役員の登記にかかる登録免許税|資本金で額が変わる

丸山 桃子
丸山 桃子
役員の登記にかかる登録免許税|資本金で額が変わる

この記事のポイント

  • 国に納める登録免許税・書類集めの実費・専門家への報酬の3つに分けて整理します
  • 資本金1億円以下なら登録免許税は1万円
  • 初めて登記する人向けに解説します

役員登記費用がいくらかかるのかを調べている人の多くは、取締役や監査役が入れ替わったタイミングで「これ、いくら用意すればいいのか」と手が止まっている状態にあります。調べ始めると司法書士事務所の料金表ばかりが出てきて、国に納める税金と事務所に払う報酬がごちゃ混ぜになり、結局いくらなのかが見えません。この記事では、役員の登記にかかるお金を「国に納める分」「書類を集める分」「人に頼む分」の3つに分け、それぞれの金額の根拠になっている法律と公的なページを示しながら整理します。読み終えたときに、自分の会社なら何円で済むのか、自分で出すか頼むかをどう決めればいいのかが判断できる状態を目指します。

役員登記費用は3つの財布から出ていく

役員の変更を法務局に届け出るときに出ていくお金は、性質の違う3種類が混ざっています。ここを分けずに合計だけを見ると、削れるところと削れないところが分からなくなります。

1つ目は登録免許税です。これは国に納める税金で、法律で金額が決まっています。誰が申請しても、どこの法務局に出しても、同じ変更なら同じ額です。値引きも割引もありません。役員の変更なら、資本金の額によって1万円3万円のどちらかです。

2つ目は書類をそろえるための実費です。印鑑証明書や住民票、登記事項証明書といった証明書の発行手数料、郵送代、コピー代などが該当します。1通あたり数百円ですが、役員が何人も入れ替わると通数が増えて、合計で数千円になることがあります。

3つ目は専門家への報酬です。司法書士に申請書の作成と提出を任せる場合に発生します。これは自由料金なので事務所ごとに違い、自分で書類を作って自分で出せばゼロにできます。つまり、役員登記費用のうち「削れる可能性があるのはここだけ」ということになります。

この3つを分けて考えると、検討する順番も自然に決まります。まず登録免許税は固定なので確定させる。次に必要な証明書の種類と通数を数えて実費を出す。最後に、残りの手間を自分で引き受けるか、お金を払って外に出すかを決める。この順で考えれば、料金表の数字に引きずられずに済みます。

なお、登記そのものを出さないという選択肢はありません。役員が交代したのに登記を放置すると、あとで過料という制裁金の対象になります。詳しくは後半で説明しますが、費用の議論は「出すのは前提。いくらで出すか」という枠の中で行うものだと押さえておいてください。

登録免許税は資本金1億円以下なら1万円

役員の変更登記にかかる登録免許税の額は、登録免許税法という法律の別表に、そのまま書かれています。

カ 取締役、代表取締役若しくは特別取締役、会計参与、監査役、会計監査人、指名委員会等の委員、執行役若しくは代表執行役若しくは社員又は理事、監事、代表理事若しくは評議員に関する事項の変更(会社又は相互会社若しくは一般社団法人等の代表に関する事項の変更を含む。)の登記 申請件数 一件につき三万円(資本金の額が一億円以下の会社又は一般社団法人等については、一万円) 出典: laws.e-gov.go.jp

長い条文ですが、読むべき場所は2つだけです。ひとつは「申請件数 一件につき」という単位。もうひとつは括弧の中の「資本金の額が一億円以下の会社」という条件です。

まず単位から見ます。この税金は、交代した役員の人数ではなく、申請1件につきいくら、という数え方をします。取締役が1人だけ辞めた場合も、取締役3人と監査役1人がまとめて入れ替わった場合も、それを1通の申請書で出すなら登録免許税は同じです。人数で増えないというのは、実務上けっこう大きな意味を持ちます。役員の任期が満了して全員がそのまま続投する場合、登記の世界ではこれを重任と呼びますが、重任する人が何人いても税額は変わりません。

次に金額です。資本金の額が1億円以下の会社なら1万円、1億円を超える会社なら3万円です。中小企業のほとんど、そして設立したばかりの会社はまず1億円以下に収まります。資本金1円で作った会社も、資本金1,000万円の会社も、役員変更の登録免許税は同じ1万円です。ここで判定に使う資本金は、登記簿に記録されている資本金の額です。預金残高でも売上でもありません。自社の資本金がいくらかを確認したいときは、登記事項証明書の「資本金の額」の欄を見るのが確実です。

