地方公務員法が定める副業の制限|許可が必要な範囲と手順 2026

朝比奈 蒼
朝比奈 蒼
地方公務員法が定める副業の制限|許可が必要な範囲と手順 2026

この記事のポイント

  • 地方公務員法の副業規定を条文から分解します
  • 第38条は全面禁止ではなく許可制で
  • 禁じられている行為は3つに整理できます

地方公務員法は副業を全面的に禁止していません。結論から書きます。中心となる第38条は「任命権者の許可を受けなければ」という形の許可制で、禁止されているのは許可なく特定の3つの行為をすることです。そして許可の基準は法律ではなく各自治体の人事委員会規則に委ねられています。だから「地方公務員は副業禁止」という一文も、「解禁された」という一文も、どちらも正確ではありません。

この記事では条文を分解します。第38条が何を禁じているのか、許可が要らないものはどこまでか、会計年度任用職員の扱いはどうなっているのか、申請はどう組み立てるのか、違反したら何が起きるのか。順に見ていきます。

副業を規律している条文は第38条だけではない

38条だけを読んで判断する人が多いのですが、実際には複数の条文が同時に効いています。まず土台になるのが第30条です。「すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当つては、全力を挙げてこれに専念しなければならない」。これが服務の根本基準で、以下の条文はこの考え方を具体化したものと読めます。

33条は信用失墜行為の禁止です。「職員は、その職の信用を傷つけ、又は職員の職全体の不名誉となるような行為をしてはならない」。報酬があるかどうかに関係なく効きます。

34条は秘密を守る義務です。「職員は、職務上知り得た秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後も、また、同様とする」。退職後も続く点が重要です。同条第2項では、法令による証人や鑑定人となって職務上の秘密に属する事項を発表する場合には任命権者の許可を受けなければならないとされています。

35条が職務専念義務です。「職員は、法律又は条例に特別の定がある場合を除く外、その勤務時間及び職務上の注意力のすべてをその職責遂行のために用い、当該地方公共団体がなすべき責を有する職務にのみ従事しなければならない」。ここが「勤務時間中に副業の作業をしてはいけない」の根拠です。注意力のすべてを職責に用いるという書き方なので、勤務時間中に副業の連絡に対応することも含まれると読むのが自然です。

そして第38条が営利企業への従事等の制限です。条文はe-Govの法令検索で全文を確認できます。

整理すると、副業を考えるときのチェックは4段階になります。許可が必要な行為に当たるか(第38条)。勤務時間と注意力を割いていないか(第35条)。職務上知った情報を使っていないか(第34条)。職の信用を損なわないか(第33条)。許可を取れば終わりではなく、残る3つは活動中ずっと効き続けます。

第38条を3つの禁止行為に分解する

38条第1項の条文はこう書かれています。「職員は、任命権者の許可を受けなければ、商業、工業又は金融業その他営利を目的とする私企業を営むことを目的とする会社その他の団体の役員その他人事委員会規則で定める地位を兼ね、若しくは自ら営利企業を営み、又は報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事してはならない」。

長いので分けます。許可が必要な行為は次の3つです。

行為1:営利企業を営む団体の役員その他の地位を兼ねること

会社の取締役、監査役、そして人事委員会規則で定める地位です。「人事委員会規則で定める地位」と書かれているので、どこまでが対象になるかは自治体ごとに違います。顧問や相談役のような肩書きが含まれるかどうかは、規則を見ないと分かりません。ここを一般論で判断するのは無理です。

行為2:自ら営利企業を営むこと

個人事業として商売をすることです。店を出す、物を仕入れて売る、請負の事業を営む。開業届を出して事業所得として申告する形は、この行為に近づきます。

行為3:報酬を得ていかなる事業若しくは事務にも従事すること

これが最も広い部分です。営利企業でなくても、報酬を得て事業や事務に従事するなら許可が必要と読めます。NPOの有給の職員、講師、原稿執筆、アドバイザー。報酬という言葉が入っている点が肝心で、無報酬であればこの行為には当たりません。

ただし書と、会計年度任用職員の扱い

38条第1項にはただし書があります。「ただし、非常勤職員(短時間勤務の職を占める職員及び第二十二条の二第一項第二号に掲げる職員を除く。)については、この限りでない」。

読み解きます。第22条の21項は会計年度任用職員を2種類に分けていて、第1号が勤務時間の短い職員、第2号がフルタイムの職員です。ただし書で除かれているのは第2号、つまりフルタイムの会計年度任用職員です。したがってフルタイムの会計年度任用職員は第38条の許可が必要で、パートタイムの会計年度任用職員はただし書が適用されて許可の対象外という構造になります。

