就任承諾書とは何か|役員になる人が出す書類とひな形


この記事のポイント
- ✓役員に選ばれた本人が引き受けると意思表示する書類です
- ✓印鑑証明書と本人確認証明書の違い
- ✓省略できる場合までを整理します
会社を作るとき、あるいは役員を交代させるときに、法務局から「就任承諾書を付けてください」と言われて初めてこの言葉を知る人がほとんどです。就任承諾書とは、役員に選ばれた本人が「引き受けます」と意思表示したことを書面にしたものです。難しい書類ではありませんが、日付の書き方、押す印鑑、添える証明書のところで差し戻される例が多く、一度で通らないと登記そのものが遅れます。この記事では、就任承諾書がなぜ必要なのか、どの役職で要るのか、何を書いてどの印鑑を押すのかを、法令の条文を確認しながら順番に整理します。
選ばれただけでは役員にならない
まず、なぜこの書類が要るのかという話からです。
会社法は、株式会社と役員および会計監査人との関係は委任に関する規定に従うと定めています。委任とは、ある人が誰かに仕事を頼み、相手がそれを引き受けることで成立する契約です。ここで大事なのは、契約である以上、頼む側の申し込みと、引き受ける側の承諾の両方がそろって初めて成立するという点です。
株主総会で「Aさんを取締役に選任する」と決議するのは、会社からAさんへの申し込みにあたります。Aさんが「引き受けます」と返事をして、初めて取締役になる。決議だけでは役員になりません。本人が知らないうちに名前を使われて役員にされる、という事態を防ぐ仕組みでもあります。
この承諾があったことを、登記の場面で証明するための書類が就任承諾書です。商業登記法は次のように定めています。
取締役、監査役、代表取締役又は特別取締役(中略)の就任による変更の登記の申請書には、就任を承諾したことを証する書面を添付しなければならない。 出典: laws.e-gov.go.jp
読みどころは「就任を承諾したことを証する書面」という表現です。「就任承諾書」という決まった名前の書類が指定されているわけではありません。承諾があったことが分かる書面であればよい、という書き方になっています。だから実務では、定型のひな形を使う会社もあれば、株主総会議事録の記載でまかなう会社もあります。
なお、この承諾は法律上は口頭でも成立します。就任承諾書は、承諾したという事実を登記の場面で証明するために作るものだと理解しておくと、後で出てくる細かい決まりの意味が分かりやすくなります。
どの役職で必要になるのか
就任承諾書が必要になる役職を整理します。
| 役職 | 就任承諾書 | 補足 |
|---|---|---|
| 取締役 | 必要 | 設立時取締役を含む |
| 代表取締役 | 必要 | 取締役としての承諾とは別に、代表取締役としての承諾も要る |
| 監査役 | 必要 | 設立時監査役を含む |
| 特別取締役 | 必要 | 商業登記法に明記されている |
| 執行役、代表執行役 | 必要 | 指名委員会等設置会社の場合 |
| 会計参与 | 必要 | 法人の場合は登記事項証明書などの添付も要る |
| 会計監査人 | 必要 | 法人の場合は同上 |
| 合同会社の代表社員 | 必要 | 業務執行社員のなかから選定した場合 |
注意したいのが代表取締役です。取締役として選任されたときの承諾と、そのなかから代表取締役に選ばれたときの承諾は、別の意思表示です。両方を一枚にまとめて書くこともできますが、その場合は「取締役および代表取締役への就任を承諾します」と両方を明記してください。取締役への就任だけを書いた承諾書で代表取締役の登記を申請すると、補正の対象になります。
会計参与や会計監査人が税理士法人や監査法人といった法人である場合は、就任承諾書に加えて、その法人の登記事項証明書や、資格を有することを証明する書面が必要になります。ただし、同じ法務局の管轄内に主たる事務所がある場合は登記事項証明書を省略できる扱いがあります。
合同会社の場合は、業務執行社員のなかから代表社員を定めたときに、その人の就任承諾書を求められます。業務執行社員そのものは定款で定まるため、定款の変更に総社員が同意していれば、別途の承諾書を求められないことが一般的です。運用に幅があるので、申請前に管轄の法務局へ確認してください。
