国民年金の免除の基準と所得の確かめ方|申請先と審査の流れ 2026


この記事のポイント
- ✓国民年金の免除・減免の基準を
- ✓全額・4分の3・半額・4分の1免除と納付猶予の所得の計算式
- ✓申請先と審査の流れまで日本年金機構の案内に沿って解説します
国民年金の保険料を減らしたり免除したりしてもらえる基準は、いくらの所得なら当てはまるのか。年金の減免基準を調べる人の多くが知りたいのは、この一点です。結論から言うと、基準は「年収」ではなく「前年の所得」で決まり、しかも本人だけでなく配偶者と世帯主の所得も見られます。この記事では、日本年金機構の案内をもとに、基準の計算式、家族構成ごとの計算例、所得の確かめ方、申請から審査までの流れを順に整理します。
先に要点をまとめると、単身で扶養する家族がいない人の場合、全額免除の基準は前年所得67万円以下です。一部免除は所得に応じて4分の3、半額、4分の1の3段階があり、基準額は扶養している家族の数と、納めた社会保険料の額で上下します。自分の所得がいくらかは、市区町村の課税(所得)証明書か、確定申告書の控えで確かめられます。
免除の基準は「前年の所得」で決まる
国民年金の保険料免除とは、収入の減少や失業などで保険料を納めるのが経済的に難しい場合に、申請して承認されると保険料の全額または一部の納付が免除される制度のことです。日本年金機構は、本人・配偶者・世帯主の前年所得が一定額以下の場合や、失業した場合などに承認されると説明しています。
ここで押さえておきたいのが、「いつの所得が見られるか」です。免除の世界では1年度が7月から翌年6月までと決まっていて、たとえば令和8年度分(令和8年7月から令和9年6月)は令和7年中の所得で審査されます。日本年金機構は、次のように注意を促しています。
申請する年度に対応する前年所得(上の表のとおり)に基づき審査を行います。 また、世帯主や配偶者がいる方は、世帯主や配偶者の所得審査がありますので、ご本人の所得が少ない場合でも免除等が承認されない場合があります。 出典: 日本年金機構「国民年金保険料の免除等の申請が可能な期間」
つまり、今月の収入が少なくても、前年に十分な所得があれば通常の免除は通りません。反対に、前年に収入が落ちていれば、今は持ち直していても免除が承認されることがあります。これ、知らない人が本当に多いんです。「今が苦しいから申請したのに却下された」という相談の多くは、審査されているのが前年の所得だという点を知らないまま申請しているケースです。
令和8年度の国民年金保険料は1か月あたり17,920円で、1年間では21万円を超えます。フリーランスや個人事業主にとって、この額を確実に納め続けるのは簡単ではありません。だからこそ、自分がどの基準に当てはまるかを正しく計算できるようにしておく価値があります。
免除の種類ごとの基準額
日本年金機構が示している承認基準(所得の基準)は、次の計算式です。前年所得が、この式で計算した金額以下であれば基準を満たします。
| 種類 | 前年所得の基準 | 令和8年度に納める額(1か月あたり) |
|---|---|---|
| 全額免除 | (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円 | 0円 |
| 4分の3免除 | 88万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 | 4,480円 |
| 半額免除 | 128万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 | 8,960円 |
| 4分の1免除 | 168万円+扶養親族等控除額+社会保険料控除額等 | 13,440円 |
| 納付猶予 | (扶養親族等の数+1)×35万円+32万円 | 0円(後で追納できる) |
全額免除と納付猶予は、扶養している家族の数で基準が決まります。一方、4分の3、半額、4分の1の一部免除は、「扶養親族等控除額」と「社会保険料控除額等」を基準額に加える仕組みです。扶養親族等控除額とは、扶養している配偶者や子どもなどがいる場合に税の計算で差し引かれる控除の額のことです。社会保険料控除額とは、その年に納めた国民健康保険料や国民年金保険料などの額のことです。
つまり、一部免除は「家族が多い人」「社会保険料を多く納めた人」ほど基準額が上がり、承認されやすくなります。
全額免除と納付猶予の違いは、誰の所得が審査されるかにあります。全額免除は本人・配偶者・世帯主の3人が見られますが、納付猶予は本人と配偶者だけで、世帯主の所得は問われません。また納付猶予を使えるのは20歳以上50歳未満の人に限られます。