合同会社の場合も考え方は同じです。合同会社では取締役ではなく業務執行社員や代表社員という呼び方をしますが、条文の中に「社員」が含まれているため、この人たちに関する事項の変更も同じ区分で扱われます。資本金1億円以下なら1万円です。

特例有限会社、つまり会社法ができる前からある有限会社がそのまま残っている会社も、株式会社の一種として扱われます。こちらも資本金が1億円を超えることは稀なので、実際には1万円になるケースがほとんどです。

同じ日に別の変更も出すと税額はどう積み上がるか

役員が変わるタイミングでは、ほかの変更も一緒に起きることがよくあります。代表取締役が交代したので本店も移す、会社の名前も変える、取締役会をやめる、といった具合です。このとき登録免許税がどう計算されるのかは、申請書をまとめられるかどうかとは別の話になります。

登録免許税は、別表の区分ごとに税額が決まっています。ひとつの申請書に複数の区分の変更を盛り込んだ場合、区分ごとの税額を足し合わせた額を納めます。まとめて出したから安くなる、という仕組みではありません。役員登記と同時に発生しやすい変更の税額を、同じ別表から拾うと次のようになります。

何を変えるか 登録免許税
役員に関する事項の変更 1件につき3万円(資本金1億円以下は1万円)
本店または支店の移転 1箇所につき3万円
取締役会・監査役会・監査等委員会などに関する事項の変更 1件につき3万円
支配人の選任、その代理権の消滅 1件につき3万円
商号や目的など、上記以外の登記事項の変更 1件につき3万円
新株予約権の発行による変更 1件につき9万円
支店・従たる事務所の設置 1箇所につき6万円
登記の更正 1件につき2万円
登記の抹消 1件につき2万円

例えば、資本金500万円の会社で「取締役の交代」と「本店移転」を同時に申請すると、1万円と3万円を足した4万円になります。「取締役の交代」と「商号変更」なら1万円と3万円で4万円です。

本店移転については、移転先が同じ法務局の管轄内かどうかで申請の出し方が変わる点にも注意が必要です。管轄をまたぐ移転では、移転前の所在地と移転後の所在地それぞれについて登記が必要になり、1箇所につき3万円という数え方が効いてきます。役員変更と本店移転が重なりそうなら、自分でやるつもりでも、申請の組み立て方だけは事前に法務局の登記相談で確認しておくと安全です。法務局は申請書の書き方について無料で相談に応じています。

ついでに、会社を作るときの登録免許税も同じ別表に載っているので触れておきます。株式会社の設立は資本金の額の1000分の7で、それが15万円に満たないときは15万円。合同会社の設立も1000分の7で、6万円に満たないときは6万円です。役員変更の1万円と比べると、設立時の負担がいかに重いかが分かります。

書類をそろえるのにかかる実費

登録免許税以外に、証明書の発行手数料という実費がかかります。金額は登記手数料として全国一律で決まっており、法務省のページで公開されています。2025年4月1日からの主な手数料は次のとおりです。

証明書の種類 書面で請求 オンライン請求・郵送 オンライン請求・窓口受取
登記事項証明書 600円 520円 490円
印鑑証明書(法人) 500円 450円 420円
登記事項要約書の交付・登記簿等の閲覧 500円 取扱なし 取扱なし

役員変更のときに実際に必要になるのは、おおむね次のような書類です。会社の形や誰が交代するかで変わるので、自社の場合に何が要るかは法務局の申請書様式のページで、該当するひな型を見て確認するのが早道です。

株主総会で役員を選んだ記録である議事録は、自社で作ります。新しく就任する人が「引き受けます」と意思表示した書面である就任承諾書も自社で作ります。ここまでは紙とプリンタ代だけです。

費用が発生するのは本人確認の部分です。新しく代表取締役になる人は、市区町村が発行する個人の印鑑証明書を添えるのが原則で、これは1通300円前後(自治体によって異なります)です。代表取締役以外の取締役や監査役が新たに就任する場合は、住民票の写しや運転免許証のコピーなどの本人確認証明書を添えます。住民票も1通300円前後です。役員が5人入れ替われば、この部分だけで1,500円前後になります。

登記が終わったあとにも実費がかかります。登記の内容が正しく反映されたかを確かめたり、取引先や銀行に提出したりするために登記事項証明書を取ると、1通600円です。銀行や許認可の窓口に出す分も含めると、2通から3通は必要になることが多く、ここで1,200円から1,800円が乗ります。

