キャリア・副業相談のポートフォリオの作り方|見る人が知りたいこと

長谷川 奈津
長谷川 奈津
キャリア・副業相談のポートフォリオの作り方|見る人が知りたいこと

この記事のポイント

  • ✓キャリア・副業相談のポートフォリオは
  • ✓経歴を並べる場ではありません
  • ✓依頼する側が確かめたい4つの点を軸に

キャリアや副業の相談を仕事にしようとしたときに、多くの人が最初に詰まるのがポートフォリオです。デザインや執筆であれば作ったものを並べれば済みますが、相談は会話であり、外に出せる成果物がありません。しかも、相談の内容は守秘の対象です。並べられるものが何もない、という状態から始まります。

結論を先に書きます。相談業のポートフォリオは、過去の実績を見せる場ではなく、依頼する側が判断に必要としている情報を揃える場です。相手が確かめたいのは、自分に近い経験があるか、何をしてくれるのか、どう進むのか、安心して話せるかの四点です。この四点が揃っていれば、実績の掲載がなくても依頼は来ます。この記事では、載せる要素の作り方、事例を扱うときの許諾と匿名化、置き場所の決め方、資格や表現に関する注意までを、順に整理します。

相談業のポートフォリオが難しい理由

まず、なぜ作りにくいのかを分解しておきます。原因が分かれば、対処の方向が決まります。

成果物が外に出せない

相談の成果は、相談者本人の意思決定です。転職が決まった、副業が動き出した、社内で異動の希望を出した。いずれも相談者の行動であって、こちらが作ったものではありません。

さらに、その過程で扱った情報は守秘の対象になります。勤務先の内部事情、収入、家庭の状況、健康状態。相談で語られる内容の大半は、外に出せない情報です。したがって、制作物を並べる形式のポートフォリオは、そもそも成立しません。

この前提を踏まえずに「実績が書けないから作れない」と止まってしまう人が多い。実際には、書けるものは別のところにあります。

検索して出てくる「ポートフォリオキャリア」との混同

もう一つ、混乱のもとになるのが言葉の重なりです。ポートフォリオという語は、複数の仕事を組み合わせる働き方を指す文脈でも使われます。

近年の働き方改革により、キャリアデザインにも多様性がみられるようになりました。ポートフォリオキャリアの“ポートフォリオ”とは、金融業界用語の「金融商品の組み合わせ」からきており、「複数の仕事を掛け持つ働き方」「複数の肩書きを持つキャリア形成」を実現したワークスタイルを意味します。 出典: saponet.mynavi.jp

こちらは働き方の話であり、仕事を得るための資料の話ではありません。調べていると両方が混ざって出てくるため、何を作ればよいのか分からなくなります。この記事で扱うのは後者、つまり依頼を受けるための資料のほうです。

ただし、二つは無関係でもありません。相談を受ける側自身が複数の仕事を組み合わせているのであれば、その構成そのものが、相談者にとっての説得力になります。本業を持ちながら相談を受けている人は、同じ立場の相談者から見て話しやすい相手です。

依頼する側が確かめたい四つのこと

ポートフォリオの中身は、見る人の判断基準から逆算して決めます。相談を頼もうとしている人が、資料を見ながら考えていることは、実務上ほぼ四つに集約されます。

自分に近い経験があるか

最初に見られるのは、自分と重なる部分があるかどうかです。業種、職種、働き方の形、年代、家庭の状況。このいずれかが重なる相手を、人は選びます。

理由は単純で、前提の説明を省けるからです。同じ業界にいた人であれば、業界特有の慣習を説明しなくても通じます。子育てをしながら働いている人であれば、時間の制約を一から説明する必要がありません。

したがって、経歴は「すごさ」ではなく「重なり」で書きます。役職や規模を強調するより、どういう環境で、どういう立場で働いてきたかを具体的に書くほうが効きます。

何をしてくれるのか

次に見られるのは、提供される内容です。ここが曖昧なポートフォリオは非常に多い。「キャリアに寄り添います」「一緒に考えます」といった表現だけでは、何が起きるのか分かりません。

