決算公告に損益計算書まで載せるのはどんな会社か


この記事のポイント
- ✓決算公告で損益計算書まで出すのは大会社だけです
- ✓資本金5億円と負債200億円という線引き
- ✓貸借対照表だけの会社にも残る当期純損益金額の扱い
決算公告で損益計算書まで出す必要があるのか。調べ始めると「大会社だけ」という答えにはすぐ行き着きますが、その先が分かりにくいままになりがちです。自社が大会社に当たるかどうか、当たらない場合に利益が本当に隠れるのか、載せるとしたらどの項目を並べるのか。この記事では、その3つを法令と公式の料金表で確かめた範囲だけで整理します。結論を先に書くと、損益計算書を出すのは大会社に限られますが、出さない会社でも最終的な損益の金額だけは外に出ます。
結論。損益計算書まで出すのは大会社だけ
義務の根拠は会社法440条です。条文はこうなっています。
株式会社は、法務省令で定めるところにより、定時株主総会の終結後遅滞なく、貸借対照表(大会社にあっては、貸借対照表及び損益計算書)を公告しなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp
括弧の中が答えです。原則は貸借対照表だけ。損益計算書まで出すのは大会社だけ、と書き分けられています。
貸借対照表とは、決算日の時点で会社が何を持っていて、どれだけ借りているかを並べた表のことです。損益計算書は、その1年でいくら売れて、いくら使って、いくら残ったかを並べた表です。前者は会社の体格、後者はその年の成績にあたります。公告で出すのは体格だけ、というのが原則の姿です。
では大会社とは何か。会社法の定義はこうです。最終の事業年度に係る貸借対照表で、資本金として計上した額が5億円以上であること。または、負債の部に計上した額の合計が200億円以上であること。このどちらかに当てはまる株式会社が大会社です。
両方を満たす必要はありません。片方でも当てはまれば大会社になります。上場しているかどうかは条件に入っていません。非上場でも資本金が5億円あれば大会社です。逆に、上場していても資本金が5億円未満で負債も200億円未満なら、形式的には大会社に当たりません。
中小企業のほとんどはどちらにも当てはまりません。資本金5億円という水準は、日本の株式会社の大半から遠く離れた数字です。したがって、この記事を読んでいる会社の大半は、公告で出すのは貸借対照表だけになります。
資本金5億円という線をまたぐとき
注意したいのは、この判定が毎年やり直されるという点です。
判定に使うのは「最終事業年度に係る貸借対照表」です。つまり直前の決算の数字です。増資をして資本金が5億円に届いた年から大会社になり、公告する内容が1つ増えます。逆に、資本金を減らして5億円を下回れば、大会社ではなくなります。
負債のほうも同じです。大型の借入をした年に負債合計が200億円を超えれば、資本金が小さくても大会社になります。不動産や設備に大きな借入を伴う業種では、資本金が数千万円のまま負債の側で大会社になるケースがあります。
大会社になると変わるのは公告の中身だけではありません。会計監査人を置く義務が生じるなど、周辺の義務もまとめて増えます。増資を検討している段階で、5億円という数字が視野に入っているなら、そこで何が増えるのかを先に確認しておくほうが安全です。この判断は個別の事情で変わるので、実際に動く前に税理士か司法書士に相談してください。
なお、上場会社など有価証券報告書を国に提出している株式会社は、大会社であっても決算公告の義務から外れます。すでにもっと詳しい開示をしているためです。
大会社になると増えるのは、公告の中身だけではない
損益計算書の公告は、大会社に課される義務の1つでしかありません。同じ線をまたぐと、他の義務も同時に発生します。増資を検討している会社は、ここまで含めて見ておく必要があります。
まず、会計監査人です。株式に譲渡制限がついていない公開会社の大会社は、監査役会と会計監査人の両方を置かなければなりません。譲渡制限がついている非公開の大会社でも、会計監査人は置く必要があります。会計監査人とは、公認会計士か監査法人のことです。つまり、大会社になった時点で外部の監査を受ける体制が必須になります。
監査を受けるということは、報酬が発生するということでもあります。金額は会社の規模や業種で大きく変わるので、事前に複数の監査法人へ見積もりを取ることになります。公告の枠代より、こちらのほうが影響は大きいはずです。
次に、取締役会を置いている大会社には、業務の適正を確保するための体制、いわゆる内部統制システムの整備について、取締役会が決定しなければならないという定めがあります。決めるだけでなく、決めた内容は事業報告に記載することになります。