何を書くか、ひな形の見本
就任承諾書に書く項目は多くありません。次の五つです。
第一に、表題。「就任承諾書」と書きます。第二に、承諾の意思。どの会社のどの役職に就くことを承諾するのかを明記します。第三に、承諾した日付。第四に、本人の住所と氏名。第五に、押印です。
宛先として会社名を書く形式と、書かない形式の両方が使われています。どちらでも受理されますが、書いておくほうが書類として自然です。
見本を示します。記号の部分は実際の内容に置き換えてください。
就任承諾書
私は、令和〇年〇月〇日開催の貴社株主総会において
取締役に選任されましたので、その就任を承諾します。
令和〇年〇月〇日
住所 〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1号
氏名 〇〇〇〇 印
株式会社〇〇〇〇 御中
代表取締役を兼ねる場合は、本文を次のようにします。
私は、令和〇年〇月〇日開催の貴社株主総会において取締役に選任され、
同日開催の取締役会において代表取締役に選定されましたので、
取締役および代表取締役への就任をいずれも承諾します。
会社を新しく作るときは、株主総会ではなく発起人が役員を決めるので、文面が変わります。「令和〇年〇月〇日、貴社の設立時取締役に選任されましたので、その就任を承諾します」という形にし、会社名は設立予定の商号を書きます。
書式そのものに法律上の決まりはありません。手書きでもワープロでもかまいませんし、縦書きでも横書きでも受理されます。用紙のサイズも自由ですが、他の登記書類とそろえてA4にしておくと綴じやすくなります。
日付でつまずく人が多い
就任承諾書でもっとも間違いが多いのが日付です。
原則は、実際に承諾した日を書きます。株主総会の席で本人が承諾したなら、総会の日です。後日連絡を受けて承諾したなら、その日です。
ここで問題になるのが、選任の決議より前の日付を書いてしまうケースです。まだ選ばれていない時点で就任を承諾することはできないので、承諾日が選任日より前になっている書類は矛盾しています。実務では補正を求められます。書類をまとめて作るときに、うっかり全部同じ古い日付にしてしまう事故が起きやすいので気をつけてください。
逆に、選任日よりかなり後の日付でも問題はありません。ただし、その場合は就任の効力が発生した日も承諾の日になるため、登記すべき事項の「就任年月日」がその日になります。株主総会の日を就任日として登記したいなら、承諾も同じ日にしておく必要があります。
もう一つ、就任の日を将来の日付に指定する形もあります。「令和〇年〇月〇日付けで就任することを承諾します」と書き、その日から役員になる形です。前任者の任期満了と合わせるときなどに使われます。この場合は、登記の期限がその将来の日から2週間で進み始めます。
日付を空欄のまま提出することはできません。空欄の書類を法務局に出すと受理されないだけでなく、あとから誰かが書き込める状態の書類を会社に残すことになります。
押す印鑑は、会社の形と役職で変わる
「実印と認印のどちらを押すのか」という質問がもっとも多い部分です。答えは、その会社が取締役会を置いているかどうか、そして何の登記かによって変わります。
商業登記規則は、設立の登記の申請書には、設立時取締役が就任を承諾したことを証する書面に押印した印鑑について、市区町村長が作成した証明書、つまり印鑑証明書を添付しなければならないと定めています。取締役の就任による変更の登記も同じ扱いです。ここで言う「押印した印鑑」の証明書が付けられるのは実印だけなので、実質的に実印を押すことになります。
ただし、取締役会を置いている会社では読み替えが入ります。この規定の「設立時取締役」は「設立時代表取締役または設立時代表執行役」に、「取締役」は「代表取締役または代表執行役」に読み替えられます。つまり、取締役会設置会社では、平取締役の就任承諾書に実印と印鑑証明書は要らず、代表取締役のものだけが必要になります。
整理すると次のとおりです。
| 会社の形 | 取締役の就任承諾書 | 代表取締役の就任承諾書 |
|---|---|---|
