60代シニアが転職で押さえたい点


この記事のポイント
- ✓シニア転職を考える60代に向けて
- ✓65歳までの雇用確保措置や失業給付の仕組み
- ✓業務委託という選択肢までを公的資料の数字で整理しました
シニア転職を60代で考えるとき、多くの人がつまずくのは「求人があるかどうか」ではありません。求人は増えています。つまずくのは、応募する前に決めておくべきことが整理されていないまま、求人サイトの検索窓に職種名を入れてしまう点にあります。
結論から書きます。60代の転職で結果が変わるのは、次の3つを応募より先に確かめた人です。ひとつめは、今の勤め先に残る道と辞める道で受け取れるお金がどう変わるか。ふたつめは、自分の経験を「役職名」ではなく「引き受けられる作業」に翻訳できているか。みっつめは、雇われる形だけでなく業務委託という受け方を検討の土俵に乗せているか。この記事では、この3つを公的な資料の数字とともに順番に整理します。
60代の転職市場は、働き手の側から見ると数字が変わる
まず現在地を押さえます。総務省統計局が2026年9月20日に公表した統計トピックスによると、65歳以上の就業者数は943万人で、22年連続の増加となり過去最多を更新しました。就業者全体に占める65歳以上の割合は13.8%で、これも過去最高です。
65歳以上の就業者数は、22年連続で増加し943万人と過去最多 就業者総数に占める65歳以上の就業者の割合は、13.8%と過去最高 65歳以上の年齢階級別就業率は、いずれも過去最高に 出典: stat.go.jp
同じ資料では、65歳以上の人口が3624万人、総人口に占める割合が29.6%で過去最高だとも示されています。働いている高齢者が増えているのは、単に元気な人が増えたからではありません。人口の構成が変わり、企業が採用できる若い世代の数そのものが減っているからです。つまり60代の求職者にとっては、競争相手が減っている市場に立っていることになります。
非正規が76.1%という数字を、どう読むか
同じ統計で、65歳以上の役員を除く雇用者のうち、非正規の職員・従業員が占める割合は76.1%とされています。この数字だけを見ると「60代は結局アルバイトしかない」と読みたくなりますが、そう単純ではありません。
この76.1%には、定年後に同じ会社で契約社員として働き続けている人が大量に含まれます。継続雇用は契約社員や嘱託という形を取ることが多いため、統計上は非正規に数えられるのです。つまりこの数字は「正社員になれなかった人の割合」ではなく「60代の働き方の主流が期間の定めのある契約になっている」という構造を表しています。
読み替えるべきなのは、そこから先です。期間の定めのある契約が主流ということは、雇用の安定という一点では勝負しにくいということでもあります。だからこそ、契約形態の外側にある要素、つまり時間の融通や仕事の中身、そして単価で選ぶ余地が広がります。正社員という椅子を探し続けるより、条件のどこを優先するかを先に決めたほうが、結果的に選べる求人は増えます。
求人が多い産業には、はっきりした偏りがある
統計トピックスは、主な産業別に65歳以上の就業者数を見ると「卸売業,小売業」や「医療,福祉」などで多いとしています。この2つは、現場の人手が常に足りず、かつ短時間の勤務を組み込みやすい産業です。求人の絶対数を優先するなら、この偏りに沿って探すのが最短になります。
一方で、これまでの職務経験を値段に変えたいなら、産業ではなく「作業」で探す発想に切り替える必要があります。経理の締め処理、契約書の確認、見積書の作成、協力会社との調整。これらは産業をまたいで必要とされ、しかも経験が浅い人には任せにくい作業です。求人票の職種名ではなく、そこに書かれた業務内容の箇条書きを読む癖をつけると、応募先の見え方が変わります。
会社に残る道と辞める道を、制度の側から比べる
60代の転職で最初にやるべきなのは、求人を見ることではありません。今の勤め先に残った場合に受け取れるものを確定させることです。ここを飛ばすと、辞めてから「残っていたほうが手取りは多かった」と気づくことになります。
65歳までは、会社が何かをしなければならない決まりがある
高年齢者雇用安定法という法律で、会社は従業員が65歳になるまで働ける仕組みを用意することが求められています。厚生労働省は、2025年4月1日以降に会社が取るべき措置を次のように整理しています。