そして、公告の中身にも波及します。会計監査人を置くと、監査報告に不適正意見がある場合などにその旨を公告で明らかにする決まりが効いてきます。中小企業には縁のない話でしたが、大会社になった瞬間に自社の話になります。
資本金5億円という数字は、税制の面でも節目になります。損益計算書を公告するかどうかだけを見て増資の判断をすると、周辺の負担を取りこぼします。増資の前に、何が増えるのかを税理士と司法書士の双方に確認してください。
貸借対照表の要旨のほうはどうなっているか
損益計算書と並べて見ると、量の違いがはっきりします。
貸借対照表の要旨は、資産・負債・純資産の3つの部に区分します。資産の部は流動資産・固定資産・繰延資産に、負債の部は流動負債・固定負債に分けます。引当金があるなら、他の負債と区分して書きます。
純資産の部はもう少し細かく、株主資本、評価・換算差額等、株式引受権、新株予約権に区分します。株主資本はさらに資本金、新株式申込証拠金、資本剰余金、利益剰余金、自己株式などに分かれ、自己株式は控除する項目として扱います。資本剰余金は資本準備金とその他資本剰余金に、利益剰余金は利益準備金とその他利益剰余金に分けます。
株式に譲渡制限がついていない公開会社の場合は、固定資産を有形固定資産・無形固定資産・投資その他の資産に区分したうえで、財産の状態を明らかにするために重要な項目へ細分する必要があります。譲渡制限がついている非公開会社なら、大きな括りのままで足ります。大会社であっても、非公開であればこの負担は軽くなります。
項目に付ける名称にも決まりがあり、それぞれの資産や負債を示す適切な名称を使います。数字だけ並べて名前を省く形にはできません。
貸借対照表だけの会社でも、利益は隠れない
ここが、多くの解説で抜け落ちている点です。
損益計算書を出さないなら、その年の利益は外に出ない。そう思って準備を進めると、想定と違うものを載せることになります。会社計算規則には、貸借対照表の要旨には当期純損益金額を付記しなければならない、と書かれています。損益計算書の要旨を公告する場合はその限りでない、という但し書きがついています。
言い換えると、こうです。大会社は損益計算書を出すので、当期純損益金額はその中に含まれる。大会社でない会社は損益計算書を出さないので、代わりに貸借対照表の要旨に1行だけ付け足す。どちらの道を通っても、その年に最終的にいくら残ったか、いくら足が出たかは外に出ます。
この扱いは、インターネットに載せる場合も同じです。官報の代わりに自社サイトへ貸借対照表を置く場合でも、公告の中で明らかにする事項として当期純損益金額が並んでいます。
では何が隠れるのか。売上高です。原価も、販売費も、人件費も、広告費も出ません。営業利益や経常利益といった途中の段階の数字も出ません。出るのは、体格を示す表と、最終的な1行だけです。
この差は実務で効きます。年商を知られたくないという理由で公告をためらっている会社は少なくありませんが、大会社でない限り年商は出ません。一方で、赤字であることは隠せません。判断材料として、この2点を分けて考えると話が早くなります。
編集部が取材した小規模ブランドの経理担当は、公告を始めるかどうかを社内で議論したとき、「売上が出るなら絶対に無理」という前提で話が止まっていたそうです。実際に出る項目を1つずつ確かめたところ、出るのは決算日時点の資産と負債、それに最終損益の1行だけだと分かり、その場で方針が変わりました。誤解のまま何年も止まっていた、という典型例です。
損益計算書の要旨に並べる8つの項目
大会社に当たる場合、損益計算書をどう組むかを確認します。公告方法が官報または日刊新聞紙であれば、全部を載せるのではなく「要旨」で足ります。
会社計算規則は、損益計算書の要旨を次の項目に区分すると定めています。売上高、売上原価、売上総利益金額または売上総損失金額、販売費及び一般管理費、営業外収益、営業外費用、特別利益、特別損失。この8つです。
そのうえで、まとめてよい場合の定めがあります。営業外収益と営業外費用の額が重要でないときは、2つに分けずに差額を営業外損益として1つにまとめられます。特別利益と特別損失も同じで、重要でないときは差額を特別損益として1つにできます。数字が小さい項目を無理に分ける必要はない、という趣旨です。
逆に、細かく分けなければならない場合もあります。会社の損益の状態を明らかにするために必要があるときは、重要な項目へ細分します。どの項目に名前を付けるかも決まりがあり、それぞれの項目に、その利益または損失を示す適切な名称を付けます。