ここは実務で誤解が多いところです。非常勤だから何でも自由、というわけでもありません。第33条から第35条は非常勤にも適用されるので、勤務時間中の作業や守秘義務の問題は同じように残ります。加えて、職場が独自に届け出のルールを定めていることもあります。正直なところ、条文だけ読んで「自分は対象外だ」と結論を出すのは危険だと思います。

許可基準は自治体が決める

38条第2項は「人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる」としています。つまり許可されるかどうかの実際の線は自治体ごとに引かれます。この構造が、ネット上の情報と自分の職場の運用がずれる最大の原因です。

許可が要らないもの、要るもの

条文の構造から整理すると、許可が要るかどうかは「報酬があるか」と「事業を営んでいるか」の2軸で判断できます。

報酬のない活動は第38条の対象になりません。無償のボランティア、無報酬の団体役員、無料での情報発信。ただし前述のとおり第33条から第35条は効いています。そして「実費弁償」と「報酬」の境目は曖昧です。交通費の実費だけを受け取る場合は報酬ではないと整理されることが多いですが、日当の名目で定額が支払われるなら報酬に近づきます。判断が分かれる部分なので、金額の名目を確認したうえで服務担当に聞くのが確実です。

資産運用は基本的に「事業」に当たらないと整理されます。株式や投資信託の売買、預貯金の利息。これらは事業を営む行為ではありません。ただし規模が大きくなり、実質的に事業として運営していると評価される段階になると話が変わります。不動産の賃貸は特に境目が問題になりやすく、棟数や室数、賃貸収入の額、管理を業者に委託しているかどうかで判断されるのが一般的です。ここは自治体の規則と人事院が示す運用の考え方の両方を確認してください。

家業の手伝いや農業も、報酬の有無と規模で変わります。収穫物を自家消費する範囲なら問題になりにくく、継続的に販売して収入を得ているなら事業性が出てきます。相続で農地を引き継いだ、家業の名義人になった、といった変化があったときは、その時点で届け出が必要かを確認するのが安全です。

そして単発の講演や執筆です。報酬を受け取るなら行為3に当たり得ます。多くの自治体は単発の依頼について兼業の届け出様式を用意しています。「これは副業ではない」と自分で決める前に、様式があるかどうかを聞いてください。

実際に判断が分かれる場面を並べる

条文の構造が分かっても、自分の活動がどこに当たるかは迷います。相談として多く挙がる場面を並べて、どの条文のどの部分が問題になるのかを示します。あくまで考え方の整理であり、最終的な判断は所属の基準に従ってください。

地域の団体で役員を引き受ける

自治会、PTA、消防団、NPOの理事。報酬がなければ第38条の「報酬を得て」には当たりませんし、営利企業でもないので役員の禁止にも当たりません。問題になるのは報酬が出る場合と、活動が勤務時間に食い込む場合です。平日の昼間に会議が入る役職は、職務専念義務の側で調整が必要になります。引き受ける前に、会議の時間帯と報酬の有無を確認してください。実費弁償として交通費だけを受けるのか、日当として定額が出るのかで扱いが変わります。

講師として呼ばれる

学校や地域の講座で話をして、謝金を受け取る場面です。報酬があるので第38条の対象になり得ます。多くの自治体は単発の講演について届け出の様式を持っているので、まずその様式があるかを聞いてください。回数が増えて定期的な講師になると、単発の扱いではなくなります。年に何回までなら単発として扱うかは自治体の運用によります。

家族が営む事業の名義人になる

親が営んでいた店や農地を引き継いで名義人になる場面です。名義を持つだけで「自ら営利企業を営む」に当たるかは、実際に経営に関与しているかで判断が分かれます。名義だけで実務を家族が担っているケースも、収益が自分に帰属するなら説明が必要です。相続や名義変更が発生した時点で服務担当に相談するのが安全です。あとから発覚するほうが、説明の負担が大きくなります。

執筆や制作で継続的に収入が入る

書籍の印税、写真素材の販売、音源や素材の使用料。一度作ったものから継続して収入が入る形です。作る作業は終わっていても収入は続くので、「事業に従事している」と評価されるかどうかが論点になります。作った時期と収入が入る時期がずれる点が、判断を難しくします。収入の入り方を具体的に説明できるように、契約の内容を手元に置いておいてください。