・ 定年制の廃止 ・ 65歳までの定年の引き上げ ・ 希望者全員の65歳までの継続雇用制度の導入 出典: mhlw.go.jp
ここで大事なのは「希望者全員」という言葉です。以前は、労使で決めた基準に当てはまる人だけを継続雇用の対象にできる経過措置がありました。その経過措置は2025年3月31日で終わっています。つまり現在は、会社が基準を作って選別することは原則としてできません。
ただし、この決まりは65歳への定年引き上げを義務づけるものではない点にも注意が必要です。厚生労働省も同じページでそう明記しています。定年は60歳のまま、そこから先は嘱託として契約を結び直す会社が多いのは、この仕組みのためです。だから60代前半の「転職」は、実際には「継続雇用の条件と、他社の条件を並べて比べる」作業になります。
70歳までの働き方には、雇われない形も用意されている
65歳から70歳までについては、働き続けられるようにする措置を取ることが会社の努力義務とされています。この中には、雇用を続ける形だけでなく、業務委託の契約を結んで働いてもらう「創業支援等措置」という形も含まれます。厚生労働省が会社向けに配っている報告書の記入例には、定年の定めをなくしたうえで65歳以降の希望者全員に創業支援等措置を70歳まで適用する例、定年60歳で65歳まで継続雇用したあと70歳まで創業支援等措置を適用する例などが並んでいます。
これは60代の読み手にとって実用的な情報です。「フリーランスになる」と聞くと大げさに感じるかもしれませんが、制度の側はすでに、勤め先と業務委託契約を結び直す働き方を想定した枠を用意しているということです。いきなり外部の仕事を取りに行かなくても、今の会社との関係を雇用から委託に切り替える相談から始められます。
給付の縮小が2025年に起きている
60歳以降も同じ会社で働き続ける場合、賃金が下がったぶんを一部補う高年齢雇用継続給付という仕組みがあります。ここが2025年に変わりました。ハローワークの説明では、60歳以後の各月の賃金が60歳時点の64%以下に下がった場合、支給額はその月の賃金の10%相当額です。
一方、令和7年3月31日以前に60歳に達した人は、61%以下に下がった場合に15%相当額という古い条件が適用されます。つまり、2025年4月以降に60歳を迎える人は、以前の世代より受け取れる額が減っています。「先輩はこれで食いつないだ」という話をそのまま自分に当てはめると、計算が合わなくなります。なお、各月の賃金が397,369円を超える場合は支給されません。この上限額は毎年8月1日に見直されます。
辞める前に、失業給付の設計を紙に書き出す
次に確認するのが雇用保険です。ここは年齢によって受け取り方が変わるため、誕生日の前と後でまったく違う結果になります。
60歳から64歳で辞めるとき
定年や自己都合で辞める一般の離職者の場合、基本手当をもらえる日数は被保険者だった期間で決まります。ハローワークの一覧では、20年以上勤めた人で150日、10年以上20年未満で120日、1年以上10年未満で90日です。倒産や解雇などで辞めざるを得なかった人は別枠で、60歳以上65歳未満なら被保険者期間20年以上で240日まで伸びます。
もうひとつ、見落とされやすい条件があります。ハローワークは、定年などで退職してしばらく休養しようと思っているときは基本手当を受けられないと明記しています。基本手当は、すぐに働ける状態で職を探している人に出るお金だからです。少し休んでから探したい場合は、受給期間を先送りする手続きが別にあります。
65歳を過ぎてから辞めるとき
65歳以上で離職した場合は、基本手当ではなく高年齢求職者給付金という一時金に切り替わります。雇用保険法では、算定の基礎となる期間が1年以上なら基本手当日額の50日分、1年未満なら30日分と定められています。毎月受け取り続ける形ではなく、まとめて一度に受け取る形です。
64歳11か月で辞めるか、65歳1か月で辞めるか。この差だけで受け取り方も総額も変わります。退職日を自分で選べる立場なら、ここは必ず事前にハローワークで試算してもらうべきところです。金額は賃金や加入期間で変わるので、一般論ではなく自分の数字で確かめてください。
独立を考えるなら、受給期間の特例を知っておく
辞めたあとに事業を始めると、その時点で「失業していない」と扱われ、基本手当は止まります。ここで諦めてしまう人が多いのですが、ハローワークには事業を始めた期間を受給期間に数えない特例があります。条件を満たせば、最大3年間を受給期間に算入しない扱いにできます。