| 取締役会を置いていない会社 | 実印を押し、印鑑証明書を添付 | 同左(兼ねる場合は一枚でよい) |
| 取締役会を置いている会社 | 認印でよい。かわりに本人確認証明書が必要 | 実印を押し、印鑑証明書を添付 |
代表取締役の就任登記では、選定の手続を証明する書類の印鑑についても証明書が求められます。株主総会で代表取締役を定めた場合は議長と出席取締役が議事録に押した印鑑、取締役の互選で定めた場合は互選書に押した印鑑、取締役会で選定した場合は出席取締役と監査役が議事録に押した印鑑です。ただし、その印鑑が、変更前の代表取締役が法務局に提出している印鑑と同じであるときは、証明書の添付が不要になります。前の代表者が続けて在任していて自分の実印で押しているなら、そこは省けるということです。
再任の場合は扱いが軽くなります。規則の文言が「就任(再任を除く)」となっているため、任期満了で同じ人が続けて選ばれたときは、印鑑証明書の添付が不要です。毎年または隔年で役員を選び直している会社にとっては、この違いが手間の差になります。
印鑑証明書がいらない場合に出す本人確認証明書
取締役会を置いている会社の平取締役のように、印鑑証明書を付けない場合でも、何も出さなくてよいわけではありません。かわりに本人確認証明書が必要です。
商業登記規則は、設立の登記または取締役、監査役、執行役の就任(再任を除く)による変更の登記の申請書には、就任承諾書に記載したその人の氏名および住所と同一の氏名および住所が記載されている、市区町村長その他の公務員が職務上作成した証明書を添付しなければならないと定めています。ただし、印鑑証明書を添付する場合は不要です。
具体的に使えるのは、住民票の写し、戸籍の附票、住民基本台帳カードの写し、運転免許証の写しなどです。運転免許証や個人番号カードのようにコピーで足りるものは、本人が原本と相違ない旨を記載して記名押印した写しを添えます。
ここで決定的に重要なのが、就任承諾書に書いた氏名と住所が、この証明書の記載と一字一句同じでなければならないという点です。条文に「同一の氏名及び住所が記載されている」と明記されています。住民票が「〇〇県〇〇市〇〇一丁目1番1号」なら、就任承諾書にも同じ表記で書きます。「一丁目1-1」のように省略すると、同一でないと判断されて補正になります。
見落としやすいのが、引っ越し直後のケースです。運転免許証の裏面に新住所が記載されている場合は、表と裏の両面をコピーしてください。また、マンション名や部屋番号が住民票に載っている場合は、それも含めて書きます。
健康保険証は、記載されている住所が手書きであったり、そもそも住所欄がなかったりするため、本人確認証明書としては使えないと案内されることがあります。どの書類が使えるかは管轄の法務局で確認するのが確実です。申請書の書式や添付書面の案内は法務局のサイトにまとまっています。
就任承諾書を別に作らなくてよい場合
実務では、就任承諾書を独立した書類として作らずに済ませる方法があります。
株主総会に本人が出席していて、その席で就任を承諾した場合、その旨を議事録に記載しておけば、議事録の記載をもって承諾を証する書面とする取扱いが認められることがあります。議事録に「被選任者は席上就任を承諾した」と書いておき、申請書の添付書面欄に「就任承諾書は株主総会議事録の記載を援用する」と記す形です。
ただしこの方法には条件があります。本人が実際にその場にいたことが議事録から読み取れること。そして、印鑑証明書や本人確認証明書が必要な役職では、それらは別途添付しなければならないことです。承諾書を省いても、証明書は省けません。
また、この援用が認められるかどうかは登記所の運用に幅があります。特に設立時や代表取締役の就任では、独立した承諾書を求められることが多いので、確実に進めたいなら素直に一枚作るほうが早いです。書類の枚数を減らす価値より、補正で往復する手間のほうが大きくなります。
取締役の就任を辞退したい場合についても触れておきます。選任決議がされても、本人が承諾しなければ役員にはなりません。承諾しない意思は書面にしておくのが安全です。会社の側は、承諾が得られなかった以上、その人を役員として登記できません。
