会社が副業を禁止する理由|認められる線引きと相談の進め方


この記事のポイント
- ✓会社が副業を禁止する理由を
- ✓厚生労働省のモデル就業規則と副業・兼業ガイドラインをもとに整理します
- ✓税金と社会保険の注意点まで順に解説します
「うちの会社は副業禁止なので」。この一言で話が終わってしまうことがあります。でも、なぜ禁止されているのかを説明できる人は意外に少ないものです。国は副業を認める方向で制度を整えているのに、会社の規則は禁止のまま。この食い違いには理由があります。この記事では、会社が副業を禁止する理由を制度の側から整理し、どこまでが認められる線なのか、会社にどう相談すればよいのかを順に確かめていきます。
「副業禁止」は法律ではなく会社の規則
最初に押さえておきたいことがあります。副業を禁止する法律は存在しません。会社員の副業を禁じているのは、その会社の就業規則です。
このことは制度の設計にも表れています。厚生労働省が公開しているモデル就業規則は、企業が自社の規則を作るときのひな型ですが、そこでは副業が「できる」ことを原則として示しています。
労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる。 出典: 厚生労働省 副業・兼業
これが令和7年12月版のモデル就業規則第70条の第1項です。かつてのモデル就業規則には「許可なく他の会社等の業務に従事しないこと」という条文が入っていましたが、平成30年に改められ、原則として認める形に変わりました。
ではなぜ、多くの会社の規則がいまだに禁止のままなのでしょうか。理由は単純です。モデル就業規則は名前のとおり見本であって、会社に改定を強制するものではないからです。10年前、20年前に作った規則をそのまま使っている会社では、当時の条文が生き残っています。つまり「うちは副業禁止」という説明は、多くの場合、積極的な判断ではなく更新されていないだけという状況を指しています。
同じモデル就業規則の解説には、裁判例の考え方も示されています。
労働者の副業・兼業について、裁判例では、労働者が労働時間以外の時間をどのように利用するかは基本的には労働者の自由であることが示されている 出典: 厚生労働省 モデル就業規則
勤務時間の外は、基本的に働く人の時間である。この考え方が出発点になっています。ただし「基本的に自由」は「何をしてもよい」とは違います。次に、会社が制限できる場合を見ていきます。
会社が副業を禁止する4つの事由
モデル就業規則第70条の第2項は、会社が副業を禁止または制限できる場合を4つに限って並べています。ここが線引きの中心です。
1つ目は、労務提供上の支障がある場合です。本業の仕事に差し支えが出るケースを指します。夜通し別の仕事をして日中の勤務で居眠りをする、副業の連絡対応で就業時間中に席を外す、といった状況が典型です。
2つ目は、企業秘密が漏洩する場合です。勤務先で扱っている顧客情報、価格表、設計図、開発中の計画などが外部に出る危険がある場合が該当します。同業の会社で副業をすると、意図せず境界を越えてしまうことがあります。
3つ目は、会社の名誉や信用を損なう行為、信頼関係を破壊する行為がある場合です。勤務先の社名を出して集客する、勤務先の顧客をそのまま自分の顧客として引き抜く、といった行為が問題になります。
4つ目は、競業により企業の利益を害する場合です。競合する会社で働く、あるいは自分で競合するサービスを立ち上げる場合が該当します。
会社がこの4つに当てはまらない副業まで一律に禁止していると、その禁止の効力そのものが争いになります。規則に「副業禁止」と書いてあるだけで、あらゆる副業が当然に無効になるわけではありません。実際の判断では、規則に違反したという形の話だけでなく、本業に支障が出たかという中身の話も見られます。ただし、これは裁判になったときの考え方であって、争えば勝てるという意味ではありません。争うことそのものに時間と費用がかかるため、先に会社と話をつけるほうが現実的です。
会社側の事情としてある「事務の負担」
働く側からは見えにくいものの、会社が副業に慎重になる大きな理由が労働時間の扱いです。ここは制度の仕組みを知ると納得できます。
副業先が雇用契約(アルバイトやパート)の場合、労働基準法では本業と副業の労働時間を通算して考えます。本業で1日8時間働いた後に副業で2時間働けば、通算して10時間です。法定労働時間を超えた分の割増賃金は、原則として後から契約した側が負担します。つまり会社は、自社だけでは把握できない他社の勤務時間を確認し、時間外の管理をしなければならなくなります。
