が減り、受ける側の手取りも薄くなる。手数料0%の直接取引が効いてくるのはここで、金額の大小よりも、双方の手取りが厚くなることで続く関係ができる点に意味があります。長く続いている在宅の受発注を見ていると、単発の作業を安く買い叩く関係ではなく、去年の議事録を知っている人が今年も作る、という積み重ねのほうが圧倒的に残っています。

議事録そのものは、法律が形を決めてくれている数少ない書類です。だからこそ、誰が作っても同じものができる。作る人を社内に固定する理由は、実はそれほど強くありません。

よくある質問

Q. 株主が社長1人だけの会社でも株主総会議事録は必要ですか?

必要です。株主が1人でも株主総会という機関は存在し、会社法は株主総会の議事について議事録を作成しなければならないと定めています。書く中身は通常と同じで、日時と場所、議決権の数、議案と結果、議事録を作った取締役の氏名などを埋めます。1人会社でも作成と備置きの義務は変わりません。

Q. 株主総会議事録に押印や署名は必ず必要ですか?

会社法と会社法施行規則は、記載事項として氏名までしか求めておらず、押印を義務づけてはいません。ただし、取締役会を置いていない会社が株主総会で代表取締役を選んだ場合は、登記の際に議長と出席取締役が議事録に押した印鑑の証明書が必要になります。前任の代表取締役が登記所届出印を押していれば不要です。

Q. 議事録はいつまで、どこに保管すればよいですか?

株主総会の日から10年間、本店に備え置きます。支店がある場合は、その写しを5年間、支店に置きます。株主と債権者は営業時間内であればいつでも閲覧や謄写を請求できるため、すぐ取り出せる状態にしておく必要があります。データで作ることも認められています。

Q. 会議を開かずに書面で決めた場合、議事録はどう書きますか?

議決権を行使できる株主全員が書面などで同意した場合は決議があったものとみなされ、議事録の記載事項が入れ替わります。書くのは、決議があったとみなされた事項の内容、提案した人の氏名、みなされた日、議事録を作った取締役の氏名の4つです。開催日時や場所、議長は書きません。同意書自体も10年間の備置きが必要です。

この記事について

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編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年1月14日最終更新:2026年9月19日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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