監査役や会計参与のときに追加で要るもの
取締役以外の役職では、必要な添付書類の組み合わせが変わります。
監査役の場合、就任承諾書は必要ですが、印鑑証明書は求められません。印鑑証明書の添付を定めた規定が対象にしているのは取締役と代表取締役だからです。そのかわり、就任(再任を除く)による変更の登記では本人確認証明書が必要になります。つまり監査役は、会社の形にかかわらず、認印の承諾書に住民票の写しなどを添える組み合わせになります。取締役会を置いていない会社では取締役が実印、監査役が認印という形になり、同じ総会で選ばれた二人で扱いが違うため混乱しやすいところです。
会計参与と会計監査人は、資格が要る役職なので書類が一つ増えます。就任承諾書に加えて、その人が資格を持っていることを証明する書面が必要です。税理士や公認会計士といった個人であれば所属する会に発行してもらう証明書、税理士法人や監査法人といった法人であれば、その法人の登記事項証明書を添えます。ただし、申請する法務局の管轄区域内にその法人の主たる事務所がある場合は、登記事項証明書を省略できます。
執行役と代表執行役は、指名委員会等設置会社だけに置かれる役職です。就任承諾書が必要で、代表執行役には代表取締役と同じように印鑑証明書の扱いが及びます。中小の会社でこの形を取ることはまれですが、上場を視野に入れて機関設計を変える段階で出てきます。
合同会社の代表社員については、業務執行社員のなかから選ぶ形になるため、選定の手続を証明する書面と就任承諾書を組み合わせます。就任承諾書に押した印鑑について、市区町村長の作成した証明書を求められる場合があります。株式会社と運用が違う部分があるので、申請前に管轄の法務局へ確認するのが確実です。
海外に住んでいる人が役員になるとき
日本に住所がない人を役員に迎える場面もあります。会社法には取締役が日本に住所を持たなければならないという定めはありません。ただし、書類の作り方は国内居住の場合と変わります。代表取締役の住所の扱いについては登記実務の運用が関わるため、進める前に管轄の法務局に確認してください。
問題になるのは印鑑です。印鑑登録の制度は日本独自のもので、海外に住んでいる人は日本の市区町村で印鑑証明書を取れません。そこで、印鑑証明書のかわりに署名証明を使います。本人が領事館などの窓口で担当官の面前で署名し、その署名が本人のものであることを証明してもらう書類です。日本の在外公館、または居住している国の公証人や官憲が作成したものを用います。
署名証明を使う場合、就任承諾書には印鑑を押すのではなく本人が署名します。署名証明に記載された署名と、就任承諾書の署名が同じであることが確認できる状態にしてください。証明書が外国語で作られている場合は、日本語の訳文を添えるのが通常です。
住所の書き方も注意が要ります。本人確認証明書としてパスポートの写しなどを使う場合、そこに記載された住所表記と就任承諾書の記載をそろえます。外国の住所を日本語に訳すか、アルファベットのまま書くかで迷いますが、添える証明書の表記に合わせるのが基本です。
取得に時間がかかるのがこの経路の難点です。在外公館の予約が必要だったり、郵送に日数がかかったりします。登記の期限は就任から2週間で進むので、役員を迎えると決まった時点で書類の手配を始めてください。
承諾書を出したあとの流れ
就任承諾書がそろったら、登記の申請に進みます。ここも期限と費用を押さえておきましょう。
期限は、変更が生じてから2週間以内に本店の所在地で申請することと会社法に定められています。起算点は書類を作った日ではなく、就任の効力が生じた日です。将来の日付を指定して就任する形にしたなら、その日から数えます。
期限を過ぎても申請は受け付けてもらえますが、登記を怠ったこととして100万円以下の過料の対象になると定められています。過料は会社ではなく代表取締役などの個人が支払うもので、裁判所から通知が届きます。
費用の中心は登録免許税です。国税庁の税額表によれば、取締役や代表取締役、監査役などに関する事項の変更の登記は申請1件につき3万円、資本金の額が1億円以下の会社については1万円です。中小の会社であればほとんどが1万円になります。詳細は登録免許税の税額表で確認できます。