登録免許税の納め方にも実費に関わる注意点があります。書面で申請する場合、税額分の収入印紙を買って、台紙に貼って提出します。法務局は、印紙を汚したり、印紙に自分で割印を押したりすると使えなくなると注意を呼びかけています。1万円分の印紙を無駄にすると、そのまま1万円の損です。貼るだけにして、消印は法務局に任せてください。

まとめると、役員1人か2人の交代で自分で申請する場合、登録免許税1万円に実費2,000円から3,000円程度が加わり、合計1万2,000円から1万3,000円あたりが現実的な着地点になります。

司法書士に頼むといくら増えるか

司法書士への報酬は自由料金です。かつては報酬の基準表がありましたが現在は撤廃されており、事務所ごとに金額を決めています。そのため「相場」を語るときは、何を根拠にした数字なのかを確かめる必要があります。

一般に、役員変更登記の書類作成と申請代理を依頼した場合の報酬は3万円前後に集まるとされ、複数の事務所が公開している料金表もおおむねこの範囲に収まっています。ただし、この金額は「取締役が全員そのまま続投する、いちばん単純な重任登記」を前提にした額です。次のような事情があると、書類の枚数と確認の手間が増えるため、報酬も上がります。

役員が辞任して別の人が就任する場合は、辞任届と就任承諾書、本人確認書類が加わります。代表取締役が交代する場合は、印鑑届出書の出し直しが必要になることがあります。任期の管理が何年も放置されていて、過去にさかのぼって複数回分の重任を登記し直す場合は、議事録を年度ごとに作り直すことになり、報酬は1回分では済みません。定款を確認したら実は取締役会設置会社のままだった、といった前提のずれが見つかると、そこから整理が必要になります。

依頼するかどうかの判断は、金額だけで決めないほうがうまくいきます。判断材料になるのは次の3点です。

第一に、自社の登記簿と定款の状態が把握できているか。定款が見つからない、前回いつ登記したか分からない、という状態なら、調べるところから始めることになるので、専門家に任せたほうが時間当たりで見て安く済みます。第二に、期限までの日数。役員変更の登記には後述のとおり2週間という期限があり、書類の不備で補正を繰り返すと簡単に超えてしまいます。第三に、その年に登記が1回で済むのか、ほかの変更も控えているのか。年内に複数回出すことが分かっているなら、1回目を専門家に任せて手順を教わり、2回目以降を自分で出す、という組み立ても現実的です。

会社の外に仕事を出すときの費用感を比べる材料としては、職種ごとの単価をまとめた資料が参考になります。書類作成や調査を外注したときの相場観を知りたいなら、著述家,記者,編集者の年収・単価相場で、文章と資料をまとめる仕事にどれくらいの単価がついているかを確認しておくと、士業への報酬が高いのか妥当なのかを自分の物差しで判断できるようになります。

期限は2週間、過ぎると過料の対象になる

役員登記でいちばん怖いのは、登録免許税の額ではなく期限を忘れることです。会社法は、登記すべき事項に変更が生じたときの期限をこう定めています。

第九百十五条 会社において第九百十一条第三項各号又は前三条各号に掲げる事項に変更が生じたときは、二週間以内に、その本店の所在地において、変更の登記をしなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp

起算点は「変更が生じたとき」です。株主総会で新しい取締役を選んだ日、あるいは辞任届が会社に届いた日から数えて2週間以内に、本店のある場所を管轄する法務局へ申請します。法務局も、会社や法人の登記には法令で期間が定められていると案内しており、株式会社の役員変更を例に挙げて2週間以内と明記しています。

この期限を過ぎると、会社法上は過料の対象になります。過料は罰金とは違い前科にはなりませんが、裁判所から通知が届き、実際に納めることになります。条文は、登記をすることを怠ったときは100万円以下の過料に処すると定めています。上限が100万円というだけで、実際に科される額は遅れた期間や事情によって決まり、数万円で収まる例が多いとされています。とはいえ、1万円の登録免許税を惜しんで放置した結果、それを上回る過料を払うことになるのでは本末転倒です。

過料の通知は、遅れてから登記を出したときに、法務局から裁判所へ連絡が行くことで動き出します。つまり「登記していなければ気づかれない」わけではなく、「いつか登記するときに必ず露見する」という性質のものです。何年も放置している会社ほど、早めに出したほうが傷が浅くなります。

