定款をなくしたときの作り直し方|公証役場から取れる場合

丸山 桃子
丸山 桃子
定款をなくしたときの作り直し方|公証役場から取れる場合

この記事のポイント

  • ✓定款紛失再作成で調べている人に向けて
  • ✓公証役場から謄本を取れる条件
  • ✓法務局で設立登記の書類を見る方法

銀行から定款の写しを出してくださいと言われて書類棚を探したら、どこにも見当たらない。定款紛失再作成という言葉で検索している人の多くは、たいていこの状況にいます。

結論から書きます。定款は、条件がそろえば公証役場から取り直せます。取れない場合でも、法務局で設立時の書類を見る道があり、それも無理なら作り直すことになります。どの道を通れるかは、会社の種類と、設立からの経過年数と、紙で作ったか電子で作ったかで決まります。この記事では、その分岐を1つずつ確認していきます。

定款は「取り戻せる書類」と「取り戻せない書類」の境目にある

定款とは、会社の決まりを書いた文書のことです。会社の名前、何をする会社か、本店をどこに置くか、誰が出資したのかといった骨組みが書かれています。

この文書が厄介なのは、登記事項証明書のように、窓口へ行けば誰でも何度でも取れる書類ではない点です。法務局は登記した内容を管理していますが、定款そのものを証明書として出す窓口を持っていません。一方で、株式会社の設立時の定款は公証人が1通を保存しているので、そちらから取れる可能性があります。つまり、どこが持っているかを知っていれば取り戻せるし、知らないまま「法務局で取れるはず」と窓口に行くと空振りする、という性格の書類です。

もう1つ押さえておきたいのが、公証役場にあるのは設立したときの定款だけだという点です。これを原始定款と呼びます。設立後に事業目的を足したり本店を移したりして定款を変えていても、その変更は公証役場には届いていません。会社が今使っている定款、つまり現行定款は、会社自身が管理する建前になっています。

この構造を頭に入れたうえで、順番に手を打ちます。

定款と登記事項証明書は、似ているようで別物

窓口へ行く前に、混同されやすい2つの書類の違いを整理しておきます。ここを取り違えると、提出先で突き返されて往復が増えます。

登記事項証明書は、法務局が管理している登記の内容を証明する書面です。商号、本店、目的、資本金の額、役員、公告の方法などが載っています。誰でも手数料を払えば取得でき、窓口でその場で発行されます。オンラインで請求すれば1通490円、送付を求める場合は520円で、窓口での交付は600円です。

定款は、会社の内部の決まりごとを網羅した文書です。登記される項目のほかに、事業年度、株主総会の招集手続、議決権の代理行使、取締役の任期、株式の譲渡制限の承認機関、配当の基準日といった、登記事項には現れない条文が並びます。銀行や役所が定款の写しを求めるのは、登記事項証明書だけでは読み取れないこれらの内容を確認するためです。

だから、定款を出してくださいと言われたときに登記事項証明書を持っていっても代わりにはなりません。逆に、定款があれば登記事項証明書が不要になるわけでもありません。提出先は、たいてい両方を求めます。

会社の種類で、当たる先が変わる

どこへ行けばよいかは、会社の形で決まります。整理すると次のようになります。

株式会社は、設立時に公証人の認証を受けているので、公証役場に役場保存用原本が残っています。設立から20年以内であれば、ここが第一の選択肢です。第二が法務局の附属書類の閲覧で、こちらは設立登記の受付の日から10年以内。

合同会社、合名会社、合資会社は、認証を受けていないので公証役場には何もありません。法務局の閲覧が唯一の公的な手段になり、期間は同じく受付の日から10年以内です。

一般社団法人と一般財団法人は、株式会社と同じく公証人の認証を受けています。あわせて、認証後の備置きの義務が法律で定められていて、日本公証人連合会は、違反者に対して100万円以下の過料の制裁が科されると注意しています。定款が手元に無い状態を放置しないという点では、株式会社よりも意識しておく必要があります。