書くべきは、扱うテーマの範囲と、扱わないテーマです。扱わないことを書くのは勇気が要りますが、書いてあるほうが信用されます。全部できると書いてある資料は、逆に何が得意なのか分からなくなります。

どう進むのか

三つ目は、手順です。申し込みから相談当日まで何が起きるのか、当日は何をするのか、終わったあとに何が残るのか。

相談という商品は、体験するまで中身が分かりません。分からないものに支払うのは、心理的な負担が大きい。手順が書いてあるだけで、この負担が下がります。特に、記録が残ることを明記しておくと、支払いに対する納得感が変わります。

安心して話せるか

四つ目は、扱いの安全性です。相談者は、自分の内情を話すことになります。話した内容がどこかに漏れないか、勤務先に伝わらないか、発信の材料にされないか。

この不安は、多くの資料で放置されています。守秘の方針、記録の保管期間、事例として扱う場合の許諾の取り方。これらを一段落でも書いておくと、それだけで他と差がつきます。これ、知らない人が本当に多いのですが、書いてある人はほとんどいません。

四つをどの順番で並べるか

四つが揃っていても、並べる順番を間違えると読まれません。読む人は上から順に見て、途中で自分向きではないと判断すると離脱します。

推奨する順番は、対象、内容、手順、扱いの安全性、経歴の順です。最初に「こういう方の相談を受けています」と対象を書きます。ここで自分が該当すると分かった人だけが先を読むため、以降の情報が届きます。

経歴を最初に置く資料は多いのですが、読む側からすると、まだ自分に関係があるか分からない段階で他人の経歴を読まされることになります。経歴は、内容と手順を読んで興味を持った人が「この人で大丈夫か」を確認するために読む項目です。位置としては後ろが適切です。

おすすめしない書き方

いくつか、避けたほうがよい書き方があります。一つは、抽象的な理念だけを長く書くことです。「一人ひとりに向き合う」「可能性を信じる」といった表現は、読んだ人の判断材料になりません。

二つ目は、相談者を不安にさせて申し込ませる書き方です。「このままでは手遅れになります」といった煽りは、その場では反応が出ることがありますが、来る相談者の質が変わります。追い詰められた状態で申し込んだ相談者は、期待も過大になり、満足しにくくなります。

三つ目は、資格や肩書きを羅列することです。数が多いほど、何が専門なのか分からなくなります。相談の内容に直接関係する資格だけを書き、それ以外は経歴の中に収めます。

載せる要素と、その書き方

四つの判断基準に対応する形で、載せる要素を決めます。

扱う領域を先に絞る

作りはじめる前に、扱う領域を決めます。全方位に対応できると書くと、誰にも刺さりません。絞ると相談の総数は減りますが、依頼に至る率が上がります。

絞り方は三つの軸で考えます。誰の相談か(業種、職種、年代、働き方)、どんな段階の相談か(転職を考えはじめた段階、活動中、独立の準備中、副業の立ち上げ中)、何を決める相談か(進む方向、選択肢の比較、具体的な手続き)。この三つを掛け合わせて、自分が最も答えられる位置を特定します。

領域を決めるときは、自分が経験した環境から離れすぎないようにします。経験の外側を扱うと、相談の場で具体性が出ません。相談の業務がどう分類されているかは、キャリア・副業・人生相談のお仕事で扱われている区分を見ると整理しやすくなります。

経歴は物語ではなく対応範囲に変換する

経歴をそのまま時系列で並べても、相手には使えません。並べたあとに、それぞれの経験がどの相談に対応できるのかを書き添えます。

たとえば、複数の職場で採用に関わった経験があれば、書類が通らない理由や、面接で見られている点について答えられます。転職を複数回している経験があれば、転職の判断そのものについて具体的に話せます。育児と両立しながら働いた経験があれば、時間の制約がある中での選択について現実的な話ができます。