なお、地方税法に定める障害者、寡婦、ひとり親に当たる人は、基準額が変わります。具体的な金額は、申請の際に窓口で確認してください。
「所得」と「年収」はどう違うのか
免除の基準を見て「67万円以下なんて無理」と感じた人は、年収と所得を混同しているかもしれません。所得とは、収入から必要な控除を差し引いた後の金額です。
会社員やアルバイトで給与をもらっていた人
給与だけの人の所得は、給与の収入金額から「給与所得控除」を引いた額です。給与所得控除とは、会社員にも必要経費があるとみなして、収入に応じて自動的に差し引かれる金額のことです。国税庁のタックスアンサー(No.1410)によると、令和7年分の給与所得控除は、給与の収入金額が190万円までなら65万円です。
令和8年度分の免除は令和7年中の所得で審査されるので、たとえば単身で給与だけの人なら、給与収入が約132万円以下(67万円+65万円)であれば全額免除の所得基準に収まる計算になります。ただし、これはあくまで目安です。免除の審査は市区町村が把握している所得の情報をもとに行われるので、実際の判定は窓口で確認してください。
フリーランスや個人事業主
事業をしている人の所得は、売上から必要経費を引いた額です。青色申告特別控除を受けている人は、その控除も差し引いた後の額が事業所得になります。つまり、同じ売上でも、経費をきちんと計上しているかどうかで所得が変わり、免除の基準に当てはまるかどうかも変わります。
国税庁の案内(No.2070)によると、青色申告特別控除は原則55万円で、電子帳簿保存か e-Tax による申告をしている場合は65万円です。たとえば売上200万円、経費80万円の人なら、白色申告では所得120万円ですが、e-Tax で青色申告をしていれば所得は55万円になります。単身なら、前者は全額免除の基準67万円を超え、後者は収まる計算です。青色申告の承認を受けているかどうか、帳簿の付け方がどうなっているかは、免除の判定にまで影響するということです。
ただし、免除を受けるために経費を水増しするのは論外です。税の申告は事実どおりに行い、その結果として基準に当てはまるかを確認する、という順番を守ってください。
給与と事業の両方がある人
副業をしている人は、給与所得と事業所得(または雑所得)を合計した額で判定されます。本業の給与だけを見て「基準内だ」と判断すると、副業の所得を足したら超えていた、ということが起こります。
家族構成別の計算例
実際にどのくらいの所得なら当てはまるのか、全額免除と納付猶予の式で計算してみます。
| 家族の状況 | 扶養親族等の数 | 全額免除・納付猶予の基準 |
|---|---|---|
| 単身で扶養する家族なし | 0人 | (0+1)×35万円+32万円=67万円 |
| 配偶者を扶養 | 1人 | (1+1)×35万円+32万円=102万円 |
| 配偶者と子ども1人を扶養 | 2人 | (2+1)×35万円+32万円=137万円 |
| 配偶者と子ども2人を扶養 | 3人 | (3+1)×35万円+32万円=172万円 |
扶養する家族が1人増えるごとに、基準額は35万円ずつ上がります。家族を養っている人ほど、同じ所得でも全額免除の対象に入りやすいということです。
一部免除の計算は、社会保険料控除額で大きく変わります。たとえば単身で扶養する家族がいない人が、前年に国民健康保険料と国民年金保険料を合わせて30万円納めていたとします。4分の3免除の基準は「88万円+0円+30万円」で118万円、半額免除は「128万円+30万円」で158万円、4分の1免除は「168万円+30万円」で198万円です。前年所得が140万円なら、4分の3免除の基準は超えますが半額免除の基準に収まる、という判定になります。
この計算でわかるのは、前年に保険料をきちんと納めていた人ほど、翌年度の一部免除の基準が上がるという点です。社会保険料控除の額は、確定申告書や市区町村の課税証明書で確認できます。
ただし、ここでの計算は考え方を示すための例です。扶養親族等控除額の具体的な金額は家族の年齢などで変わりますし、障害者やひとり親に当たる人は基準そのものが変わります。正確な判定は市区町村の国民年金担当窓口か年金事務所で確認してください。
本人だけでなく、配偶者と世帯主の所得も見られる
免除の審査で見落とされやすいのが、家族の所得です。日本年金機構の案内を整理すると、制度ごとに審査される人は次のとおりです。
| 制度 | 本人 | 配偶者 | 世帯主 |
|---|---|---|---|
| 全額免除・一部免除 | 審査される | 審査される | 審査される |
| 納付猶予(50歳未満) | 審査される | 審査される | 審査されない |