厚生労働省が公開している副業・兼業の促進に関するガイドラインでは、この通算の考え方と、通算されない働き方の区別が示されています。副業が業務委託や請負の場合、つまり雇用契約ではない形なら、労働時間の通算は行われません。ここが実務上の大きな分かれ目です。
そのため、会社と相談するときには「副業の契約形態」を先に伝えると話が進みやすくなります。業務委託で受ける在宅の仕事であれば、会社側に労働時間管理の負担は生じません。逆に、他社のアルバイトとして働く場合は、勤務時間の申告を求められると考えておいてください。
もう一つ、社会保険の事務もあります。副業先でも社会保険の加入要件を満たすと、2か所で被保険者になり、保険料を按分する手続きが必要になります。短時間労働者の加入要件は「週20時間以上」「2か月を超える雇用の見込み」「学生でない」に加えて、現在は所定内賃金が月額8.8万円以上という要件があります。この賃金要件は2026年10月に撤廃される予定とされています。該当する働き方をする場合は、日本年金機構の窓口で自分の場合の扱いを確認してください。
国が副業を認める方向へ動いている理由
会社の規則が古いまま残っている一方で、国の方針は明確に変わっています。背景を知っておくと、会社への相談のときに話の土台を共有できます。
厚生労働省は副業・兼業の促進に関するガイドラインを公開し、企業がどう対応すべきかを整理しています。政策としての狙いは3つに整理できます。1つは、働く人が自分の技能を広く活かせるようにすること。2つ目は、企業が外部の人材を柔軟に受け入れられるようにすること。3つ目は、雇用に依存しない収入の道を増やし、生活の安定を図ることです。
この流れの中で、フリーランスとして働く人を保護する法律も整いました。取引の条件を書面などで明示する義務、報酬の支払期日の上限、一定の行為の禁止などが定められ、業務委託で仕事を受ける側の立場が制度として支えられるようになっています。副業を業務委託で始める人にとっては、この整備が追い風になります。
こうした制度の整備は、会社にとっても無関係ではありません。副業を一律に禁止していると、能力のある人が転職してしまう。逆に認めることで、社外で得た知見が本業に還ってくる。この判断をする会社が増えています。相談の際に「制度が変わっているので規則を見直してほしい」と持ち出すのは、無理な要求ではありません。
就業規則のどこを読めばよいか
自分の会社がどうなっているかを確かめる手順です。ここを飛ばして人に聞くと、不確かな話が広がります。
まず、就業規則の本体を探します。社内のイントラネット、人事部が管理する文書棚、入社時に配られた冊子のいずれかにあります。労働基準法では、就業規則は働く人がいつでも見られる状態にしておく義務があるため、「見せてもらえない」という状態は本来おかしいものです。
見るべきなのは「服務規律」または「遵守事項」の章です。副業の条文は、この章に入っていることが多くあります。章の名前が「副業・兼業」になっている場合は、それを直接読みます。
確かめるのは3点です。1つ目は、禁止なのか許可制なのか届出制なのか。書かれている動詞が「禁止する」なのか「許可を得なければならない」なのか「届け出ること」なのかで、必要な手続きが変わります。2つ目は、禁止の範囲です。「他の会社に雇用されること」だけを禁じているなら、業務委託は文面の外にあります。3つ目は、違反したときの扱いです。懲戒の条文に副業が明記されているかを見ます。
どこにも副業の記述がない場合もあります。その場合は、禁止されていないと読むのが素直ですが、会社の解釈が違うことがあります。念のため人事に確認してください。就業規則に書かれていないことを理由に不利益な扱いを受けるのは、筋が通らない話です。
会社に相談するときの進め方
黙って始めるより、相談したほうが結果的に楽になります。相談の仕方には順序があります。
最初に、聞く相手を選びます。直属の上司より人事の担当者のほうが、制度の話として扱ってくれます。上司に先に伝えると、個人の感情や部署の事情が判断に混ざりやすくなります。制度の確認として人事に問い合わせ、そのうえで上司に共有する順序が安全です。
次に、伝える内容を整えます。伝えるべきなのは4点です。何をするのか(業務の内容)、契約の形(業務委託か雇用か)、いつやるのか(曜日と時間帯)、本業への影響をどう防ぐか。この4点を紙1枚にして持っていくと、話が早く終わります。「副業をしてもいいですか」という問いかけだけでは、判断材料がないので保留されます。