経験を対応範囲に変換する作業をすると、自分が何を扱えるのかがはっきりします。この作業は、ポートフォリオのためだけでなく、相談を受けるときの判断基準としても役立ちます。

提供する形を具体的に書く

相談の形式、時間、回数、実施の方法。この四つを明記します。オンラインか対面か、使用するツール、時間帯の目安も含めます。

含まれるものと含まれないものも書きます。書類の添削は含まれるのか、面談外の連絡は受け付けるのか、記録は作成されるのか。ここが曖昧だと、開始後に認識のずれが起きます。ずれは、相談の満足度を大きく下げます。

進め方を時系列で書く

申し込みから終了までの流れを、番号を振って並べます。事前に記入してもらう項目があるなら、それも書きます。事前の準備が必要だと分かっていれば、相談者は当日までに考えを整理してきます。整理された状態で始まる相談は、同じ時間でも中身が深くなります。

終わったあとに何が残るのかも書きます。記録の形式、送付の方法、その後の連絡の可否。終わり方が見えていると、相談者は安心して申し込めます。

料金の書き方

料金を書かない選択もありますが、書いてあるほうが問い合わせは増えます。書かない場合、相談者は問い合わせるという手間を負ってから金額を知ることになり、その手間を避けて別を選びます。

書く場合は、金額と一緒に含まれる範囲を書きます。金額だけを書くと、比較の対象が金額だけになります。範囲が書いてあれば、内容で比較されます。

顔写真と名前の扱い

顔写真を出すかどうかは、副業として受ける場合には慎重に判断します。本業の同僚や取引先が見る可能性があるためです。出さない場合でも、話し方や雰囲気が伝わる要素は用意します。声だけの自己紹介や、文章の分量を増やすといった方法があります。

名前についても同様です。本名で出すか、別の名義で出すかは、本業との関係で決めます。ただし、契約や請求の場面では本名が必要になります。名義を分ける場合は、どの段階で本名を伝えるかを事前に決めておきます。

実績が書けない段階の書き方

始めたばかりの段階では、載せられる事例がありません。この段階でどう書くかが、最初の依頼が来るかどうかを分けます。

事例は許諾を取ってから載せる

まず前提として、相談の事例を載せるには本人の許諾が必要です。許諾は、口頭ではなく文面で取ります。何を、どこに、どういう形で載せるかを示して、同意を得ます。

許諾を取るタイミングは、相談が終わったあとです。相談の前に許諾を求めると、相談者は話す内容を選ぶようになり、相談の質が落ちます。※許諾を得ていない事例を載せた場合、守秘義務違反やプライバシーの侵害として問題になる可能性があります。判断に迷う場合は、載せないほうが安全です。

匿名化しても特定される場合がある

業種と年代と役職を書いただけで、狭い業界では個人が特定されます。「30代・IT企業・チームリーダー」程度でも、相談者の周囲には分かってしまうことがあります。

匿名化するときは、特定につながる要素を落とすだけでなく、複数の事例を混ぜて再構成する方法もあります。ただし、その場合は「複数の相談をもとに再構成した例」であることを明記します。実在の一件のように見せると、事実と異なる表示になります。

事例がない段階は「想定される相談」で書く

事例が無い段階では、実際に扱える相談の例を、想定として書きます。「こういう状況の方から、こういう相談を受けます」という形です。想定であることを明記すれば、誤解は生じません。

この書き方には利点もあります。実際の事例は一件ごとに個別の事情が入るため、読んだ相談者が自分に当てはまるか判断しにくい。想定の形で書けば、対象が明確になり、当てはまる人が自分ごととして読めます。

相談以外の実績で補う

相談の実績が無くても、隣接する経験は書けます。社内で後輩の育成に関わった経験、採用に関与した経験、業務の相談を受けていた立場。こうした経験は、相談の技能と直接つながります。