| 学生納付特例 | 審査される | 審査されない | 審査されない |
たとえば、親と同居していて住民票上の世帯主が親になっている人は、本人の所得がゼロでも、親の所得が基準を超えていれば全額免除は承認されません。この場合でも、50歳未満なら世帯主の所得を問わない納付猶予が承認される可能性があります。申請書では、免除と納付猶予の両方の審査を希望できるので、どちらかに当てはまるよう両方を希望しておくのが実務上の定石です。
配偶者がいる人は、配偶者の所得も同じ基準で審査されます。配偶者が会社員として一定の収入を得ている場合、本人がほとんど稼いでいなくても全額免除は通りにくくなります。なお、配偶者が厚生年金に加入していて、本人がその扶養に入れる収入であれば、そもそも国民年金の第3号被保険者として保険料の負担がなくなる道もあります。どちらが当てはまるかは、配偶者の勤務先と市区町村の窓口で確認してください。
学生は免除・納付猶予の対象外で、代わりに学生納付特例を使います。こちらは本人の所得だけが審査され、家族の所得は問われません。基準は「128万円+扶養親族等の数×38万円+社会保険料控除等」です。
所得に関係なく承認される場合と、基準が変わる場合
所得の基準を超えていても、免除が承認される場合があります。日本年金機構は、次の場合を挙げています。
失業・倒産・事業の廃止
失業等による特例免除では、失業した本人の前年所得は審査から外されます。必要なのは、雇用保険被保険者離職票や雇用保険受給資格者証のコピーなど、失業の事実を確認できる書類です。個人事業を廃業した人は、税務署への個人事業の開廃業等届出書の写しなども使えます。特例は、失業等のあった月の前月から受けられます。
ただし、外れるのは本人の所得だけです。世帯主や配偶者がいる場合は、その人たちが所得基準を満たしているか、同じく失業等の特例に当たっていなければなりません。
災害、特別障害給付金など
震災や風水害などで被災した人、特別障害給付金を受けている人、生活保護法の生活扶助以外の扶助などを受けている人も、所得に関係なく承認される場合があるとされています。
別の制度で免除になる人
生活保護の生活扶助を受けている人や、障害基礎年金(2級以上)を受けている人は「法定免除」の対象で、所得の審査はなく、届け出によって免除されます。第1号被保険者が出産した場合の「産前産後期間の免除」や、令和8年10月から始まった子が1歳になるまでの「育児免除」も、所得の条件がありません。所得基準で悩む前に、こうした制度に当てはまらないかを先に確認すると近道になることがあります。
自分の所得を確かめる方法
基準に当てはまるかを判断するには、前年の所得を正確に把握する必要があります。確かめ方は主に次の3つです。
1つ目は、市区町村の課税(所得)証明書です。住民税の計算に使われた所得や控除の額が載っている書類で、住所地の市区町村役場で交付を受けられます。コンビニ交付に対応している自治体もあります。免除の審査は市区町村が持っている所得の情報をもとに行われるので、この書類の数字がいちばん実際の審査に近い数字になります。
2つ目は、確定申告書の控えです。フリーランスや個人事業主は、申告書の「所得金額等」の欄に事業所得などの金額が載っています。
3つ目は、給与所得の源泉徴収票です。会社員だった人は「給与所得控除後の金額」が、給与の所得にあたります。
注意したいのは、前年に収入があったのに確定申告も年末調整もしていない場合です。日本年金機構は、本人・配偶者・世帯主のうち税の申告をしていない人がいる場合は、市区町村の税務担当窓口で住民税の申告をしてから免除の申請書を出すよう案内しています。所得がゼロの人も、ゼロであることを申告しておかないと審査ができません。
申請先と審査の流れ
基準に当てはまりそうだとわかったら、申請に進みます。流れは次のとおりです。
- 申請書を用意する。日本年金機構のサイトの「国民年金保険料の免除を受けるとき」からダウンロードできるほか、市区町村や年金事務所の窓口にも備え付けられています。ねんきんネットで作成することもできます
- 基礎年金番号がわかる書類かマイナンバーカードを用意する。失業を理由にするなら離職票のコピーなども添える
- 住所地の市区役所・町村役場の国民年金担当窓口か、お近くの年金事務所に提出する。郵送やマイナポータルからの電子申請もできます
- 市区町村が本人・配偶者・世帯主の所得を確認し、年金事務所で審査が行われる
- 審査の結果が「承認」または「却下」の通知で届く
申請書を出すと、市区町村長に対して申請者本人、配偶者、世帯主の前年または前々年の所得状況の証明を求め、その証明内容を年金事務所長に提出することに同意したことになります。つまり、所得の証明書を自分で添付しなくても、役所どうしで所得が確認される仕組みです。