そして、4つの事由に触れないことを自分の言葉で示します。競合他社ではないこと、勤務先の情報を使わないこと、勤務時間中に対応しないこと、社名を出さないこと。この4点を先に言い切ってしまえば、会社が心配する部分はほぼ埋まります。
許可が出ない場合は、理由を聞いてください。理由が4つの事由のどれかに当たるなら、内容を変えることで通る可能性があります。時間帯が問題なら曜日を変える、競合が問題なら分野を変える。交渉の余地はここにあります。理由が「規則だから」だけの場合は、モデル就業規則が改められていることを伝えて、規則の見直しを提案する道が残ります。
「許可制」と「届出制」はどう違うのか
就業規則を読むときに意味が変わる言葉があります。許可制と届出制です。同じように見えて、働く側の立場はまったく違います。
許可制は、会社が可否を判断する仕組みです。申請を出し、審査を受け、許可が出てから始めます。許可が出なければ始められません。この形の会社では、申請書に書く内容が判断を左右するため、業務の内容と時間帯を具体的に書くことが重要になります。抽象的に「ライティングの仕事」と書くより、「土日の午前に、企業の商品紹介文を作成する業務委託。勤務先と取引のない業種に限る」と書いたほうが通ります。
届出制は、始めることを前提に、内容を会社に知らせる仕組みです。届け出れば始められ、会社は4つの事由に当たる場合に限って禁止または制限できます。モデル就業規則が採っているのはこの形です。届出制の会社では、届けを出さずに始めることが規則違反になりますが、届けを出せば止められる理由は限られます。
自社がどちらなのかを見分けるには、条文の動詞を見ます。「許可を得なければならない」なら許可制、「届け出なければならない」なら届出制です。「会社に知らせること」のように曖昧な書き方をしている場合は、人事に運用を確認してください。実際の運用が条文より緩いことも、逆に厳しいこともあります。
近年は、許可制から届出制に切り替える会社が増えています。審査の負担が重いこと、そして認めない理由を説明する必要が生じることが背景にあります。自社が許可制のままなら、届出制への変更を提案するのも一つの方法です。
本業に生きる副業と、負担になる副業の違い
副業を認めるかどうかを会社が判断するとき、実際に見られているのは「本業との関係」です。ここを理解しておくと、選ぶ副業が変わります。
本業に生きる形には、共通する特徴があります。まず、使う技能が本業と重なりながら、取引先が重ならないこと。営業の経験を活かして別の業界の販売支援を手伝う、経理の知識で小さな会社の記帳を助ける、といった形です。技能が磨かれ、本業にも返ってきます。会社としても止める理由が見つかりません。
もう一つは、本業では触れない領域に踏み出す形です。社内では扱わない道具や手法を、副業で覚えて持ち帰る。会社にとっては学習の機会を外に委ねている状態になるため、歓迎されることがあります。
一方で、負担になる形もはっきりしています。時間の拘束が重いものです。決まった時刻に必ず稼働しなければならない仕事は、本業の繁忙期と衝突します。衝突が起きたときに副業を優先すると信用を失い、本業を優先すると副業の相手に迷惑がかかる。どちらを選んでも損が出ます。
深夜の稼働も避けたほうが安全です。睡眠が削られると日中の集中が落ち、その影響は本人より周囲に先に見えます。「最近ぼんやりしている」という評価が付いてから理由を説明しても、遅くなります。労務提供上の支障とは、まさにこの状態を指しています。
判断の基準を1つ挙げるなら、「繁忙期に止められる仕事かどうか」です。止められるなら続きます。止められないなら、いずれ本業か副業のどちらかを手放すことになります。
時間の配分を先に決めておく
規則の確認と契約の確認が済んだら、最後に時間の設計をします。ここを決めずに始めた人が、数か月で辞めていきます。
最初に決めるのは上限です。1週間に使う時間の上限を先に決め、それを超える依頼は受けない。この線を引いておかないと、依頼が来るたびに引き受けてしまい、気づいたときには休みが消えています。目安としては、週に5時間から10時間の範囲で始めると、本業への影響がほとんど出ません。
次に、曜日を固定します。平日の夜に散らすより、土曜の午前だけ、水曜の夜だけ、というように寄せるほうが集中できます。細切れの時間は、頭を切り替える回数が増えるため、実際の作業量が思ったより伸びません。