書くときは、役割と、そこで何をしていたかを具体的に書きます。肩書きだけを並べると、実際に何ができるのかが伝わりません。

置き場所をどう決めるか

作った内容をどこに置くかで、届き方が変わります。

自分のサイトに置く

自分で管理するページを持つ利点は、内容と体裁を自由に決められること、そして仲介サービスの規約に左右されないことです。相談の形式や料金の書き方も自分で決められます。

一方で、置いただけでは見られません。検索から届くには時間がかかり、その間に更新が止まるとそのまま放置されます。自分のサイトは、他の経路で知った相手が確認しに来る場所として位置づけるのが現実的です。

仲介サービスのプロフィールに置く

仕事を仲介するサービスのプロフィールは、探している人が集まる場所にあります。始めたばかりの段階では、こちらのほうが早く届きます。

書ける項目が決まっているため、自由度は低くなります。限られた文字数の中で、四つの判断基準に答える構成にします。特に冒頭の数行が読まれるため、扱う領域と対象を最初に書きます。転職や職場の悩みを扱う相談の分類は、職場・転職・キャリア相談のお仕事で整理されている区分が参考になります。

発信媒体を組み合わせる

文章を継続して出せる媒体を持っていると、判断材料が増えます。相談者は、書かれた文章から考え方や語り口を読み取ります。相談は相性の要素が大きいため、文章に触れてから申し込む相手は、開始後のずれが少なくなります。

発信の内容は、実績の報告ではなく、考え方や判断の基準にします。具体的な相談の内容を発信の題材にする場合は、事例と同じく許諾と匿名化の扱いが必要です。

複数に置くときは内容を揃える

複数の場所に置く場合、書いてある内容が食い違わないようにします。料金、対応の範囲、連絡の手段。ここがずれていると、相談者は不信感を持ちます。

更新のときも、全部を同時に直します。一か所だけ古い情報が残っていると、そこを見た相手に誤った条件が伝わり、後で問題になります。

表示と表現に関する注意

ポートフォリオは対外的な表示物です。書き方によっては、法的な問題になります。

資格の表示は正確に

保有している資格は、正式な名称で書きます。国家資格と民間の資格を、区別が付かない書き方で並べるのは避けます。受験しただけ、講座を受講しただけの状態を、取得したかのように書くのは表示として不適切です。

資格の効力を誇張する表現も避けます。資格があることと、相談の質は別の話です。相談を受ける仕事における資格の位置づけについては、キャリアコンサルタントの要件や範囲を確認しておくと、書ける内容の線が引けます。

成果を保証する表現を書かない

「必ず転職できます」「収入が上がります」といった表現は書きません。相談は相談者の意思決定を支援する仕事であり、結果を保証する仕事ではありません。保証と受け取られる表現を書くと、結果が出なかったときに責任を問われる余地が生まれます。

同様に、実際より優良であると誤認させる表示も避けます。実績の件数や満足度を書く場合は、根拠となる記録を残しておきます。書ける数字が無いのであれば、書かないという判断が正しい。

個人情報の扱いを明記する

相談の申し込みで、氏名、連絡先、経歴、勤務先などを受け取ることになります。何を取得し、何に使い、どのくらいの期間保管するのかを明記します。

問い合わせのフォームを設置している場合は、送信の前に確認できる位置に置きます。※取得する情報の内容や事業の形態によっては、関係する法令上の対応が必要になる場合があります。判断に迷う場合は、専門家への確認を検討してください。法律はあなたの味方です。書いておけば守られる場面が、実際に多くあります。

契約とキャンセルの条件を書く

日程の変更、キャンセル、返金の扱いを書いておきます。書いていないと、その都度の判断になり、相手によって対応が変わります。対応が変わると、後で不公平感の原因になります。

転職の相談を扱う場合に変わる点

扱うテーマによって、書くべき内容は変わります。中でも転職の相談は、相談者の緊張度が高く、確認される項目も増えます。

立場を明記する

転職の相談を受ける立場には、いくつか種類があります。求人を紹介して成約に応じた報酬を受け取る立場と、相談料だけを受け取り求人の紹介はしない立場では、相談者から見た利害の構造がまったく違います。