売上総利益の表し方にも約束事があります。売上高から売上原価を引いた額がゼロ以上なら「売上総利益金額」、ゼロ未満なら「売上総損失」として表示します。マイナス記号を付けて利益と書くのではなく、名称のほうを変える形です。
自社サイトに載せる場合は要旨ではなく損益計算書の内容そのものを載せることになるので、この区分の話はそのまま当てはまりません。決算書に使っている形をそのまま出す形になります。
表示の単位と言語にも決まりがある
意外と知られていないのが、金額の表示単位です。
貸借対照表の要旨も損益計算書の要旨も、金額は百万円単位または十億円単位で表示することになっています。1円単位で並べる必要はありませんし、千円単位という選択肢も原則としては置かれていません。
ただし逃げ道があります。その単位で丸めると会社の財産や損益の状態を的確に判断できなくなるおそれがある場合は、適切な単位で表示しなければならない、と定められています。規模の小さい会社が百万円単位で丸めると中身がつぶれてしまうなら、細かい単位を選ぶことになります。
表示に使う言語は日本語が原則です。日本語以外で表示することが不当でない場合はその限りでない、という但し書きはありますが、国内で官報に載せる限り日本語で組むことになります。
さらに、会計監査人を置いている会社には追加の決まりがあります。会計監査人がいない状態になっている場合、監査を受けたものとみなされた場合、会計監査報告に不適正意見がある場合などは、その旨を公告で明らかにすることとされています。大会社は会計監査人を置くことになるので、この扱いは他人事ではありません。
官報に載せるといくらかかるか
損益計算書まで載せる場合、分量が増えるので費用も増えます。金額を確かめておきます。
全国官報販売協同組合が公開している料金表によると、会社等の枠付公告は普通で1枠あたり税込40,882円、ページを指定するなら税込54,979円です。1枠の大きさは2.9センチメートル×6.1センチメートルで、活字は8ポイント。行単位で載せる形なら、会社等は1行あたり税込3,947円で、1行は22文字詰めです。
貸借対照表の要旨だけなら2枠に収まることが多く、その場合は税込81,765円。損益計算書の要旨まで加えると枠が増え、3枠で税込122,647円、4枠で税込163,530円という料金表になっています。何枠必要になるかは原稿の分量で決まるので、取次店に原稿を渡して見積もりを取ることになります。
料金は全国一律で、校正のための追加費用はかかりません。ただしクレジットカードは使えないので、支払い方法は取次店に確認が要ります。
時間もかかります。決算公告は本紙ではなく号外に載るため、申し込みから掲載までに間が空きます。2026年9月18日に申し込んだ場合の号外掲載の目安は10月15日で、およそ4週間先です。流れは、申し込みと入稿、取次店からの連絡と原稿作成、校正、校了、印刷と掲載という順番で、校了を伝えた後は原則として修正も取消しもできません。数字の確認は校正の段階で終わらせる必要があります。
日刊新聞紙という選択肢もありますが、掲載料は官報よりかなり高く、実際に使うのは上場企業に限られます。
購読者が官報より多いため広く通知することが可能ですが、掲載料は官報より高額であるため、実際には上場企業以外に利用されることはほとんどありません。決算公告の内容は、官報と同様に、貸借対照表(大会社においては貸借対照表と損益計算書)の「要旨」を掲載すれば足ります(会社法440条2項)。 出典: biz.moneyforward.com
自社サイトに載せれば費用は消える
分量が増えるほど、官報以外の道の魅力が上がります。
会社法には、貸借対照表の内容を、定時株主総会が終わった日から5年を経過する日まで、インターネットで誰でも見られる状態に置き続ければ、官報にも新聞にも載せなくてよいという定めがあります。大会社の場合は、損益計算書の内容についても同じ扱いが認められています。
誤解されやすいのですが、公告方法を「電子公告」に変える必要はありません。登記簿の公告方法が「官報に掲載する方法」のままでも、この道は使えます。公告方法そのものを電子公告に変えると、決算公告以外の公告で調査機関の調査を受ける義務が生じますが、決算公告はその対象から明確に外されています。
自社サイトに載せる場合の条件は3つです。載せる中身が要旨ではなく貸借対照表と損益計算書の内容そのものになること。5年間消さずに置き続けること。そのページのアドレスを登記することです。
登記の登録免許税は、国税庁の税額表にある「登記事項の変更、消滅または廃止の登記」にあたり、申請1件につき3万円です。初回だけの出費で、以後は発生しません。