条件は、事業の実施期間が30日以上あること、開業届の写しや事業許可証などの客観的な資料で事業の実在が確認できること、離職日の翌日以後に開始した事業であることなどです。申請の期限は、事業を開始した日などの翌日から2か月以内と決まっています。つまり「とりあえず個人で受けてみて、合わなければ勤めに戻る」という試し方が制度として用意されているわけです。ただし申請期限が短いので、独立を少しでも考えているなら、離職票を受け取った日に窓口で確認しておくのが安全です。
60代の職務経歴書は、肩書きではなく作業で書く
制度の確認が終わったら、書類に移ります。60代の応募書類でいちばん多い失敗は、役職と部署名の履歴が並んでいて、採用する側が「で、何をしてもらえるのか」を読み取れない状態です。
役職名を、そのまま業務名に置き換える
「営業部長」は、採用側にとっては情報量がほぼゼロです。置き換えるとこうなります。見積書の作成と価格の決裁、新規の取引先の与信確認、既存客の値上げ交渉、若手の同行と商談の組み立て。こう書くと、採用側は自社のどの穴に当てはめられるかを判断できます。
同じことを経理や総務でもやります。「経理課長」ではなく、月次の締め、売掛金の回収管理、税理士とのやり取り、固定資産の棚卸し、社会保険の手続き。作業の粒度まで下ろすほど、書類の通過率は上がります。60代は経験の幅が広いぶん、粒度を下げないと相手に伝わりません。
3行で伝わる実績の形
実績は「状況」「やったこと」「結果」の3行で書くと読みやすくなります。たとえば、回収が遅れがちな取引先が十数社あった状況に対し、請求の締め日と督促の手順を決めて担当者を一本化し、回収までの日数を短くした、という形です。数字を出せるなら出し、出せないなら「手順を作って属人化をやめた」のように、再現できる形にして書きます。
文書の作り方そのものに自信がないなら、書式の作法を体系的に確認できる検定も役に立ちます。ビジネス文書の構成や敬語の使い方を段階的に確かめられるビジネス文書検定は、実務経験が長い人ほど「自己流になっていた部分」を点検する道具として使えます。取得そのものより、書類の型が整う効果のほうが大きい資格です。
資格は入場券ではなく、面接の説明を省く道具
60代の相談で必ず出るのが「今から資格を取るべきか」という問いです。答えは、目的によって変わります。
効きやすい資格、効きにくい資格
効きやすいのは、その資格がないと法律上その業務ができないものです。電気工事や危険物の取り扱い、運行管理、施設の管理系がこれに当たります。人手が足りない現場では、資格の有無がそのまま採用の可否になります。
効きにくいのは、実務経験の裏づけがないまま取った一般的な資格です。60代の採用では、採用側は「教える時間がかからないか」を見ています。資格だけあって経験がない状態は、この観点では評価されにくくなります。逆に、経験はあるが説明しづらい領域を資格で補うのは有効です。
たとえば社内のネットワークやパソコンの面倒を長年みてきたが、それを職務経歴書に書くと「なんでも屋」に見えてしまう人がいます。この場合、ネットワークの基礎を体系的に示せるCCNA(シスコ技術者認定)のような認定があると、面接で経験の範囲を説明する手間が一気に減ります。資格を「箔」ではなく「説明の省略」に使うという発想です。
雇われる以外の受け方を、最初から土俵に乗せる
60代の転職を難しくしている最大の要因は、選択肢を「正社員かパートか」の2択に狭めてしまうことです。実際には、業務委託で仕事を受ける形が三つめの道として存在します。
単価は、職種ごとの相場から逆算する
業務委託で受ける場合、報酬は時給ではなく仕事の単位で決まります。自分の経験がどの程度の水準で取引されているかは、職種別の相場を見ると見当がつきます。文章を書く仕事の単価感は著述家,記者,編集者の年収・単価相場にまとまっていて、原稿の種類によって開きが大きいことが分かります。開発系の水準を知りたい場合はソフトウェア作成者の年収・単価相場が参考になります。いずれも「自分の経験が市場でいくらか」を粗く当てるための物差しとして使えます。
60代の経験が値段になりやすい領域