資産運用が大きくなってきた

株式や投資信託の売買は事業に当たらないのが原則です。ただし不動産の賃貸は境目が問題になりやすく、棟数や室数、賃貸収入の額、管理を業者に委託しているかどうかで判断されます。相続で物件を引き継いだ場合も同じ検討が必要です。自治体の規則と、国家公務員について人事院が示している運用の考え方の両方を確認してください。規模の目安は明文化されている自治体もあります。

職務で得た知見を売る形になっていないか

これは条文の番号より先に見るべき論点です。地方公務員法第34条の秘密を守る義務は、収入の有無に関係なく効いています。担当している制度の運用の実情、内部で共有された資料、関係者から聞いた事情。これらを使って報酬を得る形になっていれば、第38条の許可があっても第34条の問題は残ります。許可を取れば何を書いてもよいわけではない、という点を押さえておいてください。

許可の実態と、自治体側の動き

許可がどれくらい出ているのかという実態については、次のような整理があります。

総務省の令和6年度調査では、地方公務員の兼業許可件数は約4万1千件と横ばいで推移している。一方で、社会貢献活動に関する兼業は増加傾向にある。また、許可基準を明文化する自治体も増えており、副業をめぐる運用は徐々に整理されつつある。 出典: jichitai.works

注目すべきは「許可基準を明文化する自治体も増えており」の部分です。第38条第2項が基準の策定を自治体に委ねている以上、基準が明文化されているかどうかで申請のしやすさがまったく変わります。基準が公表されている自治体なら、申請前に自分の活動が該当するかを自分で確認できます。公表されていない自治体では、まず服務担当に聞くところから始まります。

自治体側の運用の考え方は総務省が公開している地方公務員制度に関する資料からも追えます。全国の傾向を知っておくと、自分の職場の運用が厳しいのか緩いのかの当たりが付きます。ただし他の自治体の事例は、自分の許可の根拠にはなりません。ここは繰り返しておきます。

申請を通すための組み立て方

許可を求めるとき、審査する側が確かめたいことは決まっています。逆算して書けば通りやすくなります。

論点1:職務との利害関係

自分が許認可、契約、指導監督に関わっている分野で報酬を得ると、利害関係が疑われます。担当分野から一歩離れた題材を選ぶのが実務的な設計です。異動で担当が変わったときに利害関係が生じる可能性も、先に触れておくと丁寧です。

論点2:勤務への影響

活動する時間帯と月あたりの時間を具体的に書きます。平日は21時以降、休日は午前中、月10時間程度、という粒度です。私用の端末と回線だけを使うことも明記します。第35条との関係で、ここが最も見られます。

論点3:守秘義務への配慮

職務上知り得た情報は使わない、実在の案件や個人が特定できる記述はしない、公開情報の範囲で行う。この方針を文章にして添えます。

論点4:報酬の見込みと報告

年間の見込み額を書きます。金額が小さいほど通るという話ではなく、把握できていることが評価されます。見込みを大きく超えたときは改めて報告する、と書き添えておくと後の手続が楽です。

契約の実務も先に押さえておくと、申請書の内容が具体的になります。業務委託で仕事を受けるときの発注書と契約書の必須項目はフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストに整理されています。報酬の支払時期や成果物の範囲を申請書に書けるようになるので、審査する側の質問が減ります。専門職の側から見た兼業の考え方は会計士の副業ガイド|監査法人勤務でもできる高収入の稼ぎ方【2026年版】も参考になります。本業と利益が衝突しない範囲をどう設計するかという、同じ問題を扱っています。

税と住民税の手順

許可を得て報酬を受け取ったら、税の処理が発生します。

副業を始める場合、税務処理を軽視してはならない。副業による所得(売上-経費)が年間20万円を超える場合は確定申告が必要となる。また、20万円以下であっても住民税の申告は原則として必要である。 出典: jichitai.works

根拠は所得税法第121条第1項第1号です。1か所から給与を受けて年末調整を受けており、給与の金額が2,000万円以下で、給与所得と退職所得以外の所得金額の合計が20万円以下のときは、確定申告書の提出を要しないとされています。ここでいう20万円は売上ではなく、売上から必要経費を引いた所得です。

継続して受注するなら開業届も検討します。所得税法第229条は、新たに事業所得などを生ずべき事業を開始した場合、その事実があった日の属する年分の所得税に係る確定申告期限までに届出書を提出すると定めています。青色申告の承認を受けたい場合は所得税法第144条で、その年の315日まで、その年の116日以後に業務を開始した場合は開始日から2か月以内に申請します。様式は国税庁で確認できます。