住民票の写しを取得する手数料は自治体によって違いますが、数百円程度です。印鑑証明書も同程度です。司法書士に依頼する場合の報酬は別途かかります。
申請書に添える書類の一式と、綴じる順番
就任承諾書は単独で出す書類ではありません。申請書に添える束の1枚です。何と一緒に出すのかを知らないまま承諾書だけを完璧にしても、窓口で止まります。
法務局が公開している記載例のうち、辞任などで新しい取締役が就任した場合のものを見ると、添付書類の欄にはこう並んでいます。
・辞任の場合は辞任届。死亡の場合は死亡届または法定相続情報一覧図の写し ・臨時株主総会議事録 1通 ・株主の氏名または名称、住所および議決権数等を証する書面(株主リスト) 1通 ・就任承諾書 ・印鑑証明書 ・本人確認証明書(印鑑証明書を添付しない場合) ・委任状(代理人に申請を委任した場合のみ)
いちばん忘れられているのが株主リストです。議事録と同じものだと思っている人が多いのですが、別の書類です。法務省の案内では、議決権の数が上位10名の株主か、議決権の割合が3分の2に達するまでの株主か、少ないほうについて、氏名または名称、住所、株式数、議決権数、議決権数の割合の5点を書き、代表者が証明する形とされています。書式例と記載例が無料で配布されているので、自社の株主が2人3人なら10分で作れます。詳しくは法務省の株主リストのページにまとまっています。
辞任届の印鑑にも決まりがあります。登記所に印鑑を届け出ている取締役が辞任する場合は、辞任届に登記所に届け出た印鑑か、市区町村に登録した印鑑を押します。登記所に届け出た印鑑を押したなら、印鑑証明書は要りません。市区町村に登録した印鑑を押した場合は、その印鑑証明書を添えます。
代表取締役が入れ替わって、新しい代表者が会社の印鑑を届け出るのであれば、印鑑届書も一緒に出します。これを忘れると、登記は終わっても印鑑証明書が取れない状態になり、銀行の手続きが止まります。
綴じる順番は、記載例の並びに合わせておくのが無難です。申請書、収入印紙貼付台紙、そのあとに添付書類を並べて、左側をとじます。収入印紙に自分で消印を押さないでください。消印は法務局の職員が行います。
なお、辞任と就任の登記は合わせて1件として申請できると記載例に注記があります。同じ日に役員を入れ替えるなら、登録免許税は1件分で済みます。
就任が決まってから登記が終わるまでを日付順に並べる
2週間という期限は、順番を決めておけば足ります。日付で並べます。
0日目は、就任の効力が生じた日です。株主総会の日に本人がその場で承諾したなら、そこが起点で、14日後が期限になります。
同じ0日目のうちに、議事録を作り、その場で就任承諾書に署名と押印をもらってしまうのが最も早い進め方です。本人が席にいる時間は、この日しかありません。後日に回すと、連絡の往復だけで数日が消えます。
1日目から3日目で、印鑑証明書か本人確認証明書を手配します。ここは本人が動く工程なので、依頼のひと言が遅れると日数がそのまま溶けます。取締役会を置いていない会社の新任取締役なら印鑑証明書、取締役会を置いている会社の平取締役なら本人確認証明書です。どちらが必要かを0日目に伝えてください。
3日目から5日目で、株主リストを作ります。議決権の数は株主名簿から拾います。名簿が古いままだとここで止まるので、名簿の更新は先に済ませておきます。
5日目から8日目で、申請書を作り、収入印紙を買います。
10日目までに出します。郵送で出すなら、到達までの日数を見て2、3日の余裕を取ってください。期限を見るのは登記所に届いた日で、投函した日ではありません。
そして、登記完了予定日を過ぎたら、登記事項証明書を取って新しい役員が載っているかを確かめます。完了の通知は届きません。自分で見に行く工程だと覚えておいてください。
費用の合計と、帳簿への書き方
かかるお金を並べます。資本金1億円以下の会社なら、登録免許税は1件につき1万円です。同じ日に辞任と就任をまとめて出せば、これで足ります。
印鑑証明書と住民票の写しの手数料は自治体で違いますが、1通あたり数百円です。取締役が2人交代するなら、2人分を見ておきます。自社で申請する場合の合計は、1万円台に収まります。