いま依頼が増えている領域も押さえておきます。社内で生成AIを使う体制を作りたいが、どこから手をつければいいか分からない企業は多く、業務の棚卸しから入れる人が求められています。この種の仕事の輪郭はAIコンサル・業務活用支援のお仕事に整理されています。技術そのものより、現場の業務をほどいて手順に落とす力が要る仕事なので、長く現場を見てきた人が入りやすい領域です。
もう少し広く、情報の扱いやマーケティング寄りの業務まで含めた案件の種類はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事にまとまっています。セキュリティの社内規程を整えるような仕事は、若手だけでは決めきれないことが多く、判断の経験がある人が重宝されます。
手数料の差は、月単位より年単位で効く
業務委託で受けるときに見落とされがちなのが、仲介手数料です。仲介サイトの手数料は10%台後半に設定されていることが多く、年間で100万円の仕事を受ければ十数万円が差し引かれます。同じ仕事でも、仲介が入らない直接の契約なら、その分がそのまま手取りに残ります。依頼する側から見ても、同じ予算でより多くを頼めることになります。この構造は、単発の金額では小さく見えても、年単位で積むと無視できない差になります。
応募先を見分けるときに、60代が確かめるべきこと
求人票の読み方も変わります。年齢の制限は、原則として求人に書けないことになっていますが、実際には「例外事由」として年齢を明示できる場合があります。高年齢者の雇用を進めるための募集がこれに当たり、この記載がある求人は、むしろ60代を前提に設計されています。逆に年齢の記載がまったくない求人は、応募してから年齢で外されることもあります。
確認すべき項目は3つです。ひとつめは契約の期間と更新の条件。1年更新なのか、上限年齢が決まっているのか。ふたつめは社会保険の加入条件。週の労働時間によって変わるため、手取りの計算が変わります。みっつめは体への負荷。立ち仕事の時間、持ち上げる重量、夜勤の有無です。60代の離職理由でいちばん多いのは待遇ではなく体調なので、ここを最初に確認しないと長続きしません。
なお、求人を探す経路そのものを見直すのも有効です。年代別にどのサービスが向くかを比べた30代の転職サイトおすすめ7選|キャリアアップに強いのは?は対象年代こそ違いますが、サイトごとの得意分野の違いを把握する材料になります。求人サイトと人材紹介では集まる案件の性質が違うため、両方を並行して使うのが基本です。
動き出してから決まるまでの、現実的な進め方
やることが多く見えますが、順番を決めれば1か月で形になります。60代の場合、体力と気力を分散させないためにも、同時に何本も走らせないほうがうまくいきます。
最初の1週間は、情報を集める週です。今の勤め先の就業規則で継続雇用の条件を確認し、退職金の見込み額を人事に聞きます。ねんきん定期便を出してきて、年金の受け取り開始をいつにするかの候補を2つ作ります。この段階では求人は見ません。判断の基準になる数字がそろっていない状態で求人を見ると、条件の良し悪しを比べられないからです。
2週目は、書類を作る週です。職務経歴書を作業の粒度まで下ろして書き直します。ここは時間がかかるので、1日30分を5日続ける配分で進めてください。完成させることより、人に読ませて「何をしてもらえるか分かるか」を確認することが目的です。
3週目に、はじめて求人を見ます。ハローワークの窓口と、民間の求人サービスを両方使います。ハローワークには高齢者の就職を専門に扱う相談の窓口が置かれている地域があり、求人票に書かれていない条件を確認してもらえることがあります。応募は絞らず、条件が近いものに幅広く出します。60代は書類で落ちる割合が高いので、母数を確保しないと面接の機会が作れません。
4週目は、面接と並行して業務委託の可能性を探る週です。前職の取引先や、辞めた元同僚に「今こういう仕事を受けられる」と伝えておきます。委託の仕事は求人票ではなく人づてで動くことが多く、種まきから実際の依頼までに時間がかかります。転職活動と並行して始めておくと、半年後の選択肢が増えます。
求人票の「シニア歓迎」という言葉を分解する
求人には「シニア活躍中」「ミドルシニア歓迎」「60代歓迎」といった表現が並びます。どれも同じに見えますが、意味は違います。
「シニア活躍中」は、現在その職場で高齢の人が働いているという事実の表示です。採用の意思とは別なので、実際の年齢構成を面接で確認する価値があります。「60歳以上の方、例外事由3号ニ」といった表記がある求人は、高齢者の雇用を進める目的で年齢を明示している求人で、この場合は60代であることが不利になりません。