なお、開業届を出すこと自体が兼業の許可の代わりになるわけではありません。税の手続と服務の手続は別系統です。ここを混同して「開業届を出したから届け出済み」と考えてしまう人がいます。順番は、服務の許可が先、税の手続が後です。

違反したときに何が起きるか

29条が懲戒の根拠です。「職員が次の各号のいずれかに該当する場合には、当該職員に対し、懲戒処分として戒告、減給、停職又は免職の処分をすることができる」とあり、該当事由として、法律や条例、規則、規程に違反した場合、職務上の義務に違反し又は職務を怠った場合、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合が挙げられています。

つまり、許可を受けずに第38条の行為をしていれば第1号に、勤務時間中に副業の作業をしていれば第2号に触れる構造です。処分の重さは戒告から免職までの幅があり、行為の内容と期間、金額、職務への影響、隠していたかどうかで判断されます。

実務で見ておくべきは、金額の大小だけで軽重が決まるわけではないという点です。収入が少なくても、職務上の情報を使っていた、勤務時間中に作業していた、指摘を受けても続けていた、といった事情があれば評価は重くなります。逆に、事前に相談していた記録があることは、皆さんを守る側に働きます。

経験を仕事に変えるときの現実的な選択

条文の話が続いたので、最後に活動の中身に触れます。許可を得やすい活動には傾向があります。職務と利害関係がなく、活動時間が読めて、社会的な意義が説明しやすいもの。この3つを満たす形を先に探すと、申請の説明が短くなります。

実際にどんな業務が発注されているかは、業務内容の粒度で並んだ資料を見ると見当が付きます。生成AIの導入が進んだ現場では、業務の流れを分解して整理できる人が足りていません。AIコンサル・業務活用支援のお仕事AI・マーケティング・セキュリティのお仕事には、専門知識が必要な部分と、段取りと丁寧さで務まる部分が分かれて載っています。行政の事務手続を分解してきた経験は、この整理の作業と直接つながります。

文章で伝える仕事の相場感は著述家,記者,編集者の年収・単価相場で職業分類別に確認できます。制度や手続を正確に書ける人は不足しているので、条文を読む習慣がある人はここで差が付きます。書式の型そのものを押さえておきたい場合はビジネス文書検定が近い位置にあります。書類の形が整っているだけで差し戻しが減り、実際の時間単価が上がります。

私が編集の現場で痛感したのは、正確さは思ったより高く評価されるということです。締切を守る書き手はそれなりにいますが、数字と根拠を間違えない書き手は少ない。制度の解説記事で数字が1つ間違っていると、発注側は全部を疑い直すことになります。逆に、確認できないことを「確認できない」と書いてくる原稿は信頼されます。この習慣は行政の仕事で身につくものなので、転用しない理由がありません。

運営者として市場を見てきた立場からの観察

在宅ワークと業務委託の市場を20年運営してきた立場から言えば、長く続く人ほど、単発の作業を数えるのではなく「この人に任せると楽だ」と思われる関係づくりに時間を使っています。運営者として見てきた限りでは、依頼が続くかどうかを決めるのは成果物の出来よりも、途中の共有の頻度です。納期の前に一度状況を伝える。分からない点をまとめて先に聞く。この2つがあるだけで、次の依頼が来る確率が変わります。

額面と手取りの話もしておきます。仲介の手数料が乗る取引では、依頼者が支払った金額と受け手に届く金額に差が生まれます。差が20%なら、100万円の取引で20万円が中間に残ります。業務委託マッチングサービスの中には手数料0%で当事者どうしが直接やりとりする形のところもあり、その構造なら同じ予算で依頼者はより多く頼めて、受け手の手取りは厚くなります。金額の大小の話ではなく、同じ仕事に残る割合の話です。

兼業の許可という文脈では、この差に実利があります。申請では活動時間と収入の見込みを説明することになるので、同じ収入を得るために引き受ける件数が少なければ、勤務への影響も小さく説明できます。手数料で削られる分を件数で埋めようとすると、説明すべき活動時間が増えていく。第35条の職務専念義務との関係で言えば、活動時間を短く保てること自体が許可を維持する条件になります。どこで受けるかの選び方が、服務の説明のしやすさに直結している。この関係に気づいている人は、まだ多くありません。