費用を並べると差は明確です。損益計算書まで含めて官報に4枠で載せると1年あたり税込163,530円、5年で81万円を超えます。自社サイトなら初回の3万円だけです。
読まれ方も違います。官報を読む場所は官報発行サイトで、直近90日間は無料で閲覧できます。3か月を過ぎると誰でも無料で見られる状態ではなくなるということです。自社サイトに置けば5年間ずっと同じアドレスで見てもらえます。取引先や金融機関に「決算はここで見られます」と伝えたいなら、自社サイトのほうが実用的です。
ただし、自社サイトに載せるほうが公開の度合いは上がります。官報の号外は探さなければ読まれませんが、自社サイトは検索から誰でもたどり着きます。損益計算書まで出す大会社の場合、公開の広さが変わる点は織り込んで判断してください。
連結ではなく、会社単体の数字を出す
子会社を持っている会社から必ず出る質問が、連結の数字を出すのか単体の数字を出すのかです。
公告の対象になるのは、会社単体の計算書類です。会社法が公告を義務づけているのは、その会社の貸借対照表であり、大会社の場合はそれに損益計算書が加わる形になっています。連結の計算書類を公告しなければならない、という定めは置かれていません。
会計監査人を置いている会社は、連結の計算書類を作ることがありますし、大会社で有価証券報告書を出している会社は連結中心の開示をしています。ただ、それは別の制度の話です。公告として出すのは、あくまで単体です。
これは実務上、都合がよい面があります。グループ全体の規模を出さずに済むからです。持株会社の形をとっていて、事業は子会社が持っているという構成なら、親会社単体の貸借対照表はかなり簡素なものになります。
逆に注意が要るのは、大会社に当たるかどうかの判定も単体で行う点です。子会社を含めたグループ全体の資本金や負債ではなく、その会社自身の貸借対照表で判定します。グループ全体では大きくても、親会社単体では大会社に当たらないという状態はありえます。
取次店に渡す原稿をどう作るか
官報を使う場合、原稿の形も決めておく必要があります。
流れはこうです。まず申込書と原稿を取次店に送ります。インターネット、ファクス、郵送、来店のいずれでも受け付けています。取次店から掲載日や内容について連絡があり、それをもとに取次店が組み上がりの見本を作ります。その見本を確認して、誤字脱字がないかを見ます。修正があれば指示を出し、なければ校了を伝えます。校了の後に国立印刷局へ入稿され、印刷と掲載になります。
原稿を作るときの実務的な注意は3つです。
1つ目は、決算の承認が済んでから作ることです。株主総会で数字が変わる可能性がある段階で原稿を回すと、二度手間になります。
2つ目は、数字の単位を最初にそろえておくことです。百万円単位か十億円単位かを決めて、端数の処理を統一します。決算書から転記する段階で単位が混ざると、見本の確認で気づきにくくなります。
3つ目は、確認する人を決めておくことです。校了を伝えた後は原則として修正も取消しもできません。掲載された官報に誤りがあった場合、訂正の公告を改めて出すことになり、費用が二重にかかります。数字を作った人とは別の人が確認する体制にしておくと安全です。
なお、公告に法人番号を記載することもできます。同じ商号の会社が複数ある場合に、どの会社の公告なのかを特定しやすくなります。
出す前に確かめる4つのこと
準備に入る前に、確認する順番を決めておきます。
はじめに、自社が大会社に当たるかを確かめます。直前の決算の貸借対照表で、資本金が5億円以上か、負債の合計が200億円以上か。どちらにも当たらなければ、出すのは貸借対照表だけです。
次に、登記簿を取って公告方法の欄を見ます。「官報に掲載する方法」なのか、電子公告なのか。定款で何も決めていない会社は自動的に官報になります。ここで自社が何を宣言しているかが分かります。
それから、株式に譲渡制限がついているかを確認します。譲渡に会社の承認が要る非公開会社であれば、貸借対照表の要旨は大きな括りのままで足ります。譲渡制限がない公開会社の場合は、固定資産を有形・無形・投資その他に分けるなど、細かく区分する必要があります。
最後に、どの方法で出すかを決めます。官報を使うなら総会後すぐに取次店へ動きます。自社サイトを使うなら、ページのアドレスを決めて登記の準備に入ります。登記すべき事項に変更があったときは2週間以内という決まりがあるので、ページの公開と登記申請はセットで動かします。
過去に出していなかった分をどこまで遡るかは、取引先や金融機関との関係、近く登記を出す予定があるかで変わるため一律には決められません。直近の1期分から始めて以後続ける形が取られることが多いですが、個別の事情で適切な対応が変わるので、判断に迷うなら司法書士か税理士に確認してください。