申請できる期間は、保険料の納付期限から2年を経過していない期間、つまり申請時点から2年1カ月前までです。1枚の申請書で申請できるのは7月から翌年6月までの1年度分なので、過去の年度もさかのぼるなら年度ごとに申請書を用意します。日本年金機構は、提出前に記入内容を確認するためのセルフチェックシートも用意しています。
申請してから結果が出るまでのあいだにも、保険料の納付書が届くことがあります。結果が出るまでは慌てて納める必要はありませんが、承認されなかった場合に備えて、納付期限と時効の2年は意識しておきましょう。
却下されたとき、承認されたときにすること
却下された場合
基準を超えていて却下された場合でも、あきらめる前に確認したいことがあります。日本年金機構は、過去に却下となった期間でも、次のような場合には申請できる場合があるとしています。
1つは、失業等の理由で申請したものの、申請が遅れて特例免除が認められなかった場合。2つ目は、却下の後に税の修正申告(または申告)をして、本人・配偶者・世帯主の所得が変わった、または確定した場合。3つ目は、却下の後に離婚や世帯主の変更があった場合です。
相談の場で見かけるのが、確定申告で経費を計上し忘れていて、所得が実際より多く記録されていたケースです。申告をやり直して所得が下がれば、改めて免除を申請できる可能性があります。税の申告の修正は個別の判断になるので、税務署や税理士に確認してください。
承認された場合
全額免除や納付猶予が承認された人は、翌年度以降も続けて申請を希望すれば、改めて申請しなくても継続して審査されます。一方、一部免除と失業等による特例免除は、毎年度の申請が必要です。
継続審査を希望している人が結婚した、離婚した、配偶者が亡くなったといった変化があった場合は、「国民年金保険料免除・納付猶予継続申請者の配偶者状況変更届」を、事実が起きた日から14日以内に年金事務所へ提出します。配偶者の所得が審査に加わったり外れたりするためです。
一部免除が承認された人は、減額された保険料を納めなければ免除期間として扱われません。4分の3免除なら1か月あたり4,480円を納めて初めて、その月が一部免除の期間になります。
また、免除や猶予を受けた期間の保険料は、10年以内なら後から納める(追納する)ことができます。追納すれば、将来の老齢基礎年金を満額に近づけられます。追納した保険料は社会保険料控除の対象にもなります。
3つのケースで基準を当てはめてみる
計算式だけではイメージしにくいので、相談でよく見かける3つの状況に当てはめてみます。いずれも考え方を示すための例で、実際の判定は窓口で確認してください。
ケース1:会社を辞めて独立した1年目のフリーランス
令和7年の12月まで会社員で、給与収入が350万円あった人が、令和8年1月に独立したとします。令和8年度分(令和8年7月から令和9年6月)の免除は令和7年中の所得で審査されるので、会社員時代の給与がそのまま基準の計算に使われます。給与所得控除を引いても所得は200万円を大きく超え、通常の基準では一部免除も通りません。
この人が使えるのは、失業等による特例免除です。会社を辞めた事実を離職票などで示せば、本人の前年所得は審査から外されます。独立の場合も、退職して雇用保険の被保険者でなくなったことが書類で確認できれば対象になり得ます。ただし配偶者や世帯主がいれば、その人たちの所得は審査されます。独立したばかりで売上が立たない時期こそ、退職の月の前月までさかのぼれるこの特例を早めに使う意味があります。
ケース2:配偶者が会社員で、自分は在宅で少し稼いでいる人
本人の前年所得は40万円、配偶者は会社員で所得が300万円、子どもが1人いるとします。本人だけを見れば全額免除の基準に収まりますが、配偶者の所得も同じ基準で審査されます。配偶者が本人と子どもを扶養している場合、扶養親族等の数は2人で、全額免除の基準は137万円です。配偶者の所得300万円はこれを超えるので、全額免除は通りません。
この場合に確認したいのは、そもそも第3号被保険者になれないかという点です。配偶者が厚生年金に加入していて、本人の年収が原則130万円未満で配偶者に扶養されているなら、第3号被保険者として保険料の負担はありません。手続きは配偶者の勤務先を通じて行います。在宅の仕事で収入が増えて扶養から外れる場合は、改めて第1号被保険者への切り替えが必要です。
ケース3:親と同居している20代で、収入がほとんどない人
本人の前年所得は20万円、未婚で、住民票上の世帯主は父親(所得500万円)という人です。全額免除は世帯主の所得も審査されるので、父親の所得が基準を超えていて承認されません。