許可を申請してから活動を始めるまでを、日付順に並べる

手続の順番を間違えると、活動そのものを止めることになります。申請から開始までを日付で並べます。

1日目から3日目は、自分の自治体の規則を手に入れる作業です。人事委員会規則と、服務に関する内部の通知。例規集で公開している自治体なら自分で読めます。公開されていない場合は服務担当に問い合わせて、様式の名前と提出先を聞きます。この段階では活動の内容を細かく説明する必要はありません。「兼業の届け出の様式と基準を知りたい」と伝えるだけで十分です。

4日目から10日目は、申請書の下書きです。書く項目は決まっています。活動の内容、相手先、活動する時間帯と月あたりの時間、報酬の見込み額、職務との利害関係の有無、使う設備。ここで「空いた時間に」といった書き方をすると差し戻されます。平日は21時以降、休日は午前中、月10時間程度、私用の端末と回線のみ、という粒度まで落とします。

11日目から14日目は、上司への事前相談です。様式を出す前に口頭で説明しておくと、審査に回る前に疑問点が潰せます。ここで利害関係の指摘が出たら、活動の題材を変えるほうが早い。申請が一度不許可になると、次に同じ内容で出しにくくなります。

15日目に申請書を提出します。控えを必ず取ってください。提出した日付と受け取った担当者の名前を自分の記録に残します。後で「聞いていない」という話になったときに、これが唯一の証拠になります。

審査の期間は自治体によって違います。数週間で結果が出るところもあれば、次の人事委員会の開催まで待つところもあります。相手先に開始日を約束する前に、見込みの期間を聞いてください。「許可が出たら連絡します」と伝えておけば、待たせても信用は落ちません。

許可が出たら、その日付と条件を控えます。条件付きの許可が出ることがあり、たとえば年間の報酬額の上限や、活動の頻度が指定される場合があります。条件を超えそうになったら、超える前に改めて相談します。事後の報告は、事前の相談より重く扱われます。

数字で置くと、許可を得た副業の手元にいくら残るのか

金額の感覚を持たないまま申請すると、見込み額の欄が書けません。具体的な数字で計算します。

制度の解説記事を月に4本書いて、1本1万5,000円を受け取る形を想定します。月6万円、年72万円です。支払う側が源泉徴収義務者で、その報酬が原稿料などに当たる場合、支払金額が100万円以下の部分には10.21%が課されます。月6万円なら6,126円が引かれ、振り込まれるのは5万3,874円です。100万円を超える部分の税率は20.42%になり、税額の1円未満の端数は切り捨てます。この表は国税庁のタックスアンサーに載っています。

年間で見ると、売上72万円に対して源泉徴収が7万3,512円です。ここから経費を引きます。参考図書に年2万円、通信費のうち副業分として年3万円、資料の複写や郵送で年1万円とすると、経費は6万円。所得は66万円になります。

給与を1か所から受けて年末調整を受けている職員の場合、給与所得と退職所得を除いた所得の合計が20万円を超えると確定申告が必要です。66万円は当然これを超えます。給与と合わせた課税所得が330万円から695万円の帯に入るなら、所得税の速算表では税率20%、控除額42万7,500円の区分です。この帯で追加の66万円にかかる所得税は13万2,000円、住民税を10%として6万6,000円、合わせて19万8,000円になります。源泉徴収された7万3,512円は前払いなので、確定申告で差額の12万4,488円ほどを納めることになります。

つまり、年72万円の副業で手元に残るのは46万2,000円ほどです。月あたり3万8,500円。申請書の報酬の見込み額には売上の72万円を書きますが、生活の設計に使える額はこの手取りのほうです。

住民税の徴収方法にも触れておきます。給与から住民税が引かれている職員の場合、副業分の住民税をどう納めるかは自治体の運用で変わります。給与分と合わせて特別徴収になる場合もあります。徴収方法の選択ができるかどうかは、住んでいる市区町村の課税担当に確認してください。金額や他の控除の有無で結果は変わるので、自分の税額は税務署に確認してください。

勘違いしやすい5つ

1つ目は「開業届を出したから届け出は済んだ」という誤解です。税の手続と服務の手続はまったく別の系統です。開業届は税務署に出すもので、任命権者の許可とは何の関係もありません。順番は服務の許可が先、税の手続が後です。

2つ目は「無報酬なら何をしてもよい」という読み方です。第38条の対象からは外れますが、第33条の信用失墜行為の禁止、第34条の守秘義務、第35条の職務専念義務は報酬の有無に関係なく効いています。無報酬でも勤務時間に食い込む活動は問題になります。