納期の設定にも余裕を持たせます。副業では、本業の予定が急に変わることがあります。余裕を1日多く見て約束しておけば、突発の残業が入っても間に合います。納期を守れないことが1回あるだけで、次の依頼は来なくなります。確実に守れる日程を出すほうが、結果として仕事が続きます。
そして、やめる条件も決めておきます。睡眠が削られたら、本業の評価が落ちたら、家族との時間が取れなくなったら。この3つのどれかに当たったら量を減らす、と先に決めておくと、判断で迷わなくなります。副業は続けることが目的ではなく、生活を良くするための手段です。手段が目的を侵食し始めたら、減らすのが正しい選択になります。
黙って始めたときに起きること
規則で禁止されているのに届け出ずに始めた場合、どうなるかも知っておく必要があります。
まず、会社に伝わる経路は思っているより多くあります。住民税の通知が会社に届く形で分かることがあります。給与から住民税を引く仕組み(特別徴収)では、市区町村から勤務先に税額の通知が送られるため、副業の所得が加わって税額が上がると、経理が気づく場合があります。副業が給与以外の所得であれば、住民税を自分で納める方法(普通徴収)を選べる余地がありますが、副業がアルバイト(給与)の場合はこの選択ができません。ここはよく誤解されるところです。
社会保険の手続きで分かることもあります。副業先で加入要件を満たすと、2か所の勤務を届け出る手続きが発生します。SNSからの発覚も現実に起きています。屋号や作品を公開していれば、同僚が見つける可能性は常にあります。
そして、発覚したときの扱いです。規則違反であることは事実なので、注意や指導の対象にはなり得ます。ただし、規則に違反したという形だけで最も重い処分が当然に認められるわけではなく、本業にどんな支障が出たかという中身も見られます。処分の重さは事情によって変わるため、実際に処分を受けた場合や争う場合は、労働問題を扱う弁護士や、各都道府県の労働局に置かれた総合労働相談コーナーに相談してください。個別の判断は事情ごとに異なるため、一般論で決めつけられるものではありません。
現実的な結論として、黙って始めることの最大の問題は処分そのものではありません。会社に知られないよう気を配り続けることが、仕事そのものより疲れる点にあります。案件を選ぶときに名前が出ないものばかりを選び、実績を公開できず、次の仕事につながらない。この状態が続くと、副業として成立しなくなります。
副業が業務委託なのか雇用なのかは実態で決まる
契約書の題名に「業務委託契約書」と書かれていても、それだけで業務委託になるわけではありません。実態で判断されます。ここを知らないまま始めると、思っていた前提が崩れます。
判断の材料になるのは、仕事の進め方に対する指示の度合いです。作業する時間と場所が指定される、仕事の順番や方法を細かく指示される、他の人に代わってもらうことが認められない、断る自由がない。こうした状態が重なると、契約の題名にかかわらず雇用に近いものとして扱われます。
モデル就業規則の解説でも、この点に注意が向けられています。副業・兼業には、他の会社に雇用される形だけでなく、事業主として行うものや、請負や委託の形で行うものも含まれる。そして労働契約であるかどうかは実態に基づいて判断される、と書かれています。形式を整えただけでは、実態は変わりません。
働く側にとって、この違いは3つの点に影響します。1つ目は労働時間の通算です。雇用として扱われるなら本業との通算が生じ、勤務先への申告が必要になります。2つ目は最低賃金と割増賃金です。雇用なら適用されますが、業務委託では適用されません。3つ目は労災の扱いです。雇用であれば労災保険の対象になりますが、業務委託では原則として対象外で、特別加入の制度が使える場合に限られます。
始める前に、依頼元に対して契約の形を確認してください。「業務委託でお願いします」と言われながら出勤の時刻を指定される場合は、その場で確認するほうが安全です。判断に迷う場合は、各都道府県の労働局に置かれた総合労働相談コーナーで聞けます。個別の判断は事情によって変わるため、一般論で決めずに窓口で確かめるのが確実です。
税金の扱いを先に確かめる
副業を始めると、税金の手続きが増えます。ここを後回しにすると、翌年になって慌てることになります。
確定申告が必要になる目安は、国税庁が条件として示しています。
給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える人 出典: 国税庁