出さなかった場合に何が起きるか
決算公告を出していない会社は珍しくありません。それでも義務は義務なので、罰の定めが置かれています。
二 この法律の規定による公告若しくは通知をすることを怠ったとき、又は不正の公告若しくは通知をしたとき。 出典: laws.e-gov.go.jp
これに当たる場合、100万円以下の過料に処するとされています。注意したいのは、過料が科される相手が会社ではなく取締役などの個人だという点です。同じ条文は登記を怠った場合も並べて挙げているので、役員変更の登記を放置している会社は、公告と合わせて2つの理由を抱えることになります。
金額がいくらになるかは裁判所が判断するもので、事前に確定的に知ることはできません。上限が100万円と書いてあるだけで、下限も基準も条文にはありません。
そのうえで、実務で効いてくるのは過料そのものより別の場面です。金融機関に融資を申し込むと、決算書の提出を求められます。そのとき、公告を出していない状態が続いていると、会社の管理の水準を測る材料になります。取引先の与信審査でも同じです。公告は誰でも読める場所に自社の数字を置く行為なので、出していないこと自体が「調べても出てこない会社」という評価につながります。
もう1つ、過去の分をどうするかという問題があります。出していなかった年の分を遡って載せる義務が消えるわけではありません。ただし、何年分を遡るかは会社の事情で変わるので、直近の1期分から始めて以後続ける形が取られることが多くなっています。どこから始めるかを決める前に、司法書士か税理士に自社の状況を伝えて確認してください。
官報の掲載料を帳簿にどう書くか
公告の費用は、年に1度しか出てこない支出です。科目の置き場所を毎年迷うのは無駄なので、最初に決めておきます。
官報の掲載料は、広告宣伝費として処理するのが素直な形です。公告は法律上の義務であって宣伝ではないという理由で、支払手数料や雑費に置いている会社もあります。どの科目でも損金になる点は変わりませんが、毎年同じ科目に入れることのほうが大事です。科目が年ごとに揺れると、前年と比べたときに費用が消えたように見えます。
損益計算書まで載せて4枠になった場合、税込163,530円です。このうち消費税の部分は、料金表が税込で示されているとおり課税の対象なので、課税仕入れとして処理します。仕訳としては、借方に広告宣伝費と仮払消費税、貸方に普通預金という形です。
自社サイトに載せる道を選んだ場合は、掲載料そのものが発生しません。代わりに、ページのアドレスを登記する際の登録免許税3万円が初回だけ出ます。こちらは租税公課です。司法書士に登記を頼むなら、その報酬からは所得税を天引きして翌月10日までに納めます。司法書士の報酬は、1回に支払う金額から1万円を引いた残りに10.21パーセントをかけた額が天引きの対象になります。
支払いの時期も押さえておきます。官報を使う場合、掲載までに4週間前後かかるため、申し込みの月と掲載の月がずれることがあります。決算期をまたぐ場合は、どちらの期の費用にするかを経理と先に決めておいてください。
合同会社と特例有限会社には、この義務がない
決算公告の義務は、すべての法人にあるわけではありません。ここを知らずに調べ続けている会社があります。
まず合同会社です。公告を義務づけている会社法440条は、株式会社について定めた章に置かれています。合同会社は持分会社という別の枠に入るので、決算公告の義務はありません。決算書を作る義務はありますが、外に出す義務はないということです。設立費用が安いことと並んで、合同会社が選ばれる理由の1つになっています。
次に特例有限会社です。昔の有限会社から移行した会社で、商号に「有限会社」が入っています。形式上は株式会社の一種ですが、公告については適用が外されています。
第二十八条 特例有限会社については、会社法第四百四十条及び第四百四十二条第二項の規定は、適用しない。 出典: laws.e-gov.go.jp
440条が外れているので決算公告は不要です。442条2項も外れているので、計算書類を支店に備え置く義務もありません。何年も公告を出していない有限会社を見て「うちも出すべきか」と考える必要はありません。
ただし、特例有限会社から株式会社へ移行すると、この適用除外が消えます。商号を変えて株式会社になった年から、決算公告の義務が発生します。移行を検討している会社は、公告の方法と費用をその時点で決めておいてください。移行の登記と同時に、自社サイトのアドレスを登記してしまうほうが手戻りがありません。