司法書士に頼むなら、報酬が乗ります。ここで見落とされやすいのが源泉徴収です。司法書士に払う報酬は、会社が所得税を差し引いてから払う対象になっています。国税庁の案内では、同一人に対し1回に支払われる金額から10,000円を差し引いた残額に10.21パーセントをかけて計算するとされています。報酬が5万円なら、5万円から1万円を引いた4万円に10.21パーセントをかけて4,084円です。詳しくは司法書士等に支払う報酬・料金の案内で確認できます。請求書に登録免許税が並んでいる場合、その部分は源泉徴収の対象に含めません。
仕訳も決めておきます。登録免許税は税金なので租税公課です。証明書の取得手数料は支払手数料。司法書士の報酬も支払手数料で立て、差し引いた分は預り金にします。消費税は報酬にはかかり、登録免許税にはかかりません。全部をまとめて課税仕入れにすると、消費税の計算がずれます。
そして、申請書の控えと添付書類の写し、完了後の登記事項証明書を1つのファイルにまとめて保管してください。役員の任期は何年かごとに必ず回ってきます。前回の書類が手元にあれば、次は日付と氏名を入れ替えるだけで束が揃います。
無料のひな形を使うときに確かめること
就任承諾書のひな形は、法務局のサイトや司法書士事務所、登記支援サービスが無料で配布しています。項目が少ない書類なので、ひな形を使えばほぼ間違いなく作れます。それでも確かめてほしい点が三つあります。
第一に、自社の機関設計に合っているかです。取締役会を置いている会社と置いていない会社では、押す印鑑も添える証明書も変わります。ひな形の説明書きがどちらを前提にしているかを読んでください。
第二に、設立用か就任変更用かです。設立時は「設立時取締役に選任されました」、既存の会社での就任は「株主総会において取締役に選任されました」と書き出しが変わります。会社がまだ存在していない設立の段階で「貴社株主総会において」と書いてある書類は成り立ちません。
第三に、住所の欄の扱いです。氏名だけを書く簡素なひな形がありますが、本人確認証明書との照合が必要な場面では住所の記載が要ります。住所欄のないひな形を使うと、結局作り直すことになります。
なお、書類をまとめて印刷したあとで、押印と日付だけ手書きで埋める運用をしている会社が多くあります。このとき、氏名を印字して押印だけ本人が行う形でも、法律上は有効です。自署を求める規定は就任承諾書にはありません。ただし、本人が確かに関与したことを後から示したいなら、氏名も自筆にしておくと説得力が増します。
書類作成の仕事として見たときのこの分野
在宅で仕事を受けている人にとって、就任承諾書のような定型書類の整備は、単価は高くないものの繰り返し発生する領域です。役員の任期は取締役で原則として選任後2年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとされており、株式の譲渡に会社の承認が必要な会社なら定款で最長10年まで延ばせます。つまり、会社が続く限り何年かごとに必ず同じ書類を作る場面が来ます。
請け負える範囲には線があります。登記申請の代理は司法書士の業務ですし、報酬を得て他人の登記申請書類を作成することも制限されています。請けられるのは、会社自身が作る書類の書式整備、過去の書類の体裁統一、役員の任期と期限の管理表づくり、必要書類のチェックリスト作成といった作業です。最初にこの範囲を示しておくと、依頼する側も安心して任せられます。
文書作成の力を客観的に示したいなら、ビジネス文書検定のような資格が判断材料になります。文部科学省後援の検定で、正確で効率的なビジネス文書を作る力を測るものです。法律知識そのものを証明するわけではありませんが、書式の正確さと用語の使い方が問われる仕事では評価されます。書類の整備を仕組み化する方向へ広げるなら、AIコンサル・業務活用支援のお仕事のように、生成AIの活用戦略から業務プロセスへの組み込み、社内研修までを支援する案件が視野に入ります。定型書類はテンプレート化と自動生成の相性がよく、一枚を作る作業より仕組みを作る作業のほうが単価が付きます。