給与以外の所得の合計が20万円を超えると、所得税の確定申告が必要になります。ここで注意が要るのは2点です。1つは、この20万円は「収入」ではなく「所得」であること。売上から経費を引いた後の金額で判断します。もう1つは、この20万円の線は所得税の話であって、住民税の申告は金額に関わらず必要になるという点です。20万円以下だから何もしなくてよい、という理解は正確ではありません。
副業先がアルバイトなど給与の場合は、扱いが変わります。年末調整されなかった給与の収入金額と、給与以外の所得を合わせて判断する形になります。自分がどちらに当たるかで計算が変わるため、判断に迷う場合は税務署に確認してください。
経費として扱える範囲も、一律には決まりません。仕事に使ったパソコンや通信費は経費に含めるのが一般的ですが、家庭でも使っているものは使用の割合で分けるのが原則です。領収書は残しておいてください。金額や事情で扱いが変わるため、個別の判断は税務署の窓口で確認するのが確実です。
公務員は制度そのものが違う
会社員と公務員では、根拠になる決まりが別です。混同すると話が合わなくなります。
国家公務員には、営利企業への従事などを制限する規定が法律に定められています。地方公務員にも同様の制限があります。つまり公務員の場合、就業規則ではなく法律で制限されているため、会社員と同じ議論はできません。
ただし、まったく道が閉ざされているわけではありません。任命権者の許可を得て行える場合があり、不動産の賃貸や、自治体が認める地域活動、家業の手伝いなどについては個別に判断されます。近年は、地域の課題に取り組む活動について許可の基準を公表する自治体も出ています。
公務員として働いている人が副業を検討する場合は、まず所属先の人事担当に許可の基準を確認してください。一般の副業記事に書かれている内容は会社員向けのものであり、そのまま当てはめると判断を誤ります。
就業規則に触れにくい副業の選び方
会社の規則を守りながら進めるなら、4つの事由に当たりにくい仕事を選ぶのが素直な方法です。選ぶときの基準を挙げます。
1つ目は、勤務先と競合しない分野を選ぶことです。同じ業界で同じ顧客層に向けた仕事は、内容がどれほど違っても説明が難しくなります。分野を1つずらすだけで、話が通りやすくなります。
2つ目は、時間の拘束がない形を選ぶことです。決まった時間に稼働する形だと、本業の予定と衝突したときに調整ができません。納期だけが決まっていて作業時間を自分で決められる仕事は、本業への支障が出にくくなります。
3つ目は、雇用ではなく業務委託で受けることです。前述のとおり、労働時間の通算が発生しないため、会社側の事務負担が生まれません。相談のときの説明も簡単になります。
4つ目は、勤務先の情報を一切使わない仕事にすることです。自分の技能だけで成立する仕事を選べば、企業秘密の話が出てきません。
おすすめの入り方としては、技能を売る形の在宅の仕事が挙げられます。文章を書く、資料を作る、データを整える、設計やコードを書く、といった仕事です。この分野は成果物で評価されるため、時間の拘束が少なく、実績が次の仕事につながります。
分野ごとの具体的な内容は整理されたガイドで確かめられます。開発の仕事の内訳はアプリケーション開発のお仕事に、マーケティングやセキュリティの領域はAI・マーケティング・セキュリティのお仕事に、業務の改善を支援する領域はAIコンサル・業務活用支援のお仕事にまとまっています。自分の本業と重ならない分野を選ぶときの手がかりになります。
契約書を確かめることが最大の注意点
副業を業務委託で受ける場合、規則の話と並んで気をつけるべきなのが契約の中身です。ここを飛ばして始めると、後から困ります。
確かめるのは5点です。業務の範囲、報酬の金額と算定の方法、支払いの期日、成果物の権利の扱い、秘密保持の範囲。この5点が書面に残っていない取引は避けてください。フリーランスとして仕事を受ける側を保護する法律では、発注する側が取引条件を明示する義務を負っています。条件が示されない場合は、それ自体が問題です。
とくに気をつけたいのが秘密保持と競業に関する条項です。副業先との契約に「同種の業務を他社に対して行わない」という条項が入っていると、本業と衝突する可能性が出てきます。署名する前に読んでください。
報酬が支払われないときの手順も、知っておくと落ち着いて対処できます。まず書面で請求し、それでも支払われない場合は簡易裁判所の手続きを使う道があります。この流れは未払い報酬を回収する!弁護士の着手金・成功報酬と支払督促の流れ【2026年最新】で具体的に整理されています。また、発注書や契約書に入れておくべき項目はフリーランスを守る「下請法(取適法)」の知識|発注書・契約書の必須項目チェックリストにチェックリストの形でまとまっています。