前者は、相談者を転職させる方向に動機が働きます。後者は、転職しないという結論も同じ価値で扱えます。どちらが優れているという話ではありませんが、相談者にとっては重要な情報です。書いていないと、後で不信の原因になります。※職業紹介にあたる行為には法令上の許可が必要です。相談の範囲を超える場合は、事前に要件を確認してください。

扱える範囲と扱えない範囲を分ける

書類の添削、面接の準備、企業の選び方、退職の進め方。転職の相談には複数の作業が含まれます。このうち、どこまでを扱うのかを明記します。

特に、退職に伴う労務上の問題や、在職中の会社との交渉については、相談の範囲を超える場合があります。※未払いやハラスメントなど、法的な対応が必要な事案は、労働基準監督署や弁護士など適切な窓口につないでください。境界を書いておくと、相談者も安心して話せます。

在職中の相談者への配慮を書く

転職の相談者の多くは在職中です。連絡の時間帯、使用する連絡手段、勤務先に知られない配慮。この三点を書いておくと、申し込みの障壁が下がります。

たとえば、日中の連絡を避けること、私用の連絡先だけを使うこと、記録の送付方法を選べること。細かいことですが、在職中の相談者にとっては申し込むかどうかを左右する情報です。

更新の運用を決めておく

ポートフォリオは、作って終わりにすると劣化します。

更新の頻度と項目を決める

更新するのは、扱う領域、料金と範囲、対応できる時間帯の三つです。この三つは実態が変わりやすく、古いままだと問い合わせのずれが起きます。

頻度は、契約や案件の状況が変わるタイミングに合わせます。定期的な日付を決めるより、変化が起きたときに直すほうが確実です。

増やすより、減らす更新をする

更新というと項目を追加する作業だと考えがちですが、実務では減らす更新のほうが効きます。書いてある内容が増えるほど、読む人は判断を先送りします。

扱わないことになった領域、実施しなくなった形式、使わなくなった連絡手段。これらは残しておくと問い合わせのずれを生みます。半年に一度、削れる項目が無いかを見る時間を取ると、資料は読みやすい状態を保てます。

反応を見て直す

問い合わせの内容を記録しておくと、どこが伝わっていないかが分かります。同じ質問が繰り返し来るのであれば、その項目が書かれていないか、分かりにくい位置にあります。

問い合わせが来ても依頼に至らない場合は、条件か対象の設定がずれています。届いていない場合と、届いているが選ばれていない場合では、直す場所が違います。

副業として運用する場合の注意

本業を持ちながら相談を受ける場合、ポートフォリオの公開範囲を考える必要があります。

まず、本業の就業規則を確認します。副業が許可制であれば、届け出の手続きを済ませてから公開します。公開してから届け出ると、順序の問題として扱われることがあります。

次に、本業の情報を書かないようにします。勤務先の名称、担当している業務の詳細、取引先の情報。これらは、書いた本人の意図に関係なく、守秘の問題になります。経歴として書く場合は、業種と職種の範囲にとどめます。

対応できる時間帯も、実態に合わせて書きます。平日の日中に対応できないのであれば、そう書きます。書いておかないと、対応できない依頼が集まり、断り続けることになります。断られた相手からは、次の依頼が来ません。

市場を長く見てきた立場からの観察

フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から言えば、依頼が集まる資料と集まらない資料の差は、書いてある量ではありません。読んだ人が「自分の場合はこうなる」と想像できるかどうかです。手順が書いてあり、扱う範囲が書いてあり、終わったあとに何が残るかが書いてある。この三つが揃っている資料は、実績の掲載が少なくても依頼が来ます。

運営者として見てきた限りでは、長く続く人ほど、自分を大きく見せることに時間を使っていません。使っているのは、依頼する側の手間を減らすことです。判断に必要な情報が揃っていれば、相手は問い合わせという手間を経ずに決められます。中間のマージンが乗らない直接の取引が増えると、依頼する側は同じ予算で回数を増やせ、受ける側は同じ時間で手取りが厚くなります。この構造の中では、情報を出し惜しみせずに揃えている人ほど、取引の回数が積み上がっていきます。