もうひとつ見るべきなのが、勤務日数の書き方です。「週2日から相談可」と書かれていても、実際には特定の曜日しか空いていないことがあります。応募前の問い合わせで、希望する曜日と時間帯に枠があるかを確かめておくと、面接まで進んでから条件が合わないという事態を避けられます。60代の仕事探しでは、時間の融通が続けられるかどうかを最も大きく左右します。
学び直しの費用は、制度で下げられる
新しい分野に移るなら学び直しが要りますが、60代で自費を大きく投じるのは避けたいところです。ここで使えるのが教育訓練給付金という仕組みです。厚生労働大臣が指定した講座を修了すると、かかった費用の一部が戻ってきます。
厚生労働省の説明では、給付の対象は3種類に分かれます。もっとも手厚い専門実践教育訓練は、教育訓練にかかった費用の50%が受講中6か月ごとに支給され、年間の上限は40万円です。さらに資格を取ったうえで修了後1年以内に雇用保険の被保険者として働き始めた場合は70%(年間上限56万円)まで、そのうえで修了後の賃金が受講前より5%以上上がった場合は80%(年間上限64万円)まで引き上げられます。
もう少し短い訓練を想定した特定一般教育訓練は費用の40%(上限20万円)、条件を満たせば50%(上限25万円)まで。一般教育訓練は費用の20%(上限10万円)が修了後に支給されます。
制度の全体像と対象講座の探し方は、厚生労働省の教育訓練給付金のページにまとまっています。講座の種類ごとに支給率と上限額が違うので、申し込む前にどの区分に当たるかを確かめてください。同じ分野の講座でも、指定を受けているものと受けていないものがあります。
60代が使うときの注意点は2つです。ひとつは、受給には雇用保険の加入期間などの要件があること。在職中に申請しておくほうが条件を満たしやすいので、辞める前に確認してください。もうひとつは、対象の講座が決まっていること。受けたい講座が指定を受けているかどうかは、教育訓練講座検索システムで調べられます。申請の窓口は住んでいる地域を管轄するハローワークです。要件や金額は個人の加入状況で変わるため、受講を申し込む前に窓口で確認するのが確実です。
面接で60代が必ず聞かれる3つのこと
書類が通ったら面接です。60代の面接で聞かれる内容は、若い世代とは違う3点に集中します。あらかじめ答えを決めておくと、受け答えが安定します。
1つめは「年下の上司でも大丈夫ですか」。ここで「もちろんです」とだけ答えると、確認になりません。具体的に答えます。直近で年下の担当者と組んだ場面を挙げ、指示を受ける立場で何をしたかを話すのがいちばん伝わります。
2つめは「体力面はどうですか」。正直に答えるのが正解です。連続して立てる時間、持てる重さ、通勤にかけられる時間を数字で伝えます。ここで見栄を張ると、入社後に条件が合わず短期間で辞めることになります。採用する側も、長く来てくれる人を探しています。
3つめは「希望する収入はいくらですか」。60代はここで答えにくくなりがちですが、前職の額をそのまま言うのは得策ではありません。生活に必要な額と、年金や給付を含めた全体の設計を踏まえて、月いくらなら続けられるかを示します。働きながら厚生年金を受け取る場合、賃金と年金の合計が一定の額を超えると年金の一部が止まる仕組みもあります。基準となる額は年度ごとに見直されるため、自分の場合にどうなるかは日本年金機構の窓口で確認してから面接に臨んでください。
現場を長く見てきた立場からの観察
フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から言えば、60代で仕事が続く人と続かない人の差は、スキルの高さではありません。差が出るのは、依頼する側の手間をどれだけ減らせるかという一点です。
長く続く人は、見積もりの出し方、連絡の返し方、作業の区切り方が決まっています。依頼する側は「この人に任せると自分の作業が減る」と感じるから、次も声をかけます。逆に、技術は高いのに毎回やり取りが増える人は、単発で終わります。60代は職務経験そのものより、この「任せやすさ」を言語化して伝えられるかどうかで結果が分かれます。