ここで使えるのが納付猶予です。納付猶予は本人と配偶者の所得だけが審査され、世帯主の所得は問われません。未婚なら本人の所得だけで判定され、20万円なら基準の67万円に収まります。承認されれば保険料の納付が先送りされ、その期間は障害基礎年金などの納付要件で納めた期間と同じように扱われます。ただし、老齢基礎年金の額には反映されないので、収入が安定したら10年以内に追納することを考えておきましょう。
免除を受けると将来の年金はどう変わるか
基準を満たして免除を受けた場合、将来の年金にどう影響するかも知っておく必要があります。日本年金機構の案内を整理すると、免除の種類ごとに老齢基礎年金への反映割合は次のとおりです(平成21年4月分以降)。
| 種類 | 老齢基礎年金への反映 | 障害・遺族基礎年金の要件 |
|---|---|---|
| 全額免除 | 全額納付した場合の2分の1 | 納めた期間と同じく数える |
| 4分の3免除 | 8分の5 | 同上(減額後の保険料を納めた場合) |
| 半額免除 | 8分の6 | 同上(減額後の保険料を納めた場合) |
| 4分の1免除 | 8分の7 | 同上(減額後の保険料を納めた場合) |
| 納付猶予 | 反映されない | 納めた期間と同じく数える |
| 未納 | 反映されない | 数えない |
40年すべて保険料を納めた場合の老齢基礎年金は、令和8年度で年847,300円です。40年すべてが全額免除だった場合でも、国庫負担の2分の1にあたる年423,650円が受け取れると示されています。未納のままなら、この税金で支えられている分も受け取れません。
もう1つ大きいのは、障害基礎年金と遺族基礎年金の要件です。障害基礎年金を受け取るには、初診日の前々月までの加入期間のうち、保険料を納めた期間と免除期間を合わせて3分の2以上あることなどが必要です。免除や猶予が承認されていれば、その期間は要件の計算で納めた期間と同じように扱われます。基準に当てはまるのに申請しないでいると、この保障を失うおそれがあります。
古い基準や数字に注意する
免除の基準について調べていると、今とは違う数字が載っている情報に出会うことがあります。よく見かける食い違いは次の3つです。
1つ目は、基準額そのものです。免除の基準額は過去に見直されたことがあり、古い年度の基準で書かれた解説記事が今も検索結果に残っています。全額免除の式の加算額が32万円、4分の3免除の基礎額が88万円になっているかを確かめ、違う数字が書かれていたら日本年金機構の現在のページで確認し直してください。
2つ目は、保険料の額です。国民年金保険料は年度ごとに改定され、令和8年度は1か月あたり17,920円です。一部免除で納める額も年度で変わり、令和8年度は4分の3免除が4,480円、半額免除が8,960円、4分の1免除が13,440円です。数年前の金額で家計を組み立てると、実際の納付額とずれます。
3つ目は、年収に換算した目安です。基準は所得で決まっていますが、年収の目安に置き換えた表がよく出回っています。給与所得控除の額は税制改正で変わるため、同じ所得基準でも、年によって対応する年収の目安が変わります。たとえば令和7年分の給与所得控除の最低額は65万円、令和8年分は74万円です。年収の目安を見るときは、何年分の税制で計算されたものかを確かめてください。
申請の時期で、受けられる範囲が変わる
基準を満たしていても、申請が遅れると免除を受けられる月が減っていきます。免除・納付猶予は、保険料の納付期限から2年を経過していない期間、つまり申請時点から2年1カ月前までの期間しかさかのぼれないからです。
日本年金機構が示している令和8年4月時点の表を整理すると、年度と審査される所得の年は次のように対応しています。
| 免除の年度 | 対象になる月 | 審査される所得 |
|---|---|---|
| 令和6年度分 | 令和6年7月から令和7年6月 | 令和5年中の所得 |
| 令和7年度分 | 令和7年7月から令和8年6月 | 令和6年中の所得 |
| 令和8年度分 | 令和8年7月から令和9年6月 | 令和7年中の所得 |
この表から読み取れるのは、さかのぼって申請するときは、年度ごとに別の年の所得で判定されるという点です。令和7年は所得が多かったけれど、令和5年と令和6年は少なかったという人なら、令和6年度分と令和7年度分だけは承認される、という結果もあり得ます。「どうせ今年は通らない」と決めつけず、過去の年度も1つずつ基準に当てはめてみる価値があります。