自分の会社がどれにあたるかは、登記事項証明書の冒頭を見れば分かります。まずそこを確認してから電話をかけてください。

公証役場に行く前に、探す場所が4つある

手数料を払って取り寄せる前に、社内と社外の心当たりを一通り確認してください。実務では、ここで見つかることが少なくありません。

1つ目は、設立を手伝った専門家の手元です。司法書士や行政書士に設立登記を頼んだ場合、事務所側が定款の控えを保管していることがよくあります。税理士に顧問を頼んでいるなら、顧問契約を始めたときに定款の写しを渡している可能性が高いので、そちらにも当たってください。数年で担当者が変わっていても、事務所としてのファイルは残っていることがあります。

2つ目は、金融機関です。法人口座を開くとき、多くの銀行が定款の写しを提出させます。融資を受けたことがあるなら、そのときの提出書類一式に含まれています。銀行は自社の控えを外部に渡す義務はありませんが、どの書類を出したかを教えてもらえれば、どの版の定款が存在していたのかの手がかりになります。

3つ目は、許認可の申請先です。建設業、古物商、旅行業、人材派遣、介護など、許認可が要る事業では申請書類に定款の写しを添えています。役所の担当部署に問い合わせると、控えの閲覧や写しの交付に応じてくれる場合があります。対応は役所ごとに違うので、まず電話で確認してください。

4つ目は、設立を依頼した会社設立サービスです。電子定款で設立した場合、認証済みのPDFをサービス側が保管していることがあります。アカウントにログインすればダウンロードできるケースもあるので、当時使ったサービス名を思い出せるなら真っ先に見てください。

ここまでで出てこなければ、公的な窓口へ進みます。

公証役場から謄本を取る

株式会社を作ったのであれば、定款は公証人の認証を受けています。認証のとき、定款の原本は2通提出され、うち1通が役場保存用原本として公証人の手元に残ります。この保存されている原本の謄本を請求するのが、いちばん確実な回収方法です。

請求できる人と、行く先の公証役場

日本公証人連合会は、請求できる人と方法を次のように案内しています。

嘱託人、その承継人又は利害関係人は、定款認証をした公証役場(多くは本店所在地の公証役場になると思われます。)で保存する定款及びその付属書類の謄本の請求をし、又はその閲覧を請求することができます。(公証人法62条ノ5、60条ノ4、51条ないし56条)。なお、手数料は、謄本については1枚につき250円、閲覧は1回200円になります。 出典: koshonin.gr.jp

嘱託人というのは、認証を頼んだ人のことです。設立時の発起人がこれにあたります。承継人は相続などでその地位を引き継いだ人、利害関係人はその定款について正当な関心を持つ立場の人を指します。会社の代表者として請求する場合は、代表者であることが分かる登記事項証明書と、本人確認資料、会社の実印と印鑑証明書をそろえて行くのが基本です。必要書類は役場ごとに運用が違うので、行く前に電話で確認してください。

行き先は、認証を受けた公証役場です。定款の認証は、会社の本店の所在地を管轄する法務局または地方法務局に所属する公証人しかできない決まりになっています(公証人法第62条ノ2)。したがって、設立当時の本店所在地がある都道府県内の公証役場を当たることになります。設立後に他県へ本店を移している会社は、今の住所ではなく設立当時の住所で探してください。どの役場だったか記憶にない場合は、当時の都道府県内の公証役場に順に問い合わせれば、保存の有無を調べてもらえます。

手数料は謄本1枚250円、閲覧は1回200円です。定款はおおむね8枚前後に収まることが多いので、謄本1通で2,000円程度が目安になります。中身を確認したいだけなら閲覧のほうが安く済みますが、銀行や役所に提出するなら謄本を取ってください。

取れるのは設立から20年以内

保存には期限があります。公証人法施行規則第70条第1項は、公証人が保存すべき情報や書類の期間を定めていて、公正証書や公証人の保存する私署証書または定款は20年と規定されています。

設立から20年以内なら、公証役場に原本が残っている前提で動けます。20年を過ぎている場合は廃棄されている可能性が高く、ここでの回収はあきらめることになります。ただし、期間の数え方や実際の保存状況は役場の運用で差があるため、20年を少し超えている程度なら、まず問い合わせてみる価値はあります。

電話で先に確認しておく3つのこと

公証役場は予約制で動いているところが多く、書類が足りないと出直しになります。行く前の電話で、次の3点を聞いておいてください。

1つ目は、保存の有無です。設立した年月と当時の商号、当時の本店所在地を伝えれば、その役場で認証したかどうかを調べてもらえます。商号を変更している会社は、必ず設立当時の商号を伝えてください。

2つ目は、当日持っていくものです。代表者本人が行く場合、会社の登記事項証明書、代表者の本人確認資料、会社の実印と印鑑証明書を求められるのが一般的です。代理人が行く場合は委任状が追加で要ります。印鑑証明書に発行から3か月以内といった期限を設けている役場もあるので、日付の条件まで確認しておきましょう。

3つ目は、何枚になるかと手数料の合計です。定款の枚数が分かれば、250円をかけた金額が計算できます。現金しか扱っていない役場もあるので、支払い方法もあわせて聞いておくと安心です。

電子定款で作った会社の場合

設立時に電子定款を使った会社は、請求する手続きの名前が変わります。紙の謄本ではなく、同一の情報の提供という手続きを使います。

日本公証人連合会は、認証した電子文書は20年間、電子確定日付に関するデータは50年間保存するとしたうえで、請求により、保存された電子文書と同一である旨の書面の交付による証明書の発行を受けられると案内しています。あわせて、内容が改ざんされていないことの証明である情報の同一性に関する証明も受けられます。

手数料は、同一の情報の提供が700円で、書面による交付の場合は1枚につき20円が加算されます。情報の同一性に関する証明も700円です。紙の謄本より安く済むのは、電子で作った会社の小さな利点だといえます。

自分の会社が電子定款だったかどうかを覚えていない場合は、設立時の費用の記録を見てください。紙の定款で株式会社を作ると、設立時に作成する定款の原本に収入印紙4万円を貼ることになります。これは印紙税法上の第6号文書にあたるためで、国税庁の印紙税額の一覧表にも、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社または相互会社の設立のときに作成される定款の原本について4万円と明記されています。設立費用の明細に4万円の印紙代が載っていなければ、電子定款だった可能性が高いということです。

もう1つの見分け方が、手元に残っている書類の形です。電子で認証を受けた会社には、申告受理および認証証明書という書面が交付されています。これがファイルに綴じてあるなら、電子定款です。

注意したいのは、受け取る形です。日本公証人連合会は、法務局に認証済みの定款を提出して会社登記をする場合は電子文書の形で受け付けてもらえるとしたうえで、近時は銀行等の金融機関では紙ベースの定款を求める運用もなされているとして、謄本を請求する場合は必ず書面で交付を受けるよう促しています。銀行に出す目的で取り直すなら、データではなく書面でもらってください。

法務局で設立登記の申請書類を見る

公証役場で取れない場合の次の一手が、法務局です。設立登記を申請したときの書類一式は登記簿の附属書類として登記所に保管されていて、そこには認証を受けた定款の謄本も綴じられています。

商業登記法第11条の2は、登記簿の附属書類の閲覧について利害関係を有する者は、手数料を納付してその閲覧を請求できると定めています。会社の代表者本人であれば、利害関係の説明に困ることはまずありません。手数料は、登記手数料令第5条第1項により、1登記用紙または1事件に関する書類につき500円です。

ここで重要なのが保存期間です。商業登記規則第34条第4項は、申請書その他の附属書類の保存期間を受付の日から10年間と定めています。設立から10年以内であれば、設立登記を申請した法務局に残っている可能性が高いということです。ウェブ上には保存期間を5年と書いた解説も残っていますが、現在の規定は10年です。年数の判断を古い情報で誤ると、行けるはずの窓口をあきらめることになるので、法務局に電話して受付の日から数えた年数を伝え、残っているかを確認してください。

もう1つの制約が、閲覧であって交付ではない点です。窓口で内容を見ることはできますが、写しを証明書として発行してもらえるわけではありません。実務では、閲覧しながら書き写すか、法務局の運用に従って内容を控える形になります。定款の中身さえ分かれば、そこから現行の定款を作り直せるので、内容の確認という目的には十分に足ります。

合同会社は公証役場に定款が無い

ここは誤解が多いところです。持分会社、つまり合名会社、合資会社、合同会社の定款には、公証人の認証が要りません。日本公証人連合会は、持分会社の定款が認証を必要とせず株式会社の定款が必要としているのは、経営と責任が分離されて不特定多数の者がかかわる設計となっている株式会社について、設立後の紛争予防や不正防止の必要性が特に高いためだと説明しています。

つまり合同会社の場合、公証役場には最初から定款が存在しません。株式会社のつもりで公証役場に問い合わせても、保存記録が無いという答えが返ってきます。

合同会社が定款をなくしたときに残る道は2つです。1つは、設立登記のときに法務局へ提出した書類の閲覧です。持分会社の設立登記でも定款は添付書面になるので、受付の日から10年以内であれば登記所に残っています。もう1つは、社内と関係者の控えです。設立を代行サービスに頼んでいるなら、そこにPDFが残っている見込みがあります。

合同会社は費用の安さで選ばれることが多く、書類まわりを自力で進めた会社ほど控えの分散が起きやすい傾向があります。認証が無いぶん、保管の責任はまるごと会社側にあると考えておいてください。

どこにも残っていなければ作り直す

探し尽くしてもどこにも無い場合は、作り直します。ここでよく聞かれるのが、作り直した定款にもう一度公証人の認証が要るのかという点です。

答えは、要りません。公証人の認証が必要なのは設立当初の定款だけで、その後に定款を変更するときは認証が必要ないと日本公証人連合会も明記しています。会社がすでに成立している以上、いま作るのは設立のための定款ではなく、現行の定款を紙に起こし直す作業です。

作り直しの手順は次のようになります。

まず、登記事項証明書を取ります。ここから、商号、本店の所在地、目的、公告の方法、発行可能株式総数、機関の設計、役員、資本金の額といった項目が拾えます。登記されている事項は定款に書いてある内容と整合していなければならないので、骨組みはこれでかなり復元できます。

次に、株主総会議事録をさかのぼります。設立後に定款を変えていれば、そのつど株主総会の特別決議を経ているはずです。議事録が残っていれば、変更の履歴と変更後の条文がたどれます。議事録も見当たらない場合は、登記の履歴事項証明書で変更の時期を確認し、その時期に何を変えたかを整理します。

そのうえで、登記に現れない事項を埋めます。事業年度、株主総会の招集手続、議決権の代理行使、取締役の任期、株式の譲渡制限の承認機関といった項目は、登記事項から直接は読み取れないものが混じります。ここは記憶と当時の資料で補うしかありません。

最後に、作り直した定款を株主総会で承認し、その議事録とセットで保管します。表紙に「原本に相違ない」旨と作成日を記し、代表者が記名押印しておくと、提出先に説明しやすくなります。会社の実態と食い違う条文を作ってしまうと後々の登記や許認可で矛盾が出るので、内容に迷う部分が残るなら、司法書士や税理士に見てもらってください。税務や法務の個別の判断は、金額や事情によって扱いが変わります。

作り直した定款を、提出先に受け入れてもらうために

作り直した定款を銀行や役所に出すとき、相手が気にするのは「これは本当に今のこの会社の決まりなのか」という一点です。ここを不安にさせない作りにしておくと、やり取りが一度で終わります。

まず、表紙に会社名、作成日、そして原本に相違ない旨を記し、代表者が記名押印します。次に、末尾の附則に、いつ設立され、その後いつどの条文を変更したのかという沿革を書き添えます。登記の履歴事項証明書と突き合わせて矛盾が出ないようにしておくと、相手が自分で照合できます。

あわせて、作り直しを承認した株主総会の議事録を添えます。定款そのものは会社が作る内部文書なので、それを会社の意思として確定させた記録が付いていると、説得力が違います。合同会社なら、総社員の同意書がこれにあたります。

提出先によっては、作り直した定款では受け付けないと言われることがあります。そのときは、どの書類であれば代わりになるのかを具体的に聞いてください。登記事項証明書と履歴事項証明書の組み合わせで足りる場合もあれば、法務局で附属書類を閲覧して控えた内容の提出で通る場合もあります。無理に押し通すより、相手の確認したい事項を先に聞き出すほうが早く終わります。

設立から20年を過ぎている会社の現実的な手

設立が20年以上前で、公証役場にも法務局にも残っていないという会社は珍しくありません。この場合、公的な窓口からの回収は事実上できないと考えて、復元に切り替えます。

法務局側の期間も先に確認しておきましょう。申請書その他の附属書類は受付の日から10年間の保存なので、20年前の設立登記の書類はすでに残っていません。公証役場と法務局の期間の違いを押さえておくと、どちらに電話すべきかの判断が早くなります。設立から10年以内なら両方、10年を超え20年以内なら公証役場だけ、20年を超えていればどちらも期待できない、という整理です。

古い会社ほど有利な材料もあります。長く続いている会社は、税務申告の書類、決算書の一式、金融機関に出した資料、許認可の更新書類など、定款の写しが添付された書類の山を持っていることが多いからです。倉庫に眠っている段ボールを1つずつ確認するのは骨が折れますが、20年前の1通が出てくれば、そこからの復元は格段に楽になります。

顧問税理士が代替わりしている場合は、前任の事務所に引き継ぎ資料が残っていないかを聞いてみる価値があります。会社の設立を手伝った司法書士が廃業していても、事務所を引き継いだ先が書類を保管しているケースがあります。

なくしたまま放置すると何が起きるか

定款が手元に無い状態そのものが、すぐに罰則につながるわけではありません。ただし、会社法第31条第1項は、株式会社は定款を本店と支店に備え置かなければならないと定めています。株主と債権者は、営業時間内であればいつでも閲覧や謄本の交付を請求できます。

そして会社法第976条第8号は、第31条第1項の規定に違反した場合を100万円以下の過料に処すべき行為として挙げています。備え置く義務は形式的なものではないということです。

実務で先に困るのは、罰則よりも日々の手続きのほうです。法人口座の新規開設、融資の申し込み、許認可の申請と更新、補助金や助成金の申請、事業譲渡や資本提携の交渉、取引先の与信審査。いずれの場面でも定款の写しを求められます。求められてから探し始めると、公証役場への問い合わせだけで数日を使い、締切に間に合わなくなります。

もう1つ、見落とされやすい影響があります。定款が出てこないという状態は、社内の書類管理がその程度だという信号として相手に伝わります。金融機関の担当者も、許認可の窓口も、そこを見ています。書類が1通出てこなかったせいで審査の目線が厳しくなるのは、割に合いません。

必要になる前に取り戻しておく。これが定款まわりで唯一の正解です。

二度と同じことを起こさない置き方

取り戻せたら、次は保管の設計です。ポイントは、置き場所を分散させつつ、どこに何があるかを1枚にまとめておくことです。

紙の原本は、会社の実印や印鑑カードと同じ場所にまとめて保管します。そのうえでスキャンしてPDFにし、クラウドストレージに保存します。クラウド1か所だけに置くのは避けて、外付けの記録媒体にもコピーを残してください。

定款を変更したときは、変更後の全文をその時点で作り直し、日付を入れて保存します。変更箇所だけを議事録に残して本体を更新しないでいると、何年か経ったときに現行の条文が誰にも分からなくなります。実際、定款が見つからない会社より、見つかったけれど何年も前の版で今の実態と合っていない会社のほうが多いくらいです。

保管している場所を1枚のメモにまとめておくことも効きます。紙の原本がどこにあるか、スキャンしたPDFがどのフォルダにあるか、設立を頼んだ事務所の名前と連絡先はどこか。この3行を会社の重要書類のファイルの先頭に挟んでおくだけで、担当者が変わっても探せるようになります。役員が交代したり、経理の担当が代わったりするタイミングで書類が行方不明になるのが、いちばんよくある失い方です。

株式会社であれば、電子定款で設立していると会社法第31条第4項の扱いが使えます。定款が電磁的記録で作られていて、支店でもデータの閲覧や提供の請求に応じられる措置をとっている会社は、備え置く場所を本店だけにできます。支店を増やす予定がある会社ほど、電子で持っておく意味があります。

書類の整い方が、取引の速さを決める

フリーランスと在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、書類を探す時間の差は、規模の大小よりも仕組みの有無から生まれています。定款が出てこない会社は、たいてい契約書や請求書の控えも同じように散らばっています。逆に、設立時の書類が1か所にまとまっている会社は、取引先から何を求められても翌日には返してきます。

運営者として見てきた限りでは、この差はそのまま受注の差に出ます。発注する側は、書類のやり取りで止まる相手を無意識に避けるようになります。与信の確認に2週間かかる相手より、3日で終わる相手に次の仕事を出すからです。これは大企業に限った話ではなく、個人に発注する場面でも同じことが起きています。契約から着手までが速い人に、案件が集まっていきます。

お金の流れという点でも、同じ構造があります。仲介が何層にもなっている仕組みでは、依頼者が払った金額と受け手に届く金額の間に差が生まれます。中間マージンが乗らない直接取引であれば、同じ予算で依頼者はより多くを頼めますし、受け手の手取りは厚くなります。手数料0%の仕組みが効くのは、単価を吊り上げるからではなく、この目減りをなくすからです。

法人としての書類が整うと、受けられる仕事の幅も変わります。企業の生成AI導入を支援するAIコンサル・業務活用支援のお仕事や、守備範囲の広いAI・マーケティング・セキュリティのお仕事は、発注側の稟議を通す必要があるため、法人としての体裁が整っているほど話が早く進みます。開発工程に長く関わるアプリケーション開発のお仕事も、契約の締結が遅れるほど関与できる範囲が狭くなります。

値付けの判断材料として、職種ごとの相場を見ておくのも有効です。ソフトウェア作成者の年収・単価相場や著述家,記者,編集者の年収・単価相場を見ると、同じ制作の仕事でも領域によって単価の分布が違うことが分かります。法人化した後は固定費が増えるので、どの分布で戦うかを先に決めておくと、資金計画がぶれません。

書類の質そのものを底上げしたいなら、ビジネス文書検定で体裁の基本を押さえておくと、経理部門での確認が早く通るようになります。ネットワーク寄りの提案を扱う人にはCCNA(シスコ技術者認定)が技術面の裏づけになります。取引が大きくなるほど、支払いが止まったときの痛手も大きくなるので、回収の段取りを先に知っておくことにも意味があります。未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】とフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストは、その土台になります。会計まわりまで仕事の幅を広げたい人には会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】も参考になります。

定款をなくすというのは、たいていの会社で一度は起きる出来事です。慌てずに、会社の種類と経過年数を確認して、公証役場か法務局か社内かを順に当たってください。取れる可能性は、思っているより高く残っています。

よくある質問

Q. 定款をなくしたら法務局で再発行してもらえますか?

再発行という制度はありません。法務局は登記した内容を管理していますが、定款を証明書として交付する窓口を持っていないためです。ただし設立登記の申請書類は登記簿の附属書類として保管されていて、利害関係のある人は手数料500円で閲覧を請求できます。保存期間は受付の日から10年間なので、設立から10年以内なら内容を確認できます。

Q. 公証役場で定款の謄本を取るといくらかかりますか?

謄本は1枚につき250円です。定款はおおむね8枚前後に収まることが多いので、1通で2,000円程度が目安になります。中身を見るだけなら閲覧が1回200円です。電子定款で設立した会社は同一の情報の提供という手続きになり、手数料は700円、書面で交付を受ける場合は1枚につき20円が加算されます。

Q. 設立から何年たつと公証役場で取れなくなりますか?

公証人法施行規則第70条第1項により、公証人が保存する定款の保存期間は20年です。設立から20年を超えていると廃棄されている可能性が高く、回収は難しくなります。数え方や実際の保存状況は役場ごとの運用で差が出ることがあるため、20年を少し過ぎている程度なら、あきらめる前に問い合わせてみてください。

Q. 定款を作り直したら、もう一度公証人の認証が必要ですか?

必要ありません。公証人の認証が要るのは設立当初の定款だけで、設立後に定款を変更するときは認証が不要とされています。作り直す場合は、登記事項証明書と株主総会議事録から現行の内容を復元し、株主総会で承認して議事録とあわせて保管します。内容に迷う条文が残るときは司法書士や税理士に確認してください。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年5月18日最終更新:2026年9月19日
丸山 桃子

この記事を書いた人

丸山 桃子@SOHO編集部

アパレルEC運営支援・SNSコンサル

アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。

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