もうひとつ、運営者として見てきた限りでは、額面ではなく手取りで考え始めた人のほうが長続きします。仲介が入らない直接の取引は、依頼する側が同じ予算でより多くを頼めて、受ける側は差し引かれる分がない。この構造に気づくと、単価交渉の力点が「値上げ」から「間に何が入っているか」に移ります。60代で使える時間には限りがあるからこそ、同じ働く時間で残る額を増やす発想が効いてきます。
求人データから読み取れる、60代の現実的な着地点
ここまでの内容を、実際の求人情報の傾向と突き合わせて整理します。
在宅ワークや業務委託の仕事情報を職種別に見ると、60代が入りやすいのは「作業の範囲が明確で、成果物の形が決まっている仕事」です。文章の作成、資料の整形、データの入力と点検、見積書や請求書の作成代行。これらは経験の有無が仕上がりに出るうえ、時間の融通が利きます。逆に、常時の対応が求められる運用系の仕事は、条件面で若い世代と競合しやすくなります。
働き方の組み合わせで考えると、現実的な着地点は3つに整理できます。1つめは、今の会社で継続雇用を選び、週の勤務を減らしたぶんで業務委託の仕事を少しずつ増やす形。2つめは、いったん他社に転職して収入を確保し、並行して委託の実績を作る形。3つめは、最初から委託に振り切る形です。3つめは収入が読みにくいため、失業給付の受給期間の特例と組み合わせて、助走期間を制度で確保する設計が要ります。
業種を変えたい場合の注意点も書いておきます。未経験の分野に移るとき、60代は「教われる姿勢」を書類と面接で見られます。過去の役職が高いほど、この点を警戒されやすくなります。対策は簡単で、応募先の業務のうち自分が今すぐできることと、覚える必要があることを分けて書くことです。できないことを隠さず、覚える期間の見込みを自分から示すと、警戒はほぼ消えます。
もうひとつ、家族との合意も実務の一部です。60代の転職は、収入だけでなく生活の時間割が変わります。平日の昼にいなかった人が家にいるようになる、あるいは逆に休日に働くようになる。この変化を先に共有しておかないと、条件が良い仕事に就いたのに家庭の側で続かなくなることがあります。求人を見る段階で、週に何日、どの時間帯なら続けられるかを家族と決めておくと、応募する求人の絞り込みがはるかに速くなります。
最後に、保険と年金の扱いも確認しておいてください。週の労働時間が短い契約にすると社会保険から外れ、国民健康保険と国民年金に切り替わる場合があります。手取りの計算が変わるため、契約形態を決める前に、年金の受け取りとの関係も含めて年金事務所で確認するのが確実です。金額や条件は人によって変わるので、一般論ではなく自分の記録で試算してもらってください。
よくある質問
Q. 60代で転職するとき、まず何から手をつければいいですか?
求人を探す前に、今の勤め先に残った場合の条件を確定させてください。65歳までは会社が働ける仕組みを用意する決まりがあるため、継続雇用の条件が他社の求人と比べる基準になります。そのうえで失業給付の日数と、退職日を何歳で迎えるかを確認すると、判断の材料がそろいます。
Q. 65歳の前と後で、失業したときの給付は変わりますか?
変わります。64歳までに離職した場合は基本手当を日数分受け取る形で、勤続20年以上の一般の離職者なら150日が目安です。65歳以上で離職すると高年齢求職者給付金という一時金に切り替わり、加入期間1年以上で基本手当日額の50日分、1年未満で30日分となります。退職日を選べるなら事前にハローワークで試算してください。
Q. 60代から資格を取るのは意味がありますか?
目的次第です。その資格がないと業務ができない種類のもの(電気工事、危険物、運行管理など)は、人手不足の現場でそのまま採用の判断材料になります。一方、実務経験の裏づけがない一般的な資格は評価されにくく、経験はあるが説明しづらい領域を補う使い方のほうが効果的です。
Q. 雇われる以外の働き方は、60代でも現実的ですか?
現実的です。65歳から70歳までの働き方については、雇用を続ける形だけでなく、業務委託の契約を結ぶ創業支援等措置という枠が制度として用意されています。いきなり外部で仕事を取らなくても、今の勤め先との契約を切り替える相談から始められます。収入が読みにくい間は、失業給付の受給期間の特例を併用する方法もあります。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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