なお、株式会社の登記が12年以上動いていないと、法務局が職権で解散したものとして扱う手続き(みなし解散)の対象になります。実際には通知が届いた段階で対応すれば復活させられますが、その間に銀行や取引先から登記簿を見られると、管理が行き届いていない会社という印象を与えます。役員の任期が来たら登記する、という習慣を会社の年間予定に組み込んでおくのが、いちばん安上がりな対策です。

任期の決め方で、生涯にかかる登記費用が変わる

役員登記費用を長い目で下げたいなら、いちばん効くのは任期の設定です。取締役や監査役の任期は法律で決まっていて、期間が満了するたびに登記が必要になります。つまり、任期が短いほど登記の回数が増え、そのたびに登録免許税と実費が発生します。

取締役の任期は、選んでから2年以内に終わる事業年度のうち最後のものについての定時株主総会が終わるときまでです。監査役は4年です。ただし、株式を自由に売買できない会社(非公開会社)であれば、定款で定めることによって、どちらも選任後10年以内に終わる事業年度の定時株主総会の終結時まで延ばせます。ほとんどの中小企業は非公開会社なので、この10年という選択肢が使えます。

任期を2年にした場合と10年にした場合で、30年間に発生する役員変更登記の回数を比べると、2年なら15回、10年なら3回です。登録免許税だけで比べても、1万円の会社で15万円と3万円という差になります。証明書の実費や、司法書士に毎回頼む場合の報酬まで入れると、差はさらに開きます。

では10年が常に正解かというと、そうではありません。任期が長いことの裏返しとして、次のような不都合があります。

役員を任期の途中で辞めさせたい場合、株主総会の決議で解任すること自体はできますが、正当な理由がないと、残りの任期分の報酬相当額について損害賠償を請求されるおそれがあります。任期が10年残っていれば、その請求額も大きくなります。共同創業者や外部から招いた役員がいる会社で任期を10年にするのは、相手を信頼しているうちはよくても、関係が変わったときに動けなくなる設計です。

もうひとつは、忘れやすいという実務上の問題です。10年に1回の手続きは、担当者も社長も覚えていられません。定款で10年にしたのに登記を忘れ、気づいたら任期満了から何年も経っていた、というケースは珍しくありません。任期を延ばすなら、満了年をカレンダーや契約管理の仕組みに登録しておくことがセットです。

現実的な落としどころとしては、株主も役員も社長ひとりという会社なら10年、家族や共同創業者が役員に入っている会社なら2年から5年、というあたりで考える会社が多いようです。任期は定款で決める事項なので、変更したい場合は株主総会で定款を変え、その内容に沿って運用します。定款変更そのものには登記は要りませんが、会社の基本ルールを書き換える話なので、議事録は必ず残してください。会社の規程や議事録を整える基本を押さえたい人は、ビジネス文書検定で問われる文書作成の型を見ておくと、社内の書類づくり全般の精度が上がります。

自分で申請するときの手順と、つまずきやすい場所

自分で出すと決めた場合の流れを、順に追います。役員が1人か2人入れ替わる標準的なケースを想定します。

最初にやるのは、いまの登記簿と定款を手元に用意することです。登記事項証明書を1通取って、現在の役員、資本金の額、取締役会を設置しているかどうか、を確認します。定款は、取締役の任期が何年になっているか、代表取締役の決め方がどうなっているかを見るために必要です。この2つが揃っていないと、どの書式を使えばいいのかが決まりません。

次に、役員を選ぶ手続きを実際に行い、記録に残します。株主総会を開いて取締役を選び、議事録を作ります。取締役会を置いている会社なら、代表取締役を決める取締役会も開いて、その議事録も作ります。就任する人からは就任承諾書をもらいます。辞める人がいれば辞任届をもらいます。ここでよくあるのが、日付の前後が合わなくなるというつまずきです。就任承諾の日が株主総会の日より前になっていると、選ばれる前に承諾したことになってしまいます。日付は必ず順番どおりに整えてください。

3つ目に、申請書を作ります。法務局は、会社の形と変更の内容ごとに申請書のひな型を公開しており、記載例つきでダウンロードできます。自社に当てはまるものを選んで、会社法人等番号、商号、本店、登記の事由、登記すべき事項、添付書面、登録免許税額を埋めていきます。

登録免許税を収入印紙で納付する場合には、収入印紙を収入印紙貼付台紙等に貼付してください。その際、印紙を汚したり、印紙に割印をした場合、その印紙は使用できなくなるので、ご注意ください。 出典: houmukyoku.moj.go.jp