申請の期限は月ごとに決まっています。たとえば令和6年10月分の保険料は、納付期限が令和6年12月2日なので、免除を申請できるのは令和8年12月2日までです。令和6年11月分は令和9年1月6日まで、令和6年12月分は令和9年1月29日まで(期限の日が休日のため直前の営業日)と、1か月ごとに期限が来ます。窓口や郵送で手続きする場合は、期限の日が休日なら直前の営業日までに申請書が受理されている必要があります。
もう1つ見落とされやすいのが、申請の遅れと障害基礎年金の関係です。免除の申請は2年1カ月前までさかのぼれますが、病気やけがの初診日より後に申請した分は、障害基礎年金の納付要件には数えられません。基準に当てはまるとわかった時点で、すぐに申請するのが鉄則です。
収入が変動する働き方と免除の基準
フリーランスや在宅ワーカーの所得は、年によって大きく変わります。だからこそ、免除の基準は「毎年7月に見直すもの」と考えておくと、取りこぼしが減ります。前年に案件が少なかった年は、7月に新しい年度の申請ができるようになったタイミングで基準を計算し直す。この習慣があるだけで、本来受けられた免除を逃すことは少なくなります。
自分の所得の水準を客観的に知るには、同じ職種の相場と比べてみるのも有効です。たとえば執筆や編集で収入を得ている人は、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で職種全体の年収や単価の水準が整理されています。アプリやシステムの開発を受けている人なら、アプリケーション開発のお仕事で、仕事の内容や必要なスキル、報酬の考え方を確認できます。
在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、収入の波を前提に手続きを組み立てている人ほど、苦しい時期を乗り切って仕事を長く続けています。仲介の手数料がかからない直接取引で手取りを厚くしつつ、収入が落ちた年は迷わず免除を申請し、余裕ができたら追納する。お金の出入りを「仕事の量」だけでなく「制度の使い方」でも整えているのが、長く続く人の共通点です。
また、取引先からの支払いが遅れて保険料を納められなくなるケースもあります。発注の条件を書面で残しておくと、トラブルのときに自分を守る材料になります。フリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストでは、発注書や契約書に入れておきたい項目が整理されています。
収入の柱を広げたい人は、ネットワークの資格を取って技術系の在宅案件に挑戦する道もあります。CCNA(シスコ技術者認定)では、試験の範囲や難易度、活かせる仕事が紹介されています。
免除の基準は、計算式さえ押さえれば自分で見当をつけられます。前年の所得を確かめ、家族構成に当てはめ、迷ったら窓口で確認する。法律は、正しく使う人の味方です。
よくある質問
Q. 国民年金の全額免除は年収いくらまでなら受けられますか?
基準は年収ではなく前年の所得で、単身で扶養する家族がいない人なら所得67万円以下です。給与だけの人の場合、令和7年分の給与所得控除65万円で計算すると給与収入で約132万円以下が目安になります。ただし配偶者と世帯主の所得も審査されるため、本人だけで判断せず窓口で確認してください。
Q. 親と同居していると免除は受けられませんか?
全額免除や一部免除では世帯主の所得も審査されるため、世帯主である親の所得が基準を超えていると承認されません。ただし50歳未満なら、世帯主の所得を問わない納付猶予が承認される可能性があります。申請書では免除と納付猶予の両方の審査を希望できるので、両方を希望して申請するのが一般的です。
Q. 前年の所得はどうやって確かめればよいですか?
市区町村で交付される課税(所得)証明書がいちばん審査に近い数字です。ほかに確定申告書の控えや源泉徴収票の給与所得控除後の金額でも確認できます。前年に収入があったのに申告をしていない人がいる場合は、市区町村の税務担当窓口で住民税の申告をしてから免除を申請してください。
Q. 免除が却下されたら、もう申請できませんか?
却下の後に税の修正申告で所得が変わった場合や、離婚や世帯主の変更があった場合、失業等の申請が遅れて特例が認められなかった場合などは、改めて申請できる場合があります。また翌年度は新しい前年所得で審査されるので、7月以降に改めて基準を計算し、当てはまれば申請してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
長谷川 奈津@SOHO編集部
行政書士・元企業法務
企業法務で数多くのフリーランス契約を扱った経験を活かし、フリーランス向けの法律・契約・権利に関する記事を執筆。「法律はあなたの味方です」がモットー。
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