領域の選び方を、データから考える

ポートフォリオの中身以前に、どの領域で相談を受けるかが結果を左右します。相談の需要が継続して発生する領域を選ぶと、資料の更新も少なくて済みます。

技術と職種の変化が速い分野は、その典型です。AI・マーケティング・セキュリティのお仕事で扱われる領域は、必要とされる技能の入れ替わりが早く、働く人が定期的にキャリアを見直します。この分野に触れられる相談者は、対象が絞られていても依頼が途切れにくくなります。

相談者から必ず聞かれるのが、その職種でどういう経路をたどれるのか、収入がどう変わるのかという点です。ここで一般論しか返せないと、相談の価値が薄くなります。技術系の資格を例にとれば、応用情報技術者のフリーランス年収と単価相場|取得後のキャリアパスのように、取得後の進路まで整理された情報を持っておくと、具体的に答えられます。

働き方そのものの選択肢についても、事前に地図を持っておきます。専門職として独立しながら生活と両立する形は介護士 フリーランスで自由な働き方を実現する:子育てとキャリアの両立術で具体的に扱われています。独立が唯一の正解ではなく、状況によっては組織に戻る選択も含めて検討することになるため、双方向の選択肢を把握しておくと、相談者の状況が変わっても対応できます。地図を持っていない相談者は、目の前の一つの道しか見えていないことが多く、選択肢を並べられるだけで相談の価値が生まれます。

ポートフォリオを作る作業は、自分を売り込む文章を書く作業ではありません。扱える範囲を決め、進め方を決め、扱いの安全性を明記する。この三つを文章にする作業です。決めていないことは書けないので、書けない項目が出てきたら、それは資料の不足ではなく、仕事の設計の不足です。設計から埋めていけば、資料は自然に埋まります。

よくある質問

Q. 相談の実績が無い段階では、何を載せればよいですか?

実際に扱える相談を「想定される相談」として書きます。こういう状況の方から、こういう相談を受けます、という形です。想定であることを明記すれば誤解は生じません。あわせて、社内で後輩の育成に関わった、採用に関与した、業務の相談を受ける立場だったといった隣接する経験を、役割と実際にしていたことまで具体的に書きます。

Q. 相談の事例を載せるとき、許諾は必要ですか?

必要です。口頭ではなく文面で、何をどこにどういう形で載せるかを示して同意を得ます。許諾を求めるのは相談が終わったあとにします。相談の前に求めると、相談者が話す内容を選ぶようになり、相談の質が落ちます。許諾を得ていない事例の掲載は、守秘義務やプライバシーの問題になる可能性があります。

Q. 匿名化すれば事例を自由に書けますか?

書けません。業種と年代と役職を書いただけでも、狭い業界では個人が特定されます。特定につながる要素を落とすほか、複数の相談をもとに再構成する方法もありますが、その場合は再構成した例であることを明記してください。実在の一件のように見せると、事実と異なる表示になります。

Q. 料金は書いたほうがよいですか?

書いたほうが問い合わせは増えます。書かない場合、相談者は問い合わせるという手間を負ってから金額を知ることになり、その手間を避けて別を選びます。書くときは金額だけでなく、含まれる範囲を併記してください。範囲がなければ比較の対象が金額だけになり、内容で選んでもらえなくなります。

Q. 副業で相談を受ける場合、顔や本名は出すべきですか?

本業との関係で判断します。本業の同僚や取引先が見る可能性があるため、出さない選択も現実的です。出さない場合は、声での自己紹介や文章量を増やすなど、人柄が伝わる要素を別に用意します。ただし契約や請求では本名が必要になるため、名義を分けるならどの段階で本名を伝えるかを先に決めておきます。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年2月10日最終更新:2026年9月13日
長谷川 奈津

この記事を書いた人

長谷川 奈津@SOHO編集部

行政書士・元企業法務

企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。

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