4つ目に提出します。窓口に持参しても、郵送でも、オンラインでも構いません。郵送する場合は、書留など記録の残る方法にしておくと安心です。オンライン申請は事前に電子証明書の準備が要るため、年に1回しか使わないなら書面のほうが早いこともあります。

5つ目に、完了を確認します。法務局は申請から完了までにおおむね1週間から2週間かかります。書類に不備があると補正の連絡が来るので、申請書に書いた電話番号は必ずつながるものにしてください。完了したら登記事項証明書を取り、意図したとおりに記録されているかを見ます。ここまで終えて、ようやく一連の手続きが完了します。

つまずきやすい場所をもう一度まとめると、定款の内容を確認しないまま書式を選ぶこと、日付の順序が逆になること、本人確認書類の添付漏れ、印鑑証明書の有効期限切れ(作成後3か月以内のものを求められるのが一般的です)、そして印紙への割印です。どれも、事前に法務局の登記相談で申請書のたたき台を見てもらえば、その場で指摘してもらえます。

同じ区分の変更は1通にまとめると税額が下がる

登録免許税は「申請件数1件につきいくら」という数え方をします。ここから、税額を下げられる場面が1つ生まれます。

税額表で役員変更にあたる区分は、取締役、代表取締役、特別取締役、会計参与、監査役、会計監査人、指名委員会等の委員、執行役、代表執行役、そして社員までを1つにまとめています。会社の代表に関する事項の変更もこの区分に含まれます。つまり、取締役を1人替えることと、監査役を1人替えること、代表取締役を交代させることは、税額表の上ではすべて同じ引き出しに入っています。

だから、同じ株主総会でまとめて決めて1通の申請書で出せば、税額は1万円で済みます。逆に、取締役の交代を先に出して、1か月後に監査役の交代を別に出すと、1万円が2回で2万円になります。人数や役職の数ではなく申請書の通数で決まるという性質が、ここで効いてきます。

注意したいのは期限です。2週間という期限は、変更ごとに別々に数えます。先に起きた変更の期限内に後の変更が決まらないなら、まとめるのを待っている間に期限を過ぎてしまいます。役員の交代が年内に何回か発生しそうな会社では、まとめて出せるかどうかを日付で先に確認してください。定款変更や本店移転が近い時期に控えている場合、それらは区分が違うので税額は足し算になりますが、申請書を1通にできれば郵送の往復と収入印紙を買う手間は1回で済みます。

間違えて登記したときは、直すほうが高い

1万円で済む手続きだと思って雑に出すと、かえって高くつく場面があります。税額表には登記の更正と登記の抹消という区分があり、どちらも申請件数1件につき2万円と定められています。

更正とは、登記された内容が申請の内容と違っていた場合に直す手続きです。氏名の漢字が違う、就任年月日が1日ずれている、といった誤りを直すために使います。原因が申請書の書き間違いであっても、直すのに2万円かかります。最初の登記が1万円だったのに修復に2万円というのは、割に合いません。

ここから導ける行動は2つです。1つは、申請書を出す前に、氏名の漢字と原因年月日を声に出して読み合わせることです。もう1つは、登記が完了したあとに登記事項証明書を取り、実際にどう記録されたかを目で確かめることです。600円の証明書1通で2万円の修復を避けられる可能性があるなら、取らない理由はありません。

なお、審査の途中で法務局から連絡が来て手直しをする補正は、更正とは別物です。補正は完了前の直しなので、追加の税額はかかりません。申請書に書いた電話番号がつながるようにしておくことが、そのまま節約になります。

合同会社なら、登記が発生しない年がある

会社の形が合同会社なら、役員登記費用の考え方そのものが変わります。

税額の枠は同じです。役員変更にあたる区分には「社員」が含まれているので、業務執行社員や代表社員を変える登記も、資本金1億円以下なら1万円です。代表社員の住所が変わったときの登記も同じ枠に入ります。

違うのは頻度です。合同会社の業務執行社員には任期がありません。株式会社の取締役のように2年や10年で満了して選び直す、という区切りが存在しないのです。だから、社員の出入りがなく住所も変わらなければ、何年経っても登記は発生しません。30年で3回という株式会社の最小回数に対して、合同会社は0回もあり得ます。