資格の扱いで悩む人もいます。勤務先の業務に関係する資格を副業で使うことが問題になるかどうかは、資格そのものではなく使い方の問題です。ネットワークの基礎を広く示すCCNA(シスコ技術者認定)のように、特定の勤務先に結び付かない汎用の資格であれば、競業の論点にはなりにくくなります。
市場の側から見た副業の位置づけ
最後に、制度の話から離れて、働き方の変化そのものを整理します。
この20年、在宅で仕事を受ける市場を見てきた立場から言えることがあります。副業を認める会社が増えた背景には、理念よりも人材の流動の現実があります。副業を禁止している会社ほど、社員が黙って始め、そのまま独立していく。認めている会社では、社外で得た経験が本業の提案に混ざってくる。この差が、規則を見直す動機になっています。
もう一つの変化は、副業から始めて本業を置き換える人の増え方です。以前は「独立して食べていけるか」を判断する材料がありませんでした。今は副業として少しずつ受けながら、自分の技能に需要があるかを確かめられます。この確認ができるようになったことが、独立の心理的な負担を下げています。
続いている人に共通していることがあります。単発の作業をこなした数ではなく、「この人に頼むと楽だ」という関係を作った点です。1つの依頼を丁寧に終え、次の相談が来る。この積み重ねが、収入の安定につながっています。副業を成功させるコツを1つに絞るなら、関係を切らさないことです。案件を探し続けるより、一度取引した相手と続けるほうが、確実で負担が軽くなります。
仲介の手数料が乗らない直接のやり取りにも、見過ごせない意味があります。同じ予算でも、依頼する側はより多くの時間を頼めて、受ける側の手取りは厚くなる。金額の大小ではなく、同じ仕事に対して自分に残る割合が変わるという構造の話です。経験を積んだ後にこの形へ移していく人が多いのは、これが理由です。
相場を知っておくことも、自分の値付けの土台になります。開発の領域ならソフトウェア作成者の年収・単価相場、文章の領域なら著述家,記者,編集者の年収・単価相場で水準を確かめられます。会社の規則を確かめ、相談を済ませ、契約の形を選んだうえで、自分の技能がどの帯にあるかを知る。この順で進めれば、副業は制度と衝突せずに始められます。
よくある質問
Q. 副業を禁止する法律はあるのですか?
会社員の副業を禁じる法律はありません。禁止しているのは、その会社の就業規則です。厚生労働省のモデル就業規則は、勤務時間外に他の会社等の業務に従事できることを原則として示しており、会社が禁止または制限できる場合を4つに限っています。ただし公務員は法律で営利企業への従事が制限されているため、会社員とは扱いが異なります。
Q. 会社が副業を禁止できるのはどんな場合ですか?
モデル就業規則では、労務提供上の支障がある場合、企業秘密が漏洩する場合、会社の名誉や信用を損なう行為や信頼関係を破壊する行為がある場合、競業により企業の利益を害する場合の4つが挙げられています。この4つに当たらない副業まで一律に禁止している場合は、禁止の効力そのものが争いになり得ます。
Q. 副業をすると会社に知られてしまいますか?
住民税の通知、社会保険の2か所勤務の手続き、SNSでの公開などから伝わる場合があります。給与以外の所得であれば住民税を自分で納める方法を選べる余地がありますが、副業がアルバイト(給与)の場合はこの選択ができません。確実に隠し続けるのは難しいため、先に会社へ相談するほうが負担が軽くなります。
Q. 副業の収入はいくらから確定申告が必要ですか?
給与を1か所から受けている人は、給与以外の所得の合計が20万円を超えると所得税の確定申告が必要になります。判断するのは売上から経費を引いた後の所得です。なお20万円の線は所得税の話で、住民税の申告は金額に関わらず必要です。契約の形や金額で扱いが変わるため、迷う場合は税務署に確認してください。
この記事について
編集部
監修:@SOHO編集部
2004年よりフリーランス・在宅ワーク向けサービスを20年運営。編集部が事実確認のうえ公開しています。

この記事を書いた人
丸山 桃子@SOHO編集部
アパレルEC運営支援・SNSコンサル
アパレル企業でMD・ECバイヤーとして勤務後、フリーランスに独立。アパレルブランドのEC運営支援・SNS運用を手がけ、ファッション・EC系の記事を執筆しています。
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