なお、合同会社にも公告が必要になる場面はあります。解散して清算に入るときや、合併や資本金を減らすときの債権者への公告です。決算公告が不要であることと、公告が一切不要であることは別の話なので、混同しないでください。
年に一度の作業を回す体制をどう作るか
ここからは、市場を長く見てきた立場からの観察です。
決算公告が止まっている会社の理由は、判断ではなく人手であることがほとんどです。決算を締めて申告して、株主総会の議事録を作って。そこで力尽きる。公告は優先順位の一番下にあるので、毎年そこで落ちます。損益計算書まで出す規模の会社でも、経理を少人数で回していれば事情は変わりません。
年に1度、数時間から半日の仕事です。正社員を増やす規模ではありません。外部に業務委託で頼むのが現実的な解になります。
決算の数字を公告の形に組み直す仕事の相場感を知りたいなら、著述家,記者,編集者の年収・単価相場が参考になります。職種別の年収と単価を並べたページで、原稿を整える仕事にどの程度の予算を見ておけばよいかの目安になります。
任せる相手の書類作成力を確かめたい場合は、ビジネス文書検定のページが使えます。この資格が何を測るもので、どういう仕事に結びつくのかが整理されています。必須ではありませんが、選ぶときの材料になります。
数字の読み方まで含めて相談したいなら、会計の専門家が外部から関わる形も増えています。会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】は、監査法人に勤めながら外の仕事を受ける際の進め方をまとめた記事です。依頼する側から読むと、どういう人がどんな条件で動けるのかが見えてきます。
社内の定型作業そのものを減らす方向なら、AIコンサル・業務活用支援のお仕事が近い領域です。集計や書類作成を仕組みに寄せる支援を、外部の専門家に短期で頼む形が広がっています。
外に出すときは、契約の形も先に決めておきます。フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストは、発注書に何を書いておくべきかを項目ごとに並べた記事です。発注する側が最初に整えておけば、後の行き違いが減ります。
そして、運営者として見てきた限りで言えることがあります。仲介の手数料が乗らない直接の取引では、同じ予算で依頼する側はより多くを頼め、受ける側は手取りが厚くなります。手数料0%の強みは、金額そのものよりこの構造にあります。年に1度しか発生しない仕事ほど、毎年相手を探し直すコストが効いてきます。長く続いている会社を見ていると、1回ごとの値段を削るのではなく、来年も同じ人に頼める状態を作ることに時間を使っています。
損益計算書まで出すかどうかは、自社の規模が決めることであって、選べる話ではありません。選べるのは、どこに載せるかと、誰が作業を回すかです。その2つを決めておけば、毎年の決算期に公告のことで手が止まることはなくなります。
よくある質問
Q. 決算公告で損益計算書まで出す必要があるのはどんな会社ですか?
大会社だけです。大会社とは、直前の決算の貸借対照表で資本金が5億円以上か、負債の合計が200億円以上のどちらかに当てはまる株式会社を指します。上場しているかどうかは条件に入っていません。どちらにも当てはまらない会社が出すのは貸借対照表だけです。
Q. 損益計算書を出さなければ、その年の利益は外に出ませんか?
最終的な損益だけは出ます。貸借対照表の要旨には当期純損益金額を付記する決まりがあるためです。ただし売上高や原価、人件費、役員報酬といった項目は出ません。年商を知られたくないという理由なら、大会社でない限り心配は要りません。
Q. 損益計算書の要旨には何を並べますか?
売上高、売上原価、売上総利益金額または売上総損失金額、販売費及び一般管理費、営業外収益、営業外費用、特別利益、特別損失の8つに区分します。営業外の2つ、特別の2つは、額が重要でなければ差額をまとめて1項目にできます。金額は百万円単位または十億円単位で表示します。
Q. 損益計算書まで載せると官報の費用はいくらになりますか?
枠の数で決まります。会社等の枠付公告は普通で1枠あたり税込40,882円で、貸借対照表の要旨だけなら2枠の81,765円に収まることが多く、損益計算書まで加えると3枠で122,647円、4枠で163,530円になります。必要な枠数は原稿の分量で変わるので、取次店に原稿を渡して見積もりを取ってください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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