3つ目は「他の自治体で認められているから大丈夫」という根拠です。第38条第2項が許可の基準を人事委員会規則に委ねている以上、基準は自治体ごとに違います。他所の事例は説明の材料にはなりますが、自分の許可の根拠にはなりません。

4つ目は「20万円以下なら何も要らない」という理解です。所得税の確定申告が不要になる場合でも、住民税の申告は別に必要になることがあります。そして服務の側の許可は、金額と無関係に必要です。20万円は税の話であって、兼業の可否の基準ではありません。

5つ目は「許可が出たら中身は自由」という前提です。許可は活動の枠を認めたものであって、職務上知り得た情報を使ってよいという意味ではありません。担当している制度の内部の運用や、関係者から聞いた事情を素材にすると、許可があっても第34条の問題が残ります。

立場によって、気をつける場所が変わる

同じ地方公務員でも、勤務の形と家庭の状況で注意点が変わります。

常勤の職員は、第38条の許可が必要な範囲に自分の活動が入るかを最初に確かめます。加えて、異動で担当が変わったときに利害関係が新しく生じることがあります。許可を得たあとも、異動のたびに題材を見直してください。許可の有効期間が年度単位になっている自治体では、年度替わりに更新の手続が必要です。

パートタイムの会計年度任用職員は、第38条第1項のただし書が適用されるため許可の対象から外れます。ただし守秘義務と職務専念義務は同じように効きますし、職場が独自に届け出のルールを持っていることがあります。対象外という条文の読みだけで動かず、職場に確認してください。フルタイムの会計年度任用職員は許可が必要です。

配偶者の扶養に入っている職員が副業を始める場合は、扶養の判定も絡みます。所得税の扶養の基準と健康保険の扶養の基準は別の物差しで、金額も違います。どちらも売上ではなく、売上から経費を引いた額で見るのが原則です。具体的な金額は配偶者の勤め先の規則と加入している健康保険で変わるので、勤め先か保険の窓口に確認してください。

再任用や定年前の再任用短時間勤務の職員は、勤務時間が短い区分に当たるかどうかで第38条の適用が変わります。区分の名称が自治体ごとに違うことがあるので、自分の任用の根拠となる条文を服務担当に確認するのが確実です。

どの立場でも共通するのは、記録を残すことです。相談した日付と相手、提出した様式の控え、許可の条件、実際の活動時間と収入。この5つを残しておけば、後から説明を求められたときに困りません。

よくある質問

Q. 地方公務員法は副業を全面的に禁止していますか?

していません。第38条第1項は「任命権者の許可を受けなければ」という許可制の形を取っており、許可なく行ってはいけない行為として、営利企業を営む団体の役員等を兼ねること、自ら営利企業を営むこと、報酬を得て事業や事務に従事することの3つを挙げています。報酬のない活動はこの3つに当たりません。

Q. 許可の基準はどこに書かれていますか?

法律ではなく自治体の規則です。第38条第2項は「人事委員会は、人事委員会規則により前項の場合における任命権者の許可の基準を定めることができる」としています。そのため実際の線は自治体ごとに違い、他の自治体で認められた事例は自分の許可の根拠になりません。所属の服務担当に基準を確認してください。

Q. 会計年度任用職員も許可が必要ですか?

勤務時間の区分で変わります。第38条第1項のただし書は非常勤職員を対象外としつつ、短時間勤務の職を占める職員と第22条の2第1項第2号に掲げる職員を除いています。第2号はフルタイムの会計年度任用職員なので、フルタイムは許可が必要、パートタイムはただし書が適用されます。ただし守秘義務や職務専念義務は変わらず適用されます。

Q. 許可を受けずに副業をしていた場合、どうなりますか?

第29条により、法律や規則に違反した場合や職務上の義務に違反した場合は、戒告、減給、停職、免職の懲戒処分の対象になり得ます。処分の重さは行為の内容や期間、職務への影響、隠していたかどうかで判断されます。収入額が小さくても、職務上の情報を使っていたり勤務時間中に作業していた場合は評価が重くなります。

この記事について

@SOHO
編集部

監修:@SOHO編集部

2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

公開:2026年4月17日最終更新:2026年9月21日
朝比奈 蒼

この記事を書いた人

朝比奈 蒼@SOHO編集部

ITメディア編集者

IT系メディアで編集・ライティングを担当。クラウドソーシング業界の動向やサービス比較など、客観的な視点での記事を執筆しています。

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SNS運用・経理・広告など、業務のアウトソーシング(外注)を検討する企業・個人向け。費用相場・依頼の流れ・失敗しない選び方