ひとりで事業をやる人が合同会社を選ぶ理由のひとつがここです。設立のときの負担が軽いことに加えて、作ったあとに自動で発生する登記がありません。ただし、社員が複数いる合同会社では、社員の加入や退社のたびに定款を変えることになり、総社員の同意書などの書類が必要になります。回数が少ないかわりに、1回あたりの書類の組み立ては株式会社の重任よりも考える点が多くなります。

現場の観察から言える、登記費用の本当のコスト

フリーランスと在宅ワークの市場を20年見てきた立場から言うと、法人にした人がつまずくのは税額そのものではなく、手続きが発生していることに気づかない期間の長さです。役員の任期が切れていたことに気づくのは、たいてい銀行から登記事項証明書を求められたときや、大きめの取引先から与信のために会社の情報を出すよう言われたときです。そこで初めて「2年前に任期が切れていた」と分かり、慌てて登記して、過料の通知を受け取る。この順番でつまずく人を繰り返し見てきました。

もうひとつ、独立して間もない人に共通する傾向として、こうした事務を全部自分で抱え込もうとするところがあります。登記の書類づくりは確かに自分でできます。ただ、それに丸1日使ったとして、その1日を本業に充てたら何を生んだのかを一度は計算してみる価値があります。仕事を受ける側も出す側も、中間マージンの乗らない直接のやり取りに移した人ほど、同じ予算で頼める量が増え、受け手の手取りが厚くなります。そうやって浮いた時間とお金を、判断が要る部分に寄せていくほうが、結果として会社は長持ちします。

会社の事務を外に出すという選択を考えるなら、どういう仕事が在宅で受発注されているかを知っておくと判断が早くなります。書類整理や調査、業務フローの見直しといった分野はAIコンサル・業務活用支援のお仕事として募集が出ており、社内に人を増やさずに手を借りる方法が現実的な選択肢になっています。社内の仕組みづくりまで含めて相談したい場合は、AI・マーケティング・セキュリティのお仕事のように、情報管理と運用の設計をまとめて引き受ける形の依頼も広がっています。

法人を作ると、登記だけでなく、税務署への届出、社会保険の手続き、決算といった事務が毎年ついて回ります。そのうち登記費用は、金額としては小さい部類です。資本金1億円以下の会社なら、任期どおりに出していれば数年に1回、1万円強で済みます。むしろ負担が大きいのは、忘れたときに発生する調査と修復の手間のほうです。だからこそ、任期の設定と、満了年をどこに書いておくかという2点を最初に決めてしまうのが、いちばん費用対効果の高い対策になります。

システム開発や技術職として法人化した人であれば、自分の単価水準をソフトウェア作成者の年収・単価相場で確認しておくと、事務に自分の時間を使うべきか、外に出すべきかの線引きがしやすくなります。自分の1時間の価値が見えていれば、1万円の登録免許税に半日悩むのか、3万円払って半日を取り戻すのか、その判断は感情ではなく数字でできるようになります。

よくある質問

Q. 役員変更の登録免許税は役員の人数で変わりますか?

変わりません。登録免許税は申請1件につきいくら、という数え方をします。取締役1人の交代でも、取締役3人と監査役1人が同時に入れ替わる場合でも、1通の申請書で出すなら税額は同じです。資本金1億円以下の会社なら1万円、1億円を超える会社なら3万円です。

Q. 司法書士に頼まず自分で申請できますか?

できます。法務局が会社の形と変更内容ごとに申請書のひな型を公開しており、記載例を見ながら作成できます。申請書の書き方は法務局の登記相談で無料で確認できます。自分で出せば専門家への報酬はかからず、登録免許税1万円と証明書などの実費2,000円前後で済むのが一般的です。

Q. 役員変更の登記を忘れていた場合はどうなりますか?

会社法は、変更が生じてから2週間以内に登記することを求めており、これを怠ると100万円以下の過料の対象になります。上限が100万円というだけで実際の額は遅れた期間などで決まりますが、遅れて登記した時点で裁判所に連絡が行く仕組みです。放置するほど不利になるため、気づいた時点で早めに申請してください。

Q. 任期を10年にすれば費用は下がりますか?

株式を自由に売買できない会社なら、定款で取締役と監査役の任期を選任後10年まで延ばせるため、登記の回数が減り費用は下がります。ただし任期の途中で役員を解任すると、正当な理由がない場合に残任期分の損害賠償を求められるおそれがあり、満了年を忘れやすいという問題もあります。役員が社長ひとりかどうかで判断が変わります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月10日最終更新:2026年9月19日
丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子@SOHO編集部

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

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