報酬の目安を知っておくと交渉の基準になります。文書作成を主軸にするなら著述家,記者,編集者の年収・単価相場、書類作成と社内システムの構築をセットで請けるならソフトウェア作成者の年収・単価相場が参考になります。全国平均と都道府県別の数字が確認できるので、居住地や取引先の所在地に合わせて読み替えてください。
フリーランス・在宅ワークの市場を20年運営してきた立場から見ると、この種の書類まわりで長く続く人は、一枚を上手に作ることではなく、次にいつ必要になるかを押さえることに価値を置いています。役員の任期満了は数年先で、会社の側はまず忘れます。任期の一覧表を作り、期限の前に声をかける。それだけで、期限を過ぎて過料の通知が届く事故が防げます。作業料そのものより、この管理のほうが依頼する側には価値が大きい。だから次の年も声がかかります。
もう一つ、運営者として見てきた限りでは、報酬を額面ではなく手取りで捉えている人のほうが息が長い。同じ10万円の仕事でも、仲介手数料が引かれる経路と引かれない経路では、年間で見ると差が積み上がります。仲介手数料が差し引かれない手数料0%の形で直接やり取りできる経路を一つ持っておくと、依頼する側も同じ予算でより多く頼めるようになり、結果として仕事が続きやすくなります。
取引の条件面も整えておいてください。発注書や契約書の段階で確認すべき項目はフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに整理されています。報酬が支払われない事態になったときの進め方は未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】で費用と手順が確認できます。会計や税務の素養を持つ人がこの領域へ広げる道もあり、会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】には本業との両立の考え方が書かれています。
就任承諾書は、項目の少ない一枚の書類です。ただし、日付が選任日より前になっていないか、押す印鑑が会社の形に合っているか、住所の表記が証明書と一字一句同じか。この三つを確認するだけで、補正で往復する時間をほぼ確実に減らせます。条文そのものはe-Gov法令検索で誰でも読めるので、迷ったら原文にあたってみてください。
よくある質問
Q. 就任承諾書はなぜ必要なのですか?
会社と役員の関係は委任に関する規定に従うと会社法が定めており、委任は頼む側の申し込みと引き受ける側の承諾がそろって成立します。株主総会の決議は会社からの申し込みにすぎず、本人が承諾しなければ役員になりません。その承諾があったことを登記の場面で証明するために、商業登記法が就任を承諾したことを証する書面の添付を求めています。
Q. 押す印鑑は実印と認印のどちらですか?
会社の形で変わります。取締役会を置いていない会社では、取締役の就任承諾書に実印を押し、印鑑証明書を添付します。取締役会を置いている会社では、平取締役は認印でよく、かわりに本人確認証明書が必要です。代表取締役はどちらの会社でも実印と印鑑証明書が要ります。任期満了による再任の場合は印鑑証明書の添付が不要です。
Q. 就任承諾書の日付はいつにすればよいですか?
実際に承諾した日を書きます。株主総会の席で承諾したなら総会の日、後日返事をしたならその日です。選任の決議より前の日付を書くと、まだ選ばれていない時点で承諾したことになり矛盾するため、補正を求められます。書類をまとめて作るときに全部を同じ日付にしてしまう事故が多いので気をつけてください。
Q. 本人確認証明書には何を使えますか?
住民票の写し、戸籍の附票、住民基本台帳カードの写し、運転免許証の写しなどが使えます。運転免許証のようにコピーで足りるものは、本人が原本と相違ない旨を記載して記名押印した写しを添えます。就任承諾書に書いた氏名と住所が、その証明書の記載と一字一句同じである必要があるため、住所を省